JP4621916B2 - 動的階層構造の解析方法とその装置 - Google Patents

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Description

本願発明は、生体代替材料等としてのソフトマテリアル、その一つの代表例としての高分子ゲル等の不均一複雑系物質の全般に係わるマクロな動的構造(動的感受率)を解析することのできる動的階層構造の解析方法とその装置に関するものである。
生体代替物質等のソフトマテリアルにおける新規物性の開拓は、時代の要請により緊急かつ重要な課題であるが、ソフトマテリアルは一般にその構造を原子の空間座標で記述することが困難な不均一な複雑系物質である。このような不均一複雑系物質の構造については、従来、中性子散乱等で最近接、第2近接原子に対する平均距離をハロー状の構造因子の観測より推論することが多く行われてきている。しかしながら、物質全体に渡るマクロな構造に関しては、動的な構造(動的感受率)の探求が不可欠であった。そこで従来よりその動的構造の解析についての検討が行われてきている。
この解析は、主に周波数依存誘電感受率の測定で行われてきている(非特許文献1−2)。だが、この方法には、(1)電極接着の影響や、(2)高振動数領域(10Hz以上)での測定感度低下にともなう測定精度の劣化、(3)ゆらぎの波長に関する情報を含むことができない、などの欠点がある。
P.Pissis, et al., Colloid and Surface A:Physicochem. Eng. Aspects, 149, 253 (1999) J. Mijovic, et al., Macromolecules, 36, 4589 (2003)
本願発明は、上記のとおりの背景から、従来のソフトマテリアル、たとえば高分子ゲル等の複雑系物質の動的構造(動的感受率)の解析のための周波数依存誘電感受率の測定方法の問題点を解消し、従来のような電極接着の影響を受けることなく、物質起源の高振動数領域での高い感度をもって広い範囲で複雑系の動的構造を解析することのできる新しい手段を提供することを課題としている。
本願発明、上記の課題を解決するものとして、下記の技術的手段を提供する。
<1>可視光による光散乱分光法と時間分解分光法との併用によって不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトルをそれぞれ観測し、
得られたスペクトルデータに対して、不均一複雑系物質の静電動的感受率における全体の緩和過程は動的階層に対応する複数の緩和過程の重ね合わせよりなり且つ各緩和過程はそれぞれ特徴的な緩和時間を有するとともに各緩和過程はそれぞれ単一の指数関数により表すことができるというモデルを適用し、各緩和過程が有する緩和時間を求めることにより、不均一複雑系物質の動的階層構造を静電動的感受率の振動数依存性として解析することを特徴とする動的階層構造の解析方法。
<2>上記<1>の発明において、1Hz〜1013Hzに及ぶ広帯域でスペクトルを観測することを特徴とする解析方法。
<3>上記<1>の発明において、不均一複雑系物質に吸収端を持たない可視レーザー光をプローブとすることを特徴とする解析方法。
<4>上記<1>の発明において、光散乱分光と時間分解分光との併用は、高分解能光散乱分光法とパルス誘起熱散乱分光法とにより行うことを特徴とする解析方法。
<5>処理部が、可視光による光散乱分光法による不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データの入力を受け付ける手順、
前記処理部が、可視光による時間分解分光法による不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データの入力を受け付ける手順、
前記処理部が、入力された前記光散乱分光法による不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データに対し、不均一複雑系物質の静電動的感受率における全体の緩和過程は動的階層に対応する複数の緩和過程の重ね合わせよりなり且つ各緩和過程はそれぞれ特徴的な緩和時間を有するとともに各緩和過程はそれぞれ単一の指数関数により表すことができるというモデルを適用して、第1の周波数帯域にわたって各緩和過程が有する緩和時間を求める手順、
前記処理部が、入力された前記時間分解分光法による不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データに対し、前記モデルを適用して、第2の周波数帯域にわたって各緩和過程が有する緩和時間を求める手順、
前記処理部が、第1の周波数帯域にわたって求めた各緩和過程が有する緩和時間と第1の周波数帯域にわたって求めた各緩和過程が有する緩和時間とを組み合わせて、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域を合わせた周波数帯域における各緩和時間を求める手順、および
求めた第1の周波数帯域と第2の周波数帯域を合わせた周波数帯域における各緩和時間のデータに基づき不均一複雑系物質の動的階層構造を静電動的感受率の振動数依存性として解析する手順
を備えることを特徴とする動的階層構造の解析方法。
<6>上記<5>の各手順をコンピュータで実行させる解析プログラム。
<7>上記<6>の解析プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
<8>可視光による光散乱分光法により不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトルを観測する第1の分光装置、
可視光による時間分解分光法により不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトルを観測する第2の分光装置、
第1の分光装置から不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データを受け取り、そのスペクトル観測データに対し、不均一複雑系物質の静電動的感受率における全体の緩和過程は動的階層に対応する複数の緩和過程の重ね合わせよりなり且つ各緩和過程はそれぞれ特徴的な緩和時間を有するとともに各緩和過程はそれぞれ単一の指数関数により表すことができるというモデルを適用して、第1の周波数帯域にわたって各緩和過程が有する緩和時間を求める第1の手段、第2の分光装置から不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データを受け取り、そのスペクトル観測データに対し、前記モデルを適用して、第2の周波数帯域にわたって各緩和過程が有する緩和時間を求める第2の手段、ならびに、第1の手段および第2の手段からのデータを受け取り、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域を合わせた周波数帯域における各緩和時間を求め、不均一複雑系物質の動的階層構造を静電動的感受率の振動数依存性として解析する第3の手段を有する処理装置
を備えることを特徴とする動的階層構造の解析装置。
上記のとおりの本願発明によれば、可視光による光散乱分光法と時間分解分光法とを併用して不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトルをそれぞれ観測し、得られたスペクトルデータに対して、特定のモデルを適用し、各緩和過程が有する緩和時間を求めることにより、不均一複雑系物質の動的階層構造を静電動的感受率の振動数依存性として解析するようにしたため、可視光をプローブとして非接触で、不均一複雑系物質の動的構造を広いダイナミックレンジで階層性として解析可能となる。これによって、新規な不均一複雑系物質としてのソフトマテリアルの創製がその物性、構造の高精度での計測に基づくものとして大きく進展することになる。
また、本願発明は、種々の分野に適用可能であるが、以下にその一部を例示する。
・医療一般への応用:生体物質の粗密構造の振動数分布としての動的階層構造の違いを検出して、マクロなスケールで非接触に患部をイメージングできる。
・癌治療への応用:正常組織と癌組織の動的構造の違いから、正確に3Dマッピングをすることが可能となる。
・食料品鑑定への応用:こんにゃく、豆腐などの食料品の動的階層構造の違いから、生産地を判定できる。
・物性研究への応用:ガラス、プラスチックなどの不定形材料の内部振動緩和状態を指数付けしたモードで記述でき、機能設計が簡便となる。
本願発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に本願発明の実施形態をさらに詳しく説明する。
本願発明の動的階層構造の解析方法は、可視光による光散乱分光法と時間分解分光法との併用によって不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトルをそれぞれ観測し、得られたスペクトルデータに対して特定のモデルを適用し、各緩和過程が有する緩和時間を求めることにより、不均一複雑系物質の動的階層構造を静電動的感受率(以下、動的感受率とも称する)の振動数依存性として解析するものである。
上記特定のモデルとは、不均一複雑系物質の動的感受率における全体の緩和過程は動的階層に対応する複数の緩和過程の重ね合わせよりなり且つ各緩和過程はそれぞれ特徴的な緩和時間を有するとともに各緩和過程はそれぞれ単一の指数関数により表すことができるというモデルである。
本願発明では、1Hz〜1013Hzに及ぶ広帯域でスペクトルを観測し、不均一複雑系物質の動的階層構造を解析することができる。これは後述するように周波数(振動数)ドメインと時間ドメインの両方の領域において熱ゆらぎのスペクトルを測定し、解析を行うようにしていることによる。また、不均一複雑系物質に吸収端を持たない可視レーザー光をプローブとすることにもよる。
本願発明においては、光散乱分光と時間分解分光との併用は、高分解能光散乱分光法とパルス誘起熱散乱分光法とにより行うことができるが、これに限定されない。
また、本願発明による動的階層構造の解析装置の概念図を図1に模式的に示す。さらに、本願発明による動的階層構造の解析装置の機能ブロック図を図2に示す。図2では、図1の解析装置から試料セル、時間分解分光部、光散乱分光部を除いた処理装置10を示してあり、この処理装置(10)は、図1の時間分解分光部、光散乱分光部からのスペクトル観測データ等を入力する入力部(11)と、各種演算処理(解析処理)を行う処理部(12)と、制御プログラムが格納された主記憶装置であるメモリ(13)と、各種データを記憶するHDD装置等の記憶部(14)と、解析したデータを出力あるいは表示する出力部(15)を備える。
なお、以下の説明においては、ソフトマテリアルの一つの代表例としての高分子ゲル、たとえばポリマーハイドロゲルを主な例としているが、もちろん本願発明の解析対象はこれに限定されず、不均一複雑系物質一般を対象とすることができることはいうまでもない。
ポリマーハイドロゲルは、ソフト・ウェットマテリアルとして、バイオテクノロジー、メカノバイオロジーなど多数の研究分野での応用が最も期待される材料の一つである。例えば医療分野では、ポリマーハイドロゲルは人工筋肉の有望な材料候補として多数の研究者の注目の的となっている。ポリマーハイドロゲルは、水で膨潤した架橋ポリマーのネットワーク(網目構造)より構成される。そのフレキシビリティは、ポリマーネットワークの内部空間に充填される大量の水が存在することに起因する。ハイドロゲルのマクロな機能の物理的起源について本質的に理解するためには、ポリマーネットワークと水の相互作用が重要となる。特にそのメカニカルな性質は、架橋ポリマーネットワークとその内部に区分化(コンパートメント化)された水との相互作用に密接に関係していると考えられる。しかし、ハイドロゲル中の原子の座標には、結晶で見られるような空間的周期性が見られないため、架橋ポリマーネットワークと水との相互作用を数式で表現することは一般的に困難である。ポリマーネットワーク中の架橋点の空間的に不均一な分布により、ゲルはそのポリマーネットワークが空間的にランダムな配置をとるため、ガラスや飽和液系などのように、ミクロなランダム系となる。
動的特性の研究を行う場合、相互作用の空間的表現を行う代わりに、熱ゆらぎの動的感受率関数(以下、単に感受率関数とも称する)χ(ν,)または相関関数G(t,)を用いる方法が有効である。いずれの関数も次式で示すように、フーリエ変換により相互関連している(なお、本明細書においてベクトルは下線を付して表示する)。
ここでνとはそれぞれ周波数と入射光(照射光)の波数ベクトルである。ポリマーハイドロゲル中でのポリマーネットワークと水との相互作用によって、これらの関数内で特徴的な分散関係が生じるが、これは、熱ゆらぎが、熱平衡状態のポリマーネットワーク上にある架橋点の空間的不均一性とカップリングするためである。従ってポリマーハイドロゲルの感受率関数χ(ν,)の周波数依存性によって、熱ゆらぎの動的特性の分散関係を介した水中でのランダムポリマーネットワークの空間的不均一性の知識が得られる。ランダム系の熱ゆらぎの特徴的な性質は、例えば階層構造などの、感受率関数χ(ν,)または相関関数G(t,)といった動的構造として現れることになる。本願発明においては、この熱ゆらぎの感受率関数χ(ν,)または相関関数G(t,)を、たとえばポリマーハイドロゲルの可視光分光スペクトルによって観測する。
感受率関数χ(ν,)の虚数部分であるImχ(ν,)は揺動散逸定理を用いて、光散乱スペクトル強度I(ν,)により(2)式で表される〔R.Kubo, et al., Statistical Physics II (Springer, 1998) ; G.B.Benedek, et al., Phys. Rev. 149, 647 (1966)〕。
ここでは散乱ベクトルであり散乱ジオメトリに依存する。の大きさと方向は、波長λ=2π/qの光と熱ゆらぎとの間のモーメント保存性により(3)式のように表される。
ここでn、k、φはそれぞれ試料の屈折率、真空中での入射光の波数ベクトル、試料内部の散乱角である。これは光散乱検証において、波数ベクトルである熱ゆらぎの成分を空間的に選択できることを意味している〔N.Micali, et al., Phys. Rev. E 48, 4501 (1993) ; S.Hirotsu, et al., J. Phys. Soc. Jpn., 64, 2898 (1995)〕。そこで、熱ゆらぎの分散関係を解明するため、本願発明では、感受率関数χ(ν,)の周波数依存性または相関関数G(t,)の時間依存性に注目する。
光散乱スペクトル強度I(ν,)は、ポリマーハイドロゲルの空間的不均一性とカップリングした熱ゆらぎの特徴的性質に対して感受性がある。熱ゆらぎは、水中におけるポリマー鎖の非伝播性ブラウン運動であると考えられる。従って光散乱スペクトル強度I(ν,)におけるゼロ周波数の位置に中心ピークスペクトルが観察されることが予想される。ハイドロゲル中の熱ゆらぎの特徴的性質を観察するためには、中心ピークスペクトルの正確な測定が不可欠である。光散乱法で通常カバーされる周波数範囲は10Hz〜1013Hzであり、この範囲の下限は分光計の分解能によるものである。
ポリマーネットワークの熱ゆらぎは、その複雑な構成のために広範囲のダイナミクスを有する。これらを解明するためには、熱ゆらぎの感受率関数χ(ν,)または相関関数G(t,)を光散乱よりも広いダイナミックレンジで観察する必要がある。ダイナミックレンジをさらに低振動数領域へ拡張するためには時間ドメインを調べる方法が有効であるが、この場合、低周波数成分はこの検証により容易に検出できる低速の動きに対応している。時間分解分光法(例えばパルス誘起熱散乱法)により、超短波レーザーパルスで人工的に励起された熱ゆらぎの相関関数G(t,)の時間依存性が直接得られる〔Y.Yan, et a., J. Chem. Phys., 87, 6240 (1987) ; Y.Yan, et al., J. Chem. Phys., 87, 6257 (1987) ; A.R. Duggal, et al., J. Chem. Phys., 94, 7677 (1991)〕。熱ゆらぎは特定の波数ベクトルを用いて選択的に励起される。の大きさは試料外部の2種類の励起レーザーパルスビームの交差角θにより、以下のように与えられる。
ここでkは真空中での励起レーザーパルスの波数ベクトルの大きさである。励起された熱ゆらぎの時間依存性は、試料中の励起領域より散乱されるプローブ光の強度I(t,)により与えられる。相関関数G(t,)の時間依存性は、次式で表される。
時間分解分光法(例えばパルス誘起熱散乱)は光散乱分光法の場合より低いダイナミックレンジであるが、これは時間ドメインの検証では遅い動きほど容易に検出されるためである。しかし光散乱とは逆に検出器の反応時間のため、この方法には比較的早いダイナミクスに対する測定限界(上限)がある。通常この限界は実験的に10Hzのダイナミックレンジであり、これは光散乱分光法の低いダイナミックレンジと重なる。従って、光散乱分光法と時間分解分光法(例えばパルス誘起散乱法)のこれら2種類の方法を組み合わせて広範囲のダイナミックレンジを連続的にカバーすることができる。もちろんいずれの方法もダイナミクスについて等価な情報を提供しており、これは式(1)で表されるフーリエ変換を介して相関関数G(t,)が感受率関数χ(ν,)に関係しているためである。このため、組み合わせ法では、広いダイナミックレンジにわたってランダム系の感受率関数χ(ν,)または相関関数G(t,)をきわめて正確に調べることができる。また、選択された波数ベクトルの熱散乱に関する情報も得られる。
そこで、以下においてはさらに詳しく、ポリマーハイドロゲルの試料として、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(PAMPS)高分子電解質ゲルを選択した場合によって説明する。PAMPSゲルは架橋度(架橋度)が低い状態で無色透明であるため、光散乱検証に適している。さらにPAMPSゲル中の高分子電解質鎖は、水中で荷電基間に静電反発イオン力が存在することから、拡張されたコンフォメーションをとることが予想される。従ってPAMPSゲルを試料に用いることにより、ここでは架橋点のみに起因とするミクロな空間的不均一性に重点的に着目することができる。
まず、ランダム系の動的感受性を厳密に解明するため、それぞれの緩和過程に対応する複数の特徴的な緩和時間を有するという、前記した単純なモデルを採用する。全体の緩和は、それぞれの緩和過程を重ね合わせることにより得られる。このモデルでは緩和時間を有する単一の指数関数により緩和過程を厳密に表すことができる。
実際、広範囲の周波数帯域で観察されるひずみのない中心ピークスペクトルを用いたところ、スペクトルの最小二乗法によるフィッティング(適合)を行う場合に、一つのローレンツ関数では全く良い結果が得られないことが判明している。そこで複数のローレンツ関数を用いてフィッティングを試みたところ、観察されたPAMPSゲルのスペクトル全てについて良好な結果が得られた。これによって、各緩和過程を単純に重ね合わせる方法により、PAMPSゲル中の熱ゆらぎのダイナミクスを十分に表現することができることが確認された。動的感受率関数はこのモデルでは次式で表される。
ここで右辺の第1項は音響モードのスペクトル、第2項は中心ピークスペクトルの重なり、第3項はバックグラウンドスペクトルの強度をそれぞれ表している。ναとγは、それぞれ音響モードの周波数および音響モードスペクトルの半値半幅(HWHM)である。Γはi番目の中心ピークスペクトルのHWHMである。添え字iは中心ピークスペクトルのオーダーを意味しているが、これはここで示すモデルにより与えられる動的階層のオーダーに対応している。係数AとBは温度Tとボルツマン定数kに依存する定数であり、ボーズ(Bose)因子に由来している。後述の実施例において得られるデータはこの式(6)に関してヒットしている。
時間ドメインにおいて観察された強度I(t,)も、ここで採用するモデルに従うと単一の緩和指数関数の重ね合わせによって得ることができる。周知のごとく、式(6)の第2項により与えられるローレンツ型中心ピークをフーリエ変換することによって、時間に対する単一の減衰指数関数として相関関数G(t,q)の時間依存性が与えられる。この時間定数τは緩和時間であり、これは式(1)の関連から式(6)の1/(2πΓ)に等しい。時間ドメイン中の単一の減衰指数関数によって、周波数ドメイン中のローレンツ型中心ピークに対して実質的に等価な情報が得られる。時間ドメインで観察された実施例データは、次式によりフィットした。
ここでA、B、C、IBGはそれぞれ音響モードの振幅、構造的緩和の振幅、i番目の緩和過程の振幅、時間ドメインにおけるバックグラウンド強度である。二乗項中の第1項は、周波数ν、初期位相φ、振幅Aである音響モードの励起過程を示している。第2項は、2種類のコヒーレント励起レーザーパルスの時間的干渉により得られるパルス駆動力によって人工的に励起された、非伝播性ゆらぎの立ち上がり過程を与える。この影響は、単一の時定数τを持つ立ち上がり指数関数により十分に表現される。この項の負の符号は、励起の時間的展開が緩和過程の逆であることを示している。ガラスや飽和液などの複雑系を対象とする、パルス誘起散乱実証の他の多くの事例では、τは構造緩和時間と呼ばれることが多いが、これは励起過程が、試料の何らかの構造的変化を伴うためである。ポリマーネットワークの空間的構造が励起パルスにより幾分変形されている可能性がある。第3項は、系の熱平衡に対する全ての緩和過程の寄与を示す。これによって異なる緩和時間τにおいて添え字iにより示される階層レベルが与えられる。
本願発明は、以上のような検討とその実験的検証から完成されたものである。
以下に実施例を示し、本願発明をさらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって本願発明が限定されることはない。
A.試料調製
PAMPSゲルを、様々な量の架橋剤N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、0.1molの開始剤2−オキソグルタル酸を含む、1Mの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)水溶液をもとに合成した。重合は、333Kで12時間にわたり窒素雰囲気のもとで、λ=365nmの紫外線を照射して行った。水分含量や膨潤度の異なるPAMPSゲル試料は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸モノマーに対する架橋剤MBAAの量を0.5〜13mol%変化させて調製した。重合後に試料ゲルを1週間にわたり大量の脱イオン水に浸潤して平衡化し、残存する化学物質を洗い落とした。ゲル調製の詳細は例えば文献(J.P. Gong, et al., J. Phys. Chem., B103, 6007 (1999))に記載されている。
中心ピークスペクトルの物理的起源を挙示するためには、ゲルの中心ピークスペクトルをポリマー溶液の場合と比較することが重要である。この比較によって、架橋されたポリマー鎖がダイナミクス面で果たす役割が明らかになる。そのため、異なる量の架橋剤を用いて調製したゲルの試料と同様に、複数の濃度でポリマー溶液の試料を調製した。PAMPSゲルの濃度とその架橋度の関係を表1に示す。ここで調製した試料はすべて無色透明であった。

B.周波数ドメイン検証
光源として縦単一モードArレーザー(Spectra-Physics, Beam-Lok 2060、Z-およびJ-Lok使用)を用いた。このレーザーは波長λ=514.5nm、出力300mWで動作させた。分光分析でゆがみのないスペクトルを観察するため、分光計は広い周波数帯域にわたり高コントラストの高解像度を有する必要がある。現段階ではマルチパス・ファブリ−ペロ干渉計が、I(ν,)のスペクトル形状を精密に、高解像度で、広い周波数帯域にわたり検出することのできるほぼ唯一の機器のようである。従って試料からの散乱光は、ワイドレンジ高解像度分光計Sandercock 6パス・タンデム型ファブリ−ペロ干渉計(JRS)を用いて分析した。自由スペクトル領域(FSR)は1.5×1010〜1.3×1012Hzであった。散乱角は90度または180度とした。分光計のフィネス(自由スペクトル領域と最小分解波数幅との比)はスペクトル測定の間平均100以上に保った。分光計により分析された光の強度は、光電子増倍管(Hamamatsu R585)により検出し、コンピュータメモリ中に記録してスペクトルの形状分析を行った。このシステムでカバーする周波数範囲は10〜1013Hzである。下限は分光計の解像度により決まる。
光散乱スペクトル測定において、入射光が強く弾性散乱されて生じる迷光を減らすためのインデックス・マッチングのため、水を満たした光学石英セル中に試料を入れた。全てのスペクトルは室温で観察した。周波数ドメインのI(ν,)観察に用いた光散乱の実験装置構成を図3に示す。

C.時間ドメイン検証
励起レーザーはモードロックQスイッチYLFレーザー(Quantronix、4217型)であり、これは出力50mW、波長λ=1,053nm、繰り返し率400Hzで動作させた。パルス幅は256psであった。ビームスプリッタにより単一パルスから生成した2種類のコヒーレントレーザーパルスを、試料中で時間的・空間的に互いに重ね合わせて、人工的に熱ゆらぎを励起させた。2種類のコヒーレントパルスが時間的・空間的に重なり合うことにより一時的な干渉領域が形成され、ここでパルス光の強い電場が試料中に空間的・周期的に加えられる。これが作動力となり、空間的周期により表される波数ベクトルによって人工的に熱ゆらぎが励起される。これは式(4)に示すように、2種類の励起パルスの交差角により規定される。今般の実験では励起パルスの交差角θは2.2〜7.9度とし、これは波数ベクトルq=(2.3〜8.2)×10cm−1に対応している。励起された熱ゆらぎの時間依存性は、Arレーザー(SpectraPhysics, BeamLok 2060)からのCWレーザー光の照射により調べた。励起された熱ゆらぎからの回折した光の強度は、光電子増倍管(Hamamatsu, R1635)により検出し、デジタルオシロスコープ(Tektronix, TDS744A)中に記録した。本システムでカバーするダイナミックレンジは10〜10Hzの範囲であった。したがって、周波数ドメインと時間ドメインでの2種類の分光方法を組み合わせることにより、10〜1013Hzまたは10−2〜10−13秒といった、10の10乗を超えるきわめて広範囲のダイナミックレンジをカバーできる検証方法が得られた。
PAMPSゲル中で励起された熱ゆらぎの時間依存性に対する全ての測定は室温条件下で実施された。試料は周波数ドメイン検証の場合と同様、水中に浸した石英セル中に入れた。励起された熱ゆらぎの時間依存性を観察するために使用した実験装置構成を図4に示す。

D.ゲルのダイナミクスに関する他の方法との比較
ゲルの誘電測定を用いた誘電感受率の周波数依存性に関する報告はこれまでにも行われている(非特許文献1−2)。しかしそこではGHz以下の比較的低周波数領域に関する情報しか提供されていない。一方、本願発明の方法では周波数範囲を1013Hzまでカバーしている。時間ドメイン中のゲルに対する研究については、これまでに動的光散乱(DLS)を用いた報告がなされている〔M.Shibayama, et al., Macromol. Chem. Phys., 199, 1 (1998); J. Chem. Phys., 107, 5227 (1997); J. Chem. Phys., 112, 442 (2000); H.Furukawa, et al. Phys-Rev. E68, 031406 (2003)〕。だが、この文献の動的光散乱実験では従来からのシステムを用いて、散乱光の強度−時間相関関数が観察されるにすぎない。動的光散乱の測定により、試料からの散乱光の電場について四次相関が与えられる。
これに対して本願発明のシステムでは、二次相関関数は、時間ドメイン中の関数G(t,)として、直接提示される。本願発明の方法では周波数ドメイン中の中心ピークスペクトルもWiener-Khintchine定理と揺動散逸定理を介して、時間ドメイン中の二次相関関数に関係している。さらにPAMPSに対して行われた動的光散乱実験では、再現性に劣り、弱い信号強度が生じると報告されている〔F.J.Bermejo, et al., J. Phys. Couders. Matter., 2, 1301 (1990)〕。従って本願発明のシステムは、極めて有用なものである。

E.周波数ドメインにおける結果
2mol%、13mol%、水の各条件下で架橋したPAMPSゲルの光散乱スペクトルを、図5(a)、5(b)、5(c)にそれぞれ示す。全ての図に一般して広い中心ピークが現れている。これらの図では各スペクトルが拡大した周波数帯域中に連続して示されており、上部から底部まで−1,300〜+1,300GHz、−250〜+250GHz、−15〜+15GHzの範囲となっている。下図のスペクトルには、ストークスならびに反ストークスブルリアン散乱スペクトルによる一対の鋭いピークが含まれており、これは−15〜+15GHzの拡大範囲ではフラットなバックグラウンドとして現れる中心ピーク成分に加えて現れている。
前記の式(6)を用いて以下のような系統的手法により、観察されたスペクトルの数値解析を行った。まず三重モノクロメーター(Ramanor T64000, Jobin Yvon)による−6,000GHz〜+6,000GHzという広い周波数帯で、IBGの正確な値を独立に観察したが、これは正確な中心ピークのスペクトル幅を決定するためには正確なIBGが非常に重要だからである。IBG値には、迷光全体、すなわち他のフォノンによるラマン散乱部分に加えて蛍光、欠陥やその他の不完全性による弾性散乱光などによる影響が含まれている。
次に、観察されたスペクトルからバックグラウンドのIBGを引いた後、一意的な添え字i=1について式(6)の第2項により与えられるローレンツ関数の一つを用いることにより、高周波数域に由来する残りの部分をフィットさせた。このフィッティングは、第一中心ピークのスペクトル幅により与えられる単一のフィッティング・パラメータΓを用いて正確に行った。このフィッティングは高周波数域側では良い結果を示すが低周波数域側ではあまり良好ではなく、スペクトル中に他の成分が存在することを示している。Γの値は、高周波数側から始まる最大の周波数帯域における最良のスペクトル・フィッティング適合により最終的に決定した。
次に、同じルールを適用し、観察スペクトルからΓを有するローレンツ関数を減算することにより残余部分に対する最良のフィッティングを用いてΓを得た。残余部分を再びフィットさせ、高周波数側から可能な限り広範囲の周波数帯域におけるΓの値を得た。このフィッティング手順を連続して繰り返し、観察されたスペクトルから徐々に狭い中心ピークスペクトルを得た。最終的にここではローレンツ型の中心ピークスペクトルを重ね合わせることによって、観察されたスペクトルに対する最良の数値フィットを得た。観察されたスペクトルを得るために重ね合わされた中心ピークの数は、緩和ダイナミクスにおける動的階層のレベル数を示しているが、その理由は、それぞれのΓはそれぞれの緩和時間τ=1/(2πΓ)の逆数に対応しているためである。
図6では3段階の階層の場合について、フィッティング手順を模式的に示しているが、ここでは幅Γ、Γ、Γの中心ピークスペクトルを、それぞれ1、2、3番目の中心ピークとして名付けている。
ここで周波数ドメインを対象に、中心ピークスペクトルのΓを用いてダイナミクスの階層に関する考察を行う。例えば7.0mol%で架橋したPAMPSゲルには3種類のローレンツ型中心ピークがあり、その最も幅広のものは幅Γが178.2GHzであり、2番目の幅Γは27.6GHz、最も狭い幅Γは0.67GHzである。この場合には3種類のレベルのダイナミクスが存在するという結論になる。換言すれば動的感受率関数χ(ν,)には3段階のレベルにわたる階層構造があるということになる。
6%未満の架橋度条件下では最も狭い中心ピークを正確に観察することは難しいが、これは散乱スペクトルの強度が小さいためである。架橋度が7.0mol%以上の試料については階層的ダイナミクスを示す幅がΓ、Γ、Γとなる3種類の中心ピークが観察された。13mol%以上の濃度の試料では弾性散乱成分が発散的に増加し、光散乱スペクトルの正確な測定が妨げられるようになった。
熱励起された音響モードは、式(3)で表される散乱ジオメトリにより定義される波数ベクトルを伴い、熱ゆらぎの空間フーリエ成分として伝播する。ブリルアン散乱スペクトルの音響モードの一対のステークスピークおよび反ストークスピークが、図5(a)〜5(c)の下図に見られる一対の鋭いピークとして観察されている。周波数シフトとHWHMによって、音響モードの周波数と減衰量がそれぞれ得られる。2mol%条件で架橋したPAMPSゲルについてバックグラウンド散乱(180度散乱)ジオメトリで観察されたブルリアンスペクトルの周波数シフトは7.45GHzであり、またHWHMは0.5GHzと非常に狭く今回の実験系の分解能限界を外れていた。このように減衰が小さいことは、PAMPSゲル中の音響モードの伝播が確立されていることを意味している。周波数シフトにより音響モードの周波数νが与えられるが、これはc=ρv=ρ(2πν/q)の関係によって体積弾性スティフネス係数に関連している。因みにここでρとvはそれぞれPAMPSゲルの密度と音響モードの速度である。架橋ポリマーネットワークがゲルの巨視的な弾性において果たす役割は興味深い。ゲルと水の体積弾性スティフネス定数の違いは、ゲルの弾性にポリマーネットワークが果たす役割を示すと予想される。

F.時間ドメインでの結果
図7(a)と7(b)は、図4に示す測定装置においてピコ秒レーザーパルスにより人工的に励起されたゆらぎによる、散乱光の強度I(t,)の時間依存性を示す。図7(a)の上図には、時間に伴う緩和の単純な指数関数的減衰に加えられた、音響モードに起因する振動部分を見ることができる。熱ゆらぎの緩和に関連するG(t,)の時間依存性は、観察されたI(t,)から音響振動の信号強度を減算することによって得られる。緩和過程の階層は、式(7)の二乗された絶対値カッコ内の第3項で表される。
次に、緩和部分を複数の減衰ダイナミクスに分解するため、前記の場合と類似した方法で数値フィッティングを注意深く行った。フィッティングの手順は次のとおりである。まず実験データからIBG成分と音響振動を減算した。次にその残余を、最小二乗法によるフィッティングを用いて可能な限り広範囲にわたり、時間原点t=0からの緩和時間に伴う単一の減衰指数関数によりフィットさせ、τを決定した。緩和時間τを用いて単一の減衰指数関数の時間依存性を減算した後、最小二乗法によるフィッティングを用いて時間原点からさらに広い範囲までその残余を再びフィットさせ、緩和時間τを伴う単一の減衰指数関数を決定した。この過程は、周波数ドメインにおけるローレンツ関数の逐次重ね合わせによる中心ピークスペクトルの解析方法と実質的に等価である。
上述の手順に従えば、実験データI(t,)に対する最小二乗法によるフィッティングにより、0〜100nsの範囲の拡大して示された時間スケールと、0〜10msの広い時間スケールにおいて、それぞれ図7(a)、7(b)に示すような十分に良好な結果が得られる。ダイナミクスの階層構造は、比較的早い緩和から遅い緩和に至るまでの時間ドメインにおいても、周波数ドメインの場合と同様、逐次確定されている。
さらに4種類の低いレベルに関するダイナミクスの階層が、周波数ドメインより遅い緩和条件で解明されている。これらは4種類の緩和時間により特徴づけられている。すなわちそれらは、励起の立ち上がり過程に対応する構造緩和時間τと、式(7)で示されるような添え字iにより区別される3種類の緩和時間τ、i=1〜3である。例えば図7(a)、7(b)に示す2.0mol%条件で架橋したPAMPSゲルのI(t,)は、連続的に4種類の緩和時間、すなわちτ=1.2ps、τ=4.5ns、τ=13.1ms、τ=3.0msを与える。これは時間ドメインには4種類のレベルの動的階層構造が存在することを意味する。異なる架橋度、すなわち0.5、2.0、5.0、10、13mol%である他のPAMPSゲルにおいても、時間ドメインにおける4種類のレベルの動的階層構造を観察したことになる。架橋度が増加するにつれて、強い弾性散乱のために信号強度I(t,)を励起・検出することは困難になる。
PAMPSゲルでは容積のほとんどが水により占有されているため、既知の水の音響周波数値を参照して、振動部分を音響モードに割り当てることは妥当である。この比較ではν=vq/2π(ここでvは音響モードの速度)という関係を介して、音響分散を考慮すべきである。図7(a)の上図に示すように、時間に伴って振幅が減少することから、時間に伴う音響振動の減衰が直接観察される。

G.PAMPSゲルの動的階層性
階層構造全体についてデータを得るため、周波数と時間の各ドメインについて得られた結果の両者を組み合わせた。従って時間ドメインで観察された緩和時間τ、τ、τ、τについて、周波数ドメインから引き続き連続した順に番号を付け直した。第一段階ではTを、周波数ドメインの第3番目の中心ピークの幅Γより変換したτに等しくしたが、これはいずれの緩和時間も同一オーダーであるためである。ここではどちらの緩和時間も本質的に同一の物理起源に由来するとみなすことができる。次に、時間ドメインにおける緩和時間τ、τ、τの番号を新しく付け直して、それぞれτ、τ、τとした。そして周波数ドメインのΓ、i=1〜3より変換した緩和時間に新しく番号をつけてτ、i=1〜3とした。従ってPAMPSゲル中でτ、i=1〜6として示された6種類のレベルにわたる動的階層構造について、遅い方のダイナミクスについては時間ドメインを、速い方の動きについては周波数ドメインを用いた方法を相補的に組み合わせることとした。
2種類の方法により相補的に得た緩和時間については、表2にまとめて示した。
また、χ(ν,)の動的構造の全体については周波数を対数目盛として図8に示した。ここでは両方の方法における波数ベクトルの間の小さな違いに起因する影響は無視した。6種類のレベルにわたる緩和時間の分布から、PAMPSゲルの熱ゆらぎには6種類のレベルの動的階層構造が存在することが示される。本方法によって、ランダム系であるPAMPSゲル中の熱ゆらぎの階層構造をうまく解明している。各レベルに対応する物理状態は、ハイドロゲル中の熱ゆらぎにおける励起状態であると考えられる。さらに緩和時間τにより表示される励起状態は、散乱ジオメトリで表される波数ベクトルにも依存している。これはi番目の励起状態の空間条件を示す。従って、i番目の励起状態を時間依存性については緩和時間τを用いて、空間依存性についてはを用いて規定することができる。これは結晶格子のフォノンモードの場合と同様であり、そこではフォノンモードνの固有周波数νと波数ベクトルを用いた調和関数によって、各関数の重ね合わせによる熱ゆらぎが表示される。この類似性をもとに、ラベル付けされた励起状態をゲル中での新しい協同的励起として、例えば「ゲルモード」などの形で表すことが妥当である。これは新しい基本的励起として、ソフトマテリアルのように空間的不均一性により成り立つ、複雑でランダムな系の動的性質を基本的に表すことができるものになる。この意味で「ゲルモード」という用語は従来の用法と異なる意味を有している。しかし今般の「ゲルモード」は、単一の指数関数的緩和により特徴づけられる動的レベルの離散型分布といった階層的な動的性質を規定する場合に有用である。
動的階層構造は、初期段階としてのゲル化により形成される架橋点の空間分布により不均一性が生じるため、ゲルの各ブロックについて特徴的となる。この意味で、動的階層構造はゲルの各ブロックに固有のものであり、架橋点のランダムな空間分布の違いとしてランダム構造の中に刻印された「指紋」のようなものである。
以上の結果から、動的階層構造をソフトママテリアルのようなハイドロゲルの「ゲルモード」の分散関係として捉える考えが本願発明によって初めて提案される。これによってハイドロゲルのマクロな機能の物理的起源に関する基本的理解が進められる。

H.動的階層構造の起源
i=1〜3までの動的レベルの物理的起源を挙示するため、PAMPSゲルの架橋度の関数として中心ピークスペクトルを観察した。さらにポリマー溶液の中心ピークスペクトルを観察し、PAMPSゲルの場合と比較した。比較のため、PAMPSゲル中のポリマー鎖濃度を注意深く測定した。溶液の中心ピークスペクトルには少なくとも2段階の階層性があり、その成分は緩和時間τs1である最速のものと、τs2である2番目のものである。それぞれの動的レベルの物理的起源について以下のように考えることができる。

(動的階層構造における第1番目のレベルの緩和の起源)
動的階層構造における第1番目のレベルは、熱ゆらぎの最速の動きに対応しており、1番目の中心ピークの幅Γより得られる最短の緩和時間であるτを有している。図9に示すのは、PAMPSゲルのτとポリマー溶液のτs1の架橋度依存性である。PAMPSゲル濃度とその架橋度の関係は表2に示している。図9に示すように、τとτs1の緩和時間は同じポリマー濃度でいずれも互いに一致する。これらはポリマー濃度の増加に伴い徐々に増加を示す。この結果から示されるのは、ポリマーネットワーク上の架橋点の空間分布により生じる不均一性の存在に対して、PAMPSの第1番目のレベルは感受性がないということである。さらにMultiple Random Telegraph(MRT)モデルによる水クラスタの緩和時間の計算値は、室温でτと同じオーダーであった。これに加えてτの値は、PAMPSゲル中のポリマー鎖上における末端CH基の回転運動の値にも近い。従ってここではPAMPSゲル中のτの起源を、分子レベルの微視的運動として挙示することができる。すなわち、ポリマー鎖に沿った対イオンの運動、区分化されたネットワーク空間中の水分子クラスタ、あるいはこれら因子がカップリングした運動などである。例えばポリマー鎖上のCH基の分子回転運動がそれを取り巻く水のクラスタ運動とカップリングしている場合、これが第1番目のレベルのダイナミクスの物理的起源の候補になる筈である。従って、第1番目のレベルのダイナミクスの物理的起源は、PAMPSゲル中の最速緩和限界として挙示する。

(第2番目のレベルの緩和の起源)
第2番目のレベルダイナミクスの物理的起源を挙示するため、PAMPSゲルのτとポリマー溶液のτs2を濃度の関数として観察した。図10にτとτs2の濃度依存性を示す。図に示すように、PAMPSゲルのτは濃度や架橋度に伴い直線的に増加しているが、対照的にポリマー溶液のτs2の依存性では、3.0重量%付近でステップ状に増加している。このステップ状の増加が生じる濃度で、溶液中のポリマーは相互にもつれ合い始めていると考えられる。従って、溶媒(水)中のポリマーのτs2は低濃度条件下での自由ゆらぎから、空間的に相関したゆらぎへのダイナミクス変化を反映しており、これは溶媒中でのポリマー鎖のもつれ合いにより生じる島が増えるに伴うものである。一方、PAMPSゲルの緩和時間τは、濃度と架橋度に従って直線的に増加している。このことから、第2番目のレベルのダイナミクスの物理的起源は、PAMPS中の架橋ポリマーネットワークの熱ゆらぎに密接に関連していると考えることが妥当である。最小サイズのポリマー鎖の集団運動によって、第2番目のレベルのダイナミクスが形成されると思われる。例えば、ゲル化過程により生じる架橋点の稠密領域の最小の島や架橋分子の集団運動などが考えられる。

(第3番目のレベルおよびそれ以上のレベルの緩和の起源)
第3番目のレベルの物理的起源を挙示するため、図11に示すようにτを架橋度の関数として観察した。低架橋度領域では第3番目の中心ピークの強度が弱すぎるため、最小二乗法によるフィッティングにより信頼のおける結果を得るため利用できるような良い信号対雑音比が得られなかった。架橋度が増加すると、架橋度が7mol%を超える領域では第3番目の中心ピークは増加し、スペクトル解析を行うために十分な強度を示すようになった。第2番目の中心ピークが7%未満の架橋度以下に存在することを考えるならば、低い架橋度状態ではこの第3番目のレベルのダイナミクスに関連する熱ゆらぎが非常に稀であることが理解できる。この結果から第3番目の中心ピークの物理的起源は、空間不均一性の規模が第2番目のレベルより大きい場合のポリマーネットワークの熱ゆらぎであると考えられる。この意味で第3番目のレベル以上の遅いレベルのダイナミクスを観察するためには時間ドメイン検証が妥当であるが、その理由は、この検証では時間ドメインにおいて人工的に熱ゆらぎを励起するためである。実際に時間ドメイン分光法では、τに相当する緩和過程はτとして観察され、この場合図7(a)と7(b)に示すように、低架橋度条件下であっても信号対雑音比は良好である。例えば表2に示すように、τとτの両値はともに良く一致する。これらの緩和時間により、周波数ドメインから時間ドメインへダイナミクスを連続的に把握することができる。
時間ドメイン検証ではさらに3種類の遅いレベルの緩和過程が得られ、これらを連続する緩和時間τ、τ、τとした。これらの階層構造は例えばポリマーネットワーク上の島の集まりなどのような、連続する比較的大きなスケールの不均一性により生じると考えられる。

I.実施例の結果
以上の実施例においては、PAMPSゲルの熱ゆらぎのダイナミクスを、時間と周波数の各ドメインについて複合光散乱法を用いて、10〜1013Hzという広いダイナミックレンジにわたり周波数と時間の両ドメインについて検討している。また、広範囲の高解像度光散乱法と、衝撃誘起熱散乱という2種類の分光法を相補的に組み合わせることにより、ランダムな不均一系の動的構造を観察するにふさわしい独自のシステムが提示されている。この方法をPAMPSゲルに適用することによって緩和時間が6段階に階層分布することが判明し、そこから熱ゆらぎのダイナミクスにおける階層構造が示された。この階層構造の起源は、PAMPSゲル中のポリマーネットワークの空間的不均一性に特徴的な熱ゆらぎである。この結果から「ゲルモード」の分散関係が示され、これをPAMPSゲルの指紋のように、ランダム・不均一系をそれぞれ区別するために利用することが可能である。
緩和ダイナミクスの6段階のうち3段階は、架橋度に依存する緩和時間を観察し、溶液の緩和時間を比較することによって特定される。最短の第1番目のレベルのτに対応する最速のゆらぎは、ポリマー鎖の側面基が水の動的五量体クラスタにカップリングするなどといったミクロな起源に由来している。第2番目のレベルのτはPAMPSゲル中の不均一構造の揺動運動に帰着されるが、その理由はこれが架橋度に対して独立しているためである。第3番目のレベルのτも架橋度に対する独立性が観察されるため、やはり空間的不均一性に帰着する。第4番目のレベル以上のレベルは、PAMPSゲル中のポリマーネットワークの不均一性による比較的大規模な運動に連続的に対応している。
本願発明による動的階層構造の解析装置を模式的に示した概念図である。 本願発明による動的階層構造の解析装置の機能ブロック図である。 周波数ドメインのI(ν,)観察に用いた光散乱の実験装置構成を示す図である。 励起された熱ゆらぎの時間依存性を観察するために使用した実験装置構成を示す図である。 2mol%、13mol%で架橋したPAMPSゲルの光散乱スペクトルと水のスペクトルを示す図である。 3段階の階層の場合について、フィッティング手順を模式的に示す図である。 図4に示す測定装置においてピコ秒レーザーパルスにより人工的に励起されたゆらぎによる、散乱光の強度I(t,)の時間依存性を示す図である。 動的感受率関数χ(ν,)の虚数部分の全体について、周波数を対数目盛として示す図である。 PAMPSゲルのτとポリマー溶液のτs1の架橋度依存性を示す図である。 緩和時間τとτs2の架橋度依存性を示す図である。 緩和時間τを架橋度の関数として示す図である。
符号の説明
10 処理装置
11 入力部
12 処理部
13 出力部
14 記憶部
15 メモリ
16 バス

Claims (8)

  1. 可視光による光散乱分光法と時間分解分光法との併用によって不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトルをそれぞれ観測し、得られたスペクトルデータに対して、不均一複雑系物質の静電動的感受率における全体の緩和過程は動的階層に対応する複数の緩和過程の重ね合わせよりなり且つ各緩和過程はそれぞれ特徴的な緩和時間を有するとともに各緩和過程はそれぞれ単一の指数関数により表すことができるというモデルを適用し、各緩和過程が有する緩和時間を求めることにより、不均一複雑系物質の動的階層構造を静電動的感受率の振動数依存性として解析することを特徴とする動的階層構造の解析方法。
  2. 1Hz〜1013Hzに及ぶ広帯域でスペクトルを観測することを特徴とする請求項1の解析方法。
  3. 不均一複雑系物質に吸収端を持たない可視レーザー光をプローブとすることを特徴とする請求項1の解析方法。
  4. 光散乱分光と時間分解分光との併用は、高分解能光散乱分光法とパルス誘起熱散乱分光法とにより行うことを特徴とする請求項1の解析方法。
  5. 処理部が、可視光による光散乱分光法による不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データの入力を受け付ける手順、
    前記処理部が、可視光による時間分解分光法による不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データの入力を受け付ける手順、
    前記処理部が、入力された前記光散乱分光法による不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データに対し、不均一複雑系物質の静電動的感受率における全体の緩和過程は動的階層に対応する複数の緩和過程の重ね合わせよりなり且つ各緩和過程はそれぞれ特徴的な緩和時間を有するとともに各緩和過程はそれぞれ単一の指数関数により表すことができるというモデルを適用して、第1の周波数帯域にわたって各緩和過程が有する緩和時間を求める手順、
    前記処理部が、入力された前記時間分解分光法による不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データに対し、前記モデルを適用して、第2の周波数帯域にわたって各緩和過程が有する緩和時間を求める手順、
    前記処理部が、第1の周波数帯域にわたって求めた各緩和過程が有する緩和時間と第1の周波数帯域にわたって求めた各緩和過程が有する緩和時間とを組み合わせて、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域を合わせた周波数帯域における各緩和時間を求める手順、および
    求めた第1の周波数帯域と第2の周波数帯域を合わせた周波数帯域における各緩和時間のデータに基づき不均一複雑系物質の動的階層構造を静電動的感受率の振動数依存性として解析する手順
    を備えることを特徴とする動的階層構造の解析方法。
  6. 請求項5の各手順をコンピュータで実行させる解析プログラム。
  7. 請求項6の解析プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
  8. 可視光による光散乱分光法により不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトルを観測する第1の分光装置、
    可視光による時間分解分光法により不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトルを観測する第2の分光装置、
    第1の分光装置から不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データを受け取り、そのスペクトル観測データに対し、不均一複雑系物質の静電動的感受率における全体の緩和過程は動的階層に対応する複数の緩和過程の重ね合わせよりなり且つ各緩和過程はそれぞれ特徴的な緩和時間を有するとともに各緩和過程はそれぞれ単一の指数関数により表すことができるというモデルを適用して、第1の周波数帯域にわたって各緩和過程が有する緩和時間を求める第1の手段、第2の分光装置から不均一複雑系物質の熱ゆらぎのスペクトル観測データを受け取り、そのスペクトル観測データに対し、前記モデルを適用して、第2の周波数帯域にわたって各緩和過程が有する緩和時間を求める第2の手段、ならびに、第1の手段および第2の手段からのデータを受け取り、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域を合わせた周波数帯域における各緩和時間を求め、不均一複雑系物質の動的階層構造を静電動的感受率の振動数依存性として解析する第3の手段を有する処理装置を備えることを特徴とする動的階層構造の解析装置。
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