JP4590526B2 - 双極性障害検査方法及び検査薬 - Google Patents

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本発明は、双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因を含有するか否かを検査する方法及びこの方法に用いる検査薬に関する。
双極性障害は躁と鬱の異常な気分状態の間の変動によって特徴づけられる主要な精神疾患である。健康な人間であれば、誰でも喜怒哀楽といった感情を持ち合わせている。しかし、この気分が変調をきたし、日常生活に支障がでてきたり、病的になった場合を気分障害または感情障害という。気分障害の特徴は抑うつまたは上機嫌といった感情が持続することであり、重症な症例では精神病的特徴を伴う。米国精神医学会精神障害の診断・統計マニュアル(DSM-IV)では、気分障害は双極性障害とうつ病性障害(単極性障害)に分類されている。双極性障害は、躁状態と鬱状態の時期がある気分障害であり、入院が必要なほどの強い躁状態を双極I型障害、躁状態が軽度である場合を双極II型障害、躁もうつも軽度だが、2年以上続いている場合を気分循環性障害と分類している。
米国精神医学会精神障害の診断・統計マニュアル(DSM-IV) Edenberg HJ, Foroud T, Conneally PM, Sorbel JJ, Carr K, Crose C, Willig C, Zhao J, Miller M, Bowman E, Mayeda A, Rau NL, Smiley C, Rice JP, Goate A, Reich T, Stine OC, McMahon F, DePaulo JR, Meyers D, Detera-Wadleigh SD, Goldin LR, Gershon ES, Blehar MC, Nurnberger JI, Jr.: Initial genomic scan of the NIMH genetics initiative bipolar pedigrees: chromosomes 3, 5, 15, 16, 17, and 22. Am J Med Genet 1997; 74:238-246. Detera-Wadleigh SD, Badner JA, Berrettini WH, Yoshikawa T, Goldin LR, Turner G, Rollins DY, Moses T, Sanders AR, Karkera JD, Esterling LE, Zeng J, Ferraro TN, Guroff JJ, Kazuba D, Maxwell ME, Nurnberger JI, Jr., Gershon ES: A high-density genome scan detects evidence for a bipolar-disorder susceptibility locus on 13q32 and other potential loci on 1q32 and 18p11.2. Proc Natl Acad Sci U S A 1999; 96:5604-5609. Turecki G, Grof P, Grof E, D'Souza V, Lebuis L, Marineau C, Cavazzoni P, Duffy A, Betard C, Zvolsky P, Robertson C, Brewer C, Hudson TJ, Rouleau GA, Alda M: Mapping susceptibility genes for bipolar disorder: a pharmacogenetic approach based on excellent response to lithium. Mol Psychiatry 2001; 6:570-578. Kelsoe JR, Spence MA, Loetscher E, Foguet M, Sadovnick AD, Remick RA, Flodman P, Khristich J, Mroczkowski-Parker Z, Brown JL, Masser D, Ungerleider S, Rapaport MH, Wishart WL, Luebbert H: A genome survey indicates a possible susceptibility locus for bipolar disorder on chromosome 22. Proc Natl Acad Sci U S A 2001; 98:585-590. Epub 2001 Jan 2009. Badenhop RF, Moses MJ, Scimone A, Mitchell PB, Ewen-White KR, Rosso A, Donald JA, Adams LJ, Schofield PR: A genome screen of 13 bipolar affective disorder pedigrees provides evidence for susceptibility loci on chromosome 3 as well as chromosomes 9, 13 and 19. Mol Psychiatry 2002; 7:851-859. Badner JA, Gershon ES: Meta-analysis of whole-genome linkage scans of bipolar disorder and schizophrenia. Mol Psychiatry 2002; 7:405-411. Fioretos T, Voncken JW, Baram TZ, Kamme F, Groffen J, Heisterkamp N: Regional localization and developmental expression of the BCR gene in rodent brain. Cell Mol Biol Res 1995; 41:97-102. Negishi M, Katoh H: Rho family GTPases as key regulators for neuronal network formation. J Biochem (Tokyo) 2002; 132:157-166. Etienne-Manneville S, Hall A: Rho GTPases in cell biology. Nature 2002; 420:629-635. Hashimoto R, Yoshida M, Ozaki N, Yamanouchi Y, Iwata N, Suzuki T, Kitajima T, Tatsumi M, Kamijima K, Kunugi H: Association analysis of the -308G > A promoter polymorphism of the tumor necrosis factor alpha (TNF-alpha) gene in Japanese patients with schizophrenia. J Neural Transm 2004; 111:217-221. Hashimoto R, Straub RE, Weickert CS, Hyde TM, Kleinman JE, Weinberger DR: Expression Analysis of Neuregulin-1 in the Dorsolateral Prefrontal Cortex in Schizophrenia. Mol Psychiatry 2004; 9:299-307 Good P: Permutation tests. A practical guide to resampling methods for testing hypothesis. New York, Springer-Verlag, 2000 Vieta E, Gasto C, Otero A, Nieto E, Vallejo J: Differential features between bipolar I and bipolar II disorder. Compr Psychiatry 1997; 38:98-101. Detera-Wadleigh SD, Badner JA, Berrettini WH, Yoshikawa T, Goldin LR, Turner G, Rollins DY, Moses T, Sanders AR, Karkera JD, Esterling LE, Zeng J, Ferraro TN, Guroff JJ, Kazuba D, Maxwell ME, Nurnberger JI, Jr., Gershon ES: A high-density genome scan detects evidence for a bipolar-disorder susceptibility locus on 13q32 and other potential loci on 1q32 and 18p11.2. Proc Natl Acad Sci U S A 1999; 96:5604-5609.
双極性障害は、人口の1〜2%が発症すると考えられており、社会生活上、重大な障害をもたらす。近年、自殺者は年間3万人にのぼり、男性では死亡原因の第6位、女性では第8位と上位を占める。自殺者の大多数は、双極性障害または単極性うつ病に罹患している。従って、双極性障害の予防及び治療は、自殺予防に直結する保険衛生上極めて重要な問題である。しかし、これまでの双極性障害の診断は、精神科医が患者の症状に基づいて行われ、科学的手法を用いたより厳密な診断方法は確立されていないのが現状である。
そこで、本発明の目的は、双極性障害の発病のしやすさを容易に検査できる方法及び検査薬を提供することにある。
ところで、ブレイクポイントクラスターリージョン(BCR)遺伝子は、双極性障害の連鎖研究およびメタ分析で最もよく再現されている感受性遺伝子座のひとつである第22染色体長腕に位置する (非特許文献2−7)。双極性障害に関するすべての公開されたゲノムスキャンの最近のメタ分析は、感受性遺伝子座の最も強い証拠が22qと13qにあることを示した(p<0.00001)。BCR遺伝子は海馬錐体細胞層と歯状回で高度に発現しているRhoGTPase活性化タンパク質(GAP)をコードする (非特許文献8)。GTP結合タンパク質のRhoファミリーは、たとえば成長円錐および神経突起の形成のような神経ネットワークの発達の主要な調節因子として作用する (非特許文献9)。これらのタンパク質は、活性なGTP結合型と不活性なGDP結合型の間を循環する。GTP結合型の活性化はGAPによって調節され、GAPはGTP加水分解を促し不活性化に繋がる (非特許文献10)。
したがって、BCR遺伝子の遺伝的変動は双極性障害のリスク評価において相当に興味深い。しかし本発明者らの知る限り、BCR遺伝子と双極性障害の間の関連の可能性を検討した研究報告は無い。
BCR遺伝子(OMIM:151410)はエクソン23個とイントロン22個から構成され、135Kbの範囲にわたるものである。本発明者らは、BCR遺伝子における多型をin silicoで検索し、コドン796番のアスパラギンがセリンになるアミノ酸変化(N796S;NCBIProteinID:NP_004318)を生じるエクソン11の一般的な一塩基置換(A2387G;NCBISNPID:rs140504)を含む5種類の一塩基多型(SNPs)を選択し、双極性障害症例と比較対照について、BCR遺伝子のSNPとの関連解析を行い、その結果、BCR遺伝子におけるSNPを解析することにより双極性障害の発病のしやすさを容易に検査できることを見いだして本発明を完成した。
上記課題を解決するための本発明は以下のとおりである。
[請求項1]被検体に含まれる、ブレイクポイントクラスターリージョン遺伝子の機能領域にあるアミノ酸置換を引き起こす一塩基多型を検出すること、及び
検出した一塩基多型を含むアレルが出現頻度の低いアレル(以下、マイナーアレルという)であるか否かを検討することを含む、
前記被検体が、双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因を含有するか否かを検査する方法。
[請求項2]前記一塩基多型が
配列表の配列番号2に記載のSNP2におけるTとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
からなり、
上記一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体であることに基づいて、双極性障害の発病のしやすさを判断する
請求項 1に記載の方法。
[請求項3]前記一塩基多型が
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
からなり、
上記一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体またはヘテロ接合体であることに基づいて、双極性障害の発病のしやすさを判断する
請求項 1に記載の方法。
[請求項4]前記一塩基多型が
配列表の配列番号1に記載のSNP1におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
配列表の配列番号2に記載のSNP2におけるTとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号3に記載のSNP3 におけるCとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
からなり、
上記一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体であることに基づいて、II型双極性障害の発病のしやすさを判断する
請求項 1に記載の方法。
[請求項5]前記一塩基多型が
配列表の配列番号1に記載のSNP1におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
配列表の配列番号2に記載のSNP2におけるTとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
からなり、
上記一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体またはヘテロ接合体であることに基づいて、II型双極性障害の発病のしやすさを判断する
請求項 1に記載の方法。
[請求項6]前記一塩基多型が
配列表の配列番号1に記載のSNP1におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
配列表の配列番号2に記載のSNP2におけるTとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号3に記載のSNP3 におけるCとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
からなり、
上記アレル群のすべてのアレルがマイナーアレルであるハプロタイプ(GAAGG)または
SNP1及びSNP2含むアレルがマイナーアレルであり、かつSNP3、SNP4及びSNP5含むアレルが出現頻度の高いアレル(以下、メジャーアレルという)であるハプロタイプ(GACAA)であることに基づいて、II型双極性障害の発病のしやすさを判断する
請求項 1に記載の方法。
[請求項7]前記被検体が、被験者から採取した血液であり、かつ前記一塩基多型の検出をSNPタイピングにより行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[請求項8]被験者が日本人である請求項7に記載の方法。
[請求項9]一塩基多型部分がAである配列表の配列番号1に記載のSNP1で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP1の一塩基多型部分であるAを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、及び
一塩基多型部分がGである配列表の配列番号1に記載のSNP1で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP1の一塩基多型部分であるGを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、
の少なくとも1つを含む
双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因の検査に用いる検査薬。
[請求項10]一塩基多型部分がTである配列表の配列番号2に記載のSNP2で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP2の一塩基多型部分であるTを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、及び
一塩基多型部分がAである配列表の配列番号2に記載のSNP2で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP2の一塩基多型部分であるAを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、
の少なくとも1つを含む
双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因の検査に用いる検査薬。
[請求項11]一塩基多型部分がCである配列表の配列番号3に記載のSNP3で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP3の一塩基多型部分であるCを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、及び
一塩基多型部分がAである配列表の配列番号2に記載のSNP2で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP2の一塩基多型部分であるAを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、
の少なくとも1つを含む
双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因の検査に用いる検査薬。
[請求項12]一塩基多型部分がAである配列表の配列番号4に記載のSNP4で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP4の一塩基多型部分であるAを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、及び
一塩基多型部分がGである配列表の配列番号4に記載のSNP4で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP4の一塩基多型部分であるGを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、
の少なくとも1つを含む
双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因の検査に用いる検査薬。
[請求項13]一塩基多型部分がAである配列表の配列番号5に記載のSNP5で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP5の一塩基多型部分であるAを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、及び
一塩基多型部分がGである配列表の配列番号5に記載のSNP5で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP5の一塩基多型部分であるGを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、
の少なくとも1つを含む
双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因の検査に用いる検査薬。
[請求項14]前記DNAは、少なくとも1つの蛍光標識を有する請求項9〜13のいずれか1項に記載の検査薬。
[請求項15]前記DNAは、ブレイクポイントクラスターリージョン遺伝子の機能領域にあるアミノ酸置換を引き起こす一塩基多型を検出するためのプローブとして用いられる請求項9〜14のいずれか1項に記載の検査薬。
本発明によれば、双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因を検査することができる。
本発明は、被検体が、双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因を含有するか否かを検査する方法である。本発明の方法においては、被検体に含まれる、ブレイクポイントクラスターリージョン遺伝子の機能領域にあるアミノ酸置換を引き起こす一塩基多型を検出すること、及び検出した一塩基多型を含むアレルが出現頻度の低いアレル(マイナーアレル)であるか否かを検討することを含む。
ブレイクポイントクラスターリージョン(BCR)遺伝子は、前述のように、双極性障害の連鎖研究およびメタ分析で最もよく再現されている感受性遺伝子座のひとつである22q11に存在する。本発明においては、このBCR遺伝子の機能領域にあるアミノ酸置換を引き起こす一塩基多型を検出する。前記被検体は、例えば、被験者から採取した血液であることができる。但し、被検体は、BCR遺伝子を採取できる限り、血液以外の被験者の組織等であってもよい。BCR遺伝子中に存在する一塩基多型の検出は、一塩基多型部分の塩基配列を決定することによって行うことができる。一塩基多型部分の塩基配列の決定には、例えば、TaqMAN法、ダイレクトシークエンス法、PCR-制限酵素切断断片長多型による方法、MALDI-TOF/MSによるSNPタイピング法、DNAチップを用いた方法などがある。
本発明においては、BCR遺伝子の機能領域にある上記一塩基多型として、
配列表の配列番号1に記載のSNP1におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
配列表の配列番号2に記載のSNP2におけるTとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号3に記載のSNP3 におけるCとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
の少なくとも1つを利用する。
より具体的には、いくつかの態様がある。
第1の態様は、前記一塩基多型が
配列表の配列番号2に記載のSNP2におけるTとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
からなり、
上記一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体であることに基づいて、双極性障害の発病のしやすさを判断する方法である。
本発明において、「双極性障害」は、I型双極性障害及びII型双極性障害を含むものである。双極性障害は、前述のように、躁状態と鬱状態の時期がある気分障害であり、I型双極性障害は、入院が必要なほどの強い躁状態をいい、II型双極性障害は、躁状態が軽度である場合を言う。
第2の態様は、前記一塩基多型が
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
からなり、
上記一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体またはヘテロ接合体であることに基づいて、双極性障害の発病のしやすさを判断する方法である。
第3の態様は、前記一塩基多型が
配列表の配列番号1に記載のSNP1におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
配列表の配列番号2に記載のSNP2におけるTとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号3に記載のSNP3 におけるCとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
からなり、
上記一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体であることに基づいて、II型双極性障害の発病のしやすさを判断する方法である。
第4の態様は、前記一塩基多型が
配列表の配列番号1に記載のSNP1におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
配列表の配列番号2に記載のSNP2におけるTとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
からなり、
上記一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体またはヘテロ接合体(マイナーアレルとメジャーアレルの接合体)であることに基づいて、II型双極性障害の発病のしやすさを判断する方法である。
第5の態様は、前記一塩基多型が
配列表の配列番号1に記載のSNP1におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
配列表の配列番号2に記載のSNP2におけるTとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号3に記載のSNP3 におけるCとA (Aがマイナーアレル)、
配列表の配列番号4に記載のSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
配列表の配列番号5に記載のSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
からなり、
上記アレル群のすべてのアレルがマイナーアレルであるハプロタイプ(GAAGG)または
SNP1及びSNP2含むアレルがマイナーアレルであり、かつSNP3、SNP4及びSNP5含むアレルが出現頻度の高いアレル(メジャーアレル)であるハプロタイプ(GACAA)であることに基づいて、II型双極性障害の発病のしやすさを判断する方法である。
第1〜4の態様は、後述する表2に記載の結果に基づいて行われる方法である。表2は、双極性障害患者と対照群におけるBCR遺伝子の機能領域内の一塩基多型SNP1〜5のジェノタイプ分布を示す。表中、BPは双極性障害を表し、BPIIはII型双極性障害を表す。表2には、さらに、BPにおける1/1,1/2 vs 2/2及び1/1 vs 1/2,2/2についてのp値、並びにBPIIにおける1/1,1/2 vs 2/2及び1/1 vs 1/2,2/2についてのp値を示す。いずれも、p<0.05が統計学上有意である。
BPにおける1/1,1/2 vs 2/2については、p値が<0.05であるのはSNP2、SNP 4及び SNP 5である。従って、この結果に基づいて、これら一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体(2/2)であることに基づいて、双極性障害の発病のしやすさを判断することができる。これが、上記第1の態様である。
BPにおける1/1 vs 1/2,2/2については、p値が<0.05であるのはSNP 4及び SNP 5である。従って、この結果に基づいて、これら一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体(2/2) またはヘテロ接合体(1/2)であることに基づいて、双極性障害の発病のしやすさを判断することができる。これが、上記第2の態様である。
BPIIにおける1/1,1/2 vs 2/2については、SNP1〜5のすべてのSNPにおいてp値が<0.05である。従って、この結果に基づいて、これら一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体(2/2)であることに基づいて、II型双極性障害の発病のしやすさを判断することができる。これが、上記第3の態様である。
BPIIにおける1/1 vs 1/2,2/2については、SNP1、2、4、5においてp値が<0.05である。従って、この結果に基づいて、これら一塩基多型を含むアレルの群の少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体(2/2) またはヘテロ接合体(1/2)であることに基づいて、II型双極性障害の発病のしやすさを判断することができる。これが、上記第4の態様である。
上記第1及び第3の態様では、少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体(2/2) であることに基づいて、双極性障害またはII型双極性障害の発病のしやすさを判断するが、より好ましくは2つ以上のアレルがマイナーアレルのホモ接合体(2/2) であることに基づいて、双極性障害またはII型双極性障害の発病のしやすさを判断する。2つ以上のアレルの情報に基づくことで、判断の確度を高めることができる。一般に、判断の基礎とするアレルの数が多くなればそれだけ、判断の確度を高めることができる。
同様に、上記第2及び第4の態様では、少なくとも1つのアレルがマイナーアレルのホモ接合体(2/2) またはヘテロ接合体(1/2) であることに基づいて、双極性障害またはII型双極性障害の発病のしやすさを判断するが、より好ましくは2つ以上のアレルがマイナーアレルのホモ接合体(2/2) またはヘテロ接合体(1/2)であることに基づいて、双極性障害またはII型双極性障害の発病のしやすさを判断する。2つ以上のアレルの情報に基づくことで、判断の確度を高めることができる。一般に、判断の基礎とするアレルの数が多くなればそれだけ、判断の確度を高めることができる。
上記第5の態様は、後述する表4に記載の結果に基づいて行われる方法である。表4は、双極性障害患者と対照群におけるSNP1〜5のハプロタイプ頻度及びp値を示す。p<0.05が統計学上有意である。この結果において、p値が<0.05であるハプロタイプは、表4中の1、4及び7である。ハプロタイプ1は、SNP1〜5のアレルの群のすべてのアレルが出現頻度の高いアレル(メジャーアレル)であるハプロタイプ(ATCAA)である。ハプロタイプ4は、SNP1〜5のアレル群のすべてのアレルがマイナーアレルであるハプロタイプ(GAAGG)である。ハプロタイプ7は、SNP1及びSNP2のアレルがマイナーアレルであり、かつSNP3、SNP4及びSNP5のアレルがメジャーアレルであるハプロタイプ(GACAA)である。第5の態様では、SNP1〜5のハプロタイプが、上記ハプロタイプ4及び7のいずれかであることに基づいて、II型双極性障害の発病のしやすさを判断する。
上記表2及び4に示す結果は、いずれも双極性障害患者及び対照群が日本人であることから、本発明の方法における被験者は日本人であることが好ましい。
本発明は、双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因の検査する用いる検査薬を包含する。
本発明の検査薬の第1の態様は、
一塩基多型部分がAである配列表の配列番号1に記載のSNP1で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP1の一塩基多型部分であるAを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、及び
一塩基多型部分がGである配列表の配列番号1に記載のSNP1で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP1の一塩基多型部分であるGを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、
の少なくとも1つを含む。
本発明の検査薬の第2の態様は、
一塩基多型部分がTである配列表の配列番号2に記載のSNP2で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP2の一塩基多型部分であるTを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、及び
一塩基多型部分がAである配列表の配列番号2に記載のSNP2で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP2の一塩基多型部分であるAを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、
の少なくとも1つを含む。
本発明の検査薬の第3の態様は、
一塩基多型部分がCである配列表の配列番号3に記載のSNP3で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP3の一塩基多型部分であるCを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、及び
一塩基多型部分がAである配列表の配列番号2に記載のSNP2で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP2の一塩基多型部分であるAを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、
の少なくとも1つを含む。
本発明の検査薬の第4の態様は、
一塩基多型部分がAである配列表の配列番号4に記載のSNP4で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP4の一塩基多型部分であるAを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、及び
一塩基多型部分がGである配列表の配列番号4に記載のSNP4で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP4の一塩基多型部分であるGを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、
の少なくとも1つを含む。
本発明の検査薬の第5の態様は、
一塩基多型部分がAである配列表の配列番号5に記載のSNP5で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP5の一塩基多型部分であるAを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、及び
一塩基多型部分がGである配列表の配列番号5に記載のSNP5で表される塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、または該塩基配列の一部の塩基配列を有し、かつSNP5の一塩基多型部分であるGを含む塩基配列若しくは該塩基配列に相補的な配列を有するDNA、
の少なくとも1つを含む。
上記本発明の検査薬に含有されるDNAは、各SNPのアレルがマイナーアレルかメジャーアレルであるかを検査するために用いるプローブとして用いることができ、少なくとも1つの蛍光標識を有することが、蛍光の発光を利用して、検査を行うことができることから好ましい。
上記DNAは、少なくとも1つの蛍光標識を有するものであることができ、かつブレイクポイントクラスターリージョン遺伝子の機能領域にあるアミノ酸置換を引き起こす一塩基多型を検出するためのプローブとして用いられる。例えば、DNAの5'側にFluorophoreとしてFAM,HEX,TET,またはFITCを標識し,3'側にQuencherとしてTAMRA,またはDabcylを標識したものであることができる。但し、3'側がTAMRA標識の場合、3'末端にはリン酸を付加する。このようなプローブは、例えば、リアルタイムPCR用ハイブリダイゼーションプローブ(Taqmanプローブ、ABI PRISM用マルチカラー蛍光標識プライマー)として利用できる。プローブとして用いるという観点からは、DNAの塩基数等は適宜決定できるが、DNAの塩基数は、例えば、10〜25の範囲であることができる。
本発明の方法を実施する場合、このようなプローブをSNPのそれぞれのアレルに対して異なる蛍光標識を用いて作成する。上記蛍光標識プローブは、公知の方法で合成でき、例えば、Taqmanプローブを提供している企業の合成サービスを利用して、合成することもできる。作成した一組のプローブと通常のPCRに用いるフォワードとリバースのプライマーを組み合わせてPCR反応を行う。PCR反応が進むと、プローブが破壊され、蛍光標識とQuencherが離れることにより、蛍光を発し、それぞれのアレルの蛍光を検出することができる。尚、プローブとプライマーによって挟まれた領域の塩基数は、例えば、50〜150の範囲とすることが適当である。
方法
被験者
被験者は双極性障害の患者177名(男性68名と女性109名、平均年齢50.3歳[SD15.0]、I型双極性障害108名とII型双極性障害69名、発症年齢平均:39.0歳[SD15.0])および健常者対照361名(男性175名と女性186名、平均年齢40.1歳[SD12.0])であった。すべての被験者は生物学的に無関係な日本人であった。訓練を受けた精神科医少なくとも2名がDSM-IV診断基準に従い、問診、医療記録および他の研究評価を含むすべての入手可能な情報に基づいて、各患者について共通基準による診断を行った。対照は現在または過去に精神科を受診したことのない健常者であった。重大な医療上の問題、頭部外傷、神経外科手術、およびアルコールまたは薬物乱用の経歴がある人は除外した。研究の説明後、各被験者から書面によりインフォームド・コンセントを得た。試験プロトコルは施設内倫理委員会から承認を受けた。(SDは標準偏差である。)
SNP遺伝子型分析
被験者から静脈血を採取し、標準手順に従って全血からゲノムDNAを抽出した。以前に報告したTaqMan5'-エキソヌクレアーゼアレル識別分析を用いて (非特許文献11、12)、BCR遺伝子中の5種類のSNP(SNP1:rs2267012、SNP2:rs2267015、SNP3:rs2267020、SNP4:rs140504、SNP5:rs131690)を遺伝子型分析した。要約すると、SNPの検出用のプライマーおよびプローブは下記の通りであった。
SNP1:
フォワード(順方向)プライマー5'-GCATTTTGCAGAATGTCTTCTCTCA-3'、
リバース(逆方向)プライマー5'-ACACTCAGCTAAGAGGGTTCCT-3'、
プローブ1: 5'-VIC-CCCTGTGAAGGAGTG-MGB-3'、
プローブ2: 5'-FAM-CCTGTGGAGGAGTG-MGB-3'
SNP2:
フォワードプライマー5'-CCACCCTAGGGCATTTTCCT-3'、
リバースプライマー5'-CCAGCTTTCCACTGTTATGAATACAATG-3'、
プローブ1: 5'-VIC-CCCCTTTTCTTTTATGGTAG-MGB-3'、
プローブ2: 5'-FAM-CCCCTTTTCTTTTTTGGTAG-MGB-3'
SNP3:
フォワードプライマー5'-CTCGGTGTTGACTTGACCTTACA-3'、
リバースプライマー5'-GGTGGAGCACCTTTTATCTGAGT-3'、
プローブ1 5'-VIC-CTTTCCGAGCCCATG-MGB-3'、
プローブ2 5'-TTTCCGCGCCCATG-MGB-3'
SNP4:
フォワードプライマー5'-AGCTGGACGCTTTGAAGATCA-3'、
リバースプライマー5'-TGGTGTGCACCTTCTCTCTCT-3'、
プローブ1 5'-VIC-CCAGATCAAGAATGACAT-MGB-3'、
プローブ2 5'-FAM-CCAGATCAAGAGTGACAT-MGB-3'
SNP5:
フォワードプライマー5'-CCTGCCTGCCCAGTCC-3'、
リバースプライマー5'-CCCTGGGTTGCAAGGTCTT-3'、
プローブ1: 5'-VIC-CAGGCATATTCCTCA-MGB-3'、
プローブ2: 5'-FAM-CAGGCATGTTCCTCA-MGB-3'。
PCRサイクル反応条件は下記の通り:95℃にて10分間、92℃15秒および60℃1分のサイクルを45回。
統計分析
関連研究の統計分析はSNPAlyseソフトウェア(DYNACOM、横浜)を用いて実施した。Hardy-Weinberg平衡の存在は、χ2検定を用いて適合度について検討した。患者と比較対照との間のアレル分布はχ2検定によって独立性について分析した。D'およびr2で示す、連鎖不平衡(LD)の程度は、ハプロタイプ頻度から期待値最大化アルゴリズムを用いて計算した。順列法によって症例−対照のハプロタイプ分析を実施し、実験的有意度を得た (非特許文献13)。すべてのハプロタイプの観察頻度対予測頻度を合わせて考慮した場合、χ2検定を用いて、全体のp値は全体の有意度を表す。各個人のハプロタイプは、他のすべてを一群としてdf(自由度)1のχ2検定を適用し、関連について検定した。P値は10,000回試行に基づいて計算した。報告したすべてのp値は両側である。統計的有意性はp<0.05で定義した。結果を保守的にするために、分析したSNPおよびハプロタイプの数といった多重比較のために、SNPはLDにあったが、Bonferroni補正を適用した。
結果
5つのSNPすべての遺伝子型分布は、対照と双極性障害患者の両方についてHardy-Weinberg平衡にあった(データ記載せず)。患者と対照における5つのSNPのアレル頻度およびSNP間の距離(20-30kb)を表1に示す。対照と比較した場合、本発明者らの双極性障害患者全体において、SNP4およびSNP5のGアレルが多かったが(SNP4:χ2=7.48、df=1、p=0.0062;補正p=0.031、SNP5:χ2=8.39、df=1、p=0.0038;補正p=0.019)、双極性障害患者全体について他の3つのSNPの有意な関連は観察されなかった(表1)。I型双極性障害患者とII型双極性障害患者を別々に検討した場合、II型双極性障害患者と対照との間には5つすべてのSNPについてアレル頻度に有意差があった一方、I型双極性障害患者と対照との間にはどのSNPについてもそのような差は無かった(表1)。尚、表1にはメジャーアレルの頻度を示す。
Figure 0004590526
次いで本発明者らはBCR遺伝子中のSNPとII型双極性障害との間の関連に注目した。5つのSNPのマイナーアレルキャリアの頻度を主要アレルホモ接合体と比較した場合、5つのSNPのうち4つ(SNP1、SNP2、SNP4、SNP5)はII型双極性障害と有意に関連していた(表2)。最小のp値はSNP4のN796Sミスセンス多型で得られた。S796アレルは対照と比較してII型双極性障害患者で有意に頻度が高かった(χ2=7.92、df=1、p=0.0049;補正p=0.025、オッズ比=3.07、95%信頼区間1.51〜10.97)。尚、表2において、各SNP中のメジャーアレルがアレル1である。
Figure 0004590526
日本人人口におけるハプロタイプ構造をさらに解析するため、本発明者らはD'およびr2を用いてSNP間のLDを計算した(表3)。隣接SNPとのD'およびr2値はそれぞれ0.5〜1.0の間および0.1〜0.7の間の範囲にわたり、LDマーカー間の中間LDを強く示唆した。このように、本発明者らはその5つのSNPから成るハプロタイプ分析を実施した。対照およびII型双極性障害患者における推定ハプロタイプ頻度およびハプロタイプに対応する個別のp値を表4に示す。9つのハプロタイプが対照集団中に存在するすべてのハプロタイプ変異の>90%に相当した。最小のp値はGAAGGハプロタイプの頻度差について得られ、それは対照では9.4%の頻度で存在し、患者では20.8%であったが(p=0.001;補正p=0.009)、全体の分布における差は統計的有意には達しなかった(p=0.08)。
Figure 0004590526
Figure 0004590526
本発明者らは日本人集団においてBCR遺伝子の遺伝的変異と双極性障害との間に有意な関連を見出した。本発明者らのデータは、BCR遺伝子はI型双極性障害でなくII型双極性障害と関連していることを示唆する。II型双極性障害の診断分類は、I型双極性障害と比較して重度の陽性躁症状が少ないと定義される。II型双極性障害患者はより多くの以前の発症を有する傾向があり、それには鬱および軽躁の両方を含むが入院および精神病性症状はより少ない(非特許文献14)。ある研究は双極性障害は量的形質である可能性が高いことを示した一方、別の研究はII型双極性障害はI型双極性障害とは遺伝的に異なる可能性があると論じている (非特許文献15)。
本発明者らのデータは、本発明者らのサンプル中にGAAGGおよびGACAAによって定義される2つのリスクハプロタイプ、いくつかの中立ハプロタイプ、および1つの保護的ハプロタイプ(ATCAA)の存在を示唆する。遺伝的変異がBCR機能/発現にどのように影響するかは興味深い。本発明者らのハプロタイプ中のSNPのいずれかが機能性であるかどうかの証拠は無いが、双極性障害と関連したSNP4は、BCRタンパク質の機能ドメインであるプレクストリンホモロジー(PH)ドメイン中のN796Sアミノ酸置換を生じるため、機能性である可能性がある。本発明者らの研究ではS796アレルキャリヤである個人はII型双極性障害患者中で最も有意に多かったため(p=0.0049、オッズ比=3.07)、このSNPは双極性障害に対する感受性を説明しうる。あるいは、このSNPおよび/またはハプロタイプとLDにある未知の機能性多型が、II型双極性障害に対する生物学的感受性を担っている可能性がある。
本発明は、双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因を検査方法及び診断薬の分野に有用である。

Claims (4)

  1. 被検体に含まれる、ブレイクポイントクラスターリージョン遺伝子の機能領域にあるアミノ酸置換を引き起こす一塩基多型を検出すること、及び
    検出した一塩基多型を含むアレルが出現頻度の低いアレル(以下、マイナーアレルという)のホモ接合体またはヘテロ接合体であるか否かを検討することを含む、
    前記被検体が、II型双極性障害の発病のしやすさに影響する遺伝性素因を含有するか否かを検査する方法であって
    前記一塩基多型が
    配列表の配列番号1に記載の塩基配列において第301番目に位置するSNP1におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
    配列表の配列番号2に記載の塩基配列において第301番目に位置するSNP2におけるTとA (Aがマイナーアレル)、
    配列表の配列番号4に記載の塩基配列において第301番目に位置するSNP4におけるAとG (Gがマイナーアレル)、及び
    配列表の配列番号5に記載の塩基配列において第301番目に位置するSNP5におけるAとG (Gがマイナーアレル)、
    からなる群の少なくとも1つであり、
    前記被検体が、被験者から採取した血液であり、かつ前記一塩基多型の検出をSNPタイピングにより行う、方法。
  2. 被験者が日本人である請求項に記載の方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法に用いるための検査薬であって、
    前記SNP1の検出に用いるためのプローブであって、配列番号8又は9に示す配列からなるプローブ;
    前記SNP2の検出に用いるためのプローブであって、配列番号12又は13に示す配列からなるプローブ;
    前記SNP4の検出に用いるためのプローブであって、配列番号20又は21に示す配列からなるプローブ;及び
    前記SNP5の検出に用いるためのプローブであって、配列番号24又は25に示す配列からなるプローブ
    からなる群から選択される少なくとも一つのプローブを含む、検査薬。
  4. 前記プローブは、少なくとも1つの蛍光標識を有する請求項に記載の検査薬。
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