JP4534108B2 - 信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体に関し、特に、例えば、UWB(Ultra Wide Band)通信システム等に用いられる受信装置を簡単かつ小型に構成するとともに、そのパフォーマンスを向上させることができるようにする信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
UWB通信は、インパルス通信(inpulse radio)とも呼ばれ、例えば、M. Z. Win and R. A. Scholtz, "Impulse radio; How it works", IEEE Communication Letters, vol. 2, pp. 36-38, Feb. 1998(以下、文献1という)や、L. Fullerton, "UWB waveforms and coding for communications and radar", Proc. IEEE Telesystems, Conf., pp. 139-141, Mar. 26-27, 1991(以下、文献2という)等に記載されているように、特に、無線通信の分野で注目されている。
【0003】
UWB通信では、所定の時間幅がM個に区切られ、そのM個の位置のうちの、送信するデータに対応する位置に、低電力で、非常に幅の狭いパルス(インパルスのようなパルス)が配置されて、キャリアなしで送信されることにより、データの送受信が行われる。このように、UWB通信では、非常に幅の狭いパルスが送受信されることから、数GHzオーダの広帯域が使用される。
【0004】
ここで、送信するデータに応じて、パルスの配置位置を変更する変調は、パルス位置変調と呼ばれる。
【0005】
UWB通信は、上述のように、数GHzオーダの非常に広い帯域を使用することから、例えば、M. Z. Win and R. A. Scholtz, " On the robustness of ultra-wide bandwidth signals in dense multipath environments", IEEE Communication Letters, vol. 2, pp. 51-53, Feb. 1998(以下、文献3という)や、J. M. Cramer, R. A. Scholtz, and M. Z. Win, "On the analysis of UWB communication channels", Proc. IEEE Military Communications Conf., pp. 1191-1195, Oct. 31 to Nov. 3, 1999(以下、文献4という)等に記載されているように、壁等の障害物があっても通信が可能であり、さらに、フェージングが非常に少ない、時間解像度が高い、ゲインが高い等の多くの利点を有する。
【0006】
さらに、UWB通信は、キャリアが用いられないことから、RF(Radio Frequency)信号やIF(Intermediate Frequency)信号を処理する回路が不要であり、装置の小型化、低電力化等を図ることができる。
【0007】
以上のように、UWB通信は、従来の狭帯域または広帯域の無線通信や、赤外線通信等に比較して、多くの長所を有している。
【0008】
このようなUWB通信については、例えば、J. S. Gage, "Catching the wave; Breakthroughs in wireless technology", MD Computing: The Leading Edge in Medeical and Healthcare Informatics, vol. 16 March/April 1999(以下、文献5という)や、M. Z. Win and R. A. Scholtz, "Ultra-wide bandwidth time-hopping spread-spectrum impulse radio for wireless multiple-access communications", IEEE Trans. Communications, vol. 48, pp. 679-691, Apr. 2000(以下、文献6という)等に記載されているように、無線LANや、マルチアクセス通信システム、その他各種のシステムへの適用が検討されている。
【0009】
一方、UWB通信は、例えば、R. A. Scholtz, "Answers to questions posed by Bob Lucky, Chairman of the FCC's Technical Advisory Committee(e-mail correspondence)", http://ultra.usc.edu/ulab, June 29, 1999(以下、文献7という)等にあるように、種々の問題も抱えている。大きな問題点の1つとしては、UWB通信は、一般に無線で行われることから、マルチパスが形成されることによる符号間干渉(intersymbol interference)がある。
【0010】
マルチパス環境下における、一般的な信号検出方法(復調方法)としては、例えば、R. Price and P. E. Green Jr.,"A communication technique for multipath channels", Proc. IRE, vol. 46, pp. 555-570, Mar. 1958(以下、文献8という)や、J. G. Proakis, Digital Communications, McGraw-Hill, 4th ed., 2001(以下、文献9という)等に記載されているように、RAKE方式を用いる方法がある。
【0011】
RAKE方式は、マルチパスを構成するパスの中から、例えば、より大きい強度の複数パスを選択し、その複数のパスを、複数の復調器それぞれで復調して合成するダイバーシチ受信方式であり、複数の復調器の出力が1つに集められる様子が熊手(rake)に似ていることから、熊手の指の部分に相当する復調器は、フィンガ(finger)と呼ばれる。
【0012】
このようなRAKE方式は、例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)通信の分野で注目され、実用化されている。CDMA通信におけるマルチパスでは、分解可能なパス数がそれほど多くないことから、RAKE方式で必要となるフィンガ数も、それほど多くはなく、例えば、10未満である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
一方、UWB通信では、例えば、M. Z. Win and R. A. Scholtz, "On the energy capture of ultrawide bandwidth signal in dense multipath environments", IEEE Communication Letters, vol. 2, pp. 245-247, Sept. 1998(以下、文献10という)等に記載されているように、マルチパスを構成するパス数は、非常に多くなり、アプリケーションによっては、300を越えるパスによって、マルチパスが構成される。このように、UWB通信では、非常に多くのパスによってマルチパスが構成されることから、その受信装置を構成するにあたっては、例えば、P. Withington, "In-building propagetion of ultra-wideband RF signals", tech. rep., http://www.time-domain.com, Time Domain Corp., 1995(以下、文献11という)や、H. Lee, B.han, Y. Shin and S. Im, "Multipath characteristics of impulse radio channels", Proc. IEEE Vehicular Technology Conf.(Spring)(Tokyo Japan), pp. 2487-2491, May 15-18, 2000(以下、文献12という)等にあるように、幾つかの問題が指摘されている。
【0014】
即ち、UWB通信に用いられる受信装置としては、例えば、オールRAKE(All-RAKE)方式とセレクティブRAKE(Selective-RAKE)方式のものが提案されている。ここで、オールRAKE方式およびセレクティブRAKE方式については、例えば、F. Ramirez-Mereles, M. Z. Win, R. A. Scholtz and M. A. Barnes, "Performance of ultra-wideband time-shift-modulated signals in the indoor wireless impulse radio channel", Proc. Asilomar Conf. on Signals, Systems and Computers, pp. 192-196, Nov. 2-5, 1997(以下、文献13という)や、M. Z. Win and Z. A. Kostic, "Virtual path analysis lf serective rake receiver in dense multipath channels", IEEE Communication Letters, vol. 3, pp. 308-310, Nov. 1999(以下、文献14という)等に、その説明が記載されている。
【0015】
オールRAKE方式では、すべてのパスが復調される。このため、オールRAKE方式の受信装置は、マルチパスを構成するパスの数が多くなるにつれて、必要なフィンガ数が多くなり、装置が複雑化および大型化することになる。
【0016】
一方、セレクティブRAKE方式では、マルチパスを構成するパスのうちの幾つか、即ち、例えば、強度の高い幾つかのパスが選択され、その選択されたパスを用いて、復調が行われる。従って、セレクティブRAKE方式では、マルチパスを構成するパス数と同一数のフィンガは必要なく、選択するパス数分のフィンガがあれば良い。
【0017】
受信装置の複雑さや消費電力等の観点からすれば、フィンガの数は少ない方が望ましい。即ち、M個の位置のいずれかにパルスを配置するパルス位置変調(以下、適宜、M-PPM(Pulse Position Modulation)変調または多値パルス位置変調という)が行われ、そのパルス位置変調された信号を、D個のフィンガを有する受信装置で復調する場合においては、約D×M個のパルス検出器(受信信号と、M個の位置に配置されたパルスとの間の相関を演算する演算器)が必要となるため、受信装置を簡単化し、その消費電力を低減するには、受信装置に設けるフィンガの数を少なくする必要がある。
【0018】
しかしながら、受信装置を構成するフィンガの数を少なくすると、非常に多くのパスから形成されるマルチパスの中から、復調に重要な信号成分を有するパスを捉えることが困難となる場合があり、この場合、マルチパスによる符号間干渉の影響により、受信装置のパフォーマンスは低下することになる。
【0019】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、簡単かつ小型で、パフォーマンスの高い受信装置を提供することができるようにするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の一側面の信号処理装置、プログラム、又は、記録媒体は、マルチパスの一部のパスの信号空間についての基底関数と、受信信号との間の相関を求め、その相関を要素とする第1のベクトルを求める相関演算手段と、マルチパスの真の信号成分とそのマルチパスの信号空間についての基底関数との間の相関を要素とする第2のベクトルを、マルチパスの一部のパスの信号空間に投影した第3のベクトルと、第1のベクトルとに基づいて、受信信号を復調する復調手段とを備える信号処理装置、そのような信号処理装置として、コンピュータを機能させるためのプログラム、又は、そのようなプログラムが記録されている記録媒体である。
【0021】
本発明の一側面の信号処理方法は、マルチパスの一部のパスの信号空間についての基底関数と、受信信号との間の相関を求め、その相関を要素とする第1のベクトルを求める相関演算ステップと、マルチパスの真の信号成分とそのマルチパスの信号空間についての基底関数との間の相関を要素とする第2のベクトルを、マルチパスの一部のパスの信号空間に投影した第3のベクトルと、第1のベクトルとに基づいて、受信信号を復調する復調ステップとを備える信号処理方法である。
【0028】
本発明の一側面においては、マルチパスの一部のパスの信号空間についての基底関数と、受信信号との間の相関が求められ、その相関を要素とする第1のベクトルが求められる。そして、マルチパスの真の信号成分とそのマルチパスの信号空間についての基底関数との間の相関を要素とする第2のベクトルを、マルチパスの一部のパスの信号空間に投影した第3のベクトルと、第1のベクトルとに基づいて、受信信号が復調される。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用したUWB通信システム(システムとは、複数の装置が論理的に集合した物をいい、各構成の装置が同一筐体中にあるか否かは問わない)の一実施の形態の構成例を示している。
【0031】
図1の実施の形態においては、UWB通信システムは、データをM-PPM変調して送信するとともに、M-PPM変調された信号を受信し、元のデータに復調する2つの通信装置11と12から構成されており、通信装置11と12との間で、上述のようなM-PPM変調された信号が、無線で送受信されることによるUWB通信が、伝送路2を介して行われるようになっている。
【0032】
即ち、通信装置11からは、送信すべきデータに基づいてM-PPM変調された信号が送信され、この信号は、伝送路2を介することにより、マルチパスを形成しながら、通信装置12に到達する。通信装置12は、マルチパスとなっている信号を受信し、その復調を行う。通信装置12から11に対しても、同様にして、データが送信され、通信装置11では、その復調が行われる。
【0033】
なお、図1のようなUWB通信システムは、例えば、無線LAN等に適用することが可能である。
【0034】
また、図1の実施の形態では、2つの通信装置11と12しか図示していないが、UWB通信システムは、3以上の通信装置で構成することも可能である。
【0035】
ここで、以下、適宜、通信装置11と12をまとめて、通信装置1と記述する。
【0036】
図2は、図1の通信装置1の構成例を示している。
【0037】
通信装置1は、UWB変調部11、アンテナ12、およびUWB復調部13から構成される。
【0038】
UWB変調部11には、送信すべきデータが供給されるようになっており、UWB変調部11は、そこに供給されるデータにしたがってパルス(インパルス)の配置を決定するM-PPM変調を行い、その結果得られる変調信号を、アンテナ12に供給する。
【0039】
アンテナ12は、UWB変調部11からの変調信号を、電波で送信する。また、アンテナ12は、他の通信装置1からの電波を受信し、その受信信号を、UWB復調部13に供給する。
【0040】
UWB復調部13は、アンテナ12からの受信信号を、後述するようにして復調し、その結果得られる復調データを出力する。
【0041】
図3は、図2のUWB復調部13の構成例を示している。
【0042】
UWB復調部13は、復調部21と合成部22から構成されている。
【0043】
復調部21は、N(Nは、1以上の整数)個のフィンガ211乃至21Nから構成されており、各フィンガ21n(n=1,2,・・・,N)には、アンテナ12(図2)からの受信信号が供給されるようになっている。フィンガ21nは、マルチパスとなっている受信信号のうちの1のパスpath#nを復調するとともに、他の1のパスpath#n'の一部を復調し、合成部22に出力する。
【0044】
合成部22は、フィンガ211乃至21Nの出力を合成し、その合成結果に基づいて、復調データを出力する。
【0045】
次に、図1のUWB通信システムにおいては、UWB通信によって、M-PPM変調された信号が、マルチパス環境下で送受信されるが、このようなシステムにおける送信信号、マルチパスチャネル(伝送路2)、および受信信号は、例えば、文献13や、F. Ramirez-Mireles and R. A. Scholtz, "Performance of equicorrelated ultra-wideband pulse-position-modulated signals in the indoor wireless impulse radio channel", Proc. IEEE Pacific Rim Conf. on Communications, Computers and Signal Processing, pp. 640-644, Aug. 20-22, 1997(以下、文献15という)等に記載されているようにモデル化することができる。
【0046】
なお、このモデル(等価ベクトルモデル(equivalent vector model))は、PPM変調についてだけでなく、例えば、Walsh直交関数系を用いた直交変調や、直交関係にある正弦波を搬送波として用いるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)等のマルチキャリア変調、直交関係にある拡散符号を用いる同期式CDM(Code Division Multiplex)、その他の(多値)直交変調についても適用することができることができる。この点については、例えば、J. R. Barry, "Sequence detection and equalization for pulse-position modulation", Proc. IEEE Intl. Conf. Communications, pp. 1561-1565, May 1-5, 1994(以下、文献16という)に記載されている。
【0047】
いま、通信装置1が、所定のシンボル送信周期を1フレームとして、その1フレームのうちのM個の時刻のうち、送信するデータに対応する1の時刻にパルス(理想的には、インパルス)を配置するM-PPM変調を行い、その変調信号を、送信信号として送信するものとする。ここで、この場合、1シンボルあたりのデータレートは、log2Mビットとなる。
【0048】
なお、ある2つの通信装置1の間の通信に注目した場合、その通信に使用されるフレームどうしの間隔は、疑似乱数を使用してホッピング(time-hopping)される。従って、例えば、図4(A)に示すように、いま、ある2つの通信装置1の間の通信に、フレームA,B,Cが使用されるとした場合、フレームAとBとの間隔TABと、フレームBとCとの間隔TBCとは、一般に異なる。このように、フレーム間隔がホッピングされるのは、複数セットの通信装置どうしの間で通信が行われる場合に、異なる通信装置のセットで使用されるフレームどうしの衝突を避けるためであるが、通信を行っている通信装置どうしの間では、ホッピングが同一の疑似乱数を用いて行われるようになっており、従って、同期がとれている。
【0049】
以上のように、通信を行う通信装置1どうしの間では同期がとれていることから、フレーム間隔のホッピングについては、ここでは、モデル化にあたって特に考慮する必要がなく、無視することとする。なお、1セットの通信装置どうしの間だけで通信が行われる場合は、当然、フレーム間隔のホッピングについては考慮する必要がない。
【0050】
以上のように、ホッピングを考慮しない場合、あるフレームにおいて、その先頭の時刻を基準として、データ#mを送信する送信信号s(m)(t)は、次式のような時間tの関数として表すことができる。
【0051】
【数1】
Figure 0004534108
・・・(1)
【0052】
但し、式(1)において、mは、1乃至Mの範囲の整数値をとり、Tpは、図4(B)に示すように、パルスが配置可能な位置の間隔(時間)を表す。また、Esは、送信信号を受信する受信側における受信シンボル(またはパルス)のエネルギを表す。さらに、a(m) nは、0または1のうちのいずれかの値をとり、次式で表されるM×1の列ベクトルa(m)の要素である。
【0053】
【数2】
Figure 0004534108
・・・(2)
【0054】
但し、上付けのTは、転置を表す。ここでは、上述のように、1フレームのある1時刻に、パルスを配置することにより、データ#mを送信することとしているので、ベクトルa(m)の要素a(m) 0,a(m) 1,・・・a(m) M-1のうちの、例えばm番目のもののみが1となり、他は0となる。
【0055】
また、式(1)において、wrec(t)は、受信パルスの波形を表し、例えば、文献6において、次式で定義されている。
【0056】
【数3】
Figure 0004534108
・・・(3)
【0057】
但し、式(3)において、τuwbは、パルス幅を表し、UWB通信では、1ns(nano seconds)以下の値で、例えば、文献13や15では、0.7531nsとされている。また、式(3)において、tは、nsオーダの値である。さらに、式(3)において、左辺の係数√(8/3)は、パルスwrec(t)のエネルギを、次式に示すように正規化するためのものである。
【0058】
【数4】
Figure 0004534108
・・・(4)
【0059】
ここで、式(3)のパルスwrec(t)の自己相関ρ(t)は、次式で表される。
【0060】
【数5】
Figure 0004534108
・・・(5)
【0061】
式(5)の自己相関ρ(t)は、例えば、R. Ramirez-Mireles and R. A. Scholtz, "Multiple-access performance limits with time hopping and pulse position modulation", Proc. IEEE Military Communications Conf., pp. 529-533, Oct. 18-21, 1998(以下、文献17という)において、次式に示すように計算されることが記載されている。
【0062】
【数6】
Figure 0004534108
・・・(6)
【0063】
但し、式(6)において、αは、π(t/τuwb2である。
【0064】
次に、マルチパスチャネルである伝送路2において、D個のパスから構成されるマルチパスが形成されるとすると、このマルチパスチャネルのインパルス応答hD(t)は、次式で示される。
【0065】
【数7】
Figure 0004534108
・・・(7)
【0066】
但し、式(7)において、hdとτdは、それぞれ、d番目のパスのパスゲインとパス遅延を表す。なお、ここでは、パスゲインhdについては、|h1|≧|h2|≧・・・≧|hD|の関係があり、次式に示すように、そのエネルギの総和が1であるものとする。
【0067】
【数8】
Figure 0004534108
・・・(8)
【0068】
式(1)で示される送信信号s(m)(t)が、式(7)で示されるインパルス応答hD(t)を有するマルチパスチャネルを介して送信される場合、受信側の受信信号v(D,m)(t)は、理想的には、次式で表される。
【0069】
【数9】
Figure 0004534108
・・・(9)
【0070】
但し、式(9)において、*は、畳み込み積分を表す。
【0071】
しかしながら、受信側で実際に受信される受信信号r(t)は、式(9)の理想的な受信信号v(D,m)(t)に、ノイズが加わったものとなる。いま、このノイズを、平均値が0で、N0/2の電力スペクトル密度を有するガウス過程として、n(t)と表すと、実際の受信信号r(t)は、次式で表される。なお、N0は、ノイズN(t)の平均電力である。
【0072】
【数10】
Figure 0004534108
・・・(10)
【0073】
式(9)で表される理想的な受信信号のセット{v(D,1)(t),v(D,2)(t),・・・,v(D,M)(t)}の信号空間を、S(all)と表すと、この信号空間S(all)は、送信信号s(m)(t)を用いたD×M個の関数のセット{s(1)(t−τ1),s(2)(t−τ1),・・・,s(M)(t−τ1),
(1)(t−τ2),s(2)(t−τ2),・・・,s(M)(t−τ2),
・・・,
(1)(t−τD),s(2)(t−τD),・・・,s(M)(t−τD
}で表すことができる。
【0074】
このD×M個の関数のセットは、例えば、文献9に記載されているように、グラムシュミットの直交化法(Gram-Schmidt orthogonalization procedure)を用いることにより、信号空間S(all)を定義する正規直交基底関数のセット{φ1(t),φ2(t),・・・,φN(all)(t)}に変換することができる。但し、N(all)は、D×M以下の値であり、信号空間S(all)の次元を表す。
【0075】
ここで、送信信号s(m)(t)を用いたD×M個の関数のセットの、グラムシュミットの直交化法による直交化は、上記した関数の順番、即ち、s(1)(t−τ1),s(2)(t−τ1),・・・,s(M)(t−τ1),s(1)(t−τ2),s(2)(t−τ2),・・・,s(M)(t−τ2),・・・,s(1)(t−τD),s(2)(t−τD),・・・,s(M)(t−τD)の順で行っていくものとする。この順番の条件は、直交化にあたって必須ではないが、この条件を満たすことにより、後述するように、受信側の処理が容易になる。
【0076】
以上のようにして求められる正規直交基底関数のセット{φ1(t),φ2(t),・・・,φN(all)(t)}を用いて、3つのベクトル
r=[r1,r2,・・・,rNPT
(D,m)=[v1 (D,m),v2 (D,m),・・・,vNP (D,m)T
η=[η1,η2,・・・,ηNPT
を定義する。
【0077】
ここで、ベクトルrのp番目の要素rp、ベクトルv(D,m)のp番目の要素vp (D,m)、ベクトルηのp番目の要素ηpは、信号r(t),v(D,m)(t),n(t)それぞれと、正規直交基底関数φp(t)との間の相関を表す。ここで、信号x(t)と、正規直交基底関数φp(t)との間の相関xpは、次式で定義される。
【0078】
【数11】
Figure 0004534108
・・・(11)
【0079】
なお、ベクトルηの各要素ηpは、平均値が0で分散がN0/2のガウス分布にしたがう確率変数となる。
【0080】
以上のようなモデルを用いて、以下、図2の通信装置1を構成するUWB復調部13の詳細について説明するが、その前に、その前段階の準備として、従来のPPM復調器、オールRAKE方式の復調器、およびセレクティブRAKE方式の復調器について説明する。
【0081】
マルチパスを構成するパスのうちの1つだけを検出して復調する従来のPPM復調器は、その1つのパスについて、1フレームのM個の各位置の信号をそれぞれ検出するM個のフィルタ(検出器)からなるフィルタバンクを有しており、M個の位置のいずれにパルスが配置されているかは、例えば、次式にしたがって決定される。
【0082】
【数12】
Figure 0004534108
・・・(12)
【0083】
ここで、式(12)において、mmaxは、パルスが配置されている位置を表し、変数mに関するargmax{x}は、xの最大値を与えるm(=mmax)を求める関数である。また、C[x,y]は、次の式(13)で示される、ベクトルxとyについての内積から平均値を減算して得られる共分散で、式(12)における右辺の共分散C[r,v(1,m)]が、PPM復調器のフィルタバンクの出力に対応する。
【0084】
【数13】
Figure 0004534108
・・・(13)
【0085】
ここで、式(13)における右辺の第2項の予測値(平均電力)yTyは、いわば補正項(bias term)であり、式(12)の右辺における信号ベクトルv(1,1),v(1,2),・・・,v(1,M)のエネルギがすべて同一の値であれば、無視すること(0とすること)ができる。
【0086】
次に、例えば、文献13,14,15等に記載されているようなオールRAKE方式の復調器は、マルチパスを形成するすべてのパスについて、M個の信号ベクトルv(D,1),v(D,2),・・・,v(D,M)それぞれとのマッチングをとるM個のフィルタからなるフィルタバンクを有しており、1フレームのM個の位置のいずれにパルスが配置されているかは、例えば、最尤推定法により、次式にしたがって決定される。
【0087】
【数14】
Figure 0004534108
・・・(14)
【0088】
ここで、式(14)における右辺の共分散C[r,v(D,m)]が、オールRAKE方式の復調器のフィルタバンクの出力に対応する。
【0089】
次に、セレクティブRAKE方式の復調器についてであるが、セレクティブRAKE方式は、マルチパスを形成する幾つかのパスを選択して、その選択したパスを対象に、オールRAKE方式と同様の処理を行うものであるから、いわば、オールRAKE方式の省略バージョンであるということができる。
【0090】
いま、セレクティブRAKE方式の復調器において、処理の対象とするパスとして、マルチパスを形成するパスから、D’(≦D)個のパスが選択されるものとすると、このD’個のパスで形成されるマルチパスとなっている、理想的な受信信号の信号空間S(sel)は、信号S(all)の部分空間であり(S(sel)⊆S(all))、式(1)の送信信号s(m)(t)を用いたD’×M個の関数のセット{
(1)(t−τ1),s(2)(t−τ1),・・・,s(M)(t−τ1),
(1)(t−τ2),s(2)(t−τ2),・・・,s(M)(t−τ2),
・・・,
(1)(t−τD ),s(2)(t−τD ),・・・,s(M)(t−τD
}で表すことができる。
【0091】
このD’×M個の関数のセットも、D×M個の関数のセットにおける場合と同様に、グラムシュミットの直交化法を用いることにより、信号空間S(sel)を定義する正規直交基底関数のセット{ψ1(t),ψ2(t),・・・,ψN(sel)(t)}に変換することができる。但し、N(sel)は、D’×M以下の値であり、信号空間S(sel)の次元を表す。
【0092】
ここで、グラムシュミットの直交化法による直交化を、D×M個の関数のセットにおける場合と同様の順番の条件で行うものとすると、正規直交基底関数ψp(t)とφp(t)とは、pが1からN(sel)の範囲で一致する。なお、この場合も、順番の条件は、直交化にあたって必須ではないが、この条件を満たすことにより、受信側の処理が容易になる。
【0093】
セレクティブRAKE方式の復調器は、マルチパスを形成するパスのうちのD’個のパスについて、M個の信号ベクトルv(D ,1),v(D ,2),・・・,v(D ,M)それぞれとのマッチングをとるM個のフィルタからなるフィルタバンクを有しており、M個の位置のいずれにパルスが配置されているかは、例えば、式(14)のDを、D’に置き換えた次式にしたがって決定される。
【0094】
【数15】
Figure 0004534108
・・・(15)
【0095】
ここで、式(15)における右辺の共分散C[r,v(D ,m)]が、セレクティブRAKE方式の復調器のフィルタバンクの出力に対応する。
【0096】
上述したように、セレクティブRAKE方式の信号空間S(sel)は、マルチパスのすべてのパスについての信号空間S(all)の一部であるから、信号ベクトルv(D ,m)は、セレクティブRAKE方式の場合の信号ベクトルv(D,m)の最後のN(all)−N(sel)個の要素を0としたもの(無視したもの)となる。なお、このことは、マルチパスとなっている受信信号の、選択されないD−D’個のパスを無視することを意味する。
【0097】
ところで、前述したように、セレクティブRAKE方式の復調器の複雑さおよびパフォーマンスは、処理の対象とするパス数D’に大きく影響される。処理の対象とするパス数D’を少なくすれば、復調器の構成は簡単になり、消費電力も低下する。しかしながら、復調器のパフォーマンスは、処理の対象とするパス数D’を少なくするにつれて低くなる。
【0098】
即ち、処理の対象とするパス数D’を少なくするにつれて、セレクティブRAKE方式で用いられる信号ベクトルv(D ,m)と、オールRAKE方式で用いられる信号ベクトルv(D,m)との差が広がっていき、セレクティブRAKE方では、マルチパスによる符号間干渉の影響が大きくなる。その結果、セレクティブRAKE方式による式(15)の計算結果は、オールRAKE方式による式(14)の計算結果と一致しなくなる。
【0099】
極端には、処理の対象とするパス数D’を1とした場合、セレクティブRAKE方式の復調器は、1つのパスを復調するPPM復調器と一致することになり、符号間干渉による受信信号の劣化の影響は、非常に大きなものとなる。
【0100】
一方、オールRAKE方式を採用すれば、復調器のパフォーマンスは向上する。しかしながら、300を越えるようなパスによってマルチパスが形成されるUWB通信において、オールRAKE方式を採用することは、復調器の複雑さや規模、消費電力等の観点から困難である。
【0101】
そこで、図2のUWB復調部13では、セレクティブRAKE方式と同一の信号空間S(sel)を利用するとともに、符号間干渉を考慮する方式(以下、適宜、新RAKE方式という)によって復調を行うことで、セレクティブRAKE方式と同様の装置規模で、セレクティブRAKE方式よりも高いパフォーマンスを得ることができるようになっている。
【0102】
即ち、オールRAKE方式で用いられる信号ベクトルv(D,m)は、次式で示すように、セレクティブRAKE方式で用いられる信号ベクトルv(D ,m)の信号空間S(sel)上の成分v(D,m)(S(sel)(para))と、その信号空間S(sel)に直交する成分v(D,m)(S(sel)(ortho))とに分けることができる。
【0103】
【数16】
Figure 0004534108
・・・(16)
【0104】
新RAKE方式では、式(16)に基づき、図5に示すように、オールRAKE方式で用いられる信号ベクトルv(D,m)を、セレクティブRAKE方式の信号空間S(sel)に投影(射影)して得られる信号ベクトルv(D,m)(S(sel)(para))が用いられ、1フレームにおけるM個の位置のいずれにパルスが配置されているかは、例えば、式(17)にしたがって決定される。
【0105】
【数17】
Figure 0004534108
・・・(17)
【0106】
式(17)から、新RAKE方式の復調器(UWB復調部13)は、マルチパスを形成するすべてのパス(あるいは一部のパス)について、M個の信号ベクトルv(D,1)(S(sel)(para)),v(D,2)(S(sel)(para)),・・・,v(D,M)(S(sel)(para))それぞれとのマッチングをとるM個のフィルタからなるフィルタバンクで構成することができ、この場合、式(17)における右辺の共分散C[r,v(D,m)(S(sel)(para))]が、新RAKE方式の復調器のフィルタバンクの出力になる。
【0107】
なお、信号空間S(all)とS(sel)の正規直交基底関数を求めるにあたって、上述の順番の条件が満たされる場合には、新RAKE方式で用いられる信号ベクトルv(D,m)(S(sel)(para))は、オールRAKE方式で用いられる信号ベクトルv(D,m)の最後のN(all)−N(sel)個の要素を0とすることで、容易に求めることができる。
【0108】
以上から、新RAKE方式の復調器としての図3のUWB復調部13は、等価的に、図6に表すように表すことができる。
【0109】
即ち、UWB復調部13は、図6に示すように、相関部31、共分散演算部32、信号ベクトル記憶部33、および最大検出部34から構成される。
【0110】
相関部31は、P個の相関演算器311乃至31Pで構成されており、そこには、式(10)で定義される受信信号r(t)が供給されるようになっている。相関部31は、各相関演算器31pにおいて、受信信号r(t)と、信号空間S(all)を定義する正規直交基底関数φp(t)との間の、式(11)で定義される相関rpを計算し、その相関rpを要素とするベクトルr(=[r1,r2,・・・,rPT)を、共分散演算部32に供給する。
【0111】
共分散演算部32は、信号ベクトル記憶部33から信号ベクトルv(D,m)(S(sel)(para))を読み出し、その信号ベクトルv(D,m)(S(sel)(para))と、相関部31からのベクトルrとを用い、式(17)の右辺における共分散C[r,v(D,m)(S(sel)(para))]を、すべてのm(=1,2,・・・,M)について計算して、最大検出部34に供給する。
【0112】
信号ベクトル記憶部33は、オールRAKE方式の信号ベクトルv(D,m)を、セレクティブRAKE方式の信号空間S(sel)に投影して得られる信号ベクトルv(D,m)(S(sel)(para))を求めて記憶している。なお、信号ベクトルv(D,m)を求めるには、式(9)から、パスのインパルス応答hd(t)を規定する式(7)のパス遅延τdとのパスゲインhdを推定する必要があるが、その推定は、信号空間S(sel)への投影に影響する分だけを行えばよい。即ち、例えば、信号空間S(all)が、xyzの3次元空間であり、信号空間S(sel)が、xだけの1次元空間であるとした場合、xyzの3次元空間のベクトル(1,0,0)を、xだけの1次元空間に投影すると、(1)である。一方、xyzの3次元空間のベクトル(1,0,0)は、xyの2次元空間において、ベクトル(1,0)であるが、このベクトル(1,0)を、xだけの1次元空間に投影しても、(1)である。従って、この場合、xyzの3次元空間のベクトル(1,0,0)において、z成分は、xだけの1次元空間への投影に影響せず、考慮する必要がないことになる。
【0113】
最大検出部34は、共分散演算部32から供給されるM個の共分散C[r,v(D,1)(S(sel)(para))],C[r,v(D,2)(S(sel)(para))],・・・,C[r,v(D,M)(S(sel)(para))]の中から、最大値Cmaxを検出し、その最大値Cmaxを与えるmであるmmaxを復調データとして出力する。
【0114】
以上のように構成されるUWB復調部13では、図7のフローチャートにしたがい、新RAKE方式による復調処理が行われる。
【0115】
即ち、まず最初に、ステップS1において、相関部31が、受信信号r(t)と、正規直交基底関数φp(t)との間の相関rpを計算し、その相関rpを要素とするベクトルrを、共分散演算部32に供給して、ステップS2に進む。ステップS2では、共分散演算部32が、信号ベクトル記憶部33に記憶された信号ベクトルv(D,m)(S(sel)(para))と、相関部31からのベクトルrとを用いて共分散C[r,v(D,m)(S(sel)(para))]を、すべてのm(=1,2,・・・,M)について計算し、最大検出部34に供給して、ステップS3に進む。ステップS3では、最大検出部34が、共分散演算部32からのM個の共分散C[r,v(D,1)(S(sel)(para))],C[r,v(D,2)(S(sel)(para))],・・・,C[r,v(D,M)(S(sel)(para))]の中から、最大値Cmaxを検出し、その最大値Cmaxを与えるmmaxを復調データとして出力して、ステップS1に戻り、以下、次の受信信号について、同様の処理を繰り返す。
【0116】
以上のような、新RAKE方式による復調処理によれば、オールRAKE方式に比較して装置構成が簡単化されるとともに、セレクティブRAKE方式に比較してパフォーマンスを向上させることができる。
【0117】
即ち、例えば、いま、M=2,D=2,D’=1の場合を考える。
【0118】
この場合、mは、1または2のうちのいずれかの値をとるから、式(1)の送信信号s(m)(t)は、次式で示されるs(1)(t)またはs(2)(t)のうちのいずれかとなる。
【0119】
s(1)(t)=√(Es)(a(1) 0wrec(t)+a(1) 1wrec(t-Tp))
・・・(18)
s(2)(t)=√(Es)(a(2) 0wrec(t)+a(2) 1wrec(t-Tp))
・・・(19)
【0120】
いま、説明を簡単にするために、例えば、Es=1とし、また、m=1の場合に、a(1) 0=1で、a(1) 1=0であり、m=2の場合に、a(2) 0=0で、a(2) 1=1とすると、式(18)と(19)は、それぞれ、式(20)と(21)に示すようになる。
【0121】
s(1)(t)=wrec(t)
・・・(20)
s(2)(t)=wrec(t-Tp)
・・・(21)
【0122】
式(20)と(21)から、送信信号s(1)(t)とs(2)(t)は、図8(A−1)と図8(A−2)に、それぞれ示すようになる。
【0123】
また、いまの場合、D=2であるから、式(7)のインパルス応答hD(t)は、次式で表される。
【0124】
hD(t)=h2(t)=h1δ(t-τ1)+h2δ(t-τ2)
・・・(22)
【0125】
説明を簡単にするために、例えば、h1=h2=1、並びにτ1=Tpおよびτ2=2Tpとすると、式(22)のインパルス応答h2(t)は、次式で表される。
【0126】
h2(t)=δ(t-Tp)+δ(t-2Tp)
・・・(23)
【0127】
ここで、式(23)のインパルス応答h2(t)は、図8(B)に示すものとなる。なお、いまの場合、D=2としており、即ち、マルチパスが、パス#1と#2の2つのパスで形成されるものとしており、例えば、式(23)における右辺第1項δ(t−Tp)がパス#1に、第2項δ(t−2Tp)がパス#2に、それぞれ相当する。
【0128】
式(20)の送信信号s(1)(t)に対する理想的な受信信号v(2,1)(t)は、式(9)から、式(20)の送信信号s(1)(t)と、式(23)のインパルス応答h2(t)との畳み込みを行うことにより求められ、式(24)に示すようになる。
【0129】
v(2,1)(t)=wrec(t-Tp)+wrec(t-2Tp)
・・・(24)
【0130】
式(21)の送信信号s(2)(t)に対する理想的な受信信号v(2,2)(t)も、同様に、式(21)の送信信号s(2)(t)と、式(23)のインパルス応答h2(t)との畳み込みを行うことにより求められ、式(25)に示すようになる。
【0131】
v(2,2)(t)=wrec(t-2Tp)+wrec(t-3Tp)
・・・(25)
【0132】
ここで、式(24)で表される受信信号v(2,1)(t)と、式(25)で表される受信信号v(2,2)(t)は、図8(C)に示すようになる。即ち、受信信号v(2,1)(t)は、図8(C−1)に示すようになり、受信信号v(2,2)(t)は、図8(C−2)に示すようになる。なお、式(10)のノイズn(t)が0であるとすれば、受信信号r(t)も、図8(C)に示したようになる。
【0133】
式(24)と(25)から、信号空間S(all)は、4つの関数のセット{wrec(t−Tp),wrec(t−2Tp),wrec(t−2Tp),wrec(t−3Tp)}で表される。
【0134】
いま、この関数のセット{wrec(t−Tp),wrec(t−2Tp),wrec(t−2Tp),wrec(t−3Tp)}にグラムシュミットの直交化法を適用し、さらに、説明を簡単にするために、wrec(t−nTp)のノルム‖wrec(t−nTp)‖が1であるとすると、信号空間S(all)の正規直交基底関数は、次の3つの関数φ1(t),φ2(t),φ3(t)となる。
【0135】
φ1(t)=wrec(t-Tp)
φ2(t)=wrec(t-2Tp)
φ3(t)=wrec(t-3Tp)
・・・(26)
【0136】
この場合、ベクトルrは、3次元のベクトル[r1,r2,r3Tとなるが、このベクトルrの要素r1,r2,r3は、式(11)の定義から、式(26)の正規直交基底関数と、受信信号r(t)とを用いて、次のように求めることができる。但し、以下では、説明を簡単にするため、wrec(t)=8tであるとする。
【0137】
r1=∫r(t)φ1(t)dt=r(t-Tp)
r2=∫r(t)φ2(t)dt=r(t-2Tp)
r3=∫r(t)φ3(t)dt=r(t-3Tp)
・・・(27)
【0138】
従って、ベクトルrは、次のように表すことができる。
【0139】
r=[r(t-Tp),r(t-2Tp),r(t-3Tp)]T
・・・(28)
【0140】
オールRAKE方式の信号ベクトルv(D,m)も、ベクトルrと同様に3次元のベクトル[v1 (D,m),v2 (D,m),v3 (D,m)Tとなるが、この信号ベクトルv(D,m)の要素v1 (D,m),v2 (D,m),v3 (D,m)は、式(11)の定義から、式(26)の正規直交基底関数と、式(24)または(25)の受信信号v(D,m)(t)とを用いて、次のように求めることができる。
【0141】
即ち、式(11)から、D=2の場合の信号ベクトルv(2,m)のp番目の要素は、式∫v(2,m)(t)φp(t)dtを計算することで求めることができる。従って、m=1のときの信号ベクトルv(2,1)の要素v1 (2,1),v2 (2,1),v3 (2,1)は、式(26)の直交基底関数と、式(24)の受信信号v(2,1)(t)とを用いて、次のように求めることができる。
【0142】
v1 (2,1)=∫(wrec(t-Tp)+wrec(t-2Tp))wrec(t-Tp)dt
=1
v2 (2,1)=∫(wrec(t-Tp)+wrec(t-2Tp))wrec(t-2Tp)dt
=1
v3 (2,1)=∫(wrec(t-Tp)+wrec(t-2Tp))wrec(t-3Tp)dt
=0
・・・(29)
【0143】
式(29)から、信号ベクトルv(2,1)は、式(30)に示すようになる。
【0144】
v(2,1)=[1,1,0]T
・・・(30)
【0145】
また、m=2のときの信号ベクトルv(2,2)の要素v1 (2,2),v2 (2,2),v3 (2,2)は、式(26)の直交基底関数と、式(25)の受信信号v(2,2)(t)とを用いて、次のように求めることができる。
【0146】
v1 (2,2)=∫(wrec(t-2Tp)+wrec(t-3Tp))wrec(t-Tp)dt
=0
v2 (2,2)=∫(wrec(t-2Tp)+wrec(t-3Tp))wrec(t-2Tp)dt
=1
v3 (2,2)=∫(wrec(t-2Tp)+wrec(t-3Tp))wrec(t-3Tp)dt
=1
・・・(31)
【0147】
式(31)から、信号ベクトルv(2,2)は、式(32)に示すようになる。
【0148】
v(2,2)=[0,1,1]T
・・・(32)
【0149】
一方、説明を簡単にするために、式(14)の右辺における共分散C[r,v(D,m)]を、ベクトルrとv(D,m)の内積で近似することとすると、オールRAKE方式では、m=1の場合、共分散C[r,v(2,1)]は、式(28)のベクトルrと(30)の、信号ベクトルv(2,1)から、次のようになる。
【0150】
C[r,v(2,1)]=[r(t-Tp),r(t-2Tp),r(t-3Tp)]T・[1,1,0]T
=r(t-Tp)+r(t-2Tp)
・・・(33)
【0151】
また、m=2の場合、共分散C[r,v(2,2)]は、式(28)のベクトルrと(32)の信号ベクトルv(2,2)から、次のようになる。
【0152】
C[r,v(2,2)]=[r(t-Tp),r(t-2Tp),r(t-3Tp)]T・[0,1,1]T
=r(t-2Tp)+r(t-3Tp)
・・・(34)
【0153】
図8(C−1)に示すように、式(33)のr(t−Tp)は、パス#1の受信信号を、r(t−2Tp)は、パス#2の受信信号を、それぞれ表しており、また、図8(C−2)に示すように、式(34)のr(t−2Tp)は、パス#1の受信信号を、r(t−3Tp)は、パス#2の受信信号を、それぞれ表している。従って、オールRAKE方式では、パス#1と#2の受信信号を加算し、その加算値に基づいて、復調が行われる。即ち、t=Tpの受信信号r(t−Tp)と、t=2Tpの受信信号r(t−2Tp)を加算した加算値ADD1と、t=2Tpの受信信号r(t−2Tp)と、t=3Tpの受信信号r(t−3Tp)を加算した加算値ADD2のうち、加算値ADD1の方が大きい場合には、m=1に復調され、加算値ADD2の方が大きい場合には、m=2に復調される。
【0154】
一方、セレクティブRAKE方式では、いまの場合、D’=1としているから、m=1のときの受信信号v(1,1)(t)は、次式に示すように、式(24)の右辺第2項を消去したものとなる。
【0155】
v(1,1)(t)=wrec(t-Tp)
・・・(35)
【0156】
また、m=2のときの受信信号v(1,2)(t)も、次式に示すように、式(25)の右辺第2項を消去したものとなる。
【0157】
v(1,2)(t)=wrec(t-2Tp)
・・・(36)
【0158】
ここで、式(35)で表される受信信号v(1,1)(t)と、式(36)で表される受信信号v(1,2)(t)は、図8(D)に示すようになる。即ち、受信信号v(1,1)(t)は、図8(D−1)に示すようになり、受信信号v(1,2)(t)は、図8(D−2)に示すようになる。
【0159】
式(35)と(36)から、セレクティブRAKE方式の場合の信号空間S(sel)は、2つの関数のセット{wrec(t−Tp),wrec(t−2Tp)}で表される。
【0160】
いま、この関数のセット{wrec(t−Tp),wrec(t−2Tp)}にグラムシュミットの直交化法を適用すると、信号空間S(sel)の正規直交基底関数は、次の2つの関数φ1(t),φ2(t)となる。なお、ここでも、ノルム‖wrec(t−nTp)‖が1であるとしている。
【0161】
φ1(t)=wrec(t-Tp)
φ2(t)=wrec(t-2Tp)
・・・(37)
【0162】
この場合、ベクトルrは、2次元のベクトル[r1,r2Tとなるが、このベクトルrの要素r1,r2は、式(11)の定義から、式(37)の正規直交基底関数と、受信信号r(t)とを用いて、次のように求めることができる(ここでも、wrec(t)=8(t)としている)。
【0163】
r1=∫r(t)φ1(t)dt=r(t-Tp)
r2=∫r(t)φ2(t)dt=r(t-2Tp)
・・・(38)
【0164】
従って、ベクトルrは、次のように表すことができる。
【0165】
r=[r(t-Tp),r(t-2Tp)]T
・・・(39)
【0166】
セレクティブRAKE方式の信号ベクトルv(D ,m)も、式(39)のベクトルrと同様に2次元のベクトル[v1 (D ,m),v2 (D ,m)Tとなるが、この信号ベクトルv(D ,m)の要素v1 (D ,m),v2 (D ,m)は、式(11)の定義から、式(37)の正規直交基底関数と、式(35)または(36)の受信信号v(D ,m)(t)とを用いて、オールRAKE方式の場合と同様に求めることができる。
【0167】
即ち、式(11)から、D’=1の場合の信号ベクトルv(1,m)のp番目の要素は、式∫v(1,m)(t)φp(t)dtを計算することで求めることができる。
従って、m=1のときの信号ベクトルv(1,1)の要素v1 (1,1),v2 (1,1)は、式(37)の直交基底関数と、式(35)の受信信号v(1,1)(t)とを用いて、次のように求めることができる。
【0168】
v1 (1,1)=∫wrec(t-Tp)wrec(t-Tp)dt
=1
v2 (1,1)=∫wrec(t-Tp)wrec(t-2Tp)dt
=0
・・・(40)
【0169】
式(40)から、信号ベクトルv(1,1)は、式(41)に示すようになる。
【0170】
v(1,1)=[1,0]T
・・・(41)
【0171】
また、m=2のときの信号ベクトルv(1,2)の要素v1 (1,2),v2 (1,2)は、式(37)の直交基底関数と、式(36)の受信信号v(1,2)(t)とを用いて、次のように求めることができる。
【0172】
v1 (1,2)=∫wrec(t-2Tp)wrec(t-Tp)dt
=0
v2 (1,2)=∫wrec(t-2Tp)wrec(t-2Tp)dt
=1
・・・(42)
【0173】
式(42)から、信号ベクトルv(1,2)は、式(43)に示すようになる。
【0174】
v(1,2)=[0,1]T
・・・(43)
【0175】
以上から、式(12)の右辺における共分散C[r,v(D ,m)]は、次のようになる。なお、ここでも、説明を簡単にするために、共分散C[r,v(D ,m)]を、ベクトルrとv(D ,m)の内積で近似することとする。
【0176】
即ち、m=1の場合、共分散C[r,v(1,1)]は、式(39)のベクトルrと(41)の信号ベクトルv(1,1)から、次のようになる。
【0177】
C[r,v(1,1)]=[r(t-Tp),r(t-2Tp)]T・[1,0]T
=r(t-Tp)
・・・(44)
【0178】
また、m=2の場合、共分散C[r,v(1,2)]は、式(39)のベクトルrと(43)の信号ベクトルv(1,2)から、次のようになる。
【0179】
C[r,v(1,2)]=[r(t-Tp),r(t-2Tp)]T・[0,1]T
=r(t-2Tp)
・・・(45)
【0180】
式(44)のr(t−Tp)、および式(45)のr(t−2Tp)は、図8(D)に示すように、いずれも、パス#1の受信信号を表しており、従って、セレクティブRAKE方式では、パス#1の受信信号のみに基づいて、復調が行われる。即ち、t=Tpの受信信号r(t−Tp)と、t=2Tpの受信信号r(t−2Tp)のうち、t=Tpの受信信号r(t−Tp)の方が大きい場合には、m=1に復調され、t=2Tpの受信信号r(t−2Tp)の方が大きい場合には、m=2に復調される。
【0181】
その結果、セレクティブRAKE方式では、マルチパスによる符号間干渉が生じている場合には、オールRAKE方式の場合に比較して、パフォーマンスが劣化することになる。即ち、マルチパスによる符号間干渉に起因して、m=1とm=2の場合の信号間のユークリッド距離は小さくなり、これにより、シンボルエラーレートが増加する。
【0182】
なお、上述のような条件(D’=1)の下では、セレクティブRAKE方式は、従来のPPM復調器の復調方法に一致する。
【0183】
以上のようなセレクティブRAKE方式に対して、新RAKE方式では、上述したように、オールRAKE方式で用いられる信号ベクトルv(D,m)を、セレクティブRAKE方式の信号空間S(sel)に投影して得られる信号ベクトルv(D,m)(S(sel)(para))が用いられる。
【0184】
即ち、オールRAKE方式で用いられる信号ベクトルv(D,m)は、m=1の場合、式(30)に示したように、v(2,1)=[1,1,0]Tであるから、これを、セレクティブRAKE方式の信号空間S(sel)に投影した信号ベクトルv(2,1)(S(sel)(para))は、次式に示すように、信号ベクトルv(2,1)の3番目の要素を除去したものとなる。
【0185】
v(2,1)(S(sel)(para))=[1,1]T
・・・(46)
【0186】
また、m=2の場合、オールRAKE方式の信号ベクトルv(2,2)は、式(32)に示したように、v(2,2)=[0,1,1]Tであるから、これを、セレクティブRAKE方式の信号空間S(sel)に投影した信号ベクトルv(2,2)(S(sel)(para))は、次式に示すように、信号ベクトルv(2,2)の3番目の要素を除去したものとなる。
【0187】
v(2,2)(S(sel)(para))=[0,1]T
・・・(47)
【0188】
以上から、式(17)の右辺における共分散C[r,v(D,m)(S(sel)(para))]は、次のようになる。なお、ここでも、説明を簡単にするために、共分散C[r,v(D,m)(S(sel)(para))]を、ベクトルrとv(D,m)(S(sel)(para))の内積で近似することとする。
【0189】
即ち、m=1の場合、共分散C[r,v(2,1)(S(sel)(para))]は、式(39)のベクトルrと(46)の信号ベクトルv(2,1)(S(sel)(para))から、次のようになる。
【0190】
C[r,v(2,1)(S(sel)(para))]=[r(t-Tp),r(t-2Tp)]T・[1,1]T
=r(t-Tp)+r(t-2Tp)
・・・(48)
【0191】
また、m=2の場合、共分散C[r,v(2,2)(S(sel)(para))]は、式(39)のベクトルrと(47)の信号ベクトルv(2,2)(S(sel)(para))から、次のようになる。
【0192】
C[r,v(2,2)(S(sel)(para))]=[r(t-Tp),r(t-2Tp)]T・[0,1]T
=r(t-2Tp)
・・・(49)
【0193】
図8(E−1)に示すように、式(48)のr(t−Tp)は、パス#1の受信信号を、r(t−2Tp)は、パス#2の受信信号を、それぞれ表しており、また、図8(E−2)に示すように、式(49)のr(t−2Tp)は、パス#1の受信信号を表している。従って、新RAKE方式では、パス#1の受信信号、またはパス#1と#2の受信信号の加算値に基づいて、復調が行われる。
【0194】
即ち、新RAKE方式では、パス#1におけるt=Tpとパス#2におけるt=2Tpの受信信号r(t)を加算した加算値ADDと、パス#1におけるt=2Tpの受信信号r(t)のうち、加算値ADDの方が大きい場合には、m=1に復調され、パス#2におけるt=2Tpの受信信号r(t)の方が大きい場合には、m=2に復調される。
【0195】
より具体的には、いまの場合、D’=1としているので、図3におけるフィンガ21nの数Nが1の場合に対応する。従って、この場合、復調部21は、1つのフィンガ211だけから構成されることとなる。このフィンガ211は、基本的には、パス#1の受信信号r(t)を復調するが、t=2Tpに相当するタイミングでは、パス#1の受信信号r(t)だけでなく、パス#2の受信信号r(t)も復調する。即ち、フィンガ211は、パス#1を復調するとともに、パス#2の一部も復調する。そして、合成部22は、パス#1の受信信号r(t)の復調出力、またはパス#1の受信信号の復調出力とパス#2の一部の受信信号の復調出力との合成値に基づいて、最終的な復調データを求めて出力する。
【0196】
以上から、新RAKE方式では、単純には、m=2の場合には、セレクティブRAKE方式と同様のパフォーマンスとなるが、m=1の場合は、マルチパスによる符号間干渉を考慮して、オールRAKE方式と同様のパフォーマンスを得ることができることになる。即ち、全体としては、セレクティブRAKE方式の場合と比較して、パフォーマンスを向上させることができる。
【0197】
なお、セレクティブRAKE方式のフィンガ数(D’)と、新RAKE方式のフィンガ数とを同一数にした場合においては、そのフィンガ数を少なくするにつれて、セレクティブ方式および新RAKE方式のいずれについても、受信側の構成が簡単になる。しかしながら、フィンガ数を少なくすると、符号間干渉の影響が大きくなるので、セレクティブRAKE方式のパフォーマンスは低下するが、新RAKE方式では、そのパフォーマンスの低下を改善することができる。
【0198】
一方、フィンガ数を多くすれば、セレクティブRAKE方式と新RAKE方式のパフォーマンスは、いずれも、オールRAKE方式に近づくことになるが、受信側の構成も、オールRAKE方式と同様に複雑化することになる。
【0199】
また、セレクティブRAKE方式の信号空間S(sel)を表すD’×M個の関数のいずれもが、オールRAKE方式の信号空間S(all)を表すD×M個の関数から、セレクティブRAKE方式の信号空間S(sel)を表すD’×M個の関数を除いた(D−D’)×M個の関数に直交している(内積が0になる)場合には、符号間干渉は存在せず、従って、この場合、符号間干渉を考慮してパフォーマンスを向上させる新RAKE方式は、結果として、セレクティブRAKE方式と等価になる。
このことは、逆に言えば、符号間干渉が存在する限り、新RAKE方式が、セレクティブRAKE方式よりも高いパフォーマンスを発揮することを意味する。
【0200】
さらに、オールRAKE方式においては、すべてのmにわたって、信号ベクトルv(D,m)のエネルギが等しい。このことは、PPM復調器で用いられる信号ベクトルv(1,m)、およびセレクティブRAKE方式で用いられる信号ベクトルv(D ,m)についても同様であり、この場合、式(13)で定義される共分散C[x,y]を求める際の補正項yTyは無視することができる。
【0201】
一方、新RAKE方式では、信号ベクトルv(D,m)(S(sel)(para))のエネルギが、すべてのmにわたって同一であるとは限らず、従って、式(13)で定義される共分散を計算するにあたって、補正項yTyを考慮する必要がある。
【0202】
以上のように、マルチパスの一部のパスの信号空間S(sel)についての基底関数φp(t)と、受信信号r(t)との間の相関を要素とするベクトルrを求め、マルチパスの真の信号成分v(D,m)(t)とそのマルチパスの信号空間S(all)についての基底関数φp(t)との間の相関を要素とするベクトルv(D,m)を、マルチパスの一部のパスの信号空間S(sel)に投影したベクトルv(D,m)(S(sel)(para))と、先に求めたベクトルrとに基づいて、受信信号r(t)を復調するようにしたので、即ち、言い換えれば、マルチパスのうちの1のパスを復調するとともに、他の1のパスの一部を復調する1以上のフィンガ21nにおける復調結果を合成し、その合成結果に基づいて、復調データを出力するようにしたので、セレクティブRAKE方式と同一の信号空間で、符号間干渉を考慮しながら、マルチパスとなっている受信信号r(t)が復調される。その結果、簡単かつ小型で、パフォーマンスの高い受信装置を提供することが可能となる。即ち、同一のフィンガ数であっても、従来のセレクティブRAKE方式より、パフォーマンスの高い復調処理が可能となる。
【0203】
次に、上述した一連の処理は、ハードウェアにより行うこともできるし、ソフトウェアにより行うこともできる。一連の処理をソフトウェアによって行う場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、汎用のコンピュータ等にインストールされる。
【0204】
そこで、図9は、上述した一連の処理を実行するプログラムがインストールされるコンピュータの一実施の形態の構成例を示している。
【0205】
プログラムは、コンピュータに内蔵されている記録媒体としてのハードディスク105やROM103に予め記録しておくことができる。
【0206】
あるいはまた、プログラムは、フロッピーディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory),MO(Magneto optical)ディスク,DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体111に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体111は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0207】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体111からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、ディジタル衛星放送用の人工衛星を介して、コンピュータに無線で転送したり、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送し、コンピュータでは、そのようにして転送されてくるプログラムを、通信部108で受信し、内蔵するハードディスク105にインストールすることができる。
【0208】
コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)102を内蔵している。CPU102には、バス101を介して、入出力インタフェース110が接続されており、CPU102は、入出力インタフェース110を介して、ユーザによって、キーボードや、マウス、マイク等で構成される入力部107が操作等されることにより指令が入力されると、それにしたがって、ROM(Read Only Memory)103に格納されているプログラムを実行する。あるいは、また、CPU102は、ハードディスク105に格納されているプログラム、衛星若しくはネットワークから転送され、通信部108で受信されてハードディスク105にインストールされたプログラム、またはドライブ109に装着されたリムーバブル記録媒体111から読み出されてハードディスク105にインストールされたプログラムを、RAM(Random Access Memory)104にロードして実行する。これにより、CPU102は、上述したフローチャートにしたがった処理、あるいは上述したブロック図の構成により行われる処理を行う。そして、CPU102は、その処理結果を、必要に応じて、例えば、入出力インタフェース110を介して、LCD(Liquid CryStal Display)やスピーカ等で構成される出力部106から出力、あるいは、通信部108から送信、さらには、ハードディスク105に記録等させる。
【0209】
ここで、本明細書において、コンピュータに各種の処理を行わせるためのプログラムを記述する処理ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。
【0210】
また、プログラムは、1のコンピュータにより処理されるものであっても良いし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであっても良い。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであっても良い。
【0211】
以上、本発明を、UWB通信に適用した場合について説明したが、本発明は、UWB通信の他、例えば、キャリアを変調するCDMA通信その他の、マルチパスが形成される通信に適用可能である。また、本発明は、電波による無線通信の他、例えば、赤外線による通信等にも適用可能である。
【0212】
なお、本実施の形態では、1フレームのある1時刻に、パルスを配置することにより、データを送信するようにしたが、データの送信は、1フレームに、2以上のパルスを配置して行うことも可能である。
【0213】
また、本実施の形態では、マルチパスを形成するパス#dのパスゲインhdについては、|h1|≧|h2|≧・・・≧|hD|の関係があるものとしたため、UWB復調部13では、マルチパスを形成するパスのうち、強度の大きいパスを用いて、新RAKE方式による復調が行われることとなるが、新RAKE方式により復調を行うのに用いるパスとしては、強度の大きいパスの他、あるパス(例えば、強度が最も大きいパス)に対して遅延時間の短いパス等を選択するようにすること等も可能である。
【0214】
さらに、新RAKE方式による復調は、マルチパスによる符号間干渉が生じていない場合であっても行うことが可能である。
【0215】
【発明の効果】
本発明の一側面によれば、マルチパスとなっている受信信号を受信する受信装置を簡単かつ小型に構成するとともに、そのパフォーマンスを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したUWB通信システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】通信装置1の構成例を示すブロック図である。
【図3】 UWB復調部13の構成例を示すブロック図である。
【図4】 UWB通信における送信信号を説明するための図である。
【図5】信号ベクトルv(D,m)を、セレクティブRAKE方式の信号空間S(sel)に投影する様子を示す図である。
【図6】 UWB復調部13の構成例を示すブロック図である。
【図7】 UWB復調部13による復調処理を説明するフローチャートである。
【図8】新RAKE方式による復調処理を説明するための図である。
【図9】本発明を適用したコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1,12 通信装置, 2 伝送路, 11 UWB変調部, 12 アンテナ, 13 UWB復調部, 21 復調部, 211乃至21N フィンガ, 22合成部, 31 相関部, 311乃至31P 相関演算器, 32 共分散演算部, 33 信号ベクトル記憶部, 34 最大検出部, 101 バス, 102 CPU, 103 ROM, 104 RAM, 105 ハードディスク, 106 出力部, 107 入力部, 108 通信部, 109 ドライブ,110 入出力インタフェース, 111 リムーバブル記録媒体

Claims (10)

  1. マルチパスとなっている受信信号を復調する信号処理装置であって、
    前記マルチパスの一部のパスの信号空間についての基底関数と、前記受信信号との間の相関を求め、その相関を要素とする第1のベクトルを求める相関演算手段と、
    前記マルチパスの真の信号成分とそのマルチパスの信号空間についての基底関数との間の相関を要素とする第2のベクトルを、前記マルチパスの一部のパスの信号空間に投影した第3のベクトルと、前記第1のベクトルとに基づいて、前記受信信号を復調する復調手段と
    を備える号処理装置。
  2. 前記第3のベクトルを記憶している記憶手段をさらに備える
    求項1に記載の信号処理装置。
  3. 前記第3のベクトルは、前記第2のベクトルを、前記マルチパスのうちの強度の大きい一部のパスの信号空間に投影したものである
    求項1に記載の信号処理装置。
  4. 前記受信信号は、パルス位置変調された信号である
    求項1に記載の信号処理装置。
  5. 前記受信信号は、直交変調された信号である
    求項1に記載の信号処理装置。
  6. 前記受信信号は、マルチパスによる符号間干渉を生じている信号である
    求項1に記載の信号処理装置。
  7. 前記受信信号は、UWB(Ultra Wide Band)通信方式により送信されてきたものである
    求項1に記載の信号処理装置。
  8. マルチパスとなっている受信信号を復調する信号処理方法であって、
    前記マルチパスの一部のパスの信号空間についての基底関数と、前記受信信号との間の相関を求め、その相関を要素とする第1のベクトルを求める相関演算ステップと、
    前記マルチパスの真の信号成分とそのマルチパスの信号空間についての基底関数との間の相関を要素とする第2のベクトルを、前記マルチパスの一部のパスの信号空間に投影した第3のベクトルと、前記第1のベクトルとに基づいて、前記受信信号を復調する復調ステップと
    を備える号処理方法。
  9. マルチパスとなっている受信信号を復調する信号処理を、コンピュータに行わせるプログラムであって、
    前記マルチパスの一部のパスの信号空間についての基底関数と、前記受信信号との間の相関を求め、その相関を要素とする第1のベクトルを求める相関演算手段と、
    前記マルチパスの真の信号成分とそのマルチパスの信号空間についての基底関数との間の相関を要素とする第2のベクトルを、前記マルチパスの一部のパスの信号空間に投影した第3のベクトルと、前記第1のベクトルとに基づいて、前記受信信号を復調する復調手段
    して、コンピュータを機能させるためのプログラム。
  10. マルチパスとなっている受信信号を復調する信号処理を、コンピュータに行わせるプログラムが記録されている記録媒体であって、
    前記マルチパスの一部のパスの信号空間についての基底関数と、前記受信信号との間の相関を求め、その相関を要素とする第1のベクトルを求める相関演算手段と、
    前記マルチパスの真の信号成分とそのマルチパスの信号空間についての基底関数との間の相関を要素とする第2のベクトルを、前記マルチパスの一部のパスの信号空間に投影した第3のベクトルと、前記第1のベクトルとに基づいて、前記受信信号を復調する復調手段
    して、コンピュータを機能させるためのプログラムが記録されている録媒体。
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