JP4528600B2 - 流動電位測定装置およびその製造方法 - Google Patents
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すなわち、被処理水中のコロイド粒子は、ゼータ電位の絶対値が大きいと静電的な反発力が強くなるため分散性が強まり、他方、ゼータ電位が0に近づくと静電的な反発力が弱くなるため凝集しやすくなる。このように、コロイド粒子の凝集状態はゼータ電位の大きさに基づいて検知することができる。
被処理水の流動電位を測定する方法としては、例えば、分散系に機械的エネルギー(振動エネルギー)を与え、発生する電気出力を測定する方法(特許文献2参照)が用いられる。この分散系に機械的エネルギーを与える具体的な方法としては、例えば、コロイド粒子に超音波を照射する方法、ポンプにより脈動流を送る方法、機械的にショックを与える方法等が知られている(特許文献3乃至6参照)。
図8に示すように、従来の流動電位測定装置80は、コロイド粒子を含む被処理水が流されるシリンダ84と、シリンダ84の内部に同軸となるよう設けられ、このシリンダ84の軸方向に往復運動するピストン85と、ピストン85の往復運動の駆動を行うモータ83と、シリンダ84の内周面においてこのシリンダ84の軸方向に距離を隔てて設けられた一対のリング状の電極86a、86bとを備えている。また、一対の電極86a、86bには、この一対の電極86a、86b間の被処理水に生じる電位差を計測する電位差計測部87が接続されている。電位差計測部87としては、実際には、一対の電極86a、86b間の被処理水に生じる電位差を増幅して出力する例えばオペアンプが用いられる。また、電位差計測部87には、この電位差計測部87から送られる信号を増幅する信号増幅器88と、信号増幅器88から送られる信号からノイズを低減するアンプ89とが順に接続されている。
モータ83がピストン85を駆動してこのピストン85がシリンダ84の軸方向に沿って往復運動を行うことにより、被処理水がシリンダ84とピストン85との間の間隙を通過して流れる。このときに、一対の電極86a、86b間の被処理水の電位差である流動電位が、この一対の電極86a、86bに接続された電位差計測部87によって計測され、この電位差計測部87によって計測された信号が信号増幅器88およびアンプ89を介して外部に出力される。
このような流動電位測定装置80を用いた凝集剤注入制御システムとしては、例えば特許文献8乃至12等に開示されたものが知られている。
電位差計測部87が被処理水の流動電位の測定を行う間、この被処理水の濁質成分がシリンダ84やピストン85の表面全体に付着しており、このため一対の電極86a、86b間の被処理水の電位差を測定するにあたっては、通常はシリンダ84やピストン85を構成する部材の荷電状態の影響を受けることはない。
このような流動電位測定装置によれば、被処理水が流される絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面が研磨または穿孔による機械的表面仕上げにより形成された粗面となっているので、絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面に対して被処理水の濁質成分を十分に付着させることができる。このことにより一対の電極間の被処理水の電位差の測定において絶縁性直管および絶縁性芯棒の荷電状態の影響を受けることがなく、このため測定誤差の発生を抑止することができる。
このような流動電位測定装置によれば、絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面を保護層によりコーティングして保護することができ、しかも、この保護層により絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面の表面粗さまたは多孔度を自在に調整することができる。
このような流動電位測定装置によれば、絶縁性直管および絶縁性芯棒を耐熱性、耐薬品性および耐摩耗性に優れたものとすることができる。また、絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面に対して研磨または穿孔による機械的表面仕上げを確実に行うことができる。
このような流動電位測定装置の製造方法によれば、絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面に対して被処理水の濁質成分を十分に付着させることができ、このことにより一対の電極間の被処理水の電位差の測定において絶縁性直管および絶縁性芯棒の荷電状態の影響を受けることがなく、このため測定誤差の発生を抑止することができる流動電位測定装置を得ることができる。
このような流動電位測定装置の製造方法によれば、絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面を保護層によりコーティングして保護することができ、しかも、この保護層により絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面の表面粗さまたは多孔度を自在に調整することができる。
このような流動電位測定装置の製造方法によれば、化学的処理工程により形成された保護層の耐久性を向上させることができる。
このような流動電位測定装置の製造方法によれば、絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面の表面粗さまたは多孔度を増加させ、より確実に被処理水の濁質成分を付着させることができる。
このような流動電位測定装置の製造方法によれば、絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面の表面粗さまたは多孔度を増加させ、より確実に被処理水の濁質成分を付着させることができる。
このような流動電位測定装置の製造方法によれば、絶縁性直管および絶縁性芯棒を耐熱性、耐薬品性および耐摩耗性に優れたものとすることができ、また、絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面に対して研磨または穿孔による機械的表面仕上げを確実に行うことができる。
また、送液ポンプ29の出口側には流動電位測定装置10のホース17が接続されており、例えば毎分1リットル(L)の速度でホース17を介して貯留槽28内の被処理水を流動電位測定装置10に送るようになっている。
アンプ31は流動電位測定装置10の電位差計測部18から送られる信号のうち送液ポンプ29の動作に同期した成分だけを取り出す処理を行い、ノイズを低減している。
アンプ31からの出力は、このアンプ31に接続された記録計33に送られるようになっている。
図2(a)に示すように、流動電位測定装置10は、コロイド粒子を含む被処理水が一定速度で内部を流れる絶縁性直管11と、絶縁性直管11の内部に設けられ、この絶縁性直管11の長さ方向に延びる絶縁性芯棒12と、絶縁性直管11内において絶縁性芯棒12の端部12a、12bの近傍に各々設けられた一対の電極15a、15bとを備えている。また、この一対の電極15a、15bに、一対の電極15a、15b間の被処理水に生じる電位差を計測する電位差計測部18が接続されている。
図2(b)に示すように、この絶縁性直管11の内周面は、研磨または穿孔による機械的表面仕上げにより形成された粗面を有し、この粗面上に絶縁性物質1a、1b、1cが設けられ保護層1が形成されている。この場合、絶縁性直管11の内周面の表面粗さ(十点平均粗さ、JIS B 0601)は例えば数十μm以下となっている。
絶縁性芯棒保持部材14、14の外方には中空部13a、13aを有するキャップ13、13が例えばねじ込み方式で取り付けられている。各絶縁性芯棒保持部材14には被処理水を流通させる複数の貫通孔14aが設けられており、この貫通孔14aを介して絶縁性直管11の内部空間とキャップ13の中空部13aが連通している。
キャップ13、13にはホースニップル16、16が設けられており、ホースニップル16、16に入口側および出口側のホース17、17がキャップ13、13の中空部13a、13aに連通するよう取り外し自在に取り付けられている。
この絶縁性芯棒12の外周面は、研磨または穿孔による機械的表面仕上げにより形成された粗面を有し、この粗面上に絶縁性物質2a、2b、2cが設けられ保護層2が形成されている。この場合、絶縁性芯棒12の外周面の表面粗さは絶縁性直管11の内周面の表面粗さと略同一である。
絶縁性直管11と絶縁性芯棒12との間の間隙の幅aが短すぎるときには、十分な量の被処理水が絶縁性直管11と絶縁性芯棒12との間の流路を通過することが難しくなる。他方、絶縁性直管11と絶縁性芯棒12との間の間隙の幅aが長すぎるときには、絶縁性直管11と絶縁性芯棒12との間の流路がいわゆる毛細管としての機能を果たすことが難しくなる。
なお、この絶縁性芯棒12の外周面と絶縁性直管11の内周面との間に形成される間隙の幅aは、絶縁性芯棒12の外径または絶縁性直管11の内径を変更することにより自在に調整することができる。
この機械的処理工程40における研磨は例えばエメリーペーパー等により行われ、また穿孔は小型ドリルによって各表面に細かな浅い穴を開けることにより行われる。
絶縁性直管11の内周面および絶縁性芯棒12の外周面に設けられる絶縁性物質1a、1b、1c、2a、2b、2cとしては、耐熱性、耐薬品性および耐摩耗性に優れた窒化物、炭化物等からなる無機材料、または塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂等からなる有機材料が用いられる。
さらに、各熱処理工程42における加熱温度は、熱処理工程42の実行回数が増えるにつれて低くなっている。すなわち、内側に位置する絶縁性物質1a、2aから順次外側に位置する絶縁性物質1c、2cに向かって各熱処理工程42における加熱温度が低下する。
被処理水の流動電流(i)とゼータ電位(ζ)の簡略化した関係は下記式(1)により示される(S.K.Dentel、Water Supply vol.9 571−575ページ、1991年)。また、流動電位(E)と流動電流(i)との関係は下記式(2)により示される。
E=i×R ・・・式(2)
ここで、εは被処理水の誘電率、wは駆動モータの回転速度、sは絶縁性直管11の軸方向長さ、Rは絶縁性芯棒12の半径、cは絶縁性直管11と絶縁性芯棒12との間の隙間の大きさである。
すなわち、流動電位測定装置10によって被処理水の流動電位を測定することにより、この流動電位に比例するゼータ電位(ζ)に基づいて、コロイド粒子の凝集状態を検知することができる。
絶縁性直管11の内周面および絶縁性芯棒12の外周面への絶縁性物質の塗着は内側ほど強固となり、外側はより低い温度での処理のためにややアモルファス状態で塗着された状態になっており、そのため表面の多孔度が高くなっている。このことにより、絶縁性直管11の内周面および絶縁性芯棒12の外周面の表面粗さまたは多孔度を増加させ、より確実に被処理水の濁質成分を付着させることができる。
一方、比較例において用いられる流動電位測定装置10は、実施例において用いられる流動電位測定装置10と略同一の構成となっているが、絶縁性直管11の内周面および絶縁性芯棒12の外周面に対しては何も表面処理が行われていない。
混合槽26において、凝集剤が添加された被処理水を攪拌機27により270rpmで急速撹拌を行い、撹拌された被処理水を貯留槽28に送って一旦貯留する。そして、貯留槽28に貯留された被処理水を送液ポンプ29により脈動流で流動電位測定装置10に送る。
すなわち、本実施例によれば、被処理水の濁質濃度が低く、濁質成分の量が少ない場合であっても、この濁質成分が絶縁性直管11の内周面および絶縁性芯棒12の外周面に対して十分に付着することにより、一対の電極15a、15b間の被処理水の電位差の測定において絶縁性直管11および絶縁性芯棒12の荷電状態の影響を受けることがなく、このため測定誤差の発生を抑止することができることがわかる。
すなわち、この比較例によれば、被処理水の濁質濃度が低く、濁質成分の量が少ない場合には、濁質成分が絶縁性直管11の内周面および絶縁性芯棒12の外周面に対してあまり付着しないので、一対の電極15a、15b間の被処理水の電位差の測定において絶縁性直管11および絶縁性芯棒12の荷電状態の影響を受け、測定誤差が発生してしまうことがわかる。
すなわち、本実施例によれば、濁質成分が絶縁性直管11の内周面および絶縁性芯棒12の外周面に対して十分に付着することにより、一対の電極15a、15b間の被処理水の電位差の測定において絶縁性直管11および絶縁性芯棒12の荷電状態の影響を受けることがなく濁質成分の電位が検知された。このため測定誤差の発生を抑止することができることがわかる。
すなわち、この比較例によれば、絶縁性直管11および絶縁性芯棒12の材質が変化することによりこれらの絶縁性直管11および絶縁性芯棒12の荷電状態が変化し、一対の電極15a、15b間の被処理水の電位差の測定においてこの変化した荷電状態の影響を受けるので測定誤差が発生してしまうことがわかる。
1a、1b、1c 絶縁性物質
2 保護層
2a、2b、2c 絶縁性物質
10 流動電位測定装置
11 絶縁性直管
12 絶縁性芯棒
12a、12b 端部
13 キャップ
13a 中空部
14 絶縁性芯棒保持部材
14a 貫通孔
15a、15b 一対の電極
16 ホースニップル
17 ホース
18 電位差計測部
18a 導電線
19 補正用測定部
20 凝集状態検知システム
21 原水タンク
22 攪拌機
23 原水送液ポンプ
24 凝集剤タンク
25 凝集剤送液ポンプ
26 混合槽
27 攪拌機
28 貯留槽
29 送液ポンプ
31 アンプ
32 アンプ電源
33 記録計
40 機械的処理工程
41 化学的処理工程
42 熱処理工程
80 流動電位測定装置
83 モータ
84 シリンダ
85 ピストン
86a、86b 一対の電極
87 電位差計測部
88 信号増幅器
89 アンプ
Claims (9)
- 被処理水が流され、内周面が研磨または穿孔による機械的表面仕上げにより形成された粗面を有する絶縁性直管と、
絶縁性直管の内部に、この絶縁性直管の内周面との間に間隙を形成するよう設けられ、当該絶縁性直管の長さ方向に延び、外周面が研磨または穿孔による機械的表面仕上げにより形成された粗面を有する絶縁性芯棒と、
絶縁性直管内において絶縁性芯棒の両端部の近傍に各々設けられた一対の電極と、
一対の電極に接続され、一対の電極間の被処理水に生じる電位差を計測する電位差計測部と、
を備えたことを特徴とする流動電位測定装置。 - 絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面に、更に絶縁性物質が設けられ保護層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の流動電位測定装置。
- 絶縁性直管および絶縁性芯棒の材質が塩化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂のうちのいずれか一つであることを特徴とする請求項1または2記載の流動電位測定装置。
- 被処理水が流される絶縁性直管と、絶縁性直管の内部に、この絶縁性直管の内周面との間に間隙を形成するよう設けられ、当該絶縁性直管の長さ方向に延びる絶縁性芯棒と、絶縁性直管内において絶縁性芯棒の両端部の近傍に各々設けられた一対の電極と、一対の電極に接続され、一対の電極間の被処理水に生じる電位差を計測する電位差計測部と、を備えた流動電位測定装置の製造方法において、
絶縁性直管および絶縁性芯棒を準備する準備工程と、
絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面に対して、それぞれ研磨または穿孔による機械的表面仕上げを行って、絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面に各々粗面を形成する機械的処理工程と、
を備えたことを特徴とする流動電位測定装置の製造方法。 - 機械的処理工程により得られた絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面に対して、それぞれ絶縁性物質を化学蒸着または噴出溶射により設けて保護層を形成する化学的処理工程を更に備えたことを特徴とする請求項4記載の流動電位測定装置の製造方法。
- 化学的処理工程により得られた絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面の保護層に対して加熱を行う熱処理工程を更に備えたことを特徴とする請求項5記載の流動電位測定装置の製造方法。
- 化学的処理工程および熱処理工程が交互に複数回行われ、
それぞれの化学的処理工程毎に異なる種類の絶縁性物質を用いることにより絶縁性直管の内周面および絶縁性芯棒の外周面に対して複数の種類の絶縁性物質をそれぞれ多段に設けることを特徴とする請求項6記載の流動電位測定装置の製造方法。 - 各熱処理工程において、内側に位置する絶縁性物質に比べて外側に位置する絶縁性物質に対する加熱温度を順次低下させることを特徴とする請求項7記載の流動電位測定装置の製造方法。
- 絶縁性直管および絶縁性芯棒の材質が塩化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂のうちのいずれか一つであることを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の流動電位測定装置の製造方法。
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