JP4520451B2 - 単一又は複数のセンサー群を使用して木製品の寸法安定性を判定する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、概括的には、寸法の安定性を含め、木製品の各種特性の定性的及び/又は定量的評価を推断するための、単一又は複数のセンサー群システムの使用に関する。
丸太、板、他の製材品などの様な木製品は、製品の潜在的反り量又は寸法安定性に基づいて、定性群に等級付け又は類別される。板幅方向の反り、板厚方向の反り、捩れ、及び面反りは、反りの例であり、図1に示されている。特定の雰囲気条件での反りの状態又は木製品の反りの不安定性の程度を、定性的に表すのに、群が使用されている。定性群は、通常、実際には序数であるが、公称分類も使用される。
反りの定性的評価の例を挙げると、限定するわけではないが、低度の板幅方向の反り、高度の板幅方向の反り、0.5インチ未満で0.25インチを超える板幅方向の反り、中度の板厚方向の反り、1インチを超す板厚方向の反り、などの評価がある。木製品が、再加工された後、又はその水分が再分配された後、又は新たな相対湿度環境に置かれた後、木製品に生じるであろう反りの歪みを類別することができれば望ましい。それら類別化の例を挙げると、限定するわけではないが、20%RHでの低度の板幅方向の反り、65%RHでの中度の板幅方向の反り、90%RHでの高度の板厚方向の反り、20%RHでの0.5インチを超す板幅方向の反りである。木製品は、木製品に生じる変化の量(即ち、0.25インチに等しい板幅方向の反り)の様に、定量的に特徴付けることもできる。定量的評価を行うための既知の方法を幾つか以下に説明する。
反りの程度は、密度、弾性率(以後「MOE」と呼ぶ)、含水量変動、木髄位置、圧縮あて材、木理角度その他の様な幾つかの既知の要因によって異なる。上記要因の多くは、異なる種類のセンサーで定量的又は定性的に評価することができる。例えば、MOEは木材を通る音の伝播から推定され、比重は木材のキャパシタンスから推定される。上記特性それぞれの検出には、異なる種類のセンサー群又はシステムが利用される。
米国では、1995年から1998年までの3年間で、中実の軟木製材の利用は、壁枠組み、床枠組み、屋根枠組みで、それぞれ、9.9%、17.2%、及び11%ずつ落ち込んだ(Eastin他、2001年)。300近い建築業者を対象にしたこの調査では、製材の真直度が、購入決定に影響する最も重大な要素であると評価されたが、調査対象とされた全ての品質属性の中で、真直度に対する不満が最も高かった。軟木製材は、産業界が製品の供用時の反りの安定性を改善しない限り、市場でのシェアを失い続けるであろうと、一般に認識されている。
木製品の用途の中には、製品が使用に供された後の著しい寸法変化(厚さ、幅、長さ)を許容できないものもある。例えば、ドアや窓の様な許容公差が厳しい用途では、厚さや幅寸法の不安定性は、干渉問題を生じさせかねない。トラスの弦材に使用されている木材の長さが不安定であれば、結果的に、トラスが内装壁板より高く隆起して天井と内装壁の間に空隙が生じるトラス揚圧力として知られている問題が発生することになりかねない。
米国では、大部分の軟木規格材は、その外観及び構造的特性に影響する各種属性に対して視覚的に等級が付けられている。それら属性には、木節、丸身、寸法(厚さ、幅、及び長さ)、腐朽、裂け及び浅割れ、木理の傾斜、真直度(反り)が含まれる。等級が指定された時点で、全ての製材が「等級に見合った状態である」ことを保証するために、第三者的な等級付け機関により監督される厳格な品質管理が実施されている。不都合にも、木材の真直度と寸法は不変なわけではなく、当該木材が等級付けされた後も変化することがある。当該木材が流通経路に入った後、又は使用に供された後になって、更なる反りや寸法変化の生じることもある。炉で乾燥した新しい製材の典型的な含水量は、平均15%だが、6%から19%の範囲にある。この製材は、一年の内の時期、地理、及び用途が内装か外装かによって、3%から19%までの範囲の水分と最終的に平衡する(木材ハンドブック)。この水分変化は、結果として、寸法と反り特性の両方に変化を起こす。どの様な製材も、a)収縮特性が一様ではなく、水分量が変化したら、又はb)元の等級が指定された時点でその含水量が一様でなかったら、追加の「供用中」反りが生じ易い。上記状態は何れも、従来の目視による等級付け方法では検知することができない。木製品の顧客は、寸法と反りの両方の特性に安定性を求めている。
木材ハンドブックは、中実の製材の幅と厚さの安定性を評価する場合の指針を提供している。平均的な厚さと幅の収縮度は、木理の向き、並びに半径方向と接線方向の収縮特性で決まる。それら半径方向と接線方向の平均的収縮度の値は、種毎にまちまちであり、心材が在る場合には値は小さくなる。種の平均的な厚さと幅の収縮挙動を推定するのに上記方法を使用することはできるが、精度の高い定量化の方法は存在していない。長さの収縮度を推定する設計ツールについては更に数が少ない。
反りの安定性と相関する視覚表示を定義するために、数多くの研究が試みられた(例えば、Johansson、2002年、並びにBeard他、1993年)。候補的な指標には、幼木割合、木理の向き、圧縮当て材、木髄位置、丸身、木節特性、並びに成長速度が含まれている。上記の研究では、螺旋状の木理は、捩れ安定性の有効な予測判断材料となりうることが実証されたが、概して、板幅方向の反りと板厚方向の反りの安定性の信頼できる視覚的指標は無いことが裏付けられた。
水分と各種木材特性がどの様に相互作用して歪みを生じさせるのかを説明するために、幾つかの論理的モデルも開発された。約50年前に、製材の捩れを、螺旋状の木理角度、木髄からの距離、水分損失時の接線方向の収縮速度、の関数として説明するために、数学的モデルが開発された(Stevens他1960年)。他の最近の研究は、板幅方向の反りと板厚方向の反りの歪みを、密度、年輪、水分、弾性率などの三次元パターンの関数として予想するために有限要素モデルの開発に努めている(Ormarsson他、1998年)。Stanish他に対する一連の米国特許(第6,308,571号、第6,305,224号、及び第6,293,152号)では、別の有限要素モデルが説明されている。それらモデルの全ては、製材の反りの根本的原因は、製材が乾燥するときに著しく収縮し、この収縮は異方性で且つ不均一性が高い、という事実に関係することを教示している。木製品の反りの安定性の予測は、その含水量が周囲の環境の蒸気圧によって変化し、この「平衡水分」は同一木材内でも2つの箇所の間で、これら2箇所の間の化学的及び繊維的差によって大きく異なるという事実により、更に困難になっている。
今日、原寸大製材製品内の平衡水分及び収縮係数のパターンは、実験室環境内でしか正確に測定できない。実験室の技法は、製材を小さい「切り取り試片」に切断し、ASTM標準D−4492及びD−143を使用して含水量と収縮係数をそれぞれ測定することを伴っている。木材の平衡水分と収縮挙動については沢山のことが知られているが、包括的な理論的モデルも、リアルタイム製造環境で上記特性を監視する方法も、未だ存在していない。
木材の収縮モデルを開発するための基本的な研究の多くは、数十年前に実施された。収縮は、微小繊維角度に関係することが知られている(Meylan、1968年)。この関係は、微小繊維角度が30度から40度の範囲にある場合が最良であり、上記範囲外では関係は弱い。Wooten(Wooten、1967年)は、微小繊維角度が大きい(>40度)若木の木材の長手方向収縮度は、S層の厚さと相関関係がある様に見えると観測したが、データは一切提示されなかった。Cave(Cave、1972年)は、S層の影響を含む収縮理論を提示した。更に最近では、Floyd(Floyd、2005年10)が、或る種のヘミセルロース成分、特にガラクタンは、微小繊維と相互作用して、長手方向の収縮率に影響することを実証した。この折衷型の研究は、微小繊維角度と木材ヘミセルロースの化学に関係する測定が、木材の収縮パターンの予測に有効であることを示唆している。
上記の取り組み法を使って収縮特性を推定した成功例が、幾つかの研究で最近報告されている。Stanish他に発行された上記参考特許文献は、(微小繊維角度に関係付けて)音響又は超音波伝播速度のパターンを解明することにより、収縮挙動を推論する方法を教示している。最近の特許及び刊行物の幾つかは、高速製材製造工程に更に適した収縮係数推定法を開示し始めた。例えば、Nystom(Nystrom他11)は、木材の長手方向の収縮と、微小繊維角度とも関係がある木材の光学特性(「仮導管効果」)との間の関係を実証した。「仮導管効果」は、Matthews他に対して発行された米国特許第3,976,384号で教示されている。最近の数多くの刊行物と特許(例えば、Kelley他12)は、近赤外線分光法(NIRS)というケモメトリック法を使用して、収縮特性を推断する方法を教示している。NIRSは、この方法が、繊維の物理的属性(例えば、微小繊維)と化学的属性(例えば、ヘミセルロース)の両方に感受性を有することから、特に興味深い方法である。
不都合にも、上記の各方法の中には、単一片の製材の寸法安定性を適切に評価できるほど正確なものはない。従って、木製品の現在又は将来的な反りの歪み又は木製品の反りに関係する特性の定性的及び/又は定量的評価を行うために、単一又は複数のセンサーシステムを使用することが必要とされている。
米国特許第6,308,571号 米国特許第6,305,224号 米国特許第6,293,152号 米国特許第3,976,384号 Eastin, I.L., Shook, S.R., Fleishman, S.J.,米国住宅建設産業の材料代替、1994年対1988年、林産品ジャーナル、15巻、第9号、31−37 木材ハンドブック、一般技術報告書113(1999年)、米国農務省、森林業務、林産品研究所 Johansson, MとKliger, R、ノルウェートウヒのスタッドにおける反りに対する材料特性の影響、木材及び繊維科学、34(2)、2002年、pp325−336、2002年、木材科学技術協会より Beard.J.S,, Wagner, F.G., Taylor, F.W., Seale, R.D.,サザンパイン製材の2つの構造的等級における反りに対する成長特性の影響、林産品ジャーナル、43巻、第6号、pp51−56 Stevens, W.C.とJohnston, D.D.,螺旋状の木理により発生する歪み、ティンバーテクノロジー誌、1960年6月、pp217−218 Ormarsson, S., Dahlblom, O., Petersson, H., 湿度変動を受けた製材の形状安定性の数値的研究、木材科学及び技術32(1988年)325−334、Springer-Verlag1998年 Meylan, B.A.,木材の高い長手方向収縮の原因、林産品ジャーナル、18巻、第4号、1968年4月、pp75−78 Wooten, T.E., Barefoot, A.C., Nicholas, D.D.,圧縮当て材の長手方向収縮、Holzforschung, Bd.21(1967年), Heft 6, pp168−171 Cave, I.D.,木材の収縮の理論、木材科学技術(1972年)6:284−292 Floyd, S.「木材の長手方向収縮に対するヘミセルロースの影響」、ヘミセルロース研究会2005年;WQI Limited-木材品質の新知識。2005年1月10−12日、ニュージーランド、カンタベリー大学、木材技術研究センターにて開催された会議、Kenneth M., Entwistle, John C.F. Walker共著、115−、ニュージーランド、クライストチャーチ、2005年 Nystrom,J.;Hagman, O.;生及び乾燥状態において圧縮当て材を検知する方法、SPIEの議事録−国際光工学協会(1999年)、3826巻、p.287−94 Kelley, S.;Rials, T.;Snell, R.;Groom, L.;Sluiter, A;木材科学及び技術(2004年)、38(4)、257−276 Hastie, T., Tibshirani, R., 並びにFriedman, J.,(2001年)、統計的学習の要素、ニューヨーク、スプリンガー出版 Ripley, B.D.(1996年)パターン認識とニューラルネットワーク、ケンブリッジ、ケンブリッジ大学出版 非特許文献13に同じ 非特許文献11に同じ Williams, P., Norris, K.(著者)、(2001年)、農業及び食品産業における近赤外線技術、第2版、米国穀物科学者学会、セントポール、Minn)、312pp
本発明は、概括的には、木製品の収縮パターン、水分パターン、及び反り安定性の改良された推定を得るため及びこれを検証するための各種方法に関する。「木製品」という用語は、板、丸太、又はその他の種類の製材などを意味するものと解釈されたい。この方法は、定性的及び/又は定量的推定を提供するために、単一及び/又は複数のセンサー群システムを使用することを伴っている。寸法安定性の推定は、測定値を類別したものを一斉に使用すると大幅に改善されることが発見されており、その場合、各測定値が1つ又はそれ以上の変数に関係する情報に寄与する。各測定値は、特定の実施形態を前提として、大きさが異なる木製品の1つ又はそれ以上の部分で採取される。1つ又はそれ以上の部分で観測される特性は、関心領域の寸法安定性の定性的及び/又は定量的推定を可能にする。第1の実施形態では、関心領域は、木製品の切り取り試片又は他の部分である。別の実施形態では、関心領域は、木製品の1つ又はそれ以上の部分と重複している。別の実施形態では、関心領域は、木製品全体である。更に別の実施形態では、関心領域は、センサー群(群団)により検出される1つ又はそれ以上の部分と同じである。別の実施形態では、関心領域は、1つ又はそれ以上の部分と重複していない。評価対象の寸法安定性は、面反り、板幅方向の反り、板厚方向の反り、捩れ、長さ安定性、厚さ安定性、幅安定性、又は上記の組み合わせである。以下は、本発明の各種実施形態である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳しく説明する。
A.組成(例えば、水分)、収縮率、又は木理角度の非均一性が、木製品に反りの不安定性を発生させる、木製品の関心領域の分析を介して、定性的及び/又は定量的評価を提供するのために複数のセンサー(センサー連合)を使用する方法
本発明の或る実施形態では、木製品を複数の群又は分類の内の1つに類別化するため、類別アルゴリズムが作成される。群は、定性的又は定量的特徴に基づいている。例えば、或る実施形態では、分類は異なる等級である。板の様な木製品の反りの類別には、板の特性を検出する1つ又はそれ以上のセンサー群からの入力が必要である。センサー群は、木製品を分析するための先に述べたシステムの一部である。それらシステムの技術は、当業者には既知である。例えば、センサー群は、含水量測定値、電気的特性測定値、構造的特性測定値、音響超音波特性測定値、光散乱(仮導管効果)測定値、木理角度測定値、形状測定値、色測定値、スペクトル測定値、及び/又は欠陥マップ、を得る。構造的特性測定では、弾性率、密度、比重、強度、又はそれらの組み合わせを測定する。音響超音波特性測定では、速度及び/又は減衰を測定する。スペクトル測定は、紫外線から近赤外線までの範囲に亘る波長スペクトルに対する吸収又は反射値により特徴付けられる。
この取り組み法を使用すれば、本発明の予測モデル又はアルゴリズムは、多種多様な分解能倍率の入力を利用することができる。例を挙げると、板平均MOE、板の長さに沿って1フィート置きに板幅に亘って測定した含水量、1インチ刻みで収集した分光データ、又は4分の1インチ刻みで収集したレーザーデータである。
入力は、センサー信号の関数であり、定量的又は定性的の何れかである。例えば、入力は、水分計により推定された、一本の製材の12インチ毎の直線部分の推定含水量でもよい。別の例としては、カラー画像に基づく、木材の12インチx1インチ部分内の木節の有無を示す指標がある。入力は、センサー測定値そのもの、事前処理された信号、幾つかのセンサーからの信号の組み合わせ、又は他のセンサー群からの予測測定値でもよい。信号の事前処理には、限定するわけではないが、当技術では既知の、フィルタリング、平滑化、導関数計算、パワースペクトル計算、フーリエ変換などが含まれる。他のセンサーからの予測測定値には、限定するわけではないが、木材の光散乱及び光吸収特性を測定するセンサーから予測された収縮係数で、部分最小二乗又は「PLS」予測モデルに対する入力として使用される収縮係数が含まれる。
一組の入力に基づく予測アルゴリズム又はモデルは、限定するわけではないが、回帰ツリー、類別化ツリー、線形判別分析、二次判別分析、論理的回帰、部分最小二乗、又はニューラルネットワークの様な他の監視型学習技法、を含む多くの技法を使って導き出される。数多くの形態の使用可能な数式又はアルゴリズムがあり、一般的な文献としてHastie他13がある。
上記アルゴリズムは、板を2つ又はそれ以上の群に類別するために開発することができる。例えば、板は、4つの等級(第1等級、第2等級、第3等級、第4等級)、又は2つの類別種(反り有りと反り無し)、又は3つの分類(板幅方向の反りが0.25インチ未満、0.25インチから0.5インチ、0.5インチよりも大きい)に類別してもよい。通常、モデル又はアルゴリズムのパラメーターは、調練用データセットから導き出され、生産に使用する前に試験用データセットで性能を試験されるが、他の取り組み方も存在する。
各種実施形態は、センサー群とアルゴリズムの使用を伴うものと考えられる。第1の実施形態では、単一のセンサー群が、木製品を、例えば等級の様な複数の群又は分類の内の1つに類別する類別化アルゴリズムに、入力を提供する。
第2の実施形態では、単一のセンサー群が、先の実施例でのように、類別化アルゴリズムに入力を提供する。しかしながら、この実施形態では、木製品を類別した後に、第2のアルゴリズムが選択される。この第2のアルゴリズムは、寸法安定性を定量的なやり方で評価するのに使用される複数のアルゴリズムから選択される。
第3の実施形態では、2つ又はそれ以上のセンサー群が、木製品を複数の分類の内の1つに類別するため、類別化アルゴリズムに2つ又はそれ以上の入力を提供する。
第4の実施形態では、2つ又はそれ以上のセンサー群が、木製品の寸法安定性の定量的評価を提供するためのアルゴリズムに対して、2つ又はそれ以上の入力を提供する。
第5の実施形態では、2つ又はそれ以上のセンサー群が、木製品を複数の分類の内の1つに類別するため、類別化アルゴリズムに2つ又はそれ以上の入力を提供する。次いで、木製品の類別後に第2のアルゴリズムが選択される。この第2のアルゴリズムは、寸法安定性を定量的なやり方で評価するのに使用される複数のアルゴリズムから選択される。
次の実施例では、製材の反りの類別を予測するため、複数のセンサーからの情報がどの様に使用されたかを説明する。
実施例1
各群が長さ8フィートの2インチx4インチの板約200枚から成る製材群を3群、製材所から得た。複数のセンサーを介して、各製材を、板幅方向の反り、板厚方向の反り、平均含水量、超音波速度、について測定し、密度プロフィールを得た。次いで、各木材を、20%の相対湿度又は「RH」環境に5週間置いて、その後再度板幅方向の反りと板厚方向の反りを測定した。この実施例では、目的は、複数のセンサーからの初期データを使用して、板を(20%RHにおける)2つの最終的な反りの等級に類別化することであった。最終的な反りの等級は次のように定義した、即ち、20%RHでの絶対板幅方向の反りが0.5インチよりも大きいか、20%RHでの絶対板厚方向の反りが1.0インチよりも大きい場合には、その板を「不良品」として類別した。それ以外では、板は「良品」として類別した。
製材群1と3からの初期データは、類別化アルゴリズムを開発し調練するのに使用し、群2の板からの初期データは、それを試験するのに使用した。類別化アルゴリズムの開発には5つの入力、即ち、初期絶対板幅方向の反り、初期絶対板厚方向の反り、超音波速度、初期含水量、及び板密度の変動の測度、を使用した。群1と3からの各板を、それぞれの最終絶対板幅方向の反りと最終絶対板厚方向の反りに基づいて、2つの群、即ち不良品と良品に割り振った。この定義を使用すると、調練用のセット、群1と3には、92枚の不良品と309枚の良品があった。
板を類別化するための判別関数を開発するため、線形判別分析を使用した。下表は、調練用セットにおいて、不良品又は良品として正しく類別された板と正しく類別されなかった板の割合を示している。
Figure 0004520451
83パーセント即ち92枚の不良品の内の76枚は、不良品として正しく類別された。91パーセント即ち309枚の良品の内の280枚は、良品として正しく類別された。図2は、誤類別された板をプロットした図である。
調練用セットで開発した線形判別関数を、次に、板の試験用セット、即ち群2に適用した。この群では、62枚の板が不良品として割り振られ、143枚が良品として割り振られた。判別関数を使用した類別化の結果を下表に示す。
Figure 0004520451
この場合、62枚の不良品の内の50枚は、初期データを用いて、不良品として正しく類別されており、これを換算すると81%の精度ということになる。更に、135枚の良品は、初期データを用いて、良品として正しく類別されており、これを換算すると94%の精度ということになる。誤類別された板のグラフを図3に示す。
例えば、予測される等級が既存の業界格付け等級であり、目的が木製品をそれらの格付け等級に選別することであるときには、上記方法の特別な場合が発生する。既存の格付け等級を使用せず、木製品をその特定の使用法に基づいて開発された新しい等級に選別するときには、別の特別な場合が発生する。一例を挙げると、製材を、乾燥気候での反りが著しいもの対そうでないもの、を含む各分類に類別する場合である。
誤類別の費用の推定を、類別化モデル又はアルゴリズムの作成に使用してもよい。例えば、不良品の板を良品として類別した場合の費用のほうが、良品を不良品として類別した場合よりも高くなる場合がある。その場合、モデル及び/又はアルゴリズムは、より費用の高い間違い14の発生を最小化するようなやり方で上記費用を使用して開発される。
寸法安定性の指標としての収縮率係数
木材は、含水量が変化すると寸法が変化する吸湿性材料である。この現象は、局所的な(繊維の)規模で生じる。含水量の変化に伴って起こる寸法変化は、木材の乾燥又は膨潤力に起因する。木材の寸法変化は、内部(又は外部)応力の分布に変化があれば何時でも生じる。水分誘発性収縮(並びに、結果的には収縮関係応力)は、ガラクタン含有量、微小繊維角度、比重、MOEなどの様な、幾つかの既知の要因によって異なる。上記要因の多くは、異なる種類のセンサーで定量的又は定性的に評価することができる。例えば、MOEは、木材中の音の伝播から推定し、比重は木材のキャパシタンスから推定することができる。そこで、複数のセンサーを組み合わせて使用して、木材の水分誘発性収縮パターンを推定することができる。パターンの空間分解能は、測定値の空間分解能に依存する。
所与の木材の水分誘発性寸法変化は、当該木材の物理的及び化学的特性、並びに水分変化の度合いと初期及び最終含水量の値の両方、に依存する。木材の収縮挙動は、一般には収縮係数(或いは、LSRC=長手方向収縮率係数とも呼ばれる)として表現され、
Figure 0004520451
と定義され、ここに、lは木材部分の長さ、MCは木材の含水量、ギリシャ文字Δは馴染みの数学的差分演算子である。この収縮係数は、含水量の関数である。
複数のセンサーによる収縮係数パターンの推定は、収縮係数予測式及び/又はアルゴリズム、並びにセンサーから当該式又はアルゴリズムへの入力を介して実現される。木製品の各部分毎に、2つ以上の収縮係数予測式及び/又はアルゴリズムが利用される。1つの木材の収縮パターンの推定は、適切な収縮係数と、初めと終わりの水分状態から求められる。
収縮モデルに対する入力は、センサー信号の関数であり、定量的又は定性的の何れかである。例えば、入力は、水分計により推定された、1つの製材の12インチ刻みの各直線部分の推定含水量でもよい。別の例は、RGB画像に基づく、木材の12インチx1インチ部分の木節の有無を示す標識である。モデルに対する入力は、センサー測定値そのものでも、事前処理された信号でも、幾つかのセンサーからの組み合わせ信号でもよい。信号の事前処理には、限定するわけではないが、当技術では周知のフィルタリング、平滑化、導関数計算、パワースペクトル計算、フーリエ変換などが含まれる。
収縮係数予測式及び/又はアルゴリズムは、入力のセットを実数値の番号にマップするのに使用される。利用できる式又はアルゴリズムの形態は沢山あるが、一般的なものはHastie他15である。広く使われている例は、y=β+Σβijijの線形モデルであり、ここに、yは応答変数(例えば、LSRC)であり、入力のセットxijは上記入力又は上記入力の基底の拡張である。代表的には、その様なモデルの係数は、演繹的に既知ではなく、調練用のデータセットから求められる。監督下学習手順の他の例としては、回帰ツリー、加算モデル、ニューラルネットワーク、ペナルティ方式、及びブースティング方式が挙げられる。
入力の空間分解能は、収縮推定の空間分解能を決定する。収縮推定の分解能が十分に高ければ、板の様な1つの木材全体の収縮パターンを推定することができる。或る実施形態では、2x4の製材に必要な分解能は、12インチ(長さ)x3/4インチ(幅)x3/4インチ(厚さ)であるが、どの様な実際的なレベルの分解能も可能である。予測を実施する板の部分は、切り取り試片である。切り取り試片の収縮を推定するパターンは、木製品の収縮パターンを表すのに使用することができる。
2つの一般的な種類の収縮推定、即ち、例えば板の各切り取り試片レベルの木片の収縮値を予測する「絶対」収縮推定と、切り取り試片と基準試片の間の収縮差を予測する「差分」収縮推定と、が使用される。
木材には、例えば、雰囲気RH条件に変化があった場合、又は木材の含水量の非均一性を平衡化できる場合は、局所的含水量変化が起こる。絶対にしろ差分にしろ、推定した収縮パターンを使って、木製品の水分誘発性寸法変化を推定することができる。これは、例えば、収縮推定のパターンを有限要素モデルに対する入力として使用することにより達成できるが、他の選択肢も存在する。
次の実施例では、複数のセンサーからの情報が、雰囲気相対湿度の変化に起因する木材の寸法変化の推定に、どの様に使用されたかを説明する。
実施例2
使用したセンサーデータは、「仮導管効果」線画像と近赤外線(NIR)分光法から得た吸収スペクトルであった。(上記2つのセンサー技法を説明する追加的情報は、(NystromとHagman)16と(WilliamsとNorris)17それぞれに見つけることができる。)収縮係数較正モデルの構築には、約350枚の12”x1”x3/4”の木材片から成る調練用データセットを使用した。各木材片を走査して、仮導管効果画像とNIRスペクトルの両方を得た。各仮導管効果画像から、幾つかのパラメータを計算した。加えて、各木材片を、2つの異なる相対湿度環境、即ち20%RHと90%RHで、異なる2つの時期に平衡させた。長さ測定を各湿度条件で実施し、水分誘発性寸法変化を記録した。
寸法変化の予測モデルは、第1原理の考察に基づき、仮導管効果パラーメータ及びNIRスペクトルを入力として使用して開発した。使用した予測式は、LSRC=β+β・D+β・R+β・R・Dであり、ここに、LSRCは、各木材片の水分誘発性長さ方向寸法の変化、各βは調練用データセットから推定した回帰係数、Dは仮導管効果の線強度の「指数関数的減衰」(投影光源からの距離の関数としての光度の減衰率)、Rは、2つのNIR吸収値の比、A1700/A1650、である。差分収縮係数モデルの較正図を図4に示す。
収縮係数モデルの較正に続き、8フィート、2”x4”の板23枚を走査して、仮導管効果画像とNIRスペクトルの両方を得た。上記木材片それぞれは、2つの相対湿度環境を既に循環し終わって、板幅方向の反りと板厚方向の反りの変化が各片毎に記録されている。仮導管効果とNIRデータから計算したパラメータを、差分収縮係数モデルに対する入力として使用し、各製材片毎の差分収縮係数値のマップを作成した。収縮マップは、収縮係数推定値と目標含水量から計算した。次いで、収縮マップを有限要素モデル(DIMENS)に入力して、各製材片の反りプロフィールの変化を予測した。図5では、板幅方向の反りの予測変化を実測変化に対してプロットしている。
先の例は、有限要素モデルを使って推定収縮マップから水分誘発性の板幅方向の反りの変化を予測することを説明している。面反りと板厚方向の反りについても同様の方法を使用することができる。同じ方法を使用して、推定した木理角度、木髄位置、並びに恐らくは他の変数から、水分誘発性の捩れを予測することができる。
残留応力は、収縮差があるときにのみ生じ、均一な収縮は試料に残留応力が存在しないことの表示である点に注目されたい。この様に、長手方向の残留応力と長手方向の収縮それ自体の間ではなく、長手方向の残留応力と長手方向の収縮差の間に、強い相関関係が存在するはずであると提議する。これは、局所的な収縮が比較的大きい場合だけでなく、近傍の収縮度が異なる場合に、残留応力を走査することを求めている。
製材の製造時には、組み合わせた値が幅広の親材よりも大きくなる2つ又はそれ以上の細い木片を生成するために、木片を縦挽きにするのが望ましい場合もある。親板に残留応力が存在すれば、これら応力はこの縦挽き工程中に解放され、縦挽きされた木片が外向きに反り返り、更に望ましくない反り歪みを発生させることになる。従って、縦挽きの決定を下す前に、親の製材片にこの潜在能力が存在するか否かを知る必要がある。長手方向の収縮パターンの推定をこの目的に使用することができ、次の実施例ではこれについて説明する。
実施例3
2x4の断面18枚を20%RTに平衡させ、縦挽きにして4つの等しい切り取り試片とした。縦挽き前と後での長さの差から、各切り取り試片の瞬間歪みを求めた。更に、各切り取り試片について、長手方向収縮率係数(LSRC)を求めた。中心線の何れかの側の二対の切り取り試片について調べた。上記対のデータを分析して、予測したLSRC差(先に説明した方法に基づく)が、大きな瞬間歪み差(即ち、縦挽き工程時に歪み易い部分)を有する対を識別するのに使用できるか否かを判定した。
結果を図21に示す。試験は、LSRCの推定が、著しい内部応力を持っている可能性が高く、従って縦挽き工程の候補とはならない製材片の識別に、実際に使用できることを実証している。
この方法は、炉での乾燥に起因する残留水分勾配を有する板であって、且つ、その後に内部水分が木片内(水分平滑化)と外部環境の両方に平衡するにつれて形状が変化することになる板に適用することができる。その後の形状変化がかなり大きければ、その様な板は、その指定された等級の反りの限界をもはや満たさないことになる。
形状変化は、上記方法に基づき、板内の各切り取り試片の予測収縮係数を各切り取り試片の予想含水量変化と共に使用して予測される。最終的な状態が均一で平衡した含水量を呈する場合、初期に板内に水分勾配があれば、各切り取り試片の含水量変化は全てが同じにはならない。この方法では、各切り取り試片の含水量変化は、初期の含水量の分布と最終的な目標含水量から求められる。次いで、含水量変化に、各切り取り試片について求めた対応する長手方向収縮率係数を掛ける。得られた切り取り試片の収縮値を、例えば、有限要素及び/又は代数的反り予測モデルを使用して処理し、初期水分勾配の平滑化及び平衡化に起因する予想される反りの変化を求める。最終的には、板の初期反り値に、予測された反りの変化を加算して、木片の最終的な形状がその指定されている等級の反りの限界を超えるか否かを判定する。
上記方法の一例を以下に説明する。
実施例4
8フィート、2インチx4インチの板3枚(B4−179、D4−175、及びB4−59)の予想される板幅方向の反りの変化を、幾つかの異なる仮想の含水量平滑化及び平衡化シナリオについて求めた。炉で乾燥した製材で予め測定した3つの異なる初期含水量プロフィールを使用して、最終的な平衡含水量は12%になると仮定した。上記方法を用いて、3枚の板内の切り取り試片の長手方向収縮率係数を求めた。図6は、異なる初期含水量プロフィールを示しており、図7は、各プロフィールについて予測した板幅方向の反りの変化を示している。最終的な含水量条件での板幅方向の反りが板の指定された等級の板幅方向の反りの限界を超えることになるか否かを判定するために、各板の初期含水量条件での実際の板幅方向の反りに各板の予測した板幅方向の反りの変化を加算した。
B.表面水分パターンの測定値とバルク(平均)水分の測定値を組み合わせて木製品内の水分勾配とパターンを推定する方法
炉での乾燥の終了時には、各製材の含水量は、通常は不均一に分布しており、芯付近では含水量が多く、表面及びその付近では水分が少ない。この様子を図8に示している。この様なパターンは、断面で対称とはならず、縁同士及び面同士は互いに異なっている。パターンは、板の長さに沿って変化し、通常、含水量は端部付近で比較的少ない。これまでの試験では、その様な水分パターンは、乾燥後何週間も製材内で存続し、従って、平削りの時期になっても残っている場合の多いことが示されている。
この様に水分が変化しているため、上記種類の板の反りプのロフィールの予測には、各収縮切り取り試片の含水量の推定が必要になる。それら推定された含水量値を、特定の最終目標含水量と共に使用して、板の反りの変化を予測しなければならない含水量の変化を求める。
板の長さ方向の何れの箇所でも、表面の含水量プロフィールと、対応する平均含水量とを組み合わせて、各収縮切り取り試片の当該長さ部分の含水量を推定することができる。推定含水量は、各収縮切り取り試片位置に対して、対応する板部分の平均含水量(例えば、NMI計による)及び当該切り取り試片位置の表面含水量(例えば、電気抵抗ピン型水分計による)を使った線形モデルを使用して求める。含水量推定モデルは、以下の一般式で表され、
MCij=k0+k1 +k2 ij
ここに
MCijは、「j番目」の板部分の「i番目」の収縮切り取り試片(一般には、部分あたり8個の試片となる)の推定含水量であり、
k値は定数であるが、各収縮切り取り試片位置「i」で異なる値を有し、
は、「j番目」の部分の平均含水量であり、
ijは、「j番目」の板部分の「i番目」の収縮切り取り試片の表面含水量である。
一般に、各板幅に付帯して異なるk値のセットがある。
図9は、特許請求対象の方法の試験の結果を示している。この試験では、平均含水量と表面含水量パターンの両方を組み合わせた場合は、平均含水量だけに基づく予測に比較して、切り取り試片(要素)の含水量の予測誤差が、1.7%mcから1.3%mc(RMSE)まで小さくなることが分かった。
材料の含水量の測定には、近赤外線(NIR)吸収分光技法を使用することができる。木材を含め、多くの生物材料に対してこの原理の方法を実証する実施例には、当業者に既知のものが数多くある。殆どの実施例において、材料は粉砕され、従って表面と内部とが同じ含水量を有する比較的均質な状態にされる。
木材にはこれは当てはまらない。水は、NIR領域内に幾つかの吸収帯を有する。それら吸収帯の強さと木材の光学密度のため、水の吸収帯のNIR反射スペクトルは、表面水分(表面の数ミリメーター以内)の測度となる。全NIRスペクトル法を使用する場合は、表面水分と収縮予測モデルの両方に単一のNIR反射スペクトルを使用することができる。個々の周波数帯又は個々の周波数帯の比を使用する場合、表面水分予測モデル用に選択されたNIR周波数帯は、収縮のモデル化に使用されるものとは異なる可能性が高い。
水分用に最も一般的なNIRモデルは、数(通常3つ以下)周波数帯域での二次導関数スペクトルの重線形回帰モデルである。しかしながら、全スペクトルモデル、又は吸収値の比又は導関数値の比を用いるモデルも使用することができる。上記方法を使用すると、各収縮切り取り試片の表面含水量を求めて指定するために、NIRスペクトルデータが分析される。
水が吸収する光の量は、水吸収帯毎に異なる。一般には、波長が長いほど、同一含水量に対して吸収される光の量は多くなる。従って、水を測定するための波長を選択することにより、材料内への光の浸透深度をある程度制御することができる。従って、960nmの水吸収帯では1910nmの水吸収帯よりも、木材内への浸透度が高くなる。表面含水量が関心の対象である場合は、1910nmの様な長い周波数帯であれば表面により近い部分の測定を行うことができ、一方、960nmでは、より深い部分までの平均含水量を計測することになる。このような測定は、例えば、Kett Corporation 製のKett High Moisture NIR計(モデル番号KJT100H)の様な装置又システムによって行われる。
木材のバルク特性の多くは、含水量の影響を受ける。例えば、繊維飽和点未満では、弾性(MOE)及び電気抵抗は、共に含水量が下がるにつれて増加する。この様な関係は、例えば、誘電体、電気抵抗、及び核磁気共鳴を含む様々な水分測定法の原理を形成する。上記方法は、Wagner 及び NMI(誘電体)並びにDelmhorst(電気抵抗)により製作されたものの様な各種商業的製材の水分測定システムに採用されている。Wagner及びNMI両方の平面盤水分計で、製材はキャパシタンス測定板上を通され、測定ゾーン内における当該木材の平均又はバルク含水量が誘電特性によって求められる。その様な最先端の平面盤水分計は、分解能が収縮切り取り試片の寸法程度であって、まだ、含水量の断面変動を解明することができない。それら水分計は、板の短尺部分の特徴を表す断面平均含水量を提供する。平均含水量を、NIRに基づく板の表面に亘る含水量変動の推定値と共に使用して、上記方法に従って板内の水分勾配並びにパターンを求める。
C.外表面で観測される水分、収縮率、及び木理角度の単純な代数的差分から、木製品の寸法安定性を推定する方法
製材の反り挙動の有限要素モデル化では、板幅方向の反りと板厚方向の反りの安定性は、木片内の長さ方向収縮の変動のパターンによって殆ど全て決まることが示されている。具体的には、幅全体に亘る長さ方向の収縮の差で主に板幅方向の反りが決まり、一方、厚さ方向に亘る差が板厚方向の反りを支配する。更に、板幅方向の反り又は板厚方向の反りの安定性と長さ方向の収縮の間の定量的関係は、より精密且つ複雑な有限要素モデル化法ではなく、比較的単純な数学的演算を使用して確立できることが分かっている。具体的には、板幅方向の反り又は板厚方向の反りのプロフィールの二次導関数として表される、板の長さ区間又は部分の曲率は、当該区分又は部分を含んでいる切り取り試片の収縮値の線形組み合わせから求めることができる。板の全体的な板幅方向の反り又は板厚方向の反りのプロフィールは、上記二次導関数値の部分部分の二重積分から求めることができる。
板幅方向の反りを求める場合、各板区分を幅方向に少なくとも2つの収縮切り取り試片に分割せねばならない。一般には、各板区分を幅方向に少なくとも4つの切り取り試片に分割すると、良好な結果が得られる。板区分を、収縮値T1、T2、T3、T4を有する4つの収縮切り取り試片に分割すると、当該収縮に起因する板幅方向の反りは、(板の縁部プロフィールの二次導関数として表される)当該区分に亘る曲率を示し、これは、以下の線形組み合わせの一般式によって求められ、
C”=k1(T1−T4)+k2(T2−T3)+k3
ここに
C”は板の縁部に沿う板幅方向の反りのプロフィールの二次導関数であり、
k値は定数であるが、各板幅によって異なる値を有し、
T値は、対応する長さ方向収縮率定数(LSRC)と含水量変化(MC)の積によって求められる切り取り試片収縮値であり、
Ti=LSRCixMCi
である。
この方法を、次の実施例で試験した。
実施例5
有限要素モデル予測を、8フィート、2x4の板138枚それぞれの実施例について実施した。これら実施例の板それぞれを、6つの長さ区分に分割し、4x2構成を用いて各長さ区分を8つの収縮切り取り試片、即ち、幅方向に4つの切り取り試片、厚さ方向に2つの切り取り試片、に分割した。各幅位置の各切り取り試片の対の収縮値を平均して、上記式によって幅方向に亘る4つの収縮値を得た。予測した板幅方向の反りのプロフィールの二次導関数を各板区分毎に計算し、最小二乗回帰法を使って上記式の定数(k)を求めた。図10は、式(C”)を使って計算した二次導関数値を、有限要素モデルにより予測した板幅方向の反りのプロフィールから計算した対応する二次導関数値と比較してプロットしたものであり、優れた一致を示している。
板の板幅方向の反りを予測するには、上記式(C”)を使用して計算した二次導関数値を2回積分して、各板区分の実際の縁部プロフィールを作る。8フィート、2x4の板23枚について求めた切り取り試片の長手方向収縮率係数を使って、この方法を試験した。先ず、上記式を使って各長さ区分の二次導関数値を計算し、次いで、上記導関数値を2回積分して、23枚の板それぞれの板幅方向の反りのプロフィールを求めた。得られた板幅方向の反り値を、有限要素モデルを使用して予測した対応する板幅方向の反り値と比較したところ、図11の優れた一致を示した。
板厚方向の反りを求めるには、各板区分を、厚さ方向に少なくとも2つの収縮切り取り試片に分割せねばならない。板区分を、収縮値T1とT2を有する2つの収縮切り取り試片に分割した場合、収縮に起因する板厚方向の反りは、(板表面のプロフィールの二次導関数として表される)当該区分の曲率を示し、以下の線形組み合わせの一般式で求めらることができ、
B”=k1(T1−T2)+k2
ここに、
B”は板の表面に沿う板厚方向の反りのプロフィールの二次導関数であり、
k値は定数であるが、各板幅によって異なる値を有し、
T値は、対応する長さ方向収縮率定数(LSRC)と含水量変化(MC)の積によって求められる切り取り試片収縮値であり、
Ti=LSRCxMC
である。
この方法を次の実施例で試験した。
実施例6
有限要素モデル予測を、8フィート、2x4の板138枚それぞれの実施例について実施した。これら実施例の板それぞれを、6つの長さ区分に分割し、4x2構成を用いて各長さ区分を8つの収縮切り取り試片、即ち、幅方向に4つの切り取り試片、厚さ方向に2つの切り取り試片、に分割した。各面でそれぞれ4つの切り取り試片のセットの収縮値を平均して、上記式で厚さ方向に2つの収縮値を得た。予測した板厚方向の反りのプロフィールの二次導関数を各板区分毎に計算し、最小二乗回帰法を使って上記式の定数(k)を求めた。図12は、式(B”)を使って計算した二次導関数値を、有限要素モデルによって予測された板厚方向の反りのプロフィールから計算した対応する二次導関数値と比較してプロットしたものであり、優れた一致を示している。
板の板厚方向の反りを予測するには、上記式(B”)を使用して計算した二次導関数値を2回積分して、各板区分の実際の面プロフィールを作る。8フィート、2x4の板23枚について求めた切り取り試片の長手方向収縮率係数を使って、この方法を試験した。先ず、上記式を使って各長さ区分の二次導関数値を計算した。次いで、上記導関数値を2回積分して、23枚の板それぞれの板厚方向の反りのプロフィールを求めた。得られた板厚方向の反り値を、有限要素モデルを使用して予測した対応する板厚方向の反りの値と比較したところ、図13の優れた一致を示した。
D.光源(レーザー又は非レーザー)により照らされた面から拡散的に反射された光度パターンを解釈することにより、木材の収縮及び木理角度特性を推定する方法
木材の仮導管効果は既知である(例えば、Nystrom、2003年を参照)。木材の表面が点又は線の光源で照らされたとき、拡散反射のパターンは、その木材の物理的及び化学的特性の影響を受ける。例えば、収縮特性及び木理角度特性の様な木材の物理的特性の推定には、それらパターンから計算される測定基準又はパラメータが使用される。
多くの種類のパラメータが、拡散反射パターンから計算される。拡散反射が、面積配列カメラに向けて収束されると、得られる画像のグレースケールパターンが、当技術では既知の標準的又は非標準的な画像分析技法で分析される。線光源によるグレースケール画像の一例を図14に示している。標準的画像分析測定基準の例を幾つか挙げると、2つのグレースケール閾値の間に形成される面積の大きさ、画像の凸穀体面積の大きさがある。
統計学的及び数学的パラメータも、拡散反射のパターンから計算される。例えば、投影光源からの距離の関数としての光度の減衰率を、木材の寸法安定性に関係付けることができる。減衰率の推定には多種多様なモデルが存在する。一般的なモデルは、log(光度)=A+kxであり、ここにxは投影光源からの距離、Aとkはモデルパラメータである。他のモデルの例は、BatesとWatts、1988年に説明されている。拡散反射光の光度の減衰率は指数関数的減衰法の組み合わせで表されることが、実験的に指摘されている。双指数関数法は、式:E(y)=φexp(−φ)+φexp(−φ),φ>φ>0、によって表される。指数関数的減衰法から推定されるパラメータは、異なる木材特性を反映しており、各パラメータを収縮モデルの入力として使用することができる。図15は、仮導管効果線画像に適合させた双指数関数的モデルの例を幾つか示している。
光の光度の減衰率に関係するパラメータの様なパラメータは、光画像の何れかの「側」で、又は各側からの情報を組み合わせることにより推定される。光源の「左」及び「右」側についての減衰率の比較は有効な予測的情報を提供することが、実験的証拠により示唆されている。
光源がスポットである場合、拡散反射パターンから他のパラメータが算出される。スポット光源は、通常、木材の表面に楕円形のパターンを形成する。(ZhouとShen、2002年)で論じられている様に、楕円比、楕円の向き、及び楕円角度の様なパラメータが計算される。表面木理角度は、楕円角度から推定される。
仮導管効果に影響を及ぼす木材の物理的特性は、実際には局所的である。算出されたパラメータに基づく推定の空間的分解能は、光の光度のパターンをサンプリングする周波数に依存することになる。光度パターンから算出された各種属性は、収縮予測式又はアルゴリズムに対する入力として使用される。この様な式は、入力のセットを実数値の番号にマップする。使用することのできる式又はアルゴリズムの形態は数多くあるが、一般的なものはHastie他である。次の実施例では、レーザー線画像からの情報が、木材の長手方向収縮率係数の推定にどの様に使用されたかを説明する。
実施例7
12”x1”x3/4”の木材片、約350枚から成る調練用データセットを使用して収縮係数較正モデルを構築した。各木材片は、仮導管効果線画像とサイドスポット画像で走査した。各仮導管効果画像から、幾つかのパラメータを計算した。更に、各木材片を、2つの異なる相対湿度環境、即ち20%RHと90%RHで、2つの異なる時期に平衡させた。各湿度レベルで長さ測定を実施して、水分誘発性の長さ変化を記録した。
仮導管効果パラメータを入力として使用して寸法変化の予測モデルを開発した。予測式は、多変数適合多項スプライン回帰法を使って作成した。モデルには5つの主要項、即ち、「右」減衰パラメータ、平均楕円比、凸殻体域高度、平均角度、及び「右」と「左」の減衰パラメータの比率の木片内標準偏差、が含まれていた。更に、モデルには、3つのスプライン木節と、「右」減衰と平均角度の間の相互作用が含まれていた。差分収縮係数モデルの較正プロット図を、図16に示している。
これまでの実施例では、線光度画像及びスポット光度画像の両方から計算したパラメータから、木材の収縮係数を予測することについて説明した。同様の方法を使用して、線画像及びスポット画像の両方から木理角度を予測することができる。
E.板幅方向の反り及び板厚方向の反りを直接推定するのに複数のセンサーを使用する方法(センサー連合)
板幅方向の反りと板厚方向の反りは木材片の寸法の不安定性に起因する。多くの要因が木材の寸法安定性に関係していることが知られている。例えば、高MOEの木材は、一般的には寸法的に安定しており、一方、圧縮当て材の量が多い木材は、通常、不安定で、板幅方向の反り又は板厚方向の反りが発生しやすい。水分誘発性の寸法の不安定性は、製材片の様な木製品の水分誘発性収縮パターンの結果である。先に論じ、実施例2で説明している、寸法変化の推定に対する1つの取り組み法では、先ず、木材片の収縮係数パターンを推定し、次いでそれら収縮係数パターンを使用して、例えば有限要素モデルを用いて含水量の変化に起因する板幅方向の反り又は板厚方向の反りを予測する。これは、第1の段階として収縮を予測し、次の段階で反りを予測する、反り予測に対する2段階アプローチであると考えることができる。
別の取り組み法は、複数のセンサーからのデータと単一の予測モデル又はアルゴリズムとを使用して、木材片の板幅方向の反り又は板厚方向の反りを直接予測するというものである。この取り組み法を使用すれば、予測モデル又はアルゴリズムは、多種多様な分解能倍率の入力を使用することができる。モデル入力は、センサー信号の関数であり、定数的又は定性的の何れでもよい。例えば、入力は、水分計により推定される木片全体の推定平均含水量であってもよい。別の例としては、RGB画像に基づく、木材の12”x1”部分内の木節の有無を示す標識がある。モデルへの入力は、センサー測定値そのものでも、事前に処理された信号でも、幾つかのセンサーからの信号の組み合わせでもよい。信号の事前処理には、限定するわけではないが、当技術では既知のフィルタリング、平滑化、導関数計算、パワースペクトル計算、フーリエ変換などが含まれる。
板幅方向の反り又は板厚方向の反りの予測式及び/又はアルゴリズムは、入力のセットを実数値の番号にマップするのに使用される。使用できる式又はアルゴリズムの形態は数多くあるが、一般的なものはHastie他である。通常、モデル又はアルゴリズムのパラメータは、演繹的に既知ではなく、調練用データセットから求めなければならない。次の実施例では、複数のセンサーからの情報が、雰囲気の相対湿度の変化に起因する木材の寸法変化を直接推定するのにどのように使用されるかを説明する。
実施例8
8フィート、2x4の板、約200枚を1単位とした製材3単位を製材所より得た。各製材片は、製剤所で、板幅方向の反り、板厚方向の反り、平均含水量、音響速度、及び比重を測定した。次いで、各木材片を20%RH環境に5週間置き、その後、板幅方向の反りと板厚方向の反りを再度測定した。この実施例では、目的は、複数のセンサー群からの初期データを使用して、最終的な板幅方向の反りと板厚方向の反り(20%RHでの)を推定することであった。絶対板幅方向の反りの予測モデルの開発には3つの入力、即ち、初期絶対板幅方向の反り、音響速度、及び初期含水量、を使用した。上記入力を与えた単純な線形回帰モデルを、製材2単位について調練した。20%RHでの絶対板幅方向の反りの較正プロット図を、図17に示している。
F.吸収された水分の乾燥と再配分に電磁エネルギーを使用することにより、木製品の「供用期間中」反り歪みを迅速にシミュレートし、及び/又は木製品の収縮特性を迅速に推定する方法
木材の様な吸湿性材料は、周囲の環境との平衡に達するのに必要な或る量の水分を吸収又は放出する。結果的に、大部分の木製材料では、製造時と、使用に供された後で最終的な平衡に達する時点との間で、著しい水分変化が発生する。米国での代表的な内部平衡水分レベルは、地理と季節によって変動し、平均値は砂漠の南西部での6%から湾岸沿いの11%までの範囲に亘る。(木材ハンドブック。)木材は、一旦新しい環境に置かれると、約6週間をかけて、新しい平衡水分状態に達する。その平衡状態に達するまでは、水分勾配が木材片の内側から外側まで存在する。
本発明の目的は、個々の製材片が、最終的な平衡状態、即ち水分勾配が存在しない状態に達した後、どれほど真直であるかを予測することである。この予測は、製材片内の長さ方向の収縮パターンを推定し、次に、それら収縮パターンがどの様に相互作用して反りを引き起こすかを解釈することに依存している。この技術を適用するには、「供用期間中」の反りの予測が正確であることを保証するために、品質管理手順が必要である。この様な手順は、収縮係数と結果的に生じる歪みの両方の推定の精度に迅速にフィードバックを掛けることができなければならない。木材片が水分平衡に達するのに必要な長い時間は、使用上実施可能な品質管理法の開発に問題を提起する。この問題を解決するために、電磁エネルギーを使って、木製品が新しい平衡水分に達する速度を加速させることが提案されている。
電磁エネルギーは、水のような有極性分子に効率的に吸収される。マイクロ波又は無線周波数の場に木材を置くと、エネルギーは、水分の多い領域に優先的に吸収される。その結果、高吸収性領域の水分は、水分量の少ない領域に急速に移行して、水分勾配を平滑化する。従って、この過程を木材に使用して、供用時平衡化を真似て、水分勾配が最小化される新たな水分状態を迅速に実現することができる。
この方法は、原寸大の木片の収縮係数の予測と反りの両方を検証するのに使用することができる。本方法は、水分平滑化又は水分損失に起因する収縮又は供用期間中の歪みを真似るのに使用することができる。水分平滑化に起因する歪みを真似る場合、木材片は、電磁場に置く前に、湿気封止層で包まねばならない。この方法には、例えば、13.6MHz(RF)から2.45GHz(マイクロ波)の周波数範囲の電磁エネルギーを使用することができる。小型の試料(50立方インチ未満)の収縮係数を判定する工程を加速させる場合は、上記の全範囲を使用することができるが、一方、原寸大の製材試料に反りを誘起させる場合は、スペクトルのRF部分が好適である。或る実施形態では、木製品は、含水量が20%未満になるまで乾燥させる。
或る実施形態では、木製品の反り歪みの予測を確認するための方法(即ち、品質管理)が提供されている。この方法は、木製品の初期水分パターンを得る段階と、初期水分パターンに基づいて木製品の反り歪みを予測する段階と、木製品が電磁エネルギーを受ける環境に木製品を置く段階と、木製品に、含水量が予想される長期供用期間の平衡値に等しい第2値を有する第2レベルへ、その含水量を変化させるのに十分な電磁エネルギーを掛ける段階と、第2水分レベルでの木製品の反り歪みを測定する段階と、予測した反り歪みを第2水分レベルの反り歪みと比較する段階と、を含んでいる。
次の実施例では、制御された環境下で、RF乾燥で求められた長手方向収縮率係数と、従来式の調整によるものとを比較するために行った実験を説明する。
実施例9
候補となる木製試料のセットを、65%の相対湿度に少なくとも3週間置いて平衡させた(大きさは、概略、厚さ1/2”x幅1”x長さ12”)。平衡した群より、30個の代表的試料を選択した。各試料の重量と長さを測定した。RF乾燥機を使って、各試料を水分が約5%になるまで乾燥させた(乾燥作業は、マサチューセッツ州ミリスのRadio Frequency Companyで、20Kw40MHz乾燥機を使用し、約5分サイクルで行った)。各試料の重量と長さを再度測定した。得られたデータを使用し、次の式を使って、長手方向の収縮率係数(LSRC)を推定した。
LSRC=長さ変化÷初期長さ÷含水量変化
次に、RF乾燥させた切り取り試片を、20%RHで再調整した。各試料の重量と長さを再度測定した。このデータを使用して、長手方向の収縮率係数(LSRC)を再度推定した。収縮係数推定値LSRCとLSRCの間で比較を行った。その結果を図18にプロットしており、本図では、従来の収縮係数推定法と加速型収縮係数推定法との間に優れた一致が見られる。
G.最初に複数のセンサーのデータを使用して評価対象の木材の型又は等級を識別し、次に複数のセンサーのデータを使用して、等級特定式及び/又はアルゴリズムを用いて収縮を推定することによる、複数のセンサーのデータを使用して木材の収縮特性を推定する方法
仮導管効果画像及び分光法のデータの様な複数のセンサーから計算したパラメータは、木材の収縮特性の予測に役立つことが示されている。収縮に関係付けられることが分かっているパラメータの多くは、収縮と関係する場合もしない場合もある木材の化学的又は物理的特徴の影響も受ける。例えば、ピッチを含んでいる木材は、典型的なクリアウッドよりも、水分誘発性の寸法不安定性を呈し易い。しかしながら、仮導管効果画像と或る種のスペクトル帯は、共に、同じ収縮特性を有するがピッチを含んでいない木材とは、非常に異なる様式で、ピッチから大きな影響を受ける。図19は、2つのスペクトルを示している。「上の」スペクトルは、ピッチを含んでいる試料のスペクトルであり、他方のスペクトルは、ピッチを含んでいない試料のものである。両木材試料は、同様な収縮挙動を有しているが、ピッチを含んでいる方のスペクトルでは、1200nmでやや鋭いピークがあり、1650nmから1700nmの間で急激に上昇していることを含めて、これらのスペクトルの間には、幾つか重大な差異がある。これらのスペクトルは、他の、ピッチを含んでいるサザンパイン試料と含んでいないサザンパイン試料にも典型的なものである。
これは、改良された収縮の推定が、異なる種類の木材に対して異なるモデル又はアルゴリズムを有することにより得られることを示唆している。この様な戦略は、収縮の予測に対する2段階のアプローチで達成される。第1に、1つ又はそれ以上のセンサーからの入力を使用して、関心の領域の木材の種類を識別する(類別化段階)。寸法安定特性又は他の特性に関して、その種類の定性的評価を実施する。例えば、分類化を可能にする寸法安定特性は、板幅方向の反りかもしれない。別の実施形態では、分類化を可能にするする特性は、「ピッチを含んでいること」であるかもしれない。第2に、第1段階の結果に基づいて、等級特定の収縮予測モデル又はアルゴリズムを適用する(第2段階を予測段階と呼ぶ)。木材の種類の例には、限定するわけではないが、木節、圧縮当て材、ピッチ、木髄を含んでいる、早材、晩材、種、青変が含まれる。関心の領域を類別化するための又は収縮挙動を予測するためのモデル又はアルゴリズムは、通常、調練用データセットから学習される。類別化及び予測の方法は、先に論じた。
類別化段階では、構成員をK+2分類の内の何れかに予測的に振り分けるが、ここでKは名前の有る等級(例えば、木節)の数である。他の2つの分類は、「孤立値」即ち、既に観察されているた他のもののようには見えない場合と、「疑義値」即ち、等級の構成員か否かの決定を下すにはあまりに不確実な場合、である。実施例10では、複数のセンサーのデータを使用して収縮特性を予測する2段階アプローチを説明している。
実施例10
この実施例では、使用したデータは、仮導管効果線画像とNIR吸収スペクトルであった。12”x1”x3/4”の木材片350枚から成る調練用データセットを使用して、収縮係数較正モデルを構築した。各木材片を走査して、仮導管効果とNIR吸収両方のデータを得た。各仮導管効果画像から、幾つかのパラメータを計算した。更に、各木材片を、2つの異なる相対湿度環境、即ち20%RHと90%RHで、異なる2つの時期に平衡化させた。長さ測定を各湿度レベルで実施し、水分誘発性寸法変化を記録した。
NIR吸収データだけを使用して、全ての場合について部分最小二乗モデルを調練した。図20は、結果をプロットした2つの図を示している。左側の図は、実測収縮値を全ての場合の適合値に対してプロットした図を示している。1200nmと1270nmでのNIR吸収値の比率は、ピッチの存在を示す有効な指標となることが分かった。比A1200/A1270が1.18よりも大きければ、その試料はピッチを含んでいる可能性が高い。この比が1.18よりも大きい試料は、左側の図で強調表示されている。これらの試料の適合度はあまり良くない。そこで第2のモデルセット、即ち一方はA1200/A1270が1.18よりも大きな試料専用、そしてもう一方は比が1.18未満の試料専用として、モデルセットを開発した。図20の右側の図は、等級特定のモデルを使用した予測結果を示している。即ち、A1200/A1270が1.18よりも大きい試料は、「ピッチを含んでいる」試料に関して調練されたモデルを用いて予測し、一方、A1200/A1270が1.18よりも小さい試料は、「ピッチを含んでいない」試料に関して調練されたモデルを用いて予測を行った。その結果、「ピッチを含んでいる」試料の適合度が改善されていることが分かる。比が1.18未満の試料の適合度も改善されているが、比が1.18より大きい試料に比較すると小幅である。
2段階予測アプローチの他の実施例、とりわけ「孤立値」と「疑義値」の分類では、予測段階の選択肢として、その近隣の平均値から、切り取り試片の収縮値を単に推定するということが考えられる。代わりに、孤立値又は疑義値の標識を付けられた切り取り試片内の二次領域のデータを、データ累計から除外してもよい(即ち、「マスクする」)。
或る実施形態では、第1のアルゴリズムは、関心の領域を、寸法安定性の定性的評価に向けた複数の分類内の或る分類に類別するために提供されている。第2のアルゴリズムは、寸法安定性の定量的推定を得るために提供されている。この第2のアルゴリズムは、例えば、それぞれ異なる数式を表しているA、B、C、Dの様な、要素のセットを有している。第2のアルゴリズムにより実行される計算は、第1のアルゴリズムを介して実行された分類化を条件としている。例えば、第1のアルゴリズムを介して、木製品が「ピッチ」分類に類別された場合、要素「B」は、デフォルトでゼロに、又は他の何らかの値及び/又は式に設定される。別の例で、第1のアルゴリズムを介して、木製品が「ピッチを含んでいる」に類別された場合、要素「D」及び/又は要素「C」は、デフォルトでゼロ又は他の値に設定されるか、別の式に変えられる。類別化に基づく他の変形例も考えられ、それらは当業者には理解頂けるであろう。
以上、本発明の実施形態を図示し説明してきたが、先に指摘したように、本発明の精神及び範囲を逸脱すること無く、多くの変更を加えることができる。従って、本発明の範囲は、実施形態の開示内容に限定されない。そうではなく、本発明は、特許請求の範囲によってのみ確定される。
木製品の板幅方向の反り、板厚方向の反り、捩れ、及び面反りの例を示している。 本発明の或る実施形態における、誤類別された板をプロットした図である。 本発明の或る実施形態における、誤類別された板をプロットした図である。 本発明の或る実施形態における、差分収縮係数モデルの較正をプロットした図である。 本発明の或る実施形態における、板幅方向の反りの予測変化対実測変化をプロットした図である。 異なる初期含水量プロフィールの図である。 図6の各プロフィールに関する予測される板幅方向の反りの変化の図である。 異なる深さにおける含水量プロフィールをプロットした図である。 本発明の或る実施形態における木製品の予測含水量をプロットした図である。 本発明の方法を使用して計算した二次導関数の値と、有限要素モデルにより予測した板幅方向の反りプロフィールから計算した対応する二次導関数の値を比較してプロットした図である。 本発明の方法を使用して計算した板幅方向の反りの値と、有限要素モデルを使用して予測した対応する板幅方向の反りの値を比較してプロットした図である。 本発明の方法を使用して計算した二次導関数の値と、有限要素モデルにより予測した板厚方向の反りプロフィールから計算した対応する二次導関数の値を比較してプロットした図である。 本発明の方法を使用して計算した板厚方向の反りの値と、有限要素モデルを使用して予測した対応する板幅方向の反りの値を比較してプロットした図である。 線光源から木製品へ投影したグレースケール画像の例である。 仮導管効果線画像に当てはめた双指数関数モデルの数例である。 差分収縮係数モデルの較正をプロットした図である。 20%RHでの絶対板幅方向の反りの較正をプロットした図である。 収縮係数推定値の間の比較をプロットした図である。 木製品がピッチを含んでいるか否かに基づいた、木製品のスペクトルをプロットした図である。 適合値に対して実測及び予測収縮値をプロットした図である。 実測歪み差対予測歪み差をプロットした図である。

Claims (28)

  1. 木製品の関心領域の寸法安定性を特徴付ける方法において、
    前記関心領域を、寸法安定性の定性的評価に向けた複数の分類内の或る分類に類別するためのアルゴリズムを作成する段階と、
    前記木製品の1つ又はそれ以上の部分の1つ又はそれ以上の特性を検出する段階であって、前記検出される特性は、含水量測定、電気特性測定、構造特性測定、音響超音波特性測定、光散乱(仮導管効果)測定、木理角度測定、形状測定、色測定、スペクトル測定、及び欠陥マップ、から成る群より選択された、1つ又はそれ以上のセンサー群から判定される、検出する段階と、
    前記検出された特性を前記アルゴリズムに入力する段階と、から成る方法。
  2. 前記評価される寸法安定性は、面反り、板幅方向の反り、板厚方向の反り、捩れ、長さ安定性、厚さ安定性、及び幅安定性の内の少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記関心領域は、前記木製品の1つ又はそれ以上の部分と同じである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記関心領域は、前記木製品の1つ又はそれ以上の部分と重複している、請求項1に記載の方法。
  5. 前記関心領域は、前記木製品の1つ又はそれ以上の部分と重複していない、請求項1に記載の方法。
  6. 前記1つ又はそれ以上の部分は、前記木製品の1つ又はそれ以上の切り取り試片に対応している、請求項1に記載の方法。
  7. 前記関心領域は、前記木製品全体である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記特性は、前記木製品の勾配を示すものである、請求項1に記載の方法。
  9. 前記アルゴリズムのパラメータは、調練用データセットに基づいている、請求項1に記載の方法。
  10. 前記アルゴリズムは、前記木製品が、含水量の変化に起因してその等級が変化するか否かに基づいている、請求項1に記載の方法。
  11. 木製品の関心領域の寸法安定性を特徴付ける方法において、
    前記関心領域を、前記関心領域の定性的評価に向けた複数の分類内の或る分類に類別するための第1のアルゴリズムを作成する段階と、
    要素のセットを有する寸法安定性の定量的推定を得るための第2のアルゴリズムを作成する段階と、
    前記木製品の1つ又はそれ以上の部分の1つ又はそれ以上の特性を検出する段階であって、前記検出される特性は、含水量測定、電気特性測定、構造特性測定、音響超音波特性測定、光散乱(仮導管効果)測定、木理角度測定、形状測定、色測定、スペクトル測定、及び欠陥マップ、から成る群より選択された、1つ又はそれ以上のセンサー群から判定される、検出する段階と、
    前記検出された特性を前記第1のアルゴリズムに入力して、前記関心領域がどの分類に類別されるかを判定する段階と、
    前記第2のアルゴリズムを使用して、前記寸法安定性の定量的推定を求める段階であって、前記第2のアルゴリズムにより実行される計算は、前記第1のアルゴリズムを介して実行される前記類別化を条件とする、前記寸法安定性の定量的推定を求める段階と、から成る方法。
  12. 前記評価される寸法安定性は、面反り、板幅方向の反り、板厚方向の反り、捩れ、長さ安定性、厚さ安定性、及び幅安定性の内の少なくとも1つである、請求項11に記載の方法。
  13. 前記関心領域は、前記木製品の1つ又はそれ以上の部分と同じである、請求項11に記載の方法。
  14. 前記関心領域は、前記木製品の1つ又はそれ以上の部分と重複している、請求項11に記載の方法。
  15. 前記関心領域は、前記木製品の1つ又はそれ以上の部分と重複していない、請求項11に記載の方法。
  16. 前記1つ又はそれ以上の部分は、前記木製品の1つ又はそれ以上の切り取り試片に対応している、請求項11に記載の方法。
  17. 前記関心領域は、前記木製品全体である、請求項11に記載の方法。
  18. 前記特性は、前記木製品の勾配を示すものである、請求項11に記載の方法。
  19. 前記第1のアルゴリズムのパラメータは、調練用データセットに基づいている、請求項11に記載の方法。
  20. 前記アルゴリズムは、前記木製品が、含水量の変化に起因してその等級が変化するか否かに基づいている、請求項11に記載の方法。
  21. 木製品の関心領域の寸法安定性を特徴付ける方法において、
    前記関心領域の寸法安定性の定量的推定を行うためのアルゴリズムを作成する段階であって、前記アルゴリズムは、前記木製品の1つ又はそれ以上の部分から得た2つ又はそれ以上の特性を利用する、アルゴリズムを作成する段階と、
    前記1つ又はそれ以上の部分の2つ又はそれ以上の特性を検出する段階であって、検出される特性は、含水量測定、電気特性測定、構造特性測定、音響超音波特性測定、光散乱(仮導管効果)測定、木理角度測定、形状測定、色測定、スペクトル測定、及び欠陥マップ、から成る群より選択された、2つ又はそれ以上のセンサー群から判定される、検出する段階と、
    前記検出された特性を前記アルゴリズムに入力する段階と、から成る方法。
  22. 前記評価される寸法安定性は、面反り、板幅方向の反り、板厚方向の反り、捩れ、長さ安定性、厚さ安定性、及び幅安定性の内の少なくとも1つである、請求項21に記載の方法。
  23. 前記関心領域は、前記木製品の1つ又はそれ以上の部分と同じである、請求項21に記載の方法。
  24. 前記関心領域は、前記木製品の1つ又はそれ以上の部分と重複している、請求項21に記載の方法。
  25. 前記関心領域は、前記木製品の1つ又はそれ以上の部分と重複していない、請求項21に記載の方法。
  26. 前記1つ又はそれ以上の部分は、前記木製品の1つ又はそれ以上の切り取り試片に対応している、請求項21に記載の方法。
  27. 木製品の関心領域の寸法安定性を特徴付ける方法において、
    前記関心領域を、前記関心領域の定性的評価に向けた複数の分類内の或る分類に類別するための第1のアルゴリズムを作成する段階と、
    第1セットのパラメータを有する寸法安定性の定量的推定を得るための第2アルゴリズムを作成する段階と、
    第2セットのパラメータを有する寸法安定性の定量的推定を得るための第3のアルゴリズムを作成する段階と、
    前記木製品の1つ又はそれ以上の部分の1つ又はそれ以上の特性を検出する段階であって、検出される特性は、含水量測定、電気特性測定、構造特性測定、音響超音波特性測定、光散乱(仮導管効果)測定、木理角度測定、形状測定、色測定、スペクトル測定、及び欠陥マップ、から成る群より選択された、1つ又はそれ以上のセンサー群から判定される、検出する段階と、
    前記検出された特性を前記第1のアルゴリズムに入力して、前記関心領域がどの分類に類別されるかを判定する段階と、
    前記第2のアルゴリズム又は第3のアルゴリズムを選択して前記検出された特性に適用し、前記関心領域が類別された分類に基づいて、前記関心領域の寸法安定性の定量的推定を求める段階と、から成る方法。
  28. 木製品の関心領域の含水量を特徴付ける方法において、
    前記木製品の1つ又はそれ以上の部分の表面含水量プロフィールを得る段階と、
    前記木製品の1つ又はそれ以上の部分の平均含水量を得る段階と、
    前記表面含水量プロフィールと前記平均含水量とに基づいて、前記関心領域の含水量を推定する段階と、から成る方法。
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