JP4487066B2 - 酵母変異体およびその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、酵母変異体およびその利用に関するものであり、より詳細には、細胞内で、S‐アデノシルメチオニンを蓄積しうる酵母変異体およびその利用に関するものである。
近年、脂肪肝、繊維症、肝硬変、肝細胞腫瘍などの症状となって表れるアルコール性肝臓疾患(ALD)は、世界的に主要な病気および死亡の原因となっている。現在、このようなアルコール性肝臓疾患とS‐アデノシルメチオニン(S-adenosylmethionine、以下AdoMetとする)との関係が注目されている。
AdoMetは、生体組織全体に存在し、ホルモン、神経伝達物質、リン脂質、および、タンパク質の合成および代謝におけるメチル基供与体、または、酵素活性化因子として数多くの生物反応に関与する生理学的化合物である。AdoMetは、メチル基転移、硫黄基転移、および、アミノプロピル基転移の3つの代謝経路により代謝される。
以下に、AdoMetと、肝臓疾患およびその他病気との関連について説明する。
まず、AdoMetと肝臓疾患との関連について説明する。AdoMetは、様々な肝臓疾患に対して、治療効果があることが見出されている。例えば、非特許文献1では、ヒヒを用いた研究において、エタノールにより引き起こされた肝臓障害が、AdoMetの投与により緩和されたことが記載されている。また、非特許文献2では、AdoMetの投与により、肝硬変患者(人)の死亡率が、有意に減少したことが記載されている。また、非特許文献3には、AdoMetの投与が、4塩化炭素やacetaminophen等の肝細胞毒素(hepatotoxins)により引き起こされるラットの肝障害を、軽減させることが記載されている。
また、AdoMetは、様々な脳内神経伝達物質の生成に関与していることが知られている。それゆえ、うつ病等の治療において優位な治療効果を奏する。例えば、非特許文献4には、うつ病患者に対する、AdoMetの投与の効果が記載されている。うつ病患者に対して、200〜1600mg/dのAdoMetの非経口および経口投与の効果は、従来の抗うつ剤のプラシーボよりも有意に勝り、tricyclic系抗うつ剤と同様であった。さらに、AdoMetの投与は、従来の抗うつ剤よりも効き始める時間が早く、tricyclic系抗うつ剤による効果を相乗的に高める。また、AdoMetは長期使用においては、治療効果の減少が少なく、副作用が少ない。しかしながら、躁鬱病患者において、躁病発生のケースがいくつか報告されている。
また、AdoMetは、骨関節症に対しても、有意な治療効果を奏する。例えば、非特許文献5には、AdoMetの骨関節症に対する治療効果を、プラシーボおよび非ステロイド系抗炎症剤と、痛みの軽減効果、機能回復、副作用で比較検討した結果が記載されている。その結果、AdoMetは、痛みの軽減、および、機能回復において、非ステロイド系抗炎症剤と同程度の治療効果を奏していた。また、AdoMetは、非ステロイド系抗炎症剤にしばしば見られる副作用が見られなかった。
また、AdoMetは、AdoMetは、細胞内での低メチル化の防御に関与していることが知られている。がん細胞では、染色体上のDNAの低メチル化部位と、高メチル化部位とが普遍的にみられている。この染色体上の低メチル化部位は、がん細胞のhallmarkとされている。すなわち、細胞内でのAdoMet濃度の上昇は、DNAメチルトランスフェラーゼの反応を刺激する。そして、このDNAメチルトランスフェラーゼが、染色体上のDNAの高メチル化を行なうことで、染色体を低メチル化から防御していると考えられている。
例えば、非特許文献5には、脱メチル化活性試験を行なった結果が記載されている。脱メチル化活性試験では、HEK293細胞にCMV‐GFPプラスミドを導入することで、このプラスミドの脱メチル化を、検出している。上記CMV‐GFPプラスミド上のCMV‐GFPの発現は、当該CMV‐GFPの脱メチル化が起きることで行なわれる。それゆえ、上記非特許文献5では、AdoMet、または、アデノシルホモシステイン存在下で、NEK293細胞内でのCMV‐GFPの発現を指標に、細胞内の脱メチル化の検出を行なっている。また、AdoMet、または、アデノシルホモシステイン存在下で、試験管内にて脱メチル化酵素(Methylated DNA binding protein 2/DNA demethylase:MBD2/dMTase)への影響も調べている。その結果、アデノシルホモシステインは、脱メチル化酵素の阻害効果を持たない一方、AdoMetは、脱メチル化酵素反応を直接阻害することが示された。また、上記脱メチル化試験からも、AdoMetは、細胞内においても脱メチル化を阻害していることが示された。それゆえ、AdoMetは、細胞内で、脱メチル化酵素反応を直接阻害し、DNAの高メチル化をもたらすことが示された。
また、特許文献1には、抗炎症作用、軟骨保護作用、軟骨調節作用、軟骨安定化作用、軟骨代謝作用を促進することができる組成物として、アミノ糖、グルコサミノグリカン、および、S‐アデノシルメチオニンを含む組成物が開示されている。
また、AdoMetは、メチル基を供与した後、S‐アデノシルホモシステイン(adenocylhomocysteine; 以下AdoHcyとする)になる。そして、AdoHcyは、AdoHcy加水分解酵素によって、アデノシンとホモシステインとに加水分解される。
上記AdoHcy加水分解酵素をコードする遺伝子は、様々な生物種から単離されており、種を超えて非常によく保存されている。例えば、特許文献2には、樹状細胞から単離されたAdoHcy加水分解酵素遺伝子が開示されている。また、特許文献3には、AdoHcy加水分解酵素遺伝子の発現を抑制した生物が開示されている。
上記のように、AdoMetは、様々な疾患に対しての治療効果があることが見出されている。それゆえ、AdoMetの大量生産が期待されている。このようなAdoMetの製造方法としては、例えば特許文献4および5に、酵母を用いたAdoMetの製造方法が開示されている。
Lieber CS et al., Hepatology 1990 Feb; 111: 65-72 Lieber CS, Annu Rev Nutr.2000;20:395-430 Gasso M et al., J Hepatol. 1996 Aug; 25:200-205 Soeken KL et al. J Fam. Pract 2002 May, 51:425-430 Detich N et. al. J. Biol. Chem 2003 Jun 6. 20812-20820 特表2002-516866号公報(公表日 平成14年6月11日) 特表2002-513276号公報(公表日 平成14年5月8日) 国際公開第WO96/14734号パンフレット(国際公開日 平成8年5月23日) 特公平4-55677号公報(公告日 平成4年9月4日) 特公平4-33439号公報(公告日 平成4年4月3日)
AdoMetは、上述のごとく肝臓疾患・うつ病治療・骨関節症・がん治療等の各種疾患治療薬剤として有効である。しかしながら現在のところ有効な生産方法が確立されていない。
またAdoMetは、ホルモン、神経伝達物質、リン脂質、および、タンパク質の合成および代謝におけるメチル基供与体、または、酵素活性化因子として数多くの生物反応に関与するため、AdoMetの生成に異常が生じる変異体の単離は、AdoMetと生体内の分子機構との関連、特に、AdoMetと細胞の増殖(細胞周期)との関連を解明する上で利用可能なモデルを提供する。AdoMetの生成に異常が生じた変異体は、主にヒト、マウス、タバコといった多細胞生物から、単離されている。しかしながら、これらの変異体は、多細胞生物であるため、増殖時間が極めて長い。それゆえ、AdoMetと細胞の増殖(細胞周期)との関連を解明するには、多大な労力を必要とする。
また、特許文献4および5には、分子生物学的な解析が容易で、かつ、増殖時間が短い酵母から、AdoMetの生成に異常が生じた変異体が単離されているが、この変異体の具体的な表現型は、開示されていない。それゆえ、酵母においても、AdoMetと細胞の増殖(細胞周期)との関連を解明するに至っていない。
このため、AdoMetの生成に異常が生じた酵母変異体の表現型の解明は、AdoMetの細胞内における役割を解明するツールとして極めて有用である。また、AdoMetの蓄積に関わる種々の病気の病態解析やその治療薬の開発、治療改善に有効利用できる可能性もある。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、AdoMetの生体内での機能を解析でき、かつ、AdoMetを大量生産し得る酵母変異体およびその利用を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、細胞内でAdoMetを蓄積し得る酵母変異体を見出した。そして、この酵母変異体を用いて、AdoMetの生体内での機能の解析、および、AdoMetの大量生産を実現し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)細胞内でS‐アデノシルメチオニンを蓄積しうる酵母であって、メチオニン代謝系酵素が変異していることを特徴とする酵母変異体。
(2)上記メチオニン代謝系酵素がS‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素であって、配列番号3に示される野生型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素のアミノ酸配列において、1個またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素を有することを特徴とする(1)に記載の酵母変異体。
(3)上記変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素のアミノ酸配列が、配列番号4に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする(2)に記載の酵母変異体。
(4)上記変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子を有することを特徴とする(2)または(3)に記載の酵母変異体。
(5)上記変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子が、配列番号2に示される塩基配列からなることを特徴とする(4)に記載の酵母変異体。
(6)上記酵母変異体が、サッカロミセス・セルビシェ(Sacharomyces cerevisiae)FERMP-19715であることを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載の酵母変異体。
(7)上記(1)〜(6)の何れかの酵母変異体を培養することにより、S-アデノシルメチオニンを生産することを特徴とするS‐アデノシルメチオニンの生産方法。
(8)メチオニン非存在下で示す表現型が、メチオニン存在下で回復することを指標として判断することを特徴とするS-アデノシルメチオニン高生産酵母のスクリーニング方法。
(9)上記表現型が温度感受性であることを特徴とする(8)に記載のS-アデノシルメチオニン高生産酵母のスクリーニング方法。
(10)メチオニン代謝系酵素のアミノ酸配列、またはメチオニン代謝系酵素をコードする遺伝子の変異を検出することを特徴とするS-アデノシルメチオニン高生産酵母のスクリーニング方法。
(11)上記メチオニン代謝系酵素が、S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素であることを特徴等する(10)に記載のS-アデノシルメチオニン高生産酵母のスクリーニング方法。
(12)配列番号3に示される野生型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素のアミノ酸配列において、1個またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/又は付加されたアミノ酸配列からなることを特徴とする変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素。
(13)上記変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素のアミノ酸配列が、配列番号4に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする(12)に記載の変異型S-アデノシルホモスシテイン加水分解酵素。
(14)上記(12)または(13)の変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子。
(15)上記変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子が、配列番号2に示される塩基配列からなることを特徴とする(14)に記載の遺伝子。
(16)上記(14)または(15)の遺伝子を含むことを特徴とする組換え発現ベクター。
(17)上記(14)または(15)の遺伝子を宿主細胞句読点に導入することを特徴とする形質転換体の生産方法。
(18)上記(17)の形質転換体の生産方法によって得られた形質転換体。
本発明の酵母変異体は、細胞内にS‐アデノシルメチオニンを蓄積しているので、本発明の酵母変異体を、S‐アデノシルメチオニンの製造に用いることで、AdoMetを大量に生産することが可能になる。さらに、本発明の酵母変異体は、細胞内のAdoMetと細胞の増殖(細胞周期)との関連の解明に利用できる。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
(1)本発明にかかる酵母変異体
本発明の酵母変異体は、細胞内でS‐アデノシルメチオニンを蓄積しうる酵母であって、メチオニン代謝系酵素が変異している酵母変異体である。
まず以下に生体内におけるメチオニンの代謝系およびメチオニン代謝系酵素について説明する。
(1−1)生体内におけるメチオニンの代謝系およびメチオニン代謝系酵素
図1に、メチオニン代謝経路の概略を示す。生体内で、メチオニンは、以下の反応により、代謝される。
(a)S‐アデノシルメチオニン(AdoMet)のメチル基転移により、S‐アデノシルホモシステイン(AdoHcy)に変換する。
(b)S‐アデノシルホモシステイン(AdoHcy)が、アデノシンおよびホモシステインに加水分解される。
(c)ホモシステインからメチオニンになる。
(d)メチオニンが、生体内のATPからアデノシル基を受け、S‐アデノシルメチオニン(AdoMet)になる。
上記(a)〜(c)の反応経路により、メチオニンが生成される。また、生成されたメチオニンは、(d)の反応により再び、S‐アデノシルメチオニン(AdoMet)が生成され、(a)〜(c)の反応を経て、メチオニンが生成される。
また、(b)の反応にて生成されたホモシステインは、シスタチオニンを経て、システインになる。
このような生体内のメチオニンの代謝は、様々な酵素(メチオニン代謝系酵素)の触媒によりなされる。例えば、上記(b)の加水分解反応を触媒する酵素として、S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素がある。また、上記(c)の反応を触媒する酵素としては、メチオニン合成酵素、または、ベタイン-ホモシステインメチル基転移酵素が知られている。また、上記(d)の反応を触媒する酵素としては、メチオニンアデノシル基転移酵素が知られている。
(1−2)メチオニン代謝系酵素の変異
本発明にかかる酵母変異体は、上記メチオニン代謝系酵素が変異している。変異しているメチオニン代謝系酵素としては、上記メチオニン代謝に関与する酵素であれば特に限定されるものではなく、メチオニン代謝系酵素が変異している酵母変異体であればよい。かかるメチオニン代謝系酵素の変異は、当該酵素をコードする遺伝子に変異が起こった結果として生ずる。すなわち本発明にかかる酵母変異体は、変異型メチオニン代謝系酵素遺伝子を有するがゆえに、変異型メチオニン代謝系酵素を有するといえる。本発明にかかる酵母変異体は、変異型メチオニン代謝系酵素に変異を有することによって、メチオニン代謝系に異常が起こり、その結果メチオニン代謝産物の一つであるAdoMetが細胞内に蓄積することとなる。なお、ここでいう「変異」とは、起源を同一にする細胞あるいはその集団間で見られる形質の相違のことをいう。すなわち、変異とは、遺伝子の点突然変異や、転座・重複もしくは欠失などの染色体異常を含む遺伝子構成の相違により生じる形質をいう。それゆえ、「酵母変異体」とは、上記変異が生じた酵母細胞、または、酵母細胞の集団を意味する。また、上記酵母変異体は、1つの遺伝子に変異が生じたものに限定されず、複数の遺伝子に変異が生じた多重酵母変異体も含まれる。また変異は、UV照射、エチルメタンスルホン酸(EMS)処理等の変異誘導を行なう変異であっても、自然変異であってもよいし、遺伝子組み換え法を用いた場合であってもよい。またかかる変異によるメチオニン代謝系酵素活性への影響は、特に限定されるものではなく、低下または欠失または増加してもよい。なお、変異を有するタンパク質/遺伝子等を「変異型タンパク質/遺伝子」と称し、反対に変異を有しないタンパク質/遺伝子等を「野生型タンパク質/遺伝子」と称する。さらには酵素タンパク質をコードする遺伝子のことを「酵素遺伝子」と称する。
ここでメチオニン代謝系酵素の変異の一例として、S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素を挙げて説明する。かかるS‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素は、別名S‐アデノシルシホモステインヒドラターゼといい、上述のごとくメチオニン代謝系において、S‐アデノシルホモシステインの加水分解を触媒し、メチオニンの前駆体であるホモシステインの生成に関与する酵素である。変異のないS‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素(以下、野生型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素)のアミノ酸配列を配列番号3に示した。本発明にかかる酵母変異体が有する変異がかかったS‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素(以下変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素)は、配列番号3に示される野生型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素のアミノ酸配列において、1個またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなるものであれば特に限定されるものではない。
上記「1個またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/又は付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異型タンパク質作製法により置換、欠失、挿入、および/又は付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/又は付加されることを意味する。
また、本発明の酵母変異体は、優性変異、または、劣性変異のどちらの変異を有する酵母変異体でもよいが、特に、劣性変異であることが好ましい。ここでいう「劣性変異」とは、酵母野生体と酵母変異体とを掛け合わせた倍数体において、その倍数体の表現型が、酵母野生体のものとほぼ一致するような変異のことをいう。また、「優性変異」とは、上記倍数体の表現型が、酵母変異体のものとほぼ一致するような変異のことをいう。
このような劣性変異を有する酵母変異体は、細胞内に野生型の対立遺伝子を導入することで、その表現型が、酵母野生体のものとほぼ一致する。すなわち、酵母変異体の表現型が、野生型の対立遺伝子により相補する。それゆえ、酵母野生体のゲノムを有するゲノムライブラリーを、当該酵母変異体に導入することで、変異型遺伝子を同定することが可能になり、解析が容易になる。なお、上記「掛け合わせ」るとは、異なる接合型(例えば、出芽酵母では、a型とα型)の酵母を接合させることを意味する。
変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素の例としては、本発明者等が見出したAdoMet高生産酵母(以下sah1-1;なお詳細については後述する)が有する変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素が挙げられる。当該変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子の塩基配列は、配列番号2に示されるものであり、それがコードするS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素のアミノ酸配列は配列番号4に示すものであった。より具体的には、sah1-1が有するS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子は、野生型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子(配列番号1)の836番目のシトシン(c)がチミン(T)に置換(点変異)されており、その結果野生型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素のアミノ酸配列(配列番号3)における279番目のトレオニン(Thr)が、イソロイシン(Ile)に置換されていた。かかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素を有する酵母変異体は、野生型の酵母の約40倍のAdoMetを細胞内に蓄積していた。なお、上記sah1‐1は、「Saccharomyces cerevisiae sah1-1/scz7」という名称で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物委託センターに、寄託番号:FERMP-19715(寄託日:平成16年3月10日)として寄託されている。
(1−3)本発明にかかる酵母変異体の表現型
本発明にかかる酵母変異体は、変異型メチオニン代謝系酵素遺伝子(例えばS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子)および変異型メチオニン代謝系酵素(例えばS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素)を有するためにメチオニン代謝系に異常が生じている。それゆえ、細胞内でメチオニンの生成が行なわれない状態になり、酵母変異体は、通常野生型酵母が生育に必要なメチオニンの量が存在する状態で生育できなくなる。その結果、酵母変異体は、酵母野生体と相違した表現型になる。ただし、このような酵母変異体は、野生型酵母が通常必要とする量よりもメチオニンが多く存在した状態、すなわちメチオニン存在下では表現型が回復する。
ここで「表現型」とは、生物が示す形態的・生理的な性質のことをいう。また、酵母変異体の表現型とは、上記変異が生じていない酵母(以下、酵母野生体とする)の表現型と相違した形質を意味する。このような酵母変異体の表現型としては、従来公知に知られている酵母変異体の表現型であれば、特に限定されないが、例えば、温度感受性、カルシウム感受性およびナトリウム感受性等のイオン感受性、薬剤感受性、が挙げられる。
例えば、上述のsah1-1においては、メチオニン非存在下で温度感受性を示していた。かかる「温度感受性表現型」とは、限られた温度範囲だけで、酵母野生体と異なる生育を示す表現型を意味する。また、温度感受性表現型には、ある温度以上で酵母野生体と異なる生育を示す高温感受性表現型と、ある温度以下で酵母野生体と異なる生育を示す低温感受性表現型とがある。上記限られた温度範囲としては、酵母野生体が生育可能な温度範囲(以下、許容温度とする)よりも狭い温度範囲であれば、特に限定されないが、例えば、上記酵母が出芽酵母である場合、許容温度は、14〜38℃であるので、上記限られた温度範囲は、14〜38℃よりも狭い温度範囲である。より具体的には、温度感受性表現型として、「37℃で生育できない」、「14℃で生育できない」等の表現型が挙げられる。
このような温度感受性表現型を示す酵母変異体では、変異した遺伝子の産物である特定のタンパク質またはRNAが、ある温度範囲で不安定になり、本来の機能を失う。この結果、この酵母変異体は、温度感受性表現型を示す。それゆえ、実験的には、これら温度感受性表現型を示す酵母変異体は、培養温度のみを変えることにより、野生型から変異型への表現型の変化を経時的に調べることができ、生体内での遺伝子の機能解析に有効である。このような酵母変異体として、上記温度感受性表現型が、14℃、および/または、37℃で生育できないという表現型である酵母変異体が挙げられる。
また、ここでいう「メチオニン非存在下」とは、酵母野生体が通常生育に必要とする量のメチオニンが存在する状態のことをいう。それゆえ、上記「メチオニン存在下」とは、酵母野生体が通常生育に必要とするメチオニンの量よりも多く存在した状態と意味する。なお、上記の酵母野生体が通常生育に必要とするメチオニンの量として、具体的には、培地中のメチオニンの濃度が0.14mMである。
また「表現型が回復する」とは、酵母変異体が表現型を示す環境下での、酵母変異体の生育の異常が回復することを意味する。例えば、上記表現型が温度感受性表現型である場合、上記限られた温度範囲が広がり、酵母野生体が生育できる温度範囲に近づくことを意味する。より具体的には、「37℃で生育できない」という温度感受性表現型を示す酵母変異体が、メチオニン存在下で、37℃で生育できるようになるということである。
なお、上記メチオニンの培地中の濃度は、酵母変異体の表現型に応じて適宜設定することができる。例えば、酵母変異体の表現型が温度感受性表現型である場合、上記メチオニンの培地中の濃度は、1〜4mMが好ましく、さらに好ましくは2mMである。
また、上記「酵母」としては、大部分の生活環を単細胞で経過し、出芽、または、隔壁を生じて細胞分裂する菌類であれば、特に限定されないが、例えば、出芽酵母(Saccharocyces cerevisie)、または、分裂酵母(Schizosaccharocyces pombe)が挙げられる。特に、出芽酵母(Saccharocyces cerevisie)が好ましい。
一方、本発明の酵母変異体は、G2期異常を示す細胞周期変異体の抑圧変異体であってもよい。上記「細胞周期」とは、細胞分裂とDNA複製に見られる周期性を意味する。この細胞周期は、全体として、DNA複製を行なうS期、細胞分裂を行なうM期、S期→M期へ移行する間の間期G2期、および、M期→S期へ移行する間のG1期の4期に分かれている。それゆえ、上記「G2期異常を示す」とは、上記の細胞周期において、G2期の進行に異常があることを意味する。このG2期の異常としては、具体的には、「G2期の進行が遅延する」、「G2期の進行が停止する」、または、「G2期の進行が早まる」等が挙げられる。
また、上記「細胞周期変異」とは、酵母細胞において、細胞周期上の特定のステップに欠損を持つ変異を意味する。酵母細胞は、上記の細胞周期上の特定のステップで、異なる細胞形態をとる。それゆえ、細胞周期変異とは、制限条件下で大部分の酵母細胞の形態が均一になるような変異でもある。また、細胞周期変異体とは、上記細胞周期変異を有する酵母細胞、または、酵母細胞の集団を意味する。したがって、「G2期異常を示す細胞周期変異体」とは、制限条件で、細胞周期上のG2期の進行に異常がある酵母変異体をいう。
また、このような細胞周期変異体の表現型としては、従来公知の細胞周期変異体が示す表現型であれば特に限定されないが、例えば、高温感受性や低温といった温度感受性表現型、カルシウム感受性表現型などが挙げられる。特に、細胞周期変異体の表現型としては、カルシウム感受性表現型であることが好ましい。
また、上記「制限条件」とは、細胞周期変異を示す条件を意味する。例えば、細胞周期変異体の表現型がカルシウム感受性表現型である場合、制限条件とは、カルシウム存在下ということである。また、細胞周期変異体の表現型が37℃で生育できないという高温感受性表現型である場合、上記制限条件は、37℃である。
また、このような細胞周期変異体がG2期異常を示すかどうかは、酵母野生体と細胞周期変異体との間で、細胞周期の進行、すなわち、細胞周期の各期の所要時間を比較することにより判定できる。上記細胞周期の進行を算出する方法は、従来公知の方法であれば、特に限定されないが、例えば、酵母細胞の形態の直接観察、分裂指数、オートラジオグラフの導入、セルソーターによる各細胞内のDNA含量の測定などが挙げられる。
本発明にかかる酵母変異体は、このような細胞周期変異体の抑圧変異体も含まれる。
上記「抑圧変異」とは、第1の変異により表れていた形質が打ち消されるような現象に関与する第2の変異のことをいう。具体的には、上記「抑圧変異」とは、上記細胞周期変異体が示すG2期遅延が打ち消されるような変異をいう。また、「抑圧変異体」とは、上記抑圧変異を有する酵母細胞、または、酵母細胞の集団を意味する。
また、本発明の酵母変異体が有する変異が、上記細胞周期変異体の抑圧変異であるかを判定する方法としては、従来公知の抑圧変異を判定する方法であれば、特に限定されない。例えば、上記細胞周期変異体が温度感受性表現型を示す場合、当該細胞周期変異体が有する細胞周期変異と、本発明の酵母変異体が有する変異とを有する二重酵母変異体を作製し、この二重酵母変異体の表現型が、当該細胞周期変異体が本来有している温度感受性表現型を解消しているかで判定することができる。
最近の知見によれば、AdoMetは、メチル基供与体やメチオニン代謝における中間媒体としての機能だけでなく、肝臓の障害の感知や肝臓の再生・分化等の必須な肝臓機能を制御する細胞内制御スイッチであることが示唆されている(Corrales FJ, J. Nutr. 2002 Aug; 132)。しかしながら、AdoMetが、細胞内のどのような機能をスイッチしているのかは、現在のところ未解明である。本発明の酵母変異体は、上述のように、細胞内でAdoMetを蓄積し、かつ、G2期に異常が生じた細胞周期変異体の抑圧変異体であるので、AdoMetと細胞の増殖(細胞周期)との関連を解明するツールとして極めて有用である。また、本発明の酵母変異体は、AdoMetの蓄積に関わる種々の病気の病態解析やその治療薬の開発、治療改善に有効利用できる可能性もある。
(1−4)本発明にかかる酵母変異体の取得の一例
本発明者は、出芽酵母において、上記細胞周期変異体として、カルシウム存在下でG2期遅延を引き起こすZDS1遺伝子変異体を用いた。このZDS1遺伝子変異体は、カルシウム存在下で、バッドが伸長するという細胞形態異常を示すと共に、細胞周期のG2期の進行が遅延する。このZDS1遺伝子変異体のカルシウム感受性表現型の抑圧変異体として、S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子に変異がかかった酵母変異体(zds1Δsah1−1;詳細については後述する)を取得した。
さらに、後述する実施例5に示すように、本発明者は、AdoMetが細胞周期制御因子の転写を抑制することにより、細胞周期のG1期の進行を遅延させることを明らかにした。このように、出芽酵母において、AdoMetと細胞の増殖(細胞周期)との関連が示されたのは、本発明がはじめてである。
それゆえ、このzds1Δsah1−1は、AdoMetと細胞の増殖(細胞周期)との関連を解明するツールとして極めて有用であり、本発明の酵母変異体は、AdoMetの蓄積に関わる種々の病気の病態解析やその治療薬の開発、治療改善に有効利用できる可能性もある。
(2)本発明にかかるスクリーニング方法
本発明にかかるスクリーニング方法は、AdoMet高生産酵母のスクリーニングを目的としている。ここで「AdoMet高生産酵母」とは、上述のごとくメチオニン代謝系酵素が変異することによってメチオニン代謝系に異常が生じ、その結果、AdoMetの細胞内蓄積量が野生型酵母に比して増加した酵母のこと、すなわち上記(1)にて説示した本発明にかかる酵母変異体のことである。なおAdoMetの蓄積量の増加量(率)は特に限定されるものではなく、野生型酵母のAdoMet蓄積量を超えるものであればよい。
かかるAdoMet高生産酵母をスクリーニングする方法として具体的には、(a)メチオニン非存在下で示す表現型、例えば温度感受性表現型が、メチオニン存在下で回復することを指標として判断する方法、および(b)メチオニン代謝系酵素、例えばS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素のアミノ酸配列、またはメチオニン代謝系酵素、例えばS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子の変異を検出する方法がある。
まず(a)について説明する。上記(1−3)にて説示したごとくメチオニンの代謝異常が生じた酵母は、上記(1−3)にて説示したごとくメチオニン非存在下において種々の表現型(温度感受性等)を示すが、メチオニン存在下においてはその表現型が回復する。本発明にかかるスクリーニング方法は、その現象を検出することによって、メチオニン代謝系酵素に変異が生じたAdoMet高生産酵母をスクリーニングするというものである。
より具体的に説明すれば以下のとおりとなる。なお表現型として温度感受性を一例に挙げて説明する。まず人為的に変異処理を行なった酵母、若しくは変異処理を行なっていない酵母の中から、メチオニン非存在下において温度感受性を示す酵母を選抜する。温度感受性とは、既に説明したごとく野生型酵母が生育可能な温度において生育できない表現型のことである。したがって野生型において14〜38℃で生育可能な出芽酵母をスクリーニングする場合は、例えば「37℃で生育できない」・「14℃で生育できない」等を基準として選抜すればよい。次にかかるメチオニン非存在下において温度感受性を示す酵母について、メチオニン存在下で温度感受性が回復する、すなわち例えば「37℃で生育できる」・「14℃で生育できる」酵母を選抜する。このようにして得られた酵母は、メチオニン代謝系に異常が生じた酵母であり、目的とするAdoMet高生産酵母である可能性が高い。なお上記選抜され酵母のAdoMetの生産量(蓄積量)は、酵母菌体抽出液から従来公知のペーパクロマトグラフィーによる検出、キャピラリー電気泳動による検出を用いて測定することができる。また上記人為的変異処理の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチルメタンスルホン酸(EMS)による変異誘発、または、紫外線(UV)照射等が挙げられる。
また、上記(a)にてスクリーニングされたAdoMet高生産酵母において、どの遺伝子に変異がかかっているかを同定する方法としては、従来公知の酵母変異体の表現型を相補する遺伝子の取得方法であれば、特に限定されないが、例えば、野生型酵母のゲノムを網羅するゲノムライブラリー等を、上記(a)にてスクリーニングされたAdoMet高生産酵母に導入し、このAdoMet高生産酵母の表現型が野生型酵母とほぼ同レベルに相補されたクローンを取得する方法が挙げられる。そして、このクローンについて、遺伝子を検出することにより、AdoMet高生産酵母において、どの遺伝子に変異がかかっているかを同定することができる。遺伝子を検出する方法は、特に限定されるものではなく、シークエンシングによる検出、制限酵素地図による検出、サザンブロット法による検出、DNAマイクロアレイによる検出等の公知の方法をもちいればよい。
次に上記(b)の方法を説明する。当該方法は酵母のメチオニン代謝系酵素(例えばS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素等)のアミノ酸配列、またはメチオニン代謝系酵素(例えばS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素等)をコードする遺伝子の変異をダイレクトに検出する方法である。アミノ酸配列の変異または遺伝子の変異のいずれを検出してもよいが、タンパク質の精製・アミノ酸シークエンス等の操作が煩雑であるため、遺伝子の変異を検出する方がより簡便である。遺伝子の変異を検出する方法は、特に限定されるものではなく、シークエンシングによる検出、制限酵素地図による検出、サザンブロット法による検出、DNAマイクロアレイによる検出等の公知の方法をもちいればよい。
なおAdoMet高生産酵母のスクリーニングには、上記(a)の方法、あるいは(b)の方法それぞれ単独で用いてもよいが、(a)および(b)を組み合わせて用いてもよい。例えば、(a)の方法によってあらかじめ候補株を絞っておき、その候補株について遺伝子等の置換を検出すればよい。このように2つのスクリーニング方法を組み合わせることによって、効率的かつ高確率に目的のAdoMet高生産酵母を選抜することが可能となる。
(3)本発明にかかるAdoMetの生産方法
本発明にかかるAdoMetの生産方法は、上述の酵母変異体(AdoMet高生産酵母)を培養することにより、AdoMetを調製するものである。本発明の酵母変異体は、細胞内にAdoMetを蓄積しているので、培養した酵母変異体からAdoMetを抽出および精製することで、AdoMetの大量生産を実現できる。以下に、上記AdoMetの生産方法について、具体的に説明する。
AdoMetを大量生産するための、酵母変異体の培養条件は、従来公知の酵母の培養条件を適用することができる。例えば、メチオニン、炭素源、窒素源、無機塩、および、有機微量栄養源を含有する液体培地中で好気的条件下で行なうことが好ましい。
メチオニンは、培地中に酵母野生体が通常生育に必要な量だけ含まれていれば、さらにメチオニンを添加しても添加しなくてもよいが、メチオニンを添加する場合、通常0.02g/dl以上の割合で添加されることが好ましい。メチオニンの添加方法は一度に全量を添加する方法、分割して順次添加する方法の何れの添加方法でもよい。しかしながら、メチオニンの添加量が多い場合には、前者の方法を採用するとS‐アデノシルメチオニンの細胞内蓄積量が低下する傾向を示すので、このような場合には後者の方法を採用するのが好適である。
炭素源としては、グルコース、シュクロース、フラクトースなどの糖類;エタノール、グリセリンなどのアルコール類;更にはこれらを含有する澱粉加水分解液、糖蜜、大豆ホエー、果汁廃液、魚加工廃液、発酵廃液、パルプ廃液なども使用することができる。また窒素源としては、尿素、コハク酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、乳酸アンモニウムなどが好ましい。無機塩としては、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウムなどのリン酸塩、塩化カリウムなどのカリウム塩、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのナトリウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどのマグネシウム塩、硫酸マンガン、塩化マンガンなどのマンガン塩、硫酸鉄、塩化鉄などの鉄塩、亜鉛塩、銅塩、コバルト塩などの従来公知の無機塩を、必要に応じて適宜使用することができる。有機微量栄養源としては、ビタミン、アミノ酸、これらを含有する酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、コーンステイーブリカー、カザミノ酸、大豆粉、大豆加水分解物、ペプトン、トリプトン、カゼイン分解液など必要に応じて使用できる。
培養条件は、好気的条件下で行なう培養であれば、特に限定されるものではないが、例えば、培地のpHを3〜8、好ましくは3.5〜7に制御しつつ、15℃〜45℃、好ましくは、20℃〜35℃、より好ましくは、25℃〜33℃の範囲で2日から10日間、培養することにより、酵母変異体の細胞内にAdoMetが生成蓄積される。
本発明のAdoMetの製造方法においては、酵母変異体の培養後、培地から酵母変異体を分離し、次いで酵母変異体からのAdoMetの抽出および精製が行なわれる。これらの工程で用いられる方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。すなわち、培地から酵母変異体を分離する工程にあたっては、例えば遠心分離による方法、濾過による方法などが挙げられる。また、酵母変異体からAdoMetの収得する工程にあたっては、過塩素酸、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、ギ酸エステル、酢酸エステル、エタノールなどの抽出剤により、AdoMetを抽出後、従来公知の方法に従い抽出液中のAdoMetを精製することによって、高純度の安定化されたAdoMetが得られる。
AdoMetの精製方法は、従来公知の方法を適用しうる。例えば活性炭、強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂、キレート樹脂などを用いるクロマトグラフィー法、ライネツケ塩、ピクリン酸、リンタングステン酸、ピクロロン酸などを用いてS‐アデノシルメチオニンを沈殿させて精製する方法、アセトン、エタノールなどの有機溶媒を用いてAdoMetを抽出させる方法などがあり、必要に応じて適宜組み合わせて行うことができる。この際、AdoMetを安定させて収得するために、硫酸、パラトリエンスルホン酸、スルホサリチル酸などの酸を加えて、AdoMetの塩、または、複塩の形で回収するのが一般的である。
本発明は、上述のAdoMetの生産方法により生産されたAdoMetも含まれる。本発明のAdoMetは、上述の製造方法により大量生産が可能になる。それゆえ、安価で、かつ高純度で安定したAdoMetを提供することが可能になる。
(4)本発明にかかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素および変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子
本発明にかかるS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素は、配列番号3に示される野生型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素のアミノ酸配列において、1個またはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/又は付加されたアミノ酸配列からなることを特徴とする変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素、例えば配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する変異型S-アデノシルホモスシテイン加水分解酵素である。一方、本発明にかかるS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子は、上記変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子、例えば配列番号2に示される塩基配列からなることを特徴とするものである。
本発明にかかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素、および変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子の取得方法(生産方法)は特に限定されるものではないが、代表的な方法として次に示す各方法を挙げることができる。
(4−1)本発明にかかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素の取得方法
本発明の変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素を取得する方法(生産方法)としては、まず本発明の変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素を発現する細胞、組織などから単純精製する方法を挙げることができる。精製方法も特に限定されるものではなく、公知の方法で細胞や組織から細胞抽出液を調製し、この細胞抽出液を公知の方法、例えばカラム等を用いて精製すればよい。
また、本発明の変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素を取得する方法として、遺伝子組み換え技術等を用いる方法も挙げられる。この場合、例えば、本発明の変異型遺伝子をベクターなどに組み込んだ後、公知の方法により発現可能に宿主細胞に導入し、細胞内で翻訳されて得られる上記変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素を精製するという方法などを採用することができる。
なお、このように宿主に外来遺伝子を導入する場合、外来遺伝子の発現のため宿主内で機能するプロモーターを組み入れた発現ベクターおよび宿主には様々なものが存在するので、目的に応じたものを選択すればよい。産生されたタンパク質を精製する方法は、用いた宿主、タンパク質の性質によって異なるが、タグの利用等によって比較的容易に目的のタンパク質を精製することが可能である。
変異型タンパク質を作製する方法についても、特に限定されるものではない。例えば、部位特異的突然変異誘発法(Hashimoto‐Gotoh,Gene 152,271‐275(1995)他)、PCR法を利用して塩基配列に点変異を導入し変異型タンパク質を作製する方法、あるいはトランスポゾンの挿入による突然変異株作製法などの周知の変異型タンパク質作製法を用いることができる。変異型タンパク質の作製には市販のキットを利用してもよい。
本発明にかかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素の取得方法は上述の方法限定されることはなく、例えば、化学合成されたものであってもよい。また無細胞系のタンパク質合成液を利用して本発明の変異型遺伝子から本発明の変異型タンパク質を合成してもよい。
(4-2)本発明にかかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子の取得方法
本発明にかかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子の取得方法としては、特に限定されるものではないが、例えば上述した本発明にかかる酵母変異体を用いた取得方法が挙げられる。より具体的には、例えばPCR法による取得方法が挙げられる。該方法では、まず野生型のS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子の塩基配列情報より5’側および3’側の配列(又はその相補配列)の中からそれぞれプライマーを設計する。次にこれらプライマーを用いてゲノムDNA(又はcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明の変異型遺伝子を含むDNA断片を大量に取得することができる。このとき取得された変異型遺伝子についてシークエンシングを行うことにより、容易に、本発明の変異型遺伝子のどこに変異が起こっているのか、すなわち、本発明の変異型遺伝子の変異点を同定することができる。
(5)本発明にかかる組換え発現ベクター、本発明にかかる形質転換体の生産方法、および形質転換体
(5-1)本発明にかかる組み換え発現ベクター
本発明にかかる組換え発現ベクターは,上記変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子を含むものである。例えば、cDNAが挿入された組換え発現ベクターが挙げられる。組換え発現ベクターの作製には、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどを用いることができるが特に限定されるものではない。また、作製方法も公知の方法を用いて行えばよい。
ベクターの具体的な種類は特に限定されるものではなく、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に遺伝子を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明にかかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子を各種プラスミド等に組み込んだものを発現ベクターとして用いればよい。またターミネーター等のプロモーター以外のDNAセグメントが含まれていてもよい。
(5-2)本発明にかかる形質転換体の生産方法
本発明にかかる形質転換体の生産方法は、上記変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子が宿主に導入することを特徴としている。当該遺伝子の宿主細胞への導入方法は特に限定されるものではなく、上記本発明の組み換えベクター等を用いて公知の方法により導入を行なえばよい。公知の遺伝子導入方法、すなわち形質転換方法としては、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、酢酸リチウム法等を好適に用いることができる。
上記宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、キイロショウジョウバエ等の昆虫、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeや分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫Caenorhabditis elegans、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞等を挙げることができる。また、プロモーターやベクターを選択すれば、植物も形質転換の対象とすることが可能である。中でも、対象となる生物としては、上述の酵母が好適である。酵母は、遺伝学解析が容易で、かつ、形質転換体の作製も短時間で行うことが可能である。それゆえ、細胞内のAdoMetと細胞の増殖(細胞周期)との関連を解明することがより容易になる。さらには、S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子が欠失した宿主細胞(酵母)に変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子が導入されてもよい。こうすることで、本発明の変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子のみの発現が可能であり、AdoMet高生産形質転換体(酵母)を取得することができる。
また、本発明にかかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子が宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認するために、各種マーカーを用いてもよい。例えば、宿主細胞中で欠失している遺伝子をマーカーとして用い、このマーカーと本発明の変異型遺伝子とを含むプラスミド等を発現ベクターとして宿主細胞に導入する。これによってマーカー遺伝子の発現から本発明の変異型遺伝子の導入を確認することができる。あるいは、本発明にかかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素を融合タンパク質として発現させてもよい。例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質GFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、本発明に係るタンパク質をGFP融合タンパク質として発現させてもよい。
(5-3)本発明にかかる形質転換体
本発明にかかる形質転換体は、上記本発明にかかる形質転換体の生産方法によって得られた形質転換体である。すなわち本発明にかかる変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子が導入された形質転換体である。ここで、「遺伝子が導入された」とは、公知の遺伝子工学的手法(遺伝子操作技術)により、対象細胞(宿主細胞)内に発現可能に導入されることを意味する。また、上記「形質転換体」とは、細胞・組織・器官のみならず、生物個体を含む意味である。本発明にかかる形質転換体、特にS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子が欠失した宿主細胞(酵母)に変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子が導入されてなる形質転換細胞(酵母)を培養することによって、AdoMetを高生産することが可能となる。
(6)本発明にかかる酵母変異体等の利用方法(有用性)
本発明にかかる酵母変異体,AdoMetの生産方法,AdoMet高生産酵母のスクリーニング方法,変異型S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素および該遺伝子,組み換え発現ベクター,形質転換方法並びに形質転換体は、いずれもAdoMetの大量生産に利用が可能である。また、細胞内のAdoMetと細胞の増殖(細胞周期)との関連の解明に利用できる。本発明によって生産されるAdoMetの利用方法について以下に説明する。
AdoMetは、各種疾患治療薬剤として利用が可能である。例えば、上記疾患としては、肝臓疾患・うつ病治療・骨関節症・がん治療等が挙げられる。
上述のメチオニン代謝経路に示すように、メチオニンからAdoMetを生成する反応は、メチオニンアデノシル基転移酵素により行なわれる。哺乳類においては、MAT1、MAT2、および、MAT3のという、3つのメチオニンアデノシル基転移酵素をコードする遺伝子が存在する。このうち、MAT1遺伝子は、肝臓特異的に発現することが知られている。また、アルコール性肝硬変の固体は、この肝臓特異的に発現するMAT1タンパク質の活性が著しく低下していることが知られている。また、上記MAT1遺伝子のノックアウトマウスでは、メチオニン代謝障害が起き、肝臓中のAdoMet量の低下、肝臓肥大、および、脂肪肝の症状が観察される。
また、MAT1遺伝子のノックアウトマウスは、非アルコール的に脂肪肝炎が発生した。このノックアウトマウスにおいて、4塩化炭素により誘発される肝臓毒性と悪性腫瘍の発生率とを、3ヶ月、および、18ヶ月齢でそれぞれ調べた。その結果、MAT1遺伝子のノックアウトマウスでは、脂肪の過酸化が増加し、4塩化炭素により誘発される肝臓損傷が促進していた。また、ノックアウトマウスにおいて、18ヶ月齢のマウスの半数以上に肝臓悪性腫瘍の発生が認められた。これらのことより、AdoMetは、通常の肝臓機能の維持、および、肝臓の腫瘍発生の抑制に重要な役割を果たしていることが示された(Martinez-Chantar ML, FASE J 2002 Aug; 16)。
また、AdoMetの処方は、様々な薬剤により引き起こされた肝臓の損傷を軽減し、またアルコール依存症患者の肝硬変による生存性を改善する効果を有する(Avila MA et al. Alcohol 2002 Jul 27)。
また、体内の肝臓の健全性に最も重要な代謝経路は、上述したメチオニン代謝経路における、ホモシステインのメチル化によりメチオニン、および、AdoMetを生成する2つの経路である。エタノールは、メチオニン合成酵素が触媒する、これら2つの経路の何れかを阻害することが示唆されている。エタノール自体は、酵素の活性を阻害しない。それゆえ、肝臓内のAdoMetは、肝臓の脂肪症、および、それより派生する肝臓障害を防ぐための、肝臓からの脂肪の輸送に必須であることが示されている。(Barak AJ et. Al. Alcohol Feb:26)
このように、AdoMetは、肝臓障害や肝臓腫瘍などの肝臓疾患の治療におけて、重要な役割を果たす。
また、AdoMetは、メチル基供与体であり、様々な脳内神経伝達物質に関与している。とりわけ、AdoMetの脱うつ活性が注目されている。脳内ポリアミンは、神経形成において重要な働きをしている。脳内ポリアミンとしては、プトレッシン、スペルミジン、スペルミン等が挙げられる。AdoMetはこの脳内ポリアミンの合成に必須である。また、うつ病は、脳容量の部分的減少と関連があるといわれており、うつ病抑制剤は、ある脳特定部位の神経発生を増大させ、神経形成に影響することが明らかにされている。
慢性的に予測不能なストレスを適度に与え続けることで誘導した快感消失ラットにおいて、海馬体中の脳内ポリアミンである、プトレッシン、スペルミジン、および、スペルミンの量、並びに、中隔側座核のプトレッシンの量が顕著に低下していることが見出されている(Gendani S et. al.Neuroreport 2001 Dec 21)。そして、この実験ラットに脱うつ効果として十分量のAdoMetを供与したところ、海馬体中のスペルミジン、および、スペルミンの量、並びに、中隔側座核のプトレッシンの量が回復したことが示されている。
このように、AdoMetは、うつ病治療において、重要な役割を果たしている。
また、AdoMetは、骨関節症治療において、痛みの軽減、機能回復に効果を奏する。それゆえ、それゆえ、本発明の治療薬剤は、このような骨関節症の治療のために、好適に用いることができる。
以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本実施例において、実験手法は、特に断らない限り、(1) Nature 392 303-306(1998) Mizunuma et al、(2)EMBO J. 20 1074-1085(2001) Mizunuma et al、(3)Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2004)印刷中 Mizunuma et alに記載されている方法に従った。また、本実施例では、上記ZDS1酵母変異体として、ZDS1タンパク質の機能を完全に欠失させたZDS1欠失酵母変異体(以下zds1Δ)を用いた。
〔実施例1〕
本実施例では、SAH1酵母変異体の取得について説明する。SAH1酵母変異体は、ZDS1酵母変異体のカルシウム感受性表現型の抑圧変異体として取得された。
ZDS1酵母変異体は、図2(a)に示すように、高濃度カルシウム(300mM)を含む培地上では、生育不能になる。このカルシウム濃度の条件下でも生育可能となる突然変異体を多数取得した。これらの突然変異体の中から、SAH1遺伝子に変異が生じた酵母変異体(以下zds1Δsah1-1)を取得した。
この酵母変異体は、図2(a)に示すように、zds1Δが示すカルシウム感受性を有意に抑圧している。また、このような抑圧変異だけではなく、37℃で生育できない高温感受性表現型、および14℃で成育できない低温感受性表現型を示していた。
SAH1遺伝子の同定は、酵母のゲノムライブラリーを、この酵母変異体に導入し、上記表現型を相補するクローンとして、目的プラスミドを取得した。この目的プラスミドのゲノム挿入部分のシークエンシングを行ない、データベース検索した結果、このプラスミドには、SAH1遺伝子が含まれていることが明らかになった。次に、この酵母変異体にSAH1遺伝子のみを含んだクローンを、低コピーで導入した。その結果、SAH1遺伝子のみを含んだクローンの導入により、この酵母変異体の表現型が相補したことから、この酵母変異体は、SAH1遺伝子に変異が生じたものであることが予想された。以下、このスクリーニングにより取得された酵母変異体をSAH1酵母変異体(以下sah1-1)と称する。
実際に、SAH1遺伝子に変異が生じたものであるかを確かめるために、当該sah1-1におけるsah1-1変異型遺伝子の変異点の同定を行なった。sah1-1から酵母ゲノムを調製し、シークエンシングを行なった。なお、コントロールには、使用した酵母野生体のゲノムを用いた。その結果、sah1-1では、SAH1遺伝子の836番目のシトシン(c)がチミン(T)に置換した点変異であった。また、この点変異により、アミノ酸配列では、279番目のアミノ酸であるトレオニン(Thr)がイソロイシン(Ile)に変化していた。
さらに、上記点変異がSAH1タンパク質の機能に必要であるかを確かめるために、野生型SAH1遺伝子に、上記点変異を導入したプラスミドを構築した。このプラスミドを、上記sah1-1に導入したところ、sah1-1の表現型を相補することがなかった。これらの結果から、上記スクリーニングにより取得された酵母変異体は、実際に、SAH1遺伝子に変異が生じた酵母変異体であると結論付けた。
図2は、取得された酵母変異体(zds1Δsah1-1、sah1-1)の表現型を示す図である。図2(a)に示すように、zds1Δsah1-1は、低温感受性表現型(14℃で生育できない)、および高温感受性表現型(37℃で生育できない)を示す。そしてzds1Δは、カルシウム存在下で生育できないカルシウム感受性表現型を示すが、この酵母変異体にSAH1遺伝子に変異が入ったとき(すなわちzds1Δsah1-1)には、カルシウム感受性表現型を示さなかった。よって、zds1Δsah1-1が、zds1Δの抑圧変異体であることがわかる。また、sah1-1も低温感受性表現型(14℃で生育できない)、および高温感受性表現型(37℃で生育できない)を示す。
また、図2(b)に示すように、zds1Δは、カルシウム存在下で、出芽が伸長した細胞形態をとるという細胞形態異常を示すが、zds1Δsah1-1の状態では、このような細胞形態異常を示さなかった。
また、図2(c)に示すように、zds1Δは、カルシウム存在下で細胞周期のG2期の遅延がみられるが、zds1Δsah1-1の状態では、このG2期の遅延が観察されなかった。
以上のことから、SAH1遺伝子の変異は、zds1Δのカルシウム感受性表現型のみならず、細胞形態異常、およびG2期遅延をも抑圧することがわかった。
〔実施例2〕
本実施例では、細胞の増殖(細胞周期)におけるsah1-1とzds1Δとの関連を解析した。その結果を図3に示す。
まず、酵母野生体(以下wild type)、zds1Δ、zds1Δsah1-1、およびsah1-1において細胞周期制御因子の転写量を測定し、カルシウム非存在下とカルシウム存在下で比較した。具体的には、上述の各種酵母をカルシウム非存在下、またはカルシウム存在下で培養し、1時間後の各種酵母変異体において、細胞周期制御因子であるSWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写量をノーザン解析により調べた。その結果を図3(a)に示す。図3(a)に示すように、zds1Δsah1-1、およびsah1-1では、カルシウム非存在下、または、カルシウム存在下に関わらず、SWE1遺伝子およびCLN2遺伝子の転写を抑制していた。
次に、上述の各種酵母変異体を、カルシウム非存在下、またはカルシウム存在下で培養し、1時間後の各種酵母変異体において、SWE1タンパク質、およびCLN2タンパク質の量をウエスタン解析により調べた。その結果を図3(c)に示す。図3(c)に示すように、zds1Δsah1-1、およびsah1-1では、カルシウム非存在下、またはカルシウム存在下に関わらず、SWE1タンパク質およびCLN2タンパク質の量を減少させていた。
次に、wild type、およびzds1Δsah1-1における、細胞周期上でのSWE1遺伝子およびCLN2遺伝子の転写をさらに詳細に解析した。具体的には、wild type、およびsah1-1をα‐ファクターと呼ばれるペプチドを用いて、細胞周期のG1期に同調し、その後α‐ファクターを含まない培地にシフトし、25℃で細胞周期を進行させた。このように細胞周期を同調的に進行させたwild type、およびsah1-1について、20分おきにサンプリングを行なった。そして、それぞれのサンプルについて、DNA含量をFACS解析により調べるとともに、SWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写量をノーザン解析により調べた。その結果を図3(c)に示す。
図3(c)の右側は、FACS解析により調べたDNA含量を示す。このDNA含量の経時的な変化を見ることにより、上記各種酵母変異体の細胞周期進行がわかる。そして、図3(c)の左側は、この細胞周期上でのSWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写の変化を示す。右側のFACS解析に示すように、wild typeでは、シフト後、20分および40分に、DNA含量が1Cから2Cに移行しG2期の状態にある。そして、左側のノーザン解析結果に示すように、SWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写は、シフト後、20分および40分に現われる。そして、SWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写は、シフト後、60分には消失する。このように、wild typeにおいて、SWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写は、細胞周期上である特定の周期性を有している。これに対して、sah1-1では、wild typeに見られるSWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の増加が観察されなかった。またFACS解析から、wild typeとsah1-1とでDNA含量を比較すると、sah1-1が生育する25℃においても、G1期の遅延が観察された。
以上のことから、sah1-1では、細胞周期制御因子の転写を抑制することによりG1期の進行が遅延していることが明らかになった。
〔実施例3〕
上述のSAH1遺伝子は、データベース検索の結果、S‐アデノシル‐L‐ホモシステイン加水分解酵素をコードすることがわかった。もしそうであれば、sah1-1の細胞内では、ホモシステインの前駆体物質であるAdoHcyが蓄積していると予想される。そこで、YPD培地、またはO培地で対数増殖期にまで培養した酵母野生体、およびsah1-1について、キャピラリー電気泳動法を用いて、細胞内のAdoMet、およびAdoHcyを測定し、wild typeとsah1-1とで比較した。その結果を表1に示す。
Figure 0004487066
この結果、表1に示すように、sah1-1ではAdoHcy、およびAdoMetの細胞内での蓄積が観察された。その蓄積量はwild typeに比して、AdoHcyで約8倍、AdoMetで約37倍であった(O培地の結果)。
このことより、sah1-1は、S‐アデノシル‐L‐ホモシステイン(AdoHcy)加水分解酵素の活性に欠損があると結論付けた。
〔実施例4〕
上記実施例3で、S‐アデノシル‐L‐ホモシステイン(AdoHcy)加水分解酵素の活性に欠損があることが明らかになったので、sah1-1では、メチオニン代謝経路に欠陥が生じていると予想される。そこで、上記メチオニン代謝経路における生成産物である、メチオニン、AdoMet、または、AdoHcy存在下でのsah1-1の生育を調べた。具体的には、メチオニン、AdoMet、または、AdoHcy存在下における、25℃での生育を、wild typeとsah1-1とで比較した。その結果を図4に示す。なお、図4中に記載されている「‐」は、培地中にメチオニンを全く含まない培地を意味する。
図4に示すように、sah1‐1は、メチオニンを全く含まない培地では、生育することができない。これに対して、メチオニン、または、AdoMet存在下において、sah1−1は、生育可能になる。すなわち、sah1-1はメチオニン、または、AdoMet存在下で、25℃で生育できないという表現型を回復することが明らかになった。
〔実施例5〕
本実施例では、AdoMetと細胞の増殖(細胞周期)との関連を解析した。すなわち本実施例では、メチオニン、AdoMet、または、AdoHcy存在下における、wild typeの細胞周期進行の影響を調べた。その結果を図5に示す。
まず、メチオニン、AdoMet、または、AdoHcy存在下で、wild typeにおける細胞周期制御因子の転写量を測定し比較した。具体的には、wild typeの培養液に、メチオニン、AdoMet、または、AdoHcyを添加し、経時的にSWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写量をノーザン解析により調べた。その結果を図5(a)に示す。図5(a)に示すように、AdoMet、およびAdoHcyは、SWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写を抑制していた。
次に、wild typeの培養液に、メチオニン、AdoMet、または、AdoHcyを添加し、経時的にSWE1タンパク質、およびCLN2遺伝タンパク質の量をウエスタン解析により調べた。その結果を図5(b)に示す。図5(b)に示すように、AdoMet、および、AdoHcyは、SWE1タンパク質、およびCLN2タンパク質の量を減少させていた。
次に、メチオニン、AdoMet、またはAdoHcy存在下での酵母野生体のDNA含量を、FACS解析によりを測定した。図5(c)は、左から無添加(-),メチオニン,AdoMet,またはAdoHcyを添加後、3時間のサンプルを用いて、DNA含量を測定した結果である。その結果、AdoMetを添加した場合にのみ、G1期の細胞の蓄積が観察された。
次に、酵母野生体におけるAdoMetの効果を、より明確にするために、液胞に異常を示すVPS33欠失酵母変異体を用いて、メチオニン、AdoMet、または、AdoHcy存在下におけるDNA含量を、FACS解析によりを測定した。AdoMetは、通常液胞に蓄積されることで、その細胞内における効果が解消されることが示唆されている。以上のように、AdoMetは細胞周期制御因子の転写を抑制することによりG1期の進行を遅らせることが明らかになった。
〔実施例6〕
sah1-1が、細胞周期のどの時期で欠損があるのかをより詳細に調べるために、上記のα‐ファクターを用いて酵母細胞をG1期に同調し、その後α‐ファクターを含まない培地にシフトして、37℃での細胞周期進行をFACS解析により調べた。同様にDNA合成阻害剤であるハイドロキシウレア(HU)を用いて酵母細胞をS期に同調し、その後HUを含まない培地にシフトして、37℃での細胞周期進行をFACS解析により調べた。その結果を図6に示す。
図6に示すように、HUでS期に同調したsah1-1は、37℃へシフト後、wild typeと同様にS期からG2期に進行した。一方、αファクターでG1期に同調したsah1-1は、wild typと異なり、37℃へシフト後、G1期からS期に進行しなかった。このことから、sah1-1はG1期での欠陥により、制限温度(37℃)でG1期停止することが明らかになった。すなわち、細胞周期においてSAH1タンパク質が実際に機能する点(実行点;execution point)がG1期であることが明らかになった。
〔実施例7〕
上述の実施例1〜6の結果より、細胞内S‐アデノシルメチオニンは、酵母細胞内において細胞周期G1期を遅延させることがわかった。また、S‐アデノシルメチオニンは、細胞周期調節因子SWE1を不安定化させることがわかった。そこで、S‐アデノシルメチオニンは、zds1破壊株の示すカルシウム培地における増殖不能を回復させることができるかを検討した。その結果、図7に示すように、実際に、S‐アデノシルメチオニンは、zds1破壊株の300mMカルシウム培地における増殖不能を回復させることができた。
これまでに、S‐アデノシルメチオニンは、メチオニン代謝に関与するMET4タンパク質の分解を引き起こすことが報告されていた。そこで、もし上記の結果が、S‐アデノシルメチオニンによるMET4タンパク質の分解を介して引き起こされているのであれば、MET4遺伝子を欠損した株では、zds1破壊株で観察されたS‐アデノシルメチオニンによる増殖回復を示さないと予想される。しかしながら、S‐アデノシルメチオニンを培地に添加することにより、zds1met4二重破壊株が示す100mM(または300mM)カルシウム培地での増殖不能を回復することができた。以上の結果より、S‐アデノシルメチオニンは、実際に、細胞周期調節因子であるSWE1やCLN2の発現を抑制することにより、zds1Δ破壊株が示すカルシウム培地での増殖不能を回復させた。さらに、この効果は、MET4タンパク質を介さない新規の経路であることが示唆された。
本発明にかかる酵母変異体は、細胞内にS‐アデノシルメチオニンを蓄積することができる。それゆえ、本発明の酵母変異体によればS‐アデノシルメチオニンを大量に生産することが可能となる。S‐アデノシルメチオニンは、肝臓疾患・うつ病治療・骨関節症・がん治療等の各種疾患治療薬剤として有用である。したがって本発明は特に製薬産業において利用可能である。
また、細胞内のS‐アデノシルメチオニンと細胞の増殖(細胞周期)との関連の解明に利用できるため学術的意義も大きい。
図1は、細胞内でのS‐アデノシルメチオニンの生成経路の概略を示す説明図である。 図2は、wild type、zds1Δ、zds1Δsah1-1、およびsah1-1の表現型を示す図であり、(a)は各種酵母のカルシウム存在下、14℃、25℃、または、37℃における生育状況を示す写真であり、(b)は各種酵母のカルシウム存在下における細胞形態を示す写真であり、(c)はカルシウム存在下での各種酵母変異体のDNA含量を示す図である。 図3は、wild type、zds1Δ、zds1Δsah1-1、およびsah1-1におけるSWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の発現状況を示す図であり、(a)は各種酵母におけるSWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写状況を示す図であり、(b)は各種酵母におけるSWE1タンパク質、およびCLN2タンパク質の発現状況を示す図であり、(c)はwild type、およびsah1-1において、細胞周期上でのSWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写周期性を調べた結果を示す図である。 図4は、メチオニン、S‐アデノシルメチオニン、またはS‐アデノシル‐L‐ホモシステインの存在下におけるwild typeおよびsah1-1の生育状況を示す写真である。 図5は、メチオニン、S‐アデノシルメチオニン、または、S‐アデノシル‐L‐ホモシステインの存在下における、wild typeのSWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の発現状況を示す図であり、(a)はSWE1遺伝子、およびCLN2遺伝子の転写状況を示す図であり、(b)はSWE1タンパク質、およびCLN2タンパク質の発現状況を示す図であり、(c)はメチオニン、S‐アデノシルメチオニン、またはS‐アデノシル‐L‐ホモシステインの存在下での、wild typeのDNA含量を示す図であり、(d)はS‐アデノシルメチオニン存在下での、VPS33酵母変異体のDNA含量を示す図である。 図6は、wild typeおよびsah1-1について、α‐ファクター、またはハイドロキシウレア(HU)を用いて各酵母細胞をG1期またはS期に同調した後、37℃にシフトして、細胞周期進行をFACS解析により調べた結果を示す図である。 図7は、wild type、zds1Δ、およびzs1Δmet4Δについて、100mM、または300mMのカルシウム濃度での生育状況を、AdoMet非存在下とAdoMet存在下とで比較した結果を示す写真である。

Claims (11)

  1. 細胞内でS‐アデノシルメチオニンを蓄積しうる酵母であって、配列番号4に示されるアミノ酸配列である変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素を有することを特徴とする酵母変異体。
  2. 上記変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子を有することを特徴とする請求項1に記載の酵母変異体。
  3. 上記変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子が、配列番号2に示される塩基配列からなることを特徴とする請求項2に記載の酵母変異体。
  4. 上記酵母変異体が、サッカロミセス・セルビシェ(Sacharomyces cerevisiae)FERMP‐19715であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の酵母変異体。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の酵母変異体を培養することにより、S‐アデノシルメチオニンを生産することを特徴とするS‐アデノシルメチオニンの生産方法。
  6. アミノ酸配列が、配列番号4に示されるアミノ酸配列であることを特徴とする変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素。
  7. 請求項6に記載の変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子。
  8. 上記変異型S‐アデノシルホモシステイン加水分解酵素をコードする遺伝子が、配列番号2に示される塩基配列からなることを特徴とする請求項7に記載の遺伝子。
  9. 請求項7または8に記載の遺伝子を含むことを特徴とする組換え発現ベクター。
  10. 請求項7または8に記載の遺伝子を宿主細胞に導入することを特徴とする形質転換体の生産方法。
  11. 請求項10に記載の形質転換体の生産方法によって得られた形質転換体。
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