JP4477461B2 - 皮膚幹/前駆性細胞のマーカー、分析、精製方法 - Google Patents
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Description
ヒトKSCを識別同定するマーカーを模索する観点から従来の報告を遡ると、いくつかの可能性が示唆されている。たとえばp63は、p53遺伝子ファミリーのメンバーの細胞核たんぱく質であるが、正常ヒト表皮および毛包基底細胞での発現が報告され(非特許文献8参照)、またp63が表皮形成における再生のための増殖に必須であるとの報告もある(非特許文献9参照)。このp63発現の弱い細胞は成熟したメロクローンを誘発するのに対し、p63を高レベルで発現する細胞は未熟なホロクローンを形成したとの最近の報告がある(非特許文献10参照)。これらから、p63はin vivo におけるヒトKSCの特異的なマーカーであることが示唆されるが、p63は細胞核たんぱく質であり、生細胞集団の分離に利用しうる適切なマーカーとはいえない。
従来、KSC、TA細胞および分化上皮細胞は、CD49fおよびCD71を用いて分類している(非特許文献15〜16参照)。
しかしながら細胞核たんぱく質p63あるいはCD49f,CD71などの従来マーカーとして公知の細胞表面分子は、in vitroおよびin vivo 両方での、幹細胞の性質を示す細胞のマーカーとして有効とはいえない。
このようにin vitroおよびin vivoの両方で有効な、皮膚幹/前駆性細胞のマーカーは、生物学的および臨床的両方の見地から重要であり、表皮の細胞機能、遺伝子治療および再生医療の研究に大きな進歩をもたらすであろう。
分析はNHEKに対して既知の細胞表面分子に対する蛍光標識モノクローナル抗体を反応させ、フローサイトメトリーにて行った。
上記試験で測定されたNHEKにおける細胞表面分子の発現率を表1に示す。正常ヒト皮膚上皮細胞には、主に造血系の細胞表面に見られる多くの表面マーカーが発現している。
CD90のin vitroでの発現は、抗ヒトCD90抗体による細胞染色およびフローサイトメトリで検定することができる。
(1)CD90+細胞の局在性
初代NHEKでのCD90発現評価を図1に示す。従来KSCマーカーとされているCD49fも同様に評価した。
初代NHEKにおけるCD90の発現(CD90+細胞)は、ほぼ例外なくNHEKの基底層で認められた(図1A,C,E)。CD90+細胞の局在する基底層は、表皮の幹/前駆性の細胞層とされている。CD49fの発現は基底層だけでなく、有棘層部分でもいくらか認められた(図1F)。
発現したCD90のサイトメトリ分析(図2参照)では、初代NHEKのCD90発現は弱く、CD90陽性に分類された細胞はわずか4.2±3.7%(n=5)であり(図2C)、初代NHEKのCD90陽性率はほぼ1〜10%であった。
一方、同様な評価におけるCD49fの発現は広く、初代NHEKの75.0±9.8%がCD49f陽性であった(n=5)(図2D)。
初代NHEKで発現したCD90+細胞がKSC、TA細胞および分化した上皮細胞のいずれに該当するかを分析するため、CD90を、従来の細胞分別方法に使用されているCD49fおよびCD71と共に検定し、これらCD49f、CD71およびCD90を発現する各細胞の関連性を3色フローサイトメトリ法により検討した。なおCD49fおよびCD71による細胞類別方法では、KSC、TA細胞および分化細胞は以下のように同定される。
KSC:CD49fbriCD71dim
TA細胞:CD49fbriCD71bri
分化細胞:CD49fdim
ここでの肩添字は、フローサイトメトリによる検出レベルであり、bri:bright“検出”、dim:diminished“弱検出”を意味する。
この結果は、CD90の発現を調べることにより、従来の方法で識別されるKSC、TA細胞および分化細胞の各細胞集団を一層厳密に特定することができるか、あるいはCD90+分画が従来のCD49fおよびCD71による方法では分離できない細胞集団を含むことを示唆している。
培養時におけるNHEKCD90発現の変化を図3に示す。
解凍直後の初代培養の終了したNHEKでは、CD90陽性は27〜40%(34.0±6.8%)であった。なおCD49fについての同様の評価では、CD49f陽性が98〜99%(98.6 ±0.6%)であった(n=5)。
培養中、幹細胞は、そのフェノタイプが変化し、生物学的活性を失うのがしばしば観察された。未熟な幹/前駆細胞を保持・増殖するために、公知の共培養法を広く用いることができる。たとえば、マウスの繊維芽細胞株3T3 J2は、増殖能力をもつ未分化細胞の保持に効果的であり、ケラチノサイトの増殖につながる(Rheinwald, J.G.ら,“Serial cultivation of strains of human epidermal keratinocyte: the formation of keratinizing colonies from single cell”Cell,1975,6:331-343;Barrandonら(非特許文献6参照); Zhu, AJ.ら, “Signaling via β1 integrins and mitogen-activaed protein kinase determines human epidermal stem cell fate in vitro”Proc. Natl. Acad. Sci.,USA,1999,96:6728-6733)。これら支持細胞は、KSCがin vivo で存在する際の幹細胞ニッチェ(幹細胞のための居場所)を疑似化するものである(Tumbarら(非特許文献12参照))。コロニー形成能力とともにCD34発現を保持することが確められている、マウス間質細胞株HESS-5を用いるCD34+臍帯血造血幹/前駆細胞の増殖方法(Kawada, H.ら,“Rapid ex vivo expansion of human umbilical cord hematopoietic progenitors using a novel culture system”Exp. Hematol.,1999,27:904-915)を参照することもできる。
一方、培養中のCD49fbriの発現は、支持細胞の存在による影響はなかった。
CD90が培養中に急速に消失したことおよび支持細胞の存在下では維持された事実は、CD90+細胞の幹/前駆性の反映といえる。CD49fの発現がNHDFの有無に影響されなかったことも考慮に入れれば、CD90は増殖培養におけるNHEK条件をモニターするために使用できるであろうことを示唆している。
6代継代のCD90+およびCD90−NHEKを、FACS Vantageセルソータ(細胞分取機)を用いて、それぞれ純度97%超で分取し、CD90+、CD90−および未分別NHEKの間の生物学的差異を調べた(図4〜6参照)。
6代継代のCD90+NHEKは、SSC(側方散乱光)の低チャネル側に現れた(図4D)。これらのCD90を発現する細胞はわずかな顆粒しか細胞質に認められず、これらの形態的な特徴は、一般的には未熟な細胞の特徴と一致する。
CD90−NHEKは、培養の初期、他の細胞集団に比べて増殖が速かったが、21日後に増殖が止まった。これとは対照的に、CD90+NHEKの増殖は、26日後加速した。培養41日目までに、CD90+,CD90−および未分別NHEKの細胞は、それぞれ約2.1×105倍、0.4×105倍、1.1×105倍に増加した。
これらのデータは、CD90+NHEKが、培地中で活性化するまで長時間要するが、高い増殖能力をもつ休止期細胞集団であることを示していた。
ケラチノサイトは、その成熟過程に応じてさまざまなタイプのコロニーを形成し、各コロニーは、それが包含する分化細胞の量に準じて分類されている。未熟なホロクローン、成熟したメロクローンおよび終末分化細胞を95%超で含むパラクローンに分類される。一般に、未分化細胞集団であるほど、より多数のコロニーを生じさせる。そこでCD90+NHEKおよびCD90−NHEKのコロニー形成能力を評価したところ、CD90+細胞は、未熟フェノタイプのコロニーを、9倍(CD90−細胞との対比において)多くもたらすことが確認された(図6参照)。
具体的には、1000個のCD90+細胞播種により生じたコロニー数は平均で125.9であり、同数のCD90−細胞播種によるコロニー数は65.3であった(各5検体ずつ)。また、CD90+細胞から形成されるコロニーの約38%(48±10.6)はほとんどが未熟なホロクローンであった。これに対して、CD90−細胞から形成されるコロニーの中のホロクローン量は、わずかに8%(5.3±4.6)であった。
ヒト表皮シスト形成法を用いて、CD90+NHEKまたはCD90−NHEKをin vivo で検定できる。この方法では、NHEKをEGFPで遺伝学的に標識する。EGFPをコードする組換えレンチウィルスに感染させて形質導入した細胞(EGFP陽性)を、APC標識した抗CD90モノクローナル抗体(mAb)で染色し、EGFP+CD90+NHEKおよびEGFP+CD90−NHEKを分取した(図7)。
注射したCD90+またはCD90−細胞から誘導されるEGFP陽性領域は、EGFP+領域が基底層に含まれる場合をタイプIとし(図8B)、EGFP+細胞が角質層、有棘または顆粒層に含まれる場合をタイプIIとした(図8C)。
これに対し、同数のCD90+NHEKは、327.8±196.7と、ほぼ6倍以上のタイプI領域を含む基底層をもたらし(図9A)、タイプII領域は少なめの231.0±129.6( 図9B)であった。
第2に、CD90+細胞は、同数のCD90−細胞に対し2倍のコロニーをもたらす。さらに、1000個のCD90+細胞から、KSCが通常誘発する未熟型のコロニーを48個形成する。一方、同数のCD90−細胞が形成する未熟型のコロニーは、わずかに5個であった。
第3に、EGFP標識したCD90+細胞を、NOD/SCIDマウスに移植した場合には、基底層中のEGFP+領域数は、CD90−細胞のそれに比べ、6倍多かった。
さらにこのような増殖率の高い表皮細胞を含む医薬品を提供できる。この医薬品の形態は特に限定されず、たとえば注射、塗布薬などの形態でよく、また人体に害を及ぼさない範囲であれば、皮膚再生医薬品に通常含ませる添加剤を特に制限なく含ませることができる。
<材料および方法>
<細胞培養>
ヒト正常皮膚は、東海大学医学部倫理委員会により承認された書式によりインフォームドコンセントを得て整形外科手術を受けた患者から採取した。
初代ヒト正常皮膚(NHEK)の単一細胞懸濁液を調製するため、皮膚組織を4mg/mLのDispase(合同酒精社)と4℃で12時間反応させることにより表皮シートを得た。
凍結した初代培養終了後の新生児NHEKおよび正常ヒト真皮繊維芽細胞(NHDF)はCambrex Bio Science社より入手した。
20%FCS添加αMEM(Life Technologies社)中で培養したNHDFは、15Gyの放射線で照射し、長期ケラチノサイト無血清培養用支持細胞として使用した。
NHEKの培養は、2〜4×105のNHEKを0.5〜1×106のNHDFと混合し、5mLのケラチノサイト用基本培地-2(KBM-2;Cambrex Bio Science)を加えてT-25cm2培養フラスコにて行った。
初代NHEKまたは5〜6代継代したNHEKを、APC結合抗ヒトCD90mAb(クローン;5E10)またはFITC結合抗ヒトCD49fmAb(インテグリンα6鎖、クローン;GoH3)(以上いずれもBD Bioscience社)、またはPE結合抗ヒトCD71mAb(クローン;YDJ1.2.2)(Beckman Coulter社)で染色した。
細胞分別は、488nmおよび633 nm に設定したアルゴンおよびヘリウムネオンレーザーを備えたFACS Vantage セルソータ(Becton Dickinson社)を用いて行った。
分別したCD90+NHEKまたはCD90−NHEKを35mmの培養ディッシュ
にそれぞれ1000個播種し、20%FCSおよび100ng/mLのコレラ毒素(List Biological Laboratories社)を含むαMEM中、37℃/5%CO2条件下で培養した。
コロニーのタイプを判別するため、2週間の培養で形成されたコロニーを、10%ホルマリンで固定し、ローダミンB(Sigma社)で染色した。
コロニーは、各コロニー中の最終分化細胞の量に準じて、ホロクローン、メロクローンおよびパラクローンに分類される(Barrandonら(非特許文献6),Rochatら(非特許文献7)参照,Pellegriniら(非特許文献10)参照)。
5〜6代継代で増殖したNHEKを、Okiら(“Efficient lentiviral transduction of human cord blood CD34+cells followed by their expansion and differentiation into dendritic cells”Exp. Hematol,2001,29:1210-1217)の方法に準じてEGFPをコードした遺伝子を組み込んだレンチウィルスの高濃度溶液と共に、MOI10で培養した。24時間の培養後、NHEKをKBM-2培地で2回洗浄した後、さらに24時間培養した。EGFP標識したNHEKを、APC結合抗CD90mAbで染色し、分取した。
実験は、東海大学動物ケア委員会により承認された手順にしたがって行った。7〜9週齢雄または雌NOD/Shi-scid(NOD/SCID)マウスはCLEA Japanから入手した。EGFP標識したCD90+NHEKまたはCD90−NHEK(いずれも4×104)を、非標識の2×106NHEKおよび2×106NHDFと混合した。100μLの細胞PBS懸濁液を、NOD/SCIDマウスの脇腹領域に皮下注射した。移植6週後、マウスをエーテル麻酔して屠殺し、皮下ヒト表皮シストを切除した。シストは、4%パラホルムアルデヒドで固定し、組織構造を調べるための試料を調製した。
免疫染色はMugurumaら(“In vivo and in vitro differentiation of myocytes from human bone marrow-derived multipotent progenitor cells”Exp. Hematol.,2003,31:1323-1330)に準じて行なった。
表皮における細胞表面分子を試験するため、6μmの凍結したヒト皮膚部分をウサギポリクロナール抗ヒトCD90抗体(1:500)またはウサギポリクロナールCD49f抗体(1:200)(いずれもSanta Cruz Biotechnology)で染色した。CD90+またはCD90−細胞誘導KSCの3次元解析のため、無傷の表皮シストを分割し(シストあたり400〜500個の連続分画)、ビオチン化ウサギポリクロナール抗EGFP mAb(1:500,MBL)で染色した。全染色領域を、顕微鏡下で分析し、注射したCD90+またはCD90−細胞の子孫細胞を示すEGFP+領域を、基底膜または表皮に対する立体的な位置関係に基づいて類別した。ケラチンを免疫染色するために、凍結した分画を、マウス抗ヒトサイトケラチン14(クローンRCK107;1:400)mAbまたはマウス抗ヒトサイトケラチン10(クローンDE-K10;1:10)mAb(いずれもMONOSAN社)と反応させた。
細胞表面マーカーの検索のため、正常ヒト皮膚でのCD90発現およびCD49f発現の局在性を調べた。正常ヒト皮膚検体を、抗ヒトCD90またはCD49f抗体で染色した結果を図1に示す。
CD90の発現は、正常ヒト皮膚の基底層で認められた(図1A,C,E)。
図1A(高倍率)および図1C(低倍率)は、CD90+細胞が概ね専ら基底層に存在することを示す染色画像である。図1BおよびDは、各コントロールである。基底細胞は褐色メラニン顆粒をいくらか含む。
図1Fは、抗ヒトCD49f抗体により染色した正常ヒト皮膚の画像である。CD49fの発現は、基底層だけでなく、基底以外の細胞(有棘層部分)でもいくらか発現した。
図1Eは、図1Fの隣接部分の抗ヒトCD90抗体の染色を示す画像である。
各図中のバーの長さA,B,E,F:25μm
C,D:50μm
初代NHEKをFITC標識した抗ヒトCD49fmAb、PE標識した抗ヒトC71mAbおよびAPC標識した抗ヒトCD90mAbで染色した。各5検体のうちの代表的なフローサイトメトリ染色プロファイルをそれぞれ図2に示す。
図2A〜Bは、各コントロールプロファイルに相当する。
図2Cは、NHEKのCD90単独染色プロファイルである。初代NHEKにおけるCD90発現は弱く、陽性に分類された細胞は、わずか4.2±3.7%(n=5での平均発現頻度)であった。
図2D〜Gは、NHEKのCD49f、CD71およびCD90による3色染色プロファイルである。n=5での平均発現頻度を以下に示す。
図2Dに示されるように、CD49fの発現は広く、CD49f陽性細胞はNHEKの75.0±9.8%であった。詳細には、
(D-(1))CD49f dimは、56.4±10.4%
(D-(2))CD49fbri CD71 briは、4.6±3.8%
(D-(3))CD49fbri CD71dimは、2.7±1.8%であった。
各細胞でのCD90共発現の平均頻度は、以下のとおりであった。
図2E:CD49fdim細胞の3.8±2.6%
図2F:CD49fbri CD71 bri細胞の52.5±4.7%
図2G:CD49fbri CD71dim細胞の65.0±5.5%
NHEKの培養過程におけるCD90およびCD49fbri の発現の変化を試験した。初代培養の終了した新生児NHEKを放射線照射したNHDFの存在下あるいは非存在下で培養した。フローサイトメトリで測定した各継代時のCD90およびCD49fbriの発現量を図3に示す。
NHEKは、培養開始時は34.0±6.8%がCD90陽性であり、98.6 ±0.6%がCD49fbriであった(n=5)。
CD90の発現は、6代継代以降激減し、10代目では、陽性細胞はわずかに5.1±1.6%であったが、CD49fbriの発現は変化がなかった。
NHEKを、KSCの未分化フェノタイプを保持する条件(幼若な皮膚細胞の特徴を保持する条件として前記したRheinwald, J.G.らの報告:“Serial cultivation of strains of human epidermal keratinocyte: the formation of keratinizing colonies from single cell”Cell,1975,6:331-343))に準じて、照射済みNHDFと共培養したところ、CD90の発現も保持された。6代継代後では、NHDF非存在下で 8.2±3.4%であるのに対し、NHDFと共培養したNHEKは、27.2±8.6%が依然CD90を発現した。
一方、CD49fbriの発現は、NHDFの有無に関係なく高く維持され、支持細胞の存在による影響はなかった。
初代培養終了後の新生児NHEKのフローサイトメトリ染色プロファイルを図4に示す。図4Aは対照プロファイル、図4Bは未分別のNHEKプロファイルである。NHEKをCD90の発現に基づいて分別した。分別した細胞の純度はCD90−細胞で99.3%(図4C)、CD90+細胞で97.8%(図4D)であった。
CD90+,CD90−および未分別NHEKの増殖速度を図5に示す。またCD90+,CD90−および未分別NHEKの形成したコロニーの類別を図6に示す。
ヒト表皮シストの形成におけるCD90+またはCD90−NHEKの寄与をin vivo で分析するため、NHEKをEGFPで遺伝学的に標識した。EGFPをコードする組換えレンチウィルスに2日間感染させると、90%超の細胞がEGFP陽性となった。形質導入した細胞を、APC標識した抗CD90mAbで染色し、EGFP+CD90+およびEGFP+CD90−NHEKに分別した(図7)。
EGFPで標識したCD90+またはCD90−NHEKの分別プロファイルを図7A〜Cに示す。
形質導入効率は90%以上であり、分別したCD90+またはCD90−NHEKの純度は97%以上であった。
分別した細胞は、97%以上がEGFP陽性で、増殖性およびコロニー形成能力は非標識NHEKとかわりがない。
EGFP標識したNHEK(4×104)を、非標識のNHEK(2×106)および同数(2×106)のNHDFとともにマウスの脇腹領域に皮下注射した。移植6週後、皮下に形成されたヒト表皮シストを取出し、6μmの凍結薄切切片を作成した。
投与したEGFP導入細胞から誘導されたEGFP+領域は免疫組織化学的手法により視覚化した。EGFP標識したNHEKのNOD/SCIDマウスへの移植の細胞染色を図8A〜Cに示す。B,CはAの一部を高倍率で示す。
投与したCD90+またはCD90−細胞から誘導されるEGFP陽性領域は、EGFP+細胞が基底層に含まれる場合をタイプIとし(図8B)、EGFP+細胞が基底層以外、すなわち角質層、有棘または顆粒層に含まれる場合をタイプIIとした(図8B)。
各図中のバーの長さB:300μm
C,D:25μm
より具体的には、CD90−NHEKを注射した場合には、EGFP+領域はほとんど(700.3±283.1)がタイプIIに属し(図9B)、タイプIに属するものはわずかに53.5±32.2であった(図9A)。これに対し、同数のCD90+は、327.8±196.7と、ほぼ6倍以上のタイプI領域を含む基底層をもたらし(図9A)、タイプII領域は231.0±129.6( 図9B)と少なかった。これらの結果は、CD90+NHEKがCD90−細胞に比べて、より未分化な細胞集団であることを示している。
図10A中、赤:サイトケラチン14、緑:EGFP、白:lanminin。白矢印の先端:サイトケラチン14およびEGFPの二重陽性。
図10B中、赤:サイトケラチン10、緑:EGFP、白:lanminin。白矢印の先端:サイトケラチン10およびEGFPの二重陽性。
各図中のバーの長さA:10μm
B:25μm
Claims (5)
- 皮膚幹/前駆性細胞を陽性認識するためのCD90からなるマーカー。
- CD90陽性であることを指標とする皮膚幹/前駆性細胞の検出方法。
- 標識された抗CD90抗体によりCD90+細胞を染色する請求項2に記載の検出方法。
- 請求項2または3の検出方法により、皮膚幹/前駆性細胞をCD90+細胞として測定する皮膚幹/前駆性細胞の測定方法。
- 皮膚幹/前駆性細胞をCD90+細胞として分離する皮膚幹/前駆性細胞の精製方法。
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