JP4456169B2 - インフルエンザウイルスベクターのパッケージングのためのシグナル - Google Patents

インフルエンザウイルスベクターのパッケージングのためのシグナル Download PDF

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Description

(政府の権利の記述)
本発明は、少なくとも一部は、アメリカ合衆国の政府からの助成金(国立保健研究所からの助成金AI47446)で行われた。政府は、本発明の一部の権利を有する。
(発明の背景)
インフルエンザAおよびBウイルスのゲノムは負の極性の8つの1本鎖RNA断片からなり、その内の2個は、膜糖タンパク質、血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)をコードする。インフルエンザウイルスの複製は、ビリオン表面上のウイルスHAタンパク質の、細胞のシアル酸を含むレセプターへの結合により開始される。レセプターに結合した後、ビリオンは、エンドサイトーシスにより、宿主細胞に取り入れられる。後期エンドソーム中の酸性環境は、HAの高次構造変化を引き起こし、ウイルスエンベロープとエンドソーム膜との間の融合を開始し、そして、M2イオンチャネルを活性化し、プロトンのビリオン内部への流入を生じる。ビリオン内部を低pHに曝露することは、M1タンパク質とリボヌクレオタンパク質複合体(RNP)との間の酸不安定な相互作用を崩壊し、RNPの細胞質への放出を沈静すると考えられる。RNPは、次いで、核に輸送され、そこで、ウイルスmRNAおよびウイルスゲノムが合成される。mRNAは細胞質に入り、そしてウイルスタンパク質が合成される。核タンパク質(NP)は、核に入り、新規に合成されたvRNAをキャプシド形成し、そして、3個のポリメラーゼサブユニットタンパク質(PA、PB1、PB2)と一緒にRNPを形成する。M1およびNS2タンパク質の存在下で、RNPは、核から搬出される。3個の形質膜結合タンパク質(HA、NAおよびM2)およびRNPは相互作用し、そして、出芽することにより新規のビリオンを形成する。NAは、シアル酸を細胞の複合糖質およびウイルス糖タンパク質から除去することにより、感染細胞からのウイルス放出の原因となる(Lambら、2000)。
A型ウイルスは、HA(H1〜H15)およびNA(N1〜N9)抗原性に基づいてサブタイプに分類される。2個の異なるA型ウイルスで感染させた細胞では、遺伝子断片の種々の組み合わせを有する型内での再構築物(intratypic reassortant)が産生される(Wrightら、2000)。しかし、A型ウイルスとB型ウイルスとの間の型間での再構築物は、天然では検出されていないが、両方のウイルスともヒト集団では、共循環している。
研究者は、研究室でA型ウイルスとB型ウイルスとの間の再構築物を産生することを試みたが、首尾よくいかなかった。(Kaverinら、1983;Mikheeraら、1982;Tobitaら、1983)。Musterら(1991)は、NA断片の非コード領域が、B型ウイルスの非構造(NS)遺伝子の非コード領域で置換された断片を含むA型突然変異体ウイルスを産生した。突然変異ウイルスは、野生型よりゆっくり複製し、より低い力価を達成したけれども、そのようなウイルスの発生は、B型NS断片の非コード領域がRNA転写および複製のレベルで、インフルエンザウイルスA型構成要素と適合性であることを示唆した。それに対して、外来のコード断片を有するRNA断片は、インフルエンザAウイルスRNA断片の3’および5’非コード領域により隣接され、繰り返しの継代後、ビリオン中で安定に維持されなかった(Luytjesら、1989)。Musterら(1991)は、また、突然変異体ウイルスは、マウス中で弱められ、そして、突然変異ウイルスで感染した動物が、野生型ウイルスによる感染に対して耐性であったことを開示した。
必要であるものは、インフルエンザウイルス複製の間、結合した配列の組み込みおよび/または維持するためのインフルエンザウイルス配列を同定するための方法である。
(発明の要旨)
本発明は、インフルエンザウイルスの組み込み配列(「パッケージシグナル」またはvRNAのキャプシド形成シグナル)および必要に応じて異種核酸断片を含む、単離された組換え核酸分子(ポリヌクレオチド)(例えば、ベクター)を提供する。一般に、組み込み配列は、各インフルエンザvRNA断片のコード領域の1つの末端または各末端において、約150個〜約250個のヌクレオチドで存在する。1つの実施形態では、インフルエンザウイルス組み込み配列は、NAコード領域のN末端に対応する配列を含むNA vRNAの3’末端に対応する配列(例えば、3’非コード配列の19個のヌクレオチドを含むA型NA vRNAの3’末端の37個のヌクレオチドおよびNAに対する最初の19個のコードするヌクレオチドに少なくとも対応するヌクレオチド)および必要に応じて、NAコード領域のC末端に対応する配列を含むNA vRNAの5’末端に対応する組み込み配列(例えば、5’非コード配列の28個のヌクレオチドを含むA型NA vRNAの5’末端の67ヌクレオチドおよびNAの39個の3’をコードするヌクレオチドに対応する少なくとも39個のヌクレオチド)を含む。別の実施形態において、インフルエンザウイルス組み込み配列は、NSコード領域のN末端に対応する配列を含むNS vRNAの3’末端に対応する配列を含む。なお、別の実施形態においては、インフルエンザウイルス組み込み配列は、HAコード領域のC末端に対応する配列を含むHA vRNAの5’末端に対応する配列(例えば、5’非コード配列の45個のヌクレオチドを含むA型HA vRNAの5’末端の135個のヌクレオチドおよびHAの80個の3’コードヌクレオチドに対応する少なくとも80個のヌクレオチド)および必要に応じて、HAコード領域のN末端に対応する配列を含むHA vRNAの3’末端に対応する組み込み配列(例えば、3’非コード配列の33個のヌクレオチドを含むA型HA vRNAの3’末端の36個のヌクレオチドおよびHAの最初の3個のコードヌクレオチドに対応する少なくとも3個のヌクレオチド)を含む。さらなる実施形態では、インフルエンザウイルス組み込み配列は、PB2のコード領域のC末端に対応する配列を含むPB2 vRNAの5’末端に対応する配列を含む。別の実施形態では、インフルエンザウイルス組換え配列は、Mコード領域のN末端に対応する配列を含むM vRNAの3’末端に対応する配列(例えば、3’非コード領域の26個のヌクレオチドを含むA型M vRNAの3’末端の247個のヌクレオチドおよびMコード領域のN末端に対応する配列の221個のヌクレオチド)、およびMコード領域のC末端に対応する組み込み配列を含むM vRNAの5’末端に対応する配列(例えば、3’非コード配列の23個のヌクレオチドを含むA型M vRNAの5’末端の242個のヌクレオチドおよびMコード領域のC末端に対する少なくとも219個のヌクレオチドに対応する配列の219個のヌクレオチド)を含む。別の実施形態では、インフルエンザウイルス組換え配列は、NSコード領域のN末端に対応する配列を含むNS vRNAの5’末端に対応する配列(例えば、3’非コード配列を含む配列およびNSコード領域のN末端に対応する少なくとも最初の30個のヌクレオチド)、およびNSコード領域のC末端に対応する組み込み配列を含むNS vRNAの5’末端に対応する配列(例えば、5’非コード配列を含む配列およびNSコード領域のC末端に対応する配列の、少なくとも最後の30個のヌクレオチド)を含む。1つの実施形態においては、インフルエンザウイルス組み込み配列は、PB1コード領域のN末端に対応する配列を含むPB1 vRNAの5’末端に対応する配列およびPB1コード領域のC末端に対応する組み込み配列を含むPB1 vRNAの5’末端に対応する配列を含む。なお別の実施形態においては、インフルエンザウイルス組み込み配列は、PAコード領域のN末端に対応する配列を含むPA vRNAの5’末端に対応する配列およびPAコード領域のC末端に対応する組み込み配列を含むPA vRNAの5’末端に対応する配列を含む。本明細書で使用される場合、インフルエンザウイルス「組み込み配列」は、対応する(相同な)3’および5’非コード領域を有するvRNA中に存在する場合、それらの配列を含む核酸分子のビリオン中への組み込みおよび繰り返しの継代の間、ビリオン中でのその分子の維持を生じる配列である。したがって、本発明は以下をも提供する。
(1)
インフルエンザウイルス取り込み配列を含むインフルエンザウイルスベクターであって、該ベクターは、以下:
a)インフルエンザウイルスNA vRNAの3’非コード領域に相当する配列、3’NA組み込み配列、異種核酸セグメント、およびNA vRNAの5’非コード領域;
b)インフルエンザウイルスHA vRNAの3’非コード領域に相当する配列、異種核酸セグメント、5’HA組み込み配列、およびHA vRNAの5’非コード領域;
c)インフルエンザウイルスM vRNAの3’非コード領域に相当する配列、3’M組み込み配列、異種核酸セグメント、5’M組み込み配列、およびM vRNAの5’非コード領域;
d)インフルエンザウイルスNS vRNAの3’非コード領域に相当する配列、3’NS組み込み配列、異種核酸セグメント、およびNS vRNAの5’非コード領域;
e)インフルエンザウイルスPB2 vRNAの3’非コード領域に相当する配列、異種核酸セグメント、5’PB2組み込み配列、およびPB2 vRNAの5’非コード領域;
f)インフルエンザウイルスPB1 vRNAの3’非コード領域に相当する配列、異種核酸セグメント、5’PB1組み込み配列、およびPB1 vRNAの5’非コード領域;または
g)インフルエンザウイルスPA vRNAの3’非コード領域に相当する配列、異種核酸セグメント、5’PA組み込み配列、およびPA vRNAの5’非コード領域;
を含み、ここで、該ベクターに相当するvRNAが、インフルエンザウイルスタンパク質を発現しかつ該ベクターに相当する該vRNA以外のvRNAを含む細胞内に存在する場合、該ベクターに相当する該vRNAがビリオン内にパッケージされる、インフルエンザウイルスベクター。
(2)
項目1a)に記載のベクターであって、前記3’NA組み込み配列が、NAの最初の19個のコードヌクレオチドに相当する少なくとも19個のヌクレオチドを含む、ベクター。
(3)
5’NA組み込み配列をさらに含む、項目2に記載のベクター。
(4)
項目3に記載のベクターであって、前記5’NA組み込み配列が、NAの39個の3’コードヌクレオチドに相当する少なくとも39個のヌクレオチドを含む、ベクター。
(5)
項目1a)に記載のベクターであって、前記3’NA組み込み配列が、NAの最初の90個のコードヌクレオチドに相当する少なくとも90個のヌクレオチドを含む、ベクター。
(6)
項目1b)に記載のベクターであって、前記5’HA組み込み配列が、HAの80個の3’コードヌクレオチドに相当する少なくとも80個のヌクレオチドを含む、ベクター。
(7)
項目1b)に記載のベクターであって、前記5’HA組み込み配列が、HAの291個の3’コードヌクレオチドに相当する少なくとも291個のヌクレオチドを含む、ベクター。
(8)
3’HA組み込み配列をさらに含む、項目1b)に記載のベクター。
(9)
項目8に記載のベクターであって、前記3’HA組み込み配列が、HAの最初の3個のコードヌクレオチドに相当する少なくとも3個のヌクレオチドを含む、ベクター。
(10)
項目8に記載のベクターであって、前記3’HA組み込み配列が、HAの最初の9個のコードヌクレオチドに相当する少なくとも9個のヌクレオチドを含む、ベクター。
(11)
前記異種核酸セグメントが、内部リボソーム侵入配列に相当する配列を含む、項目1に記載のベクター。
(12)
前記異種核酸セグメントが、マーカー遺伝子のオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、項目1に記載のベクター。
(13)
前記異種核酸セグメントが、免疫原性タンパク質もしくは病原体のペプチド、または治療タンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、項目1に記載のベクター。
(14)
組み込み配列が、A型インフルエンザウイルスに由来する、項目1に記載のベクター。
(15)
組み込み配列が、B型インフルエンザウイルスに由来する、項目1に記載のベクター。
(16)
前記異種核酸セグメントが、他の核酸セグメントと融合して融合タンパク質をコードする、項目1に記載のベクター。
(17)
項目1に記載のベクターに相当するvRNAを含む、組換えインフルエンザウイルス。
(18)
前記異種核酸セグメントが、マーカー遺伝子のオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、項目17に記載の組換えウイルス。
(19)
前記異種核酸セグメントが、免疫原性タンパク質もしくは病原体のペプチドのオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、項目17に記載の組換えウイルス。
(20)
前記オープンリーディングフレームが、HAタンパク質をコードする、項目19に記載の組換えウイルス。
(21)
前記オープンリーディングフレームが、NAタンパク質をコードする、項目19に記載の組換えウイルス。
(22)
前記異種核酸セグメントが、膜貫通タンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、項目17に記載の組換えウイルス。
(23)
前記異種核酸セグメントが、膜融合活性を有するタンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、項目17に記載の組換えウイルス。
(24)
前記異種核酸セグメントが、ウイルスカプシドタンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、項目17に記載の組換えウイルス。
(25)
前記異種核酸セグメントが、小胞性口内炎ウイルスGタンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、項目17に記載の組換えウイルス。
(26)
前記異種核酸セグメントが、治療タンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、項目17に記載の組換えウイルス。
(27)
前記HAタンパク質が、B型HAタンパク質である、項目20に記載の組換えウイルス。
(28)
細胞において異種核酸セグメントを発現する方法であって、該方法は、以下:細胞を項目17の組換えウイルスと接触させる工程、および該異種核酸セグメントにコードされる産物が細胞内で発現しているか否かを検出または決定する工程を、包含する方法。
(29)
NAの5’コード領域に相当するインフルエンザウイルスNA組み込み配列、および異種核酸セグメントを含む、単離された核酸分子。
(30)
NSの5’コード領域に相当するインフルエンザウイルスNS組み込み配列、および異種核酸セグメントを含む、単離された核酸分子。
(31)
HAの3’コード領域に相当するインフルエンザウイルスHA組み込み配列、および異種核酸セグメントを含む、単離された核酸分子。
(32)
PB2の3’コード領域に相当するインフルエンザウイルスPB2組み込み配列、および異種核酸セグメントを含む、単離された核酸分子。
(33)
Mの3’コード領域およびMの5’コード領域に相当するインフルエンザウイルスM組み込み配列、および異種核酸セグメントを含む、単離された核酸分子。
(34)
項目1に記載のベクターであって、前記ベクターに相当するvRNAが前記細胞内に存在する場合、該vRNAが、野生型vRNAの少なくとも10%に相当する効率でビリオン内にパッケージされる、ベクター。
(35)
項目1に記載のベクターであって、前記ベクターに相当するvRNAが前記細胞内に存在する場合、該vRNAが、野生型vRNAの少なくとも30%に相当する効率でビリオン内にパッケージされる、ベクター。
(36)
項目1に記載のベクターであって、前記ベクターに相当するvRNAが前記細胞内に存在する場合、該vRNAが、野生型vRNAの少なくとも60%に相当する効率でビリオン内にパッケージされる、ベクター。
(37)
複製不完全インフルエンザ様ウイルスを調製する方法であって、該方法は、以下:
a)組換え宿主細胞を、野生型NSコード配列を有するvRNAを欠く組換えインフルエンザウイルス、およびリコンビナーゼの配列を含む組み換えインフルエンザウイルスと接触させる工程であって、ここで、該組換え宿主細胞は、組換え核酸分子を含み、該組換え核酸分子は、NS2オープンリーディングフレームを含むが、リコンビナーゼ5’からNS2オープンリーディングフレームによって認識される2つの部位特異的組換え配列に作動可能に連結された組み込み配列を含まず、ここで、リコンビナーゼ非存在下ではNS2は発現しない、工程;および
b)複製不完全インフルエンザ様ウイルスを、組換え宿主細胞から単離する工程、
を、包含する、方法。
(38)
前記リコンビナーゼが、Creであり、そして前記部位特異的組換え配列が、loxP配列である、項目37に記載の方法。
(39)
前記リコンビナーゼが、FLPndであり、そして前記部位特異的組換え配列が、frt配列である、項目37に記載の方法。
本明細書の以下に記載するように、NA組み込み配列は、プラスミドに基づいた逆遺伝学を使用して、短縮NA断片を有する突然変異ウイルス中で同定された。NA組み込み配列は、NA vRNAの3’末端を含む領域にあり、NAコード領域の一部に及んだ。従って、この領域は、野生型NA RNAならびに突然変異NA RNA(例えば、目的のオープンリーディングフレームの発現のための組換えRNA(例えば、目的のオープンリーディングフレームを含む異種核酸断片)を含む内側の欠失および/または挿入を有するRNA)のパッケージおよび維持に対して有用である。
また、本明細書に記載したように、インフルエンザA型ウイルスとB型ウイルスとの間の、型間での不適合性に対する洞察を得るために、逆遺伝学を使用し、A型ウイルスバックグラウンド中にインタクトのB型HA断片を含む再構築物を産生した。しかし、B型HA断片が、A型ポリメラーゼ複合体により転写されたという事実にもかかわらず、ウイルスは、産生されなかった。A型HAの非コード配列が隣接したB型HAの完全コード配列を構成するキメラHA断片を含むA型ウイルスは、生存し得たが、わずかにしか複製しなかった。A型に基づいたウイルスのシリーズは、シグナルペプチドかまたはAウイルスの膜貫通型/細胞質領域のいずれか、あるいは両方ともをコードする配列と共に、A型非コード領域を有するキメラHAおよびB型HA由来領域の残りの領域を含んで作製された。これらのウイルスは、全て、細胞培養において、10より大きい、組織培養感染用量50/mlまで増殖したが、A型HA配列のより多くを有するウイルスがよりよく増殖した。このことは、タンパク質−タンパク質相互作用または増加したHA断片のビリオンへの組み込みの、効果的なウイルス増殖に対する役割を示唆する。これらのA/Bキメラウイルスは全て、マウス内では、野生型AウイルスまたはBウイルスと比較して、弱められる。さらに、キメラウイルスを鼻腔内に免疫化した動物は、全て、野生型B型ウイルスの致死量での感染の際に生存した。このことは、新規の生ワクチンウイルスの設計のための見込みのあるアプローチを示している。
従って、相同な3’および5’非コード配列(領域)および異種核酸断片を含む、特定のインフルエンザウイルス断片に対する組み込み配列を含む本発明の単離された核酸分子が、ウイルスタンパク質ならびに/またはPA、PB1、PB2、NP、HA、NA、M(例えば、M1および/またはM2)および/またはNSの内の1個以上に対するウイルスタンパク質をコードするベクター、ならびにvRNAまたはPA、PB1、PB2、NP、HA、NA、M(例えば、M1およびM2)および/またはNSの内の1個以上に対するvRNA産生のためのベクターの存在下で、vRNA産生に対するベクター中で細胞に導入される場合、組換えウイルスが産生される。組換えウイルスは、次いで、細胞を感染させるために使用され得る。好ましくは、本発明の核酸分子に対応するvRNAは、対応する野生型vRNAの効率の少なくとも10%の効率で、より好ましくは、少なくとも30%で、およびさらにより好ましくは、少なくとも50%かまたはそれより高くで、ビリオンに取り込まれる。1つの実施形態においては、核酸分子は、野生型vRNAに対応する配列および異種核酸断片を含み、そこで、異種の核酸断片がそのvRNAのコード領域に対応するvRNA中の配列に挿入され、その挿入は、好ましくは、実質的には、組み込み配列を分裂させない。例えば、異種核酸断片は、NAコード領域の最初の300個のヌクレオチドに対応する配列の後に、導入される。
別の実施形態において、3’NA組み込み配列は、NAコード領域のN末端のヌクレオチドの1〜183、ヌクレオチド1〜90、ヌクレオチド1〜45、ヌクレオチド1〜21、ヌクレオチド1〜19または19と183の間の任意の整数に対応し、そして、NA開始コドンに変異を含み得る。別の実施形態において、5’NA組み込み配列は、NAのC末端コード領域中の配列、NAコード領域のC末端ヌクレオチドの最も3’の39、78または157または1と157の間の任意の整数に対応する配列に対応する。別の実施形態において、5’HA組み込み配列は、HAのC末端コード領域中の配列、C末端HAコード領域のヌクレオチドの最も3’の75、80、268、291もしくは518または1と518との間の任意の整数に対応する配列に対応する。3’HA組み込み配列は、N末端HAコード領域の1〜3、1〜6、1〜9、1〜15、1〜216、1〜468か、または、1と468との間の任意の整数のヌクレオチドに対応する。1つの実施形態では、3’PB1組み込み配列は、N末端PB1コード領域のヌクレオチド1〜250、ヌクレオチド1〜200、ヌクレオチド1〜150、または、1と250との間の任意の整数に対応する。1つの実施形態では、5’PB1組み込み配列は、C末端PBIコード領域の最も3’のヌクレオチド(例えば、3’の1〜250のヌクレオチド、1〜200のヌクレオチド、ヌクレオチド1〜150か、または、1と250との間の任意の整数)に対応する。1つの実施形態では、3’PA組み込み配列は、N末端PAコード領域のヌクレオチド1〜250、ヌクレオチド1〜200、ヌクレオチド1〜150、または、1と250との間の任意の整数に対応する。1つの実施形態では、5’PA組み込み配列は、C末端PAコード領域の最も3’のヌクレオチド(例えば、3’の1〜250ヌクレオチド、1〜200ヌクレオチド、ヌクレオチド1〜150、または、1と250との間の任意の整数に対応する。別の実施形態では、3’M組み込み配列は、N末端Mコード領域のヌクレオチド1〜250、ヌクレオチド1〜242、ヌクレオチド1〜240、または、1と250との間の任意の整数に対応し、そしてM開始コドンの変異を含み得る。別の実施形態では、5’M組換え配列は、MのC末端コード領域中の配列、C末端Mコード領域に対する最も3’の50、100または220、もしくは、1と250との間の任意の整数のヌクレオチドに対応する配列に対応する。別の実施形態では、3’NS組み込み配列は、N末端NSコード領域のヌクレオチド1〜250、ヌクレオチド1〜200、ヌクレオチド1〜150、ヌクレオチド1〜30、ヌクレオチド1〜20または、1と250との間の任意の整数に対応し、そしてNS開始コドンにおいて変異を含み得る。別の実施形態では、5’NS組換え配列は、NSのC末端コード領域中の配列、C末端NSコード領域に対する最も3’の10、30、150、200または250、もしくは、1と250との間の任意の整数のヌクレオチドに対応する配列に対応する。
従って、本発明は、特定のvRNAの3’および5’非コード領域に対応する配列、対応するvRNAの組み込み配列および異種の核酸断片を含むインフルエンザウイルスベクターを提供する。従って、1つの実施形態では、ベクターは、NA vRNAの3’非コード領域、3’または5’NA vRNA組み込み配列ならびに必要に応じて3’および5’の両方のNA組み込み配列、異種核酸断片ならびにNA vRNAの5’非コード領域を含む。別の実施形態では、ベクターは、HA vRNAの3’非コード領域、5’または3’HA vRNA組み込み配列または5’および3’の両方のHA組み込み配列、異種核酸断片ならびにHA vRNAの5’非コード領域を含む。別の実施形態では、ベクターは、NS vRNAの3’非コード領域、NS組み込み配列、異種核酸断片ならびにNS vRNAの5’非コード領域を含む。別の実施形態では、ベクターは、M vRNAの3’非コード領域、5’または3’M組み込み配列または5’および3’の両方のM組み込み配列、異種核酸配列ならびにM vRNAの5’非コード領域を含む。なお別の実施形態では、ベクターは、PB2 vRNAの3’非コード領域、異種核酸断片、PB2組み込み配列、およびPB2 vRNAの5’非コード領域を含む。2つの組み込み配列が、ベクター中で使用される場合、好ましくは、それらは、異種核酸断片により分離される。各ベクターは、細胞に導入するためのvRNAを調製するために、または、他のインフルエンザウイルスvRNAおよびウイルス産生に必要なタンパク質が存在する細胞中でvRNAを発現させるために使用され得る。
1つの実施形態では、異種核酸断片は、マーカー遺伝子に対するオープンリーディングフレームに対応する配列を含む。別の実施形態では、異種核酸断片は、治療遺伝子に対するオープンリーディングフレームに対応する配列を含む。なおさらなる実施形態では、異種核酸断片は、免疫原性ペプチドまたは病原体もしくは腫瘍細胞のタンパク質に対するオープンリーディングフレームに対応する配列(例えば、防御免疫反応を誘導するために有用な配列)を含む。例えば、異種核酸断片は、癌治療またはワクチンに有用な免疫原性エピトープをコードし得る。異種核酸断片を含むベクターは、ベクターvRNAの転写が、インフルエンザタンパク質(例えばNA)との融合タンパク質をコードするmRNAを生じるように準備され得る。従って、異種核酸断片が、融合タンパク質(例えば、NAのN末端21残基との融合物)をコードするためのウイルス組み込み配列に融合され得ることが予測される。融合タンパク質は、2個の異なるNAまたはHAタンパク質由来の配列を含む2個の異なるインフルエンザウイルスタンパク質由来の配列を含み得る。別の実施形態では、異種の核酸断片は、オープンリーディングフレームに対する5’に連結したIRESに対応する配列を含み得る。
複数のインフルエンザウイルスベクターを用いたプラスミドに基づいた逆遺伝学を使用して、組換えウイルスを調製するために、ベクター中のインフルエンザウイルスDNAは、プロモーターに対してセンス向きまたはアンチセンス向きであり得る。従って、ベクターは、インフルエンザウイルスタンパク質(センス)、またはインフルエンザウイルスA株、B株あるいはC株あるいは単離体のvRNA(アンチセンス)または組換えインフルエンザウイルスをコードし得る(FieldsのVirology 第45章および第46章(Fieldsら(編)、Lippincott−Raven Publ.、Philadelphia、PA(1996)、これは、本明細書中に参考として特に援用される)を参照のこと)。ウイルスタンパク質を発現するために、任意のプロモーターが、使用され得、そして、得られたベクターは、特定のインフルエンザウイルスタンパク質のためのDNAに作動可能に結合したプロモーターを含む。vRNAをコードするベクターに対する好ましいプロモーターとしては、RNAポリメラーゼIプロモーター、RNAポリメラーゼIIプロモーター、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、T7プロモーターおよびT3プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、RNAポリメラーゼIプロモーターは、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーターである。vRNAをコードするベクターに対する好ましい転写末端配列としては、RNAポリメラーゼI転写末端配列、RNAポリメラーゼII転写末端配列またはRNAポリメラーゼIII転写末端配列またはリボザイムが挙げられるが、これらに限定されない。従って、vRNAに対するベクターは、(転写末端配列に作動可能に結合した)プロモーターに対してアンチセンス向きに、インフルエンザウイルスタンパク質に対するcDNAに、作動可能に結合したプロモーターを含む。本発明のベクターを含む組換えウイルスを産生するために、いくつかの野生型vRNAベクターを除外し得、いくつかの、野生型ウイルスタンパク質をコードするベクターは置き換えられ得る。例えば、HA3’および5’非コード配列、5’HA組み込み配列および非インフルエンザウイルスタンパク質コード配列に対応する異種核酸断片(例えば、VSV Gタンパク質コード配列)を含むvRNAベクターに対して、HA野生型vRNAベクターは、除外され得る。本発明のベクターは、連続的にまたは同時に細胞に導入され得る。複数の上に述べたベクター、1つ以上のこれらのベクターに接触した宿主細胞、上記方法により調製されたウイルスおよびこのウイルスで感染させた細胞を含む組成物もまた、提供される。
本発明の複数のベクターが、物理的に結合し得るか、または各ベクターは、個々のプラスミドまたは他の例えば直鎖状の核酸送達ビヒクル上に存在し得る。
本明細書の上に記載したように、組換えDNA分子を用いて増強した宿主細胞は、感染性複製欠損インフルエンザウイルスを調製するために有用である。例えば、HA、NA、M1、M2およびNS2をコードする組換えDNA分子を用いて安定に形質転換した宿主細胞は、多数のベクター(例えば、PAを含むvRNA、NPを含むvRNA、PB1を含むvRNA、PB2を含むvRNAおよび必要に応じて目的の遺伝子を含むvRNAを発現するベクター;ならびにPA、PB1、PB2およびNPをコードするベクター)により接触され得る。
ヘルパーウイルス感染を必要としない、本明細書に記載されたウイルスを産生する方法は、ウイルス変異誘発研究ならびにワクチン(例えば、AIDS、インフルエンザ、B型肝炎、C型肝炎、ライノウイルス、フィロウイルス、マラリア、ヘルペスならびに肢および口の疾患に対するワクチン)および遺伝子治療ベクター(例えば、癌、AIDS、アデノシンデアミナーゼ、筋ジストロフィー、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症および中枢神経系腫瘍に対する遺伝子治療ベクター)の産生において有用である。
従って、医学的治療(例えば、ワクチンまたは遺伝子治療のために)に使用するための組換えウイルスが提供される。例えば、本発明は、病原体(例えば、細菌、ウイルスまたは寄生虫)または悪性腫瘍に対して個体を免疫化する方法を提供する。その方法は、個体の免疫に十分な量の、少なくとも1つの単離された本発明のウイルス(必要に応じてアジュバントと組み合わせて)の個体への投与を含む。ウイルスは、病原体または腫瘍特異的ポリペプチドによりコードされたポリペプチドを含むvRNAを含む。
内因性タンパク質の量の減少または欠如により特徴付けられた適応症または疾患を有する哺乳動物中で、内因性タンパク質の発現を増強するかまたは増加させる方法もまた提供される。その方法は、哺乳動物中で内因性タンパク質の量を増強するかまたは増加させるために効果的な量の本発明の組換えウイルスの哺乳動物への投与を含む。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
さらに、インフルエンザウイルス感染および/または複製を阻害するための方法が提供される。その方法は、インフルエンザウイルス感染および/または複製を阻害するために効果的な量で、NA、M、HA、NS、NP、PB1、PB2、PAまたはこのような分子の任意の組合わせに対するインフルエンザウイルス組み込み配列を含む、単離された核酸分子を有する組成物との細胞の接触を含む。細胞は、非感染細胞であり得るか、またはインフルエンザウイルスで感染した細胞であり得る。組み込み配列は、NAまたはHAの1つ以上の型に対して特異的であり得る。1つの実施形態では、細胞はさらに、M2チャンネルインヒビターまたはノイラミニダーゼインヒビターと接触する。
インフルエンザウイルスRNAのビリオンへの取り込みを、特異的に阻害するかまたは防止する薬剤を同定する方法もまた、提供される。この方法は、インフルエンザウイルスを用いて感染させた細胞の薬剤との接触;および薬剤が、インフルエンザウイルスRNA(例えば、NA vRNAまたは組換えNA vRNA)のビリオンへの取り込みを、特異的に阻害するかまたは防止するかの検出または決定を含む。その方法により同定された薬剤およびその使用(例えば、インフルエンザウイルスの複製を阻害するかまたは防止するため)もまた、提供される。
(発明の詳細な記述)
本明細書で使用される場合、用語「単離されたおよび/または精製された」とは、インビトロの調製、宿主細胞または本発明のウイルスの単離および/または精製をいい、故に、インビボの物質とは関連しないか、または、実質的にインビトロの物質から精製される。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋な」とは、目的種が、優性種存在であること(すなわち、モルベースで、目的種が、組成物中の他の任意の個体種より多量にある)、および好ましくは、実質的に精製された画分は、目的種が、存在する全ての高分子種の少なくとも約50%(モルベースで)を構成する組成物であることを意味する。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての高分子種の約50%より多くを含み、より好ましくは、約80%より多くを含み、さらにより好ましくは、約85%より多く、約90%、約95%および約99%より多くを含む。最も好ましくは、目的種は、本質的に均質になるまで精製される(混入種は、従来の検出方法によっては、組成物中では、検出され得ない)。
本明細書で使用される場合、用語「組換え核酸」または「組換えDNA配列または断片」とは、実質的に化学的にインビトロで変更され得る供給源に由来するかまたは供給源から単離された核酸(例えば、DNA)をいう。故に、その配列は、天然には存在しないか、または天然のゲノムでは位置すべきところに位置しない、天然に存在する配列に一致する。供給源に「由来する」DNAの例としては、有用なフラグメントとして同定されたDNA配列、またはRNAから逆転写し、次いで本質的に精製された形態に合成したDNAがある。供給源から「単離された」このようなDNAの例としては、上記供給源から化学的手段(例えば、制限エンドヌクレアーゼの使用により)により切除するかまたは除去し、さらに処理し得る(例えば、遺伝子工学の方法により、本発明に使用するために増幅した)有用なDNA配列がある。組換えウイルスは、組換え核酸から調製される。
本明細書で使用される場合、「異種の」核酸断片、配列または分子が、参照核酸断片、配列または分子とは異なる供給源に由来することを意味する。例えば、A型インフルエンザウイルス断片またはその一部は、対応するB型インフルエンザウイルス断片またはその一部に対して異種性であり、1つのインフルエンザ株または血清型のNAウイルス断片は、異なる株または血清型のNAウイルス断片に対して異種性であり、そして、非インフルエンザウイルス核酸分子(例えば、HIV gp160)は、インフルエンザウイルス核酸分子に対して異種性である。それに対して、相同な核酸断片は、参照核酸断片と同じ供給源に由来する。従って、本発明の核酸分子は、3’非コード領域、少なくとも1個の組み込み配列および互いに相同な5’非コード配列を含むキメラ分子である。
本発明の文脈中の言い回し「高効率の複製」は、インビトロの組織培養系で高感染性力価(例えば、10〜1010PFU/mlおよび好ましくは、10〜10PFU/ml)の産生として定義される。複製またはワクチンの産生に使用するためのインフルエンザウイルスのスクリーニングは、任意の公知のおよび/または当該分野において公知の適切なアッセイを使用してアッセイされ得る。スクリーニングに適したこのようなアッセイ(単独でまたは任意に組合わせて)としては、ウイルス複製、不活性化(例えば、抗血清による)、転写、複製、翻訳、ビリオン組み込み、病原性、HAまたはNA活性、ウイルス収量の定量的および/もしくは定性的な測定、ならびに/または逆遺伝学、再類別、相補性のような方法を使用する形態形成、ならびに/または感染が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ウイルス複製アッセイは、ウイルスの弱毒化または不活性に対するスクリーニングをするために使用され得る。例えば、Krug、R.M.(編)The Influenza Viruses、Plenum Press、New York(1989)を参照のこと。
「シアル酸」は、9個またはそれより多い炭素原子を含むアミノ糖のファミリー(例えば、N−およびO−置換したノイラミン酸の誘導体)をいう。
本明細書で使用される場合、「部位特異的組換え」は、以下の3つの事象:1)部位特異的組換え部位または配列(例えば、lox部位)が隣接した標的DNA断片の欠損;2)部位特異的組換え部位または配列(例えば、lox部位)が隣接した標的DNA断片のヌクレオチド配列の反転;および3)部位特異的組換え部位または配列(例えば、異なるDNA分子上に位置するlox部位)に隣接する標的DNA断片の相互交換を含むことを意図する。部位特異的組換え系としては、バクテリオファージP1のCre/lox系(米国特許第5,658,772号)、酵母のFLP/FRT系(GolicおよびLindquist、1989)、MuのGinリコンビナーゼ(Maeserら、1991)、E.coliのPinリコンビナーゼ(Enomotoら、1983)およびpSR1プラスミドのR/RS系(Arakiら、1992)が挙げられるが、これらに限定されない。
(本発明に使用され得る細胞株およびインフルエンザウイルス)
本発明に従って、インフルエンザウイルスの十分な複製を支持する任意の細胞を、本発明に使用し得、その細胞は、インフルエンザウイルスに対するレセプターである、1個以上のシアル酸を減少するかまたは減衰したレベルで発現する変異細胞を含む。その方法により得られたウイルスを、再類別ウイルスにし得る。
好ましくは、細胞は、WHOが認定した、または認定し得る連続継代細胞株である。このような細胞株の認定のために必要なこととしては、血統、生育特性、免疫学的マーカー、ウイルス感受性、腫瘍形成能および保管条件ならびに動物、卵および細胞培養中で試験することの内の少なくとも1つの点についての特徴づけが挙げられる。このような特徴づけは、細胞が検出し得る外来の薬剤を含んでいないことを確認するために使用される。いくつかの国では、核学もまた必要であり得る。さらに、腫瘍形成能は、好ましくは、ワクチン産生のために使用される細胞と同じ継代レベルである細胞において試験される。ウイルスは、ワクチン産生のために不活性化されたり、弱められたりする前に、好ましくは、一貫した結果を与えることが示されているプロセスによって精製される(例えば、World Health Organization、1982を参照のこと)。
使用される細胞株の完全な特徴づけを確立することが好ましい。故に、最終産物の精製に対する適切な試験が含まれ得る。本発明に使用される細胞の特徴付けのために使用され得るデータとしては、(a)その起源、派生、および継代歴についての情報;(b)その増殖および形態的特長についての情報;(c)外来薬剤の試験の結果;(d)顕著な特徴(例えば、他の細胞株からの細胞を明確に認識することを可能にする生化学的、免疫学的および細胞発生学的傾向);および(e)腫瘍形成能試験の結果が挙げられる。使用される宿主細胞の継代レベル、集団倍化は、可能な限り低いことが好ましい。
細胞中で産生されたウイルスが、ワクチンまたは遺伝子治療の処方の前に高度に精製されていることが好ましい。一般に、精製手順により、細胞DNA、他の細胞構成要素および外来の薬剤の広範囲の除去を生じる。DNAを広範囲に分解するかまたは変性する手順もまた、使用され得る。例えば、Mizrahi、1990を参照のこと。
(ワクチン)
本発明のワクチンは、任意の病原体(例えば、1つ以上の細菌、ウイルス、酵母または菌類由来の免疫原性タンパク質)の糖タンパク質を含む免疫原性タンパク質を含み得る。従って、1つの実施形態において、本発明のインフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスまたは他のウイルス性病原体に対するワクチンベクターであり得、これらのウイルス性病原体としては、例えば、レンチウイルス(例えば、HIV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、CMVまたはHSV)または肢および口の疾患ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
完全なビリオンワクチンは、限外濾過により濃縮され、次いで、ゾーン遠心分離かまたはクロマトグラフィーにより精製される。精製の前か後に、例えばホルマリンまたはβ−プロピオラクトンを使用して不活性化される。
サブユニットワクチンは、精製された糖タンパク質を含む。このようなワクチンは、以下のように調製され得る:界面活性剤で処理することにより、断片化したウイルス懸濁液を使用して、例えば、超遠心により表面の抗原を精製する。従って、サブユニットワクチンは、主に、HAタンパク質を含み、そしてNAも含む。使用される界面活性剤は、例えば、カチオン性界面活性剤(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(Bachmeyer、1975)、アニオン性界面活性剤(例えば、アンモニウムデオキシコレート(Laver & Webster、1976);Websterら、1977;または非イオン性界面活性剤(例えば、名称TRITON X100のもとで商品化されている非イオン性界面活性剤)であり得る。プロテアーゼ(例えば、ブロメリン)を用いたビリオンの処理の後、血球凝集素もまた単離され得、次いで、例えば、GrandおよびSkehel(1972)により記載された方法により精製される。
分割ワクチンは、脂質を溶解する薬剤での処理に供されたビリオンを含む。分割ワクチンは、以下のように調製され得る:上記のようにして得た精製されたウイルスの水性懸濁液(不活性化されたかまたはされていない)を攪拌しながら、脂質溶媒(例えば、界面活性剤を加えたエチルエーテルまたはクロロホルム)により処理する。ウイルス外皮脂質の溶解により、ウイルス粒子の断片化を生じる。分割ワクチンを含み、主に血液凝集素、それらの元の脂質環境が除去されたノイラミニダーゼおよびコアまたはその分解産物を構成要素とする水相を、回復する。次いで、既に感染粒子残留物の不活性化がなされていない場合、不活性化する。
(不活性化ワクチン)
本発明の不活性化インフルエンザウイルスワクチンは、公知の方法(例えば、ホルマリン、β−プロピオラクトン処理が挙げられるが、これらに限定されない。)を使用して本発明の複製したウイルスを不活性化することにより提供される。本発明に使用され得る不活性化ワクチン型としては、完全ウイルス(WV)ワクチンまたはサブビリオン(SV)(分割)ワクチンが挙げられ得る。WVワクチンは、インタクトで、不活性なウイルスを含むが、SVワクチンは、精製され、界面活性剤(脂質を含むウイルス外皮を溶解する)で分解され、その後、残留物ウイルスを化学的に不活性化したウイルスを含む。
さらに、使用され得るワクチンは、単離されたHAおよびNA表面タンパク質を含むワクチン(これを、表面抗原またはサブユニットワクチンという)を含む。一般に、SVおよび表面抗原(すなわち、精製されたHAまたはNA)ワクチンに対する反応は類似している。NA抗原を含む実験的不活性化WVワクチンは、免疫学的に、流行ウイルスに関連し、非関連HAは、従来のワクチンより効果的でないようにみえる(Ograら、1977)。両方の関連した表面抗原を含む不活性化ワクチンが好ましい。
(弱毒化したウイルス生ワクチン)
弱毒化したインフルエンザウイルス生ワクチンもまた、インフルエンザウイルス感染を防止するか処置するために、公知の方法段階に従って、使用され得る。弱毒化は、好ましくは、弱毒化したドナーウイルス由来の弱毒化遺伝子を、複製した、公知の方法に従って単離したかまたは再類別したウイルスに移すことにより、1段階で達成される(例えば、Murphy、1993を参照のこと)。インフルエンザAウイルスに対する耐性は、HAおよびNA糖タンパク質に対する免疫反応の発達によって媒介されるので、これらの表面抗原をコードする遺伝子は、再類別したウイルスまたは高増殖臨床単離体に由来するはずである。弱毒化遺伝子は、弱毒化親に由来する。このアプローチでは、弱毒化を与える遺伝子は、好ましくは、HAおよびNA糖タンパク質をコードしない。さもなければ、これらの遺伝子は、臨床ウイルス単離体の表面抗原を有する再類別体に移され得ない。
多くのドナーウイルスが、再生的にインフルエンザウイルスを弱毒化し得る能力について、評価されてきた。非限定的な例として、A/Ann Arbor(AA)/6/60(H2N2)冷適応した(ca)ドナーウイルスが弱毒化ワクチン産生のために使用され得る(例えば、Edwards、1994;Murphy、1993を参照のこと)。さらに、弱毒化再類別ウイルス生ワクチンは、caドナーウイルスを本発明の悪性の複製したウイルスと交配することにより産生され得る。再類別子孫は、次いで、H2N2抗血清(弱毒化A/AA/6/60(H2N2)caドナーウイルスの表面抗原を有するウイルスの複製を阻害する)の存在下で、25℃(悪性ウイルスの複製に対して制限的)で選択する。
H1N1およびH3N2再類別体の大きなシリーズがヒトで評価され;血清反応陰性の小児および免疫学的に初回刺激された大人に対して(a)感染性であり、(b)弱毒化されており、(c)免疫原性であり、かつ(d)遺伝的に安定であることが、申し分なく見出されている。ca再類別体の免疫原性は、その複製レベルに対応する。従って、新規の野生型ウイルスによるcaドナーウイルスの6個の伝達性の遺伝子の獲得は、ワクチン接種感受性の大人および小児に使用するために、再生的に、これらのウイルスを弱毒化した。
これらの変異遺伝子を有する感染ウイルスを救出するために、他の弱毒化された変異は、部位指向性の変異形成により、インフルエンザウイルス遺伝子に導入され得る。弱毒化変異はゲノムの非コード領域に導入され得、また、コード領域にも導入され得る。このような弱毒化変異は、また、HAまたはNA以外の遺伝子(例えば、PB2ポリメラーゼ遺伝子)にも導入され得る(Subbaraoら、1993)。従って、部位指向性の変異形成により導入された弱毒化変異を有する新規ドナーウイルスもまた、産生され得、そして、このような新規ドナーウイルスは、A/AA/6/60caドナーウイルスについての上記の方法と類似の方法で、弱毒化再類別H1N1およびH3N2生ワクチン候補の減少に使用され得る。同様に、哺乳動物のワクチン接種に使用するために適切な弱毒化ワクチンを得るために、他の公知のおよび適切な弱毒化ドナー株を、本発明のインフルエンザウイルスで再類別し得る(Ewamiら、1990;Musterら、1991;Subbaraoら、1993)。
このような弱毒化ウイルスが、元の臨床的単離体の遺伝子と実質的に類似した抗原決定基をコードするウイルス由来の遺伝子を維持することが好ましい。これは、弱毒化ワクチンの目的が、ウイルスの元の臨床的単離体と実質的に同じ抗原性であるが、同時に、ワクチンが、予防接種した哺乳動物への深刻な病原性状態の誘導の最小限の変化を引き起こす程度に感染性を欠如するような抗原性を供給することであるためである。
従って、ウイルスは、免疫反応を動物(例えば、哺乳動物)に誘導するためのワクチンとして、公知の方法に従って、弱毒化されるか、または不活性化され、処方され、そして投与され得る。このような弱毒化ワクチンまたは不活性化ワクチンが、臨床的単離体またはそれに由来する高増殖株の抗原性に対して、類似の抗原性を維持するかどうか決定する方法は、当業者に周知である。このような公知の方法としては、ドナーウイルスの抗原決定基を発現するウイルスを取り除くための抗血清または抗体の使用;化学的な選択(例えば、アマンタジンまたはリマンチジン);HAおよびNAの活性および阻害;そして、抗原決定基をコードするドナー遺伝子(例えば、HAまたはNA遺伝子)が、弱毒化したウイルス中に存在しないことを確認するためのDNAスクリーニング(例えば、プローブハイブリダイゼーションまたはPCR)が挙げられる。例えば、Robertsonら、1988;Kilbourne、1969;Aymard−Henryら、1985;Robertsonら、1992を参照のこと。
(薬学的組成物)
接種または非経口投与または経口投与に適した、本発明の薬学的組成物は、弱毒化したかまたは不活性化したインフルエンザウイルスを含み、必要に応じてさらに、滅菌水または非水性溶液、懸濁液およびエマルションを含む。組成物は、さらに、当該分野において公知の補助薬剤または賦形剤を含み得る。例えば、Berkowら、1987;Goodmanら、1990;Avery’s Drug Treatment 1987;Osol、1980;Katzung、1992を参照のこと。本発明の組成物は、一般に個体の用量(ユニット用量)の形態で提示される。
従来のワクチンは、一般に約0.1〜200μg、好ましくは10〜15μgの、それらの組成物に入れる各々の株由来の血球凝集素を含む。本発明のワクチン組成物の主要な構成物を形成するワクチンは、A型ウイルス、B型ウイルスもしくはC型ウイルスまたはそれらの任意の組み合わせ(例えば、3つの型のうちの少なくとも2つ、異なるサブタイプのうち少なくとも2つ、同じ型の少なくとも2つ、同じサブタイプの少なくとも2つまたは異なる1つのもしくは複数の単離体または1つのもしくは複数の再類別体を含み得る。ヒトインフルエンザウイルスA型は、H1N1、H2N2およびH3N2サブタイプを含む。
非経口投与のための調製物としては、滅菌水性溶液、滅菌非水性溶液、懸濁液および/またはエマルションが挙げられ、これらは、当該分野で公知の補助薬剤または賦形剤を含み得る。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。皮膚透過性を増加し、抗原吸収を増強するために、キャリアまたは閉塞包帯が、使用され得る。経口投与のための液体投薬形態は、一般に、液体投与形態を含むリポソーム溶液を含み得る。リポソームを懸濁するために適切な形態としては、当該分野で一般に使用される不活性な希釈剤(例えば、精製水)を含むエマルション、懸濁液、溶液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。不活性な希釈剤の他に、このような組成物は、アジュバント、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤または甘味料、香料添加剤、または、香料もまた含み得る。例えば、Berkowら、1992;Goodmanら、1990;Avery’s、1987;Osol、1980;およびKatzung、1992を参照のこと。
本発明の組成物が、個体への投与に使用される場合、それは、さらに、塩、緩衝液、アジュバントまたは組成物の効率を改善するために好ましい他の物質を含み得る。ワクチンでは、特定の免疫反応を増強し得るアジュバント、物質が使用され得る。通常、アジュバントおよび組成物は、免疫系に提示する前に混合され、または別々に提示されるが、免疫された生体の同じ部位には提示されない。ワクチン組成物に使用されるために適切な物質の例は、Osol(1980)により提供される。
少なくとも2つのインフルエンザウイルス株(例えば、2〜50株または任意の範囲またはその中の値で)に対して複製したインフルエンザウイルスを混合することにより、ワクチン中の異質性が提供され得る。現代の抗原性組成物を有するインフルエンザAウイルス株またはBウイルス株が好ましい。本発明に従って、インフルエンザウイルスの一つの株中の変異に対して、当該分野で公知の技術を使用して、ワクチンを提供し得る。
本発明に従った薬学的組成物は、さらに、または、その上、例えば、遺伝子治療、免疫抑制剤、抗炎症剤または免疫賦活剤およびワクチン、化学治療物のための少なくとも1個の化学治療化合物を含み、このような化合物としては、γグロブリン、アマンタジン、グアニジン、ヒドロキシベンズイミダゾール、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、チオセミダルバゾン、メチサゾン、リファンピン、リバビリン、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、フォスカーネット、ホスホノ酢酸、アシクロビル、ジデオキシヌクレオシド、プロテアーゼインヒビターまたはガンシクロビルが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、Katzung(1992)およびこの文献中の798〜800ページおよび680〜681ページにそれぞれ引用された参考文献を参照のこと。
組成物は、また、可変であるが少量のエンドトキシンを含まないホルムアルデヒドおよび防腐剤を含み得、それらは、安全であることがわかっていて、組成物を投与した生物中で、望ましくない効果に寄与しない。
(薬学的目的)
組成物(またはそれが誘発する抗血清)の投与は、「予防的な」または「治療的な」目的のいずれかのためであり得る。予防的に提供される場合、本発明の組成物(ワクチンである)は、病原性感染のいかなる症状も明らかになる前に提供される。本組成物の予防的な投与は、後の感染を防止するかまたは緩和するために役立つ。治療的に提供される場合、弱毒化したかまたは不活性化したウイルスワクチンは、実際の感染の症状の検出の際に提供される。組成物の治療的投与は、実際の感染を緩和するために役立つ。例えば、Berkowら、1992;Goodmanら、1990;Avery、1987およびKatzung、1992を参照のこと。
従って、弱毒化したかまたは不活性化した、本発明のワクチン組成物は、感染の発症の前(予想される感染を防止するかまたは緩和するために)または実際の感染の開始後のいずれかに供給され得る。
同様に、遺伝子治療では、組成物は、障害または疾患の任意の症状が明白になる前にまたは、1つ以上の症状が発見された後に提供され得る。
組成物は、その投与が、レシピエント患者に耐性であり得る場合、「薬理学的に受容可能」であるといわれる。投与された量が、生理学的に有効である場合、このような薬剤が、「治療的有効量」で投与されるという。その存在が、レシピエント患者の生理学において、検出し得る変化を生じる場合、本発明の組成物は、生理学的に有効である(例えば、少なくとも1系統の感染性インフルエンザウイルスに対して、少なくとも1つの一次または二次の、体液性または細胞性免疫反応を増強する)。
提供された「防御」は、完全性を必要としない。すなわち、コントロール集団または患者の一群と比較して、実質的に顕著な改良がある場合、インフルエンザ感染が全体として防御されるか、根絶されることを必要としない。防御は、インフルエンザウイルス感染の症状の開始の重症度または速度の軽減に限定され得る。
(薬学的投与)
本発明の組成物は、受動免疫かまたは能動免疫のいずれかにより、1つ以上の病原体(例えば、1つ以上のインフルエンザウイルス株)に対する耐性を与え得る。能動免疫では、不活性化されたかまたは弱毒化された生存ワクチン組成物が、予防的に宿主(例えば、哺乳動物)に投与され、投与に対する宿主の免疫反応は、感染および/または疾患に対して防御する。受動免疫では、誘発された抗血清は、回復され得、および少なくとも1つのインフルエンザウイルス株により引き起こされた感染を有すると疑われるレシピエントに投与され得る。
2番目の実施形態では、ワクチンは、女性と胎児または新生児の両方を防御するために働く免疫反応(胎盤を通してまたは母乳中の抗体の受動的取り込みにより)の産生を引き起こすために十分な時間および量の条件下で、哺乳動物の雌性(妊娠または出産時またはその前に)に提供される。
本発明は、従って、障害または疾患を防御するかまたは弱化する方法(例えば、少なくとも1株の病原体による感染を含む。本明細書で使用される場合、
その投与が、症状もしくは疾患の状態の全体もしくは一部の弱化、または疾患に対する個体の全体または一部の免疫でのいずれかを生じる(すなわち、抑制)場合、ワクチンは、疾患を防止するかまたは弱めると言われる。
本発明の、少なくとも1個の不活性化されたかまたは弱められたインフルエンザウイルスまたはその組成物は、上記のように、薬学的組成物を使用して、意図した目的を達成する任意の手段で投与され得る。
例えば、このような組成物の投与は、種々の非経口経路によりよることが可能である(例えば、皮下の、静脈内の、皮内の、筋肉内の、腹腔内の、鼻腔内の、経口のまたは経皮の経路)。非経口投与は、丸薬によるかまたは時間を追って徐々に灌流することにより、行い得る。本発明の薬学的組成物を使用する好ましい形態は、筋肉内投与または皮下の投与による。Berkowら1992;Goodmanら、1990;Avery、1987およびKatzung、1992を参照のこと。
病理に関して、インフルエンザウイルスを防止し、抑制し、または処置するための代表的な処方計画は、本明細書に記載されるワクチン組成物の効果的な量の投与を含み、1週間と約24ヶ月の間で、またはその間の任意の範囲または値で、誘導するまでの期間、単回処理として投与されるかまたは増強するものとして、または追加免疫投薬量として繰り返して投与される。
本発明に従うと、「効果的な量」のワクチン組成物は、所望の生物学的効果を達成するために十分である組成物である。効果的な投薬量は、レシピエントの年齢、性別、健康および体重、ある程度の同時処理、もしあれば、処理の頻度および所望した効果の性質に依存する。以下に提供した効果的な投薬量の範囲は、本発明および本発明の好ましい用量範囲を限定することを意図しない。しかし、最も好ましい用量は、個体被験体に合わせて調整されることが理解され、そして、当業者により決定され得る。Berkowら、1992;Goodmanら、1990;Avery’s、1987;Ebadi、1985およびKatsung、1992を参照のこと。
弱毒化したウイルスワクチンの哺乳動物(例えば、ヒト)または鳥類成体に対する投薬量は、約10〜約10プラークを形成ユニット(PFU)/kgまたは任意の範囲またはその範囲内の値であり得る。不活性化ワクチンの用量は、約0.1〜約200の範囲であり得、例えば、50μgの血液凝集素タンパク質であり得る。しかし、用量は、開始点として存在するワクチンを使用した、従来的な方法により決定される安全かつ効果的な量であるべきである。
複製したウイルスワクチンの各用量における免疫反応性HAの用量は、適切な量を含むように標準化し得、例えば、1〜50μgまたは任意の範囲、またはその範囲内であり得、または米国公衆衛生局(PHS)により推奨される量であり、それは、3歳より年長の小児に対しては、通常構成要素あたり15μg、3歳未満の小児に対しては、構成要素あたり7.5μgである。NAの量もまた、標準化し得るが、しかし、この糖タンパク質は、処理機精製および保管の間、不安定であり得る(Kendalら、1980;Kerrら、1975)。各0.5ml用量のワクチンは、好ましくは、約10億〜500億個のウイルス粒子を含み、および好ましくは、100億個の粒子を含む。
本発明は、以下の非限定的な実施例により、さらに、記載される。
(実施例1)
(材料および方法)
(ウイルスおよび細胞)
単一患者かまたはMardin−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞(A/Tottori/872/K4/94;K4)の肺含有鶏卵(A/Tottori/AT1/AM2AL3/94;AM1AL3)から単離されたヒトH3N2ウイルスを、T.Ito(Tottori University、Tottori、Japan)から入手した。ウイルスストックは、0.3%のウシ血清アルブミンおよび0.5mgのトリプシン/mlを補充した最小必須培地(MEM)中の10日齢の胚含有鶏卵(AMZAL3 ウイルス)かまたはMDCK細胞(K4ウイルス)上で増殖させた。MDCK細胞を、5%新生児子牛血清(Sigma、St.Louis、MO)を補充したMEM中で維持した。
(レクチン耐性細胞株の産生)
75%のコンフルーエンシーまで増殖したMDCK細胞を、リン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、その後、0.3%子牛血清アルブミンを含むMEM中のMaakia amurensis(MAA)レクチン(100mg/ml;Boehringer Mannheim、Mannheim、Germany)またはSambucus nigra(SNA)レクチン(100mg/ml;Boehringer Mannheim)中でインキュベートした。48時間のインキュベート後、培地を成長培地(MEM−5%子牛胎児血清)で置き換えた。レクチン選択を、上記のようにさらに2回繰り返した。生存した細胞コロニーをクローン化し、SNA−選択細胞株およびMAA−選択細胞株を、それぞれMDCK−Sn10およびMDCK−Maと名付けた。
(シアル酸含有量の決定のための蛍光定量的なHPLC方法)
両方の細胞株および精製したウイルスのシアル酸(N−アセチルノイラミン酸[NeuAc]およびN−グリコリルノイラミン酸[NeuGc])含有量を、Suzukiら(1997)に記載されるように、高性能液体クロマトグラフィーにより蛍光定量的に決定した。各サンプルを5mlのすりガラスのふたのバイアル中に置き、100μl(25mM)の硫酸と混合した。次いで、バイアルを60℃で12時間熱し、シアロ糖鎖を加水分解した。冷却後、50μlの1,2−ジアミノ−4,5−メチレンジオキシベンゼンを、50μlの加水分解質に添加し、その後、混合物を暗黒下で、60℃で2.5時間加熱し、シアル酸の蛍光を発色させた。生じた溶液の10μlのアリコートを次いで、サンプル注入バルブ(モデル7125;Reodyne)ならびに20μlフローセルおよび記録計(Chromatopac C−RSA;Shionadzu、Kyoto、Japan)備えた蛍光分光光度計(650−105;Hirachi、Tokyo、Japan)を備え付けた880−PU高性能液体クロマトグラフ(JASCO、Tokyo、Japan)に注入した。蛍光分光光度計を、373nmの励起波長および448nmの放射波長に位置した。校正曲線を確立するために、NeuAc(Sigma)およびNeuGc(Sigma)の標準混合物(200pmol/μl)を使用した。
(蛍光シアリダーゼ活性アッセイ)
ウイルスシアリダーゼ活性(5×10PFU)を、Haraら(1987)によって記載されるように、2’−(4−メチルウンベリフェリル)−αーD−N−アセチルノイラミニックアシッド(Sigma)を基質として用いて測定した。簡単に言えば、蛍光発生的な基質を(0.5M酢酸ナトリウム(pH4.6)で1:2に希釈し)、等容量のウイルスサンプルに添加し、37℃で、30分間インキュベートした。200mlの0.5M NaCO(pH10.7)により反応を止め、次いで、蛍光を360nmの励起波長および460nmの放射波長でインキュベートした。全ての反応を2組行った。
(NAおよびHA遺伝子の配列決定分析)
製造者(Qiagen、Inc.、Valencia、Calif.)により説明されるように、Qiappin vRNA精製キットを使用して、全ウイルスRNA(vRNA)を、ウイルスサンプルから入手した。cDNA産生のために、保存された12個のインフルエンザAウイルス遺伝子断片のvRNA3’末端ヌクレオチドに相補的な、オリゴヌクレオチド Uni−12を、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(Promega、Madison、WI)反応に対するプライマーとして使用した。NA遺伝子cDNAを、NA遺伝子特異的プライマーJN2−43(5’cRNAセンス配列:5’−TGGCTCGTTTCTCTCACTATTGCC−3’;配列番号1)およびJN2−1410r(3’−cRNAアンチセンス配列:5’−TTATATAGGCATGAGATTGATGTCCG−3’;配列番号2)および10UのPwo DNAポリメラーゼ(Boehringer Mannheim)を使用して、30回のPCRの間で増幅した。生じたPCR産物を、ベクターpCR21(Invitrogen、Carlsbad、Calif)にサブクローニングし、自動蛍光配列決定に使用した。HA遺伝子特異的プライマーJH3−Up(5’cRNAセンスプライマー配列、5’−AGCAAAAGCAGGGGATAATTCTATTAACCATGAAGAC−3’;配列番号3)およびJH3−Down(3’cRNAアンチセンスプライマー配列、5’−AGTAGAAACAAGGGTGTTTTTAATTAATGCACTC−3’;配列番号4)を用いて、HA遺伝子を同様の様式で、クローン化した。単離したそれぞれに対して、NAおよびHAコンセンサス配列を入手するために、3個のクローンを試験した。
(結果)
(レクチン耐性細胞株の産生)
細胞の表面でシアル酸発現のレベルが減少した細胞株を産生するために、シアル酸結合特異性が異なる2個のレクチン(SNAおよびMAA)を使用した。SNAレクチンは、α(2−6)結合によりガラクトースまたはNーアセチルガラクトサミンに結合したシアル酸に特異的である(Shibuyaら、1987)のに対して、MAAレクチンは、α(2,3)結合によりガラクトースに結合したシアル酸に、結合する。インフルエンザウイルスの増殖を補助するMDCK細胞株は、レクチン選択に対する親細胞として使用される。いずれかのレクチンの存在下でインキュベートした場合、細胞の多くは、1週間以内に死ぬ。耐性の細胞クローンを次いで、ストック培養のために増殖させる。MAAおよびSNAレクチン選択から生じた細胞株を、それぞれ、MDCK−MaおよびMDCK−Sn10と名付けた。
ジゴキシゲニン標識したMAAおよびSNAレクチンを用いた蛍光活性化細胞選択(FACS)(図1A)は、以前記載された(Itoら、1997)ように、MDCK細胞の両方のレクチンに対する高レベルの結合を示した。α(2,6)結合特異的レクチンを用いて選択された、MDCK−Sn10細胞は、α(2,3)特異的MAAレクチンに対する強い結合を保持したが、SNAレクチン結合は、MDCK親の結合より弱い結合を示した。それに対して、α(2−3)結合特異的レクチンで選択されたMDCK−Ma細胞は、両方のレクチンに、MDCK細胞より、非常に弱く結合する。
(MDCK−Sn10およびMDCK−Ma細胞株中でのウイルス増殖)
インフルエンザウイルスが、どのようにレセプター発現が減少した細胞に適応しているか知るために、公知のシアル酸レセプター結合特異性(Itoら、1997)を用いて、2個のインフルエンザウイルス改変体(AM2AL3およびK4)を選択した。AM2AL3ウイルスが、NeuAcα(2−3)Galに対して特異的であるのに対して、K4ウイルスは、α(2−6)結合[NeuAcα(2−6)Gal]によりガラクトースに結合したNeuAcを特異的に認識する。両方のウイルスとも、MDCK細胞中と同様に、MDCK−Sn10細胞中でよく複製する(表1)。しかし、MDCK−Ma細胞中での両方のウイルスの力価は、MDCK細胞より1桁低い。また、各ウイルスでの感染後、10の感染の重複でさえ、少量の割合のMDCK−Ma細胞は、いかなる細胞変性効果もなく、コンフルーエンシーになるまで、増殖し続けた。ウイルスの増殖を促進するトリプシンを含む培地の置き換えによる血球凝集アッセイにより、ウイルス産生は、これらの生存する細胞中では、検出され得ない。インフルエンザウイルスHAおよびNPタンパク質の両方に対する免疫化学染色によっては、細胞は、またネガティブであった(データは示さず)、従って、細胞は、持続的に感染していないことを示している。
生存した細胞を、MaKSと名付けた。
Figure 0004456169
SNAおよびMAAレクチンの両方を使用したFACS分析は、それらが由来したMDCK−Ma細胞と同様に、MaKS細胞が、α(2,6)特異的SNAレクチンに、MDCK細胞より弱く結合することを示している(図1B)。さらに、MaKS細胞のMAAレクチン結合の頂点は、MDCK−Ma細胞株のそれより、非常に狭く、小さな肩ピークの喪失を伴う、より高いMAA結合集団を示す(図1)
シアル酸の量の減少が、MaKS細胞のレクチン結合の減少の原因となっているかどうか決定するために、MaKS細胞中でのシアル酸の存在量を、液体クロマトグラフィー分析により定量化した。MaKS細胞株(それぞれ、8.2および0.4pmol/μgタンパク質)は、MDCK細胞(216.0および2.5pmol/μgタンパク質)より、低いレベルのNeuAcおよびNeuGcを示したが、NeuGc量は、非常に少なかった。これらのデータは、MaKS細胞中のシアル酸レセプター決定基の広範囲の減少を示している。
(MaKS細胞中のウイルスの適応)
AM2AL3およびK4ウイルスが、非常に低いレベルのウイルスレセプターを発現する細胞中で、どのように増殖し、増殖を細胞に適応させているか決定するために、両方のウイルスを連続的に、液体培養中のMaKS細胞に通過させた。両方のウイルスとも、MDCK細胞と比較して、MaKS細胞では、より不十分にしか複製しない(表2)ので、第1〜3継代まで、希釈せずに行い、第4〜13継代までは、1:1000希釈で行った。第8継代の後、いずれかの改変体により産生されたプラークの直径は、大きいもの(3mmより大きい)からより小さいもの(約1nm)に変化した。第10継代およびそれより高いものまでは、ウイルスをMDCK細胞でアッセイした場合、より小さなプラークしか存在しなかった(データは、示さず)。13の連続した継代の後、両方のウイルスは、MaKS細胞で増殖し得、ならびにMDCK細胞ではより良く増殖し得た(表2)。第13継代の後、各改変体から産生したウイルスストックを増幅し、それぞれ、AL3(MaKS)−13およびK4(MaKS)−13と名付けた。
Figure 0004456169
(AL3(MaKS)−13およびK4(MaKS)−13ウイルスのHAおよびNA遺伝子の変異分析)
レセプター濃度の減少により特徴付けられた細胞環境に対するウイルス適応の分子的基盤を決定するために、AL3(MaKS)−13およびK4(MaKS)−13ウイルスのHA遺伝子を逆転写し、cDNAをPCRによって増幅し、その後、得られた産物を配列決定した。2個の親ウイルス由来の対応するHA遺伝子と比較して、遺伝子のいずれもが、変異を含まなかった。
NAシアリダーゼ活性中の変化が、インフルエンザHAレセプター結合活性中にあるので、AL3(MaKS)−13およびK4(MaKS)−13ウイルスのNA配列を決定した。両方の改変体のNA遺伝子の配列分析は、大きな内側の欠失を明らかにした(図2)。AL3(MaKS)−13では、欠失は、ヌクレオチド220〜1253まで広がり、リーディングフレームをシフトし、従って欠失のすぐ後にストップコドンを産生した。このNAのコード能力は、66アミノ酸であり、これは、細胞質末端、膜貫通ドメイン、柄領域に対応し、NAの頭領域の短い部分であった。同様に、K4(MaKS)−13単離体は、NA遺伝子中の塩基130〜1193まで欠失を含み、コドン39にフレーム内で、終止コドンをもたらす。AL3(MaKS)−13ウイルスと同様に、遺伝子は、もはや全長触頭部領域をコードしていない。従って、ウイルスは、それらのNA触媒活性を失った非常に低いレセプター発現を有する細胞株中を通過する。
この結果を確認するために、蛍光シアリダーゼ基質[2’(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−N−アセチルノイラミニックアシッド]を使用して、AL3(MaKS)−13およびK4(MaKS)−13改変体のシアリダーゼ活性を分析した。親ウイルスと違って、NA欠失変異体のいずれもが、検出し得るシアリダーゼ活性を有さなかった(図3)。
ウイルス糖タンパク質のシアル化の範囲。通常の感染の間、シアリダーゼ活性が減少したウイルスは、効率的に増殖せず、細胞表面に凝集する(Paleseら、1974;Shibataら、1993)。それから、なぜ、シアリダーゼ活性を欠如するAL3(MaKS)−13およびK4(MaKS)−13ウイルスは、MaKS細胞中で増殖するのか。1つの可能性のある説明は、これらの細胞のシアル酸量が低いので、HAおよびNAオリゴ糖のシアル化の程度もまた低く、感染した細胞表面でのウイルスの凝集を防止し、ウイルスシアリダーゼ活性がない場合には、さらに防止するということである。この仮説を試験するために、精製したウイルス調製物中のシアル酸含有量を、MDCK細胞で増殖したAM2AL3ウイルスとK4ウイルスとの間およびMaKS細胞中のAl3(MaKS)−13ウイルスとの間で比較した。NeuAc含有量は、ウイルスサンプル間で類似していたが、AM2AL3ウイルスは、他のサンプル(A/Tottori/872/K4/94、3.8pmolのNeuAc/gのタンパク質;AL3(MaKS)−13、2.6pmolのNeuAc/gのタンパク質)と比較して低いシアル酸含有量(0.9pmolのNeuAc/gのタンパク質)を有していた。
従って、シアリダーゼ活性を欠如するウイルスは、ウイルス糖タンパク質が、通常の細胞株と比較して、広範囲にシアル化されておらず、HAによって結合されないので、従って、ウイルス凝集を防止し、シアル酸の発現レベルが減少した細胞中で効率的に増殖し得る。
(考察)
本発明の研究では、外性細菌シアリダーゼ活性およびウイルスNAに対する抗体の存在下でのインフルエンザAウイルスの継代が、ウイルスNA遺伝子の欠失につながる(Liuら、1993;Liuら、1995;Yangら、1997)。さらに、このような継代により入手したNA変異体は、シアル酸残基に対する分子の親和性を減少させるHAタンパク質中の補償的変異体(Hughesら、2000)の結果として、外性のシアリダーゼ活性を欠損する細胞培養中でならびに、卵中で、マウス中で、増殖し得た。本明細書に記載したように、インフルエンザAウイルスは、シアリダーゼ活性が消滅したNA遺伝子の大きな欠失変異体により、レセプターの発現が大きく減少した細胞内での増殖に適応し得る。ウイルスレセプターの減少が、理論上、レセプター結合HAタンパク質に影響し得るにもかかわらず、NA遺伝子のみが変化している。
この発見の分子的基盤は何か。シアル酸レセプターが大量にある通常の細胞の環境では、NA活性の喪失は、ウイルスHAのシアル酸に対する親和性の減少により、補償され得、宿主細胞表面からの子孫の効率的な放出を可能にし、ビリオンの凝集を防止する(Hughesら、2000)。高レベルのウイルスレセプターの欠如により、発明者らのMaKS細胞では、HA親和性の減少は、ウイルス子孫の放出を必要とせず、NA欠失変異体の増殖を可能にする。実際に、HAタンパク質の高親和性結合は、低レベルでウイルスレセプターを発現する細胞中でのウイルス複製の間、維持されているにちがいない。しかし、このような環境では、シアリダーゼ活性は、ビリオン放出およびビリオン凝集の防止には、必要ではなく、細胞表面分子上のシアル酸の量が、非常に低いので、NA欠失ビリオンのシアル酸含有量は、野生型ビリオンのそれと類似している。実際に、シアリダーゼ活性は、それがさらに、レセプター決定基シアル酸を、細胞表面から取り除くので、ウイルス増殖に有害なようである。最近、インフルエンザAウイルスが、NA柄を欠失し、従って、卵中で増殖し得ず、異種のRNA−RNA組換えを介して、22アミノ酸までの柄挿入を必要とすることが示された(Mitnauら、2000)。まとめると、これらの発見は、インフルエンザウイルスが、大きな挿入および欠失を含む、極端な遺伝的変化を受けることにより、新規の宿主環境に適応し得ることを示している。
この研究および以前の研究(Hughesら、2000;Liuら、1993)の両方で、ウイルスは、細胞質末端および膜貫通領域をコードする断片末端を残すNA遺伝子断片中の内部の欠失により、シアリダーゼ活性を喪失した。従って、これらの変異体のNA遺伝子の保存された領域は、機能(例えば、ビリオンの形態形成および安定性)に必要であり得る。
MaKS細胞は、それらの親(MDCK)細胞より低いシアル酸含有量を有する。類似した細胞株は、CHO細胞から産生される(Rayら、1991)が、それらが、効率的なインフルエンザウイルスを支持し得ないので、インフルエンザウイルス研究に対して有用であることは、証明されていない。それに対して、MaKS細胞は、インフルエンザウイルスの研究に使用される標準的細胞株であるMDCK細胞に由来し、ウイルスレセプターに基づいた分析に有用であるはずである。例えば、外因的に、添加されたガングリオシドは、宿主細胞膜に取り込まれることが知られている(Carrollら、1985)ので、従って、公知のガングリオシドをMaKS細胞でインキュベートし得、そして、ウイルスレセプターとしての役目を果たす能力を試験し得る。
前世紀の間、出現ウイルスのHAかまたはHAおよびNAの両方の遺伝子が、ヒト集団に導入されたときに、3個のインフルエンザAウイルス流行病が生じた。異なる宿主動物由来のウイルスの比較研究は、これらの流行病株では、変異が、HA遺伝子に導入されたことを示唆している(Beanら、1992)。ウイルスが宿主の障壁を越えることを可能にするために、類似した変異がNA中で必要かどうかは、不明なままである;しかし、ヒトウイルスN2 NA(鳥類のウイルスに由来する)の基質特異性は、ヒト中でのその複製の間に次第に変化した(Baumら、1991)。本明細書の上に記載した結果は、NA変異体が、実際に、新しい環境に適応するためのインフルエンザAウイルスの能力に寄与し得ることを示している。例えば、ヒトウイルスNAを有する再類別ウイルスおよびアヒル中で複製できないアヒルウイルス由来の残った遺伝子(Hinshawら、1983)、鳥類ウイルスに起源するヒトウイルスのNA(Scholtissekら、1978)でさえも挙げられる。このことは、ヒトへの適応の間に、変異がNA遺伝子中で起こっているようであることを示唆している。異なる動物宿主由来のウイルスNAの比較研究は、最近開発されたプラスミドに基づいた逆遺伝学(Fodorら、1999;Neumannら、1999)と連動して、これらの表面糖タンパク質が、天然のインフルエンザウイルスの間での変化への適応にどのように寄与するかに対する有用な洞察を生じ得る。
(実施例2)
(材料および方法)
(細胞)
293Tヒト胚腎臓細胞を、10%ウシ胎仔血清(FCS)を補充したDulbecco培地中で維持し、Madin−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞を、5%ウシ新生児血清を補充したEagle培地中で維持した。
(プラスミドに基づいた逆遺伝学)
RNAポリメラーゼIプロモーターおよびターミネーター(Pol1プラスミドと呼ばれる)の制御下で、A/WSN/33(H1N1)ウイルス遺伝子のcDNAを有するプラスミドおよびNeumannら(1999)に記載されたインフルエンザウイルスタンパク質を発現するpCAGGS/MCSプラスミドを使用して、インフルエンザAウイルスを産生した(図4B)。簡単に言えば、Pol1プラスミドおよびタンパク質発現プラスミドを、トランスフェクション薬剤、Trans IT LT−1(Panvera、Madison、WI)とともに混合し、室温で10分間インキュベートし、その後、Opti−MEM(GIBCO/BRL)で培養した1×10個の293T細胞を添加した。トランスフェクト後、48時間で、HAタンパク質を活性化するために、0.5μg/mlのトリプシンを培地に添加し、その後、37℃で1時間インキュベートした。次いで、上清を回収した。
(プラスミド)
NAFLAG遺伝子は、NA cRNAの5’非コード領域;細胞質末端領域(6アミノ酸)膜貫通領域(29アミノ酸)および柄領域(16アミノ酸)に対応するNAの51個のコドン(図4A);FLAGエピトープ(Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys:配列番号5);2個の連続した終止コドン(TAA TAG;配列番号6)およびNA cRNAの3’末端配列の185塩基を含む。この3’末端配列の長さは、短縮NA断片中で発見された最も短いものである。(Yangら、1997)。pPol1−NAFLAGWTは(ネガティブセンスNAFLAG RNAを産生し)、pT7Blue−NA(BsmB1部位により切断された全長A/WSN/33 NA遺伝子を含む)中のWSN NA遺伝子のヌクレオチド173〜1070(ポジティブセンスの)の欠失ヌクレオチドにより作成され、そして、FLAG配列、2個の終止コドンおよびStuI部位をPCRにより挿入することにより作成される。このフラグメントをStuIで消化し、自己連結させた。NAFLAG遺伝子を、BsmBIで切断し、pHH21のBsmBI部位に挿入した。
pPol1−NAFLAGM(−)(NAFLAGM(−)vRNAの産生のための)は、NAタンパク質の開始コドンを欠いている。これは、切断したNAFLAGタンパク質に対するATG開始コドンを、インビトロで、部位に関する変異形成システム(GeneEditor、Promega)により、GCGに交換することにより成し遂げた。
NA vRNAの3’非コード末端および61個のN末端NAコドンを有する融合タンパク質をコードする相補的配列を含むRNA、増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP、Clontech)およびNA vRNAの5’末端の185塩基を産生するpPol1NA−(183)GFP(157)を、逆PCRにより、BglII部位を有するpT7Blue−NA中のWSN NA遺伝子のヌクレオチド203〜1109(ポジティブセンス)を置き換えることにより産生した。eGFP遺伝子を、このBgLII部位およびNAタンパク質のフレーム中の位置1226(野生型NA遺伝子中での)にあるStuI部位にクローン化した。NA−(183)GFP(157)遺伝子を、次いで、pHH21のBsmBI部位に挿入した。
NA(0)GFP(0)遺伝子(NA vRNAの3’非コード領域を含む)、eGFPの相補的コード配列およびNA vRNAの5’非コード領域を、BbsI部位を有するオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより産生した。このPCRフラグメントをBbsIで切断し、pHH21のBsmBI部位に挿入した。故にプラスミドの細胞への導入により、5’および3’非コードNA vRNA領域が隣接した、eGFPコード配列をネガティブセンス向きに含むRNAが合成された。
欠失変異体のシリーズを、PCR変異形成により産生した。NA−eGFP融合タンパク質の欠失変異体を、pT7blueベクター中のNA−(183)GFP(157)遺伝子から作成した。NA−(183)GFP(157)のNAコード領域の3’末端全体(ポジティブセンス)を欠くNA−(183)GFP(0)遺伝子をPCR変異形成により産生した。この変異体は、5’非コード領域(ポジティブセンス)、NA配列の61個のアミノ酸、eGFP遺伝子、2個の終止コドンおよび3’非コード領域を含む。PCR変異体、NA−(90)GFP(0)、NA−(45)GFP(0)、NA−(21)GFP(0)およびNA−(18)GFP(0)は、NA−(183)GFP(0)のNAコード領域の30個、15個、7個、6個のN末端アミノ酸欠失をそれぞれ含む。
NA0G185遺伝子(5’非コード領域、eGFP遺伝子、2個の終止コドンおよびNA(ポジティブセンス)の3’末端の185個のヌクレオチドを含む)を、NA(61)GFP遺伝子と同じ方法で作成した。この変異体は、NA vRNA(28ヌクレオチド)の5’非コード領域およびvRNAのNA 5’コード領域の157ヌクレオチドを有する。NA−(183)GFP(78)およびNA−(183)GFP(39)変異体は、NA0G185の欠失変異体であり、NA5’コード領域の2分の1または4分の1を、NA0G185としてそれぞれ有する。
(免疫染色)
短縮NAタンパク質のC末端に付着したFLAGエピトープを検出するために、MDCK細胞を、このエピトープを有するウイルスで感染し、0.5μg/mlのトリプシンおよび100μU/mlのVibrio Choleraeシアリダーゼ(GIBCO/BRL)を含む0.6%アガロースでオーバーレイした。感染した細胞を、3%ホルムアルデヒド溶液で固定し、3%ホルムアルデヒド溶液中の0.1% TritonX100溶液を浸透させた。次いで、ベクタステインABCキット(Vector、Burlingame、CA)および抗FLAGモノクローナル抗体M2(Sigma)を一次抗体として、およびビオチン標識した抗マウスIgGを二次抗体として使用して、FLAGエピトープを検出した。WSNウイルス感染した細胞を同定するために、ウサギ抗WSN血清を一次抗体として使用した。
(インサイチュハイブリダイゼーション)
感染細胞を、ジゴキシゲニン(DIG)標識プローブとハイブリダイズし、DIG核酸検出キット(Roche)を用いて、製造者のプロトコールに従って染色した。FLAGエピトープをコードする核酸配列(GACTACAAGGACGACGATGACAAG;配列番号7)に相補的なオリゴヌクレオチド(100pmol)を、DIGオリゴヌクレオチドテーリングキット(Roche)により、37℃で6時間標識した。ウイルス感染細胞を、3%ホルムアルデヒド溶液で固定し、3%ホルムアルデヒド溶液中の0.1%Triton−X 100で浸透させ、そしてプレハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC、1%(検出キットの)ブロック試薬、0.1%N−ラウロイルサルコシン、0.02%ドデシル硫酸ナトリウム[SDS]、0.1mg/ml(検出キットの)ポリ(A)−DNA含有)中で、65℃で30分間プレハイブリダイズした。オリゴヌクレオチドプローブ(10pmol)を、プレハイブリダイゼーション緩衝液に加え、そして55℃で1時間ハイブリダイズした。ハイブリダイズした細胞を、洗浄緩衝液(0.1Mマレイン酸、0.15M NaCl、0.3%Tween 20(pH7.5))で5分間洗浄し、1%ブロック剤によって室温で30分間ブロックし、そしてアルカリホスファターゼと結合した抗DIG抗体(1:500)と共に、室温で30分間インキュベートした。次いで、細胞を、洗浄緩衝液で洗浄し、そしてニトロブルーテトラゾリウムクロリド/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェート(NBT/BCIP)と共に、検出緩衝液(0.1M Tris−HCl、0.1M NaCl(pH9.5))中で、室温で3時間、暗所でインキュベートした。
(競合的継代)
NAFLAGWTウイルスまたはNAFLAGM(−)ウイルス(300プラーク形成単位[PFU])を、3×10PFUのNA(−)ウイルスと混合し、そしてサブコンフルエントなMDCK細胞に感染させる(0.01の多重感染)ために使用し、そして0.5μg/mlのトリプシンおよび100μU/mlのVibrio choleraeシアリダーゼを含有した倍地中で、72時間インキュベートした。回収したウイルスを、MDCK細胞を感染させるために使用した。この過程を、5回繰り返した。
(結果)
(NA遺伝子セグメントを欠いたインフルエンザAウイルスは、生存可能である)
短縮型NA遺伝子の繰り返し継代後の維持は、ウイルス複製のためのその重要性を示唆した。NA RNAセグメントを有さない変異型インフルエンザAウイルスを産生するために、293T細胞に、vRNA(NA vRNAを除く)を産生し、そしてその9個の構造タンパク質を発現させるために、これをプラスミドでトランスフェクトした。293T細胞培養の上清を、MDCK細胞と共に、Vibrio Choleraeシアリダーゼ存在下でインキュベーションする際、プラーク(直径189±15.6μm)が観察された。液体培養において、このウイルス(NA(−)と呼ぶ)は、l0PFU/mlまで増殖した。従って、7つのvRNAセグメントだけを有するインフルエンザAウイルスは、生存可能であった。
(短縮型NAセグメントは、効率的なウイルス増殖に必須である)
短縮型NA遺伝子の、繰り返し継代後の安定的な維持についての分子的機序を理解するため、短縮型NA遺伝子を含むウイルスの増殖を、NA遺伝子の開始コドンを欠きNA(−)ウイルスをコードするウイルスと、比較した。変異型ウイルスNAFLAGWTを、逆遺伝学によって産生した。NAFLAGWTは、内部欠失を有するNA遺伝子、および短縮型NA遺伝子に融合したFLAGエピトープ配列を有する。NAFLAGWTは、10PFU/mlまで増殖し、そして、細菌シアリダーゼ存在下で、プラークを産生した。このプラークを、抗FLAGモノクローナル抗体または抗WSNポリクローナル抗体によって、免疫染色した(図4C)。NA(−)ウイルスまたはNAFLAGWTウイルスによって産生されたプラークを、抗WSN抗体で染色したが、後者のウイルスのプラークだけが、抗FLAG抗体で染まった。
複製能力の違いを決定するため、NA(−)ウイルスおよびNAFLAGWTウイルスを、100:1の比率で混合し、そしてこの混合物を、MDCK細胞と共にインキュベートした(図5)。感染後48時間で上清を取り出し、プラークの産生のために使用した。これらのプラークを、抗FLAGモノクローナル抗体で免疫染色した。短縮型NAセグメントを有するウイルスの感染率を、総プラーク中のFLAG陽性プラークのパーセンテージを計算することにより、決定した。この過程を、あと4回繰り返した。図7Bに示すように、集団の中のFLAG陽性プラークは、継代の間徐々に増加し、5回の継代で90%近くに達した。この結果は、8個のセグメントを有するウイルスが、7個のセグメントを有するウイルスよりよく増殖する(短縮型NAが、機能するシアリダーゼをコードしなくても)ことを示す。
(ウイルスRNAは、効率的なウイルス増殖に重要である)
短縮型NAタンパク質またはウイルスRNAのどちらが、効率的なウイルス複製に重要であるかを決定するため、NA開始コドンおよび別のインフレームのATGコドン(15番目のコドン)の両方を欠いたNAFLAGM(−)遺伝子を、構築した(図6A)。NAFLAGM(−)ウイルスによって産生されたプラークは、抗FLAG抗体で検出されず(図6B)、このタンパク質が翻訳されないことを示した。NAFLAGM(−)ウイルスが、NAFLAGM(−)遺伝子を保有することを保証するため、このウイルスによって産生されたプラーク上で、FLAG配列特異的プローブを用いて、インサイチュハイブリダイゼーションを行った。これらのプラークは、プローブに反応し、このウイルス中のNAFLAGM(−)遺伝子の存在を保証した。次いで、このウイルスの複製能力を、上述の7個のセグメントのウイルスと比較した。FLAG配列特異的プローブで標識したプラークのパーセンテージは、徐々に増加し(図7B)、プラークの80%近くが、5回の継代でFLAG配列陽性になった(図7A)。継代の間、短縮型NAタンパク質を発現するプラークの復帰突然変異体は存在しないことが、抗FLAG抗体による染色がなかったことから実証された。従って、ウイルスRNAそれ自体が、効率的なウイルス複製において重要な役割を果たすように見えるが、混合感染において、NAFLAGM(−)が優勢になる速度が、NAFLAGWTウイルスの場合よりも遅かったため、短縮型NAタンパク質もまた、効率的なウイルス複製において役割を果たし得る。
(ウイルスNA RNAのパッケージングシグナルは、コード配列内に及ぶ)
CK2−29およびE17Eウイルスの長い継代の後であってさえ(Hughesら,2000)、短縮型NA遺伝子は維持された。これは、ビリオン内へのvRNA組み込みのためのシグナル(すなわち、パッケージングシグナル)が、NA RNAセグメントのコード領域内に存在することを示唆する。この仮説を試験するため、eGFPコード配列を、短縮型NA遺伝子のインフレーム内の、NA配列が欠失した場所に挿入した。従って、NA−(183)GFP(157)と名付けたこの組換え遺伝子は、NA vRNAの3’非コード末端と、NAコード領域のN末端領域の61組のコドンと、eGFPコード領域と、NA vRNAの5’末端の185個のヌクレオチドを保有する。NA−(183)GFP(157)遺伝子を、対応する野生型NA遺伝子の代わりに保有するウイルスを、調製し、そしてプラークアッセイを行った(図8A)。プラークの90%以上が、eGFPを発現していた。これは、NA−(183)GFP(157)遺伝子が、ビリオンに組み込まれ、そしてウイルス複製の間維持されたことを示す(図8B)。この発見は、NS非コード配列に隣接するCAT配列が、5継代より多くは維持されなかったことを考えると、興味深い(Luytjesら,1989)。
NA−(183)GFP(157)とCAT構築物との間の違いは、ウイルスコード配列の存在であるので、3’NA非コード領域および5’NA非コード領域に隣接するeGFPコード配列を含むCAT構築物に類似の遺伝子(NA(0)GFP(0))を産生した。この構築物は、NAコード配列を欠く。この遺伝子によって産生されるウイルスはプラークを産生するが、プラークのわずかな割合(0.1%)だけしか、1つまたは2つのeGFP発現細胞を有さなかった。このことは、NA(0)GFP(0)遺伝子が、ウイルス複製の間、ウイルス内に維持されないことを示す。ウイルス産生のために1つの発現NA(0)GFP(0)遺伝子を含むプラスミドにトランスフェクトされた293T細胞において、eGFPは、NA(61)GFPを発現するプラスミドでトランスフェクトされた293T細胞と比較して、より低い程度で発現した。NA(0)GFP(0)のPolIプラスミドは、10倍に増え、NA(61)GFPのPolIプラスミドでトランスフェクトされた細胞と類似の数の、eGFP発現293T細胞を生じた。10倍多い量のこの遺伝子のPolIプラスミドによってさえ、eGFP陽性細胞に含まれるNA(0)GFP(0)ウイルスによるたった1%のプラークしか産生されず、これらのプラークにおけるたった数個の細胞だけしか、eGFPを発現しなかった。これらの結果は、ウイルスNA RNAのパッケージングシグナルは、NAコード配列の中に及ぶことを示した。
(効率的なビリオン産生における、RNAセグメントの役割)
何故、8個のRNAセグメントを有するウイルスが、7個のRNAセグメントを有するウイルスよりよく増殖するのかを理解するため、感染性ビリオン産生を、6個、7個、または8個のウイルスRNAセグメントを保有するウイルスの間で比較した(図9)。8個のセグメントのウイルスを産生するため、293T細胞を、正常なウイルス産生のための9個の構造タンパク質全てと8個のPolIプラスミドとについてのタンパク質発現プラスミドでトランスフェクトした。また、NS2産生を消失させる2つの変異を有するNS
PolIプラスミドを、使用した;従って、293T細胞から産生したウイルスは、複製の多重サイクルを受けない。さらに、HAタンパク質およびNAタンパク質の産生をそれぞれ消失させる変異を有するHA PolIプラスミドおよびNA PolIプラスミドを、使用した。これにより、遺伝子セグメントの消失の効果が、RNAセグメントだけに制限され、遺伝子産物に波及しない。7個のセグメントのウイルスの産生のためには、NA遺伝子のPolIプラスミドを除去し、一方、NAタンパク質の発現のためのプラスミドを含めた。6個のセグメントを有するウイルスを調整するために、HA RNAおよびNA RNAのプラスミドを省き、一方、HAタンパク質およびNAタンパク質の発現のためのプラスミドを含めた。
これらのウイルスの間のビリオン産生を比較するため、プラスミドでトランスフェクトした細胞から産生した感染性ビリオンの数を、これらのウイルスに感染したMDCK細胞および感染48時間後に抗WSN抗体で免疫染色した感染細胞によって、滴定した。図9に示すように、感染性ビリオンの効率の産生は、ウイルスRNAセグメントの数と相関していた;ウイルスRNAセグメントの数がより多いと、ビリオン産生がより多い。これらの結果は、効率的なビリオン産生におけるウイルスRNAセグメントの役割を示す。
(NA vRNAの3’末端は、ビリオンへのそのパッケージングのために重要である)
NA vRNAにおけるパッケージングシグナルに絞るため、3’コード領域または5’コード領域(vRNAセンス)におけるさらなる欠失を含む、短縮型NA遺伝子を有するウイルスを、調製した(図8A)。NA−(183)GFP(0)ウイルス(NAコード領域の5’末端を欠く)によって産生されるプラークのおよそ40%が、eGFPを発現した。一方、NA0G185ウイルス(NAコード領域の3’末端を欠く)によって産生されるプラークの1.8%しか、eGFPを発現しなかった。これらのデータは、NA
vRNAコード領域の3’末端が、ビリオンパッケージングのために重要であることを示す(図8)。
(考察)
欠失構築物の作製により、ビリオンへのNAセグメントの組み込みをもたらすNAコード領域を、決定した。コード領域の両端が重要であることが見出されたが、NAコード配列の5’末端に対応するvRNAの3’末端は、他の端より重要であった。NSセグメントについては、NSコード配列の5’末端に対応するvRNAの3’末端は、他の端よりも、組み込みのために重要だと考えられる(図22)。対照的に、HAセグメント、Mセグメント、およびNPセグメントは、両端が重要であり、そしてPB2については、PB2コード配列の3’末端に対応するvRNAの5’末端が、重要である。これらの結果は、vRNAセグメント組み込みについて重要な配列が、コード領域内に配置され、従って、それぞれのセグメントに独特であることを示す。おそらく、これらの領域が、他のウイルスRNAと、塩基対形成によって相互作用し、8個のvRNAセグメントのセットのビリオン内への補充を導く。vRNAとウイルス成分との間のこの相互作用は、ウイルス特異的であり、この相互作用は、抗ウイルス化合物の開発の標的になり得る。
(実施例3)
ウイルス内容物の正しい画像を得るため、電子顕微鏡断層撮影法を行った(図11A)。50nmの厚みのビリオンの画像を集めた。次いで、ビリオンの1つの分析を行い、ビリオン内容物の3D画像を再構築した。粒子内の構造(ロッド(rod))を、それぞれの構造を見分けるために色で示す(図11B〜図11F、上、横および下からの像を示す)。ロッドの像のほとんどは切断されているが、ロッドが中央に沿って切断される1つの像については、分子全体を示す。
上に要約された結果(それぞれのウイルスセグメントが、独自の配列を含み、その独自の配列はビリオンへの組み込みのために重要であり、かつ、おそらくはウイルスの内容物の独自の形態学的特徴の形成に寄与するであろうことを、支持するデータを含め)に基づき、vRNAセグメントは、インフルエンザビリオン内に、おそらく選択的に組み込まれる。この情報は、抗ウイルス化合物の開発のための標的を同定するためだけでなく、ウイルス特異的相互作用の破壊(ウイルス複製を阻害し、弱毒化を導き得る)による弱毒化生ワクチンの調製のためにもまた、有用である。
(実施例4)
(材料および方法)
(細胞)
293Tヒト腎性幹細胞およびCOS−7細胞を、10%ウシ胎仔血清および抗生物質を含有するダルベッコ改変イーグル最小必須培地(DMEM)中で維持した。Madin−Derbyイヌ腎臓(MDCK)細胞を、5%新生仔ウシ血清および抗生物質を含有するMEM中で培養した。細胞を、37℃で、5%CO中で維持した。
(プラスミドの構築) ヒトRNAポリメラーゼIプロモーターおよびマウスRNAポリメラーゼIのターミネーターに隣接される、野生型A/WSN/33のHA遺伝子(H1N1)を含むウイルス(pPolI−WSN−HAと名付けられる)および野生型B/Lee/40を含むウイルス(pPolI−B−HAと名付けられる)の、ウイルスRNA産生のためのプラスミド構築物(pPolIと呼ぶ)の産生が、Neumannら(1999)に記載された。一連のA/BキメラHApPolI構築物を、プライマーおよびProofStartポリメラーゼ(QiAGEN)を用いたPCR増幅、およびその後の、野生型HA構築物を用いたライゲーションによって産生した(図13)。全ての構築物を配列決定し、所望でない変異が含まれないことを確認した。
(細胞培養中に発現されるHAの生物学的アッセイ)
各A/BキメラHApPolI構築物(1μg)を、Trans IT(Mirus)試薬を、他の4つのpCAGGSベースのプラスミド(3つのポリメラーゼサブユニット(PA、PB1、およびPB2)ならびにA/WSNウイルス(Neumannら,1991)の核タンパク質(NP)を発現する)(各1μg)と共に使用して、COS−7細胞内にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を、Vibrio choleraeシアリダーゼ(10U/ml)およびTPCK−トリプシン(2.5μg/ml)で、37℃で30分間処理した。次いで、細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、そして抗B/HA抗体および市販のABC検出キット(Vector laboratory)を用いて免疫染色した。また、赤血球吸着アッセイを行い、各HAのレセプター結合特性を評価した。簡潔に言うと、トランスフェクトされた細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の1%ニワトリ赤血球細胞懸濁液の中で、室温で30分間インキュベートし、次いで、観察の前に5回洗浄した。さらに、融合アッセイを行った。簡潔に言うと、トランスフェクトした細胞を、HEPES緩衝液(pH5.0)中で、37℃で5分間インキュベートし、その後、培養液中で7時間インキュベーションした。冷メタノールで固定した後、融合細胞を、上述のように免疫染色した。
(逆遺伝学)
ウイルスを、Neumannら(1999)に記載されるように、プラスミドベースのA/WSN逆遺伝学系またはプラスミドベースのB/Lee逆遺伝学系を使用して、産生した。プラスミドから産生した野生型遺伝子型を有するウイルスを、それぞれ、A/WSN−RまたはB/Lee−Rと名付け、比較のためのコントロールとして用いた。A/Bキメラウイルスを産生するため、pPolI−WSN−HAの代わりに、キメラHA PolI構築物を使用した。293T細胞から産生されたウイルスを、限界希釈により、生物学的に1回クローン化し、MDCK細胞内に、ストックウイルスを産生した。
(実験的感染)
ウイルス病原性を試験するため、セボフルランで麻酔した4週齢の雌BALB/cマウスを、A/Bキメラウイルスまたは野生型ウイルス(10TCID50/50μ1)で鼻腔内感染させた。死亡率および体重を、感染後14日間モニターした。感染3日後、幾匹かの感染マウスを、器官におけるウイルス力価を決定するため、安楽死させた。
各キメラウイルスの、野生型誘発に対するワクチンの有効性を評価するため、マウスを、キメラウイルスまたは野生型ウイルス(10TCID50/50μl)で、鼻腔内感染させた。3週間後、マウスの一群を安楽死させて血清を得、そしてウイルス特異的IgA抗体またはIgG抗体を検出するため、気管−鼻腔洗浄した。感染4週間後、残ったマウスを、50LD50の野生型ウイルス(B/Lee−R)で、麻酔下で鼻腔内誘発し、14日間、死亡率および体重をモニターした。
(ウイルス特異的抗体の検出) 血清および気管−鼻腔洗浄サンプルを、IgA抗体またはIgG抗体について、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)により、Kidaら(1982)に記載のように試験した。HI抗体もまた、レセプター破壊酵素(RDEII:Denka Seiken)による処理の後、血清サンプルを使用して試験した。
(結果)
(A/BキメラHA遺伝子の構築)
B型HAのA型ウイルス成分との適合性を決定するため、A/WSN遺伝子とB/Lee HA遺伝子との間に、一連のキメラ遺伝子を構築した(図14)。RNAセグメントの両端における非コード配列は、おそらく、RNA転写および複製のために、A型ウイルスとB型ウイルスとの間で相互転換可能である(Crescenzo−Chaigneら,1999;Desselbergerら,1980;Musterら,1981)ので、A型ウイルスの非コード配列およびB型ウイルス由来のコード配列全体を含むキメラHA遺伝子を、調製した(図14A、ANBH)。この構築物は、インタクトなB型HAタンパク質を産生する。次に、B型HAコード配列のシグナル配列および非コード配列がA型ウイルスのそれと変換されたキメラ遺伝子(ANSBH)を、調製した。この構築物はまた、細胞性シグナルペプチダーゼによるA型シグナルペプチドの除去後、インタクトなB型HAも産生する。同様に、キメラ遺伝子もまた、調製され、ここで、HAの膜貫通領域および細胞質領域コードする配列が、B型からA型に変換され(ANTBH)、従って、A/BキメラHAタンパク質をコードする。シグナルおよび膜貫通/細胞質領域の両方をコードする配列をB型からA型に変えた別のキメラ遺伝子(ANSTBH)を、調製した。この構築物は、ANTBHのキメラHAタンパク質のシグナルペプチド除去後と同じキメラHAタンパク質を生成する。さらに、キメラを、全てのB型由来の切断部位に相当する領域の上流の配列および全てのHAコード配列(ANBW)におけるAウイルス由来の下流領域の配列を含むように調製した。この構築物は、B型ウイルスのHA1領域およびA型ウイルスのHA2領域を含む、キメラHAタンパク質を生成する。最後に、ANBW構築物の範囲内で、シグナル配列がB型からA型に変え、ANBWが生じるものと同じHAタンパク質を生じるキメラ遺伝子を、調製した。
(細胞培養中に発現されるA/BキメラHAの生物学的特性)
キメラHAの機能を評価するため、各pPolI HA構築物を、PA発現プラスミド、PB1発現プラスミド、PB2発現プラスミド、およびNP発現プラスミドと共に、A型ウイルスのCOS−7細胞にトランスフェクトした。キメラHA構築物の全ては、細胞表面上で発現した。これらのHAのレセプター結合活性を試験するため、血球吸着アッセイを、行った。トランスフェクトさせた細胞を、このアッセイの前に細菌性シアリダーゼで処理し、そのレセプター結合活性を妨害するHA多糖類の側鎖における末端のシアル酸を除去した(Luoら,1999)。ANBH発現細胞、ANSBH発現細胞、ANTBH発現細胞、およびANSTBH発現細胞は血球吸着したが、他の2つの発現細胞(ANBW発現細胞およびANSBW発現細胞)は、血球吸着しなかった(表3)。同様に、前者のHAは細胞融合を誘導したが、後者はしなかった。これらの結果は、前者のHAキメラは生物学的に機能的であり、一方、後者はそうではないことを示した(おそらく、構造的変異のため)。先行の報告から予測されるように、機能性B型HAは、インタクトな野生型B型HAセグメントから、A型ポリメラーゼ複合体およびNPによって生成され(表3)、B型プロモーター構造とA型ポリメラーゼ複合体との間の適合性を確認した。
Figure 0004456169
(キメラHAを有するウイルスの産生)
インフルエンザAウイルス感染の間、キメラHA遺伝子が機能するか否かを決定するため、HA遺伝子をA/B HAキメラ遺伝子に置換した変異体WSNウイルスを、調製した。プラスミドベースの逆遺伝学は、約l0TCID50/mlの力価を有する野生型ウイルス(表3)を産生させた。pPolI−WSN−HAの代わりにpPolI−B−HAを使用した場合、感染性のウイルスは産生されなかった。生物学的に機能する4つのキメラHA構築物(表3)を、プラスミドトランスフェクト細胞の上清におけるウイルス力価から判断して異なった効率を有するにもかかわらず、感染性A型ウイルス中で首尾よくレスキューした。ANBH HAを保有するウイルスは、わずかしか複製されず、一方、ANSTBH HAを有するウイルスは、最高の効率で産生され、そして10TCID50/ml近くまで増殖した。生物学的に機能するタンパク質を発現しない他のキメラ分子は、ウイルス産生を支持しなかった。A/Bキメラウイルスを、ANBHウイルス、ANSBHウイルス、ANTBHウイルス、およびANSTBHウイルスと命名した。
産生するウイルスが、実際にB型HA外部ドメインを含むことを確かめるため、MDCK細胞を、これらのウイルスで感染させ、A型ウイルスまたはB型ウイルスのHAに対する、抗体によるその反応性について、試験した(図14)。キメラHA構築物を含むウイルスで感染させた細胞は、抗B/HA抗体および抗A/NP抗体に反応したが、抗A/HA抗体には反応せず、これらのウイルスがB型HA外部ドメインを含むことを確認した。
(細胞培養中のA/Bキメラウイルスの増殖特性)
A/B HAキメラウイルスの複製特性を決定するため、細胞を、0.01のMOIでウイルスに感染させ、そして生じたウイルスを、その増殖動態学について試験した(図15)。キメラHAを有するウイルスで、野生型Aウイルスよりよく増殖したウイルスはなかったが、ANSTBHウイルスおよびANTBHウイルスは、10TCID50/ml近くまで増殖した。A型およびB型の両ウイルスと違い、これらのキメラウイルスの全ては、免疫染色でのみ検出し得る正確なプラークを形成した(データは示さない)。
(マウスにおけるA/Bキメラウイルス)
細胞培養中のA/Bキメラウイルスの制限された複製は、これらのウイルスが、インビボで弱毒化されたことを示唆する。従って、マウスを、A/B HAキメラウイルス(l0TCID50/50μ1)で鼻腔内接種した。ストックの力価が低すぎた(約10TCID50/ml)ので、ANBHウイルスは試験しなかった。試験した他の3つのキメラウイルスのどれも、マウスに致死性ではなかった。他方、同用量の野生型Aウイルスは、全ての感染マウスを殺傷し、同用量の野生型Bウイルスは、8匹の感染マウスのうち7匹を殺傷した(表4)。キメラウイルスを、接種3日後に、肺および鼻甲介から回収し、これらのウイルスがマウス内で複製されたことを示した。興味深いことに、キメラウイルスの複製は、肺において野生型ウイルスと比較してより強く制限され、そして鼻甲介において野生型ウイルスと比較してより弱く制限される。このことは、肺におけるウイルス複製レベルと致死性との間の関連性を示唆する。ANTBHキメラウイルスおよびANSTBHキメラウイルスで感染させたマウスは、野生型Aウイルスで感染させたマウスと比較して低い程度ではあるが、体重を減少した。合わせて、これらのデータは、A/B HAキメラウイルスは、マウスにおいて弱毒化されることを示す。
Figure 0004456169
(A/B HAキメラウイルスで免疫化されたマウスの野生型ウイルス感染に対する防御)
A/B HAキメラウイルスが、B型ウイルス由来のHA外部ドメインを発現するため、これらのウイルスは、野生型Bウイルス感染に対し、感染防御免疫応答を提供することが予測される。誘発実験の前に、抗B抗体が、キメラウイルスの感染後に、マウスにおいて誘発されるか否かを決定した。接種3週間後、キメラウイルスで感染させたマウス由来の鼻腔/気管洗浄サンプル中のB型ウイルス特異的IgA抗体および血清サンプル中のIgG抗体を、ELISA試験によって検出した(図16A)。HI抗体もまた、A/B HAキメラウイルス感染マウス由来の血清サンプル中で検出した(図16B)。従って、特定の抗体応答を、キメラウイルスで感染した全てのマウスにおいて実証した(ANSBHウイルスは、より低い免疫応答しか誘発しなかった)。
キメラウイルス免疫化マウスを、免疫化4週間後、50LD50の野生型Bウイルスで誘発した(表5)。誘発後、全てのマウスが生存していたが、他方、野生型Bウイルスで誘発した際、コントロール偽免疫マウスの全ては死に、そして亜致死用量(10TCID50)のWSNウイルスで免疫化した8匹のマウスのうち2匹だけが生き残った。このことは、野生型Bウイルス感染に対する、キメラウイルス免疫化の特別な防御効果を示す。さらに、B型ウイルスは、誘発3日後にキメラウイルスで事前免疫化したマウスの鼻甲介または肺から回収されなかった(ANSBHウイルスを受けたマウスを除く(データは示さない))。
Figure 0004456169
(考察)
本明細書中で記載されるように、第1回目について、A型ウイルスの背景の中にA型HAの代わりにB型HAを有するインフルエンザウイルス(従って、A型ウイルスタンパク質およびB型ウイルスタンパク質の両方を有する)を、産生した。何がA/B HAキメラウイルスの産生のために不可欠であるか?このキメラ遺伝子は、ビリオンを維持するように転写され、かつ複製されなければならない。同じウイルス型で保存されているが、RNA転写およびRNA複製において必要とされるプロモーター配列を含む非コード領域の
両端における末端配列(Luytjesら,1989)が、A型RNAセグメントとB型RNAセグメントとの間で異なっている(Crescenzo−Chaigneら,1999;Desselbergerら,1980)。しかし、先行研究は、B型ウイルスNSセグメントの非コード配列に隣接されるレポーター遺伝子が、A型ポリメラーゼによって転写され、そして複製されたことを示している(Musterら,1991)。さらに、A型ウイルスNAのコード配列およびB型ウイルスNSの非コード配列を含むキメラ遺伝子を含むキメラA/Bインフルエンザウイルスを、産生した(Musterら,1991)。これらのデータは、A型ポリメラーゼ複合体が、A型ウイルス遺伝子のプロモーターより低い相同性であるにもかかわらず、B型NS遺伝子のプロモーター配列を認識したことを示した。
各RNAセグメントの非コード配列は、以下の2つの構造的領域を含む:全ての8個のRNAセグメントで保存されている末端配列および内部セグメント特異的配列。プロモーター活性は、主に前者の領域によって決定される(Portelaら,1999)が、全てのB型セグメントは、A型ポリメラーゼ複合体によって転写されやすく、複製されやすい。実際、この概念は、B型HAが、pPolI−B−HAを含むB型非コード領域とA型ポリメラーゼ複合体発現プラスミドおよびNP発現プラスミドとで同時トランスフェクションされた細胞において発現されることを示すデータによって、支持される(表3)。従って、インタクトなB型HAセグメントを含むウイルスを産生できないこと(すなわち、HA型間の類別)は、RNA転写およびRNA複製の欠如によって説明できない。
キメラウイルスの産生の制限は、RNAセグメントのビリオンへの取り込みのレベルに由来し得る;ウイルス産生のために、キメラセグメントは、ビリオン内にパッケージされなければならない。A型NSセグメントの非コード領域は、RNAパッケージングシグナルを含むことが報告されているが(Luytjesら,1989)、インフルエンザウイルスRNAセグメントのパッケージングメカニズムは、完全に明らかにされていない。ビリオン取り込みに必要であるRNAセグメントの配列または構造的特徴は、ほとんど未知である;しかし、近年、A型NA RNAセグメントは、そのビリオン取り込みシグナルをコード領域の両端に保有することが示された(Fujiiら,2002および実施例2)。この研究において、ANSBHウイルスは、ANBHより効率的に複製される(図14および表3)。これらの2つのウイルスにおいて発現されるHAタンパク質は相同であるべきであるので、複製効率における違いは、RNAパッケージング効率からもたらされ得る。すなわち、効率的なRNAパッケージングに必要な構造的特徴は、HAのシグナル配列をコードする領域に存在し得る。同様に、ANTBHウイルスとANSTBHウイルス(これらもまた同一なHAタンパク質を発現する)との間の複製効率の相違もまた、説明され得る。実際、A型HAセグメントのパッケージングシグナルは、コード領域の両端に位置する(非公開データ)。興味深いことに、A型ウイルスNAの非コード配列およびB型NAのコード配列を含むキメラNA遺伝子は、A型ウイルスにおいてレスキューされなかった(Ghateら,1999)。この不全は、RNAパッケージングシグナルを含むA型NAコード領域の欠損によって説明され得、上述の近年の知見と一致する(Fujiiら,2002)。
A/B HAキメラウイルスの産生についてのタンパク質レベルでの重要な相互作用もまた、存在する;キメラタンパク質は、ビリオン内にパッケージングされるべきであり、そしてウイルス複製のために機能的であるべきである。トランスで供給されるB型NAタンパク質は、A型NAの機能に取って代わり得、そしてA型ビリオン内に取り込まれ得て、細胞培養物におけるNA欠損A型ウイルスの多周期の複製を支持する(Ghateら,1999)。しかし、上で議論したように、B型NAを含むA型ウイルスは、産生されなかった。キメラA/B HAウイルスは産生されたが、これらは、野生型ウイルスと比較して弱毒化された。この弱毒化は、B型HAのレセプター結合活性とA型NAのシアリダーゼ活性との間の最適以下のバランスに由来し得る。さらに、HAにおけるシグナルペプチドおよび/または膜貫通/細胞質ドメインの置換は、その構造を改変していてもよい。例えば、HAにおける膜貫通/細胞質ドメインは、効率的なビリオンアセンブリを導く他のウイルス成分(M1など)と相互作用し得る(Aliら,2000;Cenamiら,1996;Jinら,1997;Zhangら,2000)。従って、インタクトなB型RNAを保有するA型ウイルスの産生不能またはその逆は、RNAセグメント取り込みのレベルの制限、またはタンパク質の機能的な相互作用レベルの制限、あるいはこれら両方によって、説明され得る。
A/B HAキメラウイルスは、マウスにおいて、肺において複製を制限されることで弱毒化され、そしてマウスに、野生型Bウイルス感染に対する感染防御免疫を与える。このことは、インフルエンザワクチン開発についての新規のアプローチを示唆する。現在のところ、二価の不活性化インフルエンザワクチンの皮下投与は、世界標準であり、なおその効率は、最適以下である。このことは、主に、上気道(インフルエンザウイルスが最初に進入する)における粘膜免疫の不満足な誘導に起因する(Waveningら,2001)。従って、これらのワクチンは、ウイルス感染を阻害しないが、これらは質病の重篤さを低減する。これらの不活性化ワクチンと違い、生ワクチンは、粘膜免疫応答および細胞傷害性T細胞免疫応答の両方を誘導する。本明細書中で記載される研究は、HA遺伝子のキメラ操作が、種々の程度のウイルス弱毒化を制御し得ることを示唆する。従って、このアプローチは、弱毒化と免疫原性との間の適切なバランスを有する生ワクチン系統の産生を許容する。あるいは、A/BキメラHAは、感冒適応インフルエンザAウイルス内に取り込まれ得、この感冒適応インフルエンザAウイルスの弱毒化変異は、よく特徴付けられる(Maassabら,1999)。現存する感冒適応ワクチンは、A型ウイルスとB型ウイルスの混合物である。潜在的に、2つのウイルス間の干渉は、ワクチン効率に影響するが、この問題は、ウイルス用量の割合の適正化によって取り組まれている。A/BキメラHAを有するA型ウイルスは、2つの弱毒化ウイルスよりむしろ1つの弱毒化ウイルスに基づいて、生インフルエンザワクチン産生を許容し、A型ウイルスとB型ウイルスとの間の干渉の可能性を除去する。
従って、A型ウイルスとB型ウイルスとの混合を有する弱毒化生ワクチン(B型ワクチン系統についての弱毒化変異における限られた情報しか有さない)と対照的に、A型ウイルスの背景にB型HAおよびB型NAを含むウイルスが、産生され得る。このアプローチは、A型およびB型のHAおよびNAの発現について明確な弱毒化変異を有するマスターワクチン系統に基づき、ワクチン産生を許容する。さらに、ウイルスセグメントのパッケージングシグナルの知見もまた、改善型生弱毒化インフルエンザワクチンの開発を、促進する。
(実施例5)
(材料および方法)
(細胞およびウイルス)
293Tヒト腎臓幹細胞(サルウイルス40T抗原の遺伝子が挿入された293株の誘導体)を、10%ウシ胎仔血清(FCS)で補充したダルベッコ改変イーグル培地内で維持した。ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、およびMadin−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞について、5%のFCSを含有するDMEM、ならびに10%および5%の新生仔ウシ血清を含有するMEMを、それぞれ使用した。全ての細胞を、5%CO中で37℃で維持した。A/WSN/33(H1N1)(WSN)ウイルスを、Neumannら(1999)に記載されるように、逆遺伝学によって産生し、そしてMDCK細胞内で増殖させた。逆遺伝学によって産生したVSVインディアナ(Indiana)株を、BHK細胞内で増殖させた。
(逆遺伝学)
インフルエンザウイルス様粒子(VLP)および変異体インフルエンザAウイルスの産生のために、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーターおよびマウスRNAポリメラーゼIターミネーターの制御下(PolIプラスミドと呼ぶ)のWSNウイルス遺伝子のcDNAを有するプラスミド、および真核生物タンパク質発現ベクターpCAGGS/MCS(ニワトリβ−アクチンプロモーターによって制御される)を、使用した。簡潔には、PolIプラスミドおよびタンパク質発現プラスミドを、トランスフェクション薬剤と混合した。Trans IT LT−1(Panvera、Madison、WI)を、15分間室温でインキュベートし、Opti−MEM I(GIBCO/BRL)中で培養した1×10の293T細胞に加えた。6時間後、DNAトランスフェクション薬剤混合物を、0.3%BSAおよび0.01%FCS含有Opti−MEM Iと置換した。48時間後、上清中のVLPまたは変異体インフルエンザAウイルスを、回収した。この研究において産生されたトランスフェクト体は、全て、変異体HA vRNAセグメントを、WSNウイルスの他のvRNAセグメントと共に含み、そして変異体HA vRNAセグメントの名で命名される(例えば、HA(0)GFP(0)RNAセグメントを含むVLPは、HA(0)GFP(0)VLPと名付けられる)。
(プラスミドの構築)
HA vRNAの3’非コード領域、増強緑色蛍光タンパク質(GFP、Clontech)の相補的コード配列、およびHA vRNAの5’非コード領域を含むネガティブ−センスRNAを産生するために、pPolIHA(0)GFP(0)を使用した。簡潔には、GFP遺伝子を、BsmBI部位およびHAの3’非コード配列または5’非コード配列を含むプライマーを用いたPCRによって増幅し、BsmBIで切断し、そしてPolIプラスミドのBsmBI部位内にクローン化した。このプラスミドの細胞への導入は、GFPコード配列をネガティブ−センス方向でHA vRNAの5’非コード領域および3’非コード領域に隣接して含むRNAを生じる。
pPolIHA(468)GFP(513)を、以下のように作製した:WSN vRNAの産生のためのpPolIHAを、背中合わせのプライマーであるBam500R(5’−GCGGATCCTCCCCTATGGGAGCATGATAC−3’;配列番号6)およびXba1218F(5’−GCTCTAGAAACTCTGTTATCGAGAAAATG−3’; 配列番号7)を用いた逆PCRによってまず増幅した。PCR産物を、BamHIおよびXbaIで切断し、次いで、GFP遺伝子を、BamHI部位およびXbaI部位内にクローン化した。生じたプラスミド、pPolIHA(468)GFP(513)を、HA vRNAの3’非コード領域およびHA vRNAの3’コード領域の468塩基、GFPコード配列、HA vRNAの5’コード領域の513塩基、HAvRNAの5’非コード領域を含む、ネガティブ−センスRNAの産生のために使用した。一連のHA欠損変異体もまた、逆PCRによって、同じ様式で産生された。この変異体は、HAコード領域に由来するヌクレオチドの数に従って命名した。例えば、HA(9)GFP(80)RNAセグメントは、3’HA非コード領域、HAコード配列(N末端領域に対応する)由来の9個のヌクレオチド、GFPオープンリーディングフレーム、HAコード配列由来(C末端領域に対応する)の80個のヌクレオチド、および5’HA非コード配列を含む。全てのプラスミド構築物を配列決定し、PCRによって望まない変異が挿入されていないことを確かめた。
HA vRNAの3’非コード領域、V SVGの相補的コード配列、およびHA vRNAの5’非コード領域を含むネガティブ−センスRNAを産生するために使用したpPolIHA(0)VSVG(0)を、PCRによって産生した。簡潔には、VSV G遺伝子を、テンプレートとしてpCAGGS−VSVGを、BsmBI部位およびHAの3’非コード配列またはHAの5’非コード配列を含むプライマーを使用するPCRによって増幅した。次いで、PCR産物を、BsmBIで切断し、そしてpHH21ベクターのBsmBI部位内にクローン化した。pPolIHA(9)VSVG(80)を、VSV Gのコード配列の、pPolIHA(9)GFP(80)のBamHI部位およびXbaI部位へのクローニングによって作製した。NA vRNAの3’非コード端および61 N−末端NAコドンを保有する融合タンパク質をコードする相補配列、GFP、2つの連続的停止コドン(TAA−TAG)、ならびにNA vRNAの5’端の185塩基を含むpPolINA(183)GFP(157)を、以下のように作製した。WSN
NA遺伝子の203〜1109(ポジティブセンス)に対応する、pT7Blue−NA中の領域を、まず、逆PCRによってBglIIと置換した。次いで、GFP遺伝子を、このBGlII部位および1226位(野生型NA遺伝子において)のStuI部位内に、NAタンパク質のインフレームでクローン化した。次いで、NA(183)GFP(157)遺伝子を、PolIプラスミドpHH21のBsmBI部以内に挿入した。
ネガティブ−センスNA(183)GFP(157)Met(−)RNAの産生のために使用したpPolINA(183)GFP(157)Met(−)(NAタンパク質の開始コドンを欠く)を、以下のように産生した。pPolINA(183)GFP(157)におけるNA(183)GFP(157)のATG開始コドンおよび別のATG(15番目のコドン)を、インビトロ部位特異的変異誘発によって、GCGに変異した(GeneEditor、Promega)。生じた構築物pPolINA(183)GFP(157)Met(−)は、3’NA非コード領域 (19ヌクレオチド)、N−末端NAコード領域に対応する183ヌクレオチド、GFPオープンリーディングフレーム2つの連続した停止コドン(TAA−TAG)、C−末端NAコード領域に対応する157ヌクレオチド、および5’NA非コード領域 (28ヌクレオチド)を含み、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーターおよびマウスRNAポリメラーゼIターミネーターの制御下である。
(免疫染色アッセイ)
インフルエンザVLPによる感染の16時間後、細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、そして3.7%ホルムアルデヒド(PBS中)で室温で20分固定し、その後、0.1%TritonX−100で処理し、そして加工した。VLP産生の効率を試験するため、10個の細胞を、プラスミド−トランスフェクトした293T細胞の培養上清0.1mlと共にインキュベートし、そして免疫染色アッセイによって検出したNP陽性細胞の数を、感染16時間後に記録した。
(ウエスタンブロッティング)
VLPまたは変異ウイルスを、4℃で、50,000×gで1.5時間遠心沈殿した。濃縮したVLPまたは濃縮したウイルスを、溶解緩衝液(0.6M KCl、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、0.5%Triton X−100)中に懸濁した。溶解緩衝液を、15%SDS−ポリアクリルアミドゲルに置き、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブレン上にエレクトロトランスファーし、PBS中の5%スキムミルクで、4℃で一晩ブロックし、抗WSNウイルスポリクローナル抗体、抗HAモノクローナル抗体、または抗VSVGモノクローナル抗体と共に、室温で1時間インキュベートした。このメンブレンを、0.05%Tween−20含有PBSで3回洗浄した。結合した抗体を、VECTASTAIN ABCキット(Vector)およびKonica immunostaining kit(Konica)を用いて検出した。
(ノーザンハイブリダイゼーション)
PolIプラスミドにトランスフェクトさせた293T細胞中に存在するvRNAを、トランスフェクションの24時間後、Isogen RNA抽出キット(Nippon Gene、Tokyo、Japan)を用いて抽出した。RNAを、グリオキサール/DMSO/リン酸緩衝液中で、50℃で1時間グリオキシル化し、10mMリン酸化緩衝液(pH 7.0)中で、1.0%アガロースゲル上の電気泳動によって分離した。RNAを、ナイロンメンブレン上にブロットし、そしてDIGオリゴヌクレオチドテーリングキット(Roche)を使用して標識したGFP配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ(ATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGG;配列番号8)(10pmol)で、37℃で30分間ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションを、GFPプローブを用いて、Easy Hyb(Roche)中で、42℃で一晩行った。RNAのバンドを、DIG核酸検出キット(Roche)を使用して、検出した。簡潔には、ハイブリダイズしたメンブレンを、洗浄緩衝液(0.1Mマレイン酸、0.15M
NaCl、0.3%Tween20(pH7.5))で洗浄し、1%ブロッキング試薬で室温で30分間ブロックし、そしてアルカリホスファターゼと結合する抗DIG抗体(1:5000)と共に、室温で30分間インキュベートした。次いで、このメンブレンを、洗浄緩衝液で洗浄し、そしてニトロブルーテトラゾリウムクロリド/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−リン酸(NBT/BCIP)と共に、検出緩衝液(0.1M Tris−HCl、0.1M NaCl、pH 9.5)中で、室温で暗所でインキュベートした。RNAバンドを、DIG核酸検出キット(Roche)を使用して、検出した。コントロールRNAを、偽トランスフェクトした293T細胞から抽出した。
(トランスフェクトウイルスの複製可能特性)
24ウェルプレートの2連のウェル中のBHK、CHO、またはMDCK細胞を、ウイルスで感染させ、0.01%FCS含有のMEM培地をかぶせ、そして37℃でインキュベートした。別々の時期に、上清を、MDCK細胞上のプラークアッセイにおいて、感染性ウイルスについてアッセイした。
(結果)
(HA vRNAのコード領域は、ビリオン内へのHAセグメントの取り込みに必要である)
HA vRNAのコード領域が、NA vRNAに関して、そのビリオン取り込みに必要であるか否かを決定するため、2つのプラスミドを構築した:HA vRNAの3’非コード領域および5’非コード領域ならびにGFPコード配列しか含まないpPolIHA(0)GFP(0)、およびヌクレオチド500位〜1218位でHA配列が欠失した後でGFPコード配列がHA遺伝子内にインフレームで(ポジティブセンスまたはポジティブ方向で)挿入されるpPolIHA(468)GFP(513)(図17)。後者の構築物は、3’HA非コード領域(33ヌクレオチド)、N−末端コード領域に対応する468ヌクレオチド、停止コドンを有するGFPオープンリーディングフレーム、C−末端HAコード領域に対応する513ヌクレオチド、および5’HA非コード領域 (45ヌクレオチド)を保有する。生じた融合タンパク質は、HAのN−末端156アミノ酸およびGFP配列全長を含む。
VLPを保有するこれらの変異HA vRNAを産生するため、293T細胞を、pPolIHA(0)GFP(0)またはpPolIHA(468)GFP(513)および残留インフルエンザウイルスRNAセグメントの産生のための7つのRNA PolIプラスミドならびに9つのウイルスタンパク質(すなわち、PA、PB1、PB2、NP、HA、NA、M1、M2、およびNS2)のためのタンパク質発現プラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクト48時間後、293T細胞培養物の上清中のVLPを回収し、そしてMDCK細胞を感染させるために用いた。生じたVLPが変異体HAを有するため、これらは、GFPおよびHAを除く全てのウイルスタンパク質を発現した。結果として、感染性病原ウイルスは、全く産生されなかった(データは示さない)。変異体HA vRNAのビリオン取り込みの効率を、感染16時間後に、GFP発現細胞数(すなわち、GFP遺伝子をコードするセグメントを有するVLPの数)を、NPを発現する細胞数(すなわち、全ての感染VLPの数)で割ることで、決定した。pPolIHA(468)GFP(513)でトランスフェクトした293T細胞の培養上清中の全ての感染VLPの力価(すなわち、NP陽性細胞の数)は、7.4×10感染性VLP/mlであり、そしてHA(468)GFP(513)RNAを含むVLPの力価(すなわち、GFP陽性細胞の数)は、3.2×10VLP/mlであった。これらの結果は、全ての感染VLPの42.8%が、有する変異体HA vRNAを産生したことを示す(図18)。対照的に、VLPの3.9%だけしか、HA(0)GFP(0)RNAセグメントを保有しなかった(図18)。これらの結果は、HA vRNAのコード領域が、HAセグメントのインフルエンザビリオンへの取り込みに必要であることを示唆した。
(HA vRNAのコード領域の3’端および5’端の両方が、HAセグメントのビリオン内への取り込みのために重要である)
以前に、NA vRNAコード領域の3’端が、5’端よりも、ビリオン取り込みにおけるより重要な役割を果たすことを示した。従って、3’端、5’端、または両端のいずれが、HA vRNAセグメントのビリオン内への取り込みに重要であるかを、決定した。この問題に取り組むために、HA vRNAコード領域の3’末端を欠失したHA(0)GFP(1011)遺伝子、およびHA vRNAコード領域の5’末端を欠失したHA(966)GFP(0)遺伝子を調製し(図17)、そしてこれらのHA vRNAのビリオン取り込みを、上述のように試験した。プラスミド−トランスフェクト細胞中の両vRNAの量は、HA(468)GFP(513) vRNAの量に匹敵し得る(データは示さない)が、HA(0)GFP(1011)およびHA(966)GFP(0)の両セグメント取り込み効率は、それぞれわずか6.8%および8.4%であった(図17)。このことは、HA vRNAコード領域の3’末端および5’末端が、HAセグメントのビリオン取り込みにおいて、重要な役割を果たすことを示す。
HA vRNAのそのビリオン内への取り込みに重要な領域をさらに決定するため、3’コード領域および/または5’コード領域におけるさらなる欠失を有する短縮型HA vRNAを保有する、一連のVLPを産生した(図17)。次いで、変異体HA vRNAのVLPへの取り込み効率を、決定した。3’端にわずか15ヌクレオチドしか残さず、5’端に268ヌクレオチドを残すさらなる欠失は、HA vRNA取り込みの効率に影響しなかった(HA(468)GFP(513)をHA(15)GFP(268)と比較した場合)ため、さらなる欠失構築を、pPolIHA(15)GFP(268)(HAコード領域の3’端に15ヌクレオチドを有し、5’端に268ヌクレオチドを有する)を用いて産生した。vRNA取り込みの程度は、欠失の程度が上がるにつれ徐々に下がったが、5’HAコード領域における80ヌクレオチドは、HA vRNAの効率的なビリオン取り込みに、(HA(15)GFP(80)をHA(15)GFP(75)と比較して)最も必要でないと考えられた。さらなる欠失分析は、HA(9)GFP(80)(HAコード領域の3’端に9ヌクレオチド残基を残す)が、HA vRNAの効率的なビリオン取り込み(65%以上)をもたらすが、トランスフェクトした細胞中に存在するHA(9)GFP(80) vRNAのレベルは、HA(0)GFP(0) vRNAのレベルとかなり異なっていたことを実証した(図17および図18)。これらの結果は、HAコード領域の3’端における9ヌクレオチドおよびHAコード領域の5’端における80ヌクレオチドは、効率的なビリオン内へのHA vRNA取り込みに必要であることを示す。
(そのHA端およびNA端が外来遺伝子のコード配列を含む、新規のインフルエンザAウイルス)
HAセグメントがビリオンに取り込まれるために必要な配列が決定されたため、これらの配列に隣接する外来遺伝子が、インフルエンザAウイルスに取り込まれ、繰り返し継代の間維持され得るか否かを試験した。外来遺伝子のモデルとしては、VSV Gコード配列を、GFP配列の代わりに、pPolIHA(9)GFP(80)のBamHI部位およびXbaI部位の中に挿入した。生じた構築物を、pPolHA(9)VSVG(80)と名付けた。これは、3’HA非コード領域(33ヌクレオチド)、N−末端HAコード領域に対応する9ヌクレオチド、停止コドンを有するVSV Gオープンリーディングフレーム(1552ヌクレオチド)、C−末端HAコード領域に対応する80ヌクレオチド、および5’HA非コード領域(45ヌクレオチド)を有した。コントロールとして、1つのベクターを構築した。このベクター、pPolIHA(0)VSVG(0)は、3’非コード領域および5’非コード領域だけを保有し、HA vRNAコード領域を有さない。VSV Gタンパク質は、HAタンパク質およびNAタンパク質の両方と置換されるべきであるため、NAコード領域は、外来遺伝子と置換され得る。従って、GFPコード配列およびNAセグメントの効果的なビリオン取り込みに必要なNAコード配列を有する組換えNA RNAセグメントの産生のために、pPolINA(183)GFP(157)Met(−)を、構築した。この構築物において、NAオープンリーディングフレームの開始コドンを、ATGからGCGへの置換によって破壊した。従って、GFPオープンリーディングフレームは、自身の開始コドンから翻訳される。
293T細胞を、HA(9)VSVG(80)セグメントおよびNA(183)GFP(157)Met(−)セグメントの両組換え体、および残りの6つのウイルスRNAセグメントの産生のためのプラスミド、ならびにインフルエンザウイルスポリメラーゼタンパク質(NP、M1、M2、NS2、およびVSV G)の発現のためのプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクト72時間後、293T細胞の上清を回収し、そしてMDCK細胞を使用してプラークアッセイを行った。HA(9)VSVG(80) RNAセグメントおよびNA(183)GFP(157)Met(−) RNAセグメントを有するトランスフェクト体ウイルス(VSVG(HA)GFP(NA)ウイルスと名付けた)は、生存可能で、そしてトリプシン非存在化でGFPを発現するプラークを産生した(図19)。免疫染色は、プラークに含まれるVSV Gは発現するが、HAは発現しないことを確認した(図19)。VSVG(HA)GFP(NA)ウイルスで感染させられたがコントロールWSNウイルスでは感染させられていない細胞もまた、GFPを発現した。対照的に、pPolIHA(0)VSVG(0)プラスミドがpPolIHA(9)VSVG(80)の代わりに使用された場合、プラークは観察されなかったが、GFPおよび/またはNPタンパク質を発現する単独の細胞を、MDCK細胞において検出した(データは示さない)。その上、VSVGおよびGFPの両方が、5回の連続した継代の後、VSVG(HA)GFP(NA)ウイルスに感染したMPCK細胞において発現され続けることを確認した(データは示さない)。5回の継代の後で残っているVSVG(HA)GFP(NA)ウイルスのHA(9)VSVG(80) RNAセグメントのHA領域において、変異は検出されなかった。しかし、3つの変異が見出された。VSVGのアミノ酸配列中の57位においてIleからLeuへ、95位においてGlnらHisへ、そして499位においてGlnから停止コドンへ。野生型VSV Gタンパク質は、細胞質ドメインの29残基を有するが、このドメインの最後の13残基を、499位のGlnから停止コドンへの変異のために欠失させた。
VSVG(HA)GFP(NA)ウイルスの生物学的特性。VSV Gタンパク質が他のインフルエンザウイルスタンパク質から構成されるビリオンに実際に取り込まれるか否かを決定するために、濃縮したVSVG(HA)GFP(NA)ウイルスおよびWSNウイルス(コントロール)に対してウェスタンブロット分析を行った。図20に示すように、VSV Gタンパク質は、VSVG(HA)GFP(NA)ビリオン中で検出されたが、HAは検出されず、VSV Gタンパク質のビリオンの取り込みを確認した。
次に、VSVG(HA)GFP(NA)ウイルスの増殖特性を、BHK細胞、CHO細胞、またはMDCK細胞において調べた。細胞を0.001のMOIで感染させ、そして
培養上清中のウイルスの収量を、MDCK細胞に対するプラークアッセイによって、37℃での感染後の種々の時点で決定した。WSNウイルスの力価よりも低いとはいえ、BHK細胞およびMDCK細胞の両方におけるVSVG(HA)GFP(NA)ウイルスの最大力価は、1mlあたり少なくとも10PFUに達した(図21)。CHO細胞におけるWSNウイルスの乏しい増殖とは対照的に、VSVG(HA)GFP(NA)ウイルスは、これらの細胞においても、試験した他の2つの細胞株と同様に増殖した(図21)。さらに、細胞株の各々における複製の間に、VSVG(HA)GFP(NA)ウイルスに感染した細胞は、GFPを発現した。
これらの結果は、HA(9)VSVG(80)セグメントおよびNA(183)GFP(157)Met(−)セグメントの両方が、インフルエンザビリオン中に効率的に取り込まれること、ならびに2つの外来遺伝子が、反復される継代の間にインフルエンザA ウイルス中で安定して維持され得ることを示した。
(考察)
ゲノムパッケージング機構の決定は、インフルエンザウイルスの生活環を理解するため、および外来タンパク質の発現用のインフルエンザウイルスベースのベクターの開発のために重要である。本研究では、HA vRNAにおけるコード領域の3’末端および5’末端の両方における配列が、このセグメントのビリオンへの効率的な取り込みに必要とされることが実証された。さらに、この知見を用いて、HA vRNAおよびNA vRNAのそれぞれのビリオン取り込みに必要な配列と隣接した、VSV GおよびGFPのコード配列を含む2つの組換えRNAセグメントを保有する新規のインフルエンザベースのウイルスを作製して、2つの外来遺伝子の安定な発現を実証した。
無関係な感染因子由来の遺伝子または遺伝子部分の発現のためのインフルエンザAウイルスに基づくワクチンベクターの開発に関して、いくつかのアプローチが報告されている。短いポリペプチドが、HAの抗原部位に挿入されて、挿入されたペプチドに対するポジティブな免疫応答がもたらされている。より大きなポリペプチドおよびタンパク質の発現に関して、これらの外来遺伝子は、インフルエンザウイルス遺伝子のうちの1つに挿入されており、インフルエンザウイルス遺伝子において、この外来タンパク質は、内部リボソーム侵入部位(IRES)または口蹄疫ウイルス2Aプロテアーゼを利用することにより発現された。ここで、NA vRNAおよびHA vRNAにおいてシス作用性ビリオン取り込みシグナルを利用する、外来タンパク質の発現のための新規の系を確立した。このシステムは、インフルエンザベースのウイルスが1.5kbよりも大きな外来遺伝子(例えば、VSV G)を取り込むことを可能にし、このベクター系の可能性を実証した。マウスにおいて複製能力のないインフルエンザVLPのワクチン効力が示されているので、無関係の病原体由来の遺伝子を含む組換えRNAセグメントを有する複製能力のないインフルエンザベースのVLPは、有望なワクチンとして役立ち得る。この可能性は、生ワクチンウイルスの野生型への何らかの復帰変異が全く許容されないか、または不活化ワクチンの効力が、粘膜免疫応答および細胞傷害性Tリンパ球応答の制限された誘導に起因して制限され得る場合、HIV感染、口蹄疫感染および他の感染に対するワクチン接種のために特に魅力的である。従って、このアプローチを用いて、インフルエンザウイルスは、ワクチンベクターとして用いられ得る。例えば、HAの代わりにHIV gp160コード領域、そしてNAの代わりにgagコード領域を含むウイルスを作製し得る(図24および図25)。さらに、VSV GがHAと置き換わる場合、M2はもはや必要とされず、それゆえ、3つのウイルス遺伝子は、異種遺伝子で置換され得る。例えば、HAはHIV
gp160で、NAはgagで、そしてM2はnefで置換され得る。得られる組換えインフルエンザウイルスは、ワクチンとして、または別のHIVワクチン(例えば、HIV DNAワクチン)のためのブースターとして用いられて、粘膜免疫を含めて免疫を増強または誘導し得る。あるいは、ワクチンは、NAコードセグメントが別の病原体のコードセグメント(例えば、ヘルペスウイルスの糖タンパク質D)で置換されている、組換えインフルエンザウイルスに基づく多価ワクチンであり得、このワクチンは、インフルエンザウイルス感染およびヘルペスウイルス感染に対する防御免疫応答をもたらし得る。
アデノウイルス、レトロウイルス、およびポックスウイルスに由来するウイルスベクターは、外来遺伝子を標的細胞へと効率的に導入する。これらのウイルスは、DNAを含むか、または宿主染色体へと組み込まれ得るDNA複製中間体を有するので、有害な結果の危険性が除去され得ない。対照的に、このような組込みは、感染した細胞中でDNA相がないことに起因して、インフルエンザウイルスにおいては見込みがない。さらに、VSVG(HA)GFP(NA)ウイルスは、HA切断のためにトリプシンを必要としないので、代表的なインフルエンザウイルスとは異なり、これは、より広範な用途を示し得る。さらに、所望の細胞親和性を有する組換えウイルスは、ビリオン表面上の糖タンパク質を変更することにより作製され得る。従って、ビリオン取り込みのためにvRNAセグメント中のシス作用性シグナルを利用する系は、複数の外来遺伝子を標的細胞へと送達し得る組換えインフルエンザベースのウイルスベクターの設計を可能にする。
上皮細胞からのウイルスのアセンブリおよび放出は、いくつかのウイルスにおいて二極化しており、先端表面または基底外側表面のいずれかにおいて選択的に生じる。二極化したウイルス出芽は、ウイルス感染の病因を決定する際に役割を果たすと考えられる。インフルエンザAウイルスは、感染した上皮細胞から先端に出芽し、そして個々に発現されたHAタンパク質、NAタンパク質、およびM2タンパク質はまた、細胞の先端表面へと標的化される。他方、VSVは、感染した細胞の基底外側表面から放出され、そしてVSV
Gタンパク質は、基底外側表面へと輸送される。本研究では、HAタンパク質およびNAタンパク質の代わりにVSV Gを保有する組換えVSVG(HA)GFP(NA)ウイルスを、成功裏に作製した。しかし、この組換えウイルスのVSV Gタンパク質は、点変異に起因して、細胞質ドメインの最後の13残基を欠いていた。細胞質ドメインにおけるこれらの13残基の欠失は、基底外側表面よりも先端表面へとより効率的に輸送されるタンパク質を生じることが公知である。それゆえ、VSVG(HA)GFP(NA)ウイルス中のVSV Gタンパク質へと導入された変異は、先端表面へのその効率的な輸送を促進して、VSVG(HA)GFP(NA)ウイルスの効率的な出芽をもたらすようであった。
インフルエンザ汎発流行は通常、HAおよび/またはNAが以前に循環した株のHAおよび/またはNAとは免疫学的に異なるウイルスがインフルエンザウイルスRNAセグメントの再編によって出現した場合に生じる。HA vRNA、NA vRNA、M vRNAおよびNS vRNA内のコード領域の3’末端および5’末端における配列は、ビリオンへのそれらの効率的な組込みに必要とされる。(大概はウイルスリボ核タンパク質複合体としての)vRNAセグメントのパッケージングは、ウイルスRNAセグメント間でトランスで生じるRNA−RNA相互作用によって媒介される。そうであれば、各セグメント内の特異的組込みシグナルがRNAセグメントの再編を制限し得る。経験的に、インフルエンザウイルスRNAセグメントがランダムには再編しないことが公知である。タンパク質間の機能的相互作用(例えば、ポリメラーゼ複合体、HA−NAおよび切断可能なHA−M2機能的会合の形成)は、ランダムな再編を制限すると考えられる。タンパク質レベルでの再編に対するこれらの制限に加えて、類似の制限がRNAレベルで存在し得る。この状況では、1957年および1968年の両方の汎発流行において、PB1遺伝子が、HA遺伝子および/またはNA遺伝子に加えて、鳥類ウイルス由来のヒトウイルス中に導入されたことは興味深い。このことは、HA RNAセグメントとPB1 RNAセグメントとの間の可能な連鎖を示唆する。他のRNAセグメントのビリオン組込みのための重要な領域のさらなる特徴付けは、RNAセグメントの再編を理解する手掛かりを提供して、インフルエンザAウイルスの新たな汎発流行株の出現の予測をもたらし得る。
まとめると、vRNAパッケージングシグナルに関する情報を用いて、新規のインフルエンザワクチンおよびインフルエンザベースのワクチンベクターが開発され得る。
(実施例6)
図26に図示されるように、タンパク質(例えば、NS2)をコードするインフルエンザウイルス様RNAを構成的に発現する細胞株が作製され得るが、このRNAは、取り込みシグナルを欠く。NS2コード配列を欠くウイルス(NS2 KO)もまた調製され得る(Neumannら,2000;Watanabeら,2002)。NS2 KOウイルスが正常細胞に感染した場合、子孫のウイルスは生成されない。なぜなら、このウイルスはNS2を欠くからである。対照的に、NS2 KOウイルスが、NS2をコードするが取り込みシグナルを欠くインフルエンザウイルス様RNAを発現する細胞に感染した場合、NS2は、ウイルス感染の際に発現され、そして子孫NS2 KOウイルスが生成される。しかし、NS2をコードするインフルエンザウイルス様RNAは、NS2 KOウイルス中に組み込まれない。なぜならこれは、ビリオン取り込みシグナルを欠くからである。従って、NS2 KOは、正常細胞において複製能力がないままである。この系は、複製能力のないウイルスのためのプロデューサー細胞の産生のために用いられ得る。この系を用いて、細胞に対する毒性がウイルスタンパク質を構成的に発現する細胞株の生成を代表的に抑制するウイルスタンパク質を発現するプロデューサー細胞が作製され得る。従って、本願においては、ビリオン取り込みシグナルの知見を用いて、特定のセグメントがビリオン中に組み込まれるのを可能にしない系を設計し得る。
(参考文献)
Figure 0004456169
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全ての刊行物、特許および特許出願は、本明細書中に参考として援用される。上記の明細書において、本発明は、その特定の好ましい実施形態に関連して記載されており、そして多くの詳細が例示の目的のために示されているが、本発明がさらなる実施形態で可能であることおよび本明細書中に記載された詳細の特定のものが本発明の基本原則から逸脱することなくかなり変更され得ることが当業者に明らかである。
レクチン耐性細胞株の結合。各細胞株について、細胞をジゴキシゲニン標識したMaakia amurensis(MAA)またはSambucus nigra(SNA)レクチンとともにインキュベートし、その後、フルオレセインイソチオシアネート標識した抗ジゴキシゲニン抗体とともにインキュベートし、次いでFACSにより分析した。太線、MAA レクチンの結合;細線、SNA レクチンの結合;斜線を引いた輪郭、ネガティブコントロール(レクチン非添加)。 レクチン耐性細胞株の結合。各細胞株について、細胞をジゴキシゲニン標識したMaakia amurensis(MAA)またはSambucus nigra(SNA)レクチンとともにインキュベートし、その後、フルオレセインイソチオシアネート標識した抗ジゴキシゲニン抗体とともにインキュベートし、次いでFACSにより分析した。太線、MAA レクチンの結合;細線、SNA レクチンの結合;斜線を引いた輪郭、ネガティブコントロール(レクチン非添加)。 AL3(MaKS)−13変異体およびK4(MaKS)−13変異体のNA遺伝子の構造。(A)AL3(MaKS)−13は、NA遺伝子コード配列の大部分を取り除いた936個のヌクレオチド欠失(塩基220〜1253)を含む。この変異はまた、欠失を超えてフレームの2塩基中にTAG終止コドンをもたらすので、遺伝子は、細胞質テイル、膜貫通領域、柄およびNAのヘッドの部分に対応する66個のアミノ酸ペプチドしかコードしない。(B)K4(MaKS)−13 NA遺伝子は、NA遺伝子コード配列の大部分を取り除いた1,066ヌクレオチド欠失(塩基130〜1193)を含む。この変異は、欠失を超えてフレームの4塩基中にTAG終止コドンをもたらすので、遺伝子は、NA遺伝子の細胞質テイル、およびNA遺伝子の膜貫通領域に対応する38個のアミノ酸ペプチドしかコードしない。 親AM2AL3ウイルスおよび親K4ウイルスおよびAL3(MaKS)−13変異体およびK4(MaKS)−13変異体のシアリダーゼ活性。各サンプルについて、ウイルス(5×10PFU)を、蛍光発生的なシアリダーゼ基質(4−メチルウンベリフェリル−α−N−アセチルノイラミン酸)の存在下で37℃で1時間、二連でインキュベートした。放出された4−メチルウンベリフェロンの蛍光を、360nmの励起および460nmの発光で、蛍光光度計(Labsystems Fluoroskan II)を用いて決定した。 野生型およびNAFLAGベクターの概略図。 NAFLAGウイルス産生のための方法の概略図。 NAFLAGWTウイルスまたはNA(−)ウイルスで感染したMDCK細胞の免疫染色。細胞を、抗FLAGモノクローナル抗体(MAb)M2または抗WSNポリクローナル抗体で染色した。 組換え7断片インフルエンザウイルスおよびNAFLAGウイルスに対する競合分析の概略図。 NAFLAGおよびNAFLAGM(−)(“−ATG”)ベクターの概略図。 NAFLAGM(−)ウイルスで感染したMDCK細胞の免疫染色。細胞を、抗FLAGモノクローナル抗体M2または抗WSNポリクローナル抗体で染色した。 NAFLAGおよびNAFLAGM(−)を感染した細胞のFLAG配列についてのインサイチュハイブリダイゼーション分析 NAFLAGWTウイルスまたはNAFLAGM(−)ウイルスの複製効率。 NA欠損ウイルスの概略図。 NA欠損ウイルスのパッケージング割合。 6、7または8個の断片を有するインフルエンザウイルスの経時のウイルス力価。 インフルエンザウイルス断片に対する組み込みシグナル(点線)を示す概略図。 A)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影。B〜F)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影により検出した杆体のカラー像。 A)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影。B〜F)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影により検出した杆体のカラー像。 A)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影。B〜F)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影により検出した杆体のカラー像。 A)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影。B〜F)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影により検出した杆体のカラー像。 A)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影。B〜F)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影により検出した杆体のカラー像。 A)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影。B〜F)インフルエンザビリオンの電子顕微鏡断層撮影により検出した杆体のカラー像。 A)A型インフルエンザウイルスに対するウイルス断片およびそのHAコード配列がB型HAで置き換えられたA型ウイルス。 B)A型インフルエンザウイルスに対するビリオンおよびそのHAコード配列が、B型HAで置き換えられたA型ウイルス。 A/BキメラHA構築物の図。キメラHA構築物は、Neumannら(1999)に記載されたpPolIに基づいたプラスミド(pHH21)中の野生型A/WSNウイルスHA(pPolI−WSN−HA)と野生型B/LeeウイルスHA(pPolI−B−HA)との間で産生された。 A/B HAキメラウイルスによるB型HAの発現。各ウイルスで感染したMDCK細胞を、感染後24時間で固定し、その後、抗A/HA、抗B/HAまたは、抗A/NP抗体で免疫染色した。 A/B HAキメラウイルスの増殖特性。MDCK細胞を、0.01 TCID50のMOIにて各ウイルスで感染させ、ウイルス増殖をモニタリングした。類似した結果を有する2つの独立した実験の1つを示す。 A/B HAキメラウイルスを接種したマウス中のB型ウイルスに対する抗体の反応。A)マウス(3匹のマウス/群)に、鼻腔内に各ウイルス(10TCID50)を接種した。接種3週間後、鼻/気管洗浄を行い、血清サンプルをマウスから取り出し、抗Bウイルス特異的IgA抗体(鼻/気管洗浄)またはIgG抗体(血清)を、ELISAアッセイにより試験した。 A/B HAキメラウイルスを接種したマウス中のB型ウイルスに対する抗体の反応。B)血清サンプル中のHI力価もまた、試験した。各バーは、キメラウイルスで感染した個々のマウスを示す。 変異体HA vRNAの概略図およびそれらのビリオン組み込みの有効性。全ての変異体HA RNAを、ネガティブセンスの向きに示されている。各変異体は、終止コドンに隣接した、GFPオープンリーディングフレーム(HAオープンリーディングフレームに、インフレームで挿入された)、3’非コード領域の33ヌクレオチドおよびHA vRNA(黒色バー)の5’非コード領域の45ヌクレオチドを含む。変異体は、HAコード領域に由来する多くのヌクレオチドに従って設計された。HAコード領域を、灰色のバーとして示す。水平の破線は、欠失を示す。領域の長さは、一定の割合ではない。感染16時間後の細胞を固定した後、VLP感染細胞中のNPを発現する細胞の数で、GFPを発現する細胞の数を割ることにより、変異体HA vRNAのVLPへの組み込み効率を決定した。 変異HA vRNAを発現するプラスミドで感染した293T細胞中のvRNA量。293T細胞を、pPolIHA(0)GFP(0)またはpPolIHA(9)GFP(80)ならびにPA、PB1、PB2およびNPを発現するプラスミドでトランスフェクトした。 VSVG(HA)GFP(NA)ウイルス感染した細胞は、VSV GおよびGFPを発現する。MDCK細胞を、VSVG(HA)GFP(NA)ウイルスまたはWSNウイルスで感染し、1.0%アガロースをかぶせた。感染した細胞を、37℃で48時間インキュベートし、プラークを通常光の下で撮影し(A、B)、プラークを同定するために制限した通常光をともに使用して、蛍光の下で撮影した(C、D)。細胞を3%ホルムアルデヒド溶液中の0.1%Triton−X100で固定し、浸透させた。ウイルスタンパク質を、Vectastain ABCキット(Vector、Burlingame、CA)を使用して、抗VSV Gモノクローナル抗体(E,F)、抗HAモノクローナル抗体(G、H)または抗NPモノクローナル抗体(I,J)を一次抗体およびビオチン標識した二次抗体として使用した免疫染色により検出した。 VSV Gタンパク質のVSVG(HA)GFP(NA)ウイルスへの取り込み。濃縮したWNS、VSVG(HA)GFP(NA)およびVSVウイルスをサンプル緩衝液中に溶解した。ウイルスタンパク質を、2−メルカプトエタノールで処理し、10% SDS−PAGEにより分離し、PVDFメンブランに移し、抗VSV Gモノクローナル抗体または抗WSN−HAモノクローナル抗体とともにインキュベートした。マーカータンパク質の分子量を左に示す。 BHK細胞、CHO細胞およびMDCK細胞中のVSVG(HA)GFP(NA)ウイルスの増殖曲線。BHK(A)、CHO(B)およびMDCK(C)細胞を0.001のMOIでウイルス感染させた。感染後の示した時間で、上清中のウイルス力価を、MDCK細胞を使用して決定した。値は、2回の実験の平均である。 変異NS vRNAの概略図およびそれらの組み込み効率。 変異M vRNAの概略図およびそれらの組み込み効率。 A)ウイルス断片およびB)2個の異種性のタンパク質を発現するビリオンの概略図。 2個の異種性のタンパク質(HIV gp160およびgag)に対するウイルス断片を含むインフルエンザウイルスの概略図。 Cre/loxを使用した、複製能力のないウイルスの産生の概略図。 Cre/loxを使用した、複製能力のないウイルスの産生の概略図。

Claims (24)

  1. インフルエンザウイルスA vRNAの3非コード領域および3’HA組み込み配列を含むHAコード配列に相当する配列、
    遺伝子産物をコードする異種オープンリーディングフレームについての核酸セグメント、ならびに
    5’HA組み込み配列およびHA vRNAの5’非コード領域を含むHAコード配列を含む、インフルエンザウイルス組み込み配列を含むインフルエンザウイルスベクターであって、
    ここで、3’HA組み込み配列を含む該HAコード配列は、5’HAコード配列の少なくとも3ヌクレオチドを含み、そして該5’HA組み込み配列を含む該HAコード配列は、3’HAコード配列の1011ヌクレオチドを超えては有さず、そして該ベクターにおける該HAコード配列は、機能的HAをコードしない、ベクター。
  2. 請求項1に記載のベクターであって、前記5’HA組み込み配列が、HAの80個の3’コードヌクレオチドに相当する少なくとも80個のヌクレオチドを含む、ベクター。
  3. 請求項1に記載のベクターであって、前記5’HA組み込み配列が、HAの291個の3’コードヌクレオチドに相当する少なくとも291個のヌクレオチドを含む、ベクター。
  4. 請求項1に記載のベクターであって、前記3’HA組み込み配列が、HAの最初の9個のコードヌクレオチドに相当する少なくとも9個のヌクレオチドを含む、ベクター。
  5. 前記異種核酸セグメントが、内部リボソーム侵入配列に相当する配列を含む、請求項1に記載のベクター。
  6. 前記異種核酸セグメントが、免疫原性タンパク質もしくは病原体のペプチド、または治療タンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、請求項1に記載のベクター。
  7. 前記組み込み配列が、A型インフルエンザウイルスに由来する、請求項1に記載のベクター。
  8. 前記組み込み配列が、B型インフルエンザウイルスに由来する、請求項1に記載のベクター。
  9. 前記異種核酸セグメントが、他の核酸セグメントと融合して融合タンパク質をコードする、請求項1に記載のベクター。
  10. 請求項1に記載のベクターに相当するvRNAを含む、組換えインフルエンザウイルス。
  11. 前記異種核酸セグメントが、マーカー遺伝子のオープンリーディングフレームに相当する配列、免疫原性タンパク質もしくは病原体のペプチドのオープンリーディングフレームに相当する配列または治療タンパク質に相当する配列を含む、請求項10に記載の組換えウイルス。
  12. 前記オープンリーディングフレームが、NAタンパク質をコードする、請求項10に記載の組換えウイルス。
  13. 前記異種核酸セグメントが、膜貫通タンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列、膜融合活性を有するタンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列、またはウイルスカプシドタンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列を含む、請求項11に記載の組換えウイルス。
  14. 前記異種核酸セグメントが、小胞性口内炎ウイルスGタンパク質のオープンリーディングフレームに相当する配列またはHAタンパク質に相当する配列を含む、請求項11に記載の組換えウイルス。
  15. 前記HAタンパク質が、B型HAタンパク質である、請求項14に記載の組換えウイルス。
  16. 細胞において異種核酸セグメントを発現する方法であって、該方法は、以下:細胞を請求項10の組換えウイルスと接触させる工程、および該異種核酸セグメントにコードされる産物が細胞内で発現しているか否かを検出または決定する工程を、包含する方法。
  17. 前記ベクターに対応するvRNAは、前記細胞に存在する場合、対応する野生型vRNAの効率の少なくとも10%の効率でビリオン中にパッケージングされる、請求項1に記載のベクター。
  18. 前記ベクターに対応するvRNAは、前記細胞に存在する場合、対応する野生型vRNAの効率の少なくとも30%の効率でビリオン中にパッケージングされる、請求項1に記載のベクター。
  19. 前記ベクターに対応するvRNAは、前記細胞に存在する場合、対応する野生型vRNAの効率の少なくとも60%の効率でビリオン中にパッケージングされる、請求項1に記載のベクター。
  20. インフルエンザウイルスHA vRNAの3非コード領域および3’HA組み込み配列を含むHAコード配列に相当する配列、
    遺伝子産物をコードする異種オープンリーディングフレームについての核酸セグメント、ならびに
    5’HA組み込み配列およびHA vRNAの5’非コード領域を含むHAコード配列を含むベクターであって、
    ここで、3’HA組み込み配列を含む該HAコード配列は、5’HAコード配列の少なくとも3ヌクレオチドを含み、そして該5’HA組み込み配列を含む該HAコード配列は、3’HAコード配列の1011ヌクレオチドを超えては有さず、そして該ベクターにおける該HAコード配列は、機能的HAをコードしない、ベクター。
  21. インフルエンザウイルスHA vRNAの3非コード領域および3’HA組み込み配列を含むHAコード配列に相当する配列、
    遺伝子産物をコードする異種オープンリーディングフレームについての核酸セグメント、ならびに
    5’HA組み込み配列およびHA vRNAの5’非コード領域を含むHAコード配列を含む、インフルエンザウイルス組み込み配列を含むベクターであって
    ここで、3’HA組み込み配列を含む該HAコード配列は、5’HAコード配列の966ヌクレオチドを超えては含まず、そして該5’HA組み込み配列を含む該HAコード配列は、3’HAコード配列の少なくとも54ヌクレオチドを有し、そして該ベクターにおける該HAコード配列は、機能的HAをコードしない、ベクター。
  22. インフルエンザウイルスHA vRNAの3非コード領域および3’HA組み込み配列を含むHAコード配列に相当する配列、
    遺伝子産物をコードする異種オープンリーディングフレームについての核酸セグメント、ならびに
    5’HA組み込み配列およびHA vRNAの5’非コード領域を含むHAコード配列を含むベクターであって、
    ここで、3’HA組み込み配列を含む該HAコード配列は、5’HAコード配列の966ヌクレオチドを超えては含まず、そして該5’HA組み込み配列を含む該HAコード配列は、3’HAコード配列の少なくとも54ヌクレオチドを有し、そして該ベクターにおける該HAコード配列は、機能的HAをコードしない、ベクター。
  23. 前記5’HA組み込み配列は、’HAコード配列の513ヌクレオチドを超えては有しない、請求項1または20に記載のベクター。
  24. 前記’HA組み込み配列は、’HAコード配列の468ヌクレオチドを超えては有しない、請求項21または22に記載のベクター。
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