JP4443496B2 - 膵外分泌機能診断剤 - Google Patents
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Description
かかる状況下、被験者への負担が小さく、かつ正確な結果が即時に得られるような簡易膵外分泌機能検査法の開発が望まれるところである。
また、上述のとおり、小腸粘膜上皮細胞には非還元末端α-1,4グルコシド結合を切断する酵素、α−グルコシダーゼ(マルターゼ)(Enzyme Handbook, Springer-Verlag, Berlin)が存在するので、スターチは、消化管内においてα−アミラーゼの作用を受けなくても、α−グルコシダーゼ(マルターゼ)等の酵素の働きのみによっても、非還元末端から順次グルコースに分解されて吸収される。つまり、膵外分泌性ではない小腸粘膜上皮細胞のα−グルコシダーゼ(マルターゼ)の影響を受けるため、13C-標識スターチ呼気テストは膵外分泌機能のみを反映しているわけではない。したがって、消化管内でα−アミラーゼに特異的な基質化合物を選択するのがより望ましい。
また、α−アミラーゼの分泌能に対する特異性の高い膵外分泌機能診断剤を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、膵外分泌機能検査に利用できる新規な化合物を提供することも目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1) U-13C-マルトース、13C-スターチ、1-13C-マルトテトラオースおよび1-13C-アミロースを除く13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩。
(2) α−アミラーゼにより加水分解される(1)記載の13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩。
(3) α−グルコシダーゼにより加水分解されない(2)記載の13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩。
(4) オリゴ糖または多糖を構成する少なくとも1個の糖分子が13Cで標識されている(1)〜(3)のいずれかに記載の13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩。
(5) オリゴ糖または多糖を構成する少なくとも1個の糖分子が、13Cで標識された少なくとも1個の修飾基で修飾されている(1)〜(3)のいずれかに記載の13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩。
(6) オリゴ糖または多糖が直鎖状または分岐状である(1)〜(5)のいずれかに記載の13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩。
(7) オリゴ糖または多糖が環状である(1)〜(5)のいずれかに記載の13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩。
(8) 非還元末端が修飾されている(6)記載の13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩。
(9) 13C−標識オリゴ糖若しくは多糖が13C−サイクロデキストリンまたはβ-ガラクトシル−13C−マルトオリゴ糖である(1)記載の13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩。
(10) (1)〜(9)のいずれかに記載の13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩の誘導体。
(11) サイクロデキストリンまたはその修飾体をホスト分子とする13C−標識包接錯体またはその塩。
(12) ホスト分子が13Cで標識されている(11)記載の包接錯体またはその塩。
(13) ゲスト分子が13Cで標識されている(11)記載の包接錯体またはその塩。
(14) ゲスト分子が、オリゴ糖、アミノ酸、ペプチド、有機酸、脂肪酸、脂肪酸グリセリド、ビタミン類、カテキン類、カロチノイド、フラボノイドおよびコレステロールからなる群より選択される(11)〜(13)のいずれかに記載の包接錯体またはその塩。
(15) ゲスト分子が、13C‐フェニルアラニン、ベンゾイルフェニルアラニル−13C−ロイシンおよびベンゾイルフェニルアラニル−13C−ロイシンメチルエステルからなる群より選択される(14)記載の包接錯体またはその塩。
(16) 13C-スターチを除く、13C−若しくは14C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩、またはその誘導体を含有する膵外分泌機能診断剤。
(17) 13C−若しくは14C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩、またはその誘導体がα−アミラーゼにより加水分解される(16)記載の膵外分泌機能診断剤。
(18) 13C−若しくは14C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩、またはその誘導体がα−グルコシダーゼにより加水分解されない(17)記載の膵外分泌機能診断剤。
(19) 13C−若しくは14C−標識オリゴ糖若しくは多糖が、直鎖状または分岐状オリゴ糖または多糖である(16)〜(18)のいずれかに記載の膵外分泌機能診断剤。
(20) 13C−若しくは14C−標識オリゴ糖若しくは多糖の非還元末端が修飾されている(19)記載の膵外分泌機能診断剤。
(21) 13C−若しくは14C−標識オリゴ糖若しくは多糖が、環状オリゴ糖または多糖である(16)〜(18)のいずれかに記載の膵外分泌機能診断剤。
(22) サイクロデキストリンまたはその修飾体をホスト分子とする13C−若しくは14C−標識包接錯体またはその塩を含有する膵外分泌機能診断剤。
(23) 診断すべき膵外分泌機能が膵臓からのα−アミラーゼの分泌能である(16)〜(22)のいずれかに記載の膵外分泌機能診断剤。
(24) 診断すべき膵外分泌機能が膵臓からのα−アミラーゼおよびα−アミラーゼ以外の1つ以上の膵外分泌酵素の分泌能である(16)〜(22)のいずれかに記載の膵外分泌機能診断剤。
「オリゴ糖」とは、二個ないし十数個の単糖類の重合した糖質をいい、オリゴ糖を構成する単糖類が修飾されていてもよい。
「多糖」とは、単糖類が重合度10以上で重合した糖質をいい、多糖を構成する単糖類が修飾されていてもよい。
「オリゴ糖若しくは多糖またはその塩の誘導体」とは、オリゴ糖若しくは多糖またはその塩の一部に置換、または付加があるものをいう。
「直鎖状オリゴ糖または多糖」とは、直鎖状構造を持つオリゴ糖または多糖をいい、マルトトリオース、マルトテラオース、などのマルトオリゴ糖やアミロースなどの多糖をいう。
「分岐状オリゴ糖または多糖」とは、分岐状態構造を持つオリゴ糖または多糖をいい、アミロペクチン、グリコーゲンなどを含む。
「環状オリゴ糖または多糖」とは、環状構造をもつオリゴ糖または多糖のことをいい、サイクロデキストリンなどがこれに含まれる。
「非還元末端」とは、オリゴ糖または多糖などの糖鎖の末端のうち、糖残基の1位の炭素が糖鎖の結合に関与している側の末端をいう。
中でも、サイクロデキストリンや非還元末端修飾オリゴ糖または多糖はスターチと異なり、α-グルコシダーゼ(マルターゼ)に分解されず、消化管内においてα−アミラーゼに特異的な基質であることから、α−アミラーゼの分泌能を評価するための基質として優れている。また、消化管内におけるα−アミラーゼに特異的な基質であるサイクロデキストリをホスト分子とする包接錯体は包接される分子を選ぶことによって、より総合的で、病態特異的な検査を行う基質を供する。これらの方法は十二指腸液検査と比べて被験者、験者ともに負担がはるかに小さい。
本発明は、U-13C-マルトース、13C-スターチ、1-13C-マルトテトラオースおよび1-13C-アミロースを除く13C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩、その誘導体、または13C−標識サイクロデキストリン包接錯体を包含する。また、本発明の膵外分泌機能診断剤は、13C−標識スターチを除く13C−若しくは14C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩、その誘導体、または13C−若しくは14C−標識包接錯体を含有する膵外分泌機能診断剤を包含する。また、より望ましくは、非還元末端が修飾された、あるいは環状の13C−若しくは14C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはその塩、それらの誘導体を包含する。上記の13C−または14C−標識化合物は薬剤学的に許容できるものであるとよい。
本明細書において、「13C−または14C−標識」とは、化合物中の任意の炭素が13Cまたは14Cに置換されていることにより、化合物中の13Cまたは14Cの存在比が天然存在比より高くなっていることを言い、その製法は問わない。
「非還元末端が修飾されているオリゴ糖若しくは多糖」とは、非還元末端のグルコシル基の炭素が修飾されているオリゴ糖若しくは多糖である。グルコピラノース以外の修飾基としては、例えば、ガラクトシル基、ジガラクトシル基などのオリゴ糖からなる修飾基、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ基、ベンジルオキシ基など)、カルバモイル基、ピリジルアミノ基などが挙げられ、非還元末端のグルコシル基の2個所の炭素にまたがった修飾であるエチリデン化、ベンジリデン化なども含まれる。
例えば、非還元末端が修飾されたオリゴ糖の一つであるガラクトシルオリゴ糖は、オリゴ糖に、乳糖を加えてラクターゼを作用させ、反応混合物からカラムクロマトグラフィーにより分取することにより得ることができる(特開平4-209277公報, 特開平8-196289公報,特開平10-316697公報)。この際、例えば、13C−または14C−標識されたオリゴ糖を用いることにより、13C−または14C−標識ガラクトシルオリゴ糖を得ることができる。また、13C−または14C−ガラクトシル標識乳糖を使用すれば、ガラクトシル基が13C−または14C−標識されたガラクトシルオリゴ糖がえられる。
13C−または14C−標識サイクロデキストリン包接錯体としては、包接された化合物中の任意の炭素が、13Cまたは14Cに置換されていることにより、サイクロデキストリン包接錯体中の13Cまたは14Cの存在比が天然存在比より高くなっているものであってもよく、また、サイクロデキストリンやサイクロデキストリンの修飾体が13C−または14C−標識されていてもよく、その製法は問わない。
これまでに報告されているサイクロデキストリン包接錯体の具体例を以下に挙げる。ホスト分子は以下に例示する化合物に限られるものではない。
フェニルアラニン/β−サイクロデキストリン包接錯体
トリプトファン/α−サイクロデキストリン包接錯体
ヒスチジン/α−サイクロデキストリン包接錯体
シンナリジン/β−サイクロデキストリン包接錯体
フェルラ酸/β−サイクロデキストリン包接錯体
フェニルアラニルロイシン/β−サイクロデキストリン包接錯体
他にも、ゲスト分子として、フェノール、ヒドロキシ安息香酸、ベンズアルデヒド、メチルスルホキシド、安息香酸、アニリン、アミノ安息香酸、メチル安息香酸、ニトロフェノール、ピリジン、酢酸、エタノール、プロパノール、ブタンジオールなどのアルコール類、プロスタンディン、塩酸ベネキサート、ニトロブリセリン、塩酸セファチアム、ヘキセチルピロキシカム、リコプロストなどが挙げられる。これらは「シクロデキストリン」戸田不二雄監修 産業図書刊に記載されている。
上記の13C−若しくは14C−標識オリゴ糖若しくは多糖またはサイクロデキストリン包接錯体は、塩の形で得ることもできる。塩としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸との塩;ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム、エタノールアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの有機アミンとの塩などを挙げることができる。
本発明の膵外分泌機能診断剤の投与量は、投与による呼気中の13CO2または14CO2の増加を確認できる量が必要であり、患者の年齢、体重、検査目的により異なるが、例えば1回当たりの投与量は成人の場合、1〜2000mg/kg体重程度である。
また、オリゴ糖、ペプチド、脂肪酸グリセリドおよびそれらの修飾体が包接されたサイクロデキストリン包接錯体を用いる場合は、分解の最初の反応はα−アミラーゼによるサイクロデキストリンの切断であり、切断に伴って放出されたオリゴ糖、ペプチド、脂肪酸グリセリドおよびそれらの修飾体が、さらに膵外分泌性のα−アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなどの作用を受けて分解され消化管から吸収された後、体内の代謝作用により脱炭酸され、13CO2または14CO2を生じ呼気に排出される現象を利用するものである。
また、呼気CO2 中の14C濃度すなわち放射能の測定は、呼気を直接あるいは溶媒等にCO2 をトラップした後、GM計数管、液体シンチレーションカウンター、固体シンチレーションカウンター、オートラジオグラフィー、電離箱法などで行うことができる。
本発明の膵外分泌機能診断剤は、膵外分泌機能のうち、特に膵臓からのα−アミラーゼの分泌能を診断するのに効果的である。
13C−標識スターチ(クロレラ工業製、Algal Starch (water-soluble), Lot No. 8031,S, U-13C:98.6 atom %, Starch Content: 93.5%)を 5 % (w/v)の濃度で 50 mM酢酸緩衝液 pH 5.4 に溶解し、これにシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(林原製)を100 Unit加え40℃で24時間反応させた。100℃で15分間処理し酵素を失活させた後に、グルコアミラーゼを添加し40℃で1時間反応させて、13C−標識サイクロデキストリン以外の成分をグルコースに分解した。反応終了後100℃で15分間処理しグルコアミラーゼを失活させた。
13Cの標識位置は13C-NMRで行った(図1)。
13C-NMR (DMSO-d6, 300 MHz)
38.5-40.2 ppm ジメチルスルホキシド
59.5-60.1 ppm グルコース残基6位
71.4-73.1 ppm グルコース残基3,4,5位
80.9-82.5 ppm グルコース残基2位
101.5-102.1 ppm グルコース残基1位
また、得られた13C−標識サイクロデキストリンは HPLC 分析(Shodex Asahipak GS-220 HQ)の結果、α-サイクロデキストリンが 45 %、β-サイクロデキストリンが 45 %、γ-サイクロデキストリンが 10 % の混合物であった。
慢性膵炎ラットと対照ラットに実施例1で得られた13C−標識サイクロデキストリンを経口投与し、投与後の呼気CO2中の13C濃度の経時変化を測定する13C−標識サイクロデキストリン呼気テストを行った。
慢性膵炎ラットの作成はMundlosらの方法(Mundlos et al.Pancreas 1:29 (1986))に従い、5 週齢の Wistar 系雄性ラットの膵管へオレイン酸を注入し、3週間飼育した。また、腹部正中切開したラットを対照とした。
Δ13C(‰)={(13C tmin-13C 0min)/13C std}×1000
13C−標識スターチ(クロレラ工業製、Algal Starch (water-soluble), Lot No. 8031,S, U-13C:98.6 atom %, Starch Content: 93.5%、4.65 g)を 0.5 % (w/v)の濃度で 50 mM酢酸緩衝液 pH 5.4 に溶解し、これにシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(林原製)を186 Unit加え40℃で2時間20分間反応させた。95℃で15分間処理し酵素を失活させ、Sephadex G-25により精製した。この操作を4回繰り返し、13C−α−サイクロデキストリン 4.39 g(収率 23.6%)を得た。
構造の確認は、13C−NMRおよびマススペクトルで行った(図3)。
13C−NMR (D2O, 270 MHz)
60.3-61.6 ppm グルコース6残基6位
67.4 ppm 1,4-ジオキサン
70.7-79.6 ppm グルコース6残基2,3,4,5位
92.4-96.9 ppm 還元末端グルコース1位
100.1-101.5 ppm グルコース5残基1位
マススペクトル(ESI−MS) m/z 1211.3 (M++Na)
実施例2と同様に、慢性膵炎ラットと対照ラットに実施例3で得られたガラクトシル13C−マルトヘキサオースを経口投与し(75 mg/kg)、投与後の呼気CO2中の13C濃度の経時変化を測定するガラクトシル13C−マルトヘキサオース呼気テストを行った。
[1−13C]−フェニルアラニン 299 mgとヒドロキシプロピル−β−サイクロデキストリン 1818 mg(モル比 1:1)を5mlの蒸留水に加え、85℃に加温して溶解した。フェニルアラニンの溶解度は25℃で148 mg/5 mlであるが、上記の溶液を25℃まで自然冷却し、フェニルアラニンの析出が見られない[1−13C]−フェニルアラニン/ヒドロキシプロピル−β−サイクロデキストリン包接錯体溶液を調製した。一方、[1−13C]−フェニルアラニン 299 mgのみを5mlの蒸留水に加え、85℃に加温して溶解した場合、25℃まで自然冷却したのちにフェニルアラニンの析出が見られた。ヒドロキシプロピル−β−サイクロデキストリン共存下のフェニルアラニンの溶解度上昇から、[1−13C]−フェニルアラニン/ヒドロキシプロピル−β−サイクロデキストリン包接錯体の形成が確認された。
実施例2と同様に、慢性膵炎ラットと対照ラットに実施例5で得られた[1−13C]−フェニルアラニン/ヒドロキシプロピル−β−サイクロデキストリン包接錯体を経口投与し([1−13C]−フェニルアラニンとして59.76 mg/kg)、投与後の呼気CO2中の13C濃度の経時変化を測定する[1−13C]−フェニルアラニン/ヒドロキシプロピル−β−サイクロデキストリン包接錯体呼気テストを行った。
慢性膵炎ラットとして19週齢の WBN/kob系雄性ラット(Japan SLC, Inc.) を用いた。また、19週齢のWistar 系雄性ラットを対照とした。
1-13C-L-ロイシン1g(Masstrace社)を塩化水素/メタノールに溶解後還流し、得られた13C-L-ロイシンメチルエステルをジクロロメタン50mlに懸濁後氷冷撹拌下トリエチルアミン1.08mlを滴下した。さらに、N-ベンゾイル-DL-フェニルアラニン2.0g、HOBt ( 1-Hydroxy-1H-benzotriazole・H2O )2.34g及びジクロロメタンを50ml添加した。次に、WSC(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide・HCl)1.49gをジクロロメタン100mlに溶解した溶液を加え、氷冷下で1時間撹拌その後室温で一晩撹拌した。反応の終了は、展開溶媒にクロロホルム:メタノール(95:5)を用いたシリカゲル薄層クロマトグラフィーで確認した。濃縮した後酢酸エチルで抽出し、1N-塩酸、5%NaHCO3、水で洗浄後硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮乾固後ベンゾイルフェニルアラニル〔1-13C〕−ロイシンメチルエステル 2.32gを得た。
ベンゾイルフェニルアラニル〔1-13C〕−ロイシンメチルエステル 2.32gをメタノール100mlに溶解後氷冷撹拌下で1N-NaOHを6.4ml滴下し、その後70℃で2.5時間加熱撹拌した。反応の終了は、展開溶媒にクロロホルム:メタノール(95:5)を用いたシリカゲル薄層クロマトグラフィーで確認した。反応終了後1N-HClで中性とした後、濃縮し5%NaHCO3 に溶解した。酢酸エチルで洗浄後5%-NaHCO3 を1N-HClで酸性とし酢酸エチルで抽出した。水洗後硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮乾固後ベンゾイルフェニルアラニル〔1-13C〕−ロイシン1.93gを得、酢酸エチルで再結晶した。
構造の確認と13Cの標識位置は、13C−NMRとマススペクトルで行った。
13C−NMR(重メタノール、300Mz、) 175.8 ppm(13COOH)
マススペクトル m/z383(M+)、365、224、131、105、77
LC−MS m/z384 (M++H) 、252、224、105
ベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンはγ−サイクロデキストリンとの重量比が1:4(モル比 1:1)になるように調製した。γ−サイクロデキストリンを少量の精製水に、ベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンはエタノールにそれぞれ溶解し、両者を混合しスターラー(500 rpm)で12時間攪拌しつづけた後、スプレードライ法により調製した。スプレードライはヤマト科学Pulvis minispray GA-31を使用し、入口温度100℃、出口温度50℃、乾燥空気流量0.45m3/min,噴霧圧力1.5 kg/cm2、流速5 ml/minの条件で行った。得られた試料を更に24時間減圧乾燥した後、18号(850μm)ふるいを通過し、50号(300μm)ふるい上に残留した粉末としてベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシン/γ−サイクロデキストリン包接錯体を得た。
構造の確認は粉末X線回折により行った。Geigerflex Model 2013 diffractometer(理学電機(株))を使用し、Niフィルター、Cu-Kα線(30 kV, 20 mA)、走査速度1°/minの条件で測定した。ベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシン/γ−サイクロデキストリン包接錯体はベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシン固有の回折ピーク、γ−サイクロデキストリン固有の回折ピークが認められずハロー曲線が観察された(図6)。
実施例2と同様に、慢性膵炎ラットと対照ラットに実施例7で得られたベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシン/γ−サイクロデキストリン包接錯体を経口投与し(0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)溶液に懸濁、ベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンとして100 mg/kg)、投与後の呼気CO2中の13C濃度の経時変化を測定するベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシン/γ−サイクロデキストリン包接錯体呼気テストを行った。
実施例7の製造過程で得られたベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンメチルエステルはγ−サイクロデキストリンとの重量比が1:4(モル比 1:1)になるように調製した。γ−サイクロデキストリンを少量の精製水に、ベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンメチルエステルはエタノールにそれぞれ溶解し、両者を混合しスターラー(500 rpm)で12時間攪拌しつづけた後、実施例7と同様の操作でベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンメチルエステル/γ−サイクロデキストリン包接錯体を得た。
構造の確認も実施例7と同様に行った。ベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンメチルエステル/γ−サイクロデキストリン包接錯体はベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンメチルエステル固有の回折ピーク、γ−サイクロデキストリン固有の回折ピークが認められず、ハロー曲線が観察された(図8)。
実施例2と同様に、慢性膵炎ラットと対照ラットに実施例9で得られたベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンメチルエステル/γ−サイクロデキストリン包接錯体を経口投与し(0.5%CMC-Na溶液に懸濁、ベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンメチルエステルとして70 mg/kg, 5 ml/kg)、投与後の呼気CO2中の13C濃度の経時変化を測定するベンゾイルフェニルアラニル[1−13C]−ロイシンメチルエステル/γ−サイクロデキストリン包接錯体呼気テストを行った。
13C−標識サイクロデキストリン1.5重量部に対し、精製水を加え全量を100重量部として、これを溶解後ミリポアフィルターを用いて除菌濾過した。この濾液をバイアル瓶にとり、密封して内服液剤を得た。
13C−標識サイクロデキストリンと非標識サイクロデキストリンを1対1に混合し、これの3重量部に対し、精製水を加え全量を100重量部として、これを溶解後ミリポアフィルターを用いて除菌濾過した。この濾液をバイアル瓶にとり、密封して内服液剤を得た。
Claims (6)
- サイクロデキストリンまたはその修飾体をホスト分子とする13C-標識包接錯体またはその塩であって、ゲスト分子が 13 Cで標識されている前記包接錯体またはその塩。
- ゲスト分子が、オリゴ糖、アミノ酸、ペプチド、有機酸、脂肪酸、脂肪酸グリセリド、ビタミン類、カテキン類、カロチノイド、フラボノイドおよびコレステロールからなる群より選択される請求項1記載の包接錯体またはその塩。
- ゲスト分子が、13C‐フェニルアラニン、ベンゾイルフェニルアラニル−13C−ロイシンおよびベンゾイルフェニルアラニル−13C−ロイシンメチルエステルからなる群より選択される請求項2記載の包接錯体またはその塩。
- サイクロデキストリンまたはその修飾体をホスト分子とする13C−標識包接錯体またはその塩を含有する膵外分泌機能診断剤。
- 診断すべき膵外分泌機能が膵臓からのα−アミラーゼの分泌能である請求項4記載の膵外分泌機能診断剤。
- 診断すべき膵外分泌機能が膵臓からのα−アミラーゼおよびα−アミラーゼ以外の1つ以上の膵外分泌酵素の分泌能である請求項4又は5記載の膵外分泌機能診断剤。
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