JP4418894B2 - デュアルパス蒸気システム - Google Patents
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Description
水素−酸素燃焼タービンプラントは、クリーンでかつ高効率な発電システムとして、最近、にわかに注目されている。しかしながら、水素−酸素燃焼タービンは、非常に高コストな燃料を用いるため、システムの普及を困難にしている。
この水素−酸素燃焼タービンプラントに廃熱回収ボイラ(熱交換器)を組み合わせたコンバインドサイクル発電プラントは、図9に示すように、発電機114を駆動する高圧タービン109と低圧タービン108及び中高圧と中低圧との少なくとも2段の中圧タービン101、102が同軸上に設置され、各タービン109、101、102、108に順次蒸気を通すことによって回転駆動させ発電機114に回転を与えるようにしている。
給水ポンプ113によって供給される給水は、中低圧タービン102から排出される蒸気を熱源とする熱交換器107と中高圧タービン101の出口蒸気を熱源とする熱交換器106に例えばほぼ半分ずつ分けて供給され、中高圧タービン101及び中低圧タービン102の出口蒸気の熱を利用してそれぞれ蒸気とされる。このうち熱交換器106で発生した蒸気は更に高圧水素燃焼器103から吐出される高温・高圧の蒸気を熱源とする過熱器105に導入されて過熱される。そして、熱交換器106及び107で得られた蒸気は合流してからそのまま高圧タービン109に導入されこれを駆動する。
また、上記した水素−酸素燃焼タービンプラントに熱交換器を組み合わせたコンバインドサイクル発電プラントは、熱源が水素−酸素燃焼のみであり、燃料の高コストの問題を避けることができない。
本発明は、水素をエネルギーストレージとして利用した場合のコスト問題の低減及び従来の工業廃熱利用のために使用されているタービンシステムの改造により稼働率の向上とピーク負荷対応を同時に実現することを目的として、廃熱等の低質な熱源と水素−酸素燃焼器による高質な熱源とを備え、低質な熱源は常時利用し、日中での需要のピーク時などの大容量の供給が必要なときには高質な熱源を利用するように、中圧タービンと高温中圧タービンとを選択的に利用できるようにしたデュアルパス蒸気システムを提供するものである。
本構想では、先端的複合サイクルの水蒸気部分に水素‐酸素燃焼室を導入している。この新蒸気システムでは以下の3つの主要要件が満たされなければならなかった。
(1)同一のシステム・ポイントで、温度と圧力が最高となってはならない。
(2)最大数のシステム・コンポーネントが、両モードで作動しなければならない。
(3)熱回収蒸気発生器の特定ステージの熱流(伝熱条件)は、2つの運転モードにおいて同等でなければならない。
これらの要件は、蒸気タービンを高圧タービン、中圧タービン、低圧タービンに分割することによって実現される。中圧タービンに並行して、高温中圧タービンが導入される。水素‐酸素燃焼室はこの高温中圧タービンの上流に設置され、中間熱再生器が高温中圧タービンと低圧タービンの間に導入される。このような並行構成とすることによって、2つの運転モード向けに選択可能な流路が提供される。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、電力及び動力の需要の大なるときは第二の経路を選択し、電力及び動力の需要の小なるときは第一の経路を選択するようにしたことを特徴とする。
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明において、第二の経路において、高圧タービン出口から中間熱再生器へ至る経路を2つの経路に分け、そのうちの1つの経路が熱回収蒸気発生器を経由するようにしたことを特徴とする。
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発明において、凝縮器の出口から熱回収蒸気発生器に至る経路において、熱回収蒸気発生器の入口に設けられたポンプの手前でその経路を分岐し、分岐した経路を熱回収蒸気発生器を経由して低圧タービン入口に接続することを特徴とする。
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発明において、熱回収蒸気発生器が、廃熱回収ボイラ、炭化水素燃料ボイラ、原子力蒸気発生ボイラ等の低質な熱源を利用することを特徴とする。
(1)水素をエネルギーストレージとして利用可能である。
夜間の電力需要の減少する時には、熱回収蒸気発生器のみの熱源で運転すると共に、水素を製造する。また、日中の電力需要のピーク時には、水素−酸素燃焼を利用して高出力を実現する。このようにすることによって、水素の輸送の困難さと高コストの問題を解決することができる。
(2)システム利用率の向上を図ることができる。
起動停止の困難な高圧部のコンポーネントである高圧タービン及び熱回収蒸気発生器、並びに、低圧部のコンポーネントである低圧タービン及び凝縮器が常時利用でき、起動停止に伴う、時間、コスト及びエネルギーを削減でき、さらにこれらの稼働率を向上できる。また、他のコンポーネントは少量の蒸気を供給することによって短時間のモードの切り換えを低コストかつ低エネルギー消費で可能とする。
(3)水素の高効率利用を可能とする。
操作条件を選択することによって、常時稼動するシステムの効率低下を最小限にしつつ、低質な熱源と組み合わせたときの水素のリパワリング効率(投入水素エネルギーに対する増加電力の割合)をHHV基準で62%を超すシステムを実現することができる。
水素をエネルギーストレージとして利用可能にするものであり、夜間の需要の減少する時には、低質な熱源である工業廃熱を利用した熱回収蒸気発生器のみの熱源で運転すると共に、水素を製造する。また、日中の電力需要ピーク時には水素−酸素燃焼を利用して高出力を実現する。
水素貯蔵効率は、以下の式(1)のように定義される。
ηes=Esh/Ehg (1)
図2において、実線は作動中のコンポーネントを表し、破線は停止中のコンポーネントを表す。また、「35/873」等の数字は、作動媒体の「圧力/温度」を示しており、この場合、圧力が35MPa、温度が873°Kであることを表している。
復水は、2つの超臨界圧供給ライン11及び12にそれぞれポンプ9、9及び10、10で送られる。超臨界圧供給ライン11における作動媒体は熱回収蒸気発生器5で加熱され、また、超臨界圧供給ライン12における作動媒体は中間熱再生器6で過熱され、それぞれが高圧タービン1に入る手前で混合される。そして、作動媒体である蒸気は高圧蒸気タービン1内で膨張した後、熱回収蒸気発生器5及び中間熱再生器6で再過熱される。次に、水素−酸素燃焼器7でさらに温度を上昇させる。温度の上昇した作動蒸気は、高温中圧タービン4内で膨張した後、中間熱再生器6で熱交換して冷却される。この後、作動蒸気は、中間熱再生器6の下流において、熱回収蒸気発生器5で発生した低圧蒸気と混合される。最後に、低圧タービン3内で膨張し、凝縮する。
復水は、熱回収蒸気発生器5に接続している超臨界圧供給ライン11にのみポンプ9で送られ、熱回収蒸気発生器5で作動媒体が加熱される。加熱され、蒸気となった作動媒体は高圧タービン1内で膨張する。高圧タービン1から排出された蒸気は、熱回収蒸気発生器5で再過熱され、そして次に、中圧タービン2内で膨張する。作動蒸気は、中圧タービン2の下流において、前記超臨界圧供給ライン11の熱回収蒸気発生器5の入口に設けられたポンプ9の手前で分岐され熱回収蒸気発生器5を経由する経路の低圧の蒸気と混合され、低圧タービン3内で膨張し、凝縮する。すなわち、夜間時における1ソースモードでは、先端的複合サイクルの蒸気部分としてシステムが作動するのである。
また、低質な熱源である熱回収蒸気発生器5は常時利用する構造になっており、需要のピーク時など大容量供給が必要なときには、高質な熱源である水素−酸素燃焼器7の熱源を利用できるデュアルモードの操作ができるようになっている。
さらに、デュアルモードの操作に対応すべく、中程度の圧力の部分では、2種類のパス(経路)を持ち、電力または動力の需要状況によって選択する。すなわち、低出力時には中圧タービン2を、高出力時には中間熱再生器6、高温中圧タービン4、再び、中間熱再生器6を通過する経路をとり、この場合、凝縮器8で昇圧された水は中間熱再生器6で加熱されて高圧タービン1に供給される。このため、高圧タービン1、熱回収蒸気発生器5、低圧タービン3及びこれらの機器を結ぶ経路は常時利用することが可能となる。
第1に、中程度の圧力のときに、システム温度が最高となる。例えば、高温中圧タービン4の入口の圧力は5MPaで、温度は1973°Kと高圧タービン1の入口温度873°Kよりも高く、また、中圧タービン2の入口圧力は8.5MPaで、温度は873°Kと高圧タービン1の入口温度873°Kと同じである。
第2に、選択的に動作するコンポーネントの数が最小限となる。そのようなコンポーネントの1つが中圧タービン2であり、もう1つが水素−酸素燃焼器7と中間熱再生器6を備えた高温中圧タービン4である。
第3に、熱回収蒸気発生器5が連続的に全負荷で動作する。さらに、厚い壁面を持つ停止中のコンポーネントはいずれも、少量の作動媒体を抽出・供給することによって高温に維持されうると考えられる。熱回収蒸気発生器5で圧力条件を滑らかに変化させることが前提となりうるため、高圧タービン1入口が、例えば、調節装置が不要であるなど、簡略化されている。
表1
従来の水−蒸気サイクルにおけるパラメータを改良するための次の目標として、35MPaというタービン入口圧力値が設定された。設計された水素タービン・システムについても、タービン入口圧力値は35MPaである。ブレード冷却技術における最近の成果に伴い、最高温度1973°K (1700℃)が実現可能である。最高温度と対になる許容圧力についても、これに従って設定された。熱交換器で加熱される側の温度は、特殊材料を適用せずにすむよう最高873°K (600℃)に制限された。
水素−酸素燃焼器については、化学量論的条件と100%効率が想定された。高圧タービンはブレードが短いため、また低圧タービンは2相流であるため、高圧タービン内部効率および低圧タービン内部効率が相対的に低く設定された。
ピーク動作モードを基準モードと想定した。質量流量値および出力(電力)値は、ピークモードの値と関係付けられている。熱循環率は、水素−酸素燃焼室に供給された熱流に対する中間熱再生器中の熱流として捉えられている。一方、熱回収率は、ガス部分に供給される熱流に対する熱回収蒸気発生器中の熱流として捉えられている。ガス・タービンのパラメータについては、最近適用されたシステムに従い、タービン入口温度1773゜K (1500℃)、タービン入口圧力2.5MPa、タービン内部効率0.92、圧縮機内部効率0.85と仮定した。
表2
性能計算の結果、顕著な改善が期待されることが確認された。ピーク動作モードでは、この蒸気システムの電気出力は4.5倍に増加し、発電効率は0.545(高温中圧タービン)に増加している。対応するガスタービン複合サイクルの全体的な結果についても目覚しい改善が見られた。電気出力は2倍を超え、発電効率は0.594(HHV)に達している。夜間モードでは、総発電効率が0.55(HHV)という十分に高いレベルで維持されている。
本デュアルパス蒸気システムは、水素エネルギー貯蔵サイクルの1要素として適用されることとなっている。したがって、水素燃料の利用効率は、本デュアルパス蒸気システムの極めて重要なパラメータである。さらに、前記の式(1)のエネルギー貯蔵効率は、次式のように定義できる。
ηes=ηhgηh (2)
ここでηhgは水素発生効率、ηhは水素燃料の利用効率(水素効率)である。
2つの熱源を組み合わせること(ピークモードにおける)によって、水素効率の計算が複雑化する。したがって、2つの動作モード間での単純な性能比較には信憑性がないと思われる。通常の複合サイクル(夜間モードにおける)としてのシステム性能は、非常に高レベルであるものの、最適レベルではないためである。
検討中のシステムの水素効率を2段階に分けて計算した。第1段階では、同一ガス部を使用した基準複合サイクルをモデル化し、最適化した。その発電効率は0.565 (HHV)に達した。この値を第2段階で使用した。
この段階では、本デュアルパス蒸気システムを仮想的に2つの部分に分割し、特定熱源と結びつけ、対応する出力部分を合わせた。
N=Nh+Ng (3)
ここで
式(6)において、ηrccはこの計算の第1段階で決定した発電効率である。したがって、本デュアルパス蒸気システムの水素効率は0.626 (HHV)に等しい。この値は、設計された水素タービン・システムの発電効率(0.58〜0.64)と同等である。
式(2)によると、水素エネルギー貯蔵効率も、水素発生効率に依存する。水素発生効率は、0.90に等しいと仮定した。その結果、エネルギー貯蔵効率は0.563となった。
水素エネルギー貯蔵サイクルの例を図8に示す。ここでは、本デュアルパス蒸気システムが原子力発電所と連携している。最初の仮定では、夜間(1ソース)動作モードにおける複合サイクルの総出力が300MW、夜間需要の谷となる時間が8時間であった。ピーク動作モードにおいて発生した追加電力は、317MWに等しいが、これに相当する水素を発生させるには、需要の谷間となる夜間に1127MWの電力が必要である。このことは、水素貯蔵サイクルには、原子力発電所から827MW得る必要があることを意味する。
結果として、このような水素エネルギー貯蔵サイクルは、起動コストおよび停止コストをかけることなく、日中のピーク期間中に1444MWの電力を提供する。さらに、原子力発電所で応用した場合、大気中への二酸化炭素の排出は、化石燃料燃焼ユニット(従来の石炭燃焼または石油燃焼ユニット、ガス・タービン、ディーゼル・エンジン発電所など)によって同一出力が供給される場合と比較しておよそ80%削減される。
2 中圧タービン
3 低圧タービン
4 高温中圧タービン
5 熱回収蒸気発生器
6 中間熱再生器
7 水素−酸素燃焼器
8 凝縮器
9、10 ポンプ
11、12 超臨界圧供給ライン
13、14 軸
15 第1発電機
51 低圧給水加熱器
52 低圧蒸発器
53 低圧ドラム
54 第3HRSGステージ
55 ポンプ
56 最終HRSGステージ
57 中間過熱器
61 超臨界圧加熱器
62 第2の中間過熱器
Claims (5)
- 高圧タービンと低圧タービンとの間に、高圧タービン出口から熱回収蒸気発生器、中圧タービン及び低圧タービン入口と続く第一の経路と、高圧タービン出口から中間熱再生器、水素−酸素燃焼器、高温中圧タービン、中間熱再生器及び低圧タービン入口と続く第二の経路とを設け、前記低圧タービンの出口側に設けられた凝縮器の出口と熱回収蒸気発生器を経由して高圧タービン入口に至る経路と、凝縮器の出口と中間熱再生器を経由して高圧タービン入口に至る経路とを備えたデュアルパス蒸気システムにおいて、電力及び動力の需要に応じて前記第一の経路又は第二の経路のいずれかを選択するようにしたことを特徴とするデュアルパス蒸気システム。
- 電力及び動力の需要の大なるときは第二の経路を選択し、電力及び動力の需要の小なるときは第一の経路を選択するようにしたことを特徴とする請求項1記載のデュアルパス蒸気システム。
- 第二の経路において、高圧タービン出口から中間熱再生器へ至る経路を2つの経路に分け、そのうちの1つの経路が熱回収蒸気発生器を経由するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のデュアルパス蒸気システム。
- 凝縮器の出口から熱回収蒸気発生器に至る経路において、熱回収蒸気発生器の入口に設けられたポンプの手前でその経路を分岐し、分岐した経路を熱回収蒸気発生器を経由して低圧タービン入口に接続することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のデュアルパス蒸気システム。
- 熱回収蒸気発生器が、廃熱回収ボイラ、炭化水素燃料ボイラ、原子力蒸気発生ボイラ等の低質な熱源を利用することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のデュアルパス蒸気システム。
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