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発酵麦芽飲料またはビール様飲料中に混入したプロピレングリコールの検出方法 Download PDF

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Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、発酵麦芽飲料またはビール様飲料中に混入することがあるプロピレングリコールの検出方法に関する。
背景技術
酵母は、グルコースなどの糖分を分解してエタノールと二酸化炭素を生成する以外に、少量ながら発酵生成物や原料に含まれる種々の物質を変換して、醸造物に特有の香味を付与する。ビール酵母発酵生成物はビールの香味に重要な役割を持ち、ビールの品質管理上興味を持たれる化合物である。プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)もこのような物質の一つであり、麦汁に含有されている成分からビール酵母中の還元酵素により変換されて得られることが知られている(非特許文献1)。
プロピレングリコールは、ビールをはじめとする各種の醸造工程において冷却装置の冷媒として広く用いられている。ビール等の醸造工程においては、麦汁冷却時のプレートクーラーや、発酵、貯酒、濾過溜タンクの冷却用の冷媒としてプロピレングリコールが用いられている。このため、これら冷却装置に亀裂やピンホールが生じた場合、冷媒であるプロピレングリコールが漏れてビールに混入する可能性がある。このようなプロピレングリコールの混入は製品価値を減退させる。
ビール中のプロピレングリコールの検出法としては、ガスクロマトグラフによる方法が報告されている(特許文献1および特許文献2)。ガスクロマトグラフで分析するには、ビール中のプロピレングリコールを酢酸エチルなどで抽出する必要がある。また、プロピレングリコールは極性が高いので,プロピレングリコールの抽出液には、通常、他の極性成分が含まれる。従って、ガスクロマトグラフで多数のサンプルを分析すると、試料の注入部、またはカラムの先端が汚れ易くなり、分析精度を保つためにはガスクロ装置のメンテナンスが頻繁に必要となる。このように、ガスクロマトグラフ法は毎日多数のサンプルを分析するには操作が煩雑である。
また、生めんや餃子の皮などの食品中のプロピレングリコールの分析法として、酵素法が報告されている(非特許文献2および非特許文献3)。生めんや餃子の皮などの食品では、品質保持用の食品添加剤としてプロピレングリコールが使用されることがあり、使用基準が決められている。これら文献は、このような食品において、食品添加物として添加された%レベルのプロピレングリコールの分析を目的とするものであり、ここでは検出限界は100ppm程度とされている。
しかしながら、ビール中で混入が問題となるプロピレングリコール濃度は、例えば5〜20ppm程度であり(例えば、特許文献1の実施例の記載)、上記のような食品で使用されていた酵素法を直ちに適用することは困難であった。
また例えば、非特許文献3の2520頁右欄〜2521頁左欄に記載されているように、従来の酵素法では、2,3−ブタンジオールのような他のジオール類も併せて測定されてしまう。この文献中にも、文献で対象とした食品以外の他の食品にこの酵素法を適用する際にはこのような他のジオール類の存在に注意しなければならない旨が記載されている。この点について、ビール等の飲料には、このような他のジオール類が含まれることが知られている。このため、ビール等の飲料にこの文献の酵素法をそのまま適用すると、プロピレングリコール以外のジオール類も測定されることとなり、様々な測定ノイズが測定の際に混入することになる。したがって、ビール等の飲料中のプロピレングリコールの検出に、この酵素法をそのまま適用することは困難であると考えられてきた。
一方で、安全性と品質に優れた製品に対する消費者のニーズは依然として高く、このため、製造工程において、ビール等の飲料中に混入されることがあるプロピレングリコールを、簡便かつ容易に測定・検出可能な方法が依然として望まれている。
特開平11−94812号公報 特開平11−94814号公報 望月直樹、菊地かおり、池田満雄、生物工学会誌、75(5),339-342(1997) 三ツ橋幸正、浜野孝、田中喜作、松木幸夫、食品衛生学雑誌、26(3),290-294(1985) T. Hmamano, Y. Mitsuhashi, K. Tanaka, Y. Matsuki, M. Nukina, Y. Oji, S. Okamoto, Agric. Biol. Chem., 48(10), 2517-2512(1984).
発明の概要
本発明者は今般、従来、ビールのような飲料に適用することが困難であると考えられていた酵素法によって、発酵麦芽飲料またはビール様飲料中のプロピレングリコールを簡便かつ効率的に検出することに成功した。すなわち、本発明者は、発酵麦芽飲料またはビール様飲料のような被検飲料のサンプルに、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とGDH(グリセロールデヒドロゲナーゼ)とを用いる酵素酸化反応を利用する酵素法による、被検飲料中のプロピレングリコールの検出方法において、サンプルに加えるNAD量を従来の酵素法の場合に比べて非常に低濃度にすることによって、ビール等の飲料に含まれる他のジオール類(例えば2,3−ブタンジオール)による測定ノイズの影響を大幅に削減できることを見いだした。換言すると、従来酵素法の適用が困難であると考えられていたビール等の飲料に対して、酵素法を適用して飲料中のプロピレングリコールを検出することに本発明者は成功した。そして、今回見出された方法による、飲料中のプロピレングリコールの検出精度は、ガスクロマトグラフ法をはじめとする従来の方法に比べて優れたものであった。本発明はこれら知見に基づくものである。
よって、本発明は、発酵麦芽飲料またはビール様飲料中に混入することがあるプロピレングリコールを、簡便かつ優れた精度で検出することができる飲料中のプロピレングリコールの検出方法の提供をその目的とする。
本発明による発酵麦芽飲料またはビール様飲料中のプロピレングリコールの検出方法は、プロピレングリコール混入の可能性がある被検飲料のサンプルであって、その中のグリセリンを予めエステル化しておいたサンプルに、1〜5重量%(サンプル重量基準)のNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と、GDH(グリセロールデヒドロゲナーゼ)とを加え、サンプル中のプロピレングリコールをGDHにより酸化して、得られたサンプル中のNADH量を測定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、測定されたNADH量が、正常な飲料の場合に得られるNADH量に基づいて予め設定された値と比較して大きい場合には、被検飲料にプロピレングリコールが混入していると判定することをさらに含んでなる。
また本発明の発酵麦芽飲料またはビール様飲料の製造方法は、本発明による検出方法によりプロピレングリコールが混入していると判定された製品を、最終製品から除外する工程を含んでなる。
さらに本発明による発酵麦芽飲料またはビール様飲料の製造における工程管理方法は、本発明による検出方法を用いて、製品へのプロピレングリコール混入の有無を監視することを含んでなる。
本発明の検出方法によれば、発酵麦芽飲料またはビール様飲料にタンクなどの冷却用の冷媒として使用されるプロピレングリコールの混入の有無を容易に判定することが可能となる。本発明による検出方法では、高価な測定機材を使用する必要がなく、ガスクロマトグラフ法のように溶媒抽出などの前処理操作や分析機器のメンテナンスも不要である。また本発明による検出方法では、繰り返し分析による分析精度の低下はほとんど起こらない。このため、本発明による方法によれば、迅速に多数サンプルの分析が可能であり、その方法は、ガスクロ法よりも精度が高く、微量なプロピレングリコールの混入の検出が可能である。したがって、本発明による方法は、小規模なビール工場などでも実施可能なものであり、製品の品質保証に役立つものである。
発明の具体的説明
プロピレングリコールの検出方法
本発明による方法は、前記したように、発酵麦芽飲料またはビール様飲料中のプロピレングリコールの検出方法であって、プロピレングリコール混入の可能性がある被検飲料のサンプルであって、その中のグリセリンを予めエステル化しておいたサンプルに、1〜5重量%(サンプル重量基準)のNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と、GDH(グリセロールデヒドロゲナーゼ)とを加え、サンプル中のプロピレングリコールをGDHにより酸化して、得られたサンプル中のNADH量を測定することを特徴とするものである。
本発明において、「発酵麦芽飲料」とは、麦芽を用いて得られたホップ麦汁を主成分とする原料を、発酵させることによって得られる飲料をいい、例えば、ビール、発泡酒等が挙げられる。
また、「ビール様飲料」には、前記した「発酵麦芽飲料」以外の飲料であって、発酵麦芽飲料と同等に、プロピレングリコールに加えて、プロピレングリコール以外の2,3−ブタンジオールなどのようなジオール類を含有するか、含有する可能性の高い飲料であれば、いずれのものも包含される。「ビール様飲料」としては、例えば、ビールと同等もしくは類似した風味を有する、穀物を原料とする発酵飲料などが挙げられ、具体例として、大豆やエンドウ豆のような豆類由来成分とホップとを原料として発酵させることによって得られる飲料(いわゆる、酒税法上「その他雑酒2」に分類されるアルコール飲料を包含する)などが挙げられる。
またここでいう「飲料」には、製品としての飲料が含まれることは当然として、該飲料を製造する過程における半製品の状態のものや、飲料の評価の際等に使用されるプロピレングリコールを含むコントロール溶液等も包含される。
本発明において「プロピレングリコール混入の可能性がある被検飲料」とは、飲料に本来的に含まれうるプロピレングリコール量を超えて飲料中にプロピレングリコールが存在するかまたはその可能性のある場合のことをいう。飲料にプロピレングリコールが混入する由来としては、例えば、飲料の製造工程において使用される冷媒等が考えられるが、特にこれに限定するものではない。
本発明の方法において、まず被検飲料のサンプル中のグリセリンを予めエステル化しておく。グリセリンをエステル化することにより、サンプル中に含まれるグリセリンが、その後のサンプルにおけるGDHの酸化反応とその測定結果に影響を及ぼさないようにすることができる。ここで、グリセリンをエステル化する手法は特に限定されないが、好ましくは、被検飲料のサンプルに、ATP(アデノシン5’三リン酸)を加えた後、サンプル中のグリセリンをグリセロキナーゼを用いてリン酸エステル化することによって、被検飲料中のグリセリンをエステル化する。なおこの酵素反応は下記式(1)で表すことができる。
グリセリン + ATP ⇔ グリセロール−3−リン酸 + ADP
・・・ (1)
この酵素反応は、典型的には、pH約10、反応温度25〜55℃の条件下にて行われる。反応に際して加えられるATPおよびグリセロキナーゼの量は、被検飲料中に通常グリセリンは1000〜3000mg/L程度含まれることが予想されるため、この濃度のグリセリンを全てエステル化するのに充分な量である。例えば、被検飲料サンプルが0.1mlである場合、予め炭酸塩緩衝液のような緩衝液にてサンプルのpHを調整した後、ここに、ATP溶液(濃度3%)0.1mlと、グリセロキナーゼ溶液(濃度500u/ml)2μlとをそれぞれ加えて、約30℃の条件下にて10分間程度反応させることによって行われる。
なお本明細書において、「約」を用いた値の表現は、その値を設定することによる目的を達成する上で、当業者であれば許容することができる値の変動を含む意味である。
本発明において使用されるグリセロキナーゼは、例えばEC2.7.1.30で表されるものであり、市販品を使用することができる。
本発明による検出方法においては、グリセリンが既にエステル化された被検飲料サンプルに、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とGDH(グリセロールデヒドロゲナーゼ)とを加えて、このGDHによりサンプル中のプロピレングリコールを酸化する。この酸化反応により得られるNADH量を測定し、その結果から反応に関与したプロピレングリコール量を求める。なおこの酵素反応は、下記式(2)で表すことができる。
プロピレングリコール + NAD ⇔ ヒドロキシアセトン + NADH
・・・ (2)
本発明において、生じたNADH量の測定の方法は特に制限されないが、溶液の吸光度を測定することにより行うのが簡便であり好ましい。典型的には、NADHの吸光度測定は、340nmの光吸収を測定する。
本発明においては、被検飲料サンプルにNADを加える際に、その量が1〜5重量%(サンプル重量換算)、好ましくは1.25〜5重量%、より好ましくは1.25〜2.5重量%となるような、非常に低濃度のNADをサンプルに添加することが重要である。添加するNAD量が上記範囲の値よりも多いと、飲料中に含まれる2,3−ブタンジオールのような他のジオール類による測定ノイズの影響が大きくなり、飲料中のプロピレングリコールを適切に検出することが困難になる。また添加するNAD量が上記範囲よりも少ないと、GDHによる酸化反応が充分に進行できなくなる。
このGDHによる酵素反応は、典型的には、pH約10、反応温度20〜30℃の条件下にて行われる。反応に際して加えられるGDHの量は加えられるNADが充分に反応できる程度の量であることが少なくとも必要である。典型的には、0.5〜10U/mlのGDH溶液を使用する場合、添加するGDH量は0.02〜0.4ml程度である。例えば、上記のようにしてグリセリンが既にエステル化された被検飲料サンプル(当初の飲料0.1ml)がある場合、ここに、NAD溶液(濃度2.5%)0.1mlと、GDH溶液(濃度2U/ml)0.1mlとをそれぞれ加えて、約30℃の条件下にて10分間程度反応させることによって行われる。
本発明の検出方法においては、NADH量を測定するまでのGDHによる反応時間を、一定の時間に規定して反応を行うことが望ましい。本発明において測定の対象とする発酵麦芽飲料またはビール様飲料は、pHを10程度に調整すると、徐々に340nmの吸光度が増加する傾向がある。また、飲料中に含まれる2,3−ブタンジオールとの反応も併せて起こるが、この反応はプロピレングリコールの反応に比べて緩慢であるため、反応時間が長いと、2,3−ブタンジオールのような他のジオール類による測定ノイズの影響も増大することになる。このため、本発明におけるGDHの反応時間を一定の時間に規定して、その後の測定や、他のサンプルの測定を実施することが望ましい。本発明の好ましい態様によれば、該反応時間は、被検飲料サンプルの量により変動し得るが、典型的には5〜20分間の範囲から選択される時間であり、好ましくは8〜15分間の範囲から選択される時間である。具体例を挙げると、被検飲料サンプルの量が0.1mlである場合、この反応時間は例えば、10分間である。
本発明において使用されるGDHは、例えばEC1.1.1.6で表されるものであり、市販品を使用することができる。また使用可能なGDHとして、補酵素がNADではなくNADPであるものを使用することも可能である。
本発明の好ましい態様によれば、前記したように、測定されたNADH量が、正常な飲料の場合に得られるNADH量に基づいて予め設定された値と比較して大きい場合には、被検飲料にプロピレングリコールが混入していると判定することをさらに含んでなる。ここで、「正常な飲料の場合に得られるNADH量に基づいて予め設定された値」とは、正常な飲料を同様の方法に従いNADH量を測定した場合の値に対して、例えばその値の1.2〜1.5倍の値をいう。具体的には、その値は、被検飲料のロットの状態や製造工程での実際の運転状況等に応じて適宜選択し設定することができる。
本発明の別の態様によれば、本発明による検出方法によりプロピレングリコールが混入していると判定された製品を、最終製品から除外する工程を含んでなる、本発明の発酵麦芽飲料またはビール様飲料の製造方法が提供される。
また本発明のさらに別の態様によれば、本発明による検出方法を用いて、製品へのプロピレングリコール混入の有無を監視することを含んでなる、発酵麦芽飲料またはビール様飲料の製造における工程管理方法が提供される。
本発明による検出方法は、溶媒抽出操作のような前処理の必要もなく、また分析機器の日常的なメンテナンスも不要であるため、該検出方法を飲料の製造工程全体を通してまたは製造工程の一部に組み入れることにより、プロピレングリコールの混入を日常的に監視することが可能となる。またこのとき本発明の検出方法自体を自動化して組み入れても良い。該検出方法による検出の結果、プロピレングリコールの混入が疑われる飲料製品については、最終製品から除外することで、製品全体の品質の向上に役立てることができる。また該検出方法によって、製品へのプロピレングリコール混入の有無を監視することによって、製造工程中の装置の異常、例えば冷媒容器上のピンホールの発生、等を容易に検知することができる。このため、本発明による検出方法を使用することによって、発酵麦芽飲料またはビール様飲料の製造における工程の管理を容易かつ効率化することが可能となる。
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1: NAD濃度のプロピレングリコールおよび2,3−ブタンジオールの測定への影響
ビール中には100ppm程度の2,3−ブタンジオールがあることが知られており、GDH(グリセロールデヒドロゲナーゼ)は、2,3−ブタンジオールとも反応する。このような状況の中で、本発明においては、数ppmのプロピレングリコールを検出する必要がある。
そこで、GDHによる酸化反応の際に加えられるNAD濃度の違いが、プロピレングリコールと2,3−ブタンジオールのそれぞれの測定結果にどのような影響を及ぼすかについて調べた。
炭酸塩緩衝液(pH10)3mlを入れた試験管に、50ppmのプロピレングリコールの標準液0.1mlを加え、ストップウォッチをスタートした。ATP溶液(濃度3%)0.1ml、グリセロキナーゼ溶液(濃度500U/ml)(Rosche Applied Science社製)2μlを加え、混合後30℃の恒温水槽で正確に10分間反応させた。
次にここに、硫酸アンモニウム溶液(濃度1.32%)0.1ml、NAD溶液(濃度1.25%、2.5%、5%、または10%)0.1ml、グリセロールデヒドロゲナーゼ(シグマ社製型番3512)溶液(0.5U/ml,1.0U/ml,または2.0U/ml)0.1mlを加えてマトリックス状にサンプルを調製した。各サンプルを30℃の恒温水槽に入れて酵素反応を進行させ、反応開始後10分後に、各サンプルの340nmの吸光度を測定した。
2,3−ブタンジオールについては、100ppmの標準液を用意し、同様に実験を行った。
なお吸光度の測定は、株式会社島津製作所製分光光度計UV mini 1240を使用して、測定条件(波長:340nm、光路長:1cm、温度:室温(約25℃))にて実施した。
結果は、図1、図2に示される通りであった。
結果から、この酵素反応において,NADの濃度が少ない場合には、プロピレングリコールに比べて2,3−ブタンジオールの反応率が大きく減少することがわかった。このため、比較的低濃度のNAD濃度条件を使用することによって、プロピレングリコール測定の際の2,3−ブタンジオールの影響を減らすことができることが明らかとなった。
実施例2: 被検飲料中のプロピレングリコールの測定
炭酸塩緩衝液(pH10)3mlを入れた試験管に、ビール(キリンビール株式会社製、「一番搾り」(商品名))の試料溶液0.1mlを取り、ストップウォッチをスタートした。ATP溶液(濃度3%)0.1ml、グリセロキナーゼ溶液(濃度500U/ml)(Roche Applied Sience社製)2μlを加え、混合後30℃の恒温水槽で正確に10分間反応させた。
次にここに、硫酸アンモニウム溶液(濃度1.32%)0.1ml、NAD溶液(濃度2.5%)0.1ml、グリセロールデヒドロゲナーゼ溶液(濃度2U/ml)(シグマ社製型番3512)0.1mlを加え混合後、30℃の恒温水槽で正確に10分間反応させた。
対照液はグリセロールデヒドロゲナーゼ溶液の代わりに水を入れたものを用いた。
試験液および対照液の340nmの吸光度を測定し、試験液と対照液との吸光度差を求め、予めプロピレングリコールで作成した検量線より、プロピレングリコール相当量を求めた。
ここで作成したプロピレングリコール0〜50ppmで検量線は図3の通りであった。相関係数はr=0.999となり、この法は優れた方法であることが確認された。
実施例3: 分析精度
同じビールサンプルを8回繰り返し分析することによって、分析精度を調べた。
結果は下記表1に示されるとおりであった。結果はその変動係数3.8%と良好な精度が得られた。なお、ガスクロ法による分析の変動係数6.8%(文献値)である。
Figure 0004417353
実施例4: 製造における工程管理
工場において製造している製品(各ロットのもの)に加えて、プロピレングリコールを5ppm、および10ppm添加したものを用意し、これらを実際の製造工程にのせてプロピレングリコール検出を行った。なお製品としては、発泡酒(キリンビール株式会社製、「淡麗」(商品名))を使用した。
分析した結果をもとに作成した管理図は、図4に示されるとおりであった。
通常の製品の分析値は18.8 ppm as PG 前後にあるが、5ppm添加したものでは、管理限界を超えて直ちに判定することができた。
実施例1において得られたNAD濃度のプロピレングリコール測定への影響を示すグラフである。 実施例1において得られたNAD濃度の2,3−ブタンジオール測定への影響を示すグラフである。 実施例2において得られたプロピレングリコールの検量線を表すグラフである。 実施例4において得られた工場での製造におけるプロピレングリコールの管理結果を示す図である。

Claims (5)

  1. 発酵麦芽飲料またはビール様飲料中のプロピレングリコールの検出方法であって、
    プロピレングリコール混入の可能性がある被検飲料のサンプルに、ATP(アデノシン5’三リン酸)を加えた後、サンプル中のグリセリンをグリセロキナーゼを用いてリン酸エステル化することによって、被検飲料中のグリセリンをエステル化し、得られたグリセリンを予めエステル化したサンプルに、1〜5重量%(サンプル重量基準)のNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と、GDH(グリセロールデヒドロゲナーゼ)とを加え、サンプル中のプロピレングリコールをGDHにより酸化して、得られたサンプル中のNADH量を測定することを含んでなる、方法。
  2. 測定されたNADH量が、正常な飲料の場合に得られるNADH量に基づいて予め設定された値と比較して大きい場合には、被検飲料にプロピレングリコールが混入していると判定することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
  3. NADH量を測定するまでのGDHによる反応時間を、一定の時間に規定して反応を行う、請求項1または2に記載の方法。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の検出方法によりプロピレングリコールが混入していると判定された製品を、最終製品から除外する工程を含んでなる、発酵麦芽飲料またはビール様飲料の製造方法。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の検出方法を用いて、製品へのプロピレングリコール混入の有無を監視することを含んでなる、発酵麦芽飲料またはビール様飲料の製造における工程管理方法。
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