JP4412779B2 - 放線菌由来のメバロン酸経路に関与する酵素の遺伝子 - Google Patents

放線菌由来のメバロン酸経路に関与する酵素の遺伝子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放線菌由来のメバロン酸経路に関与する複数の酵素をコードするDNA、該DNAに含まれる各酵素をコードするDNAとそれによってコードされるタンパク質、該DNAを含むベクター及び形質転換体、並びに該DNAを用いたイソプレノイド化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イソプレノイド(テルペンとも称される)は、炭素数5のイソプレン単位を基本骨格に持つ一群の有機化合物の総称であり、イソペンテニルピロリン酸(IPP)の重合によって生合成される。(C58nの不飽和炭化水素以外に、それらの酸化還元生成物(アルコール、ケトン、酸など)、炭素の脱離した化合物などが多くの植物および動物体内に見い出されている。イソプレノイドは、炭素数によりヘミテルペン(C5)、モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、セスタテルペン(C25)、トリテルペン(C30)、テトラテルペン(C40、カロテノイド)、およびその他のポリテルペンに分類することができる。
アブシジン酸、幼若ホルモン、ジベレリン、フォルスコリン、ホルボールなど生理活性を示す化合物も多い。また、構造の一部にイソプレン構造を有する複合テルペンとしてクロロフィル、ビタミンK、ユビキノン、tRNAなどがあり、これらも有用な生理活性を示す。
【0003】
例えば、イソプレノイド化合物の1種であるユビキノンは電子伝達系の必須成分として、生体内で重要な機能を果たしており、心疾患に効果のある医薬品として使用されているほか、欧米では健康食品としての需要が増大している。
また、ビタミンKは血液凝固系に関与する重要なビタミンであり、止血剤として利用されているほか、最近では骨代謝への関与が示唆され、骨粗鬆症の治療薬への応用が期待されており、フィロキノンとメナキノンは医薬品として認可されている。
【0004】
また、ユビキノンやビタミンKには貝類の付着阻害作用があり、貝類付着防止塗料への応用が期待される。
さらに、カロチノイドには抗酸化作用があり、β−カロチン、アスタキサンチン、クリプトキサンチンなど、がん予防や免疫賦活活性を有するものとして期待されているものもある。
このように、イソプレノイド化合物の中には生体にとって有用な物質が含まれており、これらの安価な製造方法が確立されれば、社会的にも医学的にも多大な恩恵があると思われる。
【0005】
発酵法によるイソプレノイド化合物の生産は以前から検討されており、培養条件の検討や変異処理による菌株育種、さらに遺伝子工学的手法による生産量の向上への試みもなされている。しかし、その効果は個々の化合物種に限定されており、イソプレノイド化合物全般に効果のある方法は知られていない。
イソプレノイド化合物の基本骨格単位であるイソペンテニルピロリン酸(IPP)は、動物や酵母などの真核生物ではアセチルCoAからメバロン酸を経由して生合成される(メバロン酸経路)ことが証明されている。
【0006】
メバロン酸経路では3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA(HMG-CoA)リダクターゼが律速酵素であると考えられており(Mo1. Bio1. Cell, 5, 655(1994))、酵母において、HMG-CoAリダクターゼを高発現させ、カロテノイドの生産性を向上させる試みがなされている(三沢ら、カロテノイド研究談話会講演要旨集(1997))。
【0007】
大腸菌などの原核生物では、別の経路、即ち、ピルビン酸とグリセルアルデヒド3−リン酸が縮合して生じる1−デオキシ−D−キシルロース5−リン酸を経由してIPPが生合成される非メバロン酸経路が多くの原核生物において発見されており(Biochem. J., 295, 517(1993))、13Cラベル化基質を使った実験から1デオキシ−D−キシルロース5−リン酸は2−C−メチル−D−エリスリトール4−リン酸を経由してIPPへと転換されることが証明されている(Tetrahedron Lett. 38, 4769 (1997);Tetrahedron Lett. 39, 4509 (1998))。特に、大腸菌ではIPPは非メバロン酸経路でのみ合成されることが実証されている(Rohmer, M. In Comprehensive Natural Products Chemistry, Vol. 2: Isoprenoids including carotenoids and steroids; Barton, D. Nakanishi, K. Eds. Elsevier: Amsterdam, 1999; pp. 45-67)。
【0008】
一方、放線菌 Streptomyces sp. CL190 株(J. Antibiot. 43:444, 1990)はメバロン酸経由でIPPを合成していることは分かっており(Tetrahedron Lett. 31:6025, 1990. とTetrahedron Lett. 37:7979, 1996.)、本発明者らはこれまでに、放線菌 Streptomyces sp. CL190 株から、メバロン酸経路上の一つの反応を触媒する酵素、3−ヒドロキシー3−メチルグルタリル CoA (HMG−CoA)レダクターゼをコードする遺伝子(hmgr)を既にクローニングしていた(J. Bacteriol. 181:1256, 1999)。しかしながら、本放線菌株に存在すると考えられる、メバロン酸経路に関与する他の酵素をコードする遺伝子は未だクローニングされていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題の一つは、心疾患、骨粗鬆症、止血、がん予防、免疫賦活等を目的とした医薬品、健康食品および貝類付着防止塗料等に有用なイソプレノイド化合物の生合成経路の一つであるメバロン酸経路に関与する遺伝子群を含むDNAを提供することである。さらに本発明の別の課題は、上記DNAを宿主細胞に導入して得た形質転換体を培養することによってイソプレノイド化合物を製造する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、放線菌 Streptomyces sp. CL190 株のメバロン酸経路に関与する遺伝子を取得し、それを大腸菌に形質転換して得た形質転換体を培養したところ、イソプレノイド化合物の1種であるユビキノンの生産量が向上していることを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、下記の何れかを有するDNA:
(1)配列番号1の塩基配列;
(2)配列番号1において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、メバロン酸経路を機能させるのに必要な酵素を全てコードする塩基配列;または
(3)配列番号1の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、メバロン酸経路を機能させるのに必要な酵素を全てコードする塩基配列:
が提供される。
好ましくは、メバロン酸経路を機能させるのに必要な酵素は、少なくともホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、メバロン酸キナーゼ、HMG−CoAレダクターゼ及びHMG−CoAシンターゼである。
本発明の別の側面によれば、上記DNAによりコードされるタンパク質が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、下記の何れかを有するDNA:
(1)配列番号2の塩基配列、配列番号2において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、ホスホメバロン酸キナーゼをコードする塩基配列、あるいは配列番号2の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、ホスホメバロン酸キナーゼをコードする塩基配列;
(2)配列番号3の塩基配列、配列番号3において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼをコードする塩基配列、あるいは配列番号3の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼをコードする塩基配列;
(3)配列番号4の塩基配列、配列番号4において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、メバロン酸キナーゼをコードする塩基配列、あるいは配列番号4の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、メバロン酸キナーゼをコードする塩基配列;
(4)配列番号5の塩基配列;あるいは
(5)配列番号7の塩基配列、配列番号7において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、HMG−CoAシンターゼをコードする塩基配列、あるいは配列番号7の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、HMG−CoAシンターゼをコードする塩基配列;
が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記DNAによるコードされるタンパク質が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、下記の何れかを有するタンパク質:
(1)配列番号8のアミノ酸配列、配列番号8において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されているアミノ酸配列であって、ホスホメバロン酸キナーゼ活性を有するアミノ酸配列、あるいは配列番号8のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ホスホメバロン酸キナーゼ活性を有するアミノ酸配列;
(2)配列番号9のアミノ酸配列、配列番号9において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されているアミノ酸配列であって、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ活性を有するアミノ酸配列、あるいは配列番号9のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ活性を有するアミノ酸配列;
(3)配列番号10のアミノ酸配列、配列番号10において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されているアミノ酸配列であって、メバロン酸キナーゼ活性を有するアミノ酸配列、あるいは配列番号10のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、メバロン酸キナーゼ活性を有するアミノ酸配列;
(4)配列番号11のアミノ酸配列;あるいは
(5)配列番号13のアミノ酸配列、配列番号13において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されているアミノ酸配列であって、HMG−CoAシンターゼ活性を有するアミノ酸配列、あるいは配列番号13のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、HMG−CoAシンターゼ活性を有するアミノ酸配列;
が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、本発明の上記DNAを含むベクターが提供される。本発明のさらに別の側面によれば、上記ベクターを有する形質転換体が提供される。好ましくは形質転換体は大腸菌である。
本発明のさらに別の側面によれば、本発明の上記DNAを含むベクターを宿主に形質転換して作製した形質転換体を培養して培養物中にイソプレノイド化合物を生成させる工程、及び該培養物からイソプレノイド化合物を採取する工程を含む、イソプレノイド化合物の製造方法が提供される。好ましくは、イソプレノイド化合物は、ユビキノン、ビタミンK2、またはカロテノイドから選択されるイソプレノイド化合物である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施方法および実施態様について詳細に説明する。
本明細書において「1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている」とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の数の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されていることを意味する。
本明細書において「1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されている」とは、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の数のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されていることを意味する。
本明細書において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍程度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989. 以後 "モレキュラークローニング第2版" と略す)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられ、相同性は、例えば60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上である。
【0016】
本発明はまた、配列番号8、9、10または13のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって所望の活性を有するアミノ酸を有するタンパク質に関する。配列番号8、9、10または13のアミノ酸配列との相同性は60%以上であれば特に制限はなく、例えば、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上である。
【0017】
本明細書で言う「メバロン酸経路」とは、
(1)アセトアセチルCoAがHMG−CoAに変換する工程(HMG−CoAシンターゼが触媒する);
(2)HMG−CoAがメバロン酸に変換する工程(HMG−CoAレダクターゼが触媒する);
(3)メバロン酸がピロホスホメバロン酸に変換する工程(メバロン酸(MVA)キナーゼ、ホスホメバロン酸(PMVA)キナーゼにより触媒及び調節される);及び
(4)ピロホスホメバロン酸がイソペンテニルピロリン酸(IPP)に変換する工程(ジホスホメバロン酸(PMVA)デカルボキシラーゼが触媒する):
によってIPPが生合成される経路である。
メバロン酸経路を機能させるのに必要な酵素としては、少なくともPMVAキナーゼ、PMVAデカルボキシラーゼ、MVAキナーゼ、HMG−CoAレダクターゼ及びHMG−CoAシンターゼが挙げられる。
【0018】
次に、本発明のDNAの取得方法およびその利用方法について説明する。
(A)放線菌のメバロン酸経路に関与する酵素をコードするDNAの取得
前記した通り、本発明者らはこれまでに、放線菌 Streptomyces sp. CL190 株から、メバロン酸経路上の一つの反応を触媒する酵素、3−ヒドロキシー3−メチルグルタリル CoA (HMG−CoA)レダクターゼをコードする遺伝子(hmgr)をクローニングしている(J. Bacteriol. 181:1256, 1999)。本発明の配列番号1の塩基配列を有するDNAは、このhmgr遺伝子をプローブとして使用することによって取得することができる。hmgr遺伝子の塩基配列としては、配列番号6に記載の塩基配列を挙げることができる。メバロン酸経路に関与する酵素をコードするDNA領域の取得法としては、具体的には以下の方法をあげることができる。
【0019】
放線菌、例えばStreptomyces sp. CL190 株を適当な培地、例えばGPY培地(1%グルコース、0.4%ポリペプトン、0.4%イーストエクストラクト、0.5%MgSO4・7H2O、0.1%K2HPO4)で適当な温度(例えば、30℃)で数日間培養する。培養後、得られた培養液より遠心分離により菌体を取得し、菌体より、定法(モレキュラークローニング第2版)に従い染色体DNAを単離精製する。得られた染色体DNAを適当な制限酵素(例えば、SnaBIなど)で切断した後,hmgr遺伝子をプローブとして用いたサザンハイブリダイゼーション(モレキュラークローニング第2版)を行う。サザンハイブリダイゼーションの結果、特定の位置(例えば、染色体DNAの消化のための制限酵素としてSnaBIを使用した場合には、6.7kbの位置)にプローブのシグナルが検出される。
【0020】
次に、Streptomyces sp. CL190 株の染色体DNAを上記と同じ制限酵素(例えば、SnaBI)で再度切断後、アガロースゲル電流泳動を行い、サザンハイブリダイゼーションの結果シグナルが検出された位置(制限酵素としてSnaBIを使用した場合には、6.7kbの位置)に対応するDNA断片をアガロースゲルから抽出して回収する。この回収したDNA断片をT4DNAポリメラーゼ(宝酒造から購入)を用いて平滑末端にし、適当なプラスミド(例えば、pUC118など)に挿入し、放線菌Streptomyces sp. CL190 株の染色体DNAライブラリーを作製する。この染色体DNAライブラリーを用いて好適な宿主(例えば、E. coli JM109株など)を定法(モレキュラークローニング第2版)に従って形質転換し、形質転換体をhmgr遺伝子をプローブに用いたコロニーハイブリダイゼーション法によりスクリーニングすることによりhmgr遺伝子を含むプラスミドを持つ大腸菌の形質転換体を単離することができる。単離した形質転換体から、常法に従いプラスミドを抽出することにより、hmgr遺伝子を含むDNA断片を単離することができる。
【0021】
上記方法により単離できるDNAの一例としては、配列番号1の塩基配列を有するDNAが挙げられる。また、配列番号1の塩基配列の部分配列である配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号7の塩基配列を有するDNAも本発明の範囲内である。配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号7の塩基配列を有するDNAは、配列番号1の塩基配列の情報に基づいて制限酵素処理またはPCRなどを適宜使用して当業者に公知の常法により取得することができる。
【0022】
PCR法により配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号7の塩基配列を有するDNAを取得するためには、放線菌Streptomyces sp. CL190 株の染色体DNAまたは配列番号1の塩基配列を有するDNAなどを鋳型として使用し、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5または配列番号7の塩基配列を増幅できるように設計した1対のプライマーを使用して、TaKaRa LA-PCRTM Kit Ver.2(宝酒造社製)またはExpandTM High-Fidelity PCR System(べ一リンガー・マンハイム社製)等を用い、DNAThermal Cycler(パーキンエルマージャパン社製)にてPCRを行う。なお、後のクローニング操作を容易にするために、プライマーには適当な制限酵素部位を付加させておくことが好ましい。
【0023】
PCRの反応条件として、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応工程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件を挙げることができる。
次いで、増幅されたDNA断片を、大腸菌で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。クローニングは、常法、例えば、モレキュラークローニング第2版、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、DNA Cloning 1: CoreTechniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等に記載された方法、あるいは市販のキット、例えばSuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning (ライフ・テクノロジーズ社製)やZAP-cDNA Synthesis Kit〔ストラタジーン(Staratagene)社製〕を用いて行なうことができる。
【0024】
クローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自律複製できるものであれば、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる、大腸菌の発現用ベクターをクローニングベクターとして用いてもよい。具体的には、ZAP Express〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 58 (1992)〕、pBluescrlpt II SK(+)〔Nuclelc Acids Research, 17, 9494(1989)〕、Lambda ZAP II(ストラタジーン社製)、λgt10、λgt11〔DNA Cloning, A Practical Approach, 1, 49(1985)〕、λTriplEx(クローンテック社製)、λExCell(ファルマシア社製)、pT7T318U(ファルマシア社製)、pcD2〔Mo1. Cen. Bio1., 3, 280 (1983)〕、pMW218(和光純薬社製)、pUC118(宝酒造社製)、pEG400〔J.Bac., 172, 2392 (1990)〕、pQE-30 (QIAGEN社製)等をあげることができる。
【0025】
得られた形質転換株より、目的とするDNAを含有したプラスミドを常法、例えば、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等に記載された方法により取得することができる。
上記方法により、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5又は配列番号7の塩基配列を有するDNAを取得することができる。
【0026】
また、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号7の塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、特定の活性を有する酵素タンパク質をコードする塩基配列、あるいは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号7の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、特定の活性を有する酵素タンパク質をコードする塩基配列も本発明の範囲内である。
【0027】
例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号7の塩基配列を有する放線菌由来のDNA断片の塩基配列を利用し、他の微生物等より、該DNAのホモログを適当な条件下でスクリーニングすることにより単離することができる。
あるいは、上記したような変異DNAは、化学合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法で作製することもできる。具体的には、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号7の塩基配列を有するDNAを利用し、これらDNAに変異を導入することにより変異DNAを取得することができる。
【0028】
例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号7の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。
遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Nucleic Acids Research, 10, 6487, 1982、Nucleic Acids Research, 12, 9441, 1984、Nucleic Acids Research, 13, 4431, 1985、Nucleic Acids Research, 13, 8749, 1985、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409, 1982、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488, 1985、Gene, 34, 315, 1985、Gene, 102, 67, 1991等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0029】
(B)放線菌のメバロン酸経路の酵素をコードするDNAを有する形質転換体の作製と上記酵素タンパク質の発現
上記のようにして得られたDNAを宿主細胞中で発現させるためには、まず、目的とする該DNA断片を、制限酵素あるいはDNA分解酵素で、該遺伝子を含む適当な長さのDNA断片とした後に、発現ベクター中においてプロモーターの下流に挿入し、次いで上記DNAを挿入した発現ベクターを、発現ベクターに適合した宿主細胞中に導入する。
【0030】
宿主細胞としては、目的とする遺伝子を発現できるものは全て用いることができる。例えば、エッシェリヒア属、セラチア属、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、シュードモナス属、バチルス属、ミクロバクテリウム属等に属する細菌、クルイベロミセス属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、トリコスポロン属、シワニオミセス属等に属する酵母や動物細胞、昆虫細胞等をあげることができる。
なお、本発明のDNAはメバロン酸経路に関与する酵素をコードするものであるが、宿主細胞としてはメバロン酸経路を本来有さない細菌でも、メバロン酸経路を有する酵母や動物細胞、昆虫細胞の何れでも構わない。
【0031】
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込みが可能で、上記目的とするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等を宿主細胞として用いる場合は、上記DNAを発現させるための発現ベクターは該細菌中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、上記DNAおよび転写終結配列より構成された組換えベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0032】
発現ベクターとしては、例えば、pBTrP2、pBTac1、pBTac2(いずれもべ一リンガーマンハイム社より市販)、pKK233-2(Pharmacia社製)、pSE280(Invitrogen社製)、pGEMEX-1(Promega社製)、pQE-8(QIAGEN社製)、pQE-30(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58-110600)、pKYP200〔Agrc.Biol.Chem., 48, 669(1984)〕、PLSA1〔Agrc. Blo1. Chem., 53, 277(1989)〕、pGEL1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)〕、pBluescrlptII SK+、pBluescriptII SK(-)(Stratagene社製)、pTrS30(FERMBP-5407)、pTrS32(FERM BP-5408)、pGEX(Pharmacia社製)、pET-3(Novagen社製)、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pUC18〔Gene, 33, 103(1985)〕、pUC19〔Gene, 33, 103(1985)〕、pSTV28(宝酒造社製)、pSTV29(宝酒造社製)、pUC118(宝酒造社製)、pPA1(特開昭63-233798)、pEG400〔J. Bacterio1., 172, 2392(1990)〕、pQE-30(QIAGEN社製)等を例示することができる。
【0033】
プロモーターとしては、宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(P trp)、lacプロモーター(P lac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SP01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またP trpを2つ直列させたプロモーター(P trp×2)、tacプロモーター、letlプロモーター、lacT7プロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
【0034】
リボソーム結合配列としては、宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよいが、シャインーダルガノ(Shine-Dalgamo)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
目的とするDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、好適には構造遺伝子直下に転写終結配列を配置することが望ましい。
【0035】
宿主細胞としては、Escherichia属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Bacillus属、Microbacterium属、Serratia属、Pseudomonas属、Agrobacterium属、Alicyclobacillus属、Anabaena属、Anacystis属、Arthrobacter属、Azobacter属、Chromatium属、Erwinia属、Methylobacterium属、Phormidium属、Rhodobacter属、Rhodopseudomonas属、Rhodospiri11um属、Scenedesmun属、Streptomyces属、Synnecoccus属、Zymomonas属等に属する微生物をあげることができ、好ましくは、Escherichia属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Bacillus属、Pseudomonas属、Agrobacterium属、Alicyclobacillus属、Anabaena属、Anacystis属、Arthrobacter属、Azobacter属、Chromatium属、Erwinia属、Methylobacterium属、Phormidium属、Rhodobacter属、Rhodopseudomonas属、Rhodospirillum属、Scenedesmun属、Streptomyces属、Synnecoccus属、Zymomonas属に属する微生物等をあげることができる。
【0036】
該微生物の具体例として、例えば、Escherichia coli XL1-Blue、Escherichia coli XL2-Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coli DH5α、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coli W1485、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coli No49、Escherichia coli W3110、Escherichia coli NY49、Escherichia coli MP347、Escherichia coli NM522、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefacines、Brevibacterium ammoniagenes、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticum ATCC14066、Brevibacterium flavum ATCC14067、Brevibacterium lactofermentum ATCC13869、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC14297、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354、Serratia ficaria、Serratia fontico1a、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Pseudomonas sp. D-0110、Agrobacterium radiobacter、Agrobacterium rhizogenes、Agrobacterium rubi、Anabaena cylindrica、Anabaena do1iolum、Anabaena flosaquae、Arthrobacter aurescens、Arthrobacter citreus、Arthrobacter globformis、Arthrobacter hydrocarboglutamicus、Arthrobacter mysorens、Arthrobacter nicotianae、Arthrobacter paraffineus、Arthrobacter protophormiae、Arthrobacter roseoparaffinus、Arthrobacter sulfureus、Arthrobacter ureafaciens、Chromatium buderi、Chromatium tepidum、Chromatium vinosum、Chromatium warmingii、Chromatium fluviatile、Erwinia uredovora、Erwinia carotovora、Erwinia ananas、Erwnia herbicola、Erwinia punctata、Erwinia terreus、Methylobacterium rhodesianum、Methylobacterium extorquens、Phormidium sp. ATCC29409、Rhodobacter capsulatus、Rhodobacter sphaeroides、Rhodopseudomonas blastica、Rhodopseudomonas marina、Rhodopseudomonas palustris、Rhodospirillum rubrum、Rhodospirillum salexigens、Rhodospirillum salinarum、Streptomyces ambofaciens、Streptomyces aureofaciens、Streptomyces aureus、Streptomyces fungicidicus、Streptomyces griseochromogenes、Streptomyces griseus、Streptomyces lividans、Streptomyces olivogriseus、Streptomyces rameus、Streptomyces tanashiensis、Streptomyces vinaceus、Zymomonas mobilis等をあげることができる。
【0037】
組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Nat1. Acad. SCl. USA, 69, 2110(1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63-2483942)、またはGene, 17, 107(1982)やMolecular & General Genetics, 168, 111(1979)に記載の方法等をあげることができる。
【0038】
酵母を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、Ycp5O(ATCC37419)、pHS19、pHS15等を例示することができる。
プロモーターとしては、酵母中で発現できるものであればいかなるものでもよく、例えば、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーター等のプロモーターをあげることができる。
【0039】
宿主細胞としては、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisae)、シゾサッカロミセス・ボンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリュイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pu11ulans)、シュワニオミセス・アルビウス(Schwanniomyces a11uvius)等をあげることができる。
【0040】
組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Methods. Enzymol, 194, 182(1990)〕、スフェロブラスト法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929(1978)〕、酢酸リチウム法〔J.Bacteriol., 153, 163(1983)〕、あるいはProc. Nat1 . Acad. Sci. USA, 75, 1929(1978)に記載の方法等をあげることができる。
【0041】
動物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107〔特開平3-22979; Cytotechnology, 3, 133,(1990)〕、pAS3-3(特開平2-227075)、pCDM8〔Nature, 329, 840,(1987)〕、pcDNAI/AmP(Invitrogen社製)、pREP4(Invitrogen社製)、pAGE103〔J.Blochem., 101, 1307(1987)〕、pAGE210等を例示することができる。
【0042】
プロモーターとしては、動物細胞中で発現できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、ナマルバ細胞、HBT5637(特開昭63-299)、COS1細胞、COS7細胞、CHO細胞等をあげることができる。
【0043】
動物細胞への組換えベクターの導入法としては、動物細胞にDNAを導入できるいかなる方法も用いることができ、例えば、エレクトロポーレーション法〔Cytotechnology, 3, 133(1990)〕、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法〔Proc. Nat1. Acad. Sci., USA, 84, 7413(1987)〕、virology, 52, 456(1973)に記載の方法等を用いることができる。形質転換体の取得および培養は、特開平2-227075号公報あるいは特開平2-257891号公報に記載されている方法に準じて行なうことができる。
【0044】
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばバキュロウイルス・イクスプレッション・ベクターズ・ア・ラボラトリー・マニュアル(Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manua1)、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Bio/Technology, 6, 47(1988)等に記載された方法によって、タンパク質を発現することができる。
即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、タンパク質を発現させることができる。
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにインビトロジェン社製)等をあげることができる。
【0045】
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W. H. Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHigh5(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
【0046】
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法〔Proc. Nat1. Acad. Sci. USA, 84, 7413(1987)〕等をあげることができる。
遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、モレキュラークローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
酵母、動物細胞または昆虫細胞により発現させた場合には、糖あるいは糖鎖が付加されたタンパク質を得ることができる。
【0047】
上記DNAを組み込んだ組換え体DNAを保有する形質転換体を培地に培養し、培養物中にメバロン酸経路に関与する酵素を生成蓄積させ、該培養物より該タンパク質を採取することにより、メバロン酸経路に関与する酵素タンパク質を製造することができる。かくして製造されるタンパク質(放線菌のメバロン酸経路に関与する酵素)も本発明の範囲内である。
【0048】
本発明のDNAを保持する形質転換体を培地で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
本発明の形質転換体が大腸菌等の原核生物、酵母菌等の真核生物である場合、これら微生物を培養する培地は、該微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が用いられる。
【0049】
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等が用いられる。
無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
【0050】
培養は、振盪培養または深部通気撹拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
また培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
【0051】
動物細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPM11640培地〔The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)〕、EagleのMEM培地〔Science, 122, 501(1952)〕、DMEM培地〔Virology, 8, 396(1959)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine, 73, 1(1950)〕またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%C02存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM-FH培地〔Pharmingen社製〕、Sf-900 II SFM培地(ギブコBRL社製)、ExCell400、ExCell405〔いずれもJRH Biosciences社製〕、Grace's Insect Medium〔Grace, T.C.C., Nature, 195,788(1962)〕等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜7、25〜30℃等の条件下で、1〜5日間行う。
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0052】
本発明の形質転換体の培養物から、本発明のタンパク質(メバロン酸経路に関与する酵素)を単離精製するには、通常の酵素の単離、精製法を用いればよい。
例えば、本発明のタンパク質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース、DIAION HPA-75(三菱化成社製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0053】
また、該タンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈殿画分より、通常の方法により該タンパク質を回収後、該タンパク質の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。該可溶化液を、タンパク質変性剤を含まないあるいはタンパク質変性剤の濃度がタンパク質が変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、該タンパク質を正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
【0054】
本発明のタンパク質あるいはその糖修飾体等の誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清に該タンパク質あるいはその糖鎖付加体等の誘導体を回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
このようにして取得されるタンパク質として、例えば、配列番号8〜13のアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。
【0055】
また、上記方法により発現させたタンパク質を、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、桑和貿易(米国Advanced Chem Tech社製)、パーキンェルマージャバン(米国Perkin−Elmer社製)、ファルマシアバイオテク(スウェーデンPharmacia Biotech社製)、アロカ(米国Protein Technology Instrument社製)、クラボウ(米国Synthecell-Vega社製〉、日本パーセプティブ・リミテッド(米国PerSeptive社製)、島津製作所等のペプチド合成機を利用し合成することもできる。
【0056】
(C)イソプレノイド化合物の製造
上記(B)で取得された形質転換体を、上記(B)の方法に準じて培養し、培養物中にイソプレノイド化合物を生成蓄積させ、該培養物からイソプレノイド化合物を採取することによりイソプレノイド化合物を製造することができる。
該培養により、ユビキノン、ビタミンK2、カロテノイド等のイソプレノイド化合物を製造することができる。具体的な例として、例えば、Escherichia属に属する微生物を形質転換体としたユビキノン−8やメナキノン−8の製造、Rhodobacter属に属する微生物を形質転換体としたユビキノン−10の製造、Arthrobacter属に属する微生物を形質転換体としたビタミンK2の製造、Agrobacterium属に属する微生物を形質転換体としたアスタキサンチンの製造、Erwinia属に属する微生物を形質転換体としたりコペン、β一カロチン、ゼアキサンチンの製造等をあげることができる。
培養終了後、培養液に適当な溶媒を加えてイソプレノイド化合物を抽出し、遠心分離などで沈殿物を除去した後、各種クロマトグラフィーを行うことによりイソプレノイド化合物を単離・精製することができる。
【0057】
以下の実施例により本発明をより具体的に示すが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。実施例で示した遺伝子組換え実験は、特に言及しない限りモレキュラークローニング第2版に記載の方法(以下、常法と呼ぶ)を用いて行った。
【0058】
【実施例】
実施例1:放線菌 Streptomyces sp. CL190 株のメバロン酸経路に関わる遺伝子の取得
先ず、メバロン酸経路上の一つの反応を触媒する酵素である3−ヒドロキシー3−メチルグルタリル CoA (HMG−CoA)レダクターゼをコードする遺伝子(hmgr)遺伝子を含むDNA断片を放線菌Streptomyces sp. CL190 株から取得し、そのDNA断片の塩基配列を解析し、メバロン酸経路に関わる遺伝子がhmgr遺伝子の周辺にクラスターを形成して存在することを明らかにした。その詳細を以下に示す。
【0059】
放線菌Streptomyces sp. CL190 株を15mlのGPY培地(1%グルコース、0.4%ポリペプトン(和光純薬社製)、0.4%イーストエクストラクト(Difco社製)、0.5%MgSO4・7H2O、0.1%K2HPO4)で30℃で2日間培養した。培養後、得られた培養液より遠心分離により菌体を取得した。得られた菌体より、定法(モレキュラークローニング第2版)に従い染色体DNAを単離精製した。得られたDNAの1μgを制限酵素SnaBI(宝酒造)で切断した後,hmgr遺伝子をプローブとして用いたサザンハイブリダイゼーション(モレキュラークローニング第2版)を行った結果、6.7kbの位置にプローブのシグナルが検出された。この結果から6.7kbの放線菌染色体由来のDNA断片中にhmgr遺伝子が含まれていることが判明した。
【0060】
次に、Streptomyces sp. CL190 株の染色体DNAをSnaBIで再度切断後、アガロースゲル電流泳動を行い、6.7kb付近の1μgのDNA断片をアガロースゲルから抽出して回収した。この回収した6.7kb付近のDNA断片をT4DNAポリメラーゼ(宝酒造から購入)を用いて平滑末端にし、プラスミドpUC118(宝酒造から購入)のHincIIサイトに挿入し、Streptomyces sp. CL190 株の染色体DNAライブラリーを作製した。この染色体DNAライブラリーを用いてE. Coli JM109株(宝酒造から購入)を定法(モレキュラークローニング第2版)に従って形質転換した。形質転換体をhmgr遺伝子(J. Bacteriol. 181:1256, 1999)をプローブに用いたコロニーハイブリダイゼーション法(モレキュラークローニング第2版)によりスクリーニングし、hmgr遺伝子を含むプラスミドを持つ大腸菌の形質転換体を単離した。単離した形質転換体から、プラスミド抽出キット QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社製)を用いてプラスミドを抽出した。
【0061】
抽出したプラスミドの塩基配列の決定は定法(モレキュラークローニング第2版)に従って行った。その際、シーケンス反応用試薬としてThermo Sequenase cycle sequencingキット(Amersham Pharmacia Biotech社製)を、シーケンス解析装置としてDNA sequencer model 4000L(Li-cor社製)を用いた。決定した塩基配列を配列番号1に示す。
【0062】
実施例2:放線菌 Streptomyces sp. CL190 株のメバロン酸経路に関わる遺伝子の構造の解析
配列番号1の塩基配列から、遺伝情報処理ソフトウェアGENETYX−MAC(ソフトウェア開発社製)を用いてオープンリーディングフレーム(以後、orfと略す)を予測した。その結果、hmgr遺伝子以外に、5つのorfの名前を便宜上、配列番号1の塩基配列番号の少ない方から、orfA、orfB、orfC、orfD、orfEと命名した。orfA〜E及びhmgr遺伝子の配列番号1における位置は以下の通りである。
orfA(配列番号1の塩基番号132−1169)
orfB(配列番号1の塩基番号1159−2211)
orfC(配列番号1の塩基番号2208−3332)
orfD(配列番号1の塩基番号3335−4426)
hmgr遺伝子(配列番号1の塩基番号4423−5484)
orfE(配列番号1の塩基番号5488−6657)
【0063】
orfA、orfB、orfC、orfD、hmgr及びorfEの塩基配列を各々配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7に示し、アミノ酸配列を配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号13に示す。
これらのorfの相同性検索を国立遺伝学研究所のFASTAプログラム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444, 1998)を用いて行った。その結果、orfAはホスホメバロン酸キナーゼ(accession number P24521)と、orfBはジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(accession number P32377)と、orfCはメバロン酸キナーゼ(accession number P46086)と、orfEはHMG−CoAシンターゼ(accession number P54873)と、それぞれ有意な相同性があることが判明した。
さらに、orfDは機能未知のタンパク(以後、タンパクXと呼ぶ)と相同性が見られた(accession number P46086)。これら5つのorfをコードする新規遺伝子は、hmgr遺伝子とクラスターを形成し同一方向に転写され、その相同検索の結果からhmgr遺伝子と同様にメバロン酸経路に関与する遺伝子と推定された。これら遺伝子の位置関係を図1に示す。
【0064】
実施例3:放線菌 Streptomyces sp. CL190 株のメバロン酸経路に関わる遺伝子の機能の解析
(1)orfA、orfB、orfC、orfD及びorfEの機能解析
上記6.7kbのDNA断片の両末端をT4DNAポリメラーゼ(宝酒造から購入)を用いて平滑末端にし、プラスミドpUC118(宝酒造から購入)のHincllサイトに、ホスホメバロン酸(PMVA)キナーゼのN末端がpUC118のlacプロモーターに近くなる向きに挿入したプラスミドをpUMV19と命名した。pUMV19には、ホスホメバロン酸キナーゼ(orfA)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(orfB)、メバロン酸キナーゼ(orfC)、タンパクX(orfD)、HMG−CoAレダクターゼ(hmgr)、HMG−CoAシンターゼ(orfE)をコードする合計6つの遺伝子が含まれている(図1)。
次に、pUMV19をE. coli JM109株に導入し、E. coli JM109 (pUMV19)株と命名した。E. coli JM109(pUMV19)株では、上記6つの遺伝子はIPTGの添加によってlacプロモーターから転写され発現するように設計されている。
【0065】
ホスミドマイシンは非メバロン酸経路を特異的に阻害することが知られている(Tetrahedron Lett. 39:7913, 1998.)。従って、非メバロン酸経路しか持たないE. coli JM109株は、ホスミドマイシンを含む培地中では生育に必須なIPPを生合成できないため生育不可能である。そこで、上記で作製したE. coli JM109(pUMV19)株が、ホスミドマイシン存在下でもIPTGを添加すれば生育可能であれば、このE.coli JM109(pUMV19)株はメバロン酸経路でIPPを生合成していることを証明することができる。すなわち、上記6.7kbのDNA断片にはメバロン酸経路に関わる全ての遺伝子が含まれていることを証明することができる。
【0066】
また、pUMV19の欠失変異体として、pUMV19△E、pUMV19△S、pUMV19△Mを構築した。pUMV19△E、pUMV19△S、pUMV19△Mは、pUMV19をそれぞれ制限酵素EcoRI、Sse8387IまたはMluIで消化してセルフライゲーションを行って作製したプラスミドであり、pUMV19△Eではホスホメバロン酸キナーゼが、pUMV19△SではHMG−CoAシンターゼが、pUMV19△MではタンパクXがそれぞれ欠けている(図1を参照)。これら欠失変異体についてもpUMV19と同様にE. coli JM109に形質転換し、E. coli JM109(pUMV19△E)、E. coli JM109(pUMV19△S)および E. coli JM109(pUMV19△M)を作製した。なお、ホスミドマイシンは(Chem. Pharm. Bull. 30:111, 1982.)に従って合成した。
【0067】
E. coli JM109(pUMV19)、E. coli JM109(pUMV19△E)、E. coli JM109(pUMV19△S)、 E. coli JM109(pUMV19△M)及びE. coli JM109(pUC118)を、プラスミドを保持させるため50μg/mlの抗生物質アンピシリン(Sigma社製)を含むLB培地(トリプトン(Difco社製)1%;イーストエクストラクト(Difco社製)0.5%;及びNaCl0.5%)5mlで37℃で1晩振盪培養した(培養条件は以下の培養条件1〜3を用いた)。次いでこれらの生育を観察した。E. coli JM109(pUC118)はコントロール実験のために用いた。
【0068】
培養条件1:0.1mMのIPTG(和光純薬)、および50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地5mlに上記5種類の培養液を1/1000量添加し37℃で12時間培養した。
培養条件2: 0.1mMのIPTG、20μg/mlのホスミドマイシン、および50μg/mlのLB培地5mlに上記5種類の培養液を1/1000量添加し37℃で12時間培養した。
培養条件3: 0.1mMのIPTG、0.02%のメバロン酸(和光純薬)、20μg/mlのホスミドマイシン、および50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地5mlに上記5種類の培養液を1/1000量添加し37℃で12時間培養した。
【0069】
培養後における生育の結果を図1に示す(+は正常に生育したことを、−は正常には生育しなかったことを表す)。
培養条件1では、E. coli JM109(pUMV19)、E. coli JM109(pUMV19△E)、E. coli JM109(pUMV19△S)、E. coli JM109(pUMV19△M)、E. coli JM109(pUC118)のいずれの菌株も生育可能であった。培養条件2では、予想通り、E. coli JM109(pUMV19)のみが生育可能であった。つまりホスミドマイシン添加により、非メバロン酸経路が遮断されている条件下においては、上記6.7kbのDNA断片上の6つのすべての遺伝子が組み込まれているpUMV19を持っている場合に限ってメバロン酸経路が正常に機能しE. coli JM109は生育可能であった。従って、タンパクXを含む6つの遺伝子がメバロン酸経路に関与することが明らかとなった。
【0070】
培養条件3では、予想通り、E. coli JM109(pUMV19)とE. coli JM109(pUMV19△S)が生育可能であった。E. coli JM109(pUMV19△S)はHMG−CoAシンターゼ以外は正常に持っているため、培地に添加したメバロン酸をIPPに変換することができる。そのために、E. coli JM109(pUMV19(S)はホスミドマイシン存在下でもメバロン酸とIPTG添加すれば生育可能であったと考えられる。一方、E. coli JM109(pUMV19△E)、E. coli JM109(pUMV19△M)、E. coli JM109(pUC118)は、培地に添加したメバロン酸をIPPまで変換するための遺伝子がそれぞれ一つずつ欠けているため、ホスミドマイシン存在下ではメバロン酸とIPTG添加をしても生育不能であったと考えられる。
【0071】
上記結果より、(1)E. coli JM109においてメバロン酸経路によりIPPを合成させるためには,上記6つの遺伝子がすべて必要不可欠であり;(2)HMG−CoAシンターゼを欠いた場合には、メバロン酸を添加すればE. coli JM109においてメバロン酸経路によりIPPを合成させることが可能であることが示された。
【0072】
実施例4: E. coli JM109 (pUMV19)株によるユビキノンの生産
E. coli JM109(pUMV19)株によるユビキノン(イソプレノイド化合物の1種)の生産量を、メバロン酸経路の遺伝子を含まないベクターのみを持つE. coli JM109(pUC118)株と比較した。
ユビキノンの定量はを以下の通り行なった。E. coli JM109(pUMV19)株とE. coli JM109(pUC118)株をそれぞれ、50μg/mlのアンピシリンを含む50mlのLB培地中で37℃で14時間培養し、菌体を遠心法により回収した。回収した菌体を凍結乾燥し、乾燥菌体の重さを計量した後,クロロホルム:メタノール=2:1の溶液60mlを加え、1時間放置してユビキノンを抽出した。次いで、エバポレーターでクロロホルム−メタノール溶液を蒸発させ、残った固形物にアセトン1mlを加えて溶解した。このアセトン溶液中のユビキノンの量を、センシューパックPEGASIL ODSカラム(センシュー科学社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(日本分光より購入)で、イソプロピルアルコール:メタノール=1:1で溶出して定量した。なお、この条件では、ユビキノンは9.8分に溶出される。また、ユビキノンの量は、上記クロマトグラムにおけるユビキノンに相当するピークの面積の相対値で表した。その結果を以下の表1に示す。
【0073】
【表1】
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【0074】
E. coli JM109(pUMV19)における培養量あたり(今回は50ml)のユビキノンの生産量は、E. coli JM109(pUC118)のそれと比べて、2.1倍であった(表中において、25684/12135=2.1)。また、E. coli JM109(pUMV19)における菌体量あたりのユビキノンの生産量は、E. coli JM109(pUC118)のそれと比べて、4.5倍であった(表中において、450000/100000=4.5)。これらの結果から、放線菌Streptomyces sp. CL190株由来のメバロン酸経路の遺伝子はイソプレノイドの生産性向上に有効であったことが判明した。
【0075】
【発明の効果】
本発明の遺伝子は新規遺伝子である。本発明の遺伝子を大腸菌などの宿主に導入した形質転換体を培養することにより、イソプレノイド化合物を生産することができる。
【0076】
メバロン酸経路に関わる遺伝子の全長が全て明らかにされている生物としては、本発明で明らかにされた放線菌Streptomyces sp. CL190株以外としては、酵母Saccharomyces cerevisiaeが挙げられる(Nature 387:5,1997)。しかしながら、酵母のメバロン酸経路に関わる遺伝子はクラスターを作っていない。そのため、大腸菌内でこの酵母のメバロン酸経路の遺伝子を発現させて、その大腸菌がメバロン酸経路を利用することが出来るようにするためには、メバロン酸経路の遺伝子を一つ一つ酵母より取得し、大腸菌内での発現に適したベクターに一つ一つ組み込んでいくという煩雑な操作が必要である。また、酵母のような真核生物のゲノムはイントロンと呼ばれるタンパクをコードしていない領域が多く含まれることから、メバロン酸経路の遺伝子を取得するためには、酵母のメッセンジャーRNAを取り出し、それを鋳型に逆転写酵素でDNAに変換した後、メバロン酸経路の酵素をコードしている領域のみを取得するという煩雑な方法を採用せざるを得ない。
一方、原核生物である放線菌Streptomyces sp. CL190株のメバロン酸経路の遺伝子は、上記したようにゲノム上でクラスターを作っており、なおかつ同一方向に転写されるように並んでいるため、煩雑な操作を必要とせず、大腸菌内で発現させることができる。
【0077】
【配列表】
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【0078】
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【0079】
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【0080】
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【0081】
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【0082】
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【0083】
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【0084】
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【0085】
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【0086】
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【0087】
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【0088】
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【0089】
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【0090】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の遺伝子の構造、欠失変異体の構造、各形質転換体の各種培養条件下に生育の有無の結果を示す図である。

Claims (11)

  1. 下記の何れかを有するDNA:(1)配列番号1の塩基配列;
    (2)配列番号1において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、メバロン酸経路を機能させるのに必要な酵素を全てコードする塩基配列;または(3)配列番号1の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、メバロン酸経路を機能させるのに必要な酵素を全てコードする塩基配列。
  2. メバロン酸経路を機能させるのに必要な酵素が、少なくともホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、メバロン酸キナーゼ、HMG−CoAレダクターゼ及びHMG−CoAシンターゼである、請求項1に記載のDNA。
  3. 請求項1または2に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
  4. 下記の何れかを有するDNA。
    (1)配列番号2の塩基配列、配列番号2において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、ホスホメバロン酸キナーゼをコードする塩基配列、あるいは配列番号2の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、ホスホメバロン酸キナーゼをコードする塩基配列;
    (2)配列番号3の塩基配列、配列番号3において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼをコードする塩基配列、あるいは配列番号3の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼをコードする塩基配列;
    (3)配列番号4の塩基配列、配列番号4において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、メバロン酸キナーゼをコードする塩基配列、あるいは配列番号4の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、メバロン酸キナーゼをコードする塩基配列;
    (4)配列番号5の塩基配列;あるいは(5)配列番号7の塩基配列、配列番号7において1から数個の塩基が欠失、置換、付加及び/または挿入されている塩基配列であって、HMG−CoAシンターゼをコードする塩基配列、あるいは配列番号7の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であって、HMG−CoAシンターゼをコードする塩基配列。
  5. 請求項4に記載のDNAによるコードされるタンパク質。
  6. 下記の何れかを有するタンパク質。
    (1)配列番号8のアミノ酸配列、配列番号8において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されているアミノ酸配列であって、ホスホメバロン酸キナーゼ活性を有するアミノ酸配列、あるいは配列番号8のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ホスホメバロン酸キナーゼ活性を有するアミノ酸配列;
    (2)配列番号9のアミノ酸配列、配列番号9において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されているアミノ酸配列であって、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ活性を有するアミノ酸配列、あるいは配列番号9のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ活性を有するアミノ酸配列;
    (3)配列番号10のアミノ酸配列、配列番号10において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されているアミノ酸配列であって、メバロン酸キナーゼ活性を有するアミノ酸配列、あるいは配列番号10のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、メバロン酸キナーゼ活性を有するアミノ酸配列;
    (4)配列番号11のアミノ酸配列;あるいは(5)配列番号13のアミノ酸配列、配列番号13において1から数個のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されているアミノ酸配列であって、HMG−CoAシンターゼ活性を有するアミノ酸配列、あるいは配列番号13のアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、HMG−CoAシンターゼ活性を有するアミノ酸配列。
  7. 請求項1、2または4に記載のDNAを含むベクター。
  8. 請求項7に記載のベクターを有する形質転換体。
  9. 大腸菌である、請求項8に記載の形質転換体。
  10. 請求項1または2に記載のDNAを含むベクターを宿主に形質転換して作製した形質転換体を培養して培養物中にイソプレノイド化合物を生成させる工程、及び該培養物からイソプレノイド化合物を採取する工程を含む、イソプレノイド化合物の製造方法。
  11. イソプレノイド化合物が、ユビキノン、ビタミンK2、またはカロテノイドから選択されるイソプレノイド化合物である、請求項10に記載のイソプレノイド化合物の製造方法。
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