JP4405499B2 - 無線通信システム、基地局装置及び無線通信方法 - Google Patents

無線通信システム、基地局装置及び無線通信方法 Download PDF

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Description

本発明は、無線通信方法とシステム及び該システムに適した基地局装置に関する。
移動体通信システムや無線LAN(ローカルエリアネットワーク)、あるいはPAN(パーソナルエリアネットワーク)のような無線通信システムにおいては、基地局(無線アクセスポイントもいう)と基地局のカバーエリア内に存在する無線端末とで無線通信が行われる。基地局から無線端末への通信回線は下り回線(またはダウンリンク)と呼ばれ、無線端末から基地局への通信回線は上り回線(またはアップリンク)と呼ばれる。
このような無線通信システムにおいて、従来より通信速度を上げるための提案が種々なされている。例えば、特許文献1には基地局のカバーエリアを上り回線では大きく、下り回線では小さくすることにより、エリア内の電波状況に応じたシステム運営を最適化することが開示されている。特許文献2及び3には、高速の下り回線を実現する無線通信システムが開示されている。特許文献4には、送信電力が不足する場合に無線中継器を用いて上下回線で信号を中継増幅することにより、サービスエリアを拡大させることが示されている。
特開平5−175891号公報
特開平8−331153号公報
特開平8−244700号公報
特開平10−224284号公報
上述した従来の技術においては、無線通信システムの上り回線には基本的に低速回線のみが使用されることになるため、上り回線でのデータ伝送、すなわちデータのアップロードを高速に行うことが難しい。
一方、上り回線と下り回線の伝送速度を同一とした一般的な上下対称高速無線通信システムでは、必然的に無線端末からの送信電力を大きくする必要がある。従って無線端末がバッテリ駆動の場合、送信電力が大きいと通信持続時間を十分に確保することが難しくなる。
無線端末と基地局との距離が常に短ければ、無線端末の送信電力を抑えつつ高速の下り回線を実現できるが、そのためには基地局の敷設密度を上げる必要があり、無線通信システム全体のコストが高くなってしまう。
従って、本発明の目的は、無線通信システムにおいて無線端末の送信電力を減らしつつ上り回線での高速通信を実現し、またシステムコストを低減することにある。
上記の課題を解決するため、本発明の一つの観点による無線通信システムは、特定のカバーエリアを有する第1の基地局とカバーエリア内に配置された少なくとも一つの第2の基地局とを有し、第1の基地局はカバーエリア内に存在する特定の無線端末からの送信に対する第2の基地局の受信状態を示す受信状態報告信号を取得し、無線端末からの送信信号を直接受信する第1の受信経路及び無線端末からの送信信号を第2の基地局を介して受信する少なくとも一つの第2の受信経路のいずれか一つを受信状態報告信号に応じて選択する。第1の基地局は、複数の第2の基地局のうち無線端末に最も近い位置に存する第2の基地局の方向に向くアンテナビームを形成するアレイアンテナを含む。
本発明の他の観点によると、無線端末と通信を行う特定のカバーエリアを有する一の基地局に設けられる基地局装置であって、無線端末からの送信信号を受信する第1の受信手段と、前記カバーエリア内に設けられる少なくとも一つの他の基地局からの送信信号を受信する第2の受信手段と、無線端末からの送信に対する他の基地局の受信状態に従って第1の受信手段からの出力信号及び第2の受信手段からの出力信号のいずれか一つを選択する選択手段とを具備する基地局装置を提供する。
本発明の他の観点による無線通信システムは、特定のカバーエリアを有する第1の基地局とカバーエリア内に配置された少なくとも一つの第2の基地局とを具備し、第1の基地局は、第1の基地局からカバーエリア内に存在する無線端末への下り回線では無線端末からの送信信号を直接受信し、無線端末から第1の基地局への上り回線では第1の基地局及び第2の基地局からの送信に対する無線端末の受信状態に応じて無線端末からの送信信号を直接または第2の基地局を介して受信する。
本発明の別の観点による無線通信システムは、特定のカバーエリアを有する第1の基地局とカバーエリア内に配置された複数の第2の基地局とを具備し、第1の基地局は、カバーエリア内に存在する特定の無線端末からの送信に対する第2の基地局の受信状態を示す受信状態報告信号を取得する手段と、無線端末からの送信信号を直接受信する第1の受信経路及び無線端末からの送信信号を少なくとも一つの第2の基地局を介して受信する少なくとも一つの第2の受信経路のいずれか一つを受信状態報告信号に応じて選択する選択手段とを有する。
本発明のさらに別の観点によると、特定のカバーエリアを有する基地局と該カバーエリア内に存在する第1の無線端末との間で通信を行う無線通信システムにおいて、基地局から第1の無線端末への下り回線では該第1の無線端末からの送信信号を直接受信し、第1の無線端末から基地局への上り回線では基地局からの送信に対する第1の無線端末の受信状態に応じて第1の無線端末からの送信信号を直接またはカバーエリア内に存在する少なくとも一つの第2の無線端末を介して受信する。
本発明の一つの観点による無線通信方法は、第1の基地局と該第1の基地局のカバーエリア内に配置された少なくとも一つの第2の基地局及びカバーエリア内に存在する無線端末とを有する無線通信システムにおける通信方法において、第1の基地局への上り回線を形成するための無線端末からのアクセスに応答して、第2の基地局に無線端末からの送信に対する受信状態を問い合わせ、この問い合わせに対して第2の基地局から報告される受信状態に応じて、上り回線を形成するために無線端末からの送信信号を直接受信する第1の受信経路及び無線端末からの送信信号を第2の基地局を介して受信する少なくとも一つの第2の受信経路のいずれか一つを選択する。さらに、第2の受信経路が選択された場合に、第1の受信経路が選択された場合に比較して無線端末の送信電力を低減させる送信電力制御を行ってもよい。
本発明によれば、上り回線の通信速度を高くできると共に、無線端末の送信電力が減少するため、端末の通信持続時間を長くすることができ、さらに端末間の干渉が軽減されることによりセル設計が容易となる。また、一般に複数個敷設される第2の基地局は簡易な構成でよいため、システムコストが低減する。
以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1に模式的に示されるように、本発明の第1の実施形態に従う無線通信システムは、第1の基地局である一つの主基地局1と、第2の基地局である複数の分散基地局2A,2Bを有する。主基地局1は無線通信可能なエリア、すなわちカバーエリア11を有する。主基地局1のカバーエリア11内に、分散基地局2A,2Bが設置される。
分散基地局2A,2Bは、例えば主基地局1に対してメタルケーブルよる有線回線、光ファイバによる光回線あるいは無線回線により接続される。分散基地局2A,2Bは無線通信が可能なエリアとして、それぞれ異なるカバーエリア12A,12Bをそれぞれ有する。分散基地局2A,2Bのカバーエリア12A,12Bは、図1中に示されるように一部で重複していてもよい。
主基地局1のカバーエリア11内には、無線端末3A,3Bが存在する。無線端末3A,3Bは、例えばセルラーシステムにおける携帯電話機またはPDA(Personal Digital Assistant)のような携帯端末、あるいは無線LANカードのような無線アダプタなどである。無線端末3A,3Bは、主基地局1と無線通信を行う。これにより無線端末3A,3Bは、主基地局1に接続される基幹網4の先に接続されている他の端末5と通信を行うこともできる。
主基地局1と無線端末3A,3Bとの通信は、主基地局1から無線端末3A,3Bに向かう下り回線では直接、すなわち主基地局1から無線端末3A,3Bに対して無線により直接送信が行われる。
一方、無線端末3A,3Bから主基地局1に向かう上り回線では、主基地局1と無線端末3A,3Bとはカバーエリア11内での無線端末の位置によって異なる経路で無線通信を行う。すなわち、上り回線では主基地局1の近傍に存在する例えば無線端末3Bに対しからは、主基地局1に対して無線により直接送信が行われる。主基地局1から遠い位置に存在する例えば無線端末3Aからは、その近くに存在する例えば分散基地局2Bを介して主基地局1に対して送信が行われる。
図1では一つの主基地局1が用いられているが、セルラーシステムのように複数の主基地局を有する無線通信システムにも本発明は有効である。その場合、複数の基地局をそれぞれのカバーエリアが互いに一部で重複するように配置してもよい。また、図1では一つの主基地局1のカバーエリア11内に第2の基地局として複数の分散基地局2A,2Bが敷設されているが、一つの第2の基地局が敷設される構成でも構わない。
<主基地局について>
次に、図1中に示した主基地局1の具体的な構成例を図2により説明する。
図1中に示した基幹網4から主基地局1に伝送されてくるデータ信号は、コントローラ100からの制御に従ってデータ処理部101により所要の処理が施される。データ処理部101から出力される処理後のデータ信号は、ディジタル変調器102により変調される。ディジタル変調器102から出力される送信ディジタル信号は、高周波部103によってアナログ信号に変換されると共にRF(Radio Frequency: 無線周波数)帯の周波数に変換される。高周波部103からの出力信号は、電力増幅器104により所要レベルまで増幅され、送受切替器105を経てアンテナ106に供給されることにより、電波として放射される。アンテナ106から放射される電波は、図1中に示した無線端末3Aまたは3Bによって受信される。
一方、アンテナ106によって受信された電波は送受切替器105を介して低雑音増幅器107に入力され、ここで所要レベルまで増幅される。低雑音増幅器107からの出力信号は、高周波部108によってRF帯からIF(intermediate-frequency: 中間周波数)帯またはBB(ベースバンド)帯の周波数に変換されると共に、ディジタル信号に変換される。高周波部108から出力される受信ディジタル信号は、ディジタル復調器109により復調され、セレクタ110に入力される。
主基地局1には、図1中に示した分散基地局2Aまたは2Bからも信号が送信されてくる。分散基地局から送信されてくる信号は、例えば増幅器111により所要レベルまで増幅され、中間周波部112により中間周波数に変換されると共に、ディジタル信号に変換され、セレクタ110に入力される。
セレクタ110は、コントローラ100によって制御され、上り回線での受信経路を選択するために、無線端末から直接送信されてくる信号か、無線端末から分散基地局を経由して送信されてくる信号のいずれかを選択する。具体的には、セレクタ110は復調器109からの出力信号か、中間周波部112からの出力信号のいずれかを選択する。セレクタ110によって選択された信号は、図1中に示した基幹網4に転送される。
コントローラ100は、無線端末からの上りアクセス信号の受信に際して、上り回線の受信経路を選択するために、分散基地局に対して受信状態の問い合わせを行う機能と、主基地局1自身の無線端末からの受信状態及び分散基地局から報告される受信状態に基づいてセレクタ110を制御する機能を有する。すなわち、上り回線の選択時にコントローラ100からは受信状態問い合わせ信号が出力される。受信状態問い合わせ信号は、例えば中間周波数部113により中間周波数信号に変換され、さらに増幅器114により増幅された後、分散基地局に送信される。
分散基地局からは、主基地局1からの受信状態問い合わせ信号に応答して受信状態報告信号が送信されてくる。送信されてきた受信状態報告信号は、増幅器111及び中間周波数部112を経てコントローラ100に入力される。
図2においては、主基地局1と分散基地局との間の送受信回路は、1チャネル分のみ示されているが、図1に示したように主基地局1のカバーエリア11内に複数の分散基地局2A,2Bが敷設される場合、分散基地局2A,2Bの各々との間に送受信回路が設けられる。この場合、コントローラ100は主基地局1自身の受信状態信号及び各々の分散基地局から送信されてくる受信状態報告信号を比較し、最も受信状態の良好な上り回線の通信経路を形成するようにセレクタ110を制御する。
<分散基地局について>
次に、図1中に示した分散基地局2A,2Bについて具体的に説明する。図3は一つの分散基地局2の具体的な構成例を示している。
図1中に示した無線端末3Aまたは3Bから図3の分散基地局2に送信されてきた信号は、アンテナ201によって受信される。アンテナ201から出力される受信信号は、フィルタ202を介して低雑音増幅器203に入力される。
低雑音増幅器203には、受信信号強度測定器209が接続されている。受信信号強度測定器209は受信信号強度、すなわちアンテナ201の受信電界強度を測定する。これによって無線端末3Aまたは3Bからの信号に対する受信状態、言い換えれば受信品質を知ることができる。低雑音増幅器203からの出力信号は、例えば中間周波数部204によってIF帯の信号に変換され、さらに増幅器205により増幅された後、図1中に示した主基地局1に例えば有線回線により送信される。
図3の分散基地局2には、さらに図1中に示した主基地局1から例えば有線回線によって受信状態問い合わせ信号が送信されてくる。受信状態問い合わせ信号は、増幅器206によって増幅され、さらに例えば中間周波数部204によってIF帯の信号に変換された後、コントローラ208に入力される。
コントローラ208は受信状態問い合わせ信号を受信すると、受信信号強度測定器209の測定結果を受信状態報告信号として出力する。コントローラ208から出力される受信状態報告信号は、加算器210を介して中間周波部204に入力され、増幅器205を介して主基地局1に送信される。
以上の説明では、図2に示した主基地局1と図3に分散基地局との間の通信はIF帯で行っているが、BB帯で行ってもよく、またRF帯すなわち無線回線行ってもよい。さらに、後述するように光回線により主基地局1と分散基地局との通信を行ってもよい。
<無線端末について>
次に、図4を用いてについて無線端末3A,3Bについて具体的に説明する。図3は、一つの無線端末3の具体的な構成例を示している。
図4の無線端末3では、アンテナ301によって図1中に示した主基地局1からの信号が受信される。アンテナ301から出力される受信信号は、スイッチ302を介して低雑音増幅器303に入力される。低雑音増幅器303によって増幅された受信信号は、高周波部304によって例えばBB帯の信号に変換されると共にディジタル信号に変換された後、ディジタル復調器305によって復調され、受信ディジタルBB信号が生成される。受信ディジタルBB信号はベースバンド処理部306に入力され、元のデータが復号される。復号されたデータは、例えばスピーカや表示器のような出力部307によって出力される。
一方、例えばマイクロフォンやキーボードのような入力部308によって入力されたデータ信号はベースバンド処理部306に入力され、ここで送信ディジタルBB信号が生成される。送信ディジタルBB信号は、ディジタル変調器309により変調される。変調された信号は高周波部310によってRF帯の信号に変換されると共に、アナログ信号に変換された後、電力増幅器311により所要レベルまで増幅される。電力増幅器311からの出力信号は、スイッチ302を介してアンテナ301に供給されることにより、電波として放射される。アンテナ301から放射される電波は、図1中に示した主基地局1または分散基地局2A,2Bのいずれかによって受信される。
電力増幅器311は利得が可変であり、その利得はコントローラ312によって制御される。コントローラ311には、主基地局1から送信されてくる送信電力制御信号がアンテナ301、スイッチ302、低雑音増幅器303、高周波部304、ディジタル復調器305及びベースバンド処理部306を経て入力される。コントローラ311は、この送信電力制御信号に従って電力増幅器312の利得を制御することにより、無線端末3の送信電力を制御する。
<無線通信システムの動作>
次に、本実施形態に従う無線通信システムの具体的な動作例を図5及び図6を用いて説明する。図5は、主基地局1のカバーエリア11内における3つの分散基地局2A,2B,2Cと無線端末3の配置の一例を示している。図6は、図5のような配置において上り回線の経路を選択する手順を示している。
まず、無線端末3は例えばデータのアップロードを行う場合、すなわち基地局1側へデータを伝送する場合、主基地局1に対して上りアクセスの要求を行う(ステップS1)。無線端末3からの上りアクセス要求信号は、例えば図4におけるコントローラ312から電力増幅器311、スイッチ302及びアンテナ301を経由して主基地局1に送信される。
図2に示す主基地局1に送信されてきた上りアクセス要求信号はアンテナ106により受信され、送受切替器105、低雑音増幅器107、中間周波数部108及びディジタル復調器109を経由してコントローラ100に伝達される。こうして上りアクセス要求を受けた主基地局1は、コントローラ100から中間周波数部113及び増幅器114を介して有線回線によりカバーエリア11内に存在する分散基地局2A,2B,2Cに対して、受信状態問い合わせ信号を送信する(ステップS2)。
分散基地局2A,2B,2Cによって受信された受信状態問い合わせ信号は、図3において増幅器206及び中間周波数部207を経由してコントローラ208に伝達される。コントローラ208は、受信状態問い合わせ信号を受けると受信信号強度測定器209の測定結果を受信状態報告信号として出力する。受信状態報告信号は加算器210、中間周波部204及び増幅器205を介して有線回線により主基地局1に送信される(ステップS3)。
図2に示す主基地局1では、分散基地局2A,2B,2Cからの受信状態報告信号が増幅器111及び中間周波数部112を介してコントローラ100に伝達される。コントローラ100は、主基地局1自身の受信状態信号及び分散基地局2A,2B,2Cからの受信状態報告信号を比較し、それに基づき最も受信状態の良好な上り回線の経路が形成されるようにセレクタ110の制御を行う。図5の例では、分散基地局2Bが最も無線端末3に近接しているため、無線端末3からの受信状態が最も良好である。そこで、主基地局1ではコントローラ100によって分散基地局2Bに対する受信指示信号を発生し、中間周波数部113及び増幅器114を介して分散基地局2Bに受信指示信号を有線回線により送信する(テップS4)。
また、これに伴い主基地局1ではコントローラ100からの指示によってデータ処理部101により無線端末3に対する送信電力制御信号を発生し、ディジタル変調器102、高周波部103、電力増幅器104及び送受切替器105を介してアンテナ106から無線端末3に対して送信電力制御信号を送信する(ステップS5)。
図4に示す無線端末3では、主基地局1からの送信電力制御信号がアンテナ301によって受信され、スイッチ302、低雑音増幅器303、高周波部304、ディジタル復調器305及びベースバンド処理部306を介してコントローラ312に伝達される。コントローラ312では、送信電力制御信号に従って電力増幅器311の利得を制御することにより、無線端末3の送信電力を制御する。
ここで、下り回線においては主基地局1から無線端末3へ直接送信が行われる(ステップS6)。この場合、主基地局1は基本的に送信電力に制限がないため、十分な送信電力で無線端末3に送信を行うことができる。従って、無線端末3が主基地局1から位置的に遠い場合でも、無線端末3は十分な受信電界強度で主基地局1からの信号を受信することができる。
一方、上り回線においては無線端末3から主基地局1に対して直接送信を行う場合、無線端末3は比較的大きな送信電力で送信を行う必要がある。特に、無線端末3が主基地局1から遠い位置に存在する場合、無線端末3は大きな送信電力を必要とする。これに対して、無線端末3から近傍の分散基地局2Bを介して主基地局1に送信を行う場合には、無線端末3の送信電力は比較的小さくてよい。そこで、ステップS5では無線端末3から主基地局1への直接送信の場合より送信電力を所定量だけ低減させるような送信電力制御信号を送信する。
分散基地局2Bによって受信された受信指示信号は、図3において増幅器206及び中間周波数部207を介してコントローラ208に送られる。これに基づいて、分散基地局2Bでは無線端末3から無線回線により送信されてくる信号をアンテナ201によって受信し、フィルタ202、低雑音増幅器203、加算器210、中間周波数部204及び増幅器204を介して有線回線により主基地局1に転送する(ステップS7)。
このように下り回線では常に主基地局1から無線端末3に直接送信が行われるが、上り回線では無線端末3から主基地局1及び分散基地局2A,2B,2Cのうち無線端末3からの受信状態が良好な方に向けて送信が行われる。また、この例のように同一の主基地局1のカバーエリア11内に複数の分散基地局2A,2B,2Cが存在する場合、無線端末3からは最も受信状態の良好な分散基地局2Bに送信が行われ、無線端末3から送信される信号は分散基地局2Bから主基地局1に転送される。
従って、本実施形態の無線通信システムによると、無線端末3の消費電力が低減されるため、無線端末3がバッテリ駆動の場合でも通信持続時間を確保でき、しかも下り回線はのみならず、上り回線でも高速の無線伝送を実現できる。
高速無線通信を実現するディジタル変調方式として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing; 直交周波数分割多重)が知られている。例えば図4に示した無線端末3内のディジタル変調器309にOFDM変調器を用い、またディジタル復調器305にOFDM復調器を用いることにより、高速無線通信を行うことができる。OFDM方式は1シンボル内に多数のビットを伝送できる反面、変調された信号(OFDM信号)のダイナミックレンジが広いため、送信には線形電力増幅器を使用する必要がある。線形の電力増幅器は、非線形電力増幅器に比較して低効率であり消費電力が大きい。
無線端末3がバッテリ駆動の場合、実用的な通信持続時間を確保するためには消費電力を極力下げる必要がある。このためには図4に示した無線端末3内の電力増幅器311で消費される電力を低減させることが最も効果的であり、従って送信電力を低減させることが望ましい。本実施形態によれば、上り回線において無線端末3は主基地局1及び分散基地局2A,2B,2Cのうち最も近い基地局に送信を行えばよいため、無線端末3の送信電力を最小限に抑えつつ、高速無線通信を実現することが可能となる。
さらに、本実施形態によると、上り回線及び下り回線に対応した多数の基地局(本実施形態における主基地局に相当する)を同一エリア内に敷設することに代えて、上り回線のみに対応した簡易な分散基地局を主基地局のカバーエリア内に敷設すればよいので、無線通信システム全体のコストを低減することができる。
<分散基地局について>
次に、図7を用いて分散基地局の他の具体例を説明する。図7に示す分散基地局2は、ROF(Radio On Fiber)を用いて実現され、図3中の送信系の中間周波数部204が光−電気変換器211に、増幅器205が光増幅器212にそれぞれ置き換えられている。また、図3中の受信系の中間周波数部207が電気−光変換器214に、増幅器206が光増幅器213にそれぞれ置き換えられている。さらに、図7の分散基地局2と前述の主基地局1とは光ファイバを用いた光回線によって接続される。
アンテナ201によって受信された無線端末からの信号は、フィルタ202、低雑音増幅器203及び加算器210を介して光−電気変換器211に入力され、ここで光信号に変換される。光信号は光増幅器212により増幅された後、光回線を介して主基地局1に伝送される。
一方、主基地局1から光回線を介して伝送されてきた信号は、光増幅器213により増幅され、光−電気変換器214により電気信号に戻された後、コントローラ208に入力される。コントローラ208の動作は図3と同様であるため、説明を省略する。このように分散基地局と主基地局を光回線によって接続しても、先の場合と同様の効果が得られることは言うまでもない。
(第2の実施形態)
図8に、本発明の第2の実施形態に係る無線通信システムを示す。本実施形態では、主基地局1はアレイアンテナを用いることにより、無線端末3と通信を行う分散基地局2Aの方向に向く送信ビームパターン13を形成する。これによって下り回線の通信容量を増大させ、かつ通信品質を向上させることができる。
図9には、本実施形態における主基地局1に備えられるアレイアンテナを示す。複数のアンテナ素子141,142,…,14Nが任意の形状、例えば直線状に配列される。各アンテナ素子141,142,…,14Nには、可変利得増幅器121,122,…,12N及び可変移相器131,132,…,13Nを介して送信信号が供給される。このようなアレイアンテナにおいて、可変利得増幅器121,122,…,12Nの利得及び可変移相器131,132,…,13Nの移相量を変化させることによって、すなわちアレイアンテナに与える複素重み係数の組を変えることによりアンテナの指向性、すなわち送信ビームパターンを変えることができることは良く知られている。
本実施形態では、分散基地局の方向に向く送信ビームパターン13を形成できるような複素重み係数のグループを記憶保持したメモリ(ROM)151,152,…,15Mが用意されている。セレクタ160によっていずれかの複素重み係数グループが選択され、アレイアンテナの可変利得増幅器121,122,…,12N及び可変移相器131,132,…,13Nに与えられる。このように予め用意された複素重み係数グループを選択して設定するアレイアンテナは、スイッチトアレイとも呼ばれる。
図8に示す無線通信システムにおいては、主基地局1はカバーエリア11内に敷設された分散基地局2A,2Bの位置が当然分かっており、また上り回線において無線端末3と通信を行っている分散基地局2Aの位置も容易に認識することが可能である。このような位置情報を利用して、セレクタ160は無線端末3と通信を行っている分散基地局2Aの位置に対応した複素重み係数グループを選択する。これにより分散基地局2Aの方向に送信ビームパターン13を形成することができる。
無線通信システムの基地局にいわゆるアダプティブアレイアンテナやフェーズドアレイアンテナを用いて、無線端末の方向にアンテナビームを向ける技術は既に知られている。このようなシステムでは、無線端末の位置情報を取得して当該無線端末の方向に正確にアンテナビームを向けるために、無線端末の移動に伴って非常に複雑な重み制御を行う必要があり、基地局のシステムコストを上昇させていた。
これに対し、本実施形態の無線通信システムでは、無線端末3の位置情報を取得してその方向に送信ビームパターンを向けるのではなく、既知の固定した位置に敷設された分散基地局のうち無線端末3と通信を行っている分散基地局2Aの方向にビームパターン13を向ける。これによって、結果的に主基地局1から無線端末3へ効率よく送信を行うことができる。この場合、アレイアンテナは図9に示したようなスイッチトアレイ形式でよく、ビームパターン13の設定は予め用意された固定的あるいは半固定的な複素重み係数グループの切替により実現できるため、アダプティブアレイを用いる場合に比較して主基地局1のシステムコストを飛躍的に下げることができる。
このように本実施形態によると、上り回線に用いる分散基地局の既知の位置情報を利用して、主基地局1から無線端末3と通信を行う分散基地局2Aの方向に送信ビームパターン13を向けることによって、システムコストの上昇を抑えつつ下り回線の通信容量の増大と通信品質の向上を図ることができる。
(第3の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態に従う無線通信システムであり、主基地局1のカバーエリア11内にマルチホップ通信機能を有する複数の分散基地局6A,6Bが敷設されている。本実施形態によると、下り回線ではこれまでの実施形態と同様に無線端末3A,3Bは主基地局1と直接通信を行う。一方、上り回線では主基地局1の近傍に位置している無線端末(図10の例では端末3B)は、主基地局1と直接通信を行い、主基地局1から離れている無線端末(図10の例では端末3A)は、マルチホップ通信により複数の分散基地局6A,6Bを経由して主基地局1と通信を行う。
図11には、本実施形態におけるマルチホップ通信機能を有する分散基地局6の具体例を示す。アンテナ221では、主基地局1または他の分散基地局から無線により送信される信号が受信される。例えば、図10中に示す分散基地局6Aでは主基地局1から送信される信号がアンテナ221で受信され、分散基地局6Bでは分散基地局6Aから送信される信号がアンテナ221で受信される。
アンテナ221から出力される受信信号はフィルタ322及び低雑音増幅器223を介して高周波部224に入力され、高周波部224によってディジタル信号に変換されると共にRF帯の周波数に変換される。高周波部224からの出力信号は、ディジタル復調器225によって復調された後、ディジタル変調器226によって高周波部224からの出力信号とは異なる信号に再び変調される。ディジタル変調器226からの出力信号は電力増幅器227により所要レベルまで増幅され、アンテナ227に供給されることにより、電波として放射される。
アンテナ227から放射される電波は、主基地局1または他の分散基地局によって受信される。例えば、アンテナ227から放射される電波は、図10中に示す分散基地局6Aでは分散基地局6Bによって受信され、分散基地局6Bでは主基地局1によって受信される。
このように上り回線で用いる分散基地局6A,6Bにマルチホップ通信機能を持たせることにより、無線端末3A,3Bの送信電力に制限があっても主基地局1までの高速無線通信を実現でき、上り回線及び下り回線の両方の通信容量増大と高品質の通信が可能である。
(第4の実施形態)
図12は、本発明の第4の実施形態に従う無線通信システムであり、無線端末3A,3B,3Cにマルチホップ通信機能を持たせている。本実施形態では、分散基地局は不要である。本実施形態によると、下り回線ではこれまでの実施形態と同様に無線端末3A,3B,3Cは主基地局1と直接通信を行う。
一方、上り回線では主基地局1の近傍に位置している無線端末(図12の例では端末3C)は、主基地局1と直接通信を行い、主基地局1から離れている無線端末(図12の例では端末3A)は、マルチホップ通信により他の少なくとも一つの無線端末(図12の例では3Bを経由して主基地局1と通信を行う。
このように上り回線に関して無線端末3A,3B,3Cにマルチホップ通信機能を持たせることにより、第3の実施形態と同様に無線端末3A,3B,3Cの送信電力に制限があっても主基地局1までの高速無線通信を実現でき、上り回線及び下り回線の両方の通信容量増大と高品質の通信が可能である。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
具体的には、例えば第1の実施形態または第2の実施形態に第3の実施形態または第4の実施形態のいずれかあるいは両方を組み合わせてもよいし、第3の実施形態と第4の実施形態を組み合わせて実施してもよい。
本発明は、移動体通信システムや無線LAN、あるいはPANのような無線通信システムに応用可能である。
本発明の第1の実施形態に従う無線通信システムの模式的構成を示す図 図1中の主基地局の具体例を示すブロック図 図1中の分散基地局の具体例を示すブロック図 図1中の無線端末の具体例を示すブロック図 第1の実施形態に従う無線通信システムの具体的な動作例を説明するための模式図 第1の実施形態に従う無線通信システムの動作手順を示す図 図1中の分散基地局の他の具体例を示すブロック図 本発明の第2の実施形態に従う無線通信システムの模式的構成を示す図 図1中に示す主基地局に備えられるスイッチトアレイアンテナの構成例を示すブロック図 本発明の第3の実施形態に従う無線通信システムの模式的構成を示す図 図10中の分散基地局の具体例を示すブロック図 本発明の第4の実施形態に従う無線通信システムの模式的構成を示す図
符号の説明
1…主基地局、2,2A,2B,2C…分散基地局、3,3A,3B…無線端末、4…基幹網、5…他の端末、6A,6B…マルチホップ通信機能を有する分散基地局、11…第1のカバーエリア、12A,12B…第2のカバーエリア、13…ビームパターン。

Claims (10)

  1. 特定のカバーエリアを有する第1の基地局と前記カバーエリア内の固定位置に設置された複数の第2の基地局とを具備し、
    前記第1の基地局は、前記複数の前記第2の基地局のうち前記カバーエリア内に存在する特定の無線端末に最も近い位置に存在する第2の基地局の方向に向くアンテナビームを形成するアレイアンテナを含み、該アレイアンテナを介して前記無線端末に最も近い位置に存在する第2の基地局に対して送信を行う手段と、前記無線端末からの送信に対する前記第2の基地局の受信状態を示す受信状態報告信号を取得する手段と、前記無線端末からの送信信号を直接受信する第1の受信経路及び前記無線端末からの送信信号を前記第2の基地局を介して受信する少なくとも一つの第2の受信経路のいずれか一つを前記受信状態報告信号に応じて選択する選択手段とを有する無線通信システム。
  2. 前記第2の基地局は、前記無線端末からの送信信号を受信する受信手段と、前記受信手段からの出力信号を増幅して前記第1の基地局に送信する送信手段とを有する請求項1記載の無線通信システム。
  3. 前記第1の基地局は、前記無線端末からの送信信号を受信する第1の受信手段と、前記第2の基地局からの送信信号を受信する少なくとも一つの第2の受信手段をさらに有し、前記選択手段は、前記第1の受信経路及び前記少なくとも一つの第2の受信経路のいずれか一つを選択するために前記第1の受信手段からの出力信号及び前記第2の受信手段からの出力信号のいずれか一つを前記受信状態報告信号に従って選択する請求項1記載の無線通信システム。
  4. 前記第2の受信手段は、複数の前記第2の基地局からの送信信号を受信し、前記選択手段は、前記受信状態報告信号に従って前記第1の受信手段からの出力信号及び前記複数の第2の受信手段からの複数の出力信号のいずれか一つを選択する請求項3記載の無線通信システム。
  5. 前記アレイアンテナは、複数の前記第2の基地局の位置にそれぞれ対応する複数の複素重み係数グループを記憶する記憶手段を有し、該記憶手段に記憶された複数の複素重み係数グループのうち前記無線端末に最も近い位置に存在する第2の基地局に対応する一つの複素重み係数グループを用いて前記アンテナビームを形成する請求項1記載の無線通信システム。
  6. 無線端末と通信を行う特定のカバーエリアを有する一の基地局に設けられる基地局装置において、
    前記カバーエリア内の固定位置に設置される少なくとも一つの他の基地局の方向に向くアレイアンテナを含み、該アレイアンテナを介して前記他の基地局に対して送信を行う送信手段と、
    前記無線端末からの送信信号を受信する第1の受信手段と、
    前記他の基地局からの送信信号を受信する第2の受信手段と、
    前記無線端末からの送信に対する前記他の基地局の受信状態に従って前記第1の受信手段からの出力信号及び前記第2の受信手段からの出力信号のいずれか一つを選択する選択手段とを具備する基地局装置。
  7. 特定のカバーエリアを有する第1の基地局と前記カバーエリア内の固定位置に設置された少なくとも一つの第2の基地局とを具備し、
    前記第1の基地局は、前記第1の基地局から前記カバーエリア内に存在する無線端末への下り回線では前記無線端末送信信号を直接送信し、前記無線端末から前記第1の基地局への上り回線では前記第1の基地局及び第2の基地局からの送信に対する前記無線端末の受信状態に応じて前記無線端末からの送信信号を直接または前記第2の基地局を介して受信し、さらに前記無線端末に最も近い位置に存在する第2の基地局の方向に向くアンテナビームを形成するアレイアンテナを含み、該アレイアンテナを介して前記無線端末に最も近い位置に存在する第2の基地局に対して送信を行うように構成される無線通信システム。
  8. 特定のカバーエリアを有する第1の基地局と前記カバーエリア内の固定位置に設置された複数の第2の基地局とを具備し、
    前記第1の基地局は、前記複数の前記第2の基地局のうち前記カバーエリア内に存在する特定の無線端末に最も近い位置に存在する第2の基地局の方向に向くアンテナビームを形成するアレイアンテナを含み、該アレイアンテナを介して前記無線端末に最も近い位置に存在する第2の基地局に対して送信を行う手段と、前記無線端末からの送信に対する前記第2の基地局の受信状態を示す受信状態報告信号を取得する手段と、前記無線端末からの送信信号を直接受信する第1の受信経路及び前記無線端末からの送信信号を複数の前記第2の基地局を順次介して受信する少なくとも一つの第2の受信経路のいずれか一つを前記受信状態報告信号に応じて選択する選択手段とを有する無線通信システム。
  9. 第1の基地局と該第1の基地局のカバーエリア内の固定位置に設置された複数の第2の基地局及び前記カバーエリア内に存在する無線端末とを有する無線通信システムにおける通信方法において、
    前記第1の基地局から前記複数の前記第2の基地局のうち前記カバーエリア内に存在する特定の無線端末に最も近い位置に存在する第2の基地局の方向に向くアンテナビームを形成するアレイアンテナを含み、該アレイアンテナを介して前記無線端末に最も近い位置に存在する第2の基地局に対して送信を行うステップと、
    第1の基地局への上り回線を形成するための前記無線端末からのアクセスに応答して、前記第2の基地局に前記無線端末からの送信に対する受信状態を問い合わせるステップと、
    前記問い合わせに対して前記第2の基地局から報告される受信状態に応じて、前記上り回線を形成するために前記無線端末からの送信信号を直接受信する第1の受信経路及び前記無線端末からの送信信号を前記第2の基地局を介して受信する少なくとも一つの第2の受信経路のいずれか一つを選択する選択ステップとを具備する無線通信方法。
  10. 前記選択ステップにより前記第2の受信経路が選択された場合に、前記第1の受信経路が選択された場合に比較して前記無線端末の送信電力を低減させる送信電力制御ステップをさらに具備する請求項9記載の無線通信方法。
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