JP4382706B2 - 医薬液体懸濁物 - Google Patents

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発明の背景
注射用溶液中のワクチンまたは薬物は本来不安定であり、冷却を要する。医薬品業界は薬物を凍結乾燥することにより不安定問題に昔から取り組んできた。乾燥薬物の不正確な再調製で、誤った用量または汚染溶液をもたらすことがあるため、これは高価、不便、かつ本来的に危険である。確固とした、安定で、直ちに注射可能な液体処方物を開発する多くの試みが、過去100年にわたり行われてきたが、不成功に終わった。本来強くて小さな分子の薬物のみが、有用な貯蔵寿命で、水溶液中に残存しうる。
この問題はワクチン業界で特に重大である。2005年度までに、36億回分のワクチンが世界中で投与されねばならないと見積もられている。これは常に冷却を要する標準ワクチンフォーマットを用いたのでは不可能である、と世界保健機関(WHO)により言われた(”Revolutionizing Immunizations”(革命的免疫法)Jodar L.,Aguado T.,Lloyd J.and Lambert P-H.,Genetic Engineering News,Feb 15 1998)。開発途上中の世界でワクチン工場から地方の町へと延びる冷却機の“コールド・チェーン(低温流通システム)”が現在用いられている。コールド・チェーンのコストは、免疫キャンペーンを行っているワクチン業界および非政府保健機関にとり莫大である。コールド・チェーンの維持コストだけで、毎年2億USドルを超える、とWHOは見積もっている。加えて、免疫キャンペーンはコールド・チェーンの末端リンク近くに住む者に届くだけかもしれない。
ワクチン接種キャンペーンでは、所定の用量が正確に注射されて、分解の徴候を示さないよう、医療スタッフに要請している。麻疹、黄熱およびBCGのような一部のワクチンを再調製する必要性も、当業界では重大な関心事である。これは正しい投与量を保証するよう正確に行われねばならず、たびたび臨床的惨事を招いてきた汚染源にもなりかねない。加えて、所定期間中に2回以上ワクチンを接種することが多くの場合に必要であり、特定の混合物または“多価”ワクチンが一部成分の化学的不適合のせいで利用できなければ、これは複数回の注射を要することがある。WHOは、冷却の必要性がなく、再調製を要しない、次世代の安定ワクチンの研究を奨励することにより、これらの問題を重要視している(”Pre-Filled Monodose Injection Devices:A safety standard for new vaccines,or a revolution in the delivery of immunizations?”(前充填単用量分注射器具:新規ワクチンの安全標準または免疫デリバリーの革命)Lloyd J.and Aguado M.T.WHO publication,May 1998;”General policy issues:injectable solid vaccines:a role in future immunization?”(一般方針問題:注射用固形ワクチン:将来の免疫における役割)Aguado M.T.,Jodar L.,Lloyd J.,Lambert P.H.WHO publication No A59781)。
この問題の理想的解決策は、完全に安定で直ちに注射可能な処方物であろう。このような安定ワクチンは注射器具自体に個別用量として入れられるか、または大規模免疫キャンペーンのために、多量に輸送されて、無針ジェットインジェクターにより投与される。ガスジェット注入による乾燥固形物の経皮デリバリーが記載されており(Sarphie DF,Burkoth TL.,Method for providing dense particle compositions for use in transdermal particle delivery(経皮粒子デリバリー用の高密度粒子組成物の調製方法).PCT公開WO9748485(1996))、乾燥DNAワクチンでの経皮接種が非常に有効なようである(“PowderJect’s Hepatitis B DNA Vaccine First To Successfully Elicit Protective Immune Response In Humans”(ヒトで防御免疫応答をうまく誘導する、初めてのPowderJectのB型肝炎DNAワクチン)http://www.powderject.com/pressreleases.htm(1998))。
これらの粉末インジェクターを稼働するために用いられるヘリウムガスの極超音速衝撃波はパワーが限られており、その分量の微粒子を筋肉内にデリバリーできない。これは、低質量粒子が深く滲入する上で適度な勢いに到達しえないからである。コロイド金粒子に被覆されたDNAワクチンの皮内デリバリーが良好な免疫原性のためには向いているが、不溶性アルミニウムまたはカルシウム塩でアジュバントされた一般ワクチンは許容しえない皮膚刺激を生じる。それらは筋肉内に投与されねばならない。必要なものは、現行の針および注射器技術により達しうる場合に似た、皮内から筋肉深部内までのある範囲のデリバリー深さに達しうる、フレキシブルなシステムである。大規模ワクチン接種キャンペーンでは、これは約3000psi(約210kg/cm2)の圧力を用いて、細い(〜0.15mm径)液体流を“リキッド・ネール”(liquid nail)へ加速しうる液体ジェットインジェクターの開発により解決された。この器具は、表皮に微小な穴をあけることにより、皮膚から深部皮下または筋肉組織中へ無痛でその分量をデリバリーする。液体流へ伝えられる高い勢いのおかげで、深く滲入しうる。現在までのところ、注入される薬物およびワクチンは水ベースであったが、前記の不安定問題のせいで、この技術を活用しうる安定水性製品の範囲は非常に限られている。
広範囲の生物活性分子は糖ガラス中で乾燥させて安定化されることが、現在認められている(Roser B.”Protection of proteins and the like”(タンパク質などの保護)UK特許2,187,191;Roser B and Colaco C.”Stabilization of biological macromolecular substances and other organic compounds”(生体高分子物質および他の有機化合物の安定化)PCT公開WO91/18091;Roser B and Sen S.”New stabilizing glasses”(新規安定化ガラス)PCT特許出願9805699.7,1998)。これらの乾燥安定化活性剤は、高温および電離放射線のような敵対的環境により影響をうけない。
糖により分子の著しい安定化を生じるメカニズムはガラス転移である。活性分子を含有した糖溶液が乾燥されると、それは糖の溶解限界に達したときに結晶化するか、または過飽和シロップになる。結晶化に抵抗する糖の能力は、良好な安定剤の重要な性質である。トレハロースはこの点で優れているが(Green JL.& Angel CA.,Phase relations and vitrification in saccharide water solutions and the trehalose anomaly(糖水溶液中における相関係およびガラス化とトレハロース異常).J.Phys.Chem.93,2880-2882(1989))、唯一ではない。更に乾燥させるとシロップを次第に固化させ、これが低い残留水分でガラスに変わる。いつのまにか、活性分子が水中の溶液から乾燥糖ガラス中の固溶体へと変化する。化学拡散はガラス中ごくわずかで、そのため化学反応は事実上止む。変性は化学変化であるため、それはガラス中で生じえず、分子は安定化している。この形態のときは、もし他の一つの条件が合うならば、分子は未変化のままでいられる。これは良好な安定剤の第二の重要な性質である、即ち、それは化学的に不活性かつ非反応性である、ということである。多くのガラスが失敗したが、その理由はそれらが貯蔵時に生成物と反応するからである。明らかな問題は還元糖で生じ、これは良好な物理的ガラスを形成しても、それらのアルデヒド基は典型的メイラード反応で生成物のアミノ基を攻撃する。これが、多くの凍結乾燥薬剤が冷蔵保管を要する主な理由である。非反応性の糖は、全く冷却を要しない安定な製品を与える。
糖ガラス中で固定された生体分子は、それら自体および糖の双方が不溶性である非水性工業溶媒中でも安定である(Cleland JL.and Jones AJS.”Excipient stabilization of polypeptides treated with organic solvents”(有機溶媒で処理されたポリペプチドの賦形剤安定化)US特許5,589,167(1994))。糖ガラスは非溶媒液中で不透過性バリアとして作用するため、ガラス中で固溶体の生体分子は溶媒の化学反応および環境の双方から防御される。液体自体が安定であれば、懸濁ガラス粒子中の感受性生成物は安定な2相液体処方物を形成する。Cleland and Jones(1994)により記載された種類の工業溶媒は、取扱いに際して有用性が限られている。生体適合性非水性液体に代えると、最も不安定な薬物、ワクチンおよび診断薬でも、安定な液体処方物として処方しうるであろう。
第一世代の安定非水性液体は薬物またはワクチンデリバリー用に考えられた(B.J.Roser and S.D.Sen ”Stable particle in liquid formulations”(液体処方物中の安定粒子))。PCT特許出願GB98/00817は、ゴマ、落花生もしくは大豆油のような注射用油またはオレイン酸エチルのような単純エステルに懸濁された、活性剤を含有する安定化ガラスの粉末の処方物について記載していた。懸濁された糖ガラス粒子は極めて親水性であり、一方油は疎水性である。分離しやすい親水および疎水相の強い傾向のせいで、糖ガラス粒子は一緒に凝集しやすかった。このような“油中水型”懸濁物を安定化するために、連続油相に溶解された油溶性界面活性剤の使用が多くの場合に要求された。
これらの低HLB(親水性/親油性バランス)界面活性剤は親水性粒子と油との界面に集中して、連続油相とより適合する両親媒層でそれらを被覆する。各糖ガラス粒子は乾燥油によりその近隣から離されるため、化学的相互作用は粒子間で生じない。したがって、同一の油製剤中に、潜在的に相互作用しうる異なる分子を各々が含有しても、それらを相互作用させることなく、いくつかの異なる粒子群を有することが可能である。複合的な多価ワクチンはこうして製造しうる。
しかしながら、このアプローチは、万能の解決策であることを妨げる、ある欠点を有することがわかった。これらには、さほど高密度でない油状ビヒクル中で約1.5g/cmの典型的密度を有する、懸濁粒子の不可避的沈降がある。その特許ではこの問題を認識しており、ブラウン運動のような熱力学力によりそれらを懸濁させておくために、直径で1μm以下に粒径を小さくすることにより、それを解決しようとしている。直径で全粒子を1μm以下にする要件は、提案された処方物の欠点である。このように小さな粒子粉末を得ることは、決して容易な作業ではない。改善されたスプレードライヤーデザインであればこれを達成しうるが、小さな粒径はサイクロンタイプコレクターの使用を妨げて、製品回収用フィルターのシステムを要する。
サブミクロンサイズまで粒子を小さくすることも、Microfluidizer(Constant Systems Inc.)のような高圧微均質化装置で粒子が油中に懸濁された後であれば、理論的に達成しうる。これは余計なステップをそのプロセスに加え、球形のせいで非常に高い機械強度を有する噴霧乾燥糖ガラス微小球を砕く際に、それがさほど効率的でないことを我々は知った。これは装置に何回も通すことを強いる。それでも、これは多数の大きな粒子を未接触のままにしがちで、そのためそれらを除去するために後で濾過または沈降ステップを要する。しかも、通常の油状のビヒクル中で懸濁物が高粘度であることが、シリンジ中にそれらを引き込むことを難しくさせ、また、それらをゆっくり注入することを要する。それは、液体ジェットインジェクターシステムでみられるような、細いノズル中の速い流動を妨げる。
油に懸濁された粒子は、特に低HLB界面活性剤を含有するとき、後で水性環境中へ抽出することを難しくさせることもわかったが、その理由は、意外にも、水性緩衝液で洗浄後にも、それらは強く結合した油の防水コートをそれらの周りに維持するからである。したがって、粒子が油相を出て水相へ入るために、それらは非常に激しい振盪および混合またはより水溶性の洗剤(このときは高HLB)の添加を要する。粒径が小さくなるほど、これは大きな問題になる。最終結果は、2つにはっきり分かれた相というよりも、むしろ不明瞭に混じり合ったエマルジョンであることが多い。体内で、この問題は、要求される迅速で予想しうるデリバリーよりも、むしろ活性剤の遅くて予測しえない放出を生じうる。水性環境中へのインビトロ抽出で、溶解した活性剤を含有する水相の上に油が浮かぶようになる。これは診断キットまたは自動アッセイシステムのようなあるインビトロ用途には許容しえない。最後に、臨床で用いうる天然FDA承認油のほとんどは光分解、酸化または他の形のダメージをうけやすく、暗所に比較的低温で慎重な貯蔵を要する。加えて、それらは完全には化学的に不活性でないため、それらは懸濁粒子とゆっくり反応しうる。
Alliance Pharmaceutical Companyは、注目すべき新規な非水性ペルフルオロカーボン液体中での水溶性物質の粉末の使用を検討した(Kirkland WD,Composition and method for delivering active agents(活性剤デリバリー用の組成物および方法).US特許5,770,181(1995))。この特許は腸の診断画像化用の経口コントラスト増強剤として、PFCの機能に主に関する。そこで例示された水溶性粉末は、PFCの口当りの改善または胃腸管におけるコントラスト効果の向上のために加えられた。しかしながら、具体例は示していないが、これらの液体は薬物デリバリー向けにも用いうることを、Kirklandは認識していた。特に、貯蔵安定性の市販粉末のみがその特許では例示されている。我々は、今や、糖ガラス微小球で安定化された脆性活性剤が、経口および非経口双方のデリバリー用の極めて安定な2相PFC液体処方物を生じるように工学処理しうることを発見した。これは、いかなる類の冷却も要しない直ちに注射可能な処方物としての非経口薬物およびワクチンのデリバリーへも、Kirkland特許の有用性を広く拡大する。PFCの低い粘度、高い密度および低い表面張力が、これらの安定な懸濁物が液体ジェットインジェクターのような自動器具によりデリバリーされることを意味する、という発見は特に有益である。これは、この技術に2つの重要な追加分野、即ち、大規模免疫キャンペーンおよび自己注射を切り開いている。
ペルフルオロカーボン(PFC)は、ある有機化合物の完全フッ素化により製造される、新しい、極めて安定な液体である。それらは油および水の双方または極性もしくは無極性いずれの他の溶媒とも事実上本質的に非混和性であるため(他のPFCを除き)、それらは親水性または親油性のいずれにも分類しえない(Reviewed in Krafft MP & Riess JG.”Highly fluorinated amphiphiles and colloidal systems,and their applications in the biomedical field.A contribution.”(高度フッ素化両親媒性化合物およびコロイド系、および生物医学分野におけるそれらの用途.寄与)Biochimie,80,489-514,1998)。更に、それらは油との疎水性相互作用にも、水または親水性物質との親水性相互作用にも関与しない。結果的に、親水性粒子が油中で一緒に強く凝集したときにみられる大きな相分離は、PFCで生じにくい。それらは安定な懸濁物を形成する上で界面活性剤を必要としないが、フルオロヒドロカーボン(FHC)界面活性剤が利用でき(Krafft & Riess,1998)、PFC液体中でごくわずかな濃度で活性である。これらの非常に低い濃度で、FHC界面活性剤は、それらの不在下で凝集する傾向を示すある粒子の完全な単分散系を保証しうる。PFC液体自体は化学的に完全に非反応性であり、低分子量タイプでは体内に蓄積せず、揮発性であり、いずれ息で吐き出される。
それらは気体用の優れた溶媒であるため、PFCは非常に特別な臨床用途で既に大量に用いられてきた。二酸化炭素を溶解酸素と交換しうるそれらの能力は、ヘモグロビンの場合よりも良い。これは1968年にR.P.Geyerにより“無血ラット”で最初に証明された(Geyer RP,Monroe RG & Taylor K.”Survival of rats totally perfused with perfluorocarbon-detergent preparation”(ペルフルオロカーボン‐界面活性剤の製剤で全体的に灌流されたラットの生存)Organ Perfusion and Preservation,J.V.Norman,J Folkman,L.E.Hardison,L.E.Ridolf and F.J.Veith eds.Appleton-Century-Crofts,New York,85-95(1968))。ペルフルオロオクチルブロミドは、水中PFC型エマルジョンの形態で、商品名OxygentTM(Alliance Pharmaceutical Corp.)で、ある外科手術向け輸血の代用品として、現在ヒトで評価されている。PFCは、未熟児の呼吸障害症候群の治療にも、液体として肺へ吸入により用いられてきた。
それらの高密度性も、化学的不活性と共に、価値あることがわかった。商品名VitreonTM(Vitrophage Inc.)のペルフルオロフェナントレンが、手術に際して目の被膜の崩壊を防ぎ、剥離網膜の修復を行うために用いられる。PFCは磁気共鳴画像化(MRI)用の造影剤としても用いられ、この目的から、それらの画像性を改善するか、またはそれらを嗜好上より好ましくするために、親水性粉末がそれらに懸濁しうることが報告された(Kirkland W.D.”Composition and method for delivering active agents”US特許5,770,181(1998))。この特許は、粒状水溶性薬物デリバリー用の連続相としてのPFCの使用も示唆している。室温で乾燥粉末として安定な非経口薬物の数は限られているため、この特許は大部分の注射可能薬物への適用可能性を有していない。しかしながら、Roser and Garcia de Castro(1998)で記載されているような糖ガラスの微小球粉末における薬物安定性と注射可能PFCとの組合せで、事実上すべての非経口薬物およびワクチンへこの技術を適用しうる。
発明の要旨
本発明は、ガラスを含有する粒子により保持された活性成分を含んでなる医薬組成物であって、これら粒子は液体中に懸濁されており、粒子および液体の密度が近似している結果、粒子は懸濁状態にあることを特徴とする医薬組成物を提供するものである。
ガラスは、好ましくは糖ガラス、金属カルボキシレートガラスおよび/またはホスフェートガラスを包含し、液体は、好ましくはペルフルオロカーボンを包含する。
密度約1.5〜2.5g/cmの最終混合物を得るために異なるPFCを混合しうる、という大きな利点をペルフルオロカーボンベース製剤は発揮する。こうして、粒子が浮かばずまたは容器の底に沈まずに、安定懸濁物の形で留まるように、懸濁流体と一致する密度で粒子を処方しうる。したがって、粒子は沈降を防ぐために油性製剤で必要とされるようなサブミクロンサイズでなくてもよく、サイズは大いに変わりうる。究極の粒径は製剤の目的のみにより決められる。針注射またはジェット注入向けの製剤は、0.1〜100マイクロメーター、好ましくは1〜10マイクロメーター範囲の粒子を含有する。これは粒子の製造法をかなり簡略化して、粉砕による極めて小さな粒径の必要性を回避する。粒子は、従来の噴霧乾燥または凍結乾燥、次いで単純な乾式または湿式粉砕により作製してよい。懸濁物中で高固形分が要されるとき、粒子は形状が球形であることが望ましい。不規則形状粒子は一緒に“結合”して易流動性を妨げるかなり大きな傾向を有しているが、球形粒子は固有の“滑らかさ”を有しているため、20%をかなり超える固形分に達することができる。このような粒子は噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥またはエマルジョン固化により容易に作製される。
懸濁粉末は、適宜に処方されるならば、界面活性剤を必要とせず、水と共に振盪されたとき、ほぼ即座に糖ガラス粒子が溶解する安定な懸濁物を形成する。小さな凝集が問題としてみられるならば、Krafft and Riess(1998)で記載されているような少量のFHC界面活性剤が、安定粉末の混合前または後にPFC液へ有利に加えうる。PFCのように、これらのFHCは本来極めて不活性で、非反応性である。そのため粒子の溶媒和はなく、懸濁粒子とPFC相との化学反応はない。糖ガラス粒子およびPFC液体の双方が環境上安定であるため、光、高温、酸素などによる分解はない。それらは無視しうるほどのインビボまたはインビトロ毒性を有するだけであり、血液交換目的で多量に動物およびヒトの双方へ注入することで、それらは正式機関により大規模に試験され、承認された。高分子量のPFCは肝臓に蓄積することが報告されたが、この出願で用いられる低分子量の例は呼気で体内から結局は排出される。
それらの低い表面張力およびそれらの低い粘度のおかげで、皮下針、自動システムまたは液体ジェットインジェクターでみられる細い孔から、非常に容易にそれらを流動させうる。PFCは優れた電気絶縁物であり、そのため同様の小さな表面静電荷を有する粒子の単分散懸濁物を得ることが容易である。それらは乾燥した、完全に非吸湿性の液体である。これらの非常に低い水分のおかげで懸濁粉末の乾燥性を維持しうるため、配合活性剤の溶解または分解を防げる。それらの独特な溶解性欠如は親水性または疎水性粒子を懸濁する上でそれらを理想的なものにし、最終懸濁物が容器またはデリバリー装置で用いられる事実上すべての物質と適合しうることを意味する。これは、例えば、プランジャーでゴムシールを膨張させることによりシリンジのひどい目詰まりを生じうる油性製剤と対照的である。PFCはある範囲の密度、蒸気圧および揮発性で得られる(表I)。それらの高い密度はほとんどの従来の緩衝液中にそれらを沈ませるため、上に浮かぶ水相に溶解している生成物粒子から容易に分離しうる。したがって、これは診断薬のようなインビトロ用途向けとしてそれらの使用を促す。
発明の具体的な説明
表I 一部PFCの性質
ペルフルオロ‐ MW 密度 粘度 表面張力 蒸気圧
(kg/L) (mPas) (mN/m) (mbar)
ヘキサン 338 1.682 0.656 11.1 294
‐n‐オクタン 438 1.75 1.27 16.98 52
デカリン 462 1.917 5.10 17.6 8.8
フェナントレン 624 2.03 28.4 19 <1
薬剤または生物活性剤のデリバリー用ビヒクルとしてのPFCの使用は、Kirkland(1995)で既に示唆されていた。この特許では、本来安定な市販の香味または発泡性粉末などについて例示するのみであった。ワクチンまたは薬剤のような安定化された生物活性剤については、それはいかなる例も含んでいなかった。更に、活性剤粒子用の懸濁ビヒクルとしてPFCを用いることにより注射用(非経口)製剤を作る可能性を、そこでは考慮していない。非水性ビヒクルとしてPFCを用いて長い貯蔵寿命を有する、本来脆い生体分子の安定処方物を得るために、好ましくは配合活性剤を安定化しうるガラス形成剤を含有するように粒子が処方される。これは、PCT WO91/18091で記載されているようなトレハロース、ラクチトール、パラチニットなどを含めた様々な糖類からでも、あるいは更に好ましくは、UK特許出願9820689.9で記載されているような他のより有効な単糖の糖アルコールまたはガラス形成剤からでもよい。
高密度PFC相に粒子を浮かべないように、粒子に密度調整剤を配合することが有利である。これは、塩化または硫酸ナトリウムまたはカリウムのような可溶性塩でも、あるいは更に好ましくは、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、二酸化チタンまたは水酸化アルミニウムのような不溶性物質でもよい。体内で多量のイオン性塩の放出は著しい局所的な痛みおよび刺激を生じうることから、不溶性の無毒性物質が好ましい。不溶性物質は、一部の場合には、例えばワクチン製剤中でも、アジュバントとして活性製剤の一部でありうる。密度調整剤は糖ガラス粒子中の固溶体中でも、または糖ガラス中に懸濁された不溶性粒状物質中にあってもよい。正しく処方されると、糖ガラス粒子はPFC液体とほぼ密度が一致し、浮力中性であり、浮遊も沈降もせず、ケーキングのない安定な懸濁物のままである。
PFC液体は1013オーム.cm以上の典型的抵抗率を有する良好な電気絶縁物であるため、懸濁粒子のわずかな表面電荷は懸濁安定性上大きな効果を有しうる。弱い短距離力による凝集を懸濁粒子で防ぐために、乾燥粒子へ弱い残留静電荷を付与しうるリジンまたはアスパラギン酸のような賦形剤を好ましくはそれらへ含有させて製造する。安定コロイドでみられる場合と同様に、粒子の電荷反発を確保することにより、これは凝集を防いでいる。一方、少量のFHC界面活性剤、例えばペルフルオロデカン酸は、分散された、好ましくは単分散の懸濁物を得るために、有利にはPFCへ溶解させてもよい。
これらの粒子は空気、噴霧、または凍結乾燥を含めたいくつかの手法で製造しうるが、特に小さくなくてもよく、直径0.1〜100μサイズの不均一混合物でもよい。一部の用途では、ミリメーターサイズの粒子でも適する。
これらの安定な懸濁物の使用は、前記のような非経口使用にも、またはKirkland(1995)で例示されているような経口使用にも限定されない。PFC液体ビヒクルは無毒性で非反応性であるため、それは肺内、鼻内、眼内、直腸内および膣内デリバリーを含めた粘膜用の理想的なビヒクルである。非常に不安定な薬物またはワクチンの粘膜デリバリー用ですら、安定、無菌で無刺激性の処方物を製造しうる、この特許によりもたらされる能力は、著しい進歩である。しかも、微生物が水の不在下で増殖しえないため、PFC液体の非常に乾燥した完全に非吸湿性の性質は、長期貯蔵および断続的使用に際して、これら製剤の無菌性の維持に大いに役立つ。
揮発性のペルフルオロヒドロカーボンおよびクロロフルオロカーボンは、肺深部への薬物デリバリーを行うために考えられた吸入器で、噴射剤として長期間にわたり用いられてきたため、ここで記載された安定PFC処方物は肺内デリバリー用の液体STASIS小滴の微細なミストを生成する上で理想的である。この用途の場合、PFC小滴で不連続懸濁相を構成する粒子のサイズは重要であり、1〜5μm、好ましくは0.1〜1μmの直径を超えるべきでない。鼻または目で他の粘膜表面へのデリバリーの場合、粒径はさほど重要でなく、直径100μm以内でもまたは数mmでもよい。
微粒子は、好ましくは4%以下、好ましくは2%未満、理想的には1%未満の水分を有している。
図面の説明
図1
アルカリホスファターゼ(Sigma Aldrich Ltd.)を、マンニトール33.3%、乳酸カルシウム33.3%および分解ゼラチン33.3%(Byco C,Croda Colloids Ltd.)をベースにしたガラス中で安定化させ、微小球として噴霧乾燥させ、乾燥粉末としてまたはペルフルオロデカリン中の安定な懸濁物として55℃で貯蔵した。活性は約100%標準のままであった(20日で103%および30日で94%)。PFCに懸濁されていない乾燥粉末の方が大きな損失であった(残存活性約80%)。
図2
市販の破傷風トキソイドワクチン(Evans Medeva plcにより快く供与された#T022)を、20%トレハロース溶液にリン酸カルシウムを加えて用い、密度一致粉末として処方した。2液ノズルを用いて液体窒素中に噴霧することによりそれを凍結乾燥させ、次いで主乾燥中ずっと−40℃の初期貯蔵温度でLabconco凍結乾燥機で凍結微小球粉末を凍結乾燥させた。塩水緩衝液でまたは油もしくはPFC中の無水製剤として再調製された、同用量のASSIST安定化破傷風トキソイドワクチンで注射した後、モルモット10匹の6群の抗体応答を4、8および12週目に測定した。
すべての乾燥製剤に対する応答は新鮮ワクチンコントロール(示さず)より低く、噴霧乾燥で免疫原性の有意な損失を示した。トキソイドの抗原性は、捕捉ELISAで測定されるのであるが、乾燥プロセスにより不変であった。これは、乾燥に際して水酸化アルミニウムアジュバントの保存を完全化させる、更なる作業が必要であることを示唆した。
リン酸カルシウムで密度一致化されたSTASISワクチン(群3)に対する応答は、水性緩衝液で再調製されたコントロールワクチン(群1)および油中粉末ワクチン(群2)と本質的に同一であり、一方非水性ビヒクルのみで注射されたコントロール動物(群4&5)は応答を示さなかった。
以下、本発明を実施例でもって説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例1
PFC中の噴霧乾燥粒子
LabplantモデルSD1スプレードライヤーを用いて、糖および他の賦形剤を用いた水溶液から噴霧乾燥することにより、粒子を製造した。典型的処方は次のとおりであった:
A.水中
マンニトール 15%w/v
乳酸カルシウム 15%w/v
B.水中
トレハロース 15%w/v
リン酸カルシウム 15%w/v
内径0.5mmの液体オリフィスを有する2液ノズルを用いて、粒子を製造した。半最大ノズル気流が最良とわかり、乾燥室を135℃の入口温度および70〜75℃の出口温度で操作した。粒子をガラスサイクロンで集め、4時間にわたる80℃までの温度傾斜を用いて真空オーブンで二次乾燥に付した。冷却後、超音波を用いて、それらをPFCに懸濁させた。約75%のパワーで操作するMSE MK2超音波キャビネットでチタンプローブから超音波エネルギーの30秒間バースト、または10秒以内におけるDecon FS200 Frequency sweep 超音波浴への浸漬であれば、十分とわかった。
得られた懸濁物は単分散性であり、顕微鏡でみると、大きさが平均約10μで約0.5〜30μ範囲の球形ガラス粒子からなっていた。マンニトール/乳酸カルシウム粒子は数分でPFC層の上に昇ったが、穏やかな振盪で容易に再懸濁させることができた。トレハロース/リン酸カルシウム粒子はPFCとほぼ密度一致しており、安定な懸濁物を形成した。
糖ガラス粒子の噴霧乾燥粉末をペルフルオロヘキサン、ペルフルオロデカリンおよびペルフルオロフェナントレンに1、10、20および40%w/vで懸濁した。それらは、凝集傾向のほとんどない単分散懸濁物を生じることがわかった。PFCへの0.1%ペルフルオロデカン酸の添加は、表面上のわずかな凝集傾向を阻止した。これらの懸濁物は、吸引または射出で25g針を容易に通過することがわかった。
例2
PFC中ガラス安定化酵素の懸濁物の安定性
アルカリホスファターゼ(Sigma Aldrich Ltd.)を前記のようにLabplantで噴霧乾燥させた。その処方物はマンニトール33.3%w/w、リン酸カルシウム33.3%w/wおよび分解ゼラチン(Byco C,Croda Colloids Ltd.)33.3%を含有していた。乾燥酵素を乾燥粉末またはペルフルオロデカリン中の懸濁物として55℃で貯蔵した。ペルフルオロデカリンに懸濁されたマンニトールベースガラスからなるこれらの微小球で処方された酵素は、55℃で30日間以上にわたり酵素活性の100%近い残留を示す(図1)。
例3
インビボ効力
臨床破傷風トキソイドワクチン(Medeva plcにより快く供与された)を含有した類似処方物の前臨床試験を、National Institute of Biological standards and Control(世界保健機関の認可研究所)と共同して行った。この試験の結果は、モルモットを免疫して防御血清抗体応答を呈する能力に関して、安定STASIS製剤が水性液体ワクチンと完全に同等であることを示した(図2)。こうして、従来の水性液体処方物と同様のインビボバイオアベイラビリティで、PFC中の懸濁物が直ちに注射可能な処方物を形成していることを証明した。
例4
噴霧凍結乾燥粒子
液体小滴を液体窒素中へ噴霧してから、凍結粉末を真空乾燥することによっても、粒子を製造した。これらの粒子は噴霧乾燥粉末より低い密度であり、20%w/vより高い濃度ではPFC中でペーストを形成した。それより低い濃度では、それらは音波処理後に単分散懸濁物を形成した。
用いられた典型的処方物は次のとおりであった:
物 質 最終濃度w/w
A.トレハロース 100%
B.トレハロース 50%
リン酸カルシウム 49.5%
水酸化アルミニウム 0.5%
例5
粉砕疎水性粒子
疎水性糖誘導体のスクロースオクタアセテートおよびトレハロースオクタアセテートは、融解物から急冷されたとき、あるいはクロロホルムまたはジクロロメタンの溶液から速やかに乾燥されたときに、ガラスを直ちに形成する。それらの使用は薬物デリバリー用の制御放出マトリックスとして記載されている(Roser et al ”Solid delivery systems for controlled release of molecules incorporated therein and methods of making same”(配合された分子の制御放出用の固形デリバリーシステムおよびその製造方法)PCT公開WO96/03978,1994)。
マッフル炉で融解させて、ステンレス鋼プレート上でその融解物を急冷することにより、トレハロースオクタアセテート粉末を得た。得られたガラスディスクを乳棒および乳鉢、次いで高速ホモゲナイザーで砕き、微粉末を得た。これをペルフルオロヘキサン、ペルフルオロデカリンおよびペルフルオロフェナントレンに1および10%w/vで懸濁した。それらはよく分散された懸濁物を生じることがわかった。これらの懸濁物は23g針を容易に通過することがわかった。
例6
水性環境での再調製
安定な糖ガラス粒子の性質およびPFCの特性のおかげで、これら懸濁物中の活性剤は体内で急速に放出されるだろうと予想された。含有活性物質の完全な放出を証明するために、下記を含有した粒子を処方した:
トレハロース 20%w/v
乳酸カルシウム 20%w/v
リジン 0.5%w/v
Mordant Blue 9色素 1%w/v
処方物を前記のように噴霧乾燥させ、ペルフルオロフェナントレンおよびペルフルオロデカリンへ加えて、20%w/v暗青色不透明懸濁物を調製した。その懸濁物へ等容量の水を加えて、振盪したところ、事実上すべての青色色素が水相中に放出されて、境界が明瞭な界面で、ほぼ無色のPFC上に浮かぶ澄んだ青色の層を形成することがわかった。
例7
懸濁物中粒子間で無反応
PFC懸濁物中で個別微小球は他のすべての粒子から物理的に離されているため、潜在的に反応性の物質は、それらが相互作用するいかなる危険性もなく、同一懸濁物中に別々な粒子として一緒に存在しうる。糖ガラスが溶解して、分子が一緒になると、反応が生じる。
これを証明するために、(a) 1つはアルカリホスファターゼ酵素で、(b) 他はその無色基質、p‐ニトロフェニルリン酸で、2タイプの粒子を含有した懸濁物を調製した。
処方は次のとおりであった:
a)pH7.6の5mMトリス/HCl緩衝液中
トレハロース 10%w/v
硫酸ナトリウム 10%w/v
アルカリホスファターゼ 20U/ml
b)各々1mMの塩化Zn ++ およびMg ++ を含有したpH10.2の100mMグリシン緩衝液中
トレハロース 10%w/v
硫酸ナトリウム 10%w/v
p‐ニトロフェニルリン酸 0.44%w/v
10%w/vの粉末“a”および10%w/vの粉末“b”を含有したペルフルオロデカリン中粉末の懸濁物は、いかなる発色反応も生ぜず、37℃で3週間にわたり白色懸濁物のままであることがわかった。
水の添加および振盪後に、粉末は上部の水相に溶解した。酵素反応が数分で生じ、調製したばかりのサンプルおよび37℃で3週間にわたり保たれたものの双方において、p‐ニトロフェノールの濃黄色を呈した。
例8
“組織間隙”モデルにおける生成物放出
インビボで注射されたときに、PFC懸濁物で生じうる動態を明らかにするために、ポリスチレン製装飾ボトルに0.2%アガロースゲルを入れることにより、透明水和組織間隙モデルを作製した。例5のペルフルオロデカリン懸濁物0.1mlをアガロースゲル中へ25g針から注入した。これは懸濁物の扁平化した白色球体を生じた。その後5〜10分間にわたり、白色は球体の底から上方へ消えて、PFCの透明球体を残留させた。酵素および基質がガラス粒子の溶解により放出されると、それらは一緒に反応して、p‐ニトロフェノールの黄色を生じ、その後1時間かけてアガロース全体に拡散した。
例9
密度一致:
従来の乾燥法のいずれかで得られる糖ガラス粒子(即ち、トレハロース)は、約1.5g/cmの典型的密度を示す。我々が試験したペルフルオロカーボンは、典型的には1.68〜2.03g/cmの密度を有する(表I)。この理由から、懸濁物中へ処方されたときに、糖ガラス粒子はPFC層に浮かびやすく、活性剤が均一に分布していない製剤をもたらす。しかしながら、粉末が中性浮力を有し、沈降も浮遊もしない、安定な懸濁物をPFC中で生じるように、それらは改変してもよい。これは粒子形成前に高密度物質の添加で達成しうる。これらは水溶性でもまたは不溶性でもよい。
非水溶性物質
オルトリン酸三カルシウムは3.14g/cmの密度を有し、ワクチン用のアジュバントとして承認され、実際上水に不溶性である。約50%リン酸カルシウムを含有するように調製された粉末は、約2g/cmの増加密度を示して、20%固形分のときにペルフルオロフェナントレン中で安定な懸濁物を形成する。
PFC中20%固形分で安定な懸濁物を形成する粉末の例には、次のものがある:
ペルフルオロデカリン中
物 質 最終濃度w/w
A.トレハロース 50%
リン酸カルシウム 50%
B.トレハロース 47.5%
乳酸カルシウム 10.0%
リン酸カルシウム 42.5%

ペルフルオロフェナントレン中
物 質 最終濃度w/w
マンニトール 18.2%
イノシトール 18.2%
乳酸カルシウム 18.2%
リン酸カルシウム 45.4%
用いられてきた他の密度増加非水溶性物質には、硫酸バリウムおよび二酸化チタンがある。いかなる無毒性で不溶性の物質も、適切な密度であれば用いうる。
水溶性物質
密度2.7g/cmの硫酸ナトリウムのような可溶性塩も密度増加剤として用いてよい。下記の粉末は、ペルフルオロデカリン中で安定な懸濁物を形成した:
物 質 最終濃度w/w
トレハロース 50%
硫酸ナトリウム 50%

他の無毒性高密度水溶性物質も用いてよい。おそらく高濃度のイオン性塩の急激な溶解のせいで、これらの処方物はモルモットで皮下注射後に不快感を生じることがわかった。
例10
懸濁物中活性剤で密度一致の効果
あるワクチンは、アジュバントとして働く不溶性ゲルまたは粒子へ吸着させて処方される。水酸化アルミニウムおよびリン酸カルシウムがこの目的のために広く用いられている。これらの不溶性アジュバントは、それ自体、懸濁される粒子の密度を増加させるために用いうる。この場合に、高密度物質は完全には不活性でなく、実際上溶液から活性高分子を吸着する。この吸着が活性剤を変性させないことを証明することが必要である。これを試験するために、アルカリホスファターゼを活性剤/ワクチンモデルとして用いた。
下記の溶液を調製した:
pH7.6の5mMトリスHCl緩衝液中
アジュバントグレードリン酸カルシウム 10%w/v (Superphos Kemi a/s)
トレハロース 10%w/v
ZnCl 1mM
MgCl 1mM
アルカリホスファターゼ 20U/ml
溶液を37℃で10分間にわたりよく混合して、リン酸カルシウムによりアルカリホスファターゼを吸着させた。リン酸カルシウムを遠心し、上澄をサンプリングし、基質としてp‐ニトロフェニルリン酸を用い405nmの波長でその酵素反応速度を測定することにより、1分間当たりのこの吸収変化を測定した。溶液を噴霧乾燥して、微粉末を製造した。酵素の脱着を、粉末の再水和後に、上記のような上澄で測定した。その粉末は、ペルフルオロフェナントレン中に20%w/vで懸濁させると、安定な懸濁物を形成することがわかった。
試験サンプル 吸光度 /min(405nm)
原溶液(25μL) 0.409
上記の上澄(25μL) 0.034
再水和粉末(水中20%w/vの25μL) 0.425
上記の上澄(25μL) 0.004
ペルフルオロデカリン中20%w/v粉末(25μL) 0.430
実験では次のことを証明している:
粒子の密度は、リン酸カルシウムアジュバントの含有により、PFCビヒクルの場合と一致させうる。
酵素活性の有意な脱着または損失は処方プロセス中に生じていない。
アルカリホスファターゼ(Sigma Aldrich Ltd.)を、マンニトール33.3%、乳酸カルシウム33.3%および分解ゼラチン33.3%(Byco C,Croda Colloids Ltd.)をベースにしたガラス中で安定化させ、微小球として噴霧乾燥させ、乾燥粉末としてまたはペルフルオロデカリン中の安定な懸濁物として55℃で貯蔵した。活性は約100%標準のままであった(20日で103%および30日で94%)。PFCに懸濁されていない乾燥粉末の方が大きな損失であった(残存活性約80%)。 市販の破傷風トキソイドワクチン(Evans Medeva plcにより快く供与された#T022)を、20%トレハロース溶液にリン酸カルシウムを加えて用い、密度一致粉末として処方した。2液ノズルを用いて液体窒素中に噴霧することによりそれを凍結乾燥させ、次いで主乾燥中ずっと−40℃の初期貯蔵温度でLabconco凍結乾燥機で凍結微小球粉末を凍結乾燥させた。塩水緩衝液でまたは油もしくはPFC中の無水製剤として再調製された、同用量のASSIST安定化破傷風トキソイドワクチンで注射した後、モルモット10匹の6群の抗体応答を4、8および12週目に測定した。 すべての乾燥製剤に対する応答は新鮮ワクチンコントロール(示さず)より低く、噴霧乾燥で免疫原性の有意な損失を示した。トキソイドの抗原性は、捕捉ELISAで測定されるのであるが、乾燥プロセスにより不変であった。これは、乾燥に際して水酸化アルミニウムアジュバントの保存を完全化させる、更なる作業が必要であることを示唆した。 リン酸カルシウムで密度一致化されたSTASISワクチン(群3)に対する応答は、水性緩衝液で再調製されたコントロールワクチン(群1)および油中粉末ワクチン(群2)と本質的に同一であり、一方非水性ビヒクルのみで注射されたコントロール動物(群4&5)は応答を示さなかった。

Claims (4)

  1. 0.1〜100マイクロメーターの範囲の直径を有する糖ガラスまたは金属カルボキシレートガラスの粒子により保持された活性成分を含んでなる医薬組成物であって、該粒子は密度調整剤を含有し、生体適合性液体中に懸濁されており、該粒子および生体適合性液体の密度は、該粒子が安定な懸濁状態にあるように調和されている、上記医薬組成物。
  2. 密度調整剤が無機塩である、請求項1に記載の組成物。
  3. 無機塩がリン酸カルシウムである、請求項に記載の組成物。
  4. 金属カルボキシレートガラスが乳酸カルシウムを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
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