JP4372402B2 - 個人識別装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、個人識別装置に関し、特に、識別対象の利用者の形状や動きを検出して個人を識別するに際し、未登録者に対する判断を適正に行えるようにする個人識別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ネットワークに接続された情報機器の正当な利用者を確認したり、特定の場所への入室者が許可された利用者であるか否かを確認したりするために開発されているものに個人識別装置があり、本人しか持ち得ない身体的な特徴を検出し、予め記録(登録)されている特徴との一致を確認するバイオメトリック個人識別が普及しつつある。この種の個人識別装置では、利用者の指紋、虹彩、網膜、手の形、静脈パターン、筆跡、動作などを検出し、そのデータと予め正当な利用者として登録してあるデータとを比較して識別判断を行い、正当な利用者であるか否かを判断している。識別判断は、電子計算機のアルゴリズムとして実行されることが殆どであるが、そのアルゴリズムの1つにベクトル量子化(Vector Quantization:VQ)がある。VQは、用意された多数のベクトル集合のデータ分布に応じて参照ベクトルと呼ばれる各部分空間(クラスタ)を代表するベクトルを配置し、元のベクトル空間を複数の部分空間に分割するものである。
【0003】
VQによる識別判断方法は、識別を行いたい登録者の身体的特徴から得られるパターンベクトルを学習することで、利用者が登録者の誰であるかを高い確率で識別することができる。特に、一人の登録者から得られるパターンベクトルのベクトル空間上での分布密度が広がりをもって分布していたり、更に、他人のパターンベクトルと分布領域を共有したり、飛び地のように分布したりという複雑な形を持つ識別対象に対して有効である。
【0004】
個人識別装置として、VQの手法を応用した個人照合装置が特許文献1に提案されている。この個人照合装置は、遺伝的アルゴリズムを用いた遺伝的アルゴリズム処理手段により画像の人物領域から背景情報等を排除して領域を絞り、照合用ベクトル生成手段により照合用生成ベクトルを生成し、この照合用生成ベクトルと照合用テンプレートベクトルの間の2乗距離を計算し、その2乗距離の最小値(閾値)が予め与えられた個人照合基準より小さいときに登録者と判断し、逆に大きいときには末登録者とする。これにより、背景、顔の大きさ、照明等の画像入力における環境の影響を受けないようにすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−21394号公報(第5−9頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の個人識別装置によると、VQによる識別判断手法は、未学習の未登録者からのデータが入力された場合、既に学習済みの事象の何れかとして識別結果を出してしまうことがある。すなわち、正当な利用者としての登録者については高い確率で誰であるかを判断することはできるが、未登録者を未登録者として判断を下すについては課題がある。
【0007】
実際のバイオメトリックスを用いた個人識別装置では、正当な利用者以外の不正な利用者の排除が重要な機能であることから、未登録者であると正しく判断することが不可欠であるが、特許文献1の手法では、パターンベクトルの分布形状や広がりが、登録者により大きく異なる識別対象については、固定された閾値による判別では未登録者を未登録者として判断を下すことが困難である。
【0008】
従って、本発明の目的は、未登録者を未登録者として正しく識別できるようにする個人識別装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、識別対象の利用者がマウスを操作したときの指の形状を検出して複数のパターンベクトルを取得する検出手段と、
前記検出手段による前記複数のパターンベクトルの検出を同一の前記利用者について複数回行って取得した学習用パターンベクトルの集合を1つのクラスとしたコードブックベクトルとして、予め定められたアルゴリズムに従い、前記同一の利用者を登録する学習動作を行なう学習手段と、
前記利用者による前記マウスの操作により前記検出手段から入力された複数のパターンベクトルを入力ベクトルとしたとき、ベクトル空間上で前記入力ベクトルに距離が最も近いコードブックベクトルを前記学習手段で学習済みのコードブックベクトルの集合の中から複数を求め、この複数のコードブックベクトルの属するクラスが同一で所定の第1の条件を満たすときに前記利用者を前記学習手段により前記利用者として登録された登録者、前記所定の第1の条件を満たさないときには前記学習手段により前記利用者として登録されていない末登録者として識別し、クラスが異なっても所定の第2の条件を満たすときには前記利用者を前記登録者、前記所定の第2の条件を満たさないときには前記末登録者として識別して識別結果を出力する識別手段とを備え、
前記識別手段は、前記入力ベクトルxと前記コードブックベクトルの距離の比較を行い、そのコードブックベクトルの中から前記入力ベクトルxに最も近い第1のコードブックベクトルm1及び次に近い第2のコードブックベクトルm2を選択し、この2つのコードブックベクトルが同一クラスに属するとき、
前記入力ベクトルxが、
mmin−β(mmax−mmin)<|x|<mmax
+β(mmax+mmin) ・・・(1)
(但しmmin及びmmaxは、前記コードブックベクトルm1,m2と同一のクラスに属するコードブックベクトルのうちクラスの中の最小及び最大のベクトルの大きさ、βは0〜1の間の定数)
前記所定の第1の条件としての(1)式を満たすときには登録者有りを識別し、上記(1)式を満たさないときは登録者無しを識別し、また、前記コードブックベクトルm1,m2が異なるクラスに属すと共に前記所定の第2の条件としての(2)式を満たすとき、
|m1−x|<γ|m1−m2|/2 ・・・(2)
(但し、γは0〜1の間の定数)
前記コードブックベクトルm1が属するクラスに該当する登録者有りを識別し、上記(2)式を満たさないときは該当者なしを識別することを特徴とする個人識別装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、コードブックベクトルの中から入力ベクトルxに最も近い複数のコードブックベクトルを選択し、これらコードブックベクトルが同一クラスに属するとき、所定の第1の条件を満たすときには登録者有りを識別し、上記所定の第1の条件を満たさないときは登録者無しを識別する。一方、前記複数のコードブックベクトルが異なるクラスに属すと共に所定の第2の条件を満たすときには、登録者有りを識別し、前記所定の第2の条件を満たさないときは該当者なしを識別する識別手段を備えることにより、未登録者を未登録者として正しく判断することが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による個人識別装置の機能構成を示す。
本発明の個人識別装置は、3つの機能に大別され、検出手段101と、学習手段102と、及び識別手段103とからなる。ここで、検出手段101は、個人を識別するための生体情報(指紋、虹彩、網膜、手の形、静脈パターン、筆跡、動作などの単独又は組み合わせによる)をベクトル量として取り出せる機能を持ちさえすれば、どのような機構や原理のものでもよい。生体情報として得られるパターンベクトルには人体の動きやその他の影響が含まれ、同一人物であってもその分布が広がる傾向をもつ特徴を検出することが望ましい。このような検出手段101を採用した場合、従来の装置に比べて識別精度の向上が顕著になる。
【0014】
学習手段102及び識別手段103は、コンピュータのプログラムとして実行し、使用するハードウェアはパーソナルコンピュータ(PC)、サーバーあるいは組み込み用マイクロプロセッシングユニット(MPU)などが利用できる。さらにネットワークを通して、検出手段101、学習手段102及び識別手段103が結ばれていれば、これら手段が遠隔地にあってもよい。
【0015】
次に、各手段の機能について説明する。検出手段101は人体の体形や動きを生体情報として検出し、複数の数値列すなわちパターンベクトル(学習用パターンベクトル)を得る。学習手段102は登録者(個人識別装置の識別対象となる利用者をいう)について学習用パターンベクトルを複数採取し、これら学習用パターンベクトルにより識別手段を識別可能な状態にする。識別手段103は、利用者のパターンベクトルが検出手段101より入力されると、利用者が学習済みの登録者であれば誰である旨を識別結果104として出力し、未登録の人物であれば、未登録者である旨を識別結果104として出力する。
【0016】
学習手段102では、識別手段103が識別対象の人物を適切に識別処理できるように識別手段103の内部の状態を整える部分であり、学習ベクトル量子化(Learning Vector Quantization:LVQ)或いは自己組織化マップ(Self Organizing Maps:SOM)が用いられる。したがって、識別手段103の内部の状態は、パターンベクトルが含まれるベクトル空間上で、登録者についてクラス分けされたコードブックベクトルの集合又は登録者についての代表ベクトルの集合で示される。
【0017】
識別手段103は、検出手段101によって識別対象の人物のパターンベクトルを取得されたパターンベクトルと、学習手段102により整えられると共にクラス分けされたコードブックベクトル又は代表ベクトルの間で識別処理を行なう部分であり、検出手段101で検出したパターンベクトルの人物が学習済みの登録者か否か、また、登録者が誰であるか否かを識別する。
【0018】
図2は検出手段101の検出部の構成を示し、図3は図2の検出部に接続される検出回路の構成を示す。
検出部には、パーソナルコンピュータ(PC)などのポインティングデバイスとして使われるマウス1が用いられている。このマウス1の上面には、それぞれ4個の発光素子としての発光ダイオード2,3,4,及び5と、受光素子としてのフォトダイオード6,7,8,及び9が配置されており、発光ダイオードと受光素子の組み合わせにより識別対象者(利用者)の指の形状を検出する。
【0019】
発光ダイオード2〜5は、図3に示す様に、互いに相関のない発振器10,11,12,及び13に接続されている。これら発振器10〜13によって生成される発振信号によって発光光線に変調が施される。発振器10〜13の出力端及びフォトダイオード6〜9の検出信号とはマトリクス状に配置した16個の相関検出器14に入力される。
【0020】
発光ダイオード2〜5から出射された光は、利用者の掌の内側に到達して反射し、その反射光はフォトダイオード6〜9によって検出される。フォトダイオード6〜9の検出信号と発振器10〜13の出力とは、相関検出器14によって相関がとられる。相関検出器14によって16通りの出力信号(P1 ,P2 ,・・・,P16)が得られる。本発明では、出力P1 〜P16を要素とするベクトルをパターンベクトルとする。このパターンベクトルは、利用者の手の形を反映しているが、利用者毎に異なるものとなる。但し、常に一定ではなく、利用者の握り方やマウスを操作している状態により、同一人物であっても分布を持つものとなる。
【0021】
ここでは、学習動作において登録を行なう利用者を登録者と定義する。学習手段102は、検出手段101の相関検出器14から得られる学習用パターンベクトルの採取を同一人物について複数回実施する。学習用パターンベクトルの採取は、マウス1のクリック動作をトリガにして行なわれ、登録者がPCを操作する通常の状態(数時間程度)では、数百サンプルから数千サンプルが採取される。これにより、学習用パターンベクトルの集合が得られる。ここで、登録者全員にわたって採取した学習用パターンベクトルの集合を、
xi=0,・・・,Nr−1
(但し、Nrは学習用パターンベクトルの総数)
とする。この場合、1人の登録者について採取した学習用パターンベクトルの集合を1つのクラスとして設定する。
【0022】
学習手段102は、まず、コードブックベクトルmi(i=0,・・・,N−1:Nはコードブックベクトルの数)の初期化を行う。初期値となるコードブックベクトルは、学習用パターンベクトルをそのまま用い、クラスもそのまま用いる。初期化において、学習用パターンベクトルをランダムに間引いたものを設定してもよい(この場合、コードブックベクトルの総数が少なくなり、学習手段102及び識別手段103を構成するハードウェアを安価にすることができるほか、処理速度を増大できる利点があるが、逆に、識別精度を落としてしまうことがある)。更に、初期値の設定は、学習用パターンベクトルのあるパターンベクトル空間上でランダムに設定し、クラスも登録者数分ランダムに割り付けておくこともできる。
【0023】
学習手段102は、例えば、「T.コホネン、『自己組織化マップ』徳高兵三/岸田悟/藤村喜久郎訳、シュプリンガー・フェアラーク東京、1996年」に記載された最適化学習率ベクトル量子化1(The Optimized learning rate learning Vector Quantization1:OLVQ1)のアルゴリズムに従って学習処理を実行する。パターンベクトル空間上のベクトルxに最も近いコードブックベクトルmiの添え字引数cを数1のように定義する。数1において、iは「0,・・・,N,N−1」であり、Nはコードブックベクトルの数である。
【数1】
【数2】
【0024】
数2は学習過程を示している。入力ベクトルx(t)は学習用パターンベクトルxiであり、回数を示す離散時間領域の変数t(t=1,2,・・・)に従って順番に入力ベクトルとして与えられる。入力パターンベクトルの順番は、元にあった添え字に関係なく自由に設定できる。場合によっては、学習用パターンベクトルのクラスについてランダムに与えることで、学習を的確に行うことができる。s(t)は、入力ベクトルx(t)が同じクラスに有る場合には、s(t)=1、異なるクラスに有る場合にはs(t)=−1とする。αc はコードブックベクトルに設定される学習率であり、数3で与えられる。
【0025】
【数3】
コードブックベクトルの初期値として学習用パターンベクトルを用いるとき、数1の実行に際し、コードブックベクトルmiと、入力した学習用パターンベクトルxとが同値になる場合が存在する。この場合、数2に示す学習過程が適切に行われないため、予め入力ベクトルがコードブックベクトルと同値になる組み合わせの有ることがわかっている場合には、それらを除いて数1に示すアルゴリズムを実行する。或いは、数1の評価の段階で、‖x−mi‖が零になるものを除外する等の対処を行う。また、コードブックベクトルの初期値設定の時に学習用パターンベクトルをそのまま用いるのではなく、学習用パターンベクトルにランダムなベクトルを加えたものを初期値に加えるなどの処置も実施する。上記学習過程に加えて、上記文献『自己組織化マップ』に記載された学習ベクトル量子化3(Learning Vector Quantization1 :LVQ3)のアルゴリズムを実行する。数4〜数7はその学習過程を示す。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0026】
ここで、入力ベクトルxに最も近い2つのコードブックベクトルをmi,mjとする。入力ベクトルxと同じクラスのコードブックベクトルがmj で、異なるクラスのコードブックベクトルがmiであれば、数4及び数5を適用して学習を行なう。また、入力ベクトルx、コードブックベクトルmi及びコードブックベクトルmjが同じクラスであれば、数6及び数7を適用して学習を行なう。数6及び数7におけるεは定数である。また、数4、数5、及び数6におけるσ(t)は、コードブックベクトルに設定される学習率であり、数8によって与えられる。
【数8】
【0027】
学習手段102のアルゴリズムについては、上記したようにOLVQ1とLVQ3を併用したもの、又はそれぞれを単独で用いる。また、これらアルゴリズムを実行させる順番は入れ替わってもかまわないし、これら以外の学習アルゴリズムを併用したり、単独で用いることも可能である。
【0028】
識別手段103においては、検出手段101により検出した利用者の識別時のパターンベクトルを得て、このパターンベクトルを入力ベクトルxとし、学習手段102により登録者の学習の済んだコードブックベクトルの集合の中で入力ベクトルxにベクトル空間上の距離が最も近いコードブックベクトルを求め、そのクラスに該当する登録者を識別結果104として出力する。但し、識別動作において、利用者が必ず登録者の内の誰かであるとして特定できるとは限らない。そのため、利用者が登録者の誰でもない未登録者であることの識別をするため、図4のフローチャートに示されるアルゴリズムを実行する。
【0029】
図4は、識別手段103における未登録者判別の処理を示す。図4においては、Sはステップを表している。
まず、検出手段101により利用者のパターンベクトルを取得し、これを入力ベクトルxとする(S201)。ついで、入力ベクトルxに最も近いコードブックベクトルm1と、次に近いコードブックベクトルm2とを求める(S202)。更に、コードブックベクトルm1とコードブックベクトルm2が同じクラスであるか否かを判定し(S203)、同じクラスであれば数9を満たすか否かを判定する(S204)。
【数9】
【0030】
同じクラスで且つ数9を満たす場合、コードブックベクトルm1,m2のクラスに該当する登録者を識別結果104として出力する(S206)。同じクラスであっても、入力ベクトルxの大きさ|x|が数9を満たさない場合、利用者を末登録者として識別結果104を出力する(S207)。数9において、mminはコードブックベクトルm1,m2と同一のクラスに属すコードブックベクトルのうちクラスの中の最小のベクトルの大きさである。また、mmaxはm1,m2と同一のクラスに属すコードブックベクトルのうちクラスの中の最大のベクトルの大きさである。
【0031】
S203でコードブックベクトルm1とコードブックベクトルm2が異なるクラスである場合、数10を満たすか否かを判定する(S208)。
【数10】
数10を満たす場合、コードブックベクトルm1のクラスに該当する登録者を識別結果104として出力する(S209)。また、コードブックベクトルm1,m2が数10を満たさないとき、「未登録者」の識別結果104を出力する(S210)。S206、S207、S210の処理終了後、次の識別対象の利用者が存在するか否かを判定し(S211)、有ればS201に処理を戻し、無ければ終了(待機)する。
【0032】
〔第2の実施の形態〕
上記第1の実施の形態が学習手段102及び識別手段103のアルゴリズムとしてLVQ手法を用いたのに対し、本実施の形態は学習手段102及び識別手段103のアルゴリズムとして、自己組織化マップ(Self Organizing Map:SOM)と動径基底関数(Radial Basis Function )を用いたところに特徴がある。
【0033】
学習手段102においては、1人の登録者の学習用パターンベクトルによって、その登録者の代表ベクトルri(i=1,・・・,Nr:Nrは代表ベクトルの数)を学習させる。学習は数11及び数12に従って行われる。
【数11】
【数12】
【0034】
数11のrc(t)は入力ベクトルx(t)に最も近い代表ベクトルを示し、数12のrcn(t)はrc(t)の次に入力ベクトルx(t)に近い代表ベクトルを示す。tは、回数を示す離散時間領域の変数である。入力ベクトルx(t)は、学習する登録者の学習用パターンベクトルの集合から順番に与えられる。このとき、初期値となる代表ベクトルは空間に均等に分布するようにランダムに与える。α及びβは0から1の間の定数であり、α>βとし、学習が適切に行なわれる様に設定する。
【0035】
以上のように、SOMによる学習は各登録者に対して行われ、登録者毎に学習済みの代表ベクトルの集合を得る。識別手段においては、検出手段で得た識別しようとする利用者のパターンベクトルの集合ri(i=1,・・・,Nr)について、数13、数14、数15、及び数16を計算する。これらの計算は動径基底関数(Radial Basis Function :RBF)と呼ばれるものである。
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【0036】
数13で示す計算結果がz=1となる場合、利用者は用いた代表ベクトルriの集合を学習させた登録者であるとし、z=0となる場合、利用者は登録者ではないとする。以上の計算を登録者全員の代表ベクトルriについて行い、z=1となる登録者が有った場合、利用者はその登録者であるとして識別結果104を出力する。また、全ての登録者の代表ベクトルriにおいてz=0であれば、利用者は未登録者であるとして識別結果104を出力する。
【0037】
数13のwi(i=1,・・・,Nr)は、各代表ベクトルに付けられた重み係数であり、精度良く識別を行うために適した値に設定する。本発明者は、全ての代表ベクトルにおいてwi=1として識別動作が行えることを確認している。数14に示すfu(u)はステップ関数であり、uが0より大きいときは1となり、それ以外では0になる関数である。距離yiは数15で示される。wiは各代表ベクトルから計算した距離yiに乗じる重み係数である。また、θは定数である。数14の|x−ri|は、入力ベクトルxと代表ベクトルriとの距離である。また、siはriに最も近い他の代表ベクトルまでの距離であり、更に、数16のf(d,s)はガウス関数であり、exp−(d2/2S2)で示される。
【0038】
RBFによる識別手段のアルゴリズムは、第1の実施の形態におけるOLVQ1及びLVQ3のアルゴリズムにより学習したコードブックベクトルにも応用できる。コードブックベクトルをクラスにより分割し、同一クラスのコードブックベクトルの集合を作り、これを1人の登録者に対する代表ベクトルであると見なせば、同様に識別動作が可能である。
【0039】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。まず、第1の実施の形態に対する実施例を説明する。学習手段のアルゴリズムとしてOLVQ1及びLVQ3を用い、被験者による実験を行った。20人の被験者を採用し、1人に付き240の学習用パターンベクトルを採取した。また、識別動作の確認のために学習用パターンベクトルとは別に80のパターンベクトルを採取した。20人の被験者の内19人を登録者とし、1人を未登録者として、登録者19人については学習動作により学習させた。その際、OLVQ1における学習率の初期値αc(0)=0.3、LVQ3における学習率σ(0)=0.1、ε=0.1とした。コードブックベクトルの初期値は、学習用パターンベクトルをそのまま用いた。識別動作においては、数9に与える定数βは0.0〜1.0の間で設定して良い結果が得られ、最終的にβ=0.7した。また、数10に与える定数γは0.0〜1.0の間に設定して良い結果が得られ、最終的にγ=0.7とした。
【0040】
これら学習手段102や識別手段103に必要な定数の値は、検出手段101の方式
(構成)、登録者数、コードブックベクトルの量などにより変わり、最も精度の良い結果を得られる値が変わるため、調整することは望ましいが、上記値の近傍にすれば良い結果が得られることを実験により確認した。
【0041】
20人の被験者の内、未登録者となる被験者を順番に変えて20回の学習動作、識別実験を計算機上で繰り返した結果、利用者が登録者であった場合、正しい登録者として識別できなかった誤りは24%、利用者が未登録者であった場合に正しく未登録者であることを判断できなかった誤りは9.8%であった。この結果は、識別動作に用いた個々のパターンベクトルについての割合であり、実際の装置においては複数回の識別動作を行い、その結果が同じであった時に最終的な結果を出すので、実用的には優れた値である。これらの誤りは排反する性質を持つため、実際の応用場面において、学習や識別のパラメータを調節することが望ましい。
【0042】
また、第2の実施の形態に対する実施例は次の如くであった。学習手段102のアルゴリズムとしてSOMを用い、識別手段103のアルゴリズムとしてRBFを用いた場合の実験では、4人の被験者について、1人あたり120の学習用パターンベクトルを採取し、120のパターンベクトルを評価実験用に用いた。その結果、登録者が正しい登録者として識別できなかった誤りが52%、利用者が未登録者であった場合に正しく未登録者であることを識別できなかった誤りは1.8%であった。
【0043】
【発明の効果】
以上より明らかなように、本発明の個人識別装置によれば、未登録者を未登録者として正しく判断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による個人識別装置の機能構成を示す構成図である。
【図2】図1の検出手段の検出部の構成を示す斜視図である。
【図3】図2の検出部に接続される検出回路の構成を示す回路図である。
【図4】図1の識別手段における未登録者判別の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 マウス
2,3,4,5 発光ダイオード
6,7,8,9 フォトダイオード
10,11,12,13 発振器
14 相関検出器
101 検出手段
102 学習手段
103 識別手段
104 識別結果
P1 〜P16出力信号
Claims (2)
- 識別対象の利用者がマウスを操作したときの指の形状を検出して複数のパターンベクトルを取得する検出手段と、
前記検出手段による前記複数のパターンベクトルの検出を同一の前記利用者について複数回行って取得した学習用パターンベクトルの集合を1つのクラスとしたコードブックベクトルとして、予め定められたアルゴリズムに従い、前記同一の利用者を登録する学習動作を行なう学習手段と、
前記利用者による前記マウスの操作により前記検出手段から入力された複数のパターンベクトルを入力ベクトルとしたとき、ベクトル空間上で前記入力ベクトルに距離が最も近いコードブックベクトルを前記学習手段で学習済みのコードブックベクトルの集合の中から複数を求め、この複数のコードブックベクトルの属するクラスが同一で所定の第1の条件を満たすときに前記利用者を前記学習手段により前記利用者として登録された登録者、前記所定の第1の条件を満たさないときには前記学習手段により前記利用者として登録されていない末登録者として識別し、クラスが異なっても所定の第2の条件を満たすときには前記利用者を前記登録者、前記所定の第2の条件を満たさないときには前記末登録者として識別して識別結果を出力する識別手段とを備え、
前記識別手段は、前記入力ベクトルxと前記コードブックベクトルの距離の比較を行い、そのコードブックベクトルの中から前記入力ベクトルxに最も近い第1のコードブックベクトルm1及び次に近い第2のコードブックベクトルm2を選択し、この2つのコードブックベクトルが同一クラスに属するとき、
前記入力ベクトルxが、
mmin−β(mmax−mmin)<|x|<mmax
+β(mmax+mmin) ・・・(1)
(但しmmin及びmmaxは、前記コードブックベクトルm1,m2と同一のクラスに属するコードブックベクトルのうちクラスの中の最小及び最大のベクトルの大きさ、βは0〜1の間の定数)
前記所定の第1の条件としての(1)式を満たすときには登録者有りを識別し、上記(1)式を満たさないときは登録者無しを識別し、また、前記コードブックベクトルm1,m2が異なるクラスに属すと共に前記所定の第2の条件としての(2)式を満たすとき、
|m1−x|<γ|m1−m2|/2 ・・・(2)
(但し、γは0〜1の間の定数)
前記コードブックベクトルm1が属するクラスに該当する登録者有りを識別し、上記(2)式を満たさないときは該当者なしを識別することを特徴とする個人識別装置。 - 前記学習手段は、そのアルゴリズムに最適化学習率ベクトル量子化1(The Optimized learning rate learning Vector Quantization1:OLVQ1)及び学習ベクトル量子化3(Learning Vector Quantization3:LVQ3)を併用して用い又は単独で用いることを特徴とする請求項1記載の個人識別装置。
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