JP4358814B2 - 試料の解析方法 - Google Patents

試料の解析方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4358814B2
JP4358814B2 JP2005325070A JP2005325070A JP4358814B2 JP 4358814 B2 JP4358814 B2 JP 4358814B2 JP 2005325070 A JP2005325070 A JP 2005325070A JP 2005325070 A JP2005325070 A JP 2005325070A JP 4358814 B2 JP4358814 B2 JP 4358814B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
signal
spectrum
delay time
sample
nmr
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2005325070A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007132752A (ja
Inventor
中村  文彦
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP2005325070A priority Critical patent/JP4358814B2/ja
Publication of JP2007132752A publication Critical patent/JP2007132752A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4358814B2 publication Critical patent/JP4358814B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、試料の解析方法に関する。さらに詳しくは、パルスフーリエNMR(核磁気共鳴)スペクトルからのシグナルの分離による試料の解析方法及びパルスフーリエNMRスペクトルのデータ処理方法に関する。より詳しくは、パルスフーリエNMRスペクトルのシグナルごとに緩和時間が異なることを利用してスペクトルからシグナルを分離し、各緩和時間におけるシグナルの解析を行うことを利用した試料の解析方法及びデータ処理方法に関する。
パルスフーリエNMRによる試料の解析方法では、装置の性能、試料の状態などによってシグナルの分解能が低い場合や、シグナルの分解能に別段の問題がなくても複数のシグナルのケミカルシフトの差が著しく小さい場合、波形分離を要することが多い。
波形分離については、これまでにも数多くの研究がなされており、単一のスペクトルからでも、標準波形のフィッティングによる分離や、数学的処理によるデコンボリューションなどの方法が採られている。
しかし、標準波形のフィッティングには、もともとの波形分離状態が悪い場合、シグナルの位置などの前提条件を与えないと一義的な解が得られないことがあるなどの課題がある。また、数学的処理によるデコンボリューションでは、データのノイズレベルが低くなければ、信頼しうる結果が得られないことがある。
また、二次元的なNMRスペクトルの測定を行い、複数のスペクトルから解析を行う方法として、分子の並進拡散挙動の違いを利用し、磁場勾配NMRにより行うDOSY〔(Diffusion Ordered SpectroscopY)、以下、DOSYという〕(例えば、非特許文献1参照)が知られている。これは、同じ分子に属する核からのシグナルは、同じ並進拡散挙動を示すことを利用して混合物のNMRスペクトルを測定し、混合物に含まれている単品のスペクトルを抽出する方法である。
しかし、この方法は、シグナルの分離法ではあるが、シグナルの分解能の向上を意図したものではない。すなわち、同じ分子内に存在する核からのシグナルは分離されることがなく、信頼しうる結果を得るためには、それぞれの自己拡散係数が大きく異なっていることを必要とする。また、この方法には、磁場勾配NMRスペクトルの測定を行うことができる特殊なプローブも必要である。
C.S.Johnson, Progress in Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy 34(1999), p.203-256
本発明の課題は、NMRスペクトルの周波数分解能が不十分な場合の波形分離、及び個々のシグナルを有する試料の状態解析を可能とする方法を提供することにある。
波形分離や数学的処理によるデコンボリューションでは、あらかじめピークの位置が決まっていたり、データのノイズレベルが著しく低かったりするために必要となる前提条件が多い。これは、一次元のスペクトルでは、基本的には同定する情報が少ないからであると考えられる。そこで、何らかの他の物理量の情報を付加することが考えられ、前記DOSYでは、自己拡散係数を利用している。シグナルごとに異なることが予想される物理量は、すべてのシグナルの分離に対して有効であり、特殊な装置を使用しなくても測定可能な物理量であることが望ましい。
本発明者は、そのような物理量として、パルスフーリエNMRの緩和時間に着目し、パルスフーリエNMRの測定方法に本質的に存在する、個々の成分の違いによる緩和時間の違いを波形分離に利用することができることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)試料のパルスフーリエNMRスペクトルの測定の際に、NMRスペクトルの遅延時間依存性を利用してシグナルの分離と緩和時間の算出を並行して行い、前記シグナルの形状及び緩和時間を決定する試料の解析方法、および
(2)試料のパルスフーリエNMRスペクトルの測定の際に、NMRスペクトルの遅延時間依存性を利用してシグナルの分離と緩和時間の算出を並行して行うNMRスペクトルのデータ処理方法
に関する。
本発明は、NMRスペクトルの周波数分解能が不十分な場合の波形分離、及び個々のシグナルを有する試料の状態解析を可能とする。
NMRスペクトルの周波数分解能が不十分となる原因としては、試料が空間的に不均一であること、試料中での化合物の分子運動性が低いなどの試料の性状に由来してピーク幅に広がりがあること、非常に近接した位置に複数のシグナルが現れるという化合物の構造又はその組成上の問題、主として永久磁石が使用された小型の装置や元々性能に劣る装置を使用するなどの装置性能に基づく問題などが考えられている。試料の性状に由来するピーク幅の広がりは、例えば、エマルジョン、サスペンジョン、液体試料が固相に含浸された状態で存在するなどの複数の相が共存していること、化合物の一部が析出していること、化合物が何らかの構造体を形成していること、気泡が混入していることなどによって生じるが、従来、こうした試料は、NMRの不得意とするところである。
本発明は、それらの欠点を大きく改善するという効果も奏する。
本発明では、試料のパルスフーリエNMRスペクトルの測定の際に、NMRスペクトルの遅延時間依存性を利用してシグナルの分離と緩和時間の算出を並行して行い、前記シグナルの形状及び緩和時間を決定する。
本発明の方法におけるパルスフーリエNMRスペクトルの測定方法は、その測定原理が通常のパルスフーリエNMRと大きく異なるところがない。したがって、測定の対象となる試料は、従来のH-NMRや13C-NMRの測定の際に試料として使用されている有機化合物と同様であればよく、特に限定されない。
測定の対象となる有機化合物としては、例えば、ベンゼン環、糖骨格、ヘテロ環などの環構造を有する化合物、アルキル基やオキシアルキレン基などの鎖状の有機基を有する化合物、アミノ基やカルボキシル基などの官能基を有する化合物などが挙げられる。有機化合物は、単一化合物であってもよく、複数の化合物からなる混合物や組成物であってもよい。
試料は、有機化合物の有機溶媒や無機溶媒などの溶液であってもよい。さらに、試料として、従来、分解能の低さから解析が困難であるとして測定の対象から除外されていた化合物、該化合物の混合物や組成物、該化合物が無機物質中や他の構造体中に存在しているものを用いることもできる。したがって、本発明は、従来、分解能の低さから解析不能として測定の対象から除外されていた化合物についても解析が可能となるので、測定の対象となる試料の範囲を拡張するという利点を有する。
パルスフーリエNMRとしては、一般に採用されている方法であればよく、特に限定がない。
本発明では、NMRスペクトルの遅延時間依存性を利用してシグナルの分離と緩和時間の算出を行う。シグナルを分離するための手段については、特に限定がなく、種々の手段を利用することができる。例えば、シグナルの分離は、以下のようにして行うことができる。
すなわち、CPMGなどの横緩和時間測定用の各種シーケンスを用いて遅延時間τで測定したスペクトルfτ(x)は、I番目の成分のτ=0でのスペクトルをf(x)、その緩和時間TをT2iとすると、式(1):
τ(x)=Σ{f(x)・exp(-τ・1/T2i)} (1)
で表される。
式(1)は、物理的な意味合いが異なるものの、数学的には、式(2):
δ,Δ,g(x)=Σ{fi(x)・exp(-γδ(Δ-δ/3)Di)} (2)
(式中、γは磁気回転比、δは磁場勾配パルス幅、gは磁場勾配強度、Diはi番目の成分の拡散係数、Δは磁場勾配パルス間隔を示す)
で表される、自己拡散係数の違いを利用してスペクトルの分離を行うDOSYと同様であることがわかる。なお、式(2)中のDiは式(1)中の1/T2iに対応し、式(2)中のγδ(Δ-δ/3)は式(1)中のτに対応する。
式(2)で表されるDOSYにおいては、磁場勾配強度(g)、すなわちγδ(Δ-δ/3)の値を変えて測定した複数のスペクトルから、各成分化合物のスペクトル及びその自己拡散係数を求めることができるとされている。したがって、緩和測定においても、原理的には、遅延時間τを変化させて測定した複数のスペクトルから、各シグナルのピークとそれらの緩和時間Tを求めることができると考えられる。
DOSYでは、式(2)で表される関数形に対し、フィッティングを行う方法(参考文献:S.W.Provencher et al. in "Numerical Treatment of Inverse Problems in Differential and Integral Equations”(P.Deuflhard et al. Eds.), Birkhaeuser, Boston, 1983, p.304)や、多変量解析を用いる方法(参考文献:L.C.M. Van Gorkom et al., J. Magn. Reson. 130(1998), p.125)により、スペクトルの解析が行われており、これらの手法は、いずれも本発明に利用することができる。また、より直接的には、逆ラプラス変換を用いることも原理的には可能である。
このようにして、従来、DOSYのために考案し、確立された方法を利用することにより、より一般的な緩和時間を利用した波形分離が可能であり、並行して状態解析的に重要な意味を持つ緩和時間も個々のシグナルに対して算出することができる。
ただし、上記の方法は、非常に高精度に測定されたデータを必要とする。そこで、本発明者は、さらに、ノイズレベルの高いスペクトルでも解析可能な方法として、単一シグナルの波形を標準波形と仮定して行う2つの方法を見出し、より汎用性を持たせることにも成功した。
以下に、その2つの方法、すなわち逐次法及び一括フィッティング法によるシグナルの分離について述べる。
〔逐次法によるスペクトルの分離〕
以下に述べる逐次的な操作により、スペクトルを分割する(図1参照。ただし、図1では、便宜上、標準波形としてガウス関数とローレンツ関数の重ね合わせを使用した場合を示しているが、本発明では後述するように他の関数も使用可能である)。
1.シグナルの分離を全成分がすべて消失した状態から遅延時間の長いスペクトルが認識できる状態までの間のいずれかの段階から始め、緩和時間がもっとも長い単一シグナルを決定する。もっとも長い緩和時間Tを有する単一シグナルだけが残るような長い遅延時間τでのスペクトルに対して、標準波形となる関数を用いてカーブフィッティングを行い、そのシグナルの位置、幅などの形状を決定するパラメータ(形状因子)を決定する。標準波形となる関数としては、ガウス関数、ローレンツ関数、それらの和やコンボリューションなどの種々のものを利用することができる。
2.徐々に遅延時間を短縮し、緩和時間がより短い成分のシグナルを逐次決定する。
具体的には、前記1に記載のスペクトルよりも少し短い遅延時間τでのスペクトルに対して、ピークの高さだけを変化させてフィッティングを行う。フィッティングが良好であれば、この操作を繰り返す。フィッティングしきれないシグナルが現れたら、次の3に記載の操作を行う。
3.これまでのシグナルでフィッティングしきれない部分が発生しているので、もう1つの標準波形を追加し、その波形因子を決定し、前記2に記載の操作に戻る。
4.前記1〜3に記載の操作を繰り返し、もっとも遅延時間τの短いスペクトルまでフィッティングし終えると、各シグナルの形状因子とシグナル強度の遅延時間τに対する依存性とが決定される。しかし、この段階では、まだ分割処理は終了していない。
5.次に、各成分のシグナル強度を遅延時間τに対して対数プロットし、これが直線上に存在することにより初めて分割が終了する。その傾きが−1/Tとなることから、該当シグナルの緩和時間Tも並行して求められる。
対数プロットが下に凸の曲線になるのであれば、ケミカルシフトは一致するものの、緩和時間Tが異なる複数のシグナルからなることがわかる。この場合、複数の緩和時間Tを仮定し、カーブフィッティングを行うことにより、緩和時間Tの異なる複数のシグナルに分割することができる。
上記の操作を要約すると以下のようになる。遅延時間が異なる一連のスペクトルを測定し、まず、もっとも遅延時間が長いシグナルのみが残ったとみなせる、遅延時間が長いスペクトルから該シグナルの形状因子を決定したうえで、より遅延時間が短いスペクトルに対して強度のみを変化させてフィッティングを行い、強度のみの変化ではスペクトルを再現させることができなくなるたびに新しいシグナルを追加し、その形状因子を決定することにより、各シグナルの形状因子と遅延時間に対する強度変化プロファイルを取得し、個々の強度変化プロファイルに対して単一又は複数の指数関数によるフィッティングを行い、個々の成分の緩和時間を得るとともに成分数を確定させる。
以上の操作により、「ケミカルシフト」及び「緩和時間」のうち、少なくともいずれかが異なるシグナルを分割することが可能であり、各シグナルの形状因子と、緩和時間を一度に求めることができる。
〔一括フィッティング法によるスペクトルの分離〕
シグナルの関数形を仮定し、シグナルの形状因子及び緩和時間をパラメータとして、遅延時間を変化させて測定した一連のスペクトルに対する一括フィッティングによりシグナルの分離を行う。より具体的には、式(1)で表される遅延時間τで測定したスペクトルfτ(x)を用いて、直接、遅延時間τを変化させた一連のスペクトルに対し、一括でカーブフィッティングを行う。
ただし、このとき、データの質が比較的低い場合であっても安定した解析を行うことができるようにするために、少数のパラメータで形状を定義することができる標準波形を仮定する。標準波形としては、ガウス関数、ローレンツ関数、それらの和やコンポリューションなどの種々のものを利用することができる。
なお、フィッティングの操作は、実測されたスペクトルと計算によって再現されたスペクトルとの差(以下、残差という)の二乗和が最小になるように行うのが普通である。しかし、遅延時間τの長い領域のスペクトルの強度が小さいことに起因して絶対的な差が小さくなるため、計算上の重みが小さくなってしまい、遅延時間τの長いシグナルについては、視覚的に大きな不一致を残した状態で計算が収束しやすい。そうした場合、残差を各スペクトルの最大値で規格化して用いることが有効である。
以上のようにして、逐次法又は一括フィッティング法により、スペクトルに含まれている各シグナルを分離し、緩和時間を決定することができる。
したがって、この方法を利用すれば、試料のパルスフーリエNMRスペクトルの測定の際に、NMRスペクトルの遅延時間依存性を利用してシグナルの分離と緩和時間の算出を並行して行うことにより、試料のNMRスペクトルのデータ処理を行うことができる。
実施例1
特許第3123757号明細書に記載の「実施例3」に準じて製造した洗剤粒子を用いた。洗剤粒子の主成分は、無機物質と界面活性剤であるが、主な界面活性剤として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテルを含んでおり、H-NMRで検出可能な部位のうち含有量が多いものとしては、両性界面活性剤に共通のアルキル基とポリオキシエチレン鎖(EO鎖)、及び水分(水酸基)が挙げられる。
以下のH-NMRの測定方法及び測定条件の下で、前記逐次法により、洗剤粒子のH-NMRスペクトルの解析を行った。
H-NMRの測定方法〕
直径5mmのNMR測定用チューブ内に約5cmの高さまで洗剤粒子を入れ、そのままスピニングなしでH-NMRを測定した。洗剤粒子をNMR測定用チューブ内に押し込むなどの特別な充填処理を施すことにより緊密充填した場合、その利点よりもむしろ洗剤粒子を破壊するリスクのほうが大きいので、あえて行わなかった。
H-NMRの測定条件〕
・装置: Varian社製、商品名: InovaUNITY300
・プローブ:Doty 社製、磁場勾配プローブ(最大磁場勾配 300Gauss/cm)
・測定温度:25.0℃
・緩和待ち時間(d1):5s
・走査幅(sw)*:10000(*:ピークが非常にブロードなため、広げる必要があった。)
(一次元測定)
・励起パルス幅(pw):6.5μs
・積算回数:100回
(遅延時間τのスペクトルの測定)
・パルスシーケンス:図2に示すCPMG法によるパルスシーケンスを採用。図2に示すパルスシーケンスにおける各記号は、以下のことを意味する。
・90度パルス幅(p1):11.6μs
・180度パルス幅(pw):23.2μs
・積算回数:32回
・単位遅延時間(d2):0.00002s
・遅延時間τ(bt):0.00008, 0.00016, 0.00032, 0.00064, 0.00128, 0.00256, 0.00512, 0.01024, 0.02048, 0.04096, 0.08, 0.16, 0.32, 0.64, 1.28s
・n:btに達するまで繰り返すことを意味する。
一次元測定(普通の測定条件)の結果は、図3の1H-NMRスペクトルの測定結果に示されるように、極めてブロードなスペクトルとなる。
なお、このような試料の測定には、通常、MAS法(マジック角回転法)を用いて分解能の向上を図ることが多いが、用いられた洗剤粒子を高速回転させると遠心力により、界面活性剤と無機物質とが分離し、本来の洗剤粒子の状態とは異なる状態となってしまうため、好ましくない。
CPMG法を用いた測定により得られた遅延時間τの寄与を受けたスペクトルを図4に示す。図4において、その上から順に、遅延時間τが 0.00008、0.00016、0.00032、0.00064、0.00128、0.00256、0.00512、0.01024、0.02048、0.04096、0.08又は0.16のときのシグナル強度を示す。図4に示された結果から、遅延時間τが0.32s以上のところでは、シグナルがもはや観測されなかったが、その直前では、単一ピークと思われる左右対称形になっており、逐次法が適用可能であることがわかる。
図4に示されたデータに対して、逐次法を適用することで決定された3つのピークの強度変化を図5に示す。関数形は、ガウシアンとローレンチアンの和を用いた。
図5に示された結果より、3.3ppm及び4.6ppmにおいては、対数プロットが直線となることから、それぞれ、緩和時間的にも洗剤粒子が単成分で構成されていることがわかるが、1.2ppmにおいては、明らかに下に凸の曲線が描かれているため、洗剤粒子が複数成分で構成されていることがわかる。
そこで、1.2ppmにおけるデータに対しては、さらに図6に示されるように、カーブフィッティングを行い、ピークを2成分に分割した。
以上の操作により、図2に示される遅延時間τが0.00008sであるスペクトルは、ケミカルシフト的には、図7示されるように3成分からなり、また、緩和時間も考慮すると、表1に示される4成分からなることがわかる。
Figure 0004358814
実施例2(参考例)
特許第3123757号明細書に記載の実施例3に準じて製造した洗剤粒子のスペクトルの解析に、前記一括フィッティング法を採用した。
一括フィッティング法のソフトウエアとしては、Microsoft Excel(マイクロソフト社、登録商標)及びそのアドインソフト「ソルバー」(商品名)を使用し、関数形は、ガウシアンとローレンチアンの和とした。
その結果、成分数を増やすに従い、残差二乗和が減少したが、図8のピーク本数とフィッティング残差との関係に示されるように、5成分目の導入はほとんど効果が認められなかった。なお、図8(a)は、ピーク本数に対してフィッティング残差二乗和を対数プロットした結果を示し、図8(b)は、ピーク本数に対してフィッティング残差二乗和をリニアプロットした結果を示す。この結果より、4成分としてフィッティングすることがもっとも適していると判断された。ここで、4成分として同定した場合の結果を図9及び表2に示す。図9は、より詳しくは、遅延時間τ=0.00008sにおける一括フィッティングによるスペクトルの分割結果を示す。表2におけるシグナル強度は、全体を100としたときの相対強度を示す。
Figure 0004358814
比較例1
特許第3123757号明細書に記載の実施例3に準じて製造した洗剤粒子を用いて、実施例1と同じ条件で測定した一次元スペクトル(遅延時間なし)に対して、ガウシアンとローレンチアンの和を標準波形として用い、フィッティングを行った。その結果を図10に示す。
図10に示されるように、一次元スペクトルについては、2つの標準波形を用いるだけで、スペクトル形状を再現することができた。
しかし、遅延時間τが正、すなわち、緩和がある程度進んだスペクトルを再現するには、実施例1及び2で示した3〜4成分が必要であり、これら2つの標準波形を重ね合わせただけでは、適切かつ一義的に再現することができない。
したがって、比較例1における方法では、波形の分離が不十分であることがわかる。
この結果から、通常の一次元測定データからだけでは、波形分離が十分には行えないことが示され、緩和軸を考慮した波形分離の有用性がわかる。
本発明の方法は、各種試料の解析やNMRスペクトルのデータ処理に好適に使用することができる。
逐次法によるスペクトルのピークの分割に関するフローチャートである。 実施例1におけるCPMGパルスシーケンスの説明図である。 実施例1における洗剤粒子の1H-NMRスペクトルの測定結果を示す図である。 実施例1において、CPMG法を用いた測定により得られた遅延時間τによるスペクトルの変化を示す図である。 実施例1において、逐次法を適用することで決定された3つのピークの強度変化を示す図である。 実施例1において、カーブフィッティングを行い、ピークを2成分に分割したときの図である。 実施例1において、図2に示されたスペクトルが3成分のケミカルシフトからなることを示す逐次法による分割結果を示す図である。 実施例1において、ピーク本数とフィッティング残差との関係を示す図である。 実施例1において、一括フィッティングによるスペクトルの分割結果を示す図である。 実施例1において、通常の方法での波形分離結果を示す図である。

Claims (1)

  1. 試料のパルスフーリエNMRスペクトルの測定の際に、NMRスペクトルの遅延時間依存性を利用してシグナルの分離と緩和時間の算出を並行して行い、前記シグナルの形状及び緩和時間を決定する試料の解析方法であって、前記シグナルの分離を全成分がすべて消失した状態から前記NMRスペクトルの遅延時間の長いスペクトルが認識できる状態までの間のいずれかの段階から始め、緩和時間がもっとも長い単一シグナルを決定した後、徐々に遅延時間を短縮し、緩和時間がより短い成分のシグナルを逐次決定する試料の解析方法
JP2005325070A 2005-11-09 2005-11-09 試料の解析方法 Expired - Fee Related JP4358814B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005325070A JP4358814B2 (ja) 2005-11-09 2005-11-09 試料の解析方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005325070A JP4358814B2 (ja) 2005-11-09 2005-11-09 試料の解析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007132752A JP2007132752A (ja) 2007-05-31
JP4358814B2 true JP4358814B2 (ja) 2009-11-04

Family

ID=38154543

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005325070A Expired - Fee Related JP4358814B2 (ja) 2005-11-09 2005-11-09 試料の解析方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4358814B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8471210B2 (en) 2008-03-31 2013-06-25 Southern Innovation International Pty Ltd. Radiation imaging method with individual signal resolution
US8812268B2 (en) 2008-12-18 2014-08-19 Southern Innovation International Pty. Ltd. Method and apparatus for resolving piled-up pulses by using a mathematical transform
US8954300B2 (en) 2008-03-31 2015-02-10 Southern Innovation International Pty Ltd. Screening method and apparatus
US9310513B2 (en) 2008-03-31 2016-04-12 Southern Innovation International Pty Ltd. Method and apparatus for borehole logging
US10310099B2 (en) 2004-09-16 2019-06-04 Southern Innovation International Pty Ltd Method and apparatus for resolving individual signals in detector output data

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5364954B2 (ja) * 2008-09-19 2013-12-11 株式会社 Jeol Resonance Nmr測定方法
JP5538936B2 (ja) * 2010-02-10 2014-07-02 キヤノン株式会社 解析方法、プログラム、記憶媒体、x線位相イメージング装置
US9470771B2 (en) 2012-06-08 2016-10-18 Liposcience, Inc. NMR measurements of NMR biomarker GlycA
US9361429B2 (en) 2012-06-08 2016-06-07 Liposcience, Inc. Multi-parameter diabetes risk evaluations
US9928345B2 (en) 2012-06-08 2018-03-27 Liposciences, Inc. Multiple-marker risk parameters predictive of conversion to diabetes
WO2014059025A1 (en) * 2012-10-09 2014-04-17 Liposcience, Inc. Nmr quantification of branched chain amino acids
JP6349876B2 (ja) * 2014-03-31 2018-07-04 住友大阪セメント株式会社 酸化ケイ素被覆酸化亜鉛とその製造方法及び酸化ケイ素被覆酸化亜鉛含有組成物並びに化粧料
US11415652B2 (en) * 2016-08-11 2022-08-16 The United States Of America, As Represented By The Secretary, Department Of Health And Human Services Multi-dimensional spectroscopic NMR and MRI using marginal distributions

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10310099B2 (en) 2004-09-16 2019-06-04 Southern Innovation International Pty Ltd Method and apparatus for resolving individual signals in detector output data
US8471210B2 (en) 2008-03-31 2013-06-25 Southern Innovation International Pty Ltd. Radiation imaging method with individual signal resolution
US8954300B2 (en) 2008-03-31 2015-02-10 Southern Innovation International Pty Ltd. Screening method and apparatus
US9310513B2 (en) 2008-03-31 2016-04-12 Southern Innovation International Pty Ltd. Method and apparatus for borehole logging
US8812268B2 (en) 2008-12-18 2014-08-19 Southern Innovation International Pty. Ltd. Method and apparatus for resolving piled-up pulses by using a mathematical transform

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007132752A (ja) 2007-05-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4358814B2 (ja) 試料の解析方法
Zangger Pure shift NMR
Blümich et al. Desktop NMR and its applications from materials science to organic chemistry
Mlynárik Introduction to nuclear magnetic resonance
Sinnaeve The Stejskal–Tanner equation generalized for any gradient shape—an overview of most pulse sequences measuring free diffusion
Kaltschnee et al. “Perfecting” pure shift HSQC: full homodecoupling for accurate and precise determination of heteronuclear couplings
EP2894490B1 (en) Spin echo SPI methods for quantitative analysis of fluids in porous media
Shrot et al. Single-scan 2D DOSY NMR spectroscopy
CA2568705C (en) Process for the determination of lipoproteins in body fluids
Mauhart et al. Faster and cleaner real-time pure shift NMR experiments
Castañar et al. Implementing homo-and heterodecoupling in region-selective HSQMBC experiments
JP5364954B2 (ja) Nmr測定方法
Castañar et al. Recent advances in small molecule NMR: improved HSQC and HSQMBC experiments
Monaretto et al. Enhancing signal‐to‐noise ratio and resolution in low‐field NMR relaxation measurements using post‐acquisition digital filters
Glanzer et al. Visualizing unresolved scalar couplings by real-time J-upscaled NMR
RamaáChaudhari Pure shift NMR approach for fast and accurate extraction of heteronuclear couplings
Man et al. Denoising NMR time-domain signal by singular-value decomposition accelerated by graphics processing units
McCarney et al. Evaluation of benchtop NMR Diffusion Ordered Spectroscopy for small molecule mixture analysis
Di Pietro et al. GET-SERF, a new gradient encoded SERF experiment for the trivial edition of 1H–19F couplings
Kurt A et al. NMR chromatography: molecular diffusion in the presence of pulsed field gradients in analytical chemistry applications
Mitchell et al. Emulation of petroleum well-logging D− T2 correlations on a standard benchtop spectrometer
Stilbs Automated CORE, RECORD, and GRECORD processing of multi-component PGSE NMR diffusometry data
Poggetto Matrix-assisted diffusion-ordered NMR spectroscopy with an invisible matrix: a vanishing surfactant
Nolis et al. Broadband homodecoupled time-shared 1H-13C and 1H-15N HSQC experiments
Lin et al. Measuring JHH values with a selective constant-time 2D NMR protocol

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070531

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090216

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090501

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090618

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090804

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090806

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120814

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120814

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120814

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130814

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees