JP4352199B2 - 地下水浸透流数値解析におけるモデル化方法 - Google Patents

地下水浸透流数値解析におけるモデル化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は浸透流方程式を適用した、地下水浸透流数値解析におけるモデル化方法に係り、特に岩盤層の母岩に薄い地層や割れ目が存在している場合の地下水浸透流の数値解析において、薄い地層等の材料のモデル化を簡便に行えるようにしたモデル化方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
以下の(1)式で支配されるような濃度拡散場や熱伝導場、地下水浸透流等の数値解析において、有限要素法や有限差分法などの数値解析手法が広く利用されている。
【0003】
[数2]
Figure 0004352199
【0004】
これらの解析手法には、解析領域を有限要素や格子によって分割したモデル(メッシュ)が必要となるが、そのメッシュの作成が一連の解析プロセスの中で最も煩雑な人手を要する作業となっている。特に地下水挙動の数値解析では、実際の地層中に非常に薄い地層や割れ目が存在している場合が多く、それを忠実に反映したモデル(メッシュ)化するのに多大な労力を要している。
【0005】
有限要素法地下水解析において、この種の薄い地層や割れ目を効率よく考慮できるモデルとしてスメアード割れ目モデルが提案されている。このモデルは、地層内等に存在する割れ目を要素としてモデル化するのではなく、その割れ目が通過する母岩要素の透水係数を、提案式における面積比例配分により、母岩要素の透水係数を、母岩と割れ目の断面積を用いて平均化し、等価な物性値に変換して解析する手法である。
【0006】
しかしながら、このスメアード割れ目モデルでは、母岩の各要素ごとに断面積の平均化を行う必要があり、三次元的に分布する複雑形状の割れ目(薄い地層)の場合、透水係数の平均化の計算は容易ではない。
【0007】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、薄い層を簡易にかつ精度良くモデル化できるようにした浸透流方程式を適用した数値解析におけるモデル化方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は浸透流方程式を適用した、地下水浸透流数値解析の有限要素法モデル化で岩盤層要素を通過するように薄い地層や割れ目が存在する場合、該薄い地層や割れ目を薄層要素として所定の透水係数を設定して解析要素モデル化を行うようにした地下水浸透流数値解析のモデル化方法において、前記解析要素モデル化の処理は、前記薄層要素と、該薄層要素が通過する前記岩盤層要素とを、一定厚さteの三層構造モデルに換算するステップと、該三層構造モデルの一定厚さt e を、該岩盤層要素の体積の総和V e を前記薄層要素の片面積A f で除して求めるステップと、一定厚さt e が求められた前記三層構造モデルに対して、各層の厚さt i と各層の透水係数k i をもとに、単一層の層構造に沿う方向(s)及びそれに直交する方向(n)の等価透水係数k s ,k n である下式
Figure 0004352199
を適用するステップとを含み、前記岩盤層と、岩盤層を通過する薄い地層や割れ目とを一定厚さの要素モデルとして、該要素モデルに所定の等価透水係数が設定されるようにしたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の浸透流方程式を適用した数値解析におけるモデル化方法の一実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
本発明は上記の(1)式で支配される濃度拡散場や熱伝導場、地下水浸透流の解析のモデル化において、その薄い材料を簡便なモデルとして取り扱うための手法であるが、本実施の形態では、説明を具体的、かつ容易にするために、地下水挙動に関する数値解析を例に説明する。
図1(a)は、地層内に薄い地層10が斜行するように存在するモデルを示している。同図に示したように、四角形要素のうち、ハッチをつけた要素20内を、濃色で示した薄い地層10が通過している。このとき、図1(b)に示したように、斜めに階段状をなすハッチをつけた要素20の平均的な厚さteを求め、厚さtfの薄い地層10が挟在する一定厚さteの地層25に換算する。
【0015】
このとき薄い地層10が通過するハッチをつけた要素20の平均厚さteは、薄い地層10の厚さtfがほぼ一定であるとすれば、要素20の体積の総和をVe、薄い地層の片面積(周辺母岩との接触面積)をAfとすると次(2)式で概算できる。
【0016】
[数4]
Figure 0004352199
【0017】
したがって、解析モデルは、一定厚さteの母岩中に厚さtfの薄層が挟在する三層構造と見なすことができる。図1(b)に示した一定幅の地層25に換算した図1(a)の薄い層が通過する要素20に対しては、Leonardによって示された以下の(3),(4)式による成層構造を成す地層の等価透水係数を適用することが好ましい。
【0018】
[数5]
Figure 0004352199
【0019】
ここで、本発明の材料特性としてのksとknは、図2に示したような成層構造の地層を単一層と見なした場合の層構造に沿う方向とそれに直交する方向の等価透水係数に相当する。また、tiは各地層の厚さ、kiは各地層の透水係数である。このとき各地層は等方、均質モデルとしている。
【0020】
したがって、図1(a)に示した薄い層10と薄い層が通過する要素20を図1(b)のような三層構造の地層25とみなした場合、要素20の等価透水係数は次式、(5),(6)式により計算できる。
【0021】
[数6]
Figure 0004352199
【0022】
ここで、koは薄い地層を取り巻く母岩の透水係数であり、kfは薄層の透水係数である。ksは図1(a)に示した薄い層が通過する要素20の薄層に沿う方向の透水係数、knはそれに直交する方向の透水係数である、ただし、薄層の透水係数kfが母岩の透水係数koがより小さい場合は、ksの寄与を排除するためksをゼロとおく。これは薄層の透水性が周辺母岩より小さい場合は、薄層に直交する方向の透水係数knが支配的になるが、図1左図に示したように、実際には三層構造は凸凹のメッシュでモデル化されているためksが解析に大きく寄与してしまうことを排除するためである。
【0023】
【実施例】
この発明の有効性を示すため、図3に示した三層構造の解析モデルを用い、厚さ5mの薄層の材料特性としての透水係数kfが周辺母岩の透水係数koと大きく異なる場合の数値解析を実施した。
[解析モデル]
解析モデルのメッシュとしては、一辺が10mの立方体で分割した図4に示したメッシュ(モデル1)、一辺が20mの立方体で分割した図5に示したメッシュ(モデル2)、及び比較のため薄層を厚さ5mの要素で忠実に分割した図6のメッシュ(モデル3)を想定した。境界条件は、モデルの両端で全水頭(h)を拘束し、その他の側面は不透水条件とした(図3参照)。
[解析結果]
(1)kf=100koの場合
図7はkf=100koにおける解析結果である。同図は、図3に示した評価断面でのh(全水頭)の分布を示している。また同図には、モデル1,モデル2,モデル3の解析結果(等値線)が描かれている。3つの解析結果はよく一致しており、本発明における薄層のモデル化方法の有効性が確認できる。
(2)kf=1/100koの場合
図8はkf=1/100koの場合の解析結果である。図中、モデル1,モデル2,モデル3の結果はいずれも良好な一致を示している。なお、図9は、図5に示した解析において、ks=0と置かずに計算した結果であり、モデル1とモデル2の解析結果がモデル3の結果から外れていることが確認できる。
【0024】
なお、本発明では前述した(5),(6)式の等価透水係数の計算において、薄い地層が通過する要素の体積の総和Ve、薄い地層の片面積(母岩との接触面積)Afの値が必要となるが、これらの値は、公知の有限要素法プリプロセッサ等により簡単に算出することができる。これらのVe,Afが得られれば、(5),(6)式の計算は非常に容易であり、実用性の高い方法といえる。
【0025】
また、単一形状の立方体あるいは直方体要素で解析領域を分割するボクセル(Voxel)解析手法では薄層を忠実にモデル化できないので、ボクセル解析に本発明を適用することは特に有効である。
【0026】
さらに、本発明では作成したメッシュデータを変更することなく、種々の薄層を考慮できるので、薄層の位置を変化させた設計検討も容易になる。
【0027】
以上の実施の形態、実施例では、地層内に薄層を有する場合の地下水挙動の解析において、透水係数を材料特性として本発明の説明を行ったが、前述の(1)式で支配される濃度拡散場や熱伝導場等の解析対象においては、拡散係数、熱伝導率等が材料特性として適用される。
【0028】
【発明の効果】
以上に述べたように、上記の(1)式で支配される地下水浸透流の解析のモデル化において、母岩に対する薄層や割れ目の状態を簡易にモデル化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による浸透流方程式を適用した数値解析におけるモデル化方法の一実施の形態を示したモデル図。
【図2】本発明の浸透流方程式を適用した数値解析におけるモデル化方法における成層構造をなす地層の等価透水係数の設定例を示したモデル図。
【図3】本発明において、薄い地層の検討用解析モデル図。
【図4】本発明のモデル化方法により、立方体分割によりモデル化された分割メッシュ(モデル1)
【図5】本発明のモデル化方法により、立方体分割によりモデル化された分割メッシュ(モデル2)
【図6】従来のモデル化方法により、薄層が忠実にモデル化された分割メッシュ(モデル3)
【図7】解析結果図(kf=100koの場合)
【図8】解析結果図(kf=1/100koの場合)
【図9】解析結果図(kf=1/100ko,ks=0と置かない場合)
【符号の説明】
1 地層モデル図
10 薄い地層
20 薄い地層が通過する要素(ハッチをつけた要素)
25 一定幅の厚さの地層
s,kn 材料特性(等価透水係数)
e 薄層が通過する要素の平均層厚さ
e 薄層が通過する要素の体積の総和
f 薄層の片面積

Claims (1)

  1. 浸透流方程式を適用した、地下水浸透流数値解析の有限要素法モデル化で岩盤層要素を通過するように薄い地層や割れ目が存在する場合、該薄い地層や割れ目を薄層要素として所定の透水係数を設定して解析要素モデル化を行うようにした地下水浸透流数値解析のモデル化方法において、前記解析要素モデル化の処理は、
    前記薄層要素と、該薄層要素が通過する前記岩盤層要素とを、一定厚さteの三層構造モデルに換算するステップと、
    該三層構造モデルの一定厚さt e を、該岩盤層要素の体積の総和V e を前記薄層要素の片面積A f で除して求めるステップと、
    一定厚さt e が求められた前記三層構造モデルに対して、各層の厚さt i と各層の透水係数k i をもとに、単一層の層構造に沿う方向(s)及びそれに直交する方向(n)の等価透水係数k s ,k n である下式
    Figure 0004352199
    を適用するステップと
    を含み、前記岩盤層と、岩盤層を通過する薄い地層や割れ目とを一定厚さの要素モデルとして、該要素モデルに所定の等価透水係数が設定されるようにしたことを特徴とする地下水浸透流数値解析におけるモデル化方法。
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