JP4343904B2 - 関節内人工器官 - Google Patents

Description

本発明は、特許請求の範囲第１項の前文に記載の関節内人工器官、特に椎間インプラントに関する。

現在使用されている椎間インプラントまたは椎間板プロテーゼの大部分は関節を含んで成り、その関節面は金属、ポリマー、またはセラミック材料から成る。これらの関節面は通常、乾燥しており、それによってインプラントの寿命は影響されうる。さらに、互いに摺動可能に支持された関節部の制限された回転運動のため、トライボロジー特性が重要である。
欧州特許第（ＥＰ−Ｂ）０１９３５３８号（特許文献１）により、関節面のトライボロジー特性を改善するために、流体室が備えられている人工的な寛骨臼が周知である。このインプラントにおける不利点は、流体室が閉鎖されているため、体液が外部からではなく、流体室そのものからしか中に入ることができないことである。さらに、閉鎖された流体室には、わずかな亀裂を通じて外部から流体室へ侵入しうる体液が蓄積されうる。循環不足のため、この蓄積された液体のｐＨ値は低下し、それによってインプラントの各部品が化学的に影響されうる。さらに、かかる亀裂を通じてインプラントの外面と接続されている閉鎖流体室におけるインプラント部品の相対運動が、望ましくないポンプ効果の原因となりうる。
欧州特許第（ＥＰ−Ｂ）０１９３５３８号公報

この点で本発明は改善を提供する。本発明の課題は、優れた潤滑特性を有するタンパク質や他の物質を含有する体液を、互いに摺動可能に支持された関節面へ取入れるために適しているインプラントと骨との間の境界面へ入る１つもしくは複数の通路を含んで成る人工関節を提供することである。
本発明は、請求項１の特徴を有する関節内人工器官で上記の課題を解決する。
本発明の別の有利な構成は、従属クレームにおいて特徴づけられている。
本発明によって達成される利点は、本発明による関節内人工器官のおかげで、
−体液を関節面に輸送可能であり、
−特にその椎間インプラントとして構成において通路の開口が並置面の中心に配置されうるため、体液の供給が天然の椎間板と同様に生じうるとともに、
−他の体液が、切開により生じる空洞を通じて、関節面へ流れうる
点において実質的に確認される。
好ましい実施形態においては、下部および上部通路は、少なくとも１つの上部通路が上部並置面へ入り、かつ少なくとも１つの下部通路が下部並置面へ入り、両側で体液が関節面へ導入されうるように配置されている。
他の実施形態においては、少なくとも１つの下部通路、または少なくとも１つの上部通路が、椎体インプラントの側面から対応する関節部へ貫通し、切開によって作られた空洞からも体液が関節面へ輸送可能である。
好ましくは、関節面Ａ、Ｂへの通路の入口には湾曲部が備えられている。それによって、角張った通路によって誘発される関節面への損傷が生じないという利点が達成可能である。
さらに他の実施形態においては、椎間インプラントは複数の上部通路、かつ、好ましくは、複数の通路を含んで成り、これらは、その長手方向軸が椎体インプラントの中心軸と０°〜９０°の角度を含むように配置されている。この角度は、
−椎間インプラントの安定性が十分に維持され、
−通路が所望の位置で関節面へ入り、かつ
−通路入口が、特に並置面の中心、および切開によって作られた空洞において関節液が存在している椎間インプラントの外側に配置される
ように選択されている。

別の実施形態においては、各通路は、関節面Ａ、Ｂの０．０１％〜１０％である横断面を有する。これに対する適切な寸法は、椎間インプラントとして形成された関節内人工器官の場合、以下のとおりである。
−関節面Ａ’が４００ｍｍ^２〜５００ｍｍ^２、
−関節面Ａ’’が２００ｍｍ^２〜３００ｍｍ^２、
−通路の最小横断面が０．０７ｍｍ^２、
−通路の最大横断面が１２．６ｍｍ^２、
−並置面が９６９ｍｍ^２。
好ましくは、通路は、０．３ｍｍ〜４．０ｍｍの直径を有し、ここで最小直径は、潤滑特性を有する粒子、例えば、タンパク質の大きさに合わせられている。通路の最大直径は、椎間インプラントにおいて安定性の重大な低下が生じないように選択されている。

さらに別の実施形態においては、通路は対称に分配されて関節面Ａ、Ｂへ入る。上部並置面は面積Ｆ_ｏを有するが、上部通路は面積Ｔ_ｏ＜Ｆ_ｏを有する部分面内で上部並置面へ入る。好ましくは、部分面の面積Ｔ_ｏは上部並置面の面積Ｆ_ｏの０．００６％〜１．０％である。同様に、下部並置面は面積Ｆ_ｕを有するが、下部通路は面積Ｔ_ｕ＜Ｆ_ｕを有する部分面内で下部並置面へ入り、ここで部分面の面積Ｔ_ｕは、好ましくは、下部並置面の面積Ｆ_ｕの０．００６％〜１．０％である。さらに、これらの部分面は、好ましくは、椎間インプラントの中心軸に対して同心に配置されている。
関節は、さまざまな実施形態において２つもしくは３つの関節部を含んで成りうる。関節部の材料ペアには以下のペアが特に適している。すなわち、
−金属―ポリマー
−金属―金属
−セラミック―セラミック
ここで、金属としては、特にコバルト、クロム、およびモリブデンによる合金が適している。金属―金属の金属ペアにおいては、合金はさらにカーボンで強化されうる。同じく、金属で製造された関節部の表面は適切な方法によって、チタンカーバイト、チタンニトリド、または非晶質カーボンで被覆されうる。ポリマーの場合、好ましくは、高分子ポリエチレン（ＵＨＭＷＰＥ）であり、ここで表面は適切な方法によって、摩耗特性を改善するために網状にされうる。
本発明および本発明の発展形態を以下、複数の実施例の部分的概略図を用いてさらに詳細に述べる。

（図面の簡単な説明）
図１ａは、本発明による関節内人工器官の実施形態を示す内外側断面図である。
図１ｂは、関節面への通路の曲線的な入口を有する本発明による関節内人工器官の図１に示されている実施形態の下部関節部を示す切断図である。
図２は、本発明による関節内人工器官の別の実施形態を示す斜視図である。
図３は、図２に示されている実施形態の第１の回転軸に対して平行に示す断面図である。
図４は、図２および３に示されている実施形態の第２の回転軸に対して平行に示す断面図である。
図５は、図２〜４に示されている実施形態を示す図である。

図１においては、椎間インプラント１としての人工関節の実施形態が内外側断面で示されている。椎間インプラント１は、脊柱の長手方向軸に対して実質的に平行の中心軸２に対して軸方向に重なり合って配置されている上部１０および下部２０を含んで成り、これらは関節５を含む。上部１０は、上方に隣接する椎体のベースプレートへ取付けるための軸方向の外側に中心軸２と交わる上部並置面１５を有し、内側には組込まれた上部関節部６とともに下部表面１６を有する。これと同様に、下部２０は、下方に隣接する椎体のベースプレートへ取付けるための軸方向の外側に中心軸２と交わる下部並置面２５を有し、内側には組込まれた下部関節部８とともに上部表面１６を有する。下部関節部８は、ここでは球の一部３５として構成されているが、上部関節部６は球の一部３５を補完する関節表面３６として形成されており、２つの部分１０、２０が関節５によって互いに対して多軸方向に可動である。２つの関節部６、８のそれぞれは個別の部分として構成されており、対応する部分１０、２０と結合されている。
上部１０には上部通路２７が取付けられており、これは上部並置面１５へ入り、上部１０および上部関節部６を関節表面３６の関節面Ｂに至るまで貫通する。この上部通路２７によって、潤滑特性を有する体液が上から関節５の関節面Ａ、Ｂへ輸送される。同様に、下部２０には下部通路２８が配置されており、これは下部並置面２５へ入り、下部２０および下部関節部８を関節表面３５の関節面Ａに至るまで貫通し、体液は下から関節５の関節面Ａ、Ｂへ輸送されうる。通路２７、２８は、それらの開口４０が並置面１５、２５において中心に位置するように配置されている。椎間インプラント１のここに示されている実施形態では、上部関節部６は３つの上部通路２７ａ−ｃで構成されており、ここで中央の上部通路２７ｂの長手方向軸４２ｂは椎間インプラント１の開始位置で長手方向軸２に対して同軸に走り、両側の上部通路２７ａ、２７ｃの長手方向軸４２ａ、４２ｃが中心軸２と角度を含み、ここで通路２７ａの長手方向軸４２ａは中心軸２と−５０°の角度を含み、通路２７ｃの長手方向軸４２ｃは中心軸２と＋５０°の角度を含む。下部関節部８は、２つの下部通路２８ａ、２８ｂを含んで成り、その長手方向軸４１ａ、４２ｂも同じく中心軸２と角度を含み、ここで通路２８ａの長手方向軸４１ａは中心軸２と−１５°の角度を含み、通路２８ｂの長手方向軸４１ｂは中心軸２と＋１５°の角度を含む。

図１ｂにおいては、下部通路２８ａを有する下部関節部８の断面が示されている。下部通路２８ａは球の一部３５を関節面４に至るまで貫通し、ここで通路の通路壁には湾曲部５１が備えられており、関節面Ａへの通路２８ａに開口は角張ることなく曲線的に構成されている。他の下部通路２８ｂおよびすべての上部通路２７ａ−ｃの開口は、好ましくは、同様に構成されている。
図２〜５においては、関節内人工器官の椎間インプラント１として構成されている別の実施形態が示されている。椎間インプラント１は、隣接する椎体のベースプレートへ配置するために中心軸２に対して横方向に配置された上部並置面１５を有する上部１０と、隣接する椎体のカバープレートへ配置するために中心軸２に対して横方向に配置された下部並置面２５を有する下部２０と、その間に位置する関節５とを含んで成る。この関節５によって、上部１０および下部２０は、互いに垂直に立つ２つの回転軸３、４の周りを互いに対して可動に接続されている。
関節５は、３つの関節部６、７、８によって実現されており、このうち下部関節部８および上部関節部６はそれぞれ中央関節部７と協働し、それぞれ回転軸３、４の周りを回転可能な回転関節３８、３９を形成する。下部回転関節３９は、関節面として、中央関節部７において配置された第１の回転軸３に対して同軸の下部凸状関節面３０と、下部関節部８に配置された関節面３０を補完する下部凹状関節面３１とを含んで成る。上部回転関節３８は、関節面として、上部関節部６に配置された第２の回転軸４に対して同軸の上部凸状関節面３２と、中央関節部７に配置された関節面３２に対して補完の上部凹状関節面３３とを含んで成る。関節面３０、３１、３２、３３は、軸方向の末端に接する錐体部分面を有する円筒ケース面の部分面として構成されている。
さらに、上部および中央関節部６、７においては、軸方向の末端に回転軸３、４に対して同軸のカム１７が配置されており、これらは下部関節部８および中央関節部１７における長穴ガイド１８へ調節可能に受入れられている。長穴ガイド１８へ導入されたカム１８によって、関節部６、７、８の回転角度は回転軸３、４の周りへ制限される。さらに、椎間インプラント１は、長穴ガイド１８へ受入れられるカム１７によって結合される。

図３および４に示されているように、上部１０には４つの上部通路２７ａ−ｄが取付けられており、これらは上部並置面１５へ入り、上部１０を上部関節部６を含めて関節面Ａ’に至るまで貫通する。通路２７によって、潤滑特性を有する体液が上から上部回転関節３８（図２）の関節面Ａ’、Ｂ’へ輸送される。下部２０には３つの下部通路２８ａ−ｃが配置されており、これらは下部並置面２５へ入り、下部２０は下部関節部を含めて下部回転関節３９（図２）の関節面Ａ’’、Ｂ’’へ輸送されうる。さらに、下部関節部８には２つの別の下部通路２８ｄ、２８ｅが取付けられており（図４）、その長手方向軸４１ｄ、４１ｅは中心軸２に対して垂直に位置しており、腹側および背側の側面２１、２２から外側に下部関節部８へ侵入し、下部２０を下部関節部８を含めて関節面Ａ’’、Ｂ’’に至るまで貫通する。図３に示されている内外側断面からわかるように、４つの上部通路のうち２つ２７ｂ、２７ｃのみが上部関節部６の関節面Ａ’へ入る。その他の両方の上部通路２７ａ、２７ｂは、上部１０の下部表面１６へ入り、中心軸２に対して平行に向けられている長手方向軸４２ａ、４２ｄを有する。２つの上部通路２７ｂ、２７ｃの長手方向軸４２ｂ、４２ｃは、中心軸２と角度を含み、ここで上部通路２７ｂの長手方向軸４２ｂは中心軸２と＋２５°の角度を含み、通路２７ｃの長手方向軸４２ｃは中心軸２と−２５°の角度を含む。さらに、図４に示されている前後断面から、２つの下部通路２８ｄ、２８ｅは中心軸２に対して横方向に位置する長手方向軸４１ｄ、４１ｅを有し、ここで下部通路２８ｄの長手方向軸４１ｄは中心軸２と＋９０°の角度を含むが、下部通路２８ｅの長手方向軸４１は中心軸２と−９０°の角度を含む。両方の長手方向軸４１ｄ、４１ｅは、椎間インプラント１の前後中央面に位置している。
図５は、上部並置面１５へ入る上部通路２７ａ−ｄの開口４０を示す。開口４０は、中心軸２に対して直交に位置し、かつこれに対して同心である並置面１５の部分面３７に位置している。中心軸（図２）は、第２の回転軸３、４を有する第１の回転軸の交点と交わり、上部１０の背側側面１２に対してその中心から移動される。

本発明による関節内人工器官の実施形態を示す内外側断面図である。 関節面への通路の曲線的な入口を有する本発明による関節内人工器官の図１に示されている実施形態の下部関節部を示す切断図である。 本発明による関節内人工器官の別の実施形態を示す斜視図である。 図２に示されている実施形態の第１の回転軸に対して平行に示す断面図である。 図２および３に示されている実施形態の第２の回転軸に対して平行に示す断面図である。 図２〜４に示されている実施形態を示す図である。

符号の説明

１ 椎間インプラント ２ 中心軸 ３ 回転軸 ４ 回転軸 ５ 関節
６ 関節 ７ 関節 ８ 関節 １０ 上部 １１ 側面 １２ 側面
１３ 側面 １４ 側面 １５ 上部並置面 １６ 下部表面 １７ カム
１８ ガイド ２０ 下部 ２１ 側面 ２２ 側面 ２３ 側面
２４ 側面 ２５ 下部並置面 ２７ 通路 ２８ 通路 ２９ 通路
３０ 凸状関節面 ３１ 凹状関節面 ３２ 凸状関節面 ３３ 凹状関節面 ３５ 関節表面 ３６ 関節表面 ３７ 部分面 ３８ 回転関節
３９ 回転関節 ４０ 開口 ４１ 長手方向軸 ４２ 長手方向軸

Claims (19)

1. 関節内人工器官であって、中心軸（２）と、上部（１０）と、下部（２０）と、その間に配置された関節（５）とを有し、
   Ａ）前記関節（５）が、少なくとも２つの互いに摺動可能な関節面ＡおよびＢを含んで成り、
   Ｂ）前記上部（１０）が、前記中心軸（２）と交わる上部並置面（１５）と側面（１１、１２、１３、１４）を有し、
   Ｃ）前記下部（２０）が、前記中心軸（２）と交わる下部並置面（２５）と側面（２１、２２、２３、２４）を有し、
   Ｄ）前記関節内人工器官が体液の輸送に適した少なくとも１つの通路（２７、２８）を含み、前記通路（２７、２８）が前記両方の関節面ＡおよびＢの１つに通じそして前記関節内人工器官の外側と接続し、
   Ｅ）前記関節（５）が、上方、中央、および下方の関節（６、７、８）を含む、前記関節内人工器官において、
   Ｆ）椎間インプラント（１）の形態の関節内人工器官が実現され、２つの並置面（１５、２５）はそれぞれ対応する椎体のベースプレートへ配置するのに適しており、
   Ｇ）少なくとも１つの上部通路（２７）が上部並置面（１５）に通じ、かつ少なくとも１つの下部通路（２８）が下部並置面（２５）に通じることを特徴とする関節内人工器官。
2. 少なくとも１つの上部通路（２７）が上部並置面（１５）に通じることを特徴とする請求項１に記載の関節内人工器官。
3. 少なくとも１つの下部通路（２８）が下部並置面（２５）に通じることを特徴とする請求項１または２に記載の関節内人工器官。
4. 前記通路（２７、２８）の前記関節面Ａ、Ｂへの開口部には湾曲部（５１）が備えられていることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
5. 複数の上部通路（２７）を含んで成ることを特徴とする請求項２〜４のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
6. 複数の下部通路（２８）を含んで成ることを特徴とする請求項３〜５のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
7. 前記上部および下部通路（２７、２８）が長手方向軸４２、４１を有し、前記長手方向軸４２、４１が前記中心軸（２）と０°〜９０°の角度を含むことを特徴とする請求項１〜６のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
8. 各通路（２７、２８）が、関節面Ａ、Ｂの０．０１％〜１０％である断面を有することを特徴とする請求項１〜７のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
9. 前記通路（２７、２８）が、０．３ｍｍ〜４．０ｍｍの直径を有することを特徴とする請求項１〜８のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
10. 前記通路（２７、２８）が、前記関節面Ａ、Ｂへ対称に分配されて開口することを特徴とする請求項１〜９のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
11. 前記上部並置面（１５）が面積Ｆｏを有し、前記上部通路（２７）が面積Ｔｏ＜Ｆｏの部分面（３７）の範囲内で前記上部並置面（１５）に開口することを特徴とする請求項１〜１０のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
12. 前記部分面の面積Ｔｏが、前記上部並置面（１５）の面積Ｆｏの０．００６％〜１．０％であることを特徴とする請求項１１に記載の関節内人工器官。
13. 前記下部並置面（２５）が面積Ｆｕを有し、前記下部通路（２８）が面積Ｔｕ＜Ｆｕの部分面（３７）の範囲内で前記下部並置面（２５）に開口することを特徴とする請求項１〜１２のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
14. 前記部分面の面積Ｔｕが、前記下部並置面（２５）の面積Ｆｕの０．００６〜１．０％であることを特徴とする請求項１３に記載の関節内人工器官。
15. 前記部分面が前記中心軸（２）に対して同心に配置されていることを特徴とする請求項１１〜１４のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
16. 前記上部通路（２７）の長手方向軸が前記中心軸（２）と０°〜６５°の角度を含むことを特徴とする請求項２〜１５のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
17. 前記下部通路（２８）の長手方向軸が前記中心軸（２）と０°〜９０°の角度を含むことを特徴とする請求項３〜１６のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
18. 前記関節（５）を形成する関節（６、７、８）の少なくとも関節面Ａ、Ｂが、金属／ポリマー、金属／金属、またはセラミック／セラミックの材料ペアで製造されていることを特徴とする請求項１〜１７のいずれか１つに記載の関節内人工器官。
19. 椎間インプラント（１）の形で実現されており、前記両方の並置面（１５、２５）が罹患椎体のベースプレートへの取付けに適していることを特徴とする請求項１〜１８いずれか１つに記載の関節内人工器官。

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