JP4331872B2 - 人工関節 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体の関節部を人工的に補綴し、その機能並びに形態を修復する人工関節に関するもので、特に、骨に摺動する滑らかなほぼ半球状をした外表面をもったアウターヘッドに、該アウターヘッド内にて回動する如くステム先端部に設けたセラミック製のインナーヘッドを嵌合してなるバイポーラ人工骨頭型の人工関節に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
交通事故などによる外傷、リウマチ、変形性関節症など骨の変性に基づく関節部の病変により、関節機能が損なわれて、治療、回復の見込みが薄いような場合、関節部分を切除し、人工関節で補綴する置換手術が行われている。
【0003】
この際に用いられる人工関節60として図4に示すバイポーラ人工骨頭型のものがある。これは、関節の臼蓋側は軟骨の状態を維持し、骨頭側のみを置換する症例に用いることができるもので、骨と当接摺動するアウターヘッド30の内側にベアリングインサート40を備え、該ベアリングインサート40内にて回動するインナーヘッド50をステム4の先端部に設けたもので、アウターヘッド30とインナーヘッド50を適当量分偏心させることにより、アウターヘッド30とインナーヘッド50との間に力学的トルクを発生させて、いわゆるセルフセンタリング効果によりアウターヘッド30とインナーヘッド50が安定した位置関係を保つようになっている。したがって、主として、アウターヘッド30とインナーヘッド50の間で摺動させることにより、関節機能を補完することが可能である。
【0004】
このようなバイポーラ人工骨頭型の人工関節60において、従来、金属またはセラミック製のアウターヘッド30とセラミックス製のインナーヘッド50の間に超高分子量ポリエチレンよりなるベアリングインサート40を介在させ、アウターヘッド30とインナーヘッド50との摺動がポリエチレンとセラミックスとで行われるよう構成するものが一般的であった。これに対して最近、図5に示すようにアウターヘッド12とインナーヘッド13の両方をセラミックで構成するとともに、ベアリングインサートを介さずに、両者を当接摺動させた人工関節10が用いられ始めている。なお、図5において人工関節10はステムを除外して示しているが、実際の使用形態ではステムの一方端部に備えるピン状のステムネック上にインナーヘッド13を嵌着するものである。
【0005】
このような構成による人工関節10の利点としては、まず、アウターヘッド12とインナーヘッド13との摺動がセラミック対セラミックで行われるので、セラミック対ポリエチレンの摺動のようにポエチレンの摩耗粉発生という心配がない。また、ベアリングインサートを備えない分だけ、インナーヘッド13のサイズを大きくすることができ、インナーヘッド13のサイズを大きくすることでセラミック製のインナーヘッド13の強度を高めることができる。
【0006】
ところで、上記人工関節10は、インナーヘッド13の脱臼を防止するために抜け防止リング16を備えている。この抜け防止リング16は、インナーボール13の外径よりも小さな内径を有しており、アウターヘッド12の開口周縁部に嵌着されることで、インナーヘッド13の脱臼を防止することができる。
【0007】
図5に示すように、上記抜け防止リング16にはスリット17が設けられ、このスリット17の両側近傍にそれぞれ設けられた一対の小穴18,18に、ピンセットのような取り外し器具の先端を嵌入した状態で、該器具をつまむことによりリング径を縮小できるようになっている。これにより、抜け防止リング16がアウターヘッド12との嵌着状態から解放され、その結果インナーヘッド13がアウターヘッド12との嵌着状態から解放される。したがって、アウターヘッド12に対してインナーヘッド13を装着、脱着することが可能となっている。
【0008】
なお、この抜け防止リング16の別の重要な作用は、図6に示すように、ステム4の先端に備えるステムネック4aが骨Bと当接しているアウターヘッド12に直接当たって、これを破損させることがないようにするための緩衝材としての作用である。
【0009】
【従来技術の課題】
しかし、上記従来の技術には以下に述べるような問題があった。
【0010】
すなわち、図6に示すようにステムネック4aが抜け防止リング16のスリット角部16aと当接する時に、このスリット角部16aが摩耗しやすい。そして、摩耗が進んでいくと、ついには図7に示すようにステムネック4aがセラミック製のアウターヘッド12に対し直接当たってしまい、それにより靱性の低いセラミック製のアウターヘッド12を破損させてしまう場合があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みなされたもので、上記のようなステムネックがアウターヘッドに対し直接当たってしまい、それによりアウターヘッドを破損させてしまうことを防止することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、セラミック製のアウターヘッドとインナーヘッド、および抜け防止リングを備えた人工関節において、上記抜け防止リングは、それぞれ内周側と外周側の半径方向厚みを減じ且つ相互に分割された相隣接する外周肉薄部と内周肉薄部を備え、これら外周肉薄部と内周肉薄部の先端部位が周方向に重なり合い、前記抜け防止リングの内周面の一部に、前記インナーヘッドの外形状に対応した球状切欠部が形成されることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、内周肉薄部がなす内周側先端角部の摩耗が進行していっても、外周肉薄部の内周側面にステムネックが当接する段階で、抜け防止リングの摩耗進行の早さが大幅に低減される。これは、外周肉薄部の内周側先端角部がステムネックに対し露出しないので、この外周肉薄部の内周側先端角部が摩耗していくことがないためである。したがって、ステムネックがアウターヘッドに直接当接することを効果的に防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図により説明する。
【0015】
図1は、本発明の人工関節1を示す要部破断図である。図中、2は骨に当接摺動する滑らかなほぼ半球状をした外表面2aを持ったアウターヘッド、3は該アウターヘッド2に備えるほぼ半球状をした嵌合穴2b内に嵌合回動するインナーヘッドであり、4はステムであり、その先端のピン状をしたステムネック4aの先端にインナーヘッド3を嵌装するようになっている。また、5は上記アウターヘッド2の嵌合穴2bに臨む開口縁に設けたリング嵌合凹所、6はこのリング嵌合凹所5と係合してインナーヘッド3の抜けを防止するための抜け防止リングである。
【0016】
上記リング嵌合凹所5は側面に段凹部5aを備え、この段凹部5aと上記抜け防止リング6の外側面に備えるテーパー状の段凸部6cとが嵌合することで抜け防止リング6がアウターヘッド2のリング嵌合凹所5内に固定される。
【0017】
この人工関節1は、バイポーラ人工骨頭型のものであり、上記ステム4を大腿骨などの長管骨内に固定装着するようになっている。関節の臼蓋側を軟骨の状態で維持し、骨頭の側のみを置換する症例に用いることができ、上記アウターヘッド2の中心21とインナーヘッド3の中心31を適当距離偏心(距離d)させることにより、アウターヘッド2とインナーヘッド3との間に力学的トルクを発生させて、いわゆるセルフセンタリング効果によりアウターヘッド2とインナーヘッド3が安定した位置関係を保つようになっている。したがって、主としてアウターヘッド2とインナーヘッド3間の摺動により、関節機能を補完する。
【0018】
上記人工関節1を構成する各部材の材質はそれぞれ、アウターヘッド2とインナーヘッド3がともにアルミナ、ジルコニア等の生体為害性のない安全なセラミック材でなり、ステム4は純チタン、チタン合金、コバルト・モリブデン合金などの生体為害性のない安全な金属材料からなる。また、抜け防止リング6は、超高分子量ポリエチレンなどの生体為害性のない高分子材料からなる。
【0019】
なお、上記セラミック材として高純度のアルミナを用いることが好ましい。高純度のアルミナにより摺動表面を構成することにより、強度が大きく且つ耐摩耗性の大きな(摩耗粉の発生し難い)摺動部材とすることができる。
【0020】
また摺動表面を構成する上記アウターヘッド2の外表面2aと嵌合穴2bの内壁面2c、並びに、インナーヘッド3の外表面3aは、いずれも研磨により鏡面仕上げされている。
【0021】
次に、図1の領域Aの拡大図である図2において、符号CLはアウターヘッド2とインナーヘッド3のクリアランスであり、上記人工関節1ではこのクリアランスCLを35μm以下と非常に狭く設定し、生体内環境で両者間に生体液の膜を介在させるようにした。これにより摺動特性を向上させた。
【0022】
図3は上記抜け防止リング6の平面図である。抜け防止リング6は、それぞれ内周側と外周側の半径方向厚みを減じ且つ相互に分割された相隣接する外周肉薄部6aと内周肉薄部6bを備え、これら外周肉薄部6aと内周肉薄部6bの先端部位が周方向に重なり合う構成である。
【0023】
かかる上記抜け防止リング6の構成によれば、内周肉薄部6bの内周側先端角部8の摩耗が進行していっても、図中点線で示すステムネック4aが外周肉薄部6aの内周側面6dに当接するところまで抜け防止リング6の摩耗が進行しても、その後は、抜け防止リング6の摩耗進行速度が大幅に低減される。これは、外周肉薄部6aの内径側先端角部7がステムネック4aに対し露出しないので、この外周肉薄部6aの内周側先端角部7が摩耗していくことがないためである。したがって、ステムネック4aがアウターヘッド2に直接当接することを効果的に防止する。
【0024】
上記抜け防止リング6において、前記内周肉薄部6b先端の先方に設けられるスペース6eと内周肉薄部6a先端の先方に設けられスペース6fは、θ1=約25°程度に設定されている。また、外周肉薄部6aと内周肉薄部6bの先端部位が周方向に重なり合う角度としては、θ2=10°程度に設定されている。この重なり角度θ2としては、5〜15°の範囲であることが好ましい。この重なり角度θ2が5°未満の場合は、外周肉薄部6aの内周側先端角部7がステムネック4aに対し露出してしまう危険があり、他方、15°より大きい場合には、前記前記内周肉薄部6b先端の先方に設けられるスペースと内周肉薄部6a先端の先方に設けられスペース6fを大きく取る必要があり、抜け防止リング6の外周肉薄部6aおよび内周肉薄部6bの機械的強度が過度に低下する恐れが有る。
【0025】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、発明の技術思想を逸脱しない限り、任意の形態とすることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、抜け防止リングに、それぞれ内周側と外周側の半径方向厚みを減じ且つ相互に分割された相隣接する外周肉薄部と内周肉薄部を備え、これら外周肉薄部と内周肉薄部の先端部位が周方向に重なり合う構成としたことにより、内周肉薄部がなす内周側先端角部の摩耗が進行していっても、外周肉薄部の内周側面にステムネックが当接する段階で、外周肉薄部の内径側先端角部がステムネックに対し露出しない。したがって、この外周肉薄部の内径側先端角部が摩耗していくことがないので抜け防止リングの摩耗進行の早さが大幅に低減される。その結果、ステムネックがアウターヘッドに直接当接することを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明一実施形態の人工関節の要部破断図である。
【図2】図1の領域Aの拡大図である。
【図3】図1の人工関節を構成する抜け防止リングの平面図である。
【図4】従来のベアリングインサートを備えたバイポーラ型の人工関節を示す分解斜視図である。
【図5】従来のベアリングインサートを用いないバイポーラ骨頭型の人工関節を示す略図であり、(a)はステムを除いた分解斜視図、(b)は斜視組図である。
【図6】図5の人工関節の使用状態を説明するための、人工関節の要部破断図である。
【図7】図5の人工関節の使用状態を説明するための、人工関節の要部破断図である。
【符号の説明】
1 人工関節
2 アウターヘッド
2a 外表面
3a 外表面
2b 嵌合穴
3 インナーヘッド
4 ステム
4a ステムネック
5 リング嵌合凹所
6 抜け防止用リング
6a 外周肉薄部
6b 内周肉薄部
Claims (2)
- 骨に当接摺動する滑らかなほぼ半球状をした外表面をもったセラミック製のアウターヘッドに、該アウターヘッドに備えるほぼ半球状をした嵌合穴内にて回動する如くステム先端部に設けたセラミック製のインナーヘッドを嵌合し、上記アウターヘッドの嵌合穴に臨む開口縁に設けたリング嵌合凹所に抜け防止リングを装着してなる人工関節であって、
上記抜け防止リングは、それぞれ内周側と外周側の半径方向厚みを減じ且つ相互に分割された相隣接する外周肉薄部と内周肉薄部を備え、これら外周肉薄部と内周肉薄部の先端部位が周方向に重なり合い、
前記抜け防止リングの内周面の一部に、前記インナーヘッドの外形状に対応した球状切欠部が形成されることを特徴とする人工関節。 - 前記抜け防止リングに備える外周肉薄部と内周肉薄部の先端部位が抜け防止リングの中心軸に対して5°〜15°の角度範囲で周方向に重なることを特徴とする請求項1記載の人工関節。
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