JP4327079B2 - 生物培養容器 - Google Patents

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本発明は、生物培養容器に関し、さらに詳しくは、植物、藻類、苔類さらには固着型動物等の固着型鑑賞用生物を培養するのに使用する生物培養容器に関する。ここでは、固着型鑑賞用生物として、植物(例えば食虫植物)を主として例に採り説明する。
近年、光透過性の培養容器内に培地を充填し、培地に食虫植物等の鑑賞用小植物を植えて容器内で培養(育成)させて、小植物の成長を楽しみながら室内装飾品として使用すること盛んになっている。通常、培養容器内で育った植物は、鉢に移し変えて鉢植えすることによってさらに育成(増殖)させる。
この種の植物培養容器(植物栽培用容器)として、例えば、本願出願人が先に提案した下記構成の植物栽培容器が提案されている(特許文献1参照)。
「培地に植え付けられる植物栽培用容器であって、
1)培地及び植物を出入するための開口部を有し、開口部以外に通気孔を有さない本体と、2)前記開口部に嵌合され、前記本体を密閉する栓体と、を備え、
前記本体の一部または全部が透明材で形成され、
前記開口部が、前記培地が配置される前記本体下部以外の部位に配設され、
前記栓体がコルクで形成されていることを特徴とする。」
本発明の特許性に影響を与えるものではないが、植物培養容器に係る関連技術文献としては、特許文献2・3等が存在する。
特開2002−142566号(特許請求の範囲等) 特開平9−84467号公報(2〜5頁、図3参照) 特許第2596293号公報(2〜4頁、図1参照)
本発明は、上記先行技術等に記載されていない、斬新かつ多様な意匠性を付与できる新規な構成の固定型生物培養容器を提供することを目的とする。
本発明の固定型生物培養容器は、容器本体と、該容器本体の開口部を閉じる閉じ部材とを備え、鑑賞用の固定型生物を培養可能な実質的に密閉無菌タイプの生物培養容器であって、
容器本体は、培地充填部と、該培地充填部の上方に形成される鑑賞物配置部とを備え、該鑑賞物配置部の形成壁は鑑賞配置部に配される鑑賞物を視認可能な透明部を備え、
前記培地充填部に鑑賞用生物が配置されているとともに、前記容器本体内に鑑賞用小物が配設されていることを特徴とするものである。
本発明では鑑賞用固定型生物とともに鑑賞用小物が容器本体の鑑賞物配置空間部に配設されているため、固定型生物のみの場合に比して、鑑賞用固定型生物の生長に伴う意匠性の変化に富むことは勿論、鑑賞方法の多様化できる。
上記構成において、鑑賞用小物を、前記容器本体若しくは前記閉じ部材と連結部を介して配設することが望ましい。運搬途中や移動途中に鑑賞用小物が容器内部で移動するのを阻止できるためである。
上記構成において、連結部を、棒状であり、培地充填部と略同一高さを有して容器本体の底部から立設したものとすることができる。連結部の鑑賞用小物との接続位置を、培地充填量の目視確認が容易となる。
また、同様に、棒状として容器本体と一体成形することが望ましい。別体の連結部を用意し、連結部を容器本体に固着(接着)する作業も不要となる。
また、連結部は、閉じ部材と連結されたテグス(釣り糸)で形成することも可能である。テグスで連結した場合は、連結部がほとんど視認できず鑑賞用小物が浮遊しているように見える。
さらに、連結部は、前記容器本体及び/又は前記鑑賞用小物と脱窒素化合物硬化型、より具体的には脱オキシム硬化型の無溶剤接着剤からなる接着層を介して固着することが望ましい。接着硬化に際して発生する化合物は窒素化合物であるため、たとえ、容器内に残存しても、培地(培地成分中にも窒素化合物が含まれている。)や生物に悪影響を与えない。
上記各構成において、閉じ部材はコルクで形成することが望ましい。コルクは通気性を有して、培養容器内への虫や塵埃の侵入を阻止することは勿論、多くの微生物の侵入も阻止する。
上記コルクとして、細菌濾過作用を有するもの又は滅菌作用を有するものを使用すれば、培養容器内の無菌維持をより確実にできる。
本発明の技術的範囲は、無菌培養に限られず、例えば、下記のような構成の培養容器に、さらには、生物培養容器セットにも及ぶものである。
容器本体と、該容器本体の開口部を閉じる閉じ部材とを備え、鑑賞用の固定型生物を培養可能な実質的に密閉タイプの生物培養容器であって、
容器本体内には、培地充填予定部の略同一高さの棒状連結部を介して鑑賞用小物が配されていることを特徴とする生物培養容器。
上記構成の生物培養容器に、さらに、培地用材料と被植付け生物とがセットされてなることを特徴とする生物培養容器セット。
本発明の培養容器の実施形態を図例に基づいて説明する。
図1は本発明の生物培養容器の一例である。
容器本体12が、上方に円状首部で形成された口部(開口部)14を備え、矩形底面の前後に割り円状の平行立壁を備えたビン形状で、容器本体12の開口部14に扁平円柱状の栓体(閉じ部材、蓋体)16を嵌着して、実質的に密閉可能とされている。容器本体12は、培地充填部18と、培地充填部18の上方に形成される鑑賞物配置部(空間)20とを備えている。
図例では、容器本体12は、無機ガラスやアクリル樹脂、ポリカーボネート等の有機ガラス等の透明材料で一体成形されている(通常、ブロー成形)。容器本体12は、後述の如く、熱滅菌処理を行うため、耐熱性を有する無機ガラスが望ましい。なお、容器本体12における培地充填部18の対応形成壁は不透明としてもよい。不透明とした場合は、培地に対する光量が低減され根の成長促進が期待できる。不透明処理は、例えばショットブラストでスリガラスにしたり、光不透過塗料を塗付したりして行う。また、容器本体12における鑑賞物配置部20の対応形成壁も全面透明とする必要はなく、鑑賞物を視認可能な透明部を部分的に形成した覗き窓方式としてもよい。食虫植物の場合、成長に必要な光量は小さくてもよく、さらには、余り成長を望まないような場合に好適である。
ここで、容器本体の形状は、図例のものに限定されず、例えば、底部円形で上方半球状としたり、円柱状、角柱状、さらには、丸底形状としたりしてもよい。丸底形状の場合は、安定保持するための中空置き台ないし吊り下げ具必要である。さらに、開口部位置は、容器本体の軸心上になくても、培地充填部以外の場所であれば任意である(例えば、特許文献1図4等参照)。
ここで、容器本体12の大きさは、特に限定されないが、通常、5cm立方以上で20cm立方以内とし、開口部内径は、培養後の植物を容器内から取り出して植木鉢等に移植する見地からは、可及的に広径の方が望ましい。しかし、コルク栓の大きさ・強度等の見地から通常15cm以内とする。また、容器本体12の壁体の肉厚は形成材料により異なるが、日常の取り扱いに耐える強度を有すれば、できるだけ、薄肉の方が視認性の見地から望ましい。例えば、無機ガラスの場合、0.5〜2mmとする。
また、栓体16はコルク栓体体で形成されている。コルクは通気性を有し、虫や塵埃の侵入は勿論、通気孔が微細であるため、多くの微生物の侵入阻止を期待でき、容器内の無菌状態の維持を期待できる。さらに、コルク材としては、細菌濾過作用を有する特別仕様コルクや滅菌作用を付与したものを使用することが望ましい。例えば、滅菌作用を付与の方法としては、殺菌(滅菌)効果のある銅粉末や光触媒を混入したコルク粉末をゴムなどで固結成形する方法がある。
なお、栓体16は、コルク栓体とせず、他の材料(例えば、スポンジゴムやガラス)の栓体でもよく、さらには、栓体とせず、蓋体(キャップ)で密閉してもよい。蓋体とする場合は、ガス透過性を有するプラスチックフィルム(例えば、PE等)等で蓋体を形成してもよい。
そして、上記形態において、培地充填部18に鑑賞用生物22が配置されているとともに、容器本体内に鑑賞用小物(以下、単に「グッズ」という。)24が配置されている。
上記培地充填部18に使用する培地は、それぞれの鑑賞用生物に適したものとするが、例えば、植物の組織培養に広く使用されているMS培地を使用できるが、そのほか、改変MS培地、B5培地、VW(Vacin-Went)培地、KC(Kunudson C)培地等、又は、これらの培地組成を改変したものを使用してもよい。これら培地は、通常、寒天ベース等に、炭素源(炭水化物)に窒素源(N化合物)、塩類その他を含む植物栄養成分を添加して調製したものである。なお、着色のために染料等を配合する。
さらには、培地としては、上記のような、寒天培地に限らず、他の半合成培地、さらには、育苗等に使用される育苗培地(培養土)も使用可能である。また、スポンジに培養液を含浸させたものでも使用可能である。
ここで、鑑賞用生物22は、図例では、植物(食虫植物)であるが、その他の鑑賞用小植物、及び、藻類、コケ類さらには固定型動物であれば特に限定されない。
また、グッズ24としては、図例では小人形であるが、特に限定されるものではない。例えば、キャラクターグッズ、各種小動物グッズ(虫・ペット等の)、を始め、色彩又は模様を付した立体形状(球・柱体・多面体)や平面形状(円・多角形・星形等)や、それらを組合せたものを挙げることができる。グッズ材質も、プラスチック、ガラス、セラミック、金属等任意である。
なお、グッズには、ルミネッセンス(蛍光・燐光)処理をしたものも使用できる。夜間における意匠性(審美性)のさらなる増大が期待できる。また、グッズ(鑑賞用小物)の表面色を食虫植物の色と対比色としたり、同系色としたりすることができる。さらには、面状グッズの場合は、表裏異色にする、さらには、多角柱状の場合は、それぞれ、異色としておけば、さらに、見る方向及び、容器自体の向きを変えることにより、意匠性に変化を与えることができる。
本実施形態では、グッズ24は、培地充填部18の底部側から立設された棒状(柱状)の連結部(形態保持連結部)26で連結されている。この棒状連結部は、アクリル樹脂、ポリカーボネート、または、ガラス等の透明な棒状体とする。着色培地を使用した場合、棒状連結部26を目立たなくするためである。そして、柱状連結部26は、容器本体14の底壁14a及びグッズ(鑑賞用小物)24とそれぞれ接着剤層介して固着されている。ここで使用する接着剤は、脱窒素化合物硬化型、例えば脱オキシム硬化型の無溶剤接着剤を使用する。他の、脱アセトン型や脱アルコール型では、培地や植物(鑑賞用生物)に悪影響を与える恐れがある。より具体的には、「一液型RTVシリコーン系接着剤」として上市されているものから適宜選択できる。
ここで、棒状連結部26は、容器本体12の成形時にブロー成形や射出成形により一体成形することも可能である。この場合は、当然、容器本体26と柱状連結部26との接着は不要となる。また、柱状連結部26とグッズ24又は容器本体12との固着態様は、接着に限らず、材料が同系統の場合は融着(溶着)したり、さらには、棒状連結部12の一端又は両端と、グッズ24又は容器本体12の取付け部との間に嵌着対偶(ペア)を形成しておき、嵌着結合させたりしてもよい。
図2は本発明の別の実施形態を示し、複数のグッズ24A、24Aを、コルク栓(閉じ部材)と連結された可撓性の線状連結部28であるテグス(釣り糸)で吊り下げたものである。テグス28で吊り下げることにより、連結部がほとんど視認できず、虫が飛んでいる感じを与える。他の構成は前記実施形態と同様である。なお、テグスとコルク栓16の結合は、テグス28を、コルク栓16内を糸通し当で通過させ、コルク栓16の上面に結び目ないし係合部材25を連結させて止めればよい。このとき、コルク栓は一時的に貫通孔が明いても弾性復元して閉じて、密閉構造に悪影響を与えることはない。当然、テグスを、棒状連結部と同様、接着剤を用いてコルク栓16や容器本体12内壁に連結してもよい。
なお、線状連結部28は、通常の糸や紐でもよく、さらには、剛性を有するワイヤ(針金)であってもよい。
当然、図1と図2を組み合わせた構成とすることも可能であり、コルク栓に棒状連結部を挿し込んで連結することも可能である。さらには、棒状連結部26を容器本体12の鑑賞物配置部20の形成壁に突出させることも可能である。
上記図1に示す実施形態における生物培養容器の製造方法の一例について説明をする(図2・3参照)。なお、植え付ける被植付け体(植物)は、通常、無菌培養した苗とするが、滅菌処理した挿穂(サシホ)や種、さらにはカルス(組織体)であってもよい。これらの被植付け体は無菌保管しておく。
1)容器本体12内に、棒状連結部26を介してグッズ24を固定する(図2参照)。具体的には、棒状連結部材の両端に接着剤(脱オキシム型の一液型RTVシリコーン系接着剤)を塗付して、固着を行う。この棒状連結部26の高さは、培地充填予定部の高さと略同一のものとする。その高さは、容器の大きさ、植物(鑑賞用生物)の種類により異なるが、例えば、1〜5cmとする。
2)棒状連結部26が略埋設する高さまでMS培地等の液状培地を充填し、コルク栓16とともに滅菌処理をする。図2のようにグッズ24A、24Aをコルク栓16に連結する場合は、グッズを連結した後のコルク栓16とする。
この滅菌処理は、通常、滅菌装置(オートクレーブ)内で、例えば、0.098MPa(1kgf/cm2)、120℃、30minの条件で行う。
3)無菌状態下(クリーンベンチ内)で、前記無菌の被植付け体、例えば苗を植え付ける。続いて、コルク栓12を、消毒手袋を手に嵌めて又は滅菌処理したハンマーで容器口部(開口部)14に嵌める。
そして、こうして製造した生物培養容器は、室内装飾品として、机の上、カウンター、書棚、出窓、さらにはニッチ等に置いて、成長を楽しみながら鑑賞できる。
特に、種やカルスの場合、それらが成長する前でも、グッズが内部にあるため、室内装飾品として十分に使用可能である。
そして、植物(生物)の成長に応じて、グッズと植物の相対位置関係が変わり、意匠性が豊かになる。なお、培地には十分な水および栄養素が含まれているため、水や肥料の補給は不要であり、また、容器が密閉無菌タイプであるため、容器内の植物(生物)が病中害にやられることはない。
例えば、培地から棒状の鑑賞用小物を直立させた場合や、上から鑑賞用小物を吊り下げたような場合は、植物のわずかな期間における生長度合いも定量的に観察できる。また、鑑賞用小物をルミネッセンス(蛍光・燐光)処理をしたものを使用すれば、夜間における意匠性(審美性)のさらなる増大が期待できる。また、鑑賞用小物の表面色を食虫植物の色と対比色としたり、同系色としたりすることにより、意匠性が増大する。
そして、植物が生長して容器内での成長が不可能になったときには、培養容器から取り出して、鉢等へ移植する。この時点では、植物が十分に生育しているため、病虫害にやられるおそれが少なくなっている。
なお、上記製造を、家庭内で個人的に行うようにすることもできる。
この場合、図3の容器本体12と栓体16とからなる生物培養容器として、さらには、被植付け体、培養材料を組み合わせた生物培養容器セットとして、販売できる。家庭内で個人的に、培地充填部形成後、適宜、滅菌処理を行って、食虫植物の苗等を植付け、栓体で閉じて、本発明の鑑賞用の生物培養容器を完成する。
本発明の一実施形態を示す生物培養容器の断面図である。 同じく他の実施形態を示す生物培養容器の断面図である。 図1に示す生物培養容器の製造方法における容器完成前の各断面図である。
符号の説明
12 容器本体
14 容器本体の口部(開口部)
16 コルク栓(閉じ部材、栓体)
18 培地充填部
20 鑑賞物配置部
22 食虫植物(鑑賞用生物)
24、24A グッズ(鑑賞用小物)
26 柱状連結部
28 テグス(線状連結部)

Claims (10)

  1. 容器本体と、該容器本体の開口部を閉じる閉じ部材とを備え、鑑賞用の固定型生物を培養可能な実質的に密閉無菌タイプの生物培養容器であって、
    前記容器本体は、培地充填部と、該培地充填部の上方に形成される鑑賞物配置部とを備え、該鑑賞物配置部の形成壁は鑑賞配置部に配される鑑賞物を視認可能な透明部を備え、
    前記培地充填部に鑑賞用生物が植えられるとともに、前記容器本体内に鑑賞用小物が配設され、さらに、
    該鑑賞用小物が、前記容器本体若しくは前記閉じ部材と連結部を介して配設されていることを特徴とする生物培養容器。
  2. 前記連結部が、棒状で前記培地充填部と略同一高さを有して、前記容器本体の底部から立設されていることを特徴とする請求項1記載の生物培養容器。
  3. 前記連結部が棒状で前記容器本体と一体成形されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の生物培養容器。
  4. 前記連結部が閉じ部材と連結されたテグス(釣り糸)で形成されていることを特徴とする請求項1記載の生物培養容器。
  5. 前記連結部が、前記容器本体及び/又は前記鑑賞用小物と脱窒素化合物硬化型の無溶剤接着剤からなる接着層を介して固着されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の生物培養容器。
  6. 前記脱窒素化合物硬化型の無溶剤接着剤が、脱オキシム硬化型の無溶剤接着剤でることを特徴とする請求項5記載の生物培養容器。
  7. 前記閉じ部材がコルク栓であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の生物培養容器。
  8. 前記コルクが細菌濾過作用又は滅菌作用を有するものであることを特徴とする請求項7記載の生物培養容器。
  9. 容器本体と、該容器本体の開口部を閉じる閉じ部材とを備え、鑑賞用の固定型生物を培養可能な実質的に密閉タイプの生物培養容器であって、
    前記容器本体内には、培地充填予定部の略同一高さの棒状連結部を介して鑑賞用小物が配されていることを特徴とする生物培養容器。
  10. 請求項9に記載の生物培養容器に、さらに、培地用材料と被植付け生物とがセットされてなることを特徴とする生物培養容器セット。
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