本発明の原理を理解し易くするために、これより図面に示す実施形態を参照し、これを説明するために特定の用語を使用する。しかしながら、これによって本発明の範囲が限定されるものではなく、例示の装置に対する変更や更なる修正、及びここに示す本発明の原理を更に適用することは、本発明が関係する技術分野の当業者なら普通に思いつくものである旨理解頂きたい。
本発明は、椎体間固定術を実行するための方法及び器具に関する。具体的には、本発明の態様は、単独で或いは組み合わせれば、他にも用途があるかもしれないが、ここに開示する器具と方法は前方腰椎椎体間固定にとりわけ有用である。しかしながら、本発明による外科処置用器具と方法は、その様な進入方向に限定されるわけではなく、限定なしに、脊椎に対して側方及び前方側方からの進入にも適用できる。また、本発明の外科的処置用器具及び方法は、脊椎の全椎骨区画、並びに脊椎の外科処置以外の領域にも応用できる。
図1a−から図1cは、本発明の或る態様による、凸状又は第1の円板空間ディストラクタ50を示している。ディストラクタ50は、脊椎の手術に使われている従来型の工具及びハンドル(図示せず)と係合するよう構成されている近位端53を有している。軸部54には、ディストラクタ先端部56が連結されている。図示の実施形態では、軸部54は、中空の内部と、その中空の内部と連通するクリップ孔55を有しているが、本発明は中実軸部54も考慮している。また、一体構成の軸部とヘッドを示しているが、ヘッド56は軸部54に取り外し可能に取り付けてもよい。このような取り外し可能なアッタチメントの一例は、「椎骨体間固定術の方法と器具」と題する1999年4月7日出願の米国特許出願第09/287,917号に詳しく記載されており、同出願全体を参考文献としてここに援用する(以後、917号特許出願と呼ぶ)。ディストラクタ先端部56は、円板空間に挿入し、第1の作業用伸延高72(図1b参照)を確立できるようになっている。より具体的には、ディストラクタ先端部56は、先端縁62が丸くなっていて両側の傾斜面58、59に続き、更により近位方向に伸張して、それぞれ、実質的に平坦な両側の面60、61になっている。平坦面60と61の間、及び丸い先端部62の近くには、互いに逆向きの凸状面64と66が伸張している。
平坦面60と61は、ディストラクタ50の縦軸Aに沿って実質的に平行に整列しており、その間が高さ72となっている。なお、傾斜面58と59は、協働して、円板空間内へのディストラクタ先端部56の挿入を助け、最初に円板空間を少なくとも高さ72まで伸延するものと理解頂きたい。第1の伸延高72が十分であれば、当技術で既知の他の手法を実行して移植片挿入を実現することができる。特定のディストラクタについて詳しく説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、他の既知のディストラクタ構成をこれに代えることができると考えられる。
図2aから図2cは、本発明の或る態様による第2の円板空間ディストラクタ80を示している。ディストラクタ80は、従来型の工具及びハンドル(図示せず)と係合するよう構成されている近位端83を有している。軸部84には、ディストラクタ先端部86が連結されている。図示の実施例では、軸部84は中空の内部と、この内部と連通する孔85とを有している。一体構成の軸部とヘッドを示しているが、917号特許出願に開示されている取り外し可能なアッタチメントに関して説明したように、ヘッド86は軸部84に取り外し可能に取り付けてもよい。ディストラクタ50のディストラクタ先端部56と同様に、ディストラクタ先端部86は、円板空間内に挿入し、望ましくは作業用伸延高72と実質的に同じの第1の作業用伸延高72’(図2b参照)を確立することができるように設計されている。より具体的には、ディストラクタ先端部86は、先端縁92が丸くなって両側の傾斜面88、89に続き、更により近位方向に伸張して、それぞれ、実質的に平坦な両側の面90、91になっている。
平坦面90と91は、ディストラクタ80の縦軸Bに実質的に平行に伸張しており、その間が高さ72’となっている。平坦面90と91の間には、凸状面94と、両側の凹状面96により画定された窪んだ領域が伸張している。ディストラクタ軸部84に沿って、遠位端86の凹状面96に隣接し且つこの面と面一の凹状面98が形成されており、ディストラクタ80の長さ方向に伸長する凹状面を画定している。図示の実施形態では、面98には軸部84の中空内部と連通しているスロット87が形成されているが、本発明では、中実軸部84、及びスロット87無しの軸部84も考慮している。後により詳しく説明するが、凹状面96、98は、ディストラクタ50と80が並んで配置される場合に、ディストラクタ50の凸状面64又は66を受け入れてそこに保持するよう構成されている。凹状面96、98は、手術が実施される際の作業空間を部分的に画定してもいる。
なお、傾斜面88と89は、協働して、ディストラクタ先端部86の円板空間内への挿入を助け、円板空間を伸延して、円板空間の伸延を少なくとも高さ72、72’に維持するものと理解頂きたい。ディストラクタの挿入を更に助けるために、図2dに、横部材76を有しそこから第1クリップ部材77と第2クリップ部材78が伸張しているディストラクタクリップ75を示している。クリップ部材77と78は、ディストラクタ50をディストラクタ80に連結するために、孔55と85の内の対応する方の孔にそれぞれ受け入れられている。クリップ75は広がるのを防ぎ、円板空間内への挿入の間、ディストラクタ50、80の相対位置を維持する。第1伸延高72が十分であれば、当技術で既知の他の手法を実行して移植片挿入を実現することができる。なお、第2ディストラクタ80は、第1ディストラクタ50の第1幅70よりも小さい第2幅74を有している。
限定するわけではないが、具体的に言えば、ディストラクタヘッド56、86は、高さ72が6mmから24mmの範囲となるよう形成されている。次のサイズのディストラクタの高さ72は、2mm刻みで高く又は低くなっているのが望ましい。後でもっと詳しく説明するが、作り出される作業用のディストラクタ高が正常な脊椎の円板高に近似しており、円板空間内への移植片の挿入を許容する限り、他の変型例であってもよい。
図3は、上記ディストラクタ50及び80に使用できるガイドスリーブ100を示している。ガイドスリーブ100は、断面が8の字形状(図9参照)で実質的に妨げられることなく近位端102から遠位端104まで伸張している作業用チャネル130を画定する壁110を有している。スリーブ100には、スリーブ100を取り外すための取り外し工具を係合させるために、スリーブ100の少なくとも一方の側の壁110に上方ウインドウ106と108が形成されている。スリーブ100には、下部に、縦軸Lを中心にした細長い視認ウインドウ112が設けられており、ウインドウ112から近位方向に細長いスロット111が伸びている。ウインドウ112があるので、外科医は、器具をガイドスリーブ100から全体的に取り出すことなく、ガイドスリーブ100に挿入された器具並びに円板空間と椎体内の開口部を視認することができる。スリーブ100の幅を狭くしたことにより、1つのウインドウ112を使って、移植片をその円板空間内の各左右位置へ挿入するのを視認することができ、挿入経路毎にそれぞれ別のウインドウは必要ない。しかしながら、視認ウインドウの個数とその構成は、917号特許出願に記載のものなど、どの様なものでもよい。本発明は、視認ウインドウ用にカバーを使用することも想定しているが、これについては917号特許出願に更に詳しく説明されている。
近位端102にはフランジリング155が設けられている。フランジリング155は、スリーブ100を補強し、スリーブ100へ駆動力を伝達し易くする荷重伝達部材を提供するが、これについては下で詳しく説明する。遠位端104に隣接して、壁100の外側の外縁に沿う材料の肉厚は、壁部分114及び反対側の壁部分(図示せず)の厚さを薄くするために、薄くなっている。肉厚が薄くなった壁部分では、スリーブ100の断面積が小さくなると共に縦軸Lに対する横方向の幅も狭くなっている。スリーブ100の断面積と幅が小さくなると、そうでない場合には幅が狭くなっていない同様の大きさのガイドスリーブを配置するのに必要な、円板空間に隣接する血管系と神経組織の退縮の量が、小さくなる。
遠位端104は、作業用チャネル130の両側の壁110から伸張する一対のフランジ118と120を含んでいる。フランジ118と120は、部分的に円板空間内まで伸張するようになっている。フランジ118、120は、上記の肉厚が薄くなった壁部分114により形成され且つこれに対応している延長部分である。或る好適な実施形態では、フランジ118と120は、円板空間を伸延するためにではなく、主に、周囲の血管及び神経構造を手術中の損傷から保護するために設けられている。側方フランジが伸延に対して構造上の支持を提供するわけではないので、フランジ及び隣接する側壁の材料肉厚は薄くしてもよい。更に、図7に示すように、遠位端104は、フランジ118と120の間に配置されたスパイク122、124と、フランジ118と120の間にスパイク122、124に対峙して配置された第3スパイク126と、第4スパイク128とを含んでいる。これらスパイクは、隣接する椎体の骨に押し付けられ、ガイドスリーブ100を椎体に対して固定位置に保持する。
次に図4及び図5では、ガイドスリーブ100は、本発明の別の態様を示すために、それぞれ正面図と側面図で示されている。ガイドスリーブの近位端102は最大幅W1を有している。スリーブ100の遠位端104では、壁110は、幅W1よりも狭い幅W2を画定している側壁114と113において、肉厚が薄くなっている。側壁113、114は、全く平坦でなく僅かに湾曲しているのが望ましい。側壁113、114では、壁110の壁肉厚が薄くなっており、側壁113、と114の終端部では壁110の元の肉厚となるようテーパ状になっている。壁110の幅を狭くすることにより、円板空間に隣接する領域での血管系及び神経組織の退縮の量が小さくなる。椎体を伸延してその伸延を維持するために、ガイドスリーブ100の延長部又はその側部フランジ118、120ではなくディストラクタ50、80を使用しているので、装置の必要な強度を殆ど下げることなく所望の幅の低減が達成されている。
図4及び図9は、軸L1周りに形成された第1作業用チャネル部分107と、軸L2周りに形成された第2作業用チャネル部分109も示している。これら作業用チャネル部分107、109は、スリーブ100の縦軸Lの両側に配置されている。作業用チャネル部分107と109を分離する壁や他の構造物は一切ない。作業用チャネル部分107は、ガイドスリーブ100の縦軸Lと内側面116の間の、軸L1周りの、作業用チャネル130の部分である。同様に、作業用チャネル部分109は、縦軸Lと内側面116の間の、軸L2周りの、作業用チャネル130の部分である。この様に、作業用チャネル部分107と109は、面積が実質的に等しく、それぞれ、頭を切った円の形状をしており、作業用チャネル107と109の頭を切った部分が互いに隣接している。
図6は、ガイドスリーブ100の作業用チャネル130内にディストラクタ50と80を並べて配置したディストラクタ/ガイドスリーブアッセンブリ150を示している。ディストラクタ50、80は、スリーブ100内にあって、各ディストラクタは、作業用チャネル130の作業用チャネル部分107及び109の対応する方の作業用チャネル部分の全体又は一部を実質的に占めている。各ディストラクタ50、80は、ガイドスリーブ100の近位端102から遠位端104まで伸びている。フランジリング155は、ガイドスリーブ100の近位端102周りに伸張するフランジの形態をしており、アッセンブリ150を挿入する間、スリーブ100とディストラクタ50、80の間の相対位置関係を維持するために、ディストラクタ50、80上に配置される駆動キャップと接触する。
次に図7は、ディストラクタ50と80が並べて配置されたアッセンブリ150の遠位端104の端面図を示している。より具体的には、ディストラクタ50の軸部54は、ディストラクタ軸部84の凹部98に入り込んでいる。また、本図に示すように、ディストラクタ先端部86の凹部96は凹状面98と同一の広がりを有し、ディストラクタ80の長さに亘る凹状面を形成している。ディストラクタ80の凹状面は曲率半径Rを有するが、これは、円板空間内に挿入されるケージ又は移植片の直径の約2分の1であるのが望ましい。例えば、直径18mmの移植片は、曲率半径Rが約9mmのディストラクタ80を使用する必要がある。
ディストラクタ50をガイドスリーブ100から取り外すと、ディストラクタ80の窪んだ領域に隣接し且つこれに沿って作業用チャネル130内に筒状の作業用空間が画定される。筒状の作業用空間は、作業用チャネル130の、凹状面96、98とガイドスリーブ100の内壁116との間の部分である。このように、作業用空間は、作業用チャネル部分107(図4)の実質的に全てと作業用チャネル部分109の一部を占めている。作業用チャネル部分109のこの筒状の作業用空間によって占められる部分の区域は、図7では線影区域Aで示されており、以後、重なり領域と呼ぶことにする。重なり領域Aは、ガイドスリーブの全幅を狭くしながら、従来の大きさの工具と器具を使用して、ディストラクタ80に隣接する作業空間で手術操作が実施できるようにしている。実現される幅の減少量は、ほぼ重なり領域Aの最大幅である。なお、軸部84は、円板空間に筒状の作業空間を提供するために窪んだ領域を設ける必要はなく、円板空間内の重なり領域Aへのアクセスを維持できるよう直径と大きさを小さくすることができると理解頂きたい。
図8は、ガイドスリーブアッセンブリ150の、ディストラクタ50、80の近位端53、83とガイドスリーブ100の近位端102とを見下ろす上面図を示している。或る実施形態では、ディストラクタ50の近位端に隣接して、ディストラクタ軸部54から伸張して形成されたロック用区間140が設けられている。ロック用区間140は、第1突起142と第2突起144を有している。第1及び第2突起142、144は、ディストラクタ80の軸部84の凹状面98に形成された対応するノッチ146、148内に入って、ディストラクタ50と80の相互回転を防止する。本発明は、相互回転を防止するために、ディストラクタ50と80を係合する他の機構も考慮している。例えば、上記ディストラクタクリップ75を使用してディストラクタ50、80を一体に連結することもできる。更に、ディストラクタ50、80を何らロック機構を設けずに挿入してもよい。
本発明では、円板空間へのアクセスは、これまで既知の外科処置技法により提供されてきたと考えているので、それについてはここで詳しくは説明しない。円板空間へのアクセスを提供するための術中テンプレートの使用は、当技術では既知である。円板空間へのアクセスを行うための手法の一例が、917号特許出願に開示されている。初期に円板空間を伸延するためにスタータディストラクタを使用するテンプレート位置決め及び円板空間伸延の技法を含む他の参考文献としては、Sofamor Danekにより1999年に出版された「小型器具」(Reduced Profile Instrumentation)と題する外科処置技法冊子があるが、この冊子の内容全体をここに参考文献として援用する(以後、Danek冊子と呼ぶ)。本発明は、当業者なら思い付くであろうが、後に論じる手法及び器具と組み合わせて円板空間へアクセスするための、他の手法の使用と適用も考えている。ここで考えられるテンプレートは、移植片並びに特定の構成と大きさを有する器具の配置に必要な面積を画定している。或る好適な実施形態では、テンプレートは、直径が16mmから24mmの範囲の筒状移植片に備えているが、移植片及びそれと共に使用するとテンプレートは、他の直径であってもよいし、限定するわけではないが、正方形や長方形など他の形状であってもよいと考えている。
脊柱の前方部分へのアクセスは機知の方法により実現される。血管、特に、大動脈、大静脈、及びその分岐血管は、左右移植片配置のための空間を設けるために動かされる。テンプレートが体内に挿入され、ピンが円板空間に隣接して配置されるまで進められる。テンプレートの円周は、一対の移植片の左右配置のために必要な円周に対応するよう選択される。より具体的には、テンプレートの面積は下記に近似している。この代わりの技法では、挿入時にディストラクタ50と80を一体に連結するためにクリップ75が使用される。更なる変型として、ディストラクタ50、80を交互に挿入するやり方も、本発明では排除しない。しかしながら、ガイドスリーブを配置するために必要な領域に、図7に示すようなディストラクタ50、80を挿入することも本願では開示している。ガイドスリーブ100は必ずしも使用する必要はないと考えられ、その場合、円板空間をディストラクタ50、80で伸延する間、外科処置部位に到るまでの組織は他の手段で引っ込ませる。次いで、下に説明するようにガイドスリーブを使用せずに、ディストラクタ50、80により画定された作業用空間内で外科処置を行なう。
図9では、分かりやすくするためにディストラクタ50、80を取り除いて、ガイドスリーブ100内の断面を示している。スリーブ100は2つの隣接する椎骨V1とV2の間の円板空間D内に挿入されている。ガイドスリーブ100に隣接して、大動脈又は大静脈の部分を図形的に表示する血管560と562が配置されている。図10は、図9の線10−10を通る断面図であるが、スリーブ100、スリーブ100上のフランジ118、120は、外科処置が行なわれている円板空間内に伸びている。フランジ118、120及びスリーブ100は、外科処置の間、円板空間を取り巻く血管及び組織と使用器具との接触を防止する。スパイク122、124、126、及び128は、対応する椎骨体V1、V2に挿入される。
ここに開示されているガイドスリーブ100とディストラクタ50、80では、そしてガイドスリーブ100の作業チャネル130で画定される作業空間内では、各種工具及び器具が使用可能である。それら工具の幾つかは、Danek冊子及び917号特許出願に開示されているが、他の工具も、本発明が関係する当業者には既知である。
本発明の装置を使用する好適な方法に従って、これより図11から図22を参照する。図11では、スリーブアッセンブリが組み立てられ、皮膚を貫通して円板空間へと挿入する準備が出来ている。図11aと図11bのディストラクタドライバキャップ250は、ディストラクタ50、80の近位端53、83上に配置される。ドライバキャップ250は、ディストラクタ50と80のフランジ付きポスト53aと83aそれぞれが入るように構成されたT字形状のスロット253と254を有する本体252を備えている。スロット253、254の反対側には、ウインドウ256と257がある。ポスト53aと83aのフランジ状部分は、ウインドウ256と257の内の対応する一方の中に、そしてスロット253と254の上側部分253aと254aの内の対応する一方の中に伸張し、ドライバキャップ250をディストラクタ50、80に固定するのが望ましい。
使用時、ディストラクタキャップ250は、フランジ118、120が円板空間の外側に配置された状態で、ディストラクタ先端部56、86が円板空間内へと駆動されるように、ディストラクタ50、80がスリーブ100内に入っている状態でフランジリング155と接触する。ディストラクタキャップ250に加えられる駆動力は、フランジリング155に伝達され、スリーブ100をディストラクタ50、80と共に円板空間に向けて駆動する。そうではなく、ディストラクタ50、80がガイドスリーブ100内に配置されていない場合、ディストラクタキャップ250が近位端53、83に固定され、ディストラクタ先端部56、86が、円板空間内に駆動される。次いで、ディストラクタキャップ250が取り外され、スリーブ100が、挿入されたディストラクタ50、80を被うように配置され、処置が上述のように続けられるが、この時、円板空間では、外科医がディストラクタ50、80の配置を維持しながら、同時にディストラクタ先端部56、86の互いに対する挿入深度を制御できる状態にある。
図12aでは、インパクタキャップ160が、スリーブ100の近位端102の周囲にフランジリング155を被って設けられている。この時、スリーブ100は、ディストラクタ50、80に対して相対的に自由に動くことが出来る。インパクタキャップ160に駆動力が加えられ、スリーブ100を円板空間に向けて駆動し、フランジ118、120を、図12bに図示のように、円板空間内に既に配置されているディストラクタ先端部56、86に隣接して位置付ける。ディストラクタ50、80をスリーブ100から取り外したときに、フランジ118、120は円板空間を伸延せずに、組織が作業用空間に入ってくるのを防止するのが望ましい。
図13に更に詳しく拡大して示すように、インパクタキャップ160は、フランジリング155の周りに配置され、これと接触する。フランジリング155は、ガイドスリーブ100の大きさが変わっても一様の大きさと形状であるのが望ましく、そうすれば、様々な大きさのガイドスリーブそれぞれに対して、単一のインパクタキャップ160というモジュールアッタチメントとなる。インパクタキャップ160は、近位端53、83を受け入れるための中空の内部161を有している。中空の内部161は、ディストラクタ50、80の位置を維持しつつ、ガイドスリーブ100の円板空間内への移動を許容するに足る深さを有している。
図14では、ディストラクタ50を円板空間から引き抜くため、スラップハンマ165がディストラクタ50に係合されている。図15aでは、ディストラクタ50が、スラップハンマ165を使って、スリーブ100の作業用チャネル130から取り外されている。凹状ディストラクタ80のディストラクタ先端部86は、次の手術過程の間、円板空間の伸延高を維持するために、円板空間内に配置されたままである。代わりの実施形態では、ディストラクタ80の軸部84が、先端部86に取り外し可能に接続されることを想定しており、その場合、先端部86をその位置に残したまま軸部を引き抜くことが出来る。別の実施形態では、軸部84は、円板空間の重なり領域A内への装置の挿入と回転を提供するために大きさが小さくなっている。軸部を、取り出し可能、又はより小さな直径にすることで、窪んだ領域が求められるのは先端部86だけとなる。
図15bでは、ディストラクタ50を引き抜いた後、作業用チャネル部分109と線影領域Aで示す重なり部分から成る作業空間が残されている。こうして、ディストラクタ80の凹状面96、98と、スリーブ110の内部面116とで、更なる手術処置を完遂するための実質的に円筒状の作業用空間が画定されるが、これについては後述する。作業用空間は、移植片挿入に備えて円板空間を準備する際に外科処置工具を受け入れることができるようになった、ガイドスリーブに沿う実質的に円形の断面となっている。ディストラクタ50、80を重なり合った構成にすることにより、ガイドスリーブ100の全幅が狭くなる。
図16aから図16bは、ガイドスリーブ100を通して配置されたリーマー170を示している。カッティングヘッド171は、円板空間を穿孔するため、当該技術では既知のカッティングエッジを有している。図16bに示すように、リーマー170は、ディストラクタ先端部86が円板空間の伸延を維持している状態で、作業用空間内でディストラクタ80に隣接して配置されている。ディストラクタ80の軸部84の凹状面98とスリーブ110の内側面116は、リーマー170の挿入及び/又は引き抜きの場合にガイドとして働く。穿孔の深度は、深さストッパ172で制御され、X線透視法により検証される。
図17aから図17cでは、リーマー170は引き抜かれ、空間をねじ込み式移植片に備えて準備するために、ヘッド176を有するタッピング工具175に取り替えられている。図17b及び図17cに示すように、ディストラクタ先端部86が円板空間の伸延を維持している状態で、タッピング工具175は、凹状ディストラクタ80に隣接して作業用空間内に配置されている。ディストラクタ80の軸部84の凹状面98と、スリーブ110の内側面116は、タッピング工具175の挿入用のガイドとして機能する。タッピング工具175は、円板空間内のタッピング深さを制御するため、深さストッパ178を有している。タッピングの間、深さと前後方向整列もX線透視法により検証することができる。
図18aから図18cでは、タッピング工具は引き抜かれ、ねじ込み式移植片200が遠位端に係合された移植片挿入装置190に置き換えられている。ねじ込み式移植片200と挿入装置190は、2000年1月11日に出願された第1の係属中PCT出願第PCT/US00/00590号、及びこれも2000年1月11日に出願された第2のPCT出願第PCT/US00/00604号に開示されている何れの型式及び構成のものでもよく、上記PCT出願は、それぞれ1999年1月11日に出願された米国仮特許出願第60/115,388号に対して優先権を主張しており、上記各PCT出願の内容全体を参考文献としてここに援用する。更に、本発明の移植片は、少なくとも1つの移植片が少なくとも1つの窪んだ側壁を有する限り、他の既知の移植片及び挿入装置であってもよい。移植片は、生体親和性のあるものであれば、どの様な材料で形成してもよい。ディストラクタ80の軸部84の凹状面98と、スリーブ110の内側面116は、移植片の円板空間内への挿入時にガイドとして機能する。
挿入装置190は、挿入装置190を貫通して伸張し移植片200のスロット加工された端部201(図19)の雌ねじ付き開口部を介して移植片200と連結しているねじ付き軸(図示せず)を有するちょうねじ191を備えている。T字ハンドル192を使って、図18bの拡大図に示す移植片200を回転させ、円板空間にねじ込む。図18cの拡大図に更に分かりやすく示すように、移植片200は、凹状面202がディストラクタ80の凹状面96に向って配置されるように挿入される。凹状面202のこの位置決めは、挿入装置190とスリーブ100に整列マーキングを施すことにより確認できる。更に、挿入装置190は、円板空間内への移植片の沈み量を表示するための沈み量マーキング193を含んでいる。移植片の回転をやり易くするために、挿入装置190には、その遠位端に、凹状面202の窪んだ領域を占めてねじ切り用の丸い構造を作る可動滑動部を設けることができる。移植片200を所定の位置にねじ込む間、ディストラクタ先端部86は、円板空間の伸延を維持する。
図19aから図19bでは、移植片200を所望の位置に配置して、移植片挿入装置190をガイドスリーブ100から取り外す際に、ディストラクタ先端部86が、円板空間から引き抜かれる。ディストラクタ先端部86を円板空間から引き抜き、ディストラクタ80をガイドスリーブ100から引き抜くために、スラップハンマ165をディストラクタ80に係合させるのが望ましい。図19bから図19cに示すように、ディストラクタ80は、スリーブ100の作業用チャネル130から取り外されている。移植片200は円板空間内に配置されたままで、次の手術過程の間、円板空間の伸延高を維持する。ディストラクタ80を引き抜いた後には、作業チャネル部分107と重なり領域Aとで構成される作業空間が残る。その結果、移植片200の凹状面202と、スリーブ110の内側面116は、以下に述べる更なる処置のために円板空間内に円筒状の作業空間を形成する。作業空間は、全幅を小さく保ったまま、移植片200に隣接して第2の移植片を挿入するのに備えて円板空間を準備するために、従来の大きさの外科処置工具を受け入れることができる円形断面を画定している。
図20aから図20bでは、先に述べたリーマー170がガイドスリーブ110を貫通して配置されている。カッティングヘッド171は、円板空間を穿孔するため当技術では既知の螺子山を有している。図20bに示すように、リーマー170は、移植片200の凹状面201に隣接して作業空間内に配置され、一方この間、移植片200は円板空間の伸延を維持している。移植片200の凹状面201と、スリーブ100の内側面116は、リーマー170の挿入及び作動用のガイドとして機能する。
図21aから図21cでは、リーマー170は抜き取られ、第2のねじ込み式移植片用の空間を準備するために、先に述べたヘッド176付のタッピング工具175に取り替えられている。図21b及び図21cに示すように、タッピング工具175のヘッド176は、移植片200の凹状面201に隣接して作業空間内に配置され、一方この間、移植片200は円板空間の伸延を維持している。凹状面201と、スリーブ110の内側面116は、タッピング工具175挿入用のガイドとして機能する。
図22aから図22cでは、タッピング工具は引き抜かれ、遠位端にねじ込み式移植片210が係合された、上記の移植片挿入装置190に取り替えられている。ねじ込み式移植片210は、図22b及び図22cの拡大図に実線で示している円形断面か、又は陰線で示している凹状面202を有する移植片200と同じ断面か、何れを有していてもよい。どちらの場合も、移植片200の凹状面201は、移植片210を円板空間にねじ込む場合にガイドとして機能する。
移植片200のような移植片を使用する場合は、凹状面212’が移植片200の凹状面202に向って配置され、図22cの点線で示すように、両者の間に空洞215’が形成されるように、移植片210を位置決めするのが望ましい。空洞にはその後骨成長促進材が充填される。T字ハンドル192を使って、移植片210を回転させ、円板空間内に、図22bに示すように移植片200に隣接してねじ込む。図22cに示すような円形移植片を使用する場合、移植片210は移植片200の凹状面201に入り込む。骨成長材は、移植片200の空洞204と移植片210の空洞213内に入れることが出来る。
本発明は、更に、脊椎の腰椎部位への前方進入によりねじ込み式固定装置を椎骨間の円板空間内へ挿入するのに特に適した器具と方法を考慮している。更に、上記ねじ込み式装置は自己タッピング方式であり、椎骨終板間の円板空間に挿入されると椎骨終板間に脊柱前弯を確立するようにテーパ状とすることも考慮している。このようなケージの例が米国特許第5,669,909号及び同第5,782,919号に記載されており、各特許の全体を参考文献としてここに援用する。以下に説明する器具と方法は、テーパ状のねじ込み式固定装置での使用、及び脊椎の腰椎部位への前方進入における使用を意図したものであるが、本器具と方法の態様は、脊椎への他の進入にも、そして他の種類や形状の移植片を円板空間内に挿入するのにも適用できる。
次に、図23aから図23cは、凸状又は第1の円板空間ディストラクタ350の別の実施形態を示しており、これは、以下に説明する点を除いて、図1aから図1cのディストラクタ50と多くの点で似ている。ディストラクタ350は、近位端353と、縦軸A1に沿って伸張する軸部354と、軸部354の遠位端にあるディストラクタ先端部356とを含んでいる。近位端353は、ポストの端に近位フランジ355aを有しその周りにリップ365aが形成されたフランジ付きポスト353aを含んでいる。フランジ355aの近位面には孔367aが設けられ、ディストラクタ350をディストラクタプーラーのような従来型の工具に取り付けられるようになっている。
図示の実施形態では、軸部354は軽量化を図って中空の内部357を有しているが、本発明は、中実軸部354も想定している。更に、一体構成の軸部と先端部を示しているが、ディストラクタ先端部356は、軸部354に取り外し可能に取り付けてもよい。
ディストラクタ先端部356には、ディストラクタ350の中央側358と、反対の側方側359との間に伸張する丸い前縁362を設けることができる。以下に説明する理由により、前縁362と中央側358の間の移行部は、前縁362が、両者の間の移行部においてその最遠位点まで伸張した状態となるように、比較的急峻であるのが望ましい。側方側359と前縁362の間には、なだらかな弧状の移行部が設けられている。ディストラクタ先端部356は、互いに反対側に向いた椎骨接触面360と361も含んでおり、この各面には、椎骨終板と係合して円板空間内でのディストラクタ先端部356の動きに抗するためのセレーション372が設けられている。ディストラクタ先端部356は、円板空間内に挿入して椎骨終板間に伸延高372(図23a参照)を確立することができるように設計されている。ディストラクタ先端部356は、アルミニウム又は他のX線透過性材料で形成し、外科医が、円板空間への挿入の間、ディストラクタ先端部356を確認し監視できるように、放射線用マーカー351を含んでいるのが望ましい。別の先端部356の場合、軸部354とフランジ付きポスト353aは、ステンレス鋼、又は外科処置器具用として許容可能な他の材料で作ることができる。
ディストラクタ350は、中央側358から伸張する円筒形状の突起374を更に含んでいるが、形状は、円筒形以外でもよい。突起374の重要性については、以下に説明する。カラーコード付きマーカー352を軸部354に設けて、外科医にディストラクタ先端部356の大きさを表示する。
次に、図24aから図24cは、第2の円板空間ディストラクタ380を示しており、これは、以下に説明することを除いて、図2aから図2cの第2ディストラクタ80に多くの点で似ている。ディストラクタ380は、近位端383、軸B1に沿って伸張する軸部384、及び軸部384の遠位端のディストラクタ先端部386を含んでいる。近位端383は、ポストの端に近位フランジ385aを有し、その周りにリップ395aを形成するフランジ付きポスト383aを含んでいる。フランジ385aの近位面には、孔397aが設けられ、ディストラクタ380をディストラクタプーラーのような従来形の工具に取り付けられるようになっている。
図示の実施形態では、軸部384は軽量化を図って中空の内部387を有しているが、本発明は中実軸部384も想定している。更に、一体構成の軸部と先端部を示しているが、ディストラクタ先端部386は、軸部384に取り外し可能に取り付けてもよい。
ディストラクタ先端部386には、ディストラクタ380の中央側388と、反対の側方側389との間に伸張する丸い前縁392を設けることができる。以下に説明する理由により、前縁392と中央側388の間の移行部は、前縁392が、両者の間の移行部においてその最遠位点まで伸張した状態となるように、比較的急峻であるのが望ましい。側方側389と前縁392の間には、なだらかな弧状の移行部が設けられている。ディストラクタ先端部386は、互いに反対を向いた椎骨終板接触面390及び391も含んでおり、この各面には、椎骨終板と係合して、円板空間内でのディストラクタ先端部386の動きに抗するためのセレーション392が設けられている。ディストラクタ先端部386は、円板空間内に挿入して椎骨終板間に伸延高372’(図24a参照)を確立することができるように設計されている。ディストラクタ先端部386は、アルミニウム又は他のX線透過性材料で形成し、外科医が、円板空間への挿入の間、ディストラクタ先端部386を確認し監視できるように、放射線用マーカー381を含んでいるのが望ましい。別の先端部386の場合、軸部384と近位端386は、ステンレス鋼、又は外科処置器具用として許容可能な他の材料で作ることができる。
ディストラクタ380、前縁392から近位フランジ385まで伸張する中央側388に沿って、扇状又は凹状面394で画定されるくぼみ領域が伸張している。図示の実施例では、凹状面394には、軸部384の中空の内部387と連通するウインドウ399が形成されている。ディストラクタ50と80に関連して先に説明したのと同様に、ディストラクタ350と380が、図25aと図25bに示すように、その中央側358と388が隣り合わせになるように配置されると、凹状面394は、第1ディストラクタ350の凸状中央面358と嵌り合う。こうして、ディストラクタ350、380は、ディストラクタ同士を隣接した場合の全幅が狭くなる。前縁362、392は、ディストラクタ350、380が隣り合わせに組み立てられると、単一の鈍い前端部を形成する。
ディストラクタを挿入し易くするため、ディストラクタ380には、図25aと図25bに示すように、軸部384の近位端に隣接して、突起374を受け入れる大きさのノッチ396が形成されている。ノッチ396は、近位方向に向いた開口部398を有しており、ディストラクタ350、380を互いに隣接させると、突起374を近位方向からノッチ内に挿入し、遠位方向にノッチから引き抜くことができるようになっている。突起374とノッチ396は、円板空間内への挿入の間、ディストラクタ350、380の互いに対する回転に抗し、ディストラクタ350、380の相対的位置を維持する。
限定するわけではないが、具体的には、ディストラクタ先端部356、386は、高さ372、372’が6mmから24mmの範囲にあるように形成されている。次の大きさのディストラクタの高さは、2mm刻みで高く又は低くなっているのが望ましい。提供される作業用のディストラクタ高が正常な脊椎の円板高に近似しており、ここに説明するように円板空間内への移植片の挿入を許容する限り、他の変型例であってもよい。
次に、図26aから図26cは、上に述べたディストラクタ350、380を受け入れるガイドスリーブ400を示している。ガイドスリーブ400は、ガイドスリーブ100に似ており、ディストラクタ50、80も受け入れることができる。ガイドスリーブ400は、断面が8の字型の作業用チャネル430を画定する壁を有している。作業用チャネル430は、近位端402から遠位端404まで実質的に妨げられることなく伸張している。遠位端404は、位置決め相手の椎骨体の前側の輪郭に整合するように凹状になっている。スリーブ400は、縦軸L6を中心にした細長い視認ウインドウ412を有し、テーパ状部分411がウインドウ412から近位方向に伸張し壁410に移行している。ガイドスリーブ100のウインドウ112に関して上に説明したように、ウインドウ412は、外科医が、ガイドスリーブ400の作業用チャネル430に挿入された器具、並びに円板空間と椎骨体の開口部を視認できるようにしている。
ガイドスリーブ100に関して先に論じたと同じように、壁部分414の肉厚を薄くし、相対する壁部分415の肉厚を薄くするために、遠位端404付近では、側方縁部分の壁410に沿った材料の肉厚が薄くなっている。ガイドスリーブ400は、遠位端404から作業用チャネル430の両側に延びている一対のフランジ418と420を含んでいる。フランジ418と420は、部分的に円板空間内に伸張するように構成され、それぞれ、上記の対応する肉厚の薄くなった壁部分414、415の延長部分である。好都合に、ガイドスリーブ100及びフランジ118、120に関連して上で論じたように、フランジ418と420は、円板空間の伸延を提供するのではなく、主に、処置の間、周囲の血管及び神経構造を損傷しないように保護するために設けられている。フランジ418、420は、伸延に対して構造上の支持を提供するわけではないので、フランジ及び隣接する側壁の材料肉厚は薄くしてもよい。
ガイドスリーブ400は、更に、軸L7周りに画定されている第1作業用チャネル部分407と、軸L8周りに画定されている第2作業用チャネル部分409を含んでいる。これら作業用チャネル部分407、409は、スリーブ400の縦軸L6の両側に配置されている。作業用チャネル部分407と409を分離する壁や他の構造体は一切ない。ガイドスリーブ100及び作業用チャネル部分107、109に関連して先に論じたように、作業用チャネル部分407と409は、面積が実質的に等しく、それぞれ、頭を切った円の形状をしており、作業用チャネル407と409それぞれの頭を切った部分が互いに隣接している。
スリーブキャップ455は、近位端402に設けられ、溶接でスリーブ400の壁410と一体に形成されるか、又は別のやり方でこれに取り付けられている。スリーブキャップ455は、近位端402に隣接して形成され、スリーブ400の周りに近位端リング407を画定している近位溝406を含んでいる。スリーブキャップ455は、その周りに伸張し近位溝406から遠位方向に配置されている円周リング部材408も含んでいる。下で詳しく説明するが、スリーブキャップ455は、駆動キャップをスリーブ400へ接続し易くし、ディストラクタ350、380をスリーブ400と組み付け易くする。
側方搭載式ディストラクタドライバキャップ550を、図27aから図27dに示す。ディストラクタドライバキャップ550は、上側部分554と下側取付部分556を有する本体552を備えている。取付部分556は、取付部分556の内部に設けられたディストラクタ固定部分560及びスリーブ固定部分562と連通している側方開口部558を有している。ディストラクタ固定部分560とスリーブ固定部分562は、ディストラクタドライバキャップ550を、ディストラクタアッセンブリ450(図28)上に、側方開口部558を通して側方搭載して、ディストラクタ350、380とガイドスリーブ400をアッセンブリできるように構成されている。
ディストラクタ固定部分560は、上部延長部567により周りに第1レッジ568が形成されたディストラクタスロット564を含んでいる。ディストラクタスロット564は、ディストラクタ350と380を図25bに示すように一緒に配置したとき、ディストラクタ350、380のフランジポスト353aと383aそれぞれの近位フランジ355aと385aを受け入れるように構成されている。フランジポスト353aと383aのリップ365aと395aは、それぞれ、ディストラクタスロット564の周りに形成された第1レッジ568と接触する。スリーブ固定部分562は、底部延長部572により周りに第2レッジ570が形成されたスリーブスロット566を含んでいる。スリーブスロット566は、ディストラクタ350、380が図28に示すようにスリーブ400内に挿入されると、底部延長部572が近位溝406に配置された状態でスリーブ400の近位端リング407を受け入れるように構成されている。ディストラクタドライバキャップ550は、ディストラクタ350、380を一体に固定し、且つ固定されたディストラクタ350、380をガイドスリーブ400に対して固定して、ディストラクタアッセンブリ450を形成する。これにより、外科医は、ディストラクタアッセンブリ450を、ディストラクタ350、380とスリーブ400が互いに相対移動することなく、皮膚と組織を貫通させて円板空間に挿入できるようになる。ディストラクタ先端部356、386は、フランジ418、420を越えて遠位方向に伸張し、ディストラクタ先端部は、フランジ418、420を円板空間内に挿入することなく、円板空間内に挿入できるようになっていることが望ましい。
図27cに示すように、上側部分554は、駆動力をディストラクタ350、380それぞれの近位フランジ355a、385aに伝えるため、中実であるのが望ましい。側方搭載式ディストラクタドライバキャップ550が、確実にディストラクタ350、380上に正しく配置されるようにするため、上側部分554にはディストラクタ固定部分560と連通する井戸574が設けられている。ばね付勢式プランジャ576は、ディストラクタ固定部分560内に伸張するナブ(節)578を有している。近位フランジ355a、385aの一方がナブ578に接すると、ばね580が圧縮してプランジャ576が井戸574に押し込まれる。ディストラクタドライバキャップ550がどちら側から搭載されているかで決まるが、孔367aと397aの一方がナブ578と整列すると、ばね580はナブ578を対応する孔567a、597aに押し込む。このとき叩き音がするので、ディストラクタドライバキャップ550がディストラクタ350、380上に正しく着座したことが耳で確認できる。
図29は、ガイドスリーブ400の作業用部分407、409の内の選択された一方を通して配置することの出来るリーマー470を示している。リーマー470は、軸部474の遠位端に取り付けられたカッティングヘッド471を有している。カッティングヘッド471は、円板空間に円筒状の孔を穿孔するように構成された、本体478から螺旋状に延びる切り刃476を有している。本体478には、各切り刃476に沿って、本体を貫通し本体478により画定される中空の内部と連通している細長い開口部480が形成されている。軸部474のポート482は、本体478の内部にアクセスを提供し、そこから物質を取り出せるようにしている。本体478の遠位端に、この目的で開口部(図示せず)を設けてもよい。穿孔の深さは、図16aの深さストッパ172のような深さストッパ、並びに軸部474上の深さマーキング484により、監視し制御することができる。T字ハンドル駆動工具と接続する場合、軸部474の近位端にハドソン型コネクタのようなコネクタ486が設けられる。
次に、図30aから図30bは、リーマープラグ600を示している。リーマープラグ600は、軸部602と、軸部602の遠位端に設けられたプラグ604を有している。軸部602の近位端には、ハンドル606が設けられている。軸部602は、概ね円筒形であるが、中央側に沿って凹状面が伸張し、横に配置された工具を回転出来るようにしている。ハンドル606は、軸部602に接続された扇状部分608を有している。扇状部分608は、軸部602の周りに形成された空洞614を有しており、リーマープラグ600がガイドスリーブ400内に一杯に挿入された時には、ガイドスリーブ400の近位端を受け入れ、軸部604をガイドスリーブ400の側壁に向けてクロックする。ハンドル606は、凹状面612の反対側に軸部602から離れて側方に伸張する部分610を更に含んでおり、プラグ604の、穿孔された円板空間部位への挿入と取り外しをやり易くしている。扇状部分608及び側方伸張部分610は、リーマープラグ600がガイドスリーブ400の作業用チャネル部分407、409の一方に配置されている時に、ガイドスリーブ400の作業用チャネル部分407、409の他方へ迷うことなくアクセス出来るようにする。
次に図31は、移植片アジャスタ620を示している。移植片アジャスタ620は、近位端624と遠位端626の間に伸張する軸部622を有している。下で論じるように、遠位端626は、円板空間内に移植されている移植片に係合して、移植片の最終的な整列を調整するよう構成された移植片係合部分628を有している。近位端624には、移植片アジャスタ600を通して移植片に回転力を働かせるために、T字ハンドル等に接続可能なハドソン型コネクタが設けられている。
次に、図32aから図32bは、移植片ホルダ650を示している。移植片ホルダ650は、近位端654と遠位端656の間に伸張する軸部652を有している。軸部652には、近位端654に隣接して螺子部分664が設けられている。遠位端656には、端部分668から伸びる一対のフィンガ658を有する移植片係合部が設けられている。テーパ状部分662と端部分668との間には、ショルダ部666が設けられている。端部分668の遠位端壁から、遠位方向に、突起672が伸びている。スリット670が、突起672の間に、移植片ホルダ650の中心軸Cに沿って近位方向に距離dだけ伸びており、移植片ホルダ650を移植片と係合解除される位置に付勢している。フィンガ658の向きを表示するために、軸部652の近位端に隣接して平坦部674が設けられている。
次に図33は、移植片ドライバスリーブ680を示している。ドライバスリーブ680は、移植片ホルダ650が通る大きさの中空の内部を有する円筒状部材682を備えている。円筒状部材682は、移植片ホルダ650上の螺子部分664と螺合するよう形成された、中空の内部に形成された螺子部(図示せず)を有している。円筒状部材682の近位端684には、六角ナット686が固定されている。円筒状部材682の遠位端688には、ブッシング690が取り付けられている。ブッシング690は、デルリンのような潤滑性プラスチック材料で作られ、遠位端688に圧入されているのが望ましい。図34では、レンチ695には、ハンドル696と、移植片ドライバスリーブ680の六角ナット686に係合する大きさの片持六角駆動ヘッド697が設けられている。移植片ホルダ650は、遠位端656がドライバスリーブ680の遠位端688から遠位方向に伸張し、且つ移植片ホルダ650の近位端654がドライバスリーブ680の近位端684から近位方向に伸長するだけの長さを有している。
図43aから図43bに示すように移植片800を移植片ホルダ650に取り付けるために、移植片ホルダ650は、ドライバスリーブ680に通され、螺子部分664の近位端を筒状部材682の雌ねじの遠位端に部分的にねじ込むことによりそこに固定される。T字ハンドル674は、移植片ホルダ650の近位端654のコネクタに固定される。移植片800は、バイス(vise)により所定の位置に保持され、移植片には、その近位端開口部を通して骨成長材料を事前に充填することができる。次に、移植片ホルダ650が、フィンガ658を移植片800の周りに配して位置決めされると、突起672は移植片の端部開口部内に入ることになる。フィンガ658は、移植片800の側壁上に設けられた平坦部又は他の面と嵌合するよう形成されている。移植片ホルダ650は、ブッシング690がテーパ部分662と接触し、テーパ部分662が近位方向にドライバスリーブ680の遠位端開口部内に引き込まれるように、ドライバスリーブ680に対して近位方向にねじ込まれる。ドライバスリーブ680をレンチ695で回す間、移植片ホルダ650は、ハンドル674で回転しないように保持される。移植片ホルダ650のテーパ部分662に働く力により、移植片ホルダ650は、スリット670が狭くなりフィンガ658が互いに向けて押されてその間に移植片800をしっかり掴むことにより、移植片800と係合する位置まで移動する。プラスチックブッシング690は、移植片ホルダ650がドライバスリーブ680を噛むのを防ぐと共に、移植片800が円板空間内に挿入された後、外スリーブ680を移植片ホルダ650から外して移植片800を放し易いようにする。
次に、図35aから図45を参照しながら、脊椎への前方進入に図23aから図34の器具を採用して、第1移植片800と第2移植片800’を円板空間内の左右両側に挿入する好適な外科処置技法の例について説明する。なお、図23aから図34の器具は、ここに記載するものとは別の脊椎への進入法にも適用できるし、別の種類の移植片でも用いることができる旨理解頂きたい。
さて、図35aから図35cでは、脊椎のL5−S1レベル間の円板空間に、前方開腹によりアクセスが行われている。この進入では、通常、正中仙骨動脈は、結紮され分割される。脊椎のL4−L5レベルは、必要に応じ、腸腰及び分節血管を識別し結紮した状態でアクセスしてもよい。円板空間の中心は、テンプレート軸部700とセンタリングピン705で確認しマークされる。正中線の正確な確認は、前/後及び左右方向X線透視検査で支援しながら行なうことができる。椎体上のセンタリングピン705に対して頭尾両方向の正中線にマークMが付けられる。
次に、センタリングピン705は取り外され、図36aに示すように、適当な大きさのテンプレート710が軸部700に取り付けられ、ノッチ712がマークMと整列するように位置決めされる。カッティング器具715で環を鋭く切開することにより、ブロック椎間板切除の左右方向マージンをマークする。図36bと図36cに示すように、テンプレート710を取り外し、通常はen−blocの椎間板切除術を実施して、ディストラクタ350、380を挿入するのに適切な空間を提供する開口部Oを作る。下垂体骨鉗子の様な円板材料除去器具720を使用して髄核を摘出し、円板空間内にディストラクタと移植片800用の空間を設ける。椎体に対してガイドスリーブ400の遠位端を確実に正確に着座させるために、椎体の前骨増殖体を摘出してもよい。キュレットを使って軟骨質終板を摘出してもよい。直視下で椎間板切除を実施して、X線透視検査を使って円板空間の後方部位における円板切除範囲を確認する。椎間板切除の左右方向マージンは、前側方環が無傷の状態で残り構造体の安定性が高まるようにするため、越えてはならない。
必要に応じて、図37に示すスタータディストラクタセット725を使用して、円板空間の順次伸延を行なうことができる。スタータディストラクタ725は、ディストラクタハンドル728に取り付け可能な、高さが順次増す多数のディストラクタセット726a、726b、726c、726dを含んでいる。必要に応じて、ディストラクタ先端部を順次駆動して円板空間内に入れ、ディストラクタアッセンブリ450の挿入に先立ち、円板空間高を作り出す。
次に、図38に示すように、ディストラクタアッセンブリ450は、上記のようにディストラクタドライバキャップ550と組みつけられる。次いで、ディストラクタ350、380のディストラクタ先端部は、ディストラクタアッセンブリ450が確実に正中線Mに配置されるよう注意を払って、開口部Oに挿入される。ディストラクタ先端部が円板空間内に完全に着座するまで、ディストラクタドライバキャップ550を叩く。先端部のX線透視マーカーを使って、着座中の位置を検証する。ディストラクタアッセンブリ450は、着座の間、終板に対して平行でなければならず、無傷の前側方環は、ディストラクタアッセンブリ450をセンタリングし、叩かれる間、左右方向移動に抵抗するよう機能する。続いて、ディストラクタドライバキャップ550は取り外され、ディストラクタ350、380をガイドスリーブ400から連結解除する。
次に、図39に示すように、インパクタキャップ730がガイドスリーブ400に固定され、フランジ418と420が円板空間内に完全に着座し、スリーブ400の遠位端が椎体に対して位置決めされるまで、ガイドスリーブ400を叩くが、その間、ディストラクタ350、380は、ディストラクタドライバキャップ550で円板空間内に配置されたときの位置が維持されている。次いで、インパクタキャップ730が取り外される。図40aに示すように、スラップハンマ165のような器具取り外し器が第1ディストラクタ350に取り付けられる。そして第1ディストラクタ350が取り外されると、図40b及び図40cに示すように、円筒状の作業用チャネルが、ガイドスリーブ400を通って円板空間まで、第2ディストラクタ380の凹状面394により画定される窪み領域に沿って形成される。
次に、図41aと図41bに示すように、円板空間内の第1円板空間位置に円筒形の孔を穿孔し、移植片800の挿入に備えるため、リーマー470が作業用チャネル内に配置される。リーマー470は、円板空間内に挿入される移植片の前端の高さに対応する大きさの穴を作るのが望ましい。リーマー470は、先に論議した深さストッパ172の様な深さストッパとT字ハンドル674に取り付けられる。軸方向コンピュータ断層撮影(CT)像又は磁気共鳴(MR)映像を用いた手術前の型板取りに基づいて、適切な深さストッパの設定を選択するが、これは、移植片800の長さと、円板空間内の移植片の所望の沈み量を反映していなければならない。円板空間内の穿孔深さはX線検査法により検証される。
次に、図42aでは、リーマープラグ600が、リーマー470で穿孔された第1円板空間位置に挿入されている。第1移植片800は、第1円板空間位置が穿孔された後、第1円板空間位置に挿入されないのが望ましい。テーパの付いた第1移植片800は、円板空間を伸延し、終板の間に脊柱前弯角度を確立するよう機能する。第2円板空間位置が穿孔される前に第1移植片800が第1円板空間位置内に挿入されていると、第2円板空間位置の穿孔は難しい。従って、ディストラクタ380が取り外されている間、リーマープラグ600が、円板空間の伸延を維持する。次に、リーマー470を使って、第2移植片800’を挿入するための、第1円板空間位置に隣接する第2円板空間位置を穿孔する。プラグ604は、リーマー470の軸を軸部602の凹状面に沿って配置した状態で、カッティングヘッド471を回転させることができるだけの空間が円板空間内に存在するような大きさになっている。ハンドル606は、スリーブ400の近位端と係合し、軸部602をガイドスリーブ400の壁の内側に向けクロックし、リーマープラグ600がリーマー470と干渉しないように、そして第2移植片800’の挿入を邪魔しないようにする。
上記のように、第2移植片800’は、図43aと図43bに示すように、ドライバスリーブ680で、移植片ホルダ650を移植片800’に係合させることにより、移植片挿入装置に係合させる。図44aから図44cに示すように、リーマープラグ600が第1円板空間位置に挿入された状態で、第2移植片800’が、第2円板空間位置内にねじ込まれる。第2移植片800’は、自己タッピング螺子部を有しており、終板の間に所望の脊柱前弯角度を確立するようにテーパが付いているのが望ましい。第2移植片800’を第2円板空間位置に挿入した後、移植片ホルダ650とドライバスリーブ680は取り外される。リーマープラグ600は、第1円板空間位置から引き抜かれ、図45に示すように、第1移植片800が移植片挿入装置で第1円板空間位置に挿入される。挿入時、移植片800、800’は、椎体の前面から、2から5ミリメートル沈み込むのが望ましい。必要に応じ、移植片アジャスタ620を、整列修正のために移植片800、800’の近位端開口部に挿入することもできる。骨成長材料Gを円板空間内の移植片800、800’の周りに配置して、融合の促進を図る。
以上、主に、ねじ込み式移植片を本発明の器具と共に使用する場合について説明してきたが、本発明は、押し込み式移植片及び/又は膨張可能移植片を、ここに述べる器具を使って円板空間内に配置することも同様に考慮している。また、本発明は、円板空間内の左右両方向位置に2つの移植片を挿入する場合に利用するのが好ましいが、1つの移植片を円板空間内に挿入することも考慮している。
無論、本発明は、円板空間内で行なわれる各種処置の深さを測定し制御するために、深さストッパ及び他の装置を利用している。これらの装置と処置については、Danek冊子及び917号特許出願の中で詳しく説明されている。更に、本発明は、上に述べた工具と器具の使用に限定されるものではなく、ガイドスリーブ100とディストラクタ50、80は、本発明が関係する当業者であれば普通に思い至るような他の装置と共に使用することもできる。
本発明の別の態様によるディストラクタ先端部について、以下、図45から図56を参照しながら説明する。図46から図56のディストラクタ先端部には、隣り合わせの円筒状ディストラクタ軸部、隣り合わせの小型化ディストラクタ、互いに離間した第1及び第2ディストラクタ、又は円板空間内に隔離して挿入される1つのディストラクタが適用されている。図46から図52では、ディストラクタ先端部900は、椎骨終板E1とE2の解剖学的形状、特に終板曲率C1、C2、C3、に概ね対応するように構成されているが、これについては下で詳しく説明する。ディストラクタ先端部900は、脊椎円板空間内で、その幾何学的形状が椎骨終板の幾何学形状に最もよく整合する位置まで自己位置決めを行うので、ディストラクタ先端部900が円板空間内に配置された後で移動する可能性は小さくなる。ディストラクタ先端部900には、円板空間内に挿入された後、ディストラクタ先端部900の移動に更に抵抗するための歯を設けることもできる。
ディストラクタ先端部900は、図54から図56に示すように、隣接する椎骨V1、V2間の脊椎円板空間に配置可能な本体902を含んでいる。ディストラクタ先端部900には、本体902から頭尾方向に伸張する端壁904も設けられている。端壁904は、本体902のほうを向いた内壁面904a、904bを有し、それらは椎骨V1、V2それぞれに円板空間の外で接触して、図56に示すように本体904の円板空間内への挿入深さを制限する。端壁904は、内壁面904a、904bの反対側に近位面904cを有している。ディストラクタ先端部900には、近位面904cから遠位方向に伸張する内孔910が設けられている。内孔910は、螺子を切る等して、ディストラクタ先端部900をディストラクタ軸部に連結できるよう構成されている。取り外し可能なディストラクタ先端部は、1つの軸部に各種大きさの先端部を使用できるようにモジュール性を提供する。このような先端部は、カラーコード化して、適切な大きさの先端部が、この特定の先端部を採用する処置に使用されるべき他のカラーコード化された外科処置器具並びに移植片と共に容易に選択できるようにすることもできる。ディストラクタ先端部900に端壁904を設けず、ディストラクタ軸部を本体902に直接連結することも考えられる。更に、ディストラクタ先端部900を、ディストラクタ軸部と一体の装置として一体的に形成することも考えられる。
ディストラクタ先端部900には、遠位放射線用マーカー906と、1つ又は複数の近位放射線用マーカー908を設けることもできる。放射線用マーカー906、908は、ステンレス鋼のピン、ボール、又は他の放射線用材料の形態を取ることができる。図示の実施形態では、2つのこのような近位マーカー908が内孔910の両側に設けられている。放射線用マーカーは、ディストラクタ先端部900が円板空間に挿入されたときに、円板空間の垂直中心にマーカーが配置されるよう、中心軸912を含む水平面内に配置することができる。従って、ディストラクタ先端部900は、アルミニウム又は他のX線透過性材料で作ることができ、マーカー906、908によって、外科医は、円板空間内への挿入の間、ディストラクタ先端部900の位置を判定し、その挿入を監視することができる。また、外科医は、ディストラクタ先端部900に邪魔されることなく、ディストラクタ先端部900のそばに位置する移植片又は器具を放射線で監視することもできる。
ディストラクタ先端部900は、その中を通って、ディストラクタ先端部900の前遠位端900aと、反対側の後近位端900bの間に伸びる中心軸912を有している。本願では、遠位とは、ディストラクタ先端部900が円板空間内に挿入される際に外科医から離れている位置を言い、近位とは、ディストラクタ900が円板空間内に挿入される際に外科医に向う方向を言う。中心軸912は、ディストラクタ先端部900の側方面914と中央面916の間の中心に位置している。側方面914は、ディストラクタ先端部900が円板空間に挿入されたとき、椎骨終板の側方縁に隣接し、又はこれに向かって配置される。中央面916は、ディストラクタ先端部900が円板空間に挿入されたとき、椎骨終板の中央を通って伸びる中心脊柱軸に隣接しているか、又はこの上に位置している。
ディストラクタ先端部900は、近位上側面918と近位下側面920を更に有している。各近位面918、920は、端壁904から遠位方向に遠位端900aに向って、それぞれ上側遠位面922及び下側遠位面924まで伸びている。図示の実施形態では、近位面918、920は、中心軸912に平行に伸びている。近位上側及び下側面は、それぞれ、側方面914と中央面916の間に横断して形成されている多数の歯938、940を備えている。歯938、940は、上側及び下側近位面918、920に溝を切削して形成することができる。図示の実施形態では、歯938、940は、それぞれ、鋭利なピークで接合している傾斜した遠位壁と垂直な従属壁を有している。傾斜した遠位壁は挿入をやり易くし、一方、歯と垂直な近位壁は、円板空間内でディストラクタ先端部900が引き出され捩られるのに抵抗し、椎骨終板に対するしっかりした係留性を与える。遠位上側及び下側面922、924は、各隣接する近位上側及び下側面との連結点から中心軸912に向ってテーパが付いており、ディストラクタ先端部900の遠位端900aの高さ926が、近位上側及び下側面918、920の高さ928よりも低くなっている。
図51に図示の実施形態では、中央面917は、上側近位面918と下側近位面922の間に凸状の弓状外形を有している。直線状の中央面又は凹状の中央面を含め、他の形状も考えられる。遠位端900aは、中心軸912に対して概ね直角方向に伸びる概ね直線状の遠位端面932を含んでいる。側方面914について、以下に詳しく説明する。
図53aから図53cを参照しながら、椎骨終板の解剖学的形状について、円板空間Dの両側に配置されている椎骨V1、V2を参考に説明する。椎骨V1、V2は、脊椎の腰部又は仙骨領域の一部を形成しているが、本発明の原理は、脊椎の頸部又は胸部領域にも適用することができる。椎骨V1は終板E1を有し、椎骨V2は終板E2を有する。終板E1は、終板E1の中央部の網状組織又は細い皮質性の骨の凹部を取囲んで、その外周の周りに皮質性のリムを有している。ディストラクタ先端部900を脊椎への前方進入に使用する場合、遠位端面932は、ディストラクタ先端部900が円板空間に挿入された状態では、終板E1及びE2の後方領域に配置される。
皮質性リムと終板の凹部との連結部は、皮質性リムの側方部分と皮質性リムの後方部分との間の軸平面内に曲率C1を画定する。図53bの冠状面では、終板E1は、凹状部と皮質性リムの間の連結部において内側皮質性リム曲率C2を有する。図53cの前後方向面では、終板E1の内側皮質性リムは、皮質性リムの後方部分に沿って、凹状部分と皮質性リムの間の連結部に曲率C3を有する。終板E2は、その凹状部分と皮質性リムの間の連結部に、同様な曲率を規定する内側皮質性リムを有する。
図47と図54に示すように、本体902は、遠位端面932と側方面914の間に、椎骨終板解剖学を考慮した構成を有する移行面930を有している。第1移行面930は、内側皮質性リムの軸平面における曲率C1と概ね一致する軸平面内の曲率C1’を有し、皮質性リムの側方部分と皮質性リムの後方部分との間を移行している。或る特定の実施形態では、曲率C1’は、9ミリメートルの曲率半径で定義されている。
側方面914は、中心軸912と概ね平行に伸びる近位部分914aを有している。遠位端面932から距離X1のところで、側方面914は、近位部分914aから中心軸912に向って角度A1で曲がり、テーパ付き部分914cを形成し、これが彎曲した移行面930に繋がっている。或る特定の実施形態では、この距離Xは10ミリメートルで、角度A1は10度である。中央面916は、同様にテーパ角度A1で構成され、テーパ付き部分916aを形成している。中央テーパ付き面916aは、側方テーパ付き面914cよりも更に遠位方向に伸び、半径R1で遠位端面932に繋がっている。テーパ付き面914cと916aにより、遠位端900aにおける全幅が狭くなっている。
図51に示すように、側方面914は概ね直線状の中央領域914bを有している。この中央領域から、上側及び下側近位面918、920と上側及び下側遠位面922、924との間に、それぞれ上側及び下側移行面934a、934bが伸張している。第2移行面934a、934bは、それぞれ、図55に示すような、冠状面においてその側方部分に沿って内側皮質性リムに一致する曲率C2’を有している。第2移行面934a、934bは、それぞれ、上側及び下側近位面から中央領域914bまでの高さX2を有している。或る特定の実施形態では、高さX2は3ミリメートルで、曲率C2’は8ミリメートルの曲率半径で定義されている。
図48から図49に示すように、上側及び下側第3移行面936a、936bは、遠位端面932から遠位上側面922と遠位下側面924に伸びている。上側及び下側第3移行面936a、936bは、第1移行面930から各上側及び下側遠位面922、924にも伸張している。第3移行面936a、936bは、遠位端面932を上側及び下側遠位端面922、924に繋ぐ曲率C3’を有している。図56に示すように、第3移行面936a、936bの曲率C3’は、皮質性リムの後方部分と、皮質性リムの側方部分への移行部に沿う内側皮質性リムに一致している。第3移行面936a、936bは、更に、第1移行面930を上側及び下側遠位面922、924に繋いでいる。或る特定の実施形態では、曲率C3’は、遠位端面932に沿う曲率半径1.5ミリメートルと、第1移行面930に沿う曲率半径2ミリメートルで定義されている。
上記特徴を有するディストラクタ先端部900は、椎骨終板E1及びE2の解剖学的形状に、そして特に終板曲率C1、C2、及びC3に、概ね対応している。而して、ディストラクタ先端部900は、脊椎円板空間内で、その幾何学的形状が椎骨終板の形状と最もよく整合する位置まで自己位置決めを行う。更に、挿入に際し、ディストラクタ先端部900は、円板空間内で内側皮質性リムと接触して位置決めされるので、ディストラクタ先端部900が円板空間内で左右方向又は遠位方向に移動する傾向は、皮質性リムと本体904の間の接触により防がれる。
以上、図面及び上記記述において、本発明を例示し詳しく説明してきたが、これ等は説明を目的としており、本発明の性質を限定するものではなく、従って、好適な実施形態を示して説明したのみであり、本発明の精神の中で行なわれる変形及び変更の全ては保護の対象とされるものと理解頂きたい。