JP4305878B2 - 医薬分子の副作用の推定方法及び創薬ターゲットの推定方法 - Google Patents

医薬分子の副作用の推定方法及び創薬ターゲットの推定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4305878B2
JP4305878B2 JP2007002958A JP2007002958A JP4305878B2 JP 4305878 B2 JP4305878 B2 JP 4305878B2 JP 2007002958 A JP2007002958 A JP 2007002958A JP 2007002958 A JP2007002958 A JP 2007002958A JP 4305878 B2 JP4305878 B2 JP 4305878B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
biomolecule
information
molecular
database
molecule
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007002958A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007200315A (ja
Inventor
昭子 板井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
IMMD INC.
Original Assignee
IMMD INC.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by IMMD INC. filed Critical IMMD INC.
Priority to JP2007002958A priority Critical patent/JP4305878B2/ja
Publication of JP2007200315A publication Critical patent/JP2007200315A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4305878B2 publication Critical patent/JP4305878B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Description

本発明は、生体イベントの情報を含む生体分子データベースの利用方法に関し、例えば医薬分子の副作用の推定方法及び創薬ターゲットの推定方法などに関する。
生体中には、DNA、RNA、蛋白質、多糖類などの生体高分子の他に、アミノ酸、核酸、脂質、糖質、一般低分子化合物など多様な分子が存在して、それぞれの機能を担っている。生体系の特徴は、単に多様な生体分子から構成されているというだけでなく、機能の発現をはじめとする生体内のすべての現象が生体分子間の特異的な結合を通じて起きることにある。この特異的な結合では、共有結合は形成されずに、分子間力のみによって安定化された複合体が形成される。従って、生体分子はそれが単独で存在する状態と複合体状態の間で、平衡状態で存在することになるが、特定の生体分子間では複合体状態の安定化が大きいために、この平衡が複合体側に著しく偏っている。その結果、多数の他分子の存在下で、かなり希薄な濃度でも実質的に特定の相手を識別して結合することができる。酵素反応においては、基質は酵素との複合体を形成した状態で所定の化学変換を受けた後に反応生成物として放出されるし、シグナル伝達においては、メディエーター分子の標的生体分子への結合に伴う標的生体分子の構造変化を通じて細胞外のシグナルが細胞内に伝達される。
近年、ゲノム研究の進展は目覚ましく、ヒトをはじめとする多様な生物種についてゲノム配列が解明され、遺伝子や遺伝子産物である蛋白質の配列、臓器毎の蛋白質の発現、蛋白−蛋白相互作用等についてもゲノムワイドな体系的な研究が進みつつある。それらの研究成果の大部分はデータベースとして公開されて、世界中の利用に供されている。遺伝子や蛋白質の機能、疾患の原因又は背景となる遺伝子の推定、遺伝子多型との関わりについても少しずつ解明が進み、遺伝情報に基づく医療や新薬開発への期待が高まってきた。
一方、遺伝情報の担い手は核酸であるが、エネルギー代謝、物質変換、シグナル伝達など生命機能の殆どは、核酸以外の分子が担っている。蛋白質は遺伝子という設計図に基づいて直接生産される点で他のカテゴリーの分子と異なり、その種類も多い。酵素も、低分子性の生体内生理活性化合物の標的生体分子も、蛋白性の生体内生理活性化合物の標的生体分子も(糖で修飾されていることも多いが)、すべて蛋白質である。疾患の根本原因はともかくとして、多くの疾患や症状が蛋白質や低分子化合物の量やバランス、場合によっては質(機能)の異常の結果であると考えられている。既存医薬の殆どが、蛋白質を標的としてその機能を制御する化合物である。蛋白質と違い、核酸の立体構造が低分子医薬の標的として特異性を発揮しにくいという理由もあるが、抗生物質や抗菌剤、或いは農薬の殺虫剤や抗カビ剤に至るまで、標的は蛋白質である。
従って、遺伝情報に基づいた医療や新薬開発を行うには、生体内のそれぞれの蛋白質と低分子化合物の機能とそれらの分子間の特異的関係を明らかにする必要がある。さらに、異なる酵素が次々に関与して必要な分子が生合成されることや、異なる分子が次々に結合することでシグナルが伝達されることなどから、これらの分子は機能上や生合成上で互いに直接又は間接のつながりをもっており、そのつながり(分子機能ネットワーク)の情報が重要である。さらに、これまでの研究で、メディエーターやホルモンなど多彩な臨床症状や生理現象や生体反応の発現に直接関わっている分子が多数明らかにされており、適切な治療には分子機能ネットワークとの関係付けが不可欠である。また、創薬戦略において、副作用リスクを考慮しつつ適切な新薬開発の標的分子を設定するためには、標的分子を含む分子機能ネットワークの考慮が必要である。
蛋白質に関連したデータベースとしては、SwissProt(the Swiss Institute of Bioinformatics (SIB), Europaen Bioinformatics Institute (EBI))、PIR (National Biomedical Research foundation (NBRF))があり、いずれも配列情報の他、生物種、機能、機能メカニズム、発見者、文献その他のアノテーションの情報をもっている。
分子のつながりに注目した分子ネットワーク型データベースのうち、代謝経路に関するものとしては、 KEGG(金久ら、京都大学)、Biochemical Pathways (Boehringer Mannheim), WIT (Russian Academy of Sciences), Biofrontier (呉羽化学)、Protein Pathway (AxCell), bioSCOUT ( LION), EcoCyc (DoubleTwist), UM-BBD (Minnesota Univ.) がある。
KEGGのPATHWAYデータベースにはメタボリックパスウェイとシグナルトランスダクションパスウェイがあり、前者は物質代謝、エネルギー代謝に関わる一般低分子化合物の代謝経路を、後者はシグナル伝達系の蛋白質を扱っている。いずれも予め定義された分子ネットワークを静的なGifファイルで提供している。前者では、酵素とリガンドの情報を別のテキスト形式の分子データベースLIGAND(金久ら、京都大学)及びENZYME (IUPAC-IUBMB)から取り込むようになっている。生理活性ペプチドの生成に関わる酵素や標的生体分子は含まれない。
EcoCycは大腸菌の物質代謝をデータベース化したもので、個々の酵素反応に関するデータと、既知のパスウェイに関するデータ(該パスウェイに属する酵素反応の集合として表される)に基づいて、パスウェイの図式的な表示を行なっている。EcoCycの検索機能としては、分子名やパスウェイ名に対する文字列や略号による検索法が提供されているが、任意の分子を指定して新たなパスウェイを検索することはできない。
シグナル伝達に関するものとしては、CSNDB (国立医薬品食品衛生研究所、日本)、SPAD(久原ら、九州大学)、Gene Net (Institute of Cytology & Genetics Novosibirsk, Russia), GeNet ( Maria G. Samsonova) がある。
蛋白−蛋白相互作用のデータベースとしては、DIP (UCLA), PathCalling (CuraGen), ProNet (Myriad) がある。
遺伝子・蛋白発現のデータベースとしては、BodyMap (東京大学、大阪大学)、SWISS-2DPAGE (Swiss Institute of Bioinformatics), Human and mouse 2D PAGE database (Danish Centre for Human Genome Research), HEART-2DPAGE (GermanHeart)、PDD Protein Disease Databases (NIMH-NCI), Washington University Inner Ear Protein Database (Washington Univ.), PMMA-2DPAGE (Purkyne Military Medical Academy), Mito-Pick (CEA, France), Molecular Anatomy Laboratory (Indiana University), Human Colon Carcinoma Protein Database (Ludwig Institute for Cancer Research) がある。
生体反応シミュレーション型の分子ネットワークとしてはE-Cell(冨田ら、慶応大学), e E.coli (B. Palsson), Cell (D. Lauffenburger, MIT), Virtual Cell (L. Leow, Conneticut Univ.), Virtual Patient (Entelos, Inc.) がある。
生体分子と機能の関係については、広範な蛋白の情報を集めたSwissProt の他、COPE (University of Munich) がサイトカインの機能情報をテキスト形式で公開している。 ARIS ((株)日本電子計算)は、医学・薬学分野を中心に約400の国内雑誌、20の海外雑誌から医薬品の副作用、相互作用、農薬・化学物質による中毒に関わる文献情報を収録しているが、生体分子の生理的作用や細胞レベル以上での応答についてのデータベースはこれまでにない。遺伝子と疾患については、遺伝病と蛋白質のアミノ酸変異の情報を集めたOMIM (NIH) がある。いずれもテキスト形式のデータが記述されていて、キーワードで検索できる。
分子間のつながりに注目した既存データベースの問題点は以下の点にある。分子ネットワーク型データベースは含まれる分子と分子間のつながりが分かっている系に対して作られており、予め分子間の関係を考慮して配置することが可能なために、静的なGif 等での表現で済んできた。しかし、この方式では、新しい分子や分子間のつながりの追加が困難である。今後存在が明らかにされるであろう分子も含めると10万以上あり(KEGGで扱っている分子数は医薬分子を含めて約1万)、さらにそれらの分子間の関わりが今後の研究により解明されると、分子ネットワークの複雑さは加速度的に増すことが予想される。新しい分子の追加に対応でき、膨大な分子と分子間の関係の情報を保持しながら、必要な情報を含む部分的分子ネットワークを生成できる新しい方法が必要である。
2001年9月7日現在、KEGGでは分子間のつながりを2分子の対の情報として保存し、この情報を用いてメタボリックパスウェイ中の任意の2分子間をつなぐ経路を探索することが可能になっている。しかし、このような経路探索問題には、2分子間をつなぐ経路が長くなるにつれて計算時間が級数的に増加するという問題がある。
一方、テキスト形式のデータベースでは分子データの追加に限界はない。しかし、個々の分子のデータから機能上又は生合成上関連ある分子を次々に探索を繰り返して、多数の分子のつながりを示す分子ネットワークを生成するには困難が伴う。検索時に必要な分子についてのつながりが動的にかつ自動的に得られるようなデータの保持方法と検索方法を開発する必要がある。また、疾患や病態を分子レベルで理解するためには、生体分子やそのネットワークと生体の応答や生理作用との関係を記述する新しい工夫が必要である。
本発明の課題は、多様な生体応答や現象を生体分子の機能とその分子間の関わりにおいて理解するための仕組みと方法を提供することにあり、より具体的には生体分子の情報を生体応答と結びつけることのできるデータベースとその検索法を提供することにある。さらには、それらの膨大な情報から、任意の生体応答又は生体分子に関連するシグナル伝達経路や生合成経路のみを迅速に効率よく取り出し、有望な創薬ターゲットや副作用リスクを推定するための方法を提供することも本発明の課題の1つである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、直接結合する生体分子の対をパーツとした情報を集積することで生体分子間のつながりを網羅し、生体分子の中で生体応答の発現に直接関わるキイ分子については標的生体分子との対の情報に生理作用、生体応答、臨床症状等からなる生体イベントの情報を加えて保存し、指定した1以上の任意の生体分子又は生体イベントを含むつながりを自動的に次々と探索して分子機能ネットワークを作成することによって上記の課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明により、直接結合する生体分子対に関する情報を蓄積した生体分子連鎖データベースを用いて分子機能ネットワークを生成する方法が提供される。この発明の好ましい態様によれば、生体イベントの情報をもつ生体分子連鎖データベースを用いて生体イベントの情報と関係付けた分子機能ネットワークを生成する上記の方法;生体分子自身に関する情報を含む生体分子情報データベースを用いる上記の方法;及び生体イベントの情報と関係付けた医薬分子を含む分子機能ネットワークを生成する上記の方法が提供される。また、直接結合する生体分子対に関する生体イベントの情報を蓄積した生体分子連鎖データベースを用いて任意の生体分子又は医薬分子が直接又は間接に関わる生体イベントを推定する方法も本発明により提供される。さらに、生体分子が、外部のデータベース又は文献中の遺伝子でコードされる蛋白質である場合に、該生体分子の分子略号と該遺伝子の名称又はID又は略称を対応付けるデータベースを作成することにより、遺伝子の多型や発現の情報を分子機能ネットワークを用いて解析する方法が本発明により提供される。
本発明のさらに好ましい態様によれば、ネットワーク上での連なりに基づいてグループ化した生体分子対データをサブネットとして、帰属するサブネット及びサブネット間の包含関係に基づいて、分子機能ネットワークを階層化することを特徴とする上記の方法;生体分子対に関する情報を該分子対の帰属経路名・帰属サブネット名等に基づいて階層化して保存することを特徴とする上記の方法;生体分子自身に関する情報を遺伝子群からの発現パターンや細胞表面への出現パターン等に基づいて階層化して保存することを特徴とする上記の方法;生体イベントに関する情報を該イベントの上位概念による分類や病態イベントとの関連に基づいて階層化して保存することを特徴とする上記の方法も提供される。さらに、生体分子対に関する上位階層、生体分子自身に関する上位階層、生体イベントに関する上位階層のそれぞれの保存項目に対して、項目間の関連性や依存関係等に関する情報を保存することを特徴とする上記の方法;生体分子情報データベース又は生体分子連鎖データベースに保存された階層化の情報を利用することにより、分子機能ネットワークの生成を容易にすることを特徴とする上記の方法;生体分子情報データベース又は生体分子連鎖データベースに保存された階層化の情報を利用することにより分子機能ネットワークの表現での詳細さ制御することを特徴とする上記の方法も、本発明により提供される。
さらに、本発明により、以下に示す方法及びデータベースが提供される。
1.生体イベントの情報と生体分子を関係付ける方法。
2.生体イベントの情報と関係付けた分子機能ネットワークの生成方法。
3.生体イベントの情報と関係付けた医薬分子を含む分子機能ネットワークの生成方法。
4.任意の生体分子が直接又は間接に関わる生体イベントを推定する方法。
5.生体イベントの情報をもつ生体分子連鎖データベースを用いて、任意の生体分子が直接又は間接に関わる生体イベントを推定する方法。
6.生体イベントの情報をもつ生体分子連鎖データベースを用いて、任意の生体分子が関わる分子機能ネットワーク及び該分子が直接又は間接に関わる生体イベントを推定する方法。
7.直接結合する生体分子対の情報に、生体イベントの発現に直接関わるキイ分子とその標的生体分子の対及び該生体イベントの情報を加えた生体分子連鎖データベース。
8.キイ分子に由来する生体イベントの情報を含む生体分子連鎖データベース。
9.生体イベントの情報をもつキイ分子を含む生体分子連鎖データベース。
10.生体分子連鎖データベースのコネクト検索で得られる分子機能ネットワーク。
11.上記7から9の生体分子連鎖データベースのいずれか一つを用いて、任意の生体分子が関わる分子機能ネットワークと生体イベントを推定する方法。
12.上記7から9の生体分子連鎖データベースのいずれか一つと医薬分子連鎖データベースを用いて、任意の生体分子又は医薬分子が関わる分子機能ネットワークと生体イベントを推定する方法。
13.生体イベントの情報にキイ分子の量的又は質的な変動に対応したアップオアダウンの情報を含む、上記1から12に記載の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
14.生体イベントの情報にキイ分子の生成臓器と生体イベントの発現臓器の情報を含む、上記1から12に記載の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
15.生体イベントの情報にキイ分子の量的又は質的な変動に対応したアップオアダウンの情報ならびにキイ分子の生成臓器と生体イベントの発現臓器の情報を含む、上記1から12に記載の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
16.直接結合する生体分子対と該結合の関係を表わす情報を保存することにより、1以上の任意の生体分子が機能上又は生合成上、直接又は間接に関係する分子機能ネットワークを作成する方法。
17.直接結合する生体分子対の情報の集合を用いて、任意の生体分子と機能上又は生合成上、直接又は間接に関わるキイ分子を探す方法。
18.請求項17に記載の方法に基づき、任意の生体分子が直接又は間接に関わる生体イベントを推定する方法。
19.直接結合する生体分子対と該結合の関係を表わす情報を保存することにより、生体分子間の機能上又は生合成上の関わりを示す分子機能ネットワークを作成する方法。
20.直接結合する生体分子対と該結合の関係を表わす情報をパーツとして保存し、コネクト検索することにより、任意の1以上の生体分子に関わる分子機能ネットワークを作成する方法。
21.直接結合する生体分子対と該結合の関係を表わす情報をパーツとして保存し、コネクト検索することにより、指定する1以上の生体分子に生合成上又は機能上、直接又は間接に関連する生体分子群を抽出する方法。
22.疾患に関連する生体イベント群に基づき、該疾患が関連する分子機能ネットワークを推定する方法。
23.疾患に関連する生体イベント群に基づき、該疾患が関連する分子機能ネットワークを推定し、可能な創薬ターゲットを推定する方法。
24.疾患に関連する生体イベント群に基づき、該疾患が関連する分子機能ネットワーク上の生体分子を創薬ターゲットとした場合の副作用リスクを推定する方法。
25.ある疾患に関連した分子機能ネットワーク上の任意の生体分子の機能の制御による生体イベントのアップオアダウンを予測する方法。
26.キイ分子の量的変動と生体イベントのアップオアダウンの情報を利用して、創薬ターゲットの選定を支援する方法。
27.上記26に記載の方法で用いる生体分子連鎖データベース。
28.医薬分子と標的生体分子の対の情報を含む生体分子連鎖データベース。
29.医薬分子と標的生体分子の対及び作用と副作用の情報を付加した生体分子連鎖データベース。
30.医薬分子と標的生体分子の対及び作用と副作用の情報を付加した生体分子連鎖データベースを用いて、医薬化合物の副作用リスク又は薬剤間相互作用を推定又は回避する方法。
31.医薬分子と標的生体分子の対及び作用と副作用の情報を付加した生体分子連鎖データベースを用いて、必要に応じて遺伝子多型の情報とリンクして、疾病治療のための医薬化合物の選択及び用量設定を行う方法。
32.生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク中の蛋白質が遺伝子データベースとリンクされていることを特徴とする、上記1から31に記載の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
33.生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワークが、ゲノム配列に対応付けられた遺伝子の情報とリンクされていることを特徴とする、上記1から31の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
34.生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワークが、臓器毎の蛋白発現情報と対応付けられた遺伝子の情報とリンクされていることを特徴とする、上記1から31の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
35.生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワークが、遺伝子多型に関わる遺伝子の情報とリンクされていることを特徴とする、上記1から31の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
36.生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワークが、他生物種のゲノム又は遺伝子配列と対応が付けられたゲノム又は遺伝子の情報とリンクされていることを特徴とする、上記1から31の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
37.医薬分子の投与による特定の臓器における蛋白発現の変動の情報を用いて疾患メカニズムを推定するための、上記1から31の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
38.特定疾患に頻度高く見られる遺伝子多型群の情報を解析するために用いる上記1から31の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
39.生体分子対の関係がパターン化されたものであることを特徴とする、上記16から21の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
40.生体イベントがパターン化されて表現されることを特徴とする、上記1から31の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
41.キイ分子の量的変動に対する生体イベントのアップオアダウンの情報がパターン化されることを特徴とする、上記13から15の方法又は生体分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
42.必要に応じて2以上の生体分子を1つの仮想生体分子として扱うことを特徴とする、上記1から41に記載の方法又は分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
43.分散して配置された1以上の生体分子連鎖データベースを通信を介して利用することを特徴とする、上記1から41に記載の方法又は分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
44.生体イベントの発現に直接関わる生体分子の情報を含むデータベースを作成し、生体イベントの情報を必ずしも含まない分子機能ネットワークのデータベースと併用することを特徴とする、上記1から41に記載の方法又は分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
45.生体イベントの情報を必ずしも含まない分子機能ネットワークのデータベースから、任意の分子に関わる部分的な分子機能ネットワークを抽出し、該ネットワークを構成する分子に基づいて、生体イベントの発現に直接関わる生体分子の方法を含むデータベースを検索することを特徴とする、上記1から41に記載の方法又は分子連鎖データベース又は分子機能ネットワーク。
46.生成臓器又は作用臓器その他の情報により対象とする生体分子又は生体分子対を絞り込んだ生体分子連鎖データベース、又はそのデータベースを用いて作成した分子機能ネットワーク又は分子機能ネットワークを生成する方法
47.生体分子機能データベースをコネクト検索していったん生成した分子機能ネットワークを、各ネットワークに含まれる生体分子や生体イベントの情報その他により、さらに絞り込む方法又は絞り込んで作成した分子機能ネットワーク
48.生成臓器又は作用臓器その他の情報により対象とする生体分子又は生体分子対を絞り込んだ生体分子連鎖データベースを用いて、作成した分子機能ネットワークを、各ネットワークに含まれる生体分子や生体イベントの情報その他により、さらに絞り込む方法又は絞り込んで作成した分子機能ネットワーク
49.上記1から48に記載の方法を実施するためのプログラムとデータベースからなるコンピュータシステム。
50.上記1から48に記載のデータベースを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体。
51.上記1から48に記載の分子機能ネットワークに関する情報を記録したコンピュータ読み取り可能な媒体。
52.上記1から48に記載のデータベースと、上記1から48に記載の方法を実施するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体。
53.階層化された生体イベントの情報と生体分子を関連付ける方法
54.階層化された生体イベントの情報と関連付けた分子機能ネットワークの生成方法。
55.生体分子対の情報を階層化して保存することを特徴とする分子機能ネットワークの生成方法。
56.生体分子の集合状態を階層化して保存することを特徴とする分子機能ネットワークの生成方法。
57.階層化して保存された生体分子対の情報に対して生体イベントを関連付ける方法。
58.階層化して保存された生体分子の集合状態の情報に対して生体イベントを関連付ける方法。
59.遺伝子群の転写の情報を階層化して保存することを特徴とする分子機能ネットワークの生成方法。
60.蛋白発現の情報を階層化して保存することを特徴とする分子機能ネットワークの生成方法。
61.データベース中の任意のデータ項目に対してキーワード・数値パラメタ・分子構造・アミノ酸配列・塩基配列などに基づく検索を行ない、該検索結果に基づいて分子機能ネットワークを生成する方法。
62.作成した分子機能ネットワークについて、そこに含まれる生体分子、生体分子対、生体イベントのデータに対して、キーワード・数値パラメタ・分子構造・アミノ酸配列・塩基配列などに基づく検索を行なうことにより、該ネットワークの部分集合を得る方法。
63.作成した分子機能ネットワークについて、そこに含まれる生体分子、生体分子対、生体イベントのデータに対して、キーワード・数値パラメタ・分子構造・アミノ酸配列・塩基配列などに基づく検索を行なうことにより、該生体分子、生体分子対、生体イベントを強調して表示する方法。
本明細書における用語の意味又は定義は以下の通りである。
「生体」とは、例えばオルガネラ、細胞、組織、臓器、生物個体、又は集合体など、生物に寄生する生命体を含む概念とする。
「生体イベント」とは、生体において内因的に又は外因的に現れるすべての現象、応答、反応、症状を含む概念とする。具体的な例として、転写、細胞の遊走、細胞の接着、細胞分裂、神経回路興奮、血管収縮、血圧上昇、血糖低下、発熱、痙攣、異種生物及びウイルスなど寄生体による感染その他を挙げることができる。また、光や熱などの生体外部からの物理的な刺激に対する応答も生体イベントの概念に含めることができる。
「病態イベント」とは「生体イベント」に含められる概念であって、「生体イベント」が量的又は質的にある閾値を超え、疾患又は病態と判断できる状態をいう。例として、血圧上昇の「生体イベント」が異常に亢進した結果の「病態イベント」としては高血圧又は高血圧症、血糖が正常範囲に制御できなくなった「病態イベント」としては高血糖又は糖尿病を挙げることができる。また、上記の例のように単一の生体イベントに関連するものだけではなく、複数の種類の生体イベントが関連している病態イベントもある。
「生体分子」とは、生体中に存在する核酸、蛋白質、脂質、糖質、一般低分子化合物その他のあらゆる構造の有機分子及びその集合体を指し、金属イオン、水、プロトンを含んでいてもよい。
「キイ分子」とは、生体分子のうち、主としてメディエーター、ホルモン、神経伝達物質、オータコイド等の分子群を指す。多くの場合、体内に特定の標的生体分子が存在して、その分子への直接結合が上記の「生体イベント」の引き金となることが知られている。これらの分子は生体内で生成されて作用を発現しているが、一般には生体系の外部から与えた場合にもその量に対応した生体イベントを発現する。具体的例として、アドレナリン、アンジオテンシンII、インシュリン、エストロゲンその他を挙げることができる。
「標的生体分子」とは、メディエーター、ホルモン、神経伝達物質、オータコイド等の生体分子又は医薬分子の受け皿となる特定の生体分子をいう。直接結合して特定のイベントを発現する。
「生体イベントのアップオアダウンの情報」とは、キイ分子又は標的生体分子の量的又は質的な変動に対応して生体イベントが亢進・上昇又は低下・減少する等の情報をいう。キイ分子の量が一定の閾値を超えた場合にはじめてその生体イベントが起きる場合も含む。
「分子略号」とは、分子名称の代わりに分子を識別又は指定する目的に付するもので、各分子にユニークに対応している必要がある。分子名を短縮した略号でも、分子名と無関係な英数字列でもよいが、短い文字列であることが望ましい。既に世界的に使用されている分子略号がある分子の場合には、それを用いるのが望ましい。1ヶの分子に対して異なる方式で付けられた複数の分子略号を与え、構造グループや機能などにより階層化することも可能である。
「直接結合」とは、共有結合によらない分子間力によって安定な複合体を形成する、又は形成可能であることをいう。稀に共有結合が形成されることもあるが、この場合を含めた概念である。「相互作用」と呼ばれることも多いが、相互作用の方が広い意味を含んでいる。
「生体分子対」とは、生体中で直接結合できるか直接結合することが推定される生体分子の対をいう。具体的な例として、エストラジオールとエストロゲン受容体、アンジオテンシン変換酵素とアンジオテンシンIなどを挙げることができる。酵素反応における酵素と生成物の分子対の場合には、その複合体はあまり安定とは言えないが、生体分子対に含めるものとする。また、例えばtwo-hybrid実験法で相互作用があるとされた2ヶの蛋白分子のように両者の相互の役割が明確でない場合を含めてもよい。光、音、温度変化、磁気、重力、圧力、振動などの生体外部からの物理的化学的刺激についても、これらの刺激を仮想的な生体分子として扱い、対応する標的生体分子との生体分子対を定義してもよい。
「構造コード」とは、生体分子がDNAか、RNAか、蛋白質か、ペプチドか、一般低分子か等の構造上の特徴を表す分類コードである。
「機能コード」とは、生体分子の分子レベルでの機能を表わす分類コードであり、例えば、「構造コード」が「蛋白質」である生体分子の場合は、膜受容体・核内受容体・トランスポーター・メディエーター・加水分解酵素・リン酸化酵素・脱リン酸化酵素等の分類を表わし、「構造コード」が低分子である生体分子の場合は、基質・生成物・前駆体・活性ペプチド・代謝産物等の分類を表わす。
「関係コード」とは、生体分子対をなす2分子間の関係を表わす分類コードである。例えば、アゴニストと受容体であれば10,酵素と基質であれば21,基質と生成物であれば22というように類型化することができる。例えばtwo-hybrid実験法で相互作用があるとされた2ヶの蛋白分子のように2分子の相互の役割が明確でない場合は、その旨を区別したコードを用いることが望ましい。
「関係機能コード」とは、生体分子対をなす2分子の直接結合に伴う現象や変化を表わす分類コードであり、例えば加水分解、リン酸化、脱リン酸化、活性化、不活化等の分類を用いる。
「信頼性コード」とは、生体分子対毎に直接結合の信頼性のレベルや直接結合の根拠となった実験法などを示すためのコードである。
「コネクト検索」とは、1以上の任意の生体分子又は生体イベントを指定して、それらを含む機能上又は生合成上関連した分子のつながりを自動的に探すことをいう。
「分子機能ネットワーク」とは、生体分子連鎖データベースを用い、1以上の任意の生体分子又は生体イベントを指定してコネクト検索した結果得られる、機能上又は生合成上関連した分子のつながりをいう。
「医薬分子」とは、医薬として製造され治療に用いられる化合物の分子を指すが、医学・薬学研究用に用いられる化合物や特許明細書や文献に記載の化合物など生理活性が既知の化合物も含むものとする。
「生体イベントの情報と関係付ける」とは、ある生体イベントの発現に、ある生体分子又は医薬分子又は遺伝子情報又は分子機能ネットワークが関わっていることを示すか又は見つけることをいう。
「パターン化」とは、生体分子、生体分子対、生体イベント等に関する情報をデータベースに記録する際に、与えられた情報をそのまま記録するのではなく、予め決められたカテゴリーに該情報を分類し、該当するカテゴリーを表わす記号により該情報を表現することをいう。上記の「構造コード」、「機能コード」、「関係コード」、「関係機能コード」について挙げられた例が、「パターン化」の例である。
「生成臓器」とは、生体分子が生成される臓器、組織、臓器又は組織内の部位、臓器又は組織内の特定の細胞、細胞内の部位などをいう。
「存在臓器」とは、生体分子が生成された後に蓄えられる臓器、組織、臓器又は組織内の部位、臓器又は組織内の特定の細胞、細胞内の部位などをいう。
「作用臓器」とは、生体分子又はキイ分子が生体イベントを発現する臓器、組織、臓器又は組織内の部位、臓器又は組織内の特定の細胞、細胞内の部位などをいう。
本発明の実施の一つの態様として以下のような方法が提供される(第1図)。まず、直接結合する2ヶの生体分子の対に関する情報を蓄積した「生体分子連鎖データベース」を作成する。生体分子の分子略号の付け方など、生体分子自身に関する情報をここに含めてもよいが、別データベースである「生体分子情報データベース」で行うのが望ましい。次に、上記の「生体分子連鎖データベース」から、1以上の任意の分子を指定してコネクト検索を行ない、1以上の生体分子の機能上又は生合成上のつながりの表現である「分子機能ネットワーク」を得る。
生体分子対のうち、少なくともキイ分子とその標的生体分子からなる生体分子対に対して生体イベントの情報を関連付けておくことにより、「分子機能ネットワーク」とともに、分子機能ネットワーク中の分子が直接又は間接に関わる生体イベントを推定することができる。さらに、キイ分子の量的又は質的な変動と生体イベントのアップオアダウンの関係の情報を付加しておくことにより、分子機能ネットワーク上の任意の分子の量的又は質的変動が生体イベントの亢進・上昇に働くか、抑制・低下に働くか等を推定できる。
「生体分子情報データベース」の主たる役割は、各生体分子の正式名称に対して分子略号又はIDを定義することであり、その他にも生体分子自身についての必要な情報をまとめて保存するとよい。例えば、分子名称、分子略号、構造コード、機能コード、生物種、生成臓器、存在臓器等に関する情報を保存するのが望ましい。また、実験的に単離や存在の確認がされていない生体分子であっても、例えば他の生物種での実験から存在が推定される分子に仮に分子略号その他の情報を与えて定義してもよい。
「生体分子情報データベース」には、各生体分子のアミノ酸配列や構造に関する情報を含めてもよいが、該情報を配列データベースや構造データベースに別途保存し、分子略号に基づいて必要に応じて取り出すのが望ましい。生体分子のうち低分子量のものについては、必要に応じて分子機能ネットワークの表示に化学構造を加えることができるように、正式な分子名称だけでなく、化学構造の表記に必要なデータを生体分子情報データベース又は別途のデータベースに保存しておくことが望ましい。
2以上の生体分子が多量体又は集合体として活性を示す、或いは機能するなど、複数の生体分子をまとめて扱う方が便利な場合には、それらを1ヶの仮想的生体分子として定義し、分子略号を付して「生体分子情報データベース」に登録してもよい。その場合、その構成分子が既知の場合には、それぞれに分子略号を付して登録しておき、仮想的生体分子のレコードに構成分子の分子略号を記述するフィールドを設けるとよい。どのような生体分子で構成されているか不明な場合でも、集団として特定の機能をもつ仮想的生体分子を定義して、生体分子対の定義に用いることが可能である。
また、生体分子が2以上のドメイン構造からなり、かつそれらが互いに異なる機能を持つなどの理由で各ドメインを独立に扱う方が有利と判断された場合には、各ドメインを独立の分子として扱ってもよい。例えば、元の生体分子と共に、各ドメインに分子略号を付して生体分子情報データベースに登録するとよい。元の生体分子のレコードに、分割したドメインの分子略号を記述するフィールドを設けることで、1ヶの生体分子が2以上の異なる機能をもつことが記述できる。遺伝子ではないゲノム配列上の特定の配列が、ある機能を持つ場合や特定の生体分子によって認識される場合には、その配列の部分を独立の生体分子として扱い、分子略号を付して生体分子対の定義に用いることができる。
生体分子対についての情報は「生体分子連鎖データベース」に保存する。生体分子対毎に、対をなす2つの生体分子の分子略号、関係コード、関係機能コード、信頼性コード、生体イベント、作用臓器、共役分子、その他の付加情報等を収録しておく。キイ分子とその標的生体分子の分子対については、生体イベント、両分子の量的又は質的な変動に対応した生体イベントのアップオアダウンの情報、病態イベント等の情報をできる限り入力しておくことが望ましい。キイ分子以外の生体分子対についても、該生体分子対が発現に直接関わる生体イベント又は病態イベントがある場合には、その生体イベントや病態イベントを入力しておくのが望ましい。キイ分子の量的又は質的変動に対応した生体イベントのアップオアダウンの情報としては、例えば、キイ分子の増加に対して生体イベントが正常な範囲に比べて亢進するか低下するか等の単純化した情報で示してもよい。1ヶの酵素が2種以上の基質の反応を触媒してそれぞれ異なる反応生成物を生成する場合には、酵素と基質と反応生成物の関係を特定するための表現を付け加える。
「生体分子情報データベース」と「生体分子連鎖データベース」は、その内容や構成が異なるため、本明細書では概念上独立のデータベースとして扱っているが、本発明の趣旨からも、双方を合わせた1ヶのデータベースに2種類のデータを含めても良いのは言うまでもない。また、「生体分子情報データベース」と「生体分子連鎖データベース」はそれぞれ2以上存在していてもよく、この場合、各データベースを適宜選択又は組み合わせて用いることができる。例えば、特定のフィールドで区別した、異なる生物種についてのデータを同じ「生体分子情報データベース」と「生体分子連鎖データベース」に保存してもいいし、ヒトとマウスについて別々のデータベースを作成して保存してもかまわない。
「関係コード」としては、該生体分子対を構成する2分子がアゴニストと受容体である、酵素と基質である、というように単語で入力してもよいが、アゴニストと受容体の関係なら10,酵素と基質の関係なら21、酵素と生成物の関係なら22,といった具合に類型化して入力するのが望ましい。また、「関係機能コード」として、加水分解、リン酸化、脱リン酸化、活性化、不活化等の機能の別を保存しておくと便利であるが、これも類型化して入力しておくのが望ましい。
酵素と基質のように互いの関係が明確になっている場合だけでなく、例えばtwo-hybrid実験法で蛋白−蛋白相互作用があるとされた2ヶの蛋白分子のように、両者の相互の役割が明確でない場合がある。このような生体分子対を含めてコネクト検索を行うためには、生体分子対をなす2分子の関係に方向性があるかないかを区別して扱うと便利である。各生体分子対に対して、どちらのケースに属するかを区別できるような関係コードを用いるのが望ましい。前者の場合は、作用方向確定として分子対の表現における2分子の入力順序のみが検索時に考慮されるのに対して、後者の場合は、検索時に作用方向不明として逆方向の関係も考慮される。
直接結合する生体分子対の情報も、実験的に確実に証明されているものから、とりあえず生体分子対であると仮定されているものまで様々ある。また、実験法によってはfalse positiveのために間違って生体分子対であるとされる場合も含まれる。そこで、各生体分子対の情報に信頼性のレベルや実験法を示す「信頼性コード」を付加しておくのが望ましい。検索により生成する分子機能ネットワークが多すぎる場合に、このコードを用いて、絞り込むことができる。
生体分子が生成される臓器とは別に、それが蓄積され存在する臓器及び作用する臓器の情報を保持しておくと、分子機能ネットワークの生成時に、例えばある臓器で生成されて細胞外に出た分子が他の細胞の膜上にある標的生体分子に細胞外から作用する、といった現象を容易に表現できる。生体分子の生成臓器と存在臓器の情報は「生体分子情報データベース」に、作用臓器の情報は「生体分子連鎖データベース」に入力しておくのが望ましい。ここで生成臓器・存在臓器・作用臓器の記述は臓器に限定される必要はなく、組織、臓器又は組織内の部位、臓器又は組織内の特定の細胞、細胞内の部位などの情報を含んでいてもよい。
直接結合することを実証した実験や推定の方法、生体イベントの種類、キイ分子の量的変動に対応した生体イベントのアップオアダウン、細胞内部位や組織、臓器、臓器内部位の表現は単純化してあれば何でもよいが、類型化して短い英数字記号等に変換しておくのが望ましい。同義語辞書で定義しておけば、同時に同義語の処理もでき、入力時のミスが最小化できるからである。
以下に「生体分子連鎖データベース」から「分子機能ネットワーク」を生成する「コネクト検索」の概念を示す。本発明の「コネクト検索」には、この概念を実現できるものであれば、いかなる方法を用いてもよい。例えば、Sedgewickによる「アルゴリズムC(近代科学社、1996)」第29章に記述されている「深さ優先探索」のアルゴリズムなどが利用できる。
分子略号a〜z で表される生体分子からなる各生体分子対を(n,m) のように表現するとすると、生体分子連鎖データベースは次のような生体分子対の集合として表される。
(a, c) (a, g) (b, f) (b, k) (c, j) (c, r) (d, v) (d, y) (e, k) (e, s)
(g, u) (j, p) (k, t) (k, y) (p, q) (p, y) (x, z)
コネクト検索で、例えばcとeを含む分子機能ネットワークを生成するよう指定したとすると、対のうちの一方の分子を共通にもつ生体分子対 (c, j) (j, p) (p, y) (y, k) (k, e) を次々に探し、分子機能ネットワークとして、分子c, j, p, y, k, e のつながりであるc - j - p - y - k - e を得る。
得られた「分子機能ネットワーク」に基づいて、生体イベントの推定を以下のようにして行う事ができる。生体分子eがキイ分子であって生体イベントEの情報をもつ場合、生体分子c, j, p, y, k は生体イベントE の発現に直接又は間接に関係すると推定できる。さらに、例えば分子eが減少するとEの発現が亢進するといった生体イベントのアップオアダウンの情報がある場合には、(c, j) (j, p) (p, y) (y, k) (k, e)のそれぞれの関係を考慮して、c, j, p, y, k のうちの任意の分子の量的又は質的変動に対する生体イベントEの発現への影響を推定することができる。
さらに、ある生体分子からキイ分子までの分子機能ネットワーク上にあるNヶの生体分子が、生体イベントの発現量QEに与える影響を、例えば次のような式で予測することもできる。ここで、Siはi番目の生体分子の状態の質的な評価値、Riはi番目の生体分子の量を表わす値、Viはi番目の生体分子が存在する環境の評価値を表わし、fは 3 x Nヶの入力値をもつ多価関数である。
QE = f ( S1, R1, V1, ... SN, RN, VN )
1ヶの分子機能ネットワークが関係する生体イベントは1種類に限らないし、また、1種類の生体イベントに関わる分子機能ネットワークが数ヶあることが予想されるが、生体イベントの側から関連のある分子機能ネットワークを絞り込むことは可能である。例えば、1以上の生体分子を指定して「分子機能ネットワーク」を生成した場合に、著しく多数の生体分子が含まれる「分子機能ネットワーク」が生成された場合には、生体イベントの情報を加えて「分子機能ネットワーク」の範囲を絞り込むことが可能である。当然のことながら、何らかのメディエーター分子、又は該分子と標的生体分子の関係を含むことを条件として、「分子機能ネットワーク」を生成させることも可能である。
また、「生体分子連鎖データベース」のデータを適宜分割し、又はフィルターをかけ、又は部分集合を抽出し、又は階層化することによって、必要な範囲の分子機能ネットワークを生成することができる。分割やフィルターや部分集合の抽出は、本発明のデータベース特有のデータ項目に対する検索、キーワードを用いた一般的な文字列検索、アミノ酸配列又は核酸配列に対する相同性検索、化学構造式に対する部分構造検索等の検索方法により行なうことができる。これらの検索を予め「生体分子連鎖データベース」又は「生体分子情報データベース」に対して行なうことにより、限定をかけた分子機能ネットワークや特徴づけした分子機能ネットワークを生成することができる。例えば、生成臓器や作用臓器の情報を用いて、肝臓で生成する生体分子とか皮膚で起こる生体イベントといった観点から絞り込んだ部分データベースを作成してコネクト検索することで、限定した範囲の「分子機能ネットワーク」を生成することができる。また、コネクト検索で生成させた分子機能ネットワークに対して、そこに含まれる生体分子又は生体分子対について上記の検索を行なって分割やフィルターや部分集合の抽出をすることによって、所望の特徴をもつ分子機能ネットワークや所望の範囲の分子機能ネットワークを生成することができる。こうした限定や特徴づけは検索を容易にするだけでなく、特定の生体分子群や生体分子対を分子機能ネットワーク上で強調して表示して、分子機能ネットワークの理解を助ける目的にも有効である。
「生体分子連鎖データベース」の分割やフィルターや部分集合の抽出を、ネットワーク上の連なりに基づいて適切に行ない、その包含関係を示す情報を保存して利用することにより、「分子機能ネットワーク」の階層化が可能になる。未解明の分子や分子間のつながりが一部にあっても、それらをまとめて1ヶの仮想的な生体分子として他分子との対を定義し、仮の分子機能ネットワークを生成することも可能である。含まれる分子数が多いために過度に複雑なネットワークが生成される場合には、ネットワーク上で連結している2以上の生体分子群を仮想的な1ヶの生体分子と定義して、ネットワークをシンプルに表現することも可能である。
このような階層化を利用することにより、コネクト検索の高速化を可能にし、ネットワーク表示の詳細さを調節可能にして、過度な複雑さを適切に回避できる。本明細書中では、このようにネットワーク上で連結している2以上の生体分子対からなる部分的なネットワークを「サブネット」とよぶ。
サブネットとしてはいかなる部分ネットワークを指定してもよいが、好ましくは代謝系におけるTCA回路やペントースリン酸回路の例のように研究者によく知られたカスケード、パスウェイ、回路等をサブネットとするのが便利である。また、あるサブネットが別のサブネットに含まれていてもよく、例えば代謝系自体を複数のサブネットを含む上位のサブネットと見なすこともできる。
各サブネットを1ヶの仮想生体分子として扱う方法もあるが、サブネットを構成する生体分子対とサブネットの階層に関する情報を「生体分子連鎖データベース」に保存するのが便利である。また、「生体分子連鎖データベース」にサブネットを表わすための上位のデータ階層を設けて、そこに該サブネットについての情報を保存してもよい。生体分子対のサブネットによる階層化は2層に限らず、複数のサブネットの集合をより上位のサブネットとして保存してもよい。分子機能ネットワーク生成時に個々の分子対のデータと上位階層のサブネットデータの間での相互参照を容易にするために、個々の分子対データ・サブネットデータそれぞれに互いの関連を示す情報を格納しておくのが望ましい。1ヶの生体分子対が複数のサブネットに関連付けされてもよいことは言うまでもない。
階層化した「生体分子連鎖データベース」のサブネットのデータには、下位階層の生体分子対との関連のみならず、サブネット間の関連の情報を含めるのが望ましい。例えば、代謝系において解糖系とTCA回路は連続して動作するサブネットであり、これらのサブネット間の関係を上位階層における対の関係として保存することができる。この場合、サブネットの対の情報に加えて、サブネット間の接点となる生体分子の情報を加えておくことが望ましい。
さらに、ネットワークの階層化に加えて、生体分子自身も階層化でき、「生体分子情報データベース」にその情報を保存して利用できるのが本発明の特徴である。ネットワークの高速な検索と便利で多様な表示のためには、生体分子情報と生体分子対情報の双方を階層化しておくのが望ましい。生体分子の階層化の対象としては、以下のような例を挙げることができる。生体分子のなかには、複数の異なる分子が特異的に集合してある機能を示すものがあり、分子の集合状態の違いにより機能の発現状態や種類が制御されている場合も多い。また、免疫細胞などで見られるように、細胞表面に発現している複数の分子の組み合わせにより、生体イベントとの関連や細胞の機能が規定されている場合もある。このような場合に、上記のように分子の集合状態を1ヶの仮想的生体分子として扱う方法もあるが、別の方法として、「生体分子情報データベース」に分子の集合状態を表わすための上位のデータ階層を設けて、そこに該集合状態についての情報を格納してもよい。分子機能ネットワーク生成時に生体分子データと上位階層のデータの間での相互参照を容易にするために、生体分子データと上位階層データのそれぞれに、互いの関連を表わす情報を格納しておくのが望ましい。1ヶの生体分子が複数の上位階層データに関連付けされてもよいことは言うまでもない。
生体イベント・病態イベントのなかには、特定の生体分子対に関連付けすることのできないものも多い。例えば、生体イベント・病態イベントとあるサブネットの形成との間の関係は分かっているが、該イベントに直結する生体分子対が未知の場合がある。このような場合には、上記の生体分子対データの階層化を利用して、生体イベント・病態イベントを生体分子対の上位階層であるサブネットのデータに対して関連付けることで、該イベントと生体分子ネットワークの関係を記述することが可能となる。
また、特定の分子の集合状態や細胞表面への特定の分子の発現状態がある生体イベント・病態イベントの発現に関連している場合には、上記の分子集合状態や分子発現状態の階層化を利用して、生体イベント・病態イベントを分子集合状態や分子発現状態の階層のデータに関連付けておくことで、該イベントと生体分子ネットワークの関係を記述することが可能となる。
さらに、生体イベント・病態イベントのなかには、特定の生体分子対やサブネットのいずれにも関連付けすることができないものもある。このような例の一つとして、炎症性サイトカインの遊離・白血球の組織への浸潤・毛細血管の透過性の向上などの様々な生体イベントが組み合わさって起こる「炎症」という病態イベントを挙げることができる。このようなイベントを扱うためには、生体イベント・病態イベントを階層化し、下位の階層には生体分子対やサブネットに関連付けられるイベントを記述し、上位階層には下位階層のイベントに関連して起こるイベントを記述するとよい。この階層化では、2層以上の階層構造を用いてもよいことは言うまでもない。各階層間でのイベントの相互参照を容易にするために、各階層のイベントのデータに上下の階層のデータへの関連を示す情報を格納しておくのが望ましい。このような生体イベント・病態イベントのデータの階層化により、特定の生体分子対やサブネットに直接関連付けられないイベントについても、分子機能ネットワークとの関係を記述することが可能となる。
以上例示したように「生体分子情報データベース」及び「生体分子連鎖データベース」のデータを階層化して保存することにより、多様な用途に対応した分子機能ネットワークの生成を効率的に行なえるようになる。
解糖系に存在するある生体分子(分子A)とあるキナーゼカスケードに存在するある蛋白(分子B)との関連を調べようとする場合に、階層化していないデータを用いる方法では膨大な数の分子対を対象にコネクト検索を行なう必要があり、分子Aと分子Bの間の経路が長い場合には事実上検索が不可能となる。一方、階層化されたデータを用いると、「解糖系」というサブネットと「あるキナーゼカスケード」というサブネットとの間の関連をサブネットという上位階層においてコネクト検索し、上位階層での経路が見つかった場合には、必要に応じて経路上にある各サブネットの下位階層でコネクト検索を行なうことができる。このように経路探索問題を異なる階層の問題に分割することにより、階層化を用いない場合には不可能であったような分子機能ネットワークの生成も可能となる。
また、上記の階層化データを利用したコネクト検索において、特定のサブネットが頻繁に参照されるような場合には、該サブネット内について予めコネクト検索を行なっておき、該サブネット内の分子機能ネットワークの情報を保存しておくとよい。この処理により、全体の分子機能ネットワークの生成をより効率的に行なえるようになる。
さらにまた、例えば、「炎症」という病態イベントに関わる分子機能ネットワークを生成する場合に、「炎症」という上位階層のイベントに関連する下位階層のイベントを探し、該下位階層イベントが関連する生体分子対又はサブネットから出発してコネクト検索することにより、より広範囲な分子機能ネットワークの生成が可能となる。
上記のように、本発明によると生体分子間の直接結合の関係の情報から、任意の分子に関連した分子機能ネットワークが生成でき、直接又は間接に関わる生体イベント及び病態イベントが容易に推定できる。また、本発明は逆に、疾患で特徴的に現れる生体イベントや病態イベント、生体分子の量の変化などの知見から、疾患に関連する可能性の高い分子機能ネットワークを選別し、疾患の分子的メカニズムを推定する目的に利用できる。さらに、本発明によると、特定の疾患や症状の治療にネットワークのどの過程を阻害するのが有効か、ネットワーク中のどの分子が創薬ターゲット(医薬開発で標的とする蛋白質その他の生体分子)として有望か、その創薬ターゲットから予想される副作用は何か、それを回避するにはどのようなアッセイ系で医薬開発候補を選別するかと言った創薬戦略の構築が可能になる。
医薬分子は一般に、体内で蛋白質をはじめとする生体高分子に結合してその機能を制御することにより薬理活性を発現する。それらの分子の作用は生体分子の作用よりも詳しく研究され、対象疾患の分子メカニズムの解明に役立ってきた。そこで、製造承認を受けて医療に用いられている医薬分子や薬理学研究等に用いられる薬物分子とその標的生体分子の対の関係を、上記の生体分子及び生体分子間の情報に加えることにより、本発明の方法の有用性を高めることができることに注目した。標的生体分子は殆どの場合、蛋白質又は糖などで修飾された蛋白質である。標的生体分子を含む分子機能ネットワークから、副作用となりそうな生体イベントを推定することができるし、併用する薬剤の関わる分子機能ネットワークとの交差から、薬剤間相互作用を推定することも可能になる。その結果、副作用リスクや薬剤間相互作用のリスクを考慮した薬剤の選択や用量の設定が可能になる。
以下に本発明で医薬分子と標的生体分子の対の関係を加えた場合の方法の例を示す。医薬分子の正式名称に対して、分子略号を定義し、該分子そのものについてのすべての情報を収録する「医薬分子情報データベース」を作成する。ここには医薬分子の名称、分子略号、適用疾患、用量、標的生体分子その他の情報を保存する。生体分子情報データベースの場合と同様に、医薬分子の化学構造、アミノ酸配列(ペプチド又は蛋白質の場合)、立体構造等の情報を「医薬分子情報データベース」に含めてもよいが、別途のデータベースに保存することが望ましい。医薬分子と生体分子、蛋白質と低分子などを区別する目的には、構造コード等で区別してもよいし、最初の1文字で区別できるような分子略号の付け方を採用してもよい。さらに、医薬品の添付文書やその他の文献から、顕著な副作用、他の薬剤との相互作用、代謝酵素等の情報も入力しておくと、分子機能ネットワークに基づいて、遺伝子多型との関連で薬剤の適正な選択等を行う目的に役立つ。
さらに、医薬分子と標的蛋白質の対とその関係に関する情報を含むデータベースである「医薬分子連鎖データベース」を作成する。医薬分子の分子略号、標的生体分子の分子略号、関係コード、薬理作用、適用疾患その他の情報を保存する。標的生体分子の分子略号については、生体分子情報データベース中で定義したものを用いる必要がある。関係コードなど生体分子連鎖データベースと共通するデータ項目については、生体分子連鎖データベースに準じた表記方法を用いるとよい。
「医薬分子情報データベース」と「医薬分子連鎖データベース」を作成して医薬分子及び医薬分子対の情報を取り込むことにより、第2図に示すように本発明の方法を拡張することができる。ここでのコネクト検索による分子機能ネットワークの生成や生体イベントの推定などは、上記の生体分子連鎖データベースと生体分子情報データベースだけを用いた場合と同様の方法で行うことができ、該ネットワーク上の分子を標的とする既存医薬分子の情報が同時に得られる。また、生体分子連鎖データベースと生体分子情報データベースだけを用いて作成した分子機能ネットワークから、指定した医薬分子の関わる分子機能ネットワークを抽出する目的にも利用できる。
一方、ヒトゲノム配列の解析をはじめとして、多様な角度から遺伝情報の解明が急速に進みつつある。ゲノムワイドにcDNAが単離され、orf(open reading frame)や遺伝子配列の解明が進み、各遺伝子のゲノム上への位置づけが進んでいる。そこで、本発明の別の態様として、生体分子のうちの蛋白質の分子略号と、該蛋白質をコードする遺伝子の名称、略称、IDその他の情報を関係付けた生体分子-遺伝子データベースを作成しておくことにより、以下のように本発明の方法を拡張することができる。すなわち、遺伝子と生体分子を対応づけることにより、疾患のマーカーとなる遺伝子や蛋白の意味付け、疾患と遺伝子多型の関わり等の知見を分子機能ネットワーク上の分子及び生体イベントとの関連において理解することが可能になる。生体分子-遺伝子データベースには、生物種、ゲノム上の位置、遺伝子配列、機能のほか、遺伝子多型のアミノ酸変異と略称、機能との関連等の情報を含めておくのが望ましく、必要に応じて2以上のデータベースとするのもよい。
ゲノム配列上に位置づけられた遺伝子名や遺伝子の並びから、特定のキイ分子が核内受容体に作用することによって転写される蛋白が明確になり、生体分子間の相互の制御の関係を分子機能ネットワークに反映することが可能になる。また、臓器によって発現する遺伝子や蛋白が異なることが知られているが、本発明の方法によれば、そうした発現情報を「生体分子情報データベース」に取り込むことにより、臓器毎に異なる「分子機能ネットワーク」を生成することができ、例えば、異なる臓器では核内受容体を標的とする医薬分子の作用が違ったり逆転したりする現象の説明が可能になる。また、医薬分子を投与した場合に蛋白発現が変化する事実がわかっているが、本発明の方法により個々の発現蛋白量の増減を標的生体分子に関わる分子機能ネットワーク上で解釈すると、遺伝子多型を考慮した薬剤選択に有用である。
上記の遺伝子転写や蛋白発現の情報の保存においても、階層化の概念を利用することにより、より効率的かつ広範囲な分子機能ネットワークの生成が行なえるようになる。例えば、特定の核内受容体により転写・発現される複数の遺伝子・蛋白に対して、「生体分子情報データベース」に遺伝子群の転写・蛋白群の発現を表す上位の階層を設けて、そこに該遺伝子群・該蛋白群のデータを保存しておくとよい。該遺伝子群の転写や該蛋白群の発現に関連する生体イベント・病態イベントが存在する場合には、「生体分子連鎖データベース」に該遺伝子群・該蛋白群の上位階層データと該イベントとの関連を記載することにより、個々の遺伝子・分子と該イベントとの間の関連付けでは表せないような分子機能ネットワークの生成が可能となる。
上記の遺伝子転写や蛋白発現の情報の階層化した保存法において、該遺伝子群の個々の遺伝子又は該蛋白群の個々の蛋白の転写又は発現の量的な情報が分かっている場合には、それらの情報も数値パラメタとして「生体分子情報データベース」に保存しておくとよい。これらの数値パラメタを利用することにより、個々の遺伝子の転写量又は個々の蛋白の発現量の違いに応じて、関連する生体イベント・病態イベントが変化する場合を記述することが可能となる。
また、ゲノムや遺伝子についての個体の多様性が明らかにされつつあるが、そうした情報を本発明の方法とリンクすることにより、個体差への理解が進み、個体差に基づく治療が可能になる。特定の生体分子(蛋白質)の機能が損なわれるような遺伝子多型について、分子機能ネットワーク上で解釈することにより生体イベントへの影響が推定できる。1ヶの遺伝子の欠損や異常が引き起こす遺伝病の症状及び生体イベントの異常の情報を、本発明の方法にリンクさせることも、その理解に有用である。
いくつかの代表的疾患で、各疾患の患者に頻度高く見出される数ヶの遺伝子、疾患背景遺伝子の存在が報告されている。特定の疾患にかかりやすい遺伝的体質が実際にあると仮定した場合、例えば、血圧の調節に関わる分子機能ネットワークは2以上あり、そのうちのどのネットワークのどの分子の異常かによって、高血圧の背景となる遺伝子は相当数あっても不思議ではない。こうしたpolygenicな遺伝子の問題を解釈するには、本発明の方法が不可欠である。
また、近年、マウス、ラット等の動物のゲノムや遺伝子の解析も急速に進められており、ヒトのゲノムや遺伝子との対応も付けられるようになってきた。これらの動物とヒトとで生理機能の調節に関わる蛋白がかなり似ていることが期待されるが、かなりの違いもあることが医薬開発の障害となってきた。これらの動物とヒトの間で蛋白や蛋白機能が大きく異なる場合があることがわかってきており、本発明の方法とのリンクによって、ヒトの分子機能ネットワークとの違いを明らかにすることは医薬開発に有用である。さらに、一般にヒト用に開発された医薬を転用することが多い動物薬について、適切な使用を目指す上でも有用である。
医薬開発においてはヒトの疾患と病態が類似した病態動物がある場合、その動物での薬理活性を指標に開発を進めることが多い。そうした病態動物の遺伝子も進められており、本発明の方法によりヒトの遺伝情報と対応づけることによって、ヒトの該疾患のメカニズムの解明に役立つ。
さらに、遺伝子機能の解明の目的で、特定の遺伝子を潰したノックアウト動物や機能の弱い遺伝子に変えたり遺伝子を過剰発現させたりしたトランスジェニック動物を作成することが多くなった。これらは致死的で生まれて来ない場合や生理機能や行動に何の影響も見られない場合も多いが、生まれてきた動物に何らかの異常が観察される場合でも、これらの動物実験の結果の解析は非常に難しいといわれている。このような実験において、本発明の方法を用いて、該遺伝子操作の影響を予測してから、機能解析すると便利である。
遺伝子関連の情報は、解析の進展とともに、配列IDの面からの統合の試みも進みつつあり、さらにゲノム配列上に遺伝子を位置づける試みも進められている。上記「生体分子連鎖データベース」との連携を考慮した独自の遺伝情報データベースを構築して上記の目的に利用することも考えられるが、これらの情報が膨大でかつ公開される方向にあることを考えると、将来はそうした公開の情報を本発明の方法に臨機に取り込むことによって、上記の方法が実施できる可能性が高い(第3図)。
本発明の方法で用いる生体分子連鎖データベースは、必ずしも同一の場所にまとめて管理・保存されている必要はなく、分子略号を統一することにより、異なる場所に管理・保存されている1以上の生体分子連鎖データベースを適宜選択して通信等の手段により接続して用いることもできる。生体分子連鎖データベースのみならず、本発明の方法で用いる生体分子情報データベース、医薬分子連鎖データベース、医薬分子情報データベース、遺伝情報データベースなどについても、同様の扱いが可能なことは言うまでもない。
本発明の実施のさらに別の態様として、生体イベントの発現に直接関わる生体分子と該生体イベントの情報を含むデータベース(生体イベント−生体分子データベース)を作成し、生体イベントの情報を必ずしも含まない分子ネットワークのデータベースと併用する方法も提供される。さらに別の実施の様態として、生体イベントの情報を必ずしも含まない分子ネットワークのベータベースから、任意の分子に関わる部分的な分子ネットワークを抽出し、該ネットワークを構成する分子に基づいて、上記の生体イベント−生体分子データベースを検索する方法も提供される。
本発明の実施のさらに別の態様として、「生体分子情報データベース」・「生体連鎖データベース」・「医薬分子情報データベース」・「医薬分子連鎖データベース」・「生体分子−遺伝子データベース」などの各データ項目に対して、キーワード・数値パラメタ・分子構造・アミノ酸配列・塩基配列などに基づく検索を行ない、該検索結果に基づいて分子機能ネットワークを生成する方法が提供される。以下に、検索に基づく分子機能ネットワーク生成の例を挙げるが、本発明の範囲がこれらの例に限定されるものでないことは言うまでもない。
各データベースには、分子名称・分子略号・生物種・生成臓器・存在臓器等の種々の情報がテキストとして保存されている。これらのテキストに対して文字列の全一致・部分一致などに基づく検索を行なうことで、生体分子・生体分子対・生体イベント・病態イベント・医薬分子・医薬分子−生体分子対・遺伝子−蛋白の対応データなどを絞り込むことができる。これらの絞り込まれた情報に基づいて、コネクト検索の起点・終点を定めたり、コネクト検索で対象とする分子対の範囲を狭めたりすることができ、利用目的に応じた分子機能ネットワークの生成が可能となる。
「医薬分子情報データベース」に医薬分子の化学構造・立体構造が保存されている場合には、これらに対して全体構造の一致・部分構造の一致・構造類似性などに基づく検索を行なうことで、医薬分子を絞り込むことができる。絞り込まれた医薬分子に基づいて、該医薬分子に関連する分子機能ネットワークを生成したり、該医薬分子に関連する生体イベント・病態イベントを検索したりすることが可能となる。
「生体分子情報データベース」に遺伝子転写・蛋白発現等の数値パラメタが保存されている場合には、これらの数値パラメタに基づく検索を行なうことで、遺伝子の転写量・蛋白発現量等に応じた分子機能ネットワークの生成が可能となる。
「生体分子情報データベース」又は関連データベースに蛋白のアミノ酸配列が保存されている場合には、これらのアミノ酸配列に対して配列相同性や部分配列パターンの一致などに基づく検索を行なうことで、生体分子を絞り込むことができ、該生体分子に基づいて分子機能ネットワークを生成することができる。この方法は、機能未知の蛋白質やその部分配列情報について、該蛋白質が関係する可能性が高い分子機能ネットワークを推定し、さらに該蛋白質の機能を推定する目的に有効である。
「生体分子情報データベース」、「生体分子−遺伝子データベース」又は関連データベースに蛋白に対応する遺伝子の塩基配列が保存されている場合には、これらの塩基配列に対して配列相同性や部分配列パターンの一致などに基づく検索を行なうことで、生体分子を絞り込むことができ、該生体分子に基づいて分子機能ネットワークを生成することができる。この方法は、機能未知の遺伝子やその部分配列情報について、該遺伝子から翻訳される蛋白が関係する可能性が高い分子機能ネットワークを推定し、さらに該蛋白の機能を推定する目的に有効である。
本発明の実施のさらに別の態様として、本発明の方法を実施するためのプログラムとデータベースからなるコンピュータシステム;本発明の方法を実施するためのプログラムとデータベースを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体;本発明の方法で用いるためのデータベースを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体;本発明の方法により生成された分子機能ネットワークに関する情報を記録したコンピュータ読み取り可能な媒体;なども提供される。
本発明の方法の特徴をまとめると、以下の通りである。
・生体イベントの情報を含み、直接結合する生体分子対の情報を蓄積することにより、生体内の分子間の関わりのデータベースを作成する。
・パーツの集合である上記データベースからコネクト検索で、任意の生体分子又は生体イベントに関わる分子機能ネットワークを作成する。
・分子機能ネットワークに基づいて、任意の分子が直接間接に関わる生体イベントを推定する。
・生体イベントの情報つき分子機能ネットワークから、疾患メカニズム、可能な創薬ターゲット、副作用リスク等を推定する。
・生体分子の量的又は質的な変動から生体イベントのアップオアダウンを推定する。
・生体分子の生成臓器、存在臓器及び作用臓器の情報をもつ分子機能ネットワーク
・医薬分子情報と分子機能ネットワークを用いた副作用、薬剤間相互作用の推定
・医薬分子の投与による蛋白発現の変化を分子機能ネットワーク上で解釈
・遺伝情報とのリンクによって分子機能ネットワークへの遺伝子多型の影響、疾患背景遺伝子等の解析を行う。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれにより限定されるものではない。
実施例1
レニン−アンジオテンシン系について分子機能ネットワークの生成を試みた例を示す。レニン−アンジオテンシン系は、生体で血圧を調整する主要な機構の一つであり、関与する生体分子の多くが明らかにされている(第4図)。これまでに知られているレニン−アンジオテンシン系に関与する生体分子について、生体分子情報データベース(第5図)と生体分子連鎖データベース(第6図)を作成し、生体分子と生体イベントを質問として与えることにより、分子機能ネットワークの生成を試みた。
第7図に、生体分子の一つである「アンジオテンシンI」と生体イベントの一種である「血圧上昇」を質問として与えて生成された分子機能ネットワークを示す。生体分子連鎖データベースをコネクト検索することにより、「アンジオテンシンI」から「血圧上昇」に至るまでに関係する生体分子と、それらにより作られる分子機能ネットワークが得られる。
さらに、血圧降下作用をもつ医薬分子に関する医薬分子情報データベース(第8図)と医薬分子連鎖データベース(第9図)を作成し、生体分子情報データベース(第5図)と生体分子連鎖データベース(第6図)と併せて用いることにより、医薬分子が関わる分子機能ネットワークの生成を試みた。
第10図に、医薬分子の一つであるエナラプリルと生体イベントの一種である「血圧上昇」を質問として与えて生成された分子機能ネットワークを示す。エナラプリルはそれが直接結合するアンジオテンシン変換酵素に対して阻害剤の関係にあるため、アンジオテンシン変換酵素が直接結合する関係(酵素−基質の関係)であるアンジオテンシンIIへの連鎖が断たれ、それ以降のネットワーク上に存在する「血圧上昇」のイベントが抑止(停止)されることが示される。
実施例2
本発明を分子機能ネットワークの検索及び表示のためのプログラムとして実現した例を示す。第11図に本実施例の検索及び表示の流れ図を示すが、これらの工程は本発明をプログラムとして実現する一つの例を示したものに過ぎず、本発明の範囲はこの例に限定されないことは言うまでもない。
本プログラムは、コネクト検索を行なうために必要となる分子名、サブネット名又は生体イベント名等の名前を得るための検索を行なう1101から1103までのステップと、コネクト検索を行ない、分子機能ネットワークを表示する1104から1108のステップ、及び生成した分子機能ネットワークにさらに処理を行なう付加的なステップ1109及び1110からなる。
利用者はまず、ステップ1101で分子名、分子略号、サブネット名、生体イベント名、病態イベント名、疾患名、アミノ酸配列、核酸塩基配列、外部データベースID、医薬分子構造などに関する検索方法を指定し、質問文字列を入力する。検索方法としては、上記の項目に対して個別に検索を行なう方法や、複数の項目に対して共通の質問文字列で検索を行なう方法などから、利用者が選ぶことができる。質問文字列は、データベース中のデータ項目に完全に一致する文字列でなくてもよく、名前の一部分を表わす文字列やいわゆるワイルドカード文字などを含むものであってもよい。検索項目として蛋白質のアミノ酸配列又は核酸塩基配列を指定した場合には、利用者は質問文字列としてアミノ酸配列又は塩基配列を一文字コード(例:アラニン=A、グリシン=G、グアニン=g、シトシン=cなど)で表わした文字列を入力する。検索項目として医薬分子構造を指定した場合には、利用者はMOLFILEなどの形式で質問分子構造を表現したデータを入力する。
利用者が入力した検索項目に対して、プログラムはステップ1102で生体分子情報データベース、生体分子連鎖データベース及び関連するデータベースのデータ項目に対してキーワード検索、分子構造検索、配列検索などの方法により検索を行なう。キーワード検索では、文字列の完全な一致のみならず、文字列の部分的な一致やワイルドカードによる複数文字列への一致を許容してもよい。ステップ1101で検索項目としてアミノ酸配列又は塩基配列が指定された場合には、プログラムは生体分子情報データベース又は関連する配列データベース中のアミノ酸配列・塩基配列に対して、質問文字列(配列)の一致度や相同性による検索を行ない、一致度や相同性が高い配列のID又は対応する分子名を検索結果として与える。質問項目として医薬分子構造が指定された場合には、プログラムは部分構造マッチングの方法により部分構造が一致又は類似する医薬分子を検索し、該当する医薬分子名を検索結果として与える。
ステップ1102の検索で得られたヒット項目は、ステップ1103でリストとして表示される。プログラムは、リスト表示中の各ヒット項目を、それが分子名、サブネット名、生体イベント名のいずれに該当するかを、リスト中の表示位置を区分する方法や、アイコンを付加する方法などにより区別して表示する。
次に、利用者はステップ1104でコネクト検索の方法と検索の端点となる分子名、サブネット名又は生体イベント名(病態イベントも含む)を指定する。本実施例では、コネクト検索の方法として、1点を指定してその周辺につながるネットワークを検索する方法と、2点を指定してその間をつなぐネットワークを検索する方法が提供される。これらの2通りの検索方法で必要となる入力項目を、それぞれ第12図、第13図に示す。利用者は、ステップ1103で表示されたリストから適切な項目を選択することにより、分子名、サブネット名又は生体イベント名を入力する。該リスト中に適切な項目が存在しない場合には、利用者はステップ1101の検索項目の入力に戻って、適切な項目が見つかるまでステップ1101からステップ1103の検索工程を繰り返すことができる。
ステップ1105で、利用者はコネクト検索の制限条件を入力する。制限条件としては、生成される分子機能ネットワーク中に含まれる分子数の上限や、2点間の検索の場合には該2点間に介在する関連付けの数(パス数)の上限などが指定可能である。ステップ1106で、利用者は検索の結果得られる分子機能ネットワークの表示方法を指定する。表示方法としては、例えばネットワークを構成する全分子を明示的に表示する方法(分子ネットワーク表示)や、サブネットに属する分子をまとめて一つの節点として表示する方法(サブネット表示)、などの複数の方法から利用者が選ぶことができる。
ステップ1104からステップ1105で指定された条件に従って、プログラムはステップ1107で生体分子連鎖データベースに対してコネクト検索を行なう。検索の結果得られる分子機能ネットワークは、利用者がステップ1106で与えた表示方法の指定に従って、ステップ1108により分子、サブネット又は生体イベントを節点として持つグラフとして表示される。
利用者は、ステップ1108で表示された分子機能ネットワークを視覚的に検討し、必要に応じてステップ1104に戻ってコネクト検索の条件を変更して検索を繰り返したり、ステップ1101に戻って分子名、サブネット名又は生体イベント名の検索を繰り返したりすることもできる。
さらに、本プログラムでは付加的なステップ1109又はステップ1110により、生成された分子機能ネットワークに対してさらに処理を行なうことができる。ステップ1109では、利用者は複数の分子機能ネットワーク間の論理演算を行なうことができる。ステップ1109を実行するためには、ステップ1108までの工程を複数回実行して複数の分子機能ネットワークを生成しておく必要がある。これらの複数の分子機能ネットワークに対して、プログラムはネットワーク間で共通な部分(AND演算)や共通でない部分(XOR演算)を求めたり、複数のネットワークの和集合(OR演算)を求めたりすることができる。この機能は、異なる生物種や臓器などの間での分子機能ネットワークの違いを調べる目的などに有用である。
ステップ1110では、利用者は生成した分子機能ネットワークについて、さらに絞り込み検索を行なって、該分子機能ネットワーク中の分子や部分ネットワークを強調表示したり抽出表示したりすることができる。この絞り込み検索では、ステップ1101〜1103で用いる検索方法のいずれも利用することができる。ステップ1110により、例えば特定の臓器で発現する生体分子を分子機能ネットワーク中で強調表示したり、広範囲な分子機能ネットワークから指定したサブネットに属するものだけを抽出表示したりすることが可能となる。
生体イベントを含む生体分子対の情報の集合である本発明の生体分子連鎖データベースは、検索によって必要な範囲の機能上生合成上の該分子間のつながりである分子機能ネットワークを生成し、任意の生体分子が発現に直接又は間接に関わる生体イベントを推定するのに有用であり、さらに医薬分子の情報又は遺伝情報とリンクすることにより、新薬開発や個体差に基づく医療に必要な知識を得ることができる。
第1図は、本発明の方法の基本的な概念を表わす図である。 第2図は、本発明の方法で医薬分子連鎖データベースを用いる場合の概念を表わす図である。 第3図は、本発明の方法で遺伝情報データベースを用いる場合の概念を表わす図である。 第4図は、実施例1で対象としたレニン−アンジオテンシン系の概念を示す図である。 第5図は、実施例1の生体分子情報データベースの内容を示す図である。 第6図は、実施例1の生体分子連鎖データベースの内容を示す図である。 第7図は、実施例1の生体分子に関する検索で得られた分子機能ネットワークを示す図である。質問に用いた生体分子と生体イベントを太枠で示す。 第8図は、実施例1の医薬分子情報データベースの内容を示す図である。 第9図は、実施例1の医薬分子連鎖データベースの内容を示す図である。 第10図は、実施例1の医薬分子に関する検索で得られた分子機能ネットワークを示す図である。質問に用いた医薬分子と生体イベントを太枠で示す。 第11図は、実施例2の分子機能ネットワークの検索・表示プログラムの流れ図である。 第12図は、実施例2のコネクト検索(1点指定)の入力項目を示す図である。 第13図は、実施例2のコネクト検索(2点指定)の入力項目を示す図である。

Claims (6)

  1. 生体分子の量的又は質的な変動の情報を解析する方法であって、
    量的又は質的な変動が認められた複数の生体分子のうち少なくとも2以上の生体分子を含む1又は2以上の分子ネットワーク情報をコンピュータが生成する工程と、
    コンピュータが、量的又は質的な変動が認められた2以上の生体分子を含む1又は2以上の分子ネットワークを表示する工程と、
    コンピュータが、前記分子ネットワーク又は該分子ネットワークに含まれる生体分子若しくは生体分子対に関係付けられた生体イベント情報を検索し、表示する工程と、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記生体イベント情報が、前記生体イベントの引き金となる生体分子の量的又は質的な変動に対応した生体イベントの亢進・上昇又は低下・減少の情報を示す生体イベントのアップオアダウンの情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記分子ネットワークに含まれる生体分子対の作用方向を示す情報を前記分子ネットワークとともに表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 2以上の分子ネットワークに含まれる共通の生体分子の情報に基づいて1の分子ネットワークを生成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法を実施するためのプログラム。
  6. 請求項5に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
JP2007002958A 2000-09-12 2007-01-11 医薬分子の副作用の推定方法及び創薬ターゲットの推定方法 Expired - Fee Related JP4305878B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007002958A JP4305878B2 (ja) 2000-09-12 2007-01-11 医薬分子の副作用の推定方法及び創薬ターゲットの推定方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000276699 2000-09-12
JP2007002958A JP4305878B2 (ja) 2000-09-12 2007-01-11 医薬分子の副作用の推定方法及び創薬ターゲットの推定方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002527974A Division JPWO2002023395A1 (ja) 2000-09-12 2001-09-10 分子機能ネットワークの生成方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007200315A JP2007200315A (ja) 2007-08-09
JP4305878B2 true JP4305878B2 (ja) 2009-07-29

Family

ID=38454808

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007002958A Expired - Fee Related JP4305878B2 (ja) 2000-09-12 2007-01-11 医薬分子の副作用の推定方法及び創薬ターゲットの推定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4305878B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011055820A1 (ja) * 2009-11-09 2011-05-12 大日本住友製薬株式会社 支援装置、支援方法、及びコンピュータプログラム
CN102663214B (zh) * 2012-05-09 2013-11-06 四川大学 一种集成药物靶标预测系统的构建和预测方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007200315A (ja) 2007-08-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPWO2002023395A1 (ja) 分子機能ネットワークの生成方法
Androulakis et al. Analysis of time-series gene expression data: methods, challenges, and opportunities
JP2012027939A (ja) 分子機能ネットワークの生成方法
Reynolds et al. Interpretation of psychiatric genome-wide association studies with multispecies heterogeneous functional genomic data integration
CN113012770A (zh) 基于多模态深度神经网络的药物-药物相互作用事件预测方法、系统、终端及可读存储介质
Bajikar et al. Multiscale models of cell signaling
Titeca et al. SFINX: Straightforward filtering index for affinity purification–mass spectrometry data analysis
Milos Helicos biosciences
JP4305878B2 (ja) 医薬分子の副作用の推定方法及び創薬ターゲットの推定方法
Lee et al. Building a drug–target network and its applications
WO2009042754A1 (en) Software assisted methods for probing the biochemical basis of biological states
JP2022099245A (ja) 創薬標的タンパク質の予測方法、創薬標的タンパク質の予測システム
Prigozhin et al. Majority of the highly variable NLRs in maize share genomic location and contain additional target-binding domains
Topalis et al. SHORT NOTE: AnoBase: a genetic and biological database of anophelines
Liang et al. GoSynthetic database tool to analyse natural and engineered molecular processes
Cappelli Big biomedical data modeling for knowledge extraction with machine learning techniques
Chen et al. Bioinformatic Insights on Molecular Chemistry
Yu et al. Molecular Circuit Discovery for Mechanobiology of Cardiovascular Disease
Murty et al. Bioinformatics with solutions in pest management science: An insight into the evolving technologies
Beacon et al. Introduction: Genome Biology
JPWO2004088564A1 (ja) 分子機能ネットワークの表示方法
Chang JianCheng et al. Transcriptome analysis in the beet webworm, Spoladea recurvalis (Lepidoptera: Crambidae).
Amin Pathway-express: A bioinformatics tool for pathway level analysis using gene expression data
Weaver Science: gene expression analysis
Brisson et al. KTA: a framework for integrating expert knowledge and experiment memory in transcriptome analysis

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080910

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081202

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090202

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090302

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090324

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090423

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120515

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120515

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120515

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120515

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130515

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130515

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R370 Written measure of declining of transfer procedure

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R370

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees