JP4303278B2 - パッシブ方式の無線タグ及び無線タグシステム - Google Patents

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Description

本発明は、電池を搭載しないパッシブ方式の無線タグ及びこの無線タグを用いたシステムに関する。
図5は従来のアクティブ無線タグシステムの概略構成図である。図6は従来のパッシブ無線タグシステムの概略構成図である。
従来の無線タグ1には電池2が設けられており、この電池2の電源によってID送信部3が起動してID信号を送信アンテナ4(磁界ループアンテナ)から発射させる。このID信号を受信アンテナ5で受信(磁界ループアンテナ)し、無線タグリーダ6によって読み込まれて、受信アンテナ5からID応答信号が発射されていた。
すなわち、パッシブ無線タグシステムは、無線タグリーダー・ライター12からパッシブ無線タグ10に向かって電力供給用に電波を送信し、パッシブ無線タグ10はこの電波を受信して直流電力に変換し、これを電源としてIDをリーダライター12に向けて送信する。
つまり、アクティブ無線タグ方式は無線タグ内部に電池を内蔵しており、無線タグから無線タグリーダに向かい、一方向へ電波によりID信号を送信する方式であり、少ない送信出力でも、検知距離を長くとれる利点がある。
具体的には微弱電波(電波法執行規則第6上で規定しているとおり、3mの距離で500μV以下、アンテナ利得0dBiと仮定した場合の送信出力値で−43dBm程度)でも通常10m程度の検知距離を実現できる。
また、一方で電池が消耗するので定期的に電池交換が必要である欠点がある。
図6のパッシブ無線タグシステムは、無線タグリーダー・ライター12によって送受信アンテナ11(ループアンテナ)を駆動して電力供給送信波を送信し、パッシブ無線タグ10の送受信アンテナ(ループアンテナ)で受けて、この受信信号を電力源受信部14が電源とし、この電源でID送信部15がID応答信号を送受信アンテナ13によって発射させる。つまり、パッシブ無線タグシステムは、電池は搭載していないので小型薄型であり、かつ電池交換を必要としない。
パッシブ無線タグ方式は、無線タグ内部に電池を内蔵しておらず、無線タグリーダーライターから無線タグへエネルギーを供給する方式であるので、無線タグリーダー・ライターは大きな出力を必要とするにもかかわらず、検知距離が短いという欠点がある。
具体的には、特定小電力方式(約−10dBm出力)で約数10cm程度、構内無線局方式(約1W出力)でも最大数メートルの検知距離が限界となっている。
一方、アクティブ方式は無線タグ内部に電池を内蔵しており、無線タグから無線タグリーダへ向かい一方向へ電波によりID信号を送信する方式であるので、無線タグ自身がエネルギー源を内部に持っているため、エネルギー効率が高い。
そのため、微弱電波出力でも比較的長い検知距離を確保できる。しかし、最大でも10m程度が限界となっている。
これを、更にのばそうとすると、無線タグからの送信出力を上げる必要があり、そのサイズ内に電池が収まらない等の問題がある。
また、特開2004−85277号公報(特許文献1)のように前述の無線タグを衣類に取付て検知装置がアンテナ部で無線タグからの電波を受けて衣類が濡れてきたことを検知するものもある。このアンテナ部は、送信用コイルと受信用コイルとを有している。
特開2004−85277号公報
一般に、無線タグリーダーライターの送信出力は電波法の規制で制限されている。
現在日本で使用できる無線タグは概略して下記の4種類がある。
(1)124KHz、135KHz帯
(2)13.56MHz帯(波長約13m)
(3)900MHz帯(950MHz帯)
(4)2.45GHz帯
(5)300MHz帯(微弱電波)
この内(1)と(2)とは、パッシブ方式で10cm程度であり、アクティブ方式でも数10cm程度の検知距離が一般的となっている。従って、タグを数m以上の離れた距離から検知することは不可能である。
一方、数m〜数十m以上の遠距離で検索を行う場合には(3)、(4)、(5)が適している。
このうち(3)は現時点ではもっぱらパッシブ方式の規格整備が進められており、数m程度検知距離が確保できるので、パッシブ方式においては最も検知距離が長くとれるものである。
しかし、リーダ・ライターは1W程度の大出力が必要で電波法的には構内小電力無線局方式に該当する。このため、製造者のみならず、利用者も電波法第4条の規定により、監督官庁への使用手続きが必要となる。
また、(4)はパッシブ方式で1m程度、アクティブ方式でも数m程度の検知距離である。
しかしながら、電波伝搬特性上、直進性が強いため、物陰等の検知が不可能となり、導電体である水分を含有する人体などの電波吸収の影響も受ける欠点がある。
最後に(5)はもっぱらアクティブ方式が一般的で、検知距離は最も長く、方法によっては10m以上も可能である。しかも微弱電波(電波法施行規則第6条の規定以下の電界強度の電波)により実現可能であるため、法規制(電波法第4条)を受けないばかりか、人体への影響などを一切考慮する必要がなく、使いかってに優れている。
これらを総合的に考慮すると、検知距離数mを確保して、しかも電池を使用せず、電池交換の保守を不要とし、且つ、微弱電波を使用することができる方式が存在しない、空白の領域であることが分かる。
例えば、電波利用が制限されている医療現場などで、数10cm〜数mの距離から患者に装着した無線タグを検知するニーズがある。一例として、徘徊患者の監視や、移動する入院患者の自動識別などがある。徘徊患者が病院内を歩いていても外科、内科等の担当医は、徘徊患者かどうかは分からない。つまり、徘徊患者を見かけたとしても、その患者を担当している医師や看護士でなければ分からない。
このような徘徊患者に対して、(5)の300MHz微弱電波のアクティブタグを使用すると実現は可能であるが、患者へ装置したタグ内部の電池残量を常に確認しておく必要があり、消耗に応じて定期的に電池の交換、保守を行わなければならず、使いかってが非常に悪いという問題点がある。
この電池交換の問題を解決するたには、タグに電池を搭載しないパッシブ方式を採用すればよい。
そこで、(1)〜(4)によるパッシブ方式を考えた場合、検知距離数mを実現できるものは(3)の950MHzパッシング方式のみとなる。
しかし、(3)の方式は無線タグシステムでは最も出力の大きい約1W出力の構内小電力無線局に該当するものである。
このため、行政当局への手続きが必要であり、病院内などで使用するには、電波出力が大きいため、医療機器等への影響を十分配慮する必要がある。
従って、設置場所などに制限があり、都度現場での調査と個別考慮が必要となるという問題点があった。
今、仮に検知距離の条件を緩めて1m程度まで短縮することを許容したとする。この場合は(4)の2.45GHzパッシング方式でも理論的には実現可能である。
しかし、2.45GHzはISM帯に属する周波数であるため、医療現場での医療機器と全く同一周波数であり、医療機器システムに影響するという問題点がある。
しかも、電波伝搬上の性質から直線性が強いため、物陰や人影になる位置にあるタグの検知は不可能であるという問題点があった。
加えて、水分による吸収減衰が大きいため、液体状の薬剤などに電波が吸収減衰される問題もある。
さらに、法律的にも出力は10mW程度の特定小電力無線局に該当するため、製造者は電波法第4条の規定により、管轄官庁への手続きが必要となる。
本発明は、検知距離数m(遠方から移動する人や物を検知できる)、微弱電波使用(法的な利用手続きが不要で、人体、医療機器への影響無し)でパッシブ方式(電池交換不要)の無線タグを得ることを目的とする。
本発明のパッシブ方式の無線タグは、受信アンテナ部で受信電波を受信し、無線タグのID信号を生成するID送信部を有して300MHz帯の電波で送信アンテナ部から送信するパッシブ方式の無線タグにおいて、
前記受信アンテナ部のリンクコイルに低インピーダンスで整合され、該リンクコイルが取り出した信号を取り出すインピーダンス変換整合部と、前記インピーダンス変換整合部で取り出された信号を蓄積するタンク回路と、前記タンク回路からの高周波数エネルギーを整流して平滑し、この平滑された直流電力を前記ID送信部の電源端子に供給する整流・平滑回路とを備えたことを要旨とする。
また、本発明の無線タグシステムは、300MHz帯の無線タグリーダ・ライターとパッシブ方式の無線タグとからなり、前記無線タグリーダ・ライターからの前記無線タグのID及び前記無線タグリーダ・ライターのIDを含むデータを通信ネットワークを介して受信する監視センターのサーバとを備えた無線タグシステムである。
前記無線タグリーダ・ライターは、
前記無線タグの電源となる信号を生成して出力する電力送信部と、
前記電力送信部からの信号を電波にして送信する第1の送信アンテナ部と、
前記第1の送信アンテナ部より高効率な前記無線タグからの電波を受信する第1の受信アンテナ部と、
前記第1の受信アンテナ部が受信した前記無線タグのID信号を解読し、該ID信号に前記無線タグリーダ・ライターのIDを付加して前記サーバに送信する無線タグリーダとを備える。
前記無線タグは、
前記無線タグリーダ・ライターの第1の送信アンテナ部に対して、高効率にされ該第1の送信アンテナ部からの電波を受信する第2の受信アンテナ部と、前記第2の受信アンテナ部のリンクコイルに低インピーダンスで整合され、該リンクコイルが取り出した信号を取り出すインピーダンス変換整合部と、前記インピーダンス変換整合部で取り出された信号を蓄積するタンク回路と、前記タンク回路からの電力を整流して平滑する整流・平滑回路と、前記整流・平滑回路で平滑された直流電力を電源とし、該電源によって当該無線タグのID信号を生成して出力するID送信部と、前記第2の受信アンテナ部より、磁界ループアンテナが小型にされ、前記ID送信部からのID信号を300MHz帯の電波にして送信する第2の送信アンテナ部とを備えたことを要旨とする。
以上のように本発明の無線タグは、微弱電波を使用するので、電波法第4条に基づく監督官庁への電波利用に関する手続きが一切不要であり、時間、コスト、利便性が極めて優れている。また、300MHz微弱電波方式を採用していることから、他の周波数帯を使用したタグに電池を搭載しないパッシブ方式に比べて検知距離を長くできる最大の長所がある。
さらに、微弱電波は極めて電界強度が低いので、人体、精密電子機器に影響がない。また、設置場所、使用方法などの制限がなく、電波を使用しているということを殆ど意識しないで、あらゆる環境へ適用可能なシステム構築ができる。
特に、電波利用上の制限が厳しい病院、介護施設などへの電磁界暴露安全上の規制を受けずにに導入できる。
しかも、無線タグ内部に電池を搭載していないため、システム稼働中に電池の消耗加減を管理する必要がなく、定期的に面倒な電池交換も一切必要である。
このため、電池が消耗することによって無線タグの読み取り率が低下してシステムの信頼性が低下することも皆無となる。
さらに、本発明の無線タグシステムは、300MHz帯の微弱電波であるため、その波電に対するアンテナサイズから高効率化が計れて、しかも電波伝搬特性も、LHF帯の長所を生かせるため、より離れた距離からの検知が可能なので従来のパッシブ方式では適用できなかった応用への適用が可能となり、可用性が飛躍的に向上する。微弱電波は極めて電界強度が低いので、人体、精密電子機器に影響がない。また、設置場所、使用方法などの制限がなく、電波を使用しているということを殆ど意識しないで、あらゆる環境へ適用可能なシステム構築ができる。
特に、電波利用上の制限が厳しい病院、介護施設などへの電磁界暴露安全上の規制を受けずにに導入できる。
<実施の形態1>
図1は本実施の形態の無線タグの概略構成図である。本実施の形態は電池を搭載しないパッシブ方式を採用する。使用する周波数帯は微弱電波の法規制値(電波施行規則第6条)で500μV/m以下を許容している320MHz以下の300MHz帯を使用する。
本実施の形態は、電波出力は微弱電波の規制内として人体や医療機器への影響の問題を解決するものであり、検知距離を1m以上を実現するため、送信アンテナ部と、受信アンテナ部とを別構造とし、受信アンテナ部の効率は、送信アンテナ部よりも高いタイプを採用することにより、微弱電波の規正値内でより検知距離を長くできるようにする。
図1に示すように、本実施の形態の無線タグ20は、受信アンテナ部21と、インピーダンス変換整合部22と、High−Q共振回路23と、両波整流回路24と、インピーダンス調整部25と、平滑回路26と、ID送信部27と、送信アンテナ部28を備えている。
受信アンテナ部21は、小型でありながら効率が高く、しかも周辺物体の電磁的影響を受けがたい磁界ループコイル21aとコンデンサ21b(3PF〜5PF)とリンクコイル21cとを備えている。リンクコイル21cと磁界ループコイル21aとは非接触となるようにガラスエポキシ等で固着されている。
また、磁界ループコイル21aの長さは、
(λ/0.3)>磁界ループコイル21aの円周長
としている。
この磁界ループコイル21aとコンデンサ21bによって300MHz帯のパッシブ方式を実現している。
また、リンクコイル21cの両端は、インピーダンス変換整合部22に接続されている。インピーダンス変換整合部22は、磁界ループコイル21a(以下単にリンクコイルという)の円周長/10程度の巻き数のリンクコイル21cを接続(リンクコイル21cとリンクコイル22aとの間には出力抵抗を設けてもよい:必要に応じて)することで、出力抵抗が50Ωになるような給電方式にしている。このインピーダンス変換整合部22を設けるのは、一般的なパッシブ無線タグ方式であると、従来はアンテナ部と回路部のインピーダンス整合が不十分で、アンテナ側から回路側へ効率良くエネルギーを伝送されなかった。これを解消するために、アンテナと共振回路の間にはインピーダンス整合部を設けた。
また、リンクコイル22aはHigh−Q共振回路23の共振コイル23aと電気的に結合させるリンクコイルである。
つまり、インピーダンス変換整合部22によって受信アンテナ部21で得られた最大エネルギーを低いインピーダンスで取り出している。
High−Q共振回路23は、共振コイル23aとコンデンサ23b(3PF〜5PF)等を備えた共振回路(300MHz帯)を構成して、より高い出力電圧を得るようにしている。
High−Q共振回路23は両波整流回路24(D1、D2、D3、D4)に接続されている。
両波整流回路24は、インピーダンス調整部25(インピーダンスをステップダウンさせるためのもの)に接続され、インピーダンス調整部25は平滑回路26(抵抗26a、コンデンサ26b)に接続されている。
また、平滑回路26はID送信部27に接続されている。ID送信部27は送信アンテナ部28の磁界ループアンテナ28a(受信アンテナ部21のループコイルより円周が短い)とコンデンサ28b(3PF〜5PF)を有して、300MHz帯の電波を発射する。
なお、前述の送信アンテナ部と受信アンテナ部とは、一つの筐体(プラスチックケース)に重ねられて内蔵されている。また、インピーダンス変換整合部22、High−Q共振回路23、両波整流回路24、インピーダンス調整部24、ID送信部27も一つの筐体内に納められている。
上記のように構成された無線タグ20について以下に動作を説明する。本実施の形態では無線タグへ電源を供給するためにライター側から送信する電波については途切れることなく常時送信とする。
リーダ・ライター(図示せず)からの電波(300MHz帯)は、受信アンテナ部21のループアンテナ21aによって受信され、リンクコイル21cによって、受信電力が取り出されてインピーダンス変換整合部22に給電される。
このインピーダンス変換整合部22を介しての受信電力がリンクコイル22aによって、High−Q共振回路23に伝わり、高周波成分が高いQ値によって共振されて効率良く受信電力が回路内に蓄えられる。
次に、High−Q共振回路23内に蓄積した高周波数エネルギーが両波整流回路24によって直流成分に整流される。この両波整流回路24で得た直流成分の電圧が低いときは倍電圧整流を用いてもよい。
次に、両波整流回路24のの直流成分はインピーダンス調整部25(非常に低いインピーダンス:50Ω)によってインピーダンスが調整されて、平滑回路26によって平滑されてID送信部27のVcc端子に適切な電圧と電流値となった直流電力(電源)が得られる。
この直流電力によって、ID送信部27が起動して、無線タグ20のID信号を送信アンテナ部28に出力する。
送信アンテナ部28は、コンデンサ28b、ループコイル28aによって300MHz帯の電波を発射する。
すなわち、本実施の形態は、各段ともにより高効率なエネルギーが得られる回路方式を、段間毎に最適なインピーダンス整合を取ることによって高い効率でエネルギー伝送ができるようにしている。
このような高効率なパッシブタグを構成して微弱電波を使用してリーダ・ライターと無線タグ間を空間伝搬させた場合の信号レベルダイヤグラムを検討した結果を図2に示す。
実験に使用した無線タグ信号受信部(受信アンテナ部)の最小受信電力感度は−138dBmであったので、図2に示すように、300MHz帯微弱電波で送信・受信アンテナを共通の0dB利得の同一で実現すると、リーダ・ライターと無線タグ間の距離2mの場合、受信レベルは−152dBmとなってしまい実現不可能となる。
さらに、リーダ・ライター側だけ、受信アンテナのみ6dBの利得がある。実用的な大きさで比較的高利得なアンテナ(例えば3素子八木アンテナや、2素子ループアンテナ等)としても、受信信号レベルは−146dBm程度までしか上昇しない。
そこで、リーダ・ライター及び無線タグ側いずれでも、受信アンテナ側だけ送信アンテナよりも高効率なものを使用すると−138dBm以上の信号レベルが得られる、システムを実現することができる。
この場合、タグ側は小型化を必要としないため、送信アンテナ効率は−10dBで受信側のみ0dB(例えば小型磁界ループアンテナ)としている。
本実施の形態1は、受信アンテナ部21を高利得にしているので、無線タグリーダ・ライターに対して無線タグ20が遠方にあって受信電波が弱い場合でも高利得な受信アンテナ部21によって受信可能となる。また、送信アンテナ部28のループコイル28aの円周長を受信アンテナ部21のループアンテナより短くしている。
従って、本実施の形態の無線タグ20は、微弱電波を使用するので、電波法第4条に基づく監督官庁への電波利用に関する手続きが一切不要であり、時間、コスト、利便性が極めて優れている。また、300MHz微弱電波方式を採用していることから、他の周波数帯を使用したタグに電池を搭載しないパッシブ方式に比べて検知距離を長くできる最大の長所がある。
さらに、微弱電波は極めて電界強度が低いので、人体、精密電子機器に影響がない。また、設置場所、使用方法などの制限がなく、電波を使用しているということを殆ど意識しないで、あらゆる環境へ適用可能なシステム構築ができる。
特に、電波利用上の制限が厳しい病院、介護施設などへの電磁界暴露安全上の規制を受けずにに導入できる。
しかも、無線タグ内部に電池を搭載していないため、システム稼働中に電池の消耗加減を管理する必要がなく、定期的に面倒な電池交換も一切必要である。
このため、電池が消耗することによって無線タグの読み取り率が低下してシステムの信頼性が低下することも皆無となる。
なお、無線タグリーダ・ライターからの電波の周波数と、無線タグ20からの電波の周波数とが同じ場合には、無線タグ20の受信アンテナ部21を300MHz、送信アンテナ部28からの電波の周波数を303MHzと異ならせて、混信を防止できるようにしてもよい。
<実施の形態2>
実施の形態2は300MHz帯のパッシブタグ方式を採用し、タグに電池を搭載しないで、電波出力は微弱電波の規制内として人体や医療機器への影響を考慮したシステムである。本実施の形態では病院内で本システムを適用した場合を説明する。
図3は実施の形態2の無線タグシステムの概略構成図である。
図3に示すように、実施の形態2は無線タグリーダ・ライター31を病院以内の廊下、ドア、玄関、部屋に設け、これらの無線タグリーダ・ライター31とシステムサーバ38と通信ネットワーク37を介して接続している。また、患者には実施の形態1と同様な無線タグ20を備えさせる。無線タグ20の構成は実施の形態1と同様であるから説明を省略する。
無線タグリーダ・ライター31は、電力源送信部32と送信アンテナ33と無線タグリーダ35と受信アンテナ部34とを備えている。電力源送信部32は300MHz帯の信号を送信アンテナ部33に送出する。この送出タイミングは、後述する無線タグ20の送信アンテナ部からの電波の送出タイミングとずらしている。
送信アンテナ部33のループコイルは、円周5cm程度のものを用いる(−10dBi)。そして、ループコイルには、コンデンサを接続し、301MHz程度の電波を発射可能としている。
また、受信アンテナ部34は、送信アンテナ部33より大きなループコイルを備え(円周長が30cm程度)。
無線タグリーダ35は、受信アンテナ部34が受信した信号を解読して、通信ネットワーク37を介して監視センターのシステムサーバ38に送信する。
すなわち、本実施の形態2は、送信側(無線タグリーダ・ライター)の送信アンテナ部33のループアンテナの円周を小さくし、受信側(患者側の無線タグ)の受信アンテナ部21のループアンテナの円周を大きくすることで、送信側の電波が微弱であっても受信可能としている。これらは、筐体(プラスチックケース)に内蔵されている。
そして、無線タグ20は、実施の形態1と同様に、受信アンテナ部21と、インピーダンス変換整合部22と、High−Q共振回路23と、両波整流回路24と、インピーダンス調整部25と、平滑回路26と、ID送信部27と、送信アンテナ部28を備えているので、受信部アンテナ部21によって受信された電波のエネルギーがインピーダンス変換整合部22を介してHigh−共振回路23に蓄えられ、両波整流回路24によって整流させて、平滑回路26で整流された直流電力がID送信部27の電源となる。
ID送信部27は、この電源によって起動してID信号を送信アンテナ部28に送出する。送信アンテナ部28は、例えば送信側の周波数と若干異ならせている。例えば、303MHz〜315MHzの電波を発射する。
この電波が無線タグリーダ・ライター31の受信アンテナ部34に受信されて、無線タグリーダ35によってIDコードが解読されてサーバ38に送出される。
これによって、監視センター側では、無線タグリーダ・ライターの病院内位置(ドア、廊下番号、・・)と無線タグリーダ・ライターの番号とを対応させていた場合は、患者がどこを現在通過しているかが把握できることになる。
実施の形態2の効果を更に説明する。
実施の形態2はライターから無線タグへエネルギーを送る周波数と、無線タグからリーダへID信号を返す周波数が同じ場合には、混信となってしまうので、時分割でエネルギー供給とID返信を交互に行う必要がある。つまり、エネルギーを途切れ途切れに供給する結果となる。
そこで、本実施の形態2で用いる無線タグリーダ・ライターは送信アンテナ部33の周波数と受信アンテナ部34の2つの周波数を異なるようにして、かつ無線タグ20から無線タグリーダ・ライター側へIDの応答を返す電波の周波数を異ならせる双方向二重方式を用いることで混信を防止している。
また、送信アンテナ部33から常時無線タグ20へ電源エネルギー(電波)を供給し続けるようにしてエネルギー効率を上げている。
さらに、無線タグリーダ・ライター31の送信用、受信用アンテナを分離して受信アンテナ部34の利得を送信アンテナ部33の利得よりも大きくしている。送信アンテナ部33の利得が高いと電波法の微弱電波の規正値をオーバーしてしまう。
このため、受信アンテナ部33だけ利得を高くして無線タグ20がより遠方にあって受信電波が弱い場合でも高利得な受信アンテナ部34によって受信可能となるようにしている。
これと、同じ理由で必要に応じて無線タグ20側も送受信のアンテナを分離して受信側だけアンテナ利得をあげれば、同様の効果が相乗される。
従って、本実施の形態の無線タグシステムは、微弱電波を使用しているため、電波法第4条に基づく監督官庁ねの電波利用に関する手続きが一切不要であり、時間、コスト、利便性が極めて優れている。
さらに、微弱電波は極めて電界強度が低いので、人体、精密電子機器に影響がない。また、設置場所、使用方法などの制限がなく、電波を使用しているということを殆ど意識しないで、あらゆる環境へ適用可能なシステム構築ができる。
特に、電波利用上の制限が厳しい病院、介護施設などへの電磁界暴露安全上の規制を受けずにに導入できる。
以上のように本システムは、電波行政手続き不要で、製造、販売、使用できるため、広く誰でも無線タグシステムを利用可能となる。
さらに、電磁界暴露の規制を意識せず、設置場所を選ばず、しかも人体、精密電子機器など電波に対してデリケートな対象に対しても装着できるため、どこでも取付使用できる。
しかも、300MHz帯微弱電波であるため、検知距離を通常のパッシブタグよりも長くできるため、より離れた距離からの検知が可能なので従来のパッシブ方式では適用できなかった応用への適用が可能となり、可用性が飛躍的に向上する。
次に、受信アンテナ部、送信アンテナ部について図4及び下記の式を用いて説明を補充する。
このような、300MHz帯のアンテナが建物の中等で最適な性能を発揮するには、最適な設計パラメータを規定する必要がある。
以下に設計パラメータ(コンデンサの容量、ループコイル長、幅等を含む)について説明する。
まず、以下にアンテナから輻射される電磁波の発信源からの距離と電磁波の強度の関係について示す。
ある空間の原点にある長さ1の電気ダイポールから距離rだけ離れた場所Pにおける電荷量をq(t)(tは時刻)とすると、電荷量の変化の割合が電流であるので、
Figure 0004303278
と微分の形で書き表すことができる。
原点にz軸方向を向いた微小ダイポールがあったとき、図4に示す点Pにおける微小ダイポールの電界E(t)および磁界H(t)を電荷量の変化q(t)で表現すると、
Figure 0004303278
Figure 0004303278
となる。これらの式は極座標に基づいて表記されており、er、eθ、eΦは各々e方向、θ方向、Φ方向単位ベクトルである。またcは空間中の電磁波の伝搬速度である。
これらの式でr−3に比例する項は静電磁場を作り出す項で、電気ダイポールの場合電界のにみ存在する。
r−2の項は誘導電磁場を発生させる項である。r−1項は放射界を作り出す項である。充分遠方であれば静電項、誘導項は放射項と比べてはるかに小さくなる。ゆえにダイポールから充分離れた場所における電界・磁界(遠方界という)は
Figure 0004303278
Figure 0004303278
となる。方向単位ベクトルは直交しているので、遠方界では電界と磁界は直交し、波の進行方向に電界・磁界の成分がない。
周波数領域表示では遠方界電界・磁界の成分は
Figure 0004303278
Figure 0004303278
となる。
ここで、遠方電界と磁界の比ξを波動インピーダンスといい、以下の式で表される。
Figure 0004303278
〔数6〕、〔数7〕より、近傍界領域では波原との距離rが短くなるほど波動インピーダンスξが大きくなることから、近傍界領域(フレネル領域)では電磁界のうち磁界成分が強く、遠方界領域(フラウンフォーファー領域)で電界成分が強くなって行くと言える。
以上より、アンテナ近傍の磁界成分だけを検知する為には、アンテナ自体を電流モードで動作させ、アンテナ導線(ループコイル)への大きな電流を生じさせ、その電流から磁界成分がまず、空間に輻射されるようにアンテナの物理的構成を決定すればよい。
これを実現させるには、アンテナ自体を使用周波数である300MHz帯で、直列共振する回路として形成し、アンテナ導線とそれを含む構造体に大きな直列共振電流が流れるようにすればよい。
具体的には、アンテナ導線によりインダクタンスが構成されるので、それ自体を閉ループとして、そのインダクタンスに共振するコンデンサの値を決定し、それらを直列に電気的に接続する。
この共振ループと給電用の同軸ケーブルに対してエネルギーを送受する方法は、リンクコイル方式、インピーダンスタップ方式など、どのような方法を採用しても差し支えない。
こうすることにより、磁界ループアンテナが形成され、その動作インピーダンスは直列共振回路の共振インピーダンスとなる。
つまり、導体のインダクタンスによる誘導リアクタンス分と、コンデンサのキャパシタンスによる静電リアクタンス分はお互いに打ち消しあって0となり、閉ループのインピーダンスは原理的には導体の純抵抗分だけの、1Ω以下の非常に低い値となる。
従って、大きな電流が閉ループ内を流れる。そして、アンテナの近傍領域の磁界成分だけに反応して、そのエネルギーを空間とアンテナの間で効率良く送受信することができる。すなわち、アンテナは極めて低いインピーダンスの電流モードで動作するため、アンテナ直近に電磁波の電界成分を乱すような金属やコンクリートといった物質が存在しても、磁界ループアンテナの特性に対しては殆ど影響を与えることはない。
定量的な数値例を示すと、以下のようになる。
いま近接した導体のサイズについて
N:ループ状導体のターン数(回)
W:導体の1辺の長さ(m)(形状が正方形の場合を仮定)
a:導体の半径(m)(導体が線状と仮定)
μs:比透磁率
とすると、このインダクタンスは下式で定義される。
Figure 0004303278
この式に実際のシステムに適用する各種無線タグサイズを考慮して、適切な値を代入して導体サイズと、コンデンサの値を決定すればよい。
例えば、
L=約40(nH)
となるサイズの導体構造とした場合には、C=約7(PF)のコンデンサを接続すれば、
f=1/2π√LC
の関係より約300MHZに共振することになる。
空間の電磁波エネルギーをいかに効率良くアンテナとの間で送受信するかは、ループの面積が広いほど、アンテナの利得は高くなる。
すなわち、
h:アンテナの相対利得(実行高)
A:ループの面積
N:ループの巻数
とすれば、
h=(2π/λ)NA
となる。
そこで、アンテナの利得を上げるべく、ループをどんどん大型化すると、ループのインダクタンスもどんどん増加してしまう。そのため、その大きなインダクタンスを打ち消して、ループを300MHZ帯に共振させるためにはコンデンサの値をどんどん小さくしなければならなくなる。
計算と実験によれば、ループの材料に安価で入手しやすく、加工も容易な銅を使用した場合、ループ全長は20cm程度(ループ直径5〜6cm程度)で、共振用コンデンサの値は数PFである。この場合のアンテナ利得は通常の1/2波長ダイポールアンテナに対して−数〜−10dB程度であり充分実用的な利得が得られる。
これ以上、アンテナ利得を上げようとして、ループ長を大きくすると、コンデンサの値は計算上1PF以下となってしまい、実際にアンテナを製作しようとしても、物理的に実現不可能なコンデンサ静電容量値となってしまう。
更に、ループが磁界モードで動作する理論的限界は全周0.5波長以下(300MHZ帯の場合は50cm以下)であり、これ以上の長さとなると、ループ導体上の電流分布が一定でなくなり、定在波が発生してしまう。
この定在波によって、ループは必然的に電界型アンテナとしての動作にモードが替わり、もはや磁界ループアンテナではなくなってしまう。
一方で、コンデンサの値を10PF程度より大きくして、製作や調整を容易ならしめようとすると、ループ長(ループの面積)がどんどん小さくなり、アンテナ利得が低下してしまう。
しかも、ループ長が小さくなればなるほど、ループの導体インピーダンスがどんどん低くなり、ループを形成している材料(この場合は銅)の直流抵抗が無視できなくなり、300MHZの高周波による表皮効果ともあいまって、導体抵抗損失によるアンテナ効率の低下が顕著となる。
これを防ぐ為には銅の表面に高周波抵抗の低い材料である金メッキを施し、表皮効果によるオーム損失を低減させるなどの対策が必要となり、非常にコストが上がってしまう。
従って、300MHZ帯の無線タグ用磁界ループアンテナの実用的なサイズは、全周0.5波長以下で、共振用コンデンサの値は10PF以下が適切となる。
本実施の形態1の無線タグの概略構成図である。 本実施の形態のレベルダイヤグラムの説明図である。 実施の形態2の無線タグシステムの概略構成図である。 アンテナ部の特性を補充するための説明図である。 従来のアクティブ無線タグシステムの概略構成図である。 従来のパッシブ無線タグシステムの概略構成図である。
符号の説明
20 無線タグ
21 受信アンテナ部
22 インピーダンス変換整合部
23 High−Q共振回路
24 両波整流回路
25 インピーダンス調整部
26 平滑回路
27 ID送信部
28 送信アンテナ部

Claims (8)

  1. 受信アンテナ部で受信電波を受信し、無線タグのID信号を生成するID送信部を有して300MHz帯の電波で送信アンテナ部から送信するパッシブ方式の無線タグにおいて、
    前記受信アンテナ部のリンクコイルに低インピーダンスで整合され、該リンクコイルが取り出した信号を取り出すインピーダンス変換整合部と、
    前記インピーダンス変換整合部で取り出された信号を蓄積するタンク回路と、
    前記タンク回路からの高周波数エネルギーを整流して平滑し、この平滑された直流電力を前記ID送信部の電源端子に供給する整流・平滑回路と
    を有することを特徴とするパッシブ方式の無線タグ。
  2. 前記受信アンテナ部の磁界ループアンテナ効率は、前記送信アンテナの磁界ループアンテナ効率に対して約1dB以上高利得特性であることを特徴とする請求項1記載のパッシブ方式の無線タグ。
  3. 前記受信アンテナ部が受ける電波の周波数と送信アンテナ部から発射する電波の周波数とはそれぞれ異なる300MHz帯の周波数であることを特徴とする請求項1又は2記載のパッシブ方式の無線タグ。
  4. 300MHz帯の無線タグリーダ・ライターとパッシブ方式の無線タグとからなり、前記無線タグリーダ・ライターからの前記無線タグのID及び前記無線タグリーダ・ライターのIDを含むデータを通信ネットワークを介して受信する監視センターのサーバとを備えた無線タグシステムであって、
    前記無線タグリーダ・ライターは、
    前記無線タグの電源となる信号を生成して出力する電力送信部と、
    前記電力送信部からの信号を電波にして送信する第1の送信アンテナ部と、
    前記第1の送信アンテナ部より高効率な前記無線タグからの電波を受信する第1の受信アンテナ部と、
    前記第1の受信アンテナ部が受信した前記無線タグのID信号を解読し、該ID信号に前記無線タグリーダ・ライターのIDを付加して前記サーバに送信する無線タグリーダと
    を備え、
    前記無線タグは、
    前記無線タグリーダ・ライターの第1の送信アンテナ部に対して、高効率にされ該第1の送信アンテナ部からの電波を受信する第2の受信アンテナ部と、
    前記第2の受信アンテナ部のリンクコイルに低インピーダンスで整合され、該リンクコイルが取り出した信号を取り出すインピーダンス変換整合部と、
    前記インピーダンス変換整合部で取り出された信号を蓄積するタンク回路と、
    前記タンク回路からの電力を整流して平滑する整流・平滑回路と、
    前記整流・平滑回路で平滑された直流電力を電源とし、該電源によって当該無線タグのID信号を生成して出力するID送信部と、
    前記第2の受信アンテナ部より、磁界ループアンテナが小型にされ、前記ID送信部からのID信号を300MHz帯の電波にして送信する第2の送信アンテナ部とを有することを特徴とする無線タグシステム。
  5. 前記無線タグの第2の受信アンテナ部の磁界ループコイルは、前記無線タグリーダ・ライターの第1の送信アンテナ部の磁界ループコイルよりも、円周長を長くし、実効面積を増すことにより、高効率にされていることを特徴とする請求項4記載の無線タグシステム。
  6. 前記無線タグリーダ・ライターからの電波の送信と、前記無線タグからの前記無線タグリーダ・ライターへの電波の送信は、それぞれタイミングを異ならせて送信していることを特徴とする請求項4又は5記載の無線タグシステム。
  7. 前記無線タグリーダ・ライターからの電波の周波数と、前記無線タグからの前記無線タグリーダ・ライターへの電波の周波数は、それぞれ異なる300MHz帯の周波数であることを特徴とする請求項4、5又は6記載の無線タグシステム。
  8. 前記無線タグへ電源を供給するための電波を、連続搬送波として常時、前記無線タグへ電波を供給し続けることを特徴とした請求項4、5、6又は7記載の無線タグシステム。
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