JP4288733B2 - ヨウ素の測定方法、検体前処理用反応器具及び検体前処理用反応器具の気密用具 - Google Patents

ヨウ素の測定方法、検体前処理用反応器具及び検体前処理用反応器具の気密用具 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はヨウ素の測定方法、検体前処理用反応器具及び検体前処理用反応器具の気密用具に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヨウ素は生体の物質代謝を促進する甲状腺ホルモンの材料となる必要不可欠な微量元素であり、体内ヨウ素含有量は健康成人で15〜20mgである。成人ヒト甲状腺の重量は約20gであるが、甲状腺は血中ヨウ素を選択的に濃縮し、甲状腺ホルモンを産生する。人体において必要なヨウ素の1日の摂取量は100〜150μgとされる。このヨウ素が欠乏し、そのまま放置すると甲状腺腫を呈し更に甲状腺機能低下を招く。特に新生児においては、知能低下、発育不全、神経症状などを呈するに至る。また、妊婦のヨウ素欠乏は死産や新生児死亡率の増加を招くとされている。
【0003】
ヨウ素欠乏のリスクがある地方に住む人々は約16億人とされ、開発途上国に集中している。これは、内陸の山岳地域や洪水又は降水量が多い地域において、土壌からのヨウ素の流出により、そこに生育する植物のヨウ素含量も不足し、結果としてそこに住む人や動物のヨウ素摂取量も不足し、ヨウ素欠乏症を来たすためといわれている。その予防法としては、ヨウ素の補充、例えば、ヨウ素添加塩等の摂取などの比較的簡単な方法が有効とされている。実際、米国及び欧州諸国等においては、この方法によりヨウ素欠乏地域での対策が効果を奏している。
こうした中、ヨウ素欠乏症の撲滅は、国際連合の1990年の小児世界サミットにおいてヨウ素欠乏症の撲滅目標の採択がなされ、ヨウ素欠乏症国際対策機構(ICCIDD)、ユニセフ及び世界保健機構(WHO)の重要な課題の一つとして、また、多くの国の国家的施策として挙げられている。そのためにもヨウ素欠乏症の実態を正確に把握し、診断し治療するとともに、この実態を定期的にモニタリングして行くことが重要である。
ヨウ素欠乏症の診断は、ヨウ素の尿中排泄量と摂取量が良く相関することから、尿中のヨウ素を測定することにより診断が可能とされている。その診断において指標となる尿中ヨウ素の正常値は、100μg/L以上とされている。
【0004】
ヨウ素の測定法としては、E.B.Sandellらにより、ヨウ素イオンが化学反応式(I)で表わされる酸化還元反応を増速する触媒となる性質を利用した比色定量法が報告されている(以下、Sandell-Kolthoff反応と略す。E.B.Sandell And Kolthoff,Mikrochemica Acta,vol.1,P9-25(1937))。
【化1】
Figure 0004288733
【0005】
即ち、検体中のヨウ素イオンに試薬として亜砒酸試液及び硫酸アンモニウムセリウム試液を加えることにより、黄色の硫酸アンモニウムセリウム(4価イオン)が還元され無色の3価セリウムイオンを生成する反応に対しヨウ素が化学反応式(II)及び(III)式のように触媒として働くことを利用した鋭敏な測定法である。
【化2】
Figure 0004288733
【化3】
Figure 0004288733
【0006】
しかし、尿等の検体の測定では、この酸化還元反応に影響するアスコルビン酸やチオシアン酸イオン等の干渉物質が多く含まれており、検体をそのままこの反応に適用することはできず、実際の測定においては、検体中の干渉物質を除去する等の前処理が必要となる。前処理法として検体を強熱し灰化する方法(M.C.Sanz et.al.,Clinica Chemica Acta ,1,570-576,1956)、過塩素酸や塩素酸等の酸化剤を加えて加熱して干渉物質を酸化する湿式灰化法(Zak et.al,Anal.Chem.,24(8),1345-1348,1952)、透析やクロマトグラフィ(WO96/27794)等により干渉物質を分離する方法等が提案されている。これらの前処理法の中では、Zakらの湿式灰化法が最も簡便な方法として利用されている。最も温和で標準的な湿式灰化法としては、局所排気設備内において、長さ10cm×内径13mmのガラス試験管に、尿検体250μl、及び塩素酸試液750μlを添加し、砂浴またはアルミブロックにより110〜115℃で開放条件下、1時間加熱し、冷却後、硫酸酸性の亜砒酸試液3.5mlを加えて15分還元反応を行い、硫酸アンモニウムセリウム試液350μl加え、一定時間反応後にこの液を405nmで比色定量する方法が提案されて行われている(尿中ヨウ素測定法マニュアル、ヨウ素欠乏症国際対策機構編、1993)。
【0007】
しかしながら、上記の塩素酸を使用する尿検体の前処理において使用される容器は、塩素酸のような強力な酸化剤とともに加熱しても耐えうる素材であることおよび前処理に続くSandell-Kolthoff反応に干渉するような物質が溶出しないことが要求される。このため、塩素酸を使用する検体の前処理は、ポリマー性素材からなる容器は使用されていなかった。また、前処理過程で排出される蒸気は刺激臭がある塩素等を含む蒸気であり、排気装置を有する局所排気設備内で行う必要があった。そこで、排気装置を有する局所排気設備内で、熱にも酸化剤にも強いガラス試験管を容器として用い、しかも、強度的な問題から開放状態で酸化剤とともに加熱する方法が行われてきた。さらに、開放状態のガラス容器で検体を加熱処理する方法において、検体及び試液等の蒸発及び飛散による液量変化を少なくするために、1ml以上の容量スケールで長い試験管を用いる必要があった。
【0008】
また、1ml以上の容量スケールで長い試験管を用いるため、同時に多数検体を処理するには、より広い処理スペースと大型の加熱装置が必要である。さらに、塩素酸を使用する検体の前処理では、検体を塩素酸とともに加熱する際に発生する有害な塩素酸由来の蒸気を排気処理するために局所排気設備が必要である。また、測定において、検体中のヨウ素イオンに試薬として亜砒酸試液及び硫酸アンモニウムセリウム試液添加後の退色反応(Sandell-Kolthoff反応)は、比較的迅速で鋭敏な反応である。そのため、退色反応開始後の一定時間での吸光度測定は、測定時間の厳密性を要求される。従って、試験管スケールで1本ごとに吸光度測定用のセルに移し替える測定には、検体の処理能力に限度があり、多数検体を処理可能な測定方法が望まれている。多数の検体尿を処理するためのSandell-Kolthoff反応を利用した自動化装置としてテクニコンインストルメント社のオートアナライザーがあるが操作の簡便性、可搬性を有する装置とは言えない。
【0009】
更に、最近ではPinoらが、塩素酸を使用しないで過硫酸アンモニウムを酸化剤とする前処理法(Clinical Chemistry,42(2),239-243,1996)が安全な方法として報告されている。しかし、この前処理法も、開放状態のガラス試験管を用いて加熱する方法であり、塩素酸を使用する方法と同様の問題を有し、多検体を処理することは困難であった。また、この前処理法において、加熱時に発生するガスの安全性は確認されていない。
また、ヨウ素の測定方法では、砒素、セリウム、硫酸等の毒物や劇物を試薬として使用するため、多検体を測定すると、環境上問題となる大量の有害廃棄物を産生することとなる。実際、前記、尿中ヨウ素測定法マニュアルによれば1検体あたり4.85mlの砒素含有廃液を生じることになる。
【0010】
なお、ヨウ素の測定が必要な地域は、都市から遠隔にある地域であることが多く、簡便迅速に、安全に実施できる測定法、可搬性に優れる測定用器材及び装置が強く望まれている。
最近では、津田らは過硫酸カリウムと紫外線照射により酸化して前処理する自動化装置(K.Tsuda et. al.,Clinical Chemistry,41(4),581-585(1995))を報告し、PoluzziらはICP/MSやHPLCを用いた測定法(V.Poluzzi et al.,J.of Anal.Anal.Atomic Spectrometry,11(9),731-734(1996))も報告され提案されている。しかし、これらの高価で可搬性に欠ける装置の導入は受け入れ難いものがある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
請求項1記載の発明は、前処理において、局所排気施設等の特殊施設を必要とすることなく有害蒸気の蒸散及び反応液の液量変化を抑えることにより、安全に検体の前処理ができ、しかも、再現性の良い測定値が得られるヨウ素の測定方法を提供するものである。
請求項2記載の発明は、加熱処理中の容器破損等の心配がないことから、安全で信頼性の高い検体の前処理ができるヨウ素の測定方法を提供するものである。
請求項3記載の発明は、前処理において、局所排気施設等の特殊施設を必要とすることなく有害蒸気の蒸散及び反応液の液量変化を抑えことにより、又、容器破損等の心配がないことから、安全で信頼性の高い検体の前処理ができる、しかも、再現性の良い測定値が得られるヨウ素の測定方法を提供するものである。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明に加え、多数検体の前処理を迅速に容易にでき、多数検体の測定に好適なヨウ素の測定方法を提供するものである。
請求項5記載の発明は、請求項2〜4記載の発明に加えて、加熱処理中の容器破損等の心配がなく、しかも、測定値に影響を与えるような物質の溶出がないことから、安全で信頼性の高い検体の前処理ができるヨウ素の測定方法を提供するものである。
請求項6記載の発明は、請求項2〜5記載の発明に加えて、安価で信頼性の高い反応器具が入手し易く、加熱処理中の容器破損等の心配がなく安全に、しかも、測定値に影響を与えるような物質の溶出を伴わずに検体の前処理ができるヨウ素の測定方法を提供するものである。
【0013】
請求項7記載の発明は、加熱処理中の容器破損等の心配がなく安全に、しかも、測定値に影響を与えるような物質の溶出を伴わずに、多数検体の前処理ができるヨウ素測定に好適な検体前処理用反応器具を提供するものである。
請求項8記載の発明は、ヨウ素測定の検体の前処理において、局所排気施設等の特殊設備を必要とせず、検体の処理場所に制限されず、有害蒸気の蒸発及び有害廃棄物の発生量を抑えることができ、しかも、多数検体の処理も容易にできるヨウ素測定に好適な検体前処理用反応器具の気密用具を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明は、検体を酸化剤と共に加熱消化する検体の前処理工程、次いで、亜砒酸試液及び硫酸アンモニウムセリウム試液を反応させ、その反応液中の吸光度を測定する反応測定工程からなる検体中のヨウ素濃度を定量又は検出する方法において、検体の前処理工程を気密条件下に加熱処理し、冷却することにより行うことを特徴とするヨウ素の測定方法に関する。
(2)本発明は、検体を酸化剤と共に加熱消化する検体の前処理工程、次いで、亜砒酸試液及び硫酸アンモニウムセリウム試液を反応させ、その反応液中の吸光度を測定する反応測定工程からなる検体中のヨウ素濃度を定量又は検出する方法において、検体の前処理工程を、耐熱性有機材料からなる反応器具を用いて行うことを特徴とするヨウ素の測定方法に関する。
(3)本発明は、検体を酸化剤と共に加熱消化する検体の前処理工程、次いで、亜砒酸試液及び硫酸アンモニウムセリウム試液を反応させ、その反応液中の吸光度を測定する反応測定工程からなる検体中のヨウ素濃度を定量又は検出する方法において、検体の前処理工程を、耐熱性有機材料からなる反応器具を用いて、しかも、気密条件下に加熱処理し、冷却することにより行うことを特徴とするヨウ素の測定方法に関する。
【0015】
(4)本発明は、耐熱性有機材料からなる反応器具が複数の反応領域を有するものである上記(2)又は(3)記載のヨウ素の測定方法に関する。
(5)本発明は、耐熱性有機材料が、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、テフロン樹脂又はポリメチルペンテン樹脂である上記(2)〜(4)のいずれかに記載のヨウ素の測定方法に関する。
(6)本発明は、反応器具がマイクロタイタープレートである上記(2)〜(5)のいずれかに記載のヨウ素の測定方法に関する。
【0016】
(7)本発明は、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂及びポリメチルペンテン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の耐熱性有機材料からなり、複数の検体を酸化剤と共に加熱消化処理することができる複数の反応領域を有してなるヨウ素測定用の検体前処理用反応器具に関する。
(8)本発明は、上記(7)記載のヨウ素測定用の検体前処理用反応器具及びこの反応器具の複数の反応領域を覆うスペーサーを上下に挟み込み、固定することができる上下2個の固定用支持体および反応器具の反応領域を前記スペーサーにより、気密にできるようにこれらの固定用支持体に圧力をかけることができる固定補助材から構成される検体前処理用反応器具の気密用具に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のヨウ素の測定法において、検体の前処理工程に使用する反応器具について説明する。
この反応器具は、検体を酸化剤と共に加熱消化する処理に耐えられることが必要であり、また、酸化剤と共に加熱する検体の前処理工程において加熱により発生する塩素酸由来の塩素ガス等有害蒸気の発生を抑え、また、液量変化による測定値間の再現性(バラツキ)を最小にする点から、気密条件に耐えられることが必要である。
【0018】
前記の反応器具は、反応領域を複数個有するものが好ましい。このような反応器具としては、試験管や遠心用試験管のような容器を反応領域として、この反応領域を複数並べて連結したもの、さらに、一枚の板に井戸状、円柱状の凹みを掘りこれを反応領域として、この反応領域を複数並べたものがある。
個々の反応領域の形状としては、試験管のようにU字状又は平底状のものであっても良く、また、遠心用試験管のようにV字状のものであっても良い。
【0019】
上記、各反応領域の容量は、200〜1000μlであることが好ましい。より好ましくは、300〜500μl、さらに好ましくは、300〜350μlである。各反応領域の容量が1000μlを超えると、容器サイズの大型化に伴い、無駄な空間が多くなり多検体の処理操作がしづらくなる傾向があり、300μl未満では、容器サイズの微小化に伴い、検体及び試薬の微小な分注操作や動作の緻密性を要求されることにより、分注精度の低下や多検体処理での誤動作の危険性が増大する傾向がある。
【0020】
また、各反応領域の開口部は、その反応領域を覆い、気密状態にするためのスペーサーにより、気密性を確保できる形状、構造であることが好ましい。例えば、スペーサーとしては蓋状、シート又は板状のものが挙げられる。蓋状のスペーサーを使用する場合には、各反応領域の開口部の表面形状又は構造を凹凸状の蓋に対して相補的なものとしたり、平たんなシート又は板状のスペーサーを使用する場合には、各反応領域の開口部周辺の表面形状を平たんなものにすることが好ましい。さらに、スペーサーと各反応領域の開口部の接する面積をより大きくすることが気密性を確保できる点からより好ましい。
【0021】
前記の反応器具の材質としては、耐熱性有機材料からなるものが好ましい。このような耐熱性有機材料としては、耐熱性、酸化剤に対する耐薬性に優れ、又、高い物理的強度を有し、さらに成型が容易なものが好ましく、また、酸化剤とともに加熱することで前処理に続く反応に干渉するような物質が容器から溶出しないことが好ましい。このような材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、テフロン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等が挙げられる。
【0022】
前記反応器具の具体例としては、マイクロタイタープレートが挙げられる。一般に、マイクロタイタープレートは、1枚のプレートに、直径約8mm、深さ約8mmのウェル(反応領域)が、縦8列、横12列に96個配置された一体型の形態が挙げられる。しかし、本発明のヨウ素の測定方法において使用できるマイクロタイタープレートは、上記、ウェルの数、直径、深さ等に限定されるものではなく、例えば、直径を細めたり、深さを深くしたり、さらに、96ウェルを縦8列又は横12列の単位で任意の個数組み合わせ分割できるようにした分割型の形態のマイクロタイタープレートも使用できる。
なお、本発明において、反応器具は、上記、マイクロタイタープレートに限定されるものではない。例えば、ポリプロピレン製の材質からなり、直径約6mm、深さ約20mmの遠心用試験管状の反応領域が、直線状に8個連結されたPCR (Polymerase Chain Reaction)用8連チューブ(輸入販売元 株式会社アシスト)等も挙げられ使用できる。これらの耐熱性有機材料からなる反応器具複数の反応領域の個数も限定されるものではなく、処理する検体数や処理頻度等に応じて適宜選択できる。
【0023】
本発明のヨウ素の測定方法において、検体を酸化剤と共に加熱消化する検体の前処理工程では、反応器具の反応領域をスペーサーにより気密状態とすることが好ましい。スペーサーは、検体の前処理に耐えられるものである必要がある。
スペーサーとしては、気体の透過性のないもので、酸化剤に対する耐薬性、120℃で変形を生じない耐熱性を兼ね備えた材質が好ましく、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、テフロン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、シリコンゴム、ブチルゴム、クロロブチルゴム等が挙げられる。スペーサーとしては、シート状又は板状の弾力性を有する材質が好ましい。シート状又は板状のスペーサーの材質としては、シリコンゴム、ブチルゴム、クロロブチルゴム等が挙げられる。さらに、これらの覆いの劣化を防ぐための膜として、ポリプロピレン膜、ポリ塩化ビニリデン膜あるいはフルオロエチレン膜などの耐熱性膜を被覆することがより好ましい。
また、各反応領域の開口部表面とスペーサーとは、密着性、気密性を確保できるように、互いに平たんにしたり、また、凹凸のある相補的な形状、構造にしたり加工成型することができる。
検体の処理数が少ない場合は、経済性の点から蓋の形状とすることが好ましいが、多検体を処理する場合は、操作の容易性と多検体処理の効率の点から、覆いの形状とすることが好ましい。
【0024】
上記、前処理用の反応器具の気密用具は、反応器具及びスペーサーを収容して恒温槽もしくは同等の恒温加熱器にて処理するので、処理温度で変形することのない耐熱性素材からなることが好ましい。このための、好ましい固定用支持体及び固定補助材の耐熱性素材としては、金属又は耐熱性の硬質樹脂等が挙げられる。さらに好ましくは、検体の前処理工程での加熱及び加熱処理後の室温への冷却を効率的にする点から、熱伝導率の良いアルミニウム、銅、ステンレス等の金属製又は炭素製素材が挙げられる。
なお、加熱後、処理液の蒸気がスペーサーに凝縮すると液量が変化することにより測定の再現性を損なうため、放冷の際、固定用支持体の下部支持板がスペーサーと接する上部支持板よりも先に冷却させるように、下部支持板を強制的に水や放熱板に接触させるか又は上部支持板を下部の支持板より厚みをもたせるか若しくは上部支持板を下部支持板より熱伝導率の低い素材、例えば、下部支持板をアルミニウム、銅等の熱伝導率の高い素材を、上部支持板にはステンレス等の下部支持板に比較して熱伝導率の低い素材を使用することが好ましく、これらを組み合わることがより好ましい。
【0025】
図1〜3に、気密用具の一例を示すが、これに限定されない。
図1は気密用具の一例の正面図(使用時)を示す図である。又、図2はその平面図(使用時)を示す図である。さらに、図3は、図2のa−a′断面図(ただし、一方の固定補助材としてのスナップネジをはずした状態)を示す図である。
気密用具は、上部支持板2、下部支持板3、下部支持板3に取付けられたアルミニウム製等のスナップネジ等の固定補助材4からなる。
マイクロタイタープレート等の反応器具5は、上部支持板2と下部支持板3から形成される収納空間内に、2枚のスペーサー6、7によって挟まれ、ウェルの開口部を上にして収納されている。さらに、反応器具5の反応領域は、下部支持板3に取付けられた固定補助材4により、下部支持板3と上部支持板2を上下方向から締め付けることにより、スペーサー6により密着し気密状態にされている。なお、図3において、反応器具5と下部支持板3の間のスペーサー7はなくても良く、反応器具5と上部支持板2の間のスペーサー6は反応器具5の反応領域の気密性が確保できる厚みのあることが必要ある。
【0026】
以下に本発明のヨウ素の測定法について説明する。
本発明のヨウ素の測定方法は、検体を酸化剤と共に加熱消化する検体の前処理工程、次いで、亜砒酸試液及び硫酸アンモニウムセリウム試液を反応させ、その反応液中の吸光度を測定する反応測定工程からなる検体中のヨウ素濃度を定量又は検出する方法において、検体の前処理工程を、気密条件下に加熱処理し、冷却することにより、行うことが好ましい。
本発明のヨウ素の測定方法において、検体の前処理は、例えば、反応器具の各反応領域中に、ヨウ素標準液の一定量又は尿などの検体の一定量と塩素酸試薬等の酸化剤の一定量をそれぞれに添加する。さらに、酸化剤の添加後、各反応領域をスペーサー又は前記気密用具等を用いて、気密状態とする。気密状態にされた反応器具は、恒温槽等を用いて、一定時間、一定温度で、加熱処理する。この加熱処理後、反応器具を室温まで戻す。この前処理により、検体中の測定時の干渉物質を除くとともにヨウ素イオン及びヨウ素をヨウ素酸イオンに酸化する。
【0027】
本発明のヨウ素の測定方法において、検体としては、ヒトや動物の尿が挙げられる。既知濃度のヨウ素標準液等でも良い。ヨウ素を有すると思われる溶液または水溶液にすることが可能な検体であればこれらに制限されるものではない。
本発明のヨウ素の測定方法において、検体の液量は、2μl〜100μlの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3μl〜80μl、さらに好ましくは5μl〜50μlである。2μl未満では測定の感度が悪く、分注誤差も大きくなり、測定の再現性が悪くなる傾向があり、100μlを超えると、それに対応する前処理剤や測定のための試薬量が増加し、操作の迅速性、多検体の測定処理能力を損なう傾向となる。
【0028】
添加される酸化剤の液量は検体の液量の2〜10倍であることが好ましい。添加する酸化剤の液量が検体の液量の2倍未満であると、最終濃度の低下によりヨウ素の回収率が低下する傾向があり、添加する酸化剤の液量が検体の液量の10倍を超えると試薬が無駄であるばかりでなく、環境上問題となる有害廃棄物の排出量を増大させることとなる。とりわけ、多検体を処理する場合には、無視できない問題となる。また、この範囲で容器の容量に応じ検体量及び酸化剤の添加量を合わせた最大液量として容器の容量の70%以下であることが好ましく、より好ましくは容量の20〜50%である。容器の容量に対する最大液量が70%を超えると攪拌が困難となったり、スペーサーへの処理液の付着により処理液が回収できなくなる恐れがある。
【0029】
酸化剤としては、塩素酸、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。塩素酸を用いる場合、前処理工程における最終濃度として10〜30(W/V)%であることが好ましく、10(W/V)%未満では、検体中の干渉物質の除去が不十分となり、結果としてヨウ素の回収率の低下をきたし、また、検体により回収のバラツキが大きくなり、良好な測定値の再現性が得られない傾向となる。塩素酸の最終濃度として30(W/V)%を超えると、塩素酸試液が無駄となるばかりでなく、有害な廃棄物を大量に産生さること、又40%以上では自己分解を起こす(化学大辞典塩素酸の項)等の問題がある。過硫酸アンモニウムを用いる場合、最終濃度として15〜30(W/V)%であることが好ましく、15(W/V)%未満では、検体中のヨウ素からのヨウ素の回収が不十分となり、回収のバラツキが大きくなり、良好な測定値の再現性が得られない傾向となる。また、30(W/V)%を超えると、無駄なばかりでなく、余りに高濃度の過硫酸アンモニウムは、続く、亜砒酸試液、硫酸アンモニウムセリウム試液添加による反応(Sandell-Kolthoff反応)において、反応を阻害する傾向があるため、高濃度での使用は好ましくない。
【0030】
検体の前処理において、酸化剤と共に加熱消化する際の反応温度としては干渉物質の除去という点から、50〜140℃であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましく、特に好ましくは100〜110℃である。50℃未満では、検体中のヨウ素の回収が不十分となり、回収のバラツキが大きくなり、良好な測定値の再現性が得られない傾向となる。140℃を超えても検体中のヨウ素の回収には問題ないが、耐熱性有機材料からなる反応器具の耐熱性の限界を超えると、反応器具の反応領域の変形等により有害蒸気の蒸発及び試液の飛散を阻止出来なくなる恐れがある。
酸化剤と共に加熱消化する際の反応時間は30〜120分間が好ましい。より好ましくは45〜90分間である。30分間未満では、検体中のヨウ素からのヨウ素の回収が不十分となり、回収のバラツキが大きくなり、良好な測定値の再現性が得られない傾向となる。120分間を超えても回収のバラツキ、測定値の再現性は変化ないが、迅速な測定、多検体の処理能力を損なうこととなる。上記範囲で、検体中の有機物等を十分に酸化できヨウ素を回収できる濃度、温度、時間を適宜選択できる。
【0031】
また、検体の前処理は、前述のように、加熱により発生する塩素酸由来の塩素ガス等の有害蒸気の発生を抑え、また、反応液の蒸発による液量変化に伴う測定値間の再現性(バラツキ)を最小にする点から、気密条件下に加熱反応を行うことが好ましい。なお、前処理において、気密条件としては、前処理の前後において、液量変化が2%以内の範囲に抑えられるような気密な条件であることがより好ましい。
気密条件とするには、前記のスペーサーを施すことが好ましい。このように気密条件にすることにより、検体の前処理が、より安全に処理できるようになる。気密状態が不十分な時には、局所排気施設の中で行っても良い。
さらに、スペーサーによる気密状態をより確実に、又、多検体を同時に処理可能にするために、前記の反応器具の気密用具を用いることがより好ましい。反応器具の気密用具を用いることにより、局所排気施設等の特殊施設を必要とせずに、スペーサーのみの使用よりも、より安全に、しかも、多検体を同時に処理できる。
【0032】
なお、検体の前処理した後、塩素ガス等の有害蒸気を避ける前処理の安全性の点から、又、冷却時間の短縮の点から、冷却等により積極的に前処理の反応温度を室温以下に戻すことがより好ましい。安全性の点から、前処理の反応温度が室温に戻るまでは、スペーサー又は反応器具の気密用具を開けないことが必要である。この冷却処理をすることにより、気密状態を解除しても有害ガスの放出はほとんどなくなる。
【0033】
上記検体の前処理工程に続く工程として、上記前処理した処理液に、まず、亜砒酸試液を添加し、さらに、黄色の硫酸アンモニウムセリウム試液を添加し、その退色が生じる反応(Sandell-Kolthoff反応)を行う。例えば、前処理液を室温まで戻した後、この液の一定量をポリスチレン製マイクロタイタープレートに移し替え、一定量の亜砒酸試液を添加する。これにより、ヨウ素酸イオンは、還元されヨウ素イオンとなる。
次いで、黄色の硫酸アンモニウムセリウム溶液である硫酸アンモニウムセリウム試液を添加することにより、ヨウ素を触媒とした亜砒酸による硫酸アンモニウムセリウムの還元反応(退色反応)を開始する。
本発明において、最終的な吸光度の測定は、硫酸アンモニウムセリウム試液を添加することにより生じる退色反応の変化を、吸光度又は透過率の変化として測定する。その吸光度又は透過率の測定値とヨウ素量との関係から検体中のヨウ素の濃度を定量又は検出する。
各試液は、以下のようにして調整し使用できるが、この組成に限定されるものではない。
【0034】
亜砒酸試液の調製は、例えば、亜砒酸10gを7gの水酸化ナトリウムとともに250mlの精製水に加え溶解し、さらに、32mlの濃硫酸を加えて酸性とし、塩化ナトリウム25gを加え、精製水を加えて1リットルとすることにより調製できる。遮光して室温で保管する。
硫酸アンモニウムセリウム試液の調製は、24gの硫酸アンモニウムセリウムを3.5N硫酸に溶解して1リットルとすることにより調製できる。遮光して室温で保管する。
【0035】
なお、本発明において、前処理工程で使用する反応器具として透明なもの(特に透明なマイクロプレート)を使用した場合以外は、亜砒酸試液の添加前又は添加後に吸光度変化測定可能な透明な測定器具(例えば、マイクロプレート)に処理液の一定量を移し替える必要がある。
吸光度変化測定可能な透明な測定器具、特にマイクロプレートとしては、ポリスチレン製等の吸光度測定可能なプレートであれば良いが、ウェルの容量としては、300〜500μlであることが好ましい。より好ましくは、300〜400μl、さらに好ましくは、300〜350μlである。容量が、500μlを超えると容器サイズが大型化し無駄な空間的スペースを必要とすることから多検体の処理が困難となる傾向があり、300μl未満では、容器サイズが微小化し検体及び試薬の分注操作等の微小な動作、操作の緻密性を要求されることとなり、分注精度の低下とともに多検体処理での誤動作の危険性も増大する傾向となる。
【0036】
本発明において、吸光度の測定は、添加された硫酸アンモニウムセリウム試液の退色反応の変化を、吸光度又は透過率の変化として測定する。
吸光度又は透過率の変化の測定は、添加された硫酸アンモニウムセリウム試液の退色反応の開始後に測定する。その吸光度又は透過率の変化の測定は、退色反応の変化を、反応開始後一定時間後の吸光度又は透過率を測定する終点測定法 (エンドポイント)。反応の進行中の反応開始後吸光度又は透過率を測定し、これらの差(反応速度)を求める反応速度測定法(レートアッセイ)により測定することが好ましい。なお、反応の進行中に3回以上測定した場合には、最小二乗法等の計算法により反応速度を求めることができる。
【0037】
また、これらの吸光度の測定は、測定波長として、波長400〜450nmの範囲から選択される1波長の吸光度として測定することが好ましい。さらに、マイクロタイタープレートのウェル間の汚れ、キズ等による測定値変動を少なくするため、主波長を400〜450nmの範囲から選択される1波長と、副波長を450〜700nmの範囲から選択される1波長の異なる2波長の吸光度差として測定することが好ましい。
さらに、硫酸アンモニウムセリウム試液を添加による退色反応を開始後、その退色反応の進行度合いを吸光度又は透過率の変化として測定する際、測定時間は、退色反応を開始後、好ましく30秒〜60分間、より好ましくは5〜30分間で、この間に少なくとも1回以上測定することが必要である。また、測定のバラツキを少なくするため2回以上測定することも好ましい。
【0038】
本発明において、吸光度の測定装置としては、400〜450nmでの吸光度を測定できる装置であれば限定されないが、ELISA等に汎用され、可搬性に優れ、自動的に連続測定可能で多検体を処理可能な汎用のマイクロタイタープレートリーダー等が好ましい測定装置として使用できる。
実際に、検体中のヨウ素の濃度は、あらかじめ又は検体測定の際、検体の代わりに既知濃度のヨウ素標準溶液を用い全く同一条件で測定しておくことにより、吸光度又は透過率とヨウ素濃度との関係の検量線を作成し、これに基づいて検体中のヨウ素量を定量又は検出する。なお、既知濃度のヨウ素標準溶液としては、測定範囲をどの範囲で測定するかにより適宜選択できるが、尿を検体とする場合には、例えば、正常値の判断となる濃度100μg/Lを挟んで少なくとも2点以上の複数濃度を選択する必要がある。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
実施例1
(試薬の調製)
1)塩素酸試液(20(W/V)%)
塩素酸カリウム500gを水900mlに添加して加熱し溶解した。得られた溶液に、62(W/V)%過塩素酸400mlを攪拌しながら少量づつ(約20ml/分)添加した。得られた水溶液を氷冷後、冷凍庫(−20℃)に一晩静置し、この後、減圧濾過して、濾液を採取した。これを使用時まで冷蔵庫で保存した。
2)亜砒酸試液
500mlの水に20gの亜砒酸を添加し、14gの水酸化ナトリウムを添加して溶解した。さらに、64mlの濃硫酸を添加し、50gの塩化ナトリウムを添加後、水を加えて最終液量を2Lとした。使用まで遮光して室温で保管した。
【0040】
3)硫酸アンモニウムセリウム試液
24.0gの硫酸アンモニウムセリウム2水和物を3.5Nの硫酸に溶解して最終液量を1リットルとした。光を避けて室温で保管した。
4)ヨウ素標準原液10μg/ml
168mgのヨウ素酸カリウム(ヨウ素100mg)を水に溶解し、最終液量を100mlとした(ヨウ素1mg/ml)。この液1mlをとり100mlとし10μg/mlの標準原液を作成した。使用時まで室温で保管した。
【0041】
1.検体の前処理
検体前処理用反応器具として96個の反応領域(すなわち、ウェル)が連結したポリプロピレン製96ウエルマイクロタイタープレート(コーニングコースタージャパン製)(以下、プレートAと略す)を用いて8ウェルの1、2列計16個のウェルに、0、25、50、75、100、200、300、400ng/mlのヨウ素標準液40μlを1濃度当たり2ウェルずつ入れた。また、ヨウ素欠乏地域の小児尿検体20検体40μl及びその尿検体1mlにヨウ素換算で50ngを含むヨウ素酸カリウム水溶液100μlを加えて調整したヨウ素添加尿40μlを各ウエルに入れた。
ついで、プレートAのウェルに塩素酸試液100μlをそれぞれ添加した。
【0042】
さらに、プレートの各ウェルを気密状態とするために、96ウェルマイクロタイタープレート用の反応器具の気密用具として図1〜3で示したようなものを使用した。具体的には、上部支持板2として、(縦200mm×横108mm×高さ30mm)の大きさのアルミニウム製の支持体、下部支持板3として、(縦200mm×横108mm×高さ15mm)の大きさのアルミニウム製の支持体を用い、固定補助材4としてアルミニウム製のスナップネジ、スペーサー6として、ポリ塩化ビニリデンフィルムで被覆した弾力性のある覆い状の弾性体のシリコンゴム板(縦113mm×横81mm×高さ3mm)、スペーサー7として、ポリ塩化ビニリデンフィルムで被覆した弾力性のある覆い状の弾性体のシリコンゴム板(縦108mm×横75mm×高さ3mm)を用いた。なお、上部支持板2と下部支持板3を合わせたときに形成される収納空間の大きさは、縦108mm×横90mm×高さ18mmであり、この収納空間が形成されるように、上部支持板2の下側及び下部支持板3の上側には、凹みがそれぞれが設けてある(上部支持板:縦108mm×横90mm×高さ16mm下部支持板:縦108mm×横90mm×高さ2mm)。
【0043】
プレートA(反応器具5)をスペーサー6、7の弾性体2枚によって挟み、プレートAのウェルの開口部を上にして収納した。さらに、下部支持板3に取付けられた固定補助材4により、下部支持板3と上部支持板2を上下方向から締め付けることにより、プレートA(反応器具5)の各ウェルが、上部の弾力性を有するスペーサー6により密着し気密状態とした。これを恒温槽内に置き105℃で1時間加熱し、加熱後、恒温槽からマイクロタイタープレート用の気密用具を取り出し、放熱板上におき、室温になるまで放冷した後、プレートA(反応器具5)を取り出した。
【0044】
2.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
検体の前処理工程後のプレートAが室温に戻ったことを確認後、このプレートの反応液のうち40μlをマルチピペッターにより新しいポリスチレン製96ウエルマイクロタイタープレート(ナルジェンヌンクインターナショナル株式会社製)(以下、プレートBと略す)に移し替えた。次いで、プレートBのすべてのウェルに亜砒酸溶液150μlを添加した。12連マルチピペッタを用いて、すべてのウェルに速やかに(1分以内)硫酸アンモニウム硫酸アンモニウムセリウム試液40μlを添加して、20分後にマイクロタイタープレートリーダ(東ソー株式会社製)に上記プレートBを装着し、波長405nmでの吸光度を測定した。
【0045】
横軸に濃度を、縦軸に吸光度の対数をとった検量線は相関係数0.99以上の直線を示した。このことは、前処理による容器から測定値に影響を与えるような干渉物質が溶出しなかったことを示唆するものである。また、図4にはヨウ素欠乏地域の各ヒト尿検体及びヨウ素を添加した尿検体を測定した結果、即ち添加回収試験結果をプロットで示した。いずれの検体も正常値とされる100ng/ml以下の濃度を示した。また、ヨウ素添加尿において添加されたヨウ素が定量的に回収されていることから、ヨウ素欠乏被験者の尿検体の測定が可能であることを示すものであり、本発明の測定方法の信頼性を示すものである。
【0046】
実施例2
(試薬の調製)
実施例1に従って調製した。
1.検体の前処理
検体前処理用反応器具としてポリプロピレン製8連PCRチューブ(株式会社アシスト製)5個を用いて、各チューブ(反応領域)に、0、25、50、75、100、200、300、400ng/mlヨウ素標準液10μl、ヒト尿5検体10μl及びそのヨウ素添加尿検体10μl(各尿検体1mlにヨウ素換算で50ngを含むヨウ素酸カリウム水溶液10μlをそれぞれの加えて調整した)を、1濃度の標準液又は1検体当たりそれぞれ2つのチューブ(反応領域)に入れた。さらに、各チューブに塩素酸溶液100μlを加え、気密状態にするための蓋としてポリプロピレン製PCRチューブ用8連キャップ(株式会社アシスト製)により栓をすることにより気密状態とした。その後、これを恒温槽に置き、105℃で1時間加熱した。その後室温に戻るまで放冷した。
【0047】
2.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
上記、前処理後の処理液に亜砒酸溶液150μlを添加し、その100μlをマルチピペットにより新しいポリスチレンの96ウェルマイクロタイタープレートに移し替えた。更に、マルチピペットで硫酸アンモニウムセリウム溶液を40μl添加して30分後にポリスチレン製96ウェルマイクロタイタープレート (ナルジェンヌンクインターナショナル株式会社製、ポリスチレン)をマイクロタイタープレートリーダ(東ソー株式会社製)に装着して、波長405nmでの吸光度を測定した。
【0048】
表1には、各尿検体、ヨウ素添加尿検体の測定平均値(n=2)及びヨウ素添加による回収率の結果を示した。ヨウ素添加尿においていずれの検体も、93から103%と良好な回収率を示した。ポリプロピレン製8連PCRチューブを連結反応領域として、また、キャップで蓋をしたのみの気密条件で、前処理工程を行っても、干渉物質が除去できることを示した。
【0049】
【表1】
Figure 0004288733
【0050】
実施例3
(試薬の調製)
実施例1に従って調製した。
1.検体の前処理工程
検体前処理用反応器具として、PCR用ポリカーボネート製8連ウェル(NucleoLinkストリップ、ナルジェンヌンクインターナショナル株式会社製)を用い、これを12個掛けることができるABS製(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)のフレーム(ナルジェンヌンクインターナショナル株式会社製、カタログNo.249182)で固定した。0、5、10、25、50、100、150 、200、250、300、400、600ng/mlのヨウ素標準液を、1濃度当たり、それぞれ2つのウェルに入れた。また、ヒト尿6検体及びそのヨウ素添加尿検体10μl(各尿検体1mlにヨウ素換算で50ngを含むヨウ素酸カリウム水溶液10μlをそれぞれの加えて調整した)をそれぞれ6つのウェル(反応領域)に入れた。これらすべてのウェルに塩素酸溶液100μlを加え、気密状態にするために、シリコンゴム板5で覆い、上下から固定用支持体として2枚のステンレス製の支持板(厚さ3mm、幅100mm、長さ150mm)により挟み込み、ウェルを固定補助材のネジで気密状態にした。その後、これを恒温槽に置き、105℃で60分加熱した。その後室温になるまで放冷した。
【0051】
2.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
実施例2と同様に実施した。
表2には各尿検体、ヨウ素添加尿検体の測定平均値(n=6)及びヨウ素添加による回収率の結果を示した。ヨウ素添加尿においていずれの検体も、83から102%と良好な回収率を示し、前処理により干渉物質が完全に除去され、容器自身は酸化剤により黄色に着色したが容器からの干渉物質の溶出は認めず、ポリカーボネート容器を用いても前処理可能であることを示した。
【0052】
【表2】
Figure 0004288733
【0053】
実施例4
(試薬の調製)
前処理酸化剤である塩素酸試液を下記の過硫酸アンモニウムに変更する以外は実施例1に従って調製した。
1)過硫酸アンモニウム試液
過硫酸アンモニウム200gを水で溶解して最終液量を1リットルとした。
1.検体の前処理
検体前処理用反応器具として、ポリプロピレン製96ウェルマイクロタイタープレート(プレートA)のウェルに、0、5、10、25、50、100、150、200、250、300、400、600ng/mlヨウ素標準液を1濃度当たりそれぞれ2つのウェルに、ヒト尿検体12検体及びヨウ素添加尿12検体(各尿検体1mlにヨウ素換算で50ngを含むヨウ素酸カリウム水溶液10μlをそれぞれの加えて調整した)の各10μlをそれぞれ3つのウエルに入れた。更に、プレートの全てのウェルに過硫酸アンモニウム試液50μlを加えた。
【0054】
実施例1で用いた反応器具の気密用具を用い同様にして、プレートAを気密状態にした。その後、プレートAを恒温槽内に置き105℃で1時間加熱した。その後、恒温槽からマイクロプレート用の気密用具を取り出し、放熱板上におき、室温に戻るまで放冷後、プレートAを取り出した。
【0055】
2.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
硫酸アンモニウム硫酸アンモニウムセリウム試液を添加後の反応時間を、60分としたことを除き実施例2と同様に実施した。
Sandell-Kolthoff反応は塩素酸にて前処理したときに比べ、反応速度がやや遅くなり、約2倍の1時間を要した。
表3及び表4には各尿検体、ヨウ素添加尿検体の測定平均値(n=2)及びヨウ素添加による回収率の結果を示した。ヨウ素添加尿において、いずれの検体も、87から116%と良好な回収率を、前処理による干渉物質の除去が完全であり、過硫酸アンモニウムでの前処理によっても干渉物質が完全に除去されることを示した。
【0056】
【表3】
Figure 0004288733
【0057】
【表4】
Figure 0004288733
【0058】
比較例1
標準的な従来法(尿中ヨウ素測定法マニュアル、ヨウ素欠乏症国際対策機構編、1993)
(試薬の調製)
実施例.1に従って調製した。
1.検体の前処理
ガラス製試験管(内径13mm長さ10cm)28本を用いて0、25、50、75、100、200、300、400ng/mlのヨウ素標準液及びヒト尿検体20検体の各250μlを1濃度の標準液又は1検体当たりそれぞれ2本の試験管に入れた。次いで、全ての試験管に塩素酸試液750μlを加えた。
排気装置を有する局所排気設備内であらかじめ115℃に調節したアルミブロック恒温槽(岩城硝子株式会社)の穴に試験管を差し込み、1時間加熱した。その後、恒温槽から試験管を取り出し、放冷した。
【0059】
2.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
検体の前処理後の試験管が殆ど室温に戻ったことを確認後、この試験管に亜砒酸溶液3.5mlを添加した。次いで、1番目の試験管に硫酸アンモニウムセリウム試液350μlを添加して、すばやく攪拌した。残りの試験管について硫酸アンモニウムセリウム試液を20秒毎にストップウォッチを用いて加え、硫酸アンモニウムセリウム試液を加えてから正確に20分後に波長405nmでの吸光度を測定した。
【0060】
図5に尿検体20検体の比較例1での測定値と実施例1に従って比較例1の検体を測定した測定結果との相関図を示した。結果、良い相関が認められた。
しかし、前処理加熱により試験管からの酸化剤特有の刺激臭を有する蒸気の発生が認められ、砒素、及び酸化剤などの有害廃液量も1検体あたり約4ml排出した。さらに、液量の変化を測定した結果、加熱により1本あたり約0.5gが蒸発し、液量変化による誤差も無視できないものであった。
【0061】
実施例5
(試薬の調製)
実施例1に従って調製した。
1.検体の前処理
検体前処理用反応器具として、96ウエルのポリプロピレン製マイクロタイタープレート(コーニングコースタージャパン製)を用いて、それぞれ1、2列計16個のウェルに、0、25、50、75、100、200、300、400ng/mlのヨウ素標準液40μlを1濃度当たり2ウェルずつ添加し、ヒト尿80検体をその他のウエルに入れた。ついでプレート全ウェルに過硫酸アンモニウム試液100μlを加え、その重量を測定した。
実施例1で用いた反応器具の気密用具を用い、同様にマイクロタイタープレートを気密状態にした。その後、マイクロタイタープレートを装着した気密用具を恒温槽内に置き105℃で1時間加熱した。その後、恒温槽からこれを取り出し、放熱板上におき、室温になるまで放冷後、マイクロタイタープレートを取り出し、再度重量を測定した。
【0062】
2.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
実施例2と同様に実施した。
以上の結果、気密条件下で行うための反応器具の気密用具を用いて前処理したプレート重量では0.3gの重量の減少であった。吸光度とヨウ素濃度との関係の検量線を図6に示した。
【0063】
比較例2
実施例5の前処理反応において、反応器具の気密用具を使用せず、開放系にして、恒温槽中に置き、前処理した以外は全て実施例5と同一方法、同一条件で行った。
この結果、開放系で前処理したプレートの重量は約9.2g減少し、しかも、各ウェルの液量はバラバラであった。また、前処理加熱により酸化剤特有の刺激臭を有する蒸気の発生が認められた。1個のウェルあたり蒸散した液量(溶液比重1)で換算すると平均96μlが蒸散したことになる。また、開放系で前処理したプレート中の2個のウェルは溶液の蒸散により、結晶が析出した。これは前処理を開放系で行った結果、プレートの温度偏差による各ウェルにおける蒸発の度合いの違い、そして、過硫酸アンモニウムが分解して生じる酸素の気泡が破裂するときの溶液の飛散等が原因と考えられた。吸光度とヨウ素濃度との関係を図7に示した。その図のように、ヨウ素濃度と吸光度の一対一の関係は得られず、検量できるものではなかった。
【0064】
実施例6
(試薬の調製)
実施例1に従って調製した。
1.検体の前処理
ヒト尿4検体及びその検体にヨウ素50ng/mlを添加したヨウ素添加尿検体(各尿検体1mlにヨウ素換算で50ngを含むヨウ素酸カリウム水溶液10μlをそれぞれの加えて調整した)を用い、検体の前処理工程の加熱操作を気密状態とした後、恒温槽で105℃、0.5時間及び1.0時間として加熱時間を変えた以外は実施例2と全く同様に行った。
【0065】
2.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
実施例2と全く同様に行った。
表5に、各尿検体、ヨウ素添加尿検体の測定平均値(n=2)及びヨウ素添加による回収率の結果を示した。ヨウ素添加尿においていずれの検体も、94から108%と良好な回収率を示した。各尿検体の測定値、及びヨウ素添加尿検体の測定値の平均(n=2)を、前処理により干渉物質が除去されることを示した。
【0066】
比較例3
(試薬の調製)
実施例1に従って調製した。
1.検体の前処理
ヒト尿4検体及びその検体にヨウ素50ng/mlを添加したヨウ素添加尿検体(各尿検体1mlにヨウ素換算で50ngを含むヨウ素酸カリウム水溶液10μlをそれぞれの加えて調整した)を用い、検体の前処理における気密状態とした後の加熱操作を省略した以外は実施例2と全く同様に行った。
2.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
実施例2と全く同様に行った。
表5に、各尿検体、ヨウ素添加尿検体の測定平均値(n=2)及びヨウ素添加による回収率の結果を示した。即ち、塩素酸を添加し、加熱操作しなかったときの回収率と105℃で30分間加熱したとき及び1時間加熱したときの回収率とを比較した。表5から加熱操作しなかった場合、ヨウ素の添加回収率は平均58%に過ぎなかったが、実施例5の0.5時間30分及び1時間の加熱での平均回収率はそれぞれ97%、及び101%を示した。
【0067】
【表5】
Figure 0004288733
【0068】
実施例7
(試薬の調製)
実施例1に従って調製した。
1.検体の前処理
検体前処理用反応器具として、ポリプロピレン製96ウェルマイクロタイタープレート(プレートA)のウェルに、0、5、10、25、50、100、150、200、250、300、400、600ng/mlヨウ素標準液10μlを1濃度あたりそれぞれ2つのウェルに入れた。ヒト尿6検体及びそのヨウ素添加尿検体の6検体の各10μl(各尿検体1mlにヨウ素換算で50ngを含むヨウ素酸カリウム水溶液10μlをそれぞれの加えて調整した)をそれぞれ4つのウェルに入れ、これらすべてのウェルに塩素酸溶液100μlを添加し、以降の検体の前処理については、恒温槽の温度を80℃、100℃、120℃とし、でそれぞれ30分間加熱した以外は実施例1と同様に行った。
2.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
実施例3と全く同様にして行った。
図8に前処理の反応温度とヨウ素添加による測定値の回収率の関係を示した。
【0069】
実施例8
(試薬の調製)
実施例1に従って調製した。
1.検体の前処理
恒温槽の温度を50℃として加熱した以外は全く実施例7と同様にして行った。
3.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
実施例3と全く同様にして行った。
ヒト尿12検体及びその検体にヨウ素50ng/mlを添加したヨウ素添加尿検体(各尿検体1mlにヨウ素換算で50ngを含むヨウ素酸カリウム水溶液10μlをそれぞれの加えて調整した)を用い、前処理温度を50℃で30分間反応させたときのヨウ素の添加回収率を検討した。
前処理の反応温度(加熱温度)とヨウ素の添加による測定値の回収率を比較した。実施例7及び実施例8におけるヨウ素の添加回収率の関係を図8に示した。
【0070】
この結果から、実施例8の前処理温度が50℃での回収率は、平均回収率が低く、また検体によりバラツキが大きかった。これは検体中の尿中干渉物質の含有量に依存するものと推察された。一方、実施例7の80℃以上では90%以上の回収率が得られた。この結果から、尿中の干渉物質を除去するための前処理温度は50℃よりも、前処理温度は80℃以上120℃以下とすることが好ましい。
【0071】
実施例9
(試薬の調製)
実施例1記載の方法のうち加熱前処理に用いる塩素酸濃度について条件を変えた以外は実施例1と同様に行った。即ち、前処理に用いる塩素酸試液(20(W/V)%)に精製水等量を加え塩素酸濃度を10(W/V)%にした。
1.検体の前処理
ヒト尿5検体及びそのヨウ素添加尿5検体(各尿検体1mlにヨウ素換算で50ngを含むヨウ素酸カリウム水溶液10μlをそれぞれの加えて調整した)を用い、前処理に、10(W/V)%塩素酸を使用した以外は、実施例2と同様に行った。
2.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
実施例2と同様に行った。
実施例2及び実施例9の尿中ヨウ素の添加回収率結果を表6に示した。実施例9での10%の塩素酸による前処理では検体により回収率のバラツキが大きく尿中の干渉物質の影響が推察され、一方、実施例2の20%の塩素酸では90%以上の回収率を示した。すなわち、前処理するための添加する塩素酸濃度は10%よりも20%以上使用することが好ましい。
【0072】
【表6】
Figure 0004288733
【0073】
実施例10
(試薬の調製)
実施例1に従って調製した。
1.検体前処理用反応器具(プレートA)の作成
検体前処理用反応器具として、96ウエルのポリプロピレン製マイクロタイタープレート(コーニングコースタージャパン製)4枚を用いて各プレートの22個のウェルに、0、25、50、75、100、150、200、250、300、400、600ng/mlのヨウ素標準液10μlを2ウェルずつ入れた(プレートA)。
2.検体の前処理
ヨウ素標準液を添加していない各ウェルに、前もって、オートアナライザー法(テクニコン インストルメント社)で測定され、その測定値がわかっているヒト尿283検体を各ウェルに入れた。さらに、ヨウ素標準液及びヒト尿検体を入れた各ウェルに、塩素酸溶液100μlをそれぞれ添加した。
実施例1と同様に行った。
【0074】
3.試液の反応(Sandell-Kolthoff反応)及び吸光度の測定
検体の前処理後のプレートAが殆ど室温に戻ったことを確認後、プレートBのすべてのウェルに亜砒酸溶液150μlを加えた。このプレートAの反応液60μlをマルチピペッターにより新しい96ウエルマイクロタイタープレート(ナルジェンヌンクインターナショナル株式会社製、ポリスチレン)(プレートB)に移し替えた。12連マルチピペッタによりすべてのウェルに速やかに(1分以内)硫酸アンモニウムセリウム試液40μlを添加して、30分後に上記プレートBをマイクロタイタープレートリーダ(東ソー株式会社製)に装着し、波長405nmでの吸光度を測定した。
ヒト尿283検体のオートアナライザー法(テクニコンインストルメンツ社)と実施例10の測定結果の相関性を調べ、その結果を図9に示した。結果は、相関係数は約0.92、傾きが1.03と良い相関性を示した。
【0075】
【発明の効果】
請求項1記載のヨウ素の測定方法によれば、前処理において、局所排気施設等の特殊施設を必要とすることなく有害蒸気の蒸散及び反応液の液量変化を抑えることにより、安全に検体の前処理ができ、しかも、再現性の良い測定値が得られる。
請求項2記載のヨウ素の測定方法によれば、加熱処理中の容器破損等の心配がないことから、安全で信頼性の高い検体の前処理ができる。
請求項3記載のヨウ素の測定方法によれば、前処理において、局所排気施設等の特殊施設を必要とすることなく有害蒸気の蒸散及び反応液の液量変化を抑えことにより、又、容器破損等の心配がないことから、安全で信頼性の高い検体の前処理ができる、しかも、再現性の良い測定値が得られる。
【0076】
請求項4記載のヨウ素の測定方法によれば、請求項2又は3記載の発明に加え、多数検体の前処理を迅速に容易にでき、多数検体の測定に好適である。
請求項5記載のヨウ素の測定方法によれば、請求項2〜4記載の発明に加えて、加熱処理中の容器破損等の心配がなく、しかも、測定値に影響を与えるような物質の溶出がないことから、安全で信頼性の高い検体の前処理ができる。
請求項6記載のヨウ素の測定方法によれば、請求項2〜5記載の発明に加えて、安価で信頼性の高い反応器具が入手し易く、加熱処理中の容器破損等の心配がなく安全に、しかも、測定値に影響を与えるような物質の溶出を伴わずに検体の前処理ができる。
【0077】
請求項7記載の検体前処理用反応器具によれば、加熱処理中の容器破損等の心配がなく安全に、しかも、測定値に影響を与えるような物質の溶出を伴わずに、多数検体の前処理ができる。
請求項8記載の検体前処理用反応器具の気密用具によれば、ヨウ素測定の検体の前処理において、局所排気施設等の特殊設備を必要とせず、検体の処理場所に制限されず、有害蒸気の蒸発及び有害廃棄物の発生量を抑えることができ、しかも、多数検体の処理も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロタイタープレート用の気密用具の一例として使用時の正面図を示す図である。
【図2】マイクロタイタープレート用の気密用具の一例として使用時の平面図を示す図である。
【図3】図2のa−a′断面図(ただし、一方の固定補助材としてのスナップネジをはずした状態)を示す図である。
【図4】実施例1のヨウ素の添加回収試験結果を示す図である。
【図5】尿検体20検体の比較例1での測定値と同一検体を実施例1の方法により測定した測定結果との相関性を示す図である。
【図6】実施例5のヨウ素濃度と吸光度の関係の検量線を示した図である。
【図7】比較例2でのヨウ素濃度と吸光度との関係を示した図である。
【図8】実施例7及び実施例8での前処理の反応温度とヨウ素の添加回収率の関係を示す図である。
【図9】ヒト尿検体のオートアナライザー法と実施例10の測定値の相関性を示す図である。
【符号の説明】
1 固定用支持体
2 上部支持板
3 下部支持板
4 固定補助材
5 反応器具
6 スペーサー
7 スペーサー

Claims (11)

  1. 検体を酸化剤と共に加熱消化する検体の前処理工程、次いで、亜砒酸試液及び硫酸アンモニウムセリウム試液を反応させ、その反応液中の吸光度を測定する反応測定工程からなる検体中のヨウ素濃度を定量又は検出する方法において、検体の前処理工程を気密条件下に加熱処理し、冷却することにより行うことを特徴とするヨウ素の測定方法。
  2. 検体を酸化剤と共に加熱消化する検体の前処理工程、次いで、亜砒酸試液及び硫酸アンモニウムセリウム試液を反応させ、その反応液中の吸光度を測定する反応測定工程からなる検体中のヨウ素濃度を定量又は検出する方法において、検体の前処理工程を、耐熱性有機材料からなる反応器具を用いて、しかも、気密条件下に加熱処理し、冷却することにより行うことを特徴とするヨウ素の測定方法。
  3. 耐熱性有機材料からなる反応器具が複数の反応領域を有するものである請求項2記載のヨウ素の測定方法。
  4. 複数の反応領域が、各々200〜1000μlの容量を有する請求項3記載のヨウ素の測定方法。
  5. 耐熱性有機材料が、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、テフロン樹脂又はポリメチルペンテン樹脂である請求項2〜4のいずれかに記載のヨウ素の測定方法。
  6. 反応器具がマイクロタイタープレートである請求項2〜5のいずれかに記載のヨウ素の測定方法。
  7. 検体の前処理工程における処理温度が80〜120℃である請求項1〜6のいずれかに記載のヨウ素の測定方法。
  8. ヨウ素測定用の検体前処理用の気密用具であって、耐熱性有機材料からなり複数の反応領域を有してなる反応器具を、この反応器具の複数の反応領域を覆うようにスペーサーで上下から挟み込み固定することができる上下2個の固定用支持体と、反応器具の反応領域を前記スペーサーにより気密にできるようにこれらの固定用支持体に圧力をかけることができる固定補助材と、から構成されるヨウ素測定用の検体前処理用の気密用具。
  9. ヨウ素測定用の検体前処理が検体を酸化剤と共に加熱消化する処理であって、その処理温度が80〜120℃である請求項8記載のヨウ素測定用の検体前処理用の気密用具。
  10. 反応器具が、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂及びポリメチルペンテン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の耐熱性有機材料からなる請求項8又は9記載のヨウ素測定用の検体前処理用の気密用具。
  11. 上部の固定用支持体の厚さを、下部の固定用支持体よりも厚くしてなる請求項8〜10のいずれかに記載のヨウ素測定用の検体前処理用の気密用具。
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