JP4283417B2 - 霧解消方法 - Google Patents

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【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、霧による視界不良を解消する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気中には常に水分が存在するが、その量と形態は気象条件によりさまざまに変わる。つまり、水分の形態が水蒸気、あるいは微水滴(雲あるいは霧)、あるいは氷晶のいずれとなるかは気圧、気温、気流、乱流、重力、空気抵抗などの因子に依存して相互に移行する。ただし、それらの空間密度には物理条件に対応した上限がある。
【0003】
例えば、水蒸気の場合、標準気圧の平地で水蒸気として飽和できる量は飽和蒸気圧で定まり、0℃で約5g/m3、10℃で9g/m3、20℃で17g/m3、30℃で30g/m3ほどが限界量である。そして、水蒸気がこの限界量を超えると、固体微粒子や汚染液滴(ミスト)を核として微水滴が析出する(凝結)。これが地上に接していれば霧、上空に離れていれば雲と呼ばれる微水滴である。飽和水蒸気が霧粒に引き続き凝結し、あるいは霧粒同士が衝突併合することにより、水滴の直径が30μmを超えると、当該水滴は重力落下を始める。すなわち、大気中に浮遊できる霧の空間密度にも限界量があり、水量にして最大限5g/m3ほどである。
大気の視界を遮る微水滴つまり霧の対策として、従来では、微水滴を蒸発させることが考えられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、水滴を蒸発させるためには、気化エネルギー考慮しなければならないことから、エネルギーが100%の効率で霧に吸収されると仮定しても、大気空間1m3あたり約3kcal/m3(580 cal×5g/m3)ものエネルギーを吸収せしめる必要がある。しかも、霧を除去すべき対象空間は、現実には密閉されてるわけではなく風により絶えず新たな霧が流入し続けるため、当該対象空間には連続してエネルギーを照射し続ける必要がある。したがって、かかる現実の移動霧に対しては、風上に常時(風速×3kW/m3)のエネルギーが必要となる。
【0005】
例えば高速道路の場合、道路幅30m、最低視界高度3m、対象距離を10kmと仮定すると、1時間あたりに必要なエネルギーは、270万kW(=30m×3m×10000m×3kW×1h)となり、電気代を考慮すると到底採算が合わない。
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、エネルギー採算可能な霧解消装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、遠赤外線を簡便に発生せしめる遠赤外線網を霧の流入面に配置することにより、網目間を微水滴が通過することで、効率良く霧にエネルギーを伝達・吸収させることができる。
請求項記載の発明は、請求項記載の発明において、遠赤外線網として金属状ヒーターの表面に、Li 2 約3%含有するAl23、SiO2 を主成分とするセラミックを焼き付けることにより、遠赤外線の発生効率をさらに高めることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第一の実施の形態を、図1を参照して説明する。本実施形態は高速道路に適用した例てあり、道路の外側に電磁波発振器1、パルス変調電源2及び感知モニター3を配置したものである。
まず、霧感知モニター3にて、道路上の視界(光透過率)を常時モニターし、その信号情報を電磁波発振器1にフィードバックする。電磁波発振器1では、この信号情報をもとに設定視界量以下の場合に電磁波を照射し、設定視界量以上の場合には電磁波の発信をストップする。このしきい値は、霧の解消目的(自動車、航空機、船舶等)によって異なってくる。電源としては、電磁波の波形及び周波数を制御可能なパルス変調電源2を用いる。電磁波発信器1から照射される電磁波は、ジクザグ状に、すなわち道路を斜めに横切り中央分離帯に配置された反射板4により反射され、更にこれが道路を斜めに横切り道路脇に配置された反射板4に反射されることで、そのエネルギーが一定空間領域、すなわち道路上において、高効率で霧に伝達・吸収される。
【0008】
道路上に存在する霧の微水滴にエネルギーが伝達・吸収されると、微水滴の内部エネルギーが増加するに従いその表面張力が不安定となることから、微水滴は自ら小水滴に分裂することで安定する。一般に空間に浮遊する微水滴は凝結や衝突で成長するものの、このようなエネルギー過剰の水滴は凝結せず、あるいは衝突しても合体せず、小径にて安定する。
ここで、微水滴の直径と視界(可視光線の透過度)との相関関係として、可視光線については、水滴の直径が10〜20μmのとき最も散乱し易くなる一方、1μm以下では散乱し難くなることがわかってきている。すなわち、従来のように微水滴を水蒸気にまで変換させなくとも、一定値以下に水滴径を制御することが出来れば可視光線の散乱を回避することが出来、霧対策の本質目的である視界不良を解消することができる。
【0009】
したがって、水滴の内部エネルギーをさらに桁違いに増加せしめると、今度は蒸発にエネルギーが費やされ水滴は水蒸気に変換されることになるが、本実施形態では、水滴にそこまでエネルギーを伝達・吸収せしめることはない。すなわち本実施形態では、霧を蒸発させるのではなく、あくまでも直径数μmの小水滴に分裂させる程度の微量なエネルギーにどどめて電磁波のエネルギーを必要最小限に用いることにより、採算可能な霧解消装置を得るものである。
【0010】
また、霧感知モニター3は、本質的には、霧の有無でなく視界不良程度をモニターするものなので、光の透過率、あるいは散乱程度を光学的にモニターするものであることが必要となる。
本実施形態では、高速道路において霧による視界不良が発生したときにのみ、これを解消する必要最小限度の電磁波を効率よく照射する装置(システム)を提供することが可能となる。
【0011】
次に、本発明の第二の実施形態を、図2を参照して説明する。本実施形態も高速道路に適用した例であり、道路の外側に縦波発生器11、電源12及び霧感知モニター3を配置したものである。
本実施形態においても、第一実施形態と同様のシステムに従い、まず霧感知モニター3からの視界情報に基き縦波発生器11を駆動し、霧による視界不良を解消するものであるが、その照射媒体が電磁波でなく、超音波等の縦波である点で第一実施形態と相違する。したがって、電源12については、第一実施形態におけるパルス変調電源2に比し、更に装置が簡略化される。しかしながら、縦波が反射板14へ反射するに際して共鳴振動が生ずると、エネルギーが減衰してしまう。したがって、反射板14には縦波と共振しない設計的配慮が必要であり、具体的には照射される縦波の振動数と反射板14の固有振動数とをずらす必要がある。その他の構成、作用効果は第一実施形態と同様である。
【0012】
以上の構成を有する本実施形態においても、第一実施形態と同様、道路上の一定領域に存在する微水滴に縦波エネルギーが効率よく伝達・吸収されるため、微水滴の自己分裂現象を利用して、視界不良の改善可能な霧解消装置を得ることができる。
【0013】
次に、本発明の第三の実施の形態を、図3及び図4を参照して説明する。本実施形態も高速道路に適用した例で、図3あるいは図4に示すように遠赤外線網を道路上に覆ったものである。ここで図3あるいは図4は、地形等の因子に基く霧の流入態様に応じた被覆パターンを示した図であり、図3は横方向あるいは下方向からの霧の流入のみが生ずる場合の、図4は更に上方向からの流入も生ずる場合の被覆パターンをそれぞれ示したものである。また、遠赤外線網としては、ヒーターとしても機能する金属網の外表面に、Li 2 約3%含有のAl23、SiO2 を焼き付けたセラミックを採用している。
【0014】
かかる構成を有する本実施形態においては、ヒーターとしても機能する金属網を、図示せぬ通電手段により通電して発熱させることにより、遠赤外線網の外表面のセラミックコーティングから遠赤外線が簡易に発生する。一方、霧が道路に流入するに際しては、必ずこの遠赤外線網の網目間を通過するため、近接した位置から効率的に微水滴に遠赤外線が照射される。また、遠赤外線の発生メカニズムも、金属網の通電量に依存する簡便な構造であることから、図示せぬ霧感知モニターとの組み合せによって遠赤外線発生量の制御が容易である。これにより、第一、第二実施形態と同様の水滴自己分裂現象と相まって、効率の良い霧解消装置を得ることが可能である。
【0015】
なお、本装置は、これら実施形態で示した高速道路の場合のみならず、一般道路、航空機の滑走路、あるいは港湾にも適用可能である。
【0016】
【発明の効果】
以上本発明によれば、霧の微水滴が小水滴に分裂することで視界不良が改善される現象に着目し、更に微水滴に内部エネルギー増大よる自己分裂現象に着目し、電磁波、縦波、遠赤外線等を微水滴に効率的に照射する装置を提供することで、蒸発方式に比べて桁違いに少ないエネルギーで霧による視界不良を解消する装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の第一の実施の形態による霧解消システム構成を示す図。
【図2】 図2は本発明の第二の実施の形態による霧解消システム構成を示す図。
【図3】 図3は本発明の第三の実施形態による遠赤外線網の被覆パターンを示す図。
【図4】 図4は本発明の第三の実施形態による遠赤外線網の被覆パターンを示す図。
【符号の説明】
1……電磁波発振器
2……パルス変調電源
3……霧感知モニター
4、14……反射板
11……縦波発振器
12……電源
……遠赤外線網

Claims (3)

  1. 霧の微水滴に、遠赤外線を照射して微水滴にエネルギーを吸収させて霧を解消する方法において、霧による視界不良を監視する霧感知モニターと、この霧感知モニターからの信号に基づき遠赤外線に通電する通電手段とを有し、照射するエネルギーの量を霧の微水滴を蒸発させるに至らず、霧の微水滴を直径数μmの小水滴に分裂させる程度の微量なエネルギーにとどめて、霧の粒子を更に小水滴に分裂させて可視光線の散乱を回避し、視界不良を改善することを特徴とする霧解消方法。
  2. 金属網状ヒーターの表面にセラミックコーティングを施した遠赤外線放射体網を、霧の流入面に配置することを特徴とする請求項1記載の霧解消方法。
  3. セラミックとして、Li2O約3%を含有するAl23、SiO2を主成分とするセラミックを焼き付けたことを特徴とする請求項2記載の霧解消方法。
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