本文書には、パケット交換型データ通信ネットワークにおいてローミングを行う移動端末におけるシームレスなハンドオフを実現するための方法が開示されている。開示された発明の理解を助けるため、以下の定義が用いられる:
(a)「パケット」とは、データネットワーク上で送り届けられ得るあらゆるフォーマットの自己内包型のデータ単位を言う。「パケット」は通常、「ヘッダ」部と「ペイロード」部の二つの部分から成る。「ペイロード」部は送り届けられるべきデータを含み、「ヘッダ」部はパケットの送達を助けるための情報を含んでいる。「ヘッダ」部はパケットの送信者と受信者をそれぞれ識別するために、送信元アドレスと宛先アドレスを含む。
(b)「パケットトンネリング」とは、自己内包型のパケットを別のパケットにカプセル化することを指す。「パケットトンネリング」することをパケットの「カプセル化」とも言う。カプセル化されるパケットは「被トンネル化パケット」または「内部パケット」と言う。「内部パケット」をカプセル化するパケットは「トンネル化パケット」または「外部パケット」と言う。ここでは、「内部パケット」の全体が「外部パケット」のペイロード部を構成する。
(c)「モバイルノード」とは、パケット交換型データ通信ネットワークへの接続ポイントを変更するネットワーク構成要素を言う。これはパケット交換型データ通信ネットワークへの接続ポイントを変更するエンドユーザ通信端末を指して用いられる。本文書では、特に他の明示がない限り、「モバイルノード」と「移動端末」の用語を区別せずに用いる。
(d)「ホームアドレス」とは、移動端末が現在、パケット交換型データ通信ネットワーク上の何処に接続しているかに関わりなく、該移動端末にアクセスするために用いることができる、移動端末に割り当てられるプライマリグローバルアドレスを言う。
(e)接続ポイントの近傍で使用されるアドレスとホームアドレスが位相的に適合するパケット交換型データ通信ネットワークに接続されている移動端末は、「ホームに存在する」と言う。単一の管理当局によって制御されるこの接続ポイントの近傍を移動端末の「ホームドメイン」と言う。
(f)接続ポイントの近傍で使用されるアドレスと移動端末のホームアドレスが位相的に適合しないポイントでパケット交換型データ通信ネットワークに接続されている該移動端末は「アウェーである」と言い、該接続ポイントの近傍を「フォーリンドメイン」と言う。
(g)「気付アドレス」とは、割り当てられた「気付アドレス」が、パケット交換型データ通信ネットワークへのモバイルノードの接続ポイントの近傍で使用されるアドレスと位相的に適合するように、アウェーの状態にある移動端末に割り当てられる一時的グローバルアドレスを言う。
(h)「ホームエージェント」とは、移動端末のホームドメインに常駐し、該移動端末がアウェーの状態にある場合に該移動端末の気付アドレスの登録サービスを行い、該移動端末のホームアドレスに宛てられたパケットを該モバイルノードの気付アドレスへ転送するネットワークエンティティを言う。
(i)「結合更新」とは、受け手に送り手の現在の気付アドレスを知らせるための、ホームエージェントまたはパケット交換型データ通信ネットワーク上で該移動端末が通信を行っている他のノードに移動端末から送られるメッセージを言う。これにより、受け手側で、該移動端末の気付アドレスとホームアドレスとの間の結合が形成される。
以下の記載においては、説明上、本発明の完全な理解を提供するための特定の数、時間、構造、およびその他のパラメータが示される。しかしながら、本発明がこれらの特定な詳細なしで実施されても良いということは当業者にとって明らかであろう。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る移動端末の構成を示すブロック図である。図1に示される移動端末100はM基(Mは2またはそれ以上の整数)の下位インターフェイス101−1〜101−M、モビリティサポートユニット(MSU)102、上位レイヤーユニット103、およびマルチアクセス判定ユニット(MADU)104を有する。下位インターフェイス101−1〜101−Mの何れか一つまたはそれ以上について言及する場合には、以後、該下位インターフェイスを「下位インターフェイス101」と記載する。
移動端末で利用可能な異なるアクセス機構は下位インターフェイス101−1〜101−Mに要約されている。下位インターフェイス101は、物理ネットワークインターフェイスハードウェア、該ハードウェアを制御するソフトウェア、およびそのようなハードウェアを介する通信を統括するプロトコルを指す集合ブロックである。例えば、国際標準化機構(ISO)の開放型システム間相互接続(OSI)モデルの下では、下位インターフェイス101は物理層およびデータリンク層に関連する全てのプロトコルを含む。先に記載されたように、本発明は複数のアクセス機構を有する移動端末を対象としている。一般的には、そのような移動端末は通常、複数の下位インターフェイスから構成される。
注意すべきは、単一の物理的ハードウェアが二つ(またはそれ以上)の異なるアクセス機構を提供しても良いという点である。そのような構成であっても、依然、その各々が各アクセス機構で求められる機能をカプセル化するような複数の下位インターフェイス101−1〜101−Mを有するものとして表すことができる。下位インターフェイス101は、それに対応付けられたアクセス機構が基地局とアクティブなリンクを持っている場合にアクティブであると言う。
同様に、機能ブロックである上位レイヤーユニット103は、モビリティサポートユニット102および下位インターフェイス101を介して、データパケットの送受信を行うための全ての上位レイヤープロトコルおよびアプリケーションを含めて要約されたものである。ISOのOSIモデルを再度、例として用いると、上位レイヤーユニット103はアプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層、およびトランスポート層を含む。
MSU102はパケットの受信、その送信、およびパケットの経路決定を処理するため、パケット交換型データ通信動作において、移動端末100の中核となるものである。これはISOのOSIモデルにおけるネットワーク層、あるいはインターネットプロトコル(IP)環境におけるIPレイヤーに相当する。MSU102はまたパケット交換型データ通信ネットワークに対しての移動端末100のモビリティを処理するロジックを含む。とりわけ、MSU102は、移動端末100が新しい基地局に接続する際に、新規の一時グローバルアドレス(すなわち、気付アドレス)の生成、または取得の処理も行い、さらに、移動端末100のホームアドレスと気付アドレスの間の結合を登録するために、移動端末100のホームエージェントに結合更新を送る役割を負う。
本記載において注意すべきは、ホームアドレスと気付アドレスが移動端末100ではなく、下位インターフェイス101に結び付けられるという点である。これは、インターネットプロトコルのようにアドレスがネットワークノードではなくネットワークインターフェイスに結び付けられる殆どのパケット交換型データ通信ネットワークと整合するものである。移動端末100の下位インターフェイス101−1〜101−Mの全てが同一のホームアドレスを共有する場合もその対象として含むという点において、そのような区別はまた一般的である。アドレスが下位インターフェイス101−1〜101−Mに結び付けられるので、ホームドメインおよびフォーリンドメインの概念もまた下位インターフェイス101に関係するものとなる。すなわち、下位インターフェイス101は、そのホームアドレスがパケット交換型データ通信ネットワークへの接続ポイントと位相的に適合する場合に、ホームに存在し、同ホームアドレスがパケット交換型データ通信ネットワークへの接続ポイントと位相的に適合しない場合に、フォーリンドメインに存在する。
MADU104は本発明の中核である。以降の記載で明らかとなるように、MADU104は移動端末100の気付アドレスとホームアドレスの間の結合を動的に変更し、下位インターフェイス101−1〜101−Mの何れか又は全てを作動させ、または、非作動にさせるための決定を行う役割を負う。また、MADU104は下位インターフェイス101の何れが、何れのタイプのアクセス機構と対応付けられているかを事前に知っている。
参照番号110で記された、下位インターフェイス101とMSU102の間の各パス、および、参照番号111で記された、MSU102と上位レイヤーユニット103の間のパスはあるユニットから別のユニットへパケットを転送するために使用されるデータパスである。下位インターフェイス101を制御するために使用される各信号パスは参照番号112で記されている。MADU104に下位インターフェイス101における新たな状態を報知するために使用される各信号パスは参照番号113で記されている。MSU102を制御するために使用される信号パスは参照番号114で記されている。MADU104にMSU102における新たな状態を報知するために使用される信号パスは参照番号115で記されている。
通常の動作の下、移動端末100は、一基またはそれ以上の下位インターフェイス101をアクティブな状態にさせている。アクティブな下位インターフェイス101の各々に対して、移動端末100は気付アドレスをホームアドレスに結合させている。そのような結合は、既に移動端末100のホームエージェント、および、該移動端末100と通信を行っている他のネットワークノードに送られていても良い。これは図2に表されている。図2は、本実施の形態に係る移動端末が接続されているパケット交換型データ通信ネットワークの全体における動作例を説明する図である。
この例では、移動端末100はパケット交換型データ通信ネットワーク150への二つの接続ポイントを有する:一つは下位インターフェイス101−aを介したアクセス機構161を用いて基地局151を経由するものであり、もう一つは下位インターフェイス101−bを介したアクセス機構162を用いて基地局152を経由するものである。同図において、下位インターフェイス101−aは、対応するホームエージェント171を持つ恒久的なグローバルアドレス(すなわち、ホームアドレス)HoA.1を有するものとする。下位インターフェイス101−aに割り当てられている気付アドレスはCoA.BS1で、これは基地局151のドメインにおいて、位相的に有効なものである。加えて、下位インターフェイス101−bは、対応するホームエージェント172を持つ恒久的なホームアドレスであるHoA.2を有する。下位インターフェイス101−bに割り当てられている気付アドレスはCoA.BS2で、これは基地局152のドメインにおいて、位相的に有効なものである。
これらの対応付けの下で、移動端末100に対して、HoA.1宛てに送られたパケットはホームエージェント171にインターセプトされる。ホームエージェント171はその後、パケットトンネリングを用いて、このパケットを気付アドレスCoA.BS1に転送する。外部パケットがCoA.BS1に宛てられるため、このパケットは基地局151を介して、移動端末100にルーティングされる。同様に、移動端末100に対して、HoA.2宛てに送られたパケットはホームエージェント172にインターセプトされる。ホームエージェント172はその後、パケットトンネリングを用いて、このパケットを気付アドレスCoA.BS2に転送する。外部パケットがCoA.BS2に宛てられるため、このパケットは基地局152を介して、移動端末100にルーティングされる。
図2において(および、上記の記載において)注意すべきは、通例として二つのホームエージェントが記載されている点である。本概念が、如何なる数の下位インターフェイス、および、如何なる数のホームエージェントにも適用され得るものであり、かつ、その二つの数が独立のものであることは、当業者にとって自明である。実際のところ、図2の説明において、ホームエージェント171とホームエージェント172は同一のエンティティであることもあり得る。
さらに注意すべきは、結合更新を受け取ることができるエンティティはホームエージェントだけではないという点である。ホームアドレスと気付アドレスの間の結合は、移動端末と通信を行う他のネットワークノードにも知らせることができる。例えば、モバイルIPv6では、モバイルノードは、該モバイルノードが通信を行っているノード(対応ノードと呼ばれる)に対して、いわゆる経路最適化を行うことができ、該経路最適化では、パケットを(ホームエージェントを介するのでなく)該モバイルノードの気付アドレスに転送するための特別の指示を該対応ノードがパケット内に挿入することができるようにするための結合更新を該モバイルノードが該対応ノードに対して送る。移動端末が結合更新をこれらの対応ノードに対しても送る場合であっても。本開示発明が何らその機能性を損なうことなく、等しく適用されることは当業者にとって自明のことである。
移動端末100が移動するに伴い、アクセスリンクのうちの一つがレンジ外となり、そのため、リンクが断たれる場合がある。例証のため、下位インターフェイス101−aと基地局151の間のリンクが断たれていると仮定する。以降、そうした下位インターフェイス101−aのような下位インターフェイスをダウンした下位インターフェイスと称する。
MADU104が信号パス113,115の一つからこれを検出した場合、該MADU104はホームアドレスHoA.1を再度対応付けるよう試みる。再対応付けがなされない場合、移動端末100に対して、宛先アドレスHoA.1に送られたパケットは、トンネル化する側のパケットが移動端末100のCoA.BS1に到達できないため、送達されない。該ダウンした下位インターフェイスのホームアドレス、すなわち、HoA.1を再度対応付けするため、MADU104は図3に表されるアルゴリズムを行う。図3はMADU104における動作を説明するフローチャートである。
上述したように、MADU104はステップ1000において、ダウンした下位インターフェイス101−aを検出し、その後、ステップ2000において、MADU104は、まず、一基またはそれ以上のアクティブな下位インターフェイス101を検索するために、下位インターフェイス101−1〜101−Mをスキャンする。MADU104はM基の下位インターフェイス101−1〜101−Mを統括している。
これらの下位インターフェイス101−1〜101−Mは、それぞれのアクセスネットワークとの接続を独立して取得、保持しており、インターフェイス_状態(下位インターフェイス101が該アクセスネットワークに対応付けられているかどうかを示すフラグ)、インターフェイス_AA(該アクセスネットワークとの対応付けが下位インターフェイス101からの認証および/または承認を要するか、または、ユーザ情報が必要かを示すフラグ)、および、AA_状態(該認証および/または承認が求められる場合に、下位インターフェイス101と該アクセスネットワークとの間の該認証および/または承認が行われたかを示すフラグ)を含むインターフェイス状態メッセージを生成する。インターフェイス状態メッセージのインターフェイス_状態フィールドにおける下位インターフェイス101用のアクティブインジケータは、該インターフェイスが、該移動端末のユーザプロファイルが要求する、または該アクセス機構が要求するところの適切な下位インターフェイス認証および承認を既に首尾よく完了している場合もあり、この旨を表示する。インターフェイス状態メッセージの実行は以下の通りである。
インターフェイス状態メッセージ{
インターフェイス_状態;/*「1」はアクティブを示し「0」はそれ以外を示す*/
インターフェイス_AA;/*「1」は下位インターフェイスのアクセスネットワークへの完全な対応付けには認証および/または承認が必要であることを示し「0」は下位インターフェイスのアクセスネットワークへの完全な対応付けには認証および/または承認が必要でないことを示す**/
AA_状態;/*「1」は認証および承認プロセスが完了したことを示し「0」はそれ以外を示す。*/
}
メッセージはMADUからの要求とは独立して、または、これに応答する形で生成されても良い。「0」と「1」は単に例証のためのものである点に注意すべきである。同一の意味を表すために他の如何なる値を用いても構わないということは当業者にとって自明である。
ステップ3000において、アクティブな下位インターフェイス101のリストから、MADU104は使用されるアクティブな下位インターフェイス101を選択する。ここでは下位インターフェイス101−bがアクティブな下位インターフェイスとして選択されるとする。この選択はランダムでも良いし、ある優先度に基づくものでも良い。そのような優先度は、以下の評価基準のうちの一つに基づいて、設定されても良い。
(i)アクセス機構のコスト(サテライトリンクとIEEE802.11の間の関係のように、あるアクセス機構は他のアクセス機構よりも高コストである場合がある)、最も低コストのアクセスを提供する下位インターフェイス101を選択する;
(ii)アクセス機構の消費電力(サテライトリンクとIEEE802.11の間の関係のように、あるアクセス機構は他のアクセス機構よりも多くの電力を消費する場合がある)、最も小さな消費電力でのアクセスを提供する下位インターフェイス101を選択する;
(iii)アクセス機構の帯域/速度、最も高いビットレートまたは最も高速のアクセスを提供する下位インターフェイス101を選択する;
(iv)アクセス機構の利用可能性、移動端末100の現在の移動パターンを所与のものとして、最も長い時間、アクティブな状態を保ち続けることができると推定される下位インターフェイス101を選択する;
(v)上記基準の加重組合せ(合計)、加重する値は零でも、正、負でも良く、最も大きな合計値を提供する下位インターフェイス101を選択する。
アクティブな下位インターフェイス101−bが選択されると、次にMADU104は、ステップ4000において、選択された下位インターフェイス101−bがホームドメインに存在するか、フォーリンドメインに存在するかをチェックする。チェックの結果、選択された下位インターフェイス101−bがホームに存在する場合、MADU104は、ステップ5000において、MSU102に対して、ダウンした下位インターフェイス101−aのホームアドレスの、気付アドレスとしての選択された下位インターフェイス101−bのホームアドレスとの結合の設定を指示する。一方、選択された下位インターフェイス101−bがフォーリンドメインに存在する場合、MADU104は、ステップ6000において、MSU102に対して、ダウンした下位インターフェイス101−aのホームアドレスの、気付アドレスとしての選択された下位インターフェイス101−bの気付アドレスとの結合の設定を指示する。
MADU104は、ダウンした下位インターフェイス101−aが、他の下位インターフェイス101−bから気付アドレスを「借り受け」している状態にあるかどうかを反映するように何らかの内部ステートの設定を行う必要がある。換言すれば、該内部ステートが更新された後は、該ダウンした下位インターフェイスは、気付アドレスを「借り受け」しているものとして記される。加えて、MADU104は、ダウンした下位インターフェイス101−aが何れの下位インターフェイス101から気付アドレスを「借り受け」しているのかについて記憶しておく必要もある。
この場合、下位インターフェイス101−bがフォーリンドメインにあるので、MADU104は、MSU102に対して、CoA.BS2とHoA.1の間で結合を設定するように指令する。これにより、HoA.1宛てに送られたパケットはトンネル化されて、下位インターフェイス101−bと基地局152の間にアクセス機構162により確立されるアクセスリンクを介して、移動端末100に送られる。
この新たなアドレス結合は、ダウンした下位インターフェイス101−aが基地局151、または、他の何れかの新しい基地局へのアクセスリンクを再確立する時まで有効とされる。
より具体的には、ステップ7000において、ダウンした下位インターフェイス101−aが新たなアクセスを再確立する。これが起きると、ステップ8000において、MADU104は、MSU102に対して、基地局(元の局または新たな局)から得た新たな気付アドレスをダウンした下位インターフェイスのホームアドレス、すなわち、HoA.1の結合に使用するよう指令する。加えて、MADU104は、下位インターフェイス101−aがこれ以上、気付アドレスを「借り受け」しているものとして記されることのないよう、(以前は)ダウンしていた下位インターフェイス101−aに関するステータス変数をクリアーする。
ダウンした下位インターフェイス101−aが何れかの基地局と再度対応付けられる前に、下位インターフェイス101−aがその気付アドレスを「借り受け」していた下位インターフェイス101−bがダウンしてしまう場合もあり得る。従って、下位インターフェイス101がダウンしている場合、MADU104は、その内部ステート(ステート変数)をスキャンして、何れの下位インターフェイス101が気付アドレスをダウンした下位インターフェイス101から「借り受け」していたかを確認する。借り受けをしていた何れの下位インターフェイス101もまたダウンするものとして扱われ、新たにダウンした下位インターフェイス101も含めて、ダウンしているインターフェイス全ての各々に対して、図3に記載されるアルゴリズムが実行される。
このように、本実施の形態によれば、アクティブなアクセス機構に対応付けられている他のインターフェイス101−bが使用するアドレスを、アクセスを失う下位インターフェイス101−aに一時的に借り受けさせることにより、基地局へのリンク断続から復旧することができる移動端末100とその方法が記載されている。したがって、移動端末100がパケット交換型データ通信ネットワークへの接続ポイントを変更するに伴って、複数のアクセス機構を有する移動端末100が、基地局の制御から独立して、基地局間でのシームレスなハンドオフを実現することができる。
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2に係る移動端末の構成を示すブロック図である。図4に示される移動端末200は実施の形態1で説明した移動端末の構成と同様の基本構成を有するため、移動端末100の構成要素と同一の移動端末200の構成要素に対しては同一の参照番号をそれぞれ付し、その詳細な説明は省略する。
移動端末200は、移動端末100の下位インターフェイス101−1〜101−M、およびMADU104の代わりに、M基の下位インターフェイス201−1〜201−M、およびMADU202を有する。下位インターフェイス201−1〜201−Mの何れか一つまたはそれ以上について言及する場合には、以後、該下位インターフェイスを「下位インターフェイス201」と記載する。
本実施の形態において説明される技術的特徴として、移動端末200では、下位インターフェイス201が予測技術を用いて、MADU202に自らが程なくダウンすることを知らせる。したがって、実施の形態1で説明されていたように下位インターフェイス201がダウンするのを待つことなく、MADU202を作動させることができる。
下位インターフェイス201−1〜201−Mは上述の予測を行うが、この予測は以下の方法に基づいて行われ得る。
(i)基地局からの信号電力を用いる:だんだん弱くなっていく信号は移動端末が基地局から遠ざかっていくことを示唆する;
(ii)移動端末200の速度を測定する;
(iii)(例えばGPSシステムを用いて)移動端末200の現在位置と既知である基地局の所在位置とを比較する;または
(iv)上記の方法の組み合わせ。
その後、予測結果に基づいて、下位インターフェイス201−1〜201−Mは、リリースインジケータ(該下位インターフェイスがアクセス機構から完全に対応付けを断たれる準備ができているかどうかを示すフラグ)およびリリースタイム(該下位インターフェイスがインターフェイスリリース表示メッセージを生成してから測定されるアクセスネットワーク対応付け切断時間)を含む、以下のようなインターフェイスリリース表示メッセージを生成する。
インターフェイスリリース表示メッセージ{
リリースインジケータ;/*「1」はインターフェイスが先に対応付けられていたアクセス機構との接続をリリースすることを示し「0」はインターフェイスが接続をリリースしないことを示す*/
リリースタイム;/*メッセージが下位インターフェイスから送り出されてから、完全な対応付け切断が起きるまでの時間単位*/
}
対応付けが首尾よく切断した後、下位インターフェイス201−1〜201−Mはインターフェイス状態メッセージのインターフェイス状態フィールドを生成するために必要なパラメータを更新する役割を負う。インターフェイス状態フィールドは、インターフェイス状態メッセージがその後生成されるのに応じて、「0」にリセットする必要がある。注意すべきは、このメッセージがMADU202からの要求とは独立して、またはこれに応答する形で生成されても良いという点であり、「0」と「1」は単に例証のために記載されているものである。同一の意味を表すために他の如何なる値を用いても構わないということは当業者にとって自明である。
下位インターフェイス201−1〜201−Mの他の如何なる特徴も実施の形態1で説明された下位インターフェイス101−1〜101−Mのものと同一である。
MADU202が、信号パス113を介して、下位インターフェイス201が今まさに切断されようとしていることを示す、下位インターフェイス201によって生成されたインターフェイスリリース表示メッセージを受け取ると、MADU202は該インターフェイスリリース表示メッセージを事前に送っている下位インターフェイス201(以降「示唆下位インターフェイス」と称する)のホームアドレスを再度対応付けるための処置を取る。MADU202の他の何れの特徴も実施の形態1で説明されたMADU104のものと同一である。
MADU202によって取られる処置は、図5に示すように、図3に表されているものと同様である。図5はMADU202における動作を説明するフローチャートである。
ステップ1500において、MADU202は、示唆下位インターフェイス、例えば、下位インターフェイス201−a(下位インターフェイス101−aと同等)からハンドオフの示唆として、インターフェイスリリース表示メッセージを受け取る。その後、MADU202は、ステップ2000に進み、ステップ2000〜4000の動作を実施の形態1で説明されたようにして行う。
ステップ4000でのチェックの結果、選択された下位インターフェイス、例えば、下位インターフェイス201−b(下位インターフェイス101−bと同等)がホームに存在する場合、MADU202は、ステップ5500において、MSU102に対して、示唆下位インターフェイス201−aのホームアドレスの、気付アドレスとしての選択された下位インターフェイス201−bのホームアドレスとの結合の設定を指示する。一方、選択された下位インターフェイス201−bがフォーリンドメインに存在する場合、MADU202は、ステップ6500において、MSU102に対して、示唆下位インターフェイス201−aのホームアドレスの、気付アドレスとしての選択された下位インターフェイス201−bの気付アドレスとの結合の設定を指示する。
実施の形態1におけるダウンした下位インターフェイスの場合と同様に、MADU202は、示唆下位インターフェイス201−aが、他の下位インターフェイス201−bから気付アドレスを「借り受け」している状態にあるかどうかを反映するように何らかの内部ステートの設定を行う必要がある。加えて、MADU202は、示唆下位インターフェイス201−aが何れの下位インターフェイス201から気付アドレスを「借り受け」しているのかについて記憶しておく必要もある。これを行うことにより、MADU202は、他の下位インターフェイス201にアドレスを借り受けさせている下位インターフェイス201がダウンした場合、または、接続を失うことを予測する旨の通知を発した場合に、適切な対応を採ることができる。これが起きると、MADU202は、その内部ステートのスキャンを行い、何れの下位インターフェイス201が、ダウンした(または、接続を失うことを予測する旨の通知を発した)下位インターフェイス201から気付アドレスを借り受けしているかを確認する。借り受けをしていた何れの下位インターフェイス201もまたダウンするものとして扱われ、ダウンしているインターフェイス全ての各々に対して、図4に記載されるアルゴリズムが実行される。
新たなアドレス結合は、ステップ7500において、示唆下位インターフェイス201−aが新たなアクセスリンクを再確立する時まで有効である。本実施の形態では、示唆下位インターフェイス201−aはダウンした後、または実際にダウンする前に新たなアクセスリンクを再確立し得る。
その後、ステップ8500において、MADU202は、MSU102に対して、基地局(元の局または新たな局)から得た新たな気付アドレスを、示唆下位インターフェイスのホームアドレス、すなわち、HoA.1との結合に使用するよう指示する。加えて、MADU202は、示唆下位インターフェイス201−aに対応付けられている何れのステータス変数をも除去して、下位インターフェイス201−aが最早、気付アドレスを借り受けしているものとして記されることがないようにする。
本実施の形態によれば、ハンドオフ予測が行われる。そのようなハンドオフ予測の実行は、新たな結合が設定されはするものの、下位インターフェイス201と基地局の間の実際の物理的リンクはまだ繋がっているために有利である。このため、既にトランジット中の何れのパケットも先の気付アドレスにて移動端末200に依然、到達できる。これにより、二つの基地局間でのシームレスなハンドオフが可能になる。
説明として、図6は前の基地局、例えば基地局(BS)151から新たな基地局、例えば基地局(BS)152にハンドオフされる下位インターフェイス201−aについての時系列を示している。期間210においては、下位インターフェイス201−aとBS151の間のリンクがアクティブであり、下位インターフェイス201−aのホームアドレスHoA.1は、基地局151のドメインで位相的に適合である気付アドレスCoA.BS1と結合されている。
時間211において、下位インターフェイス201−aはBS151から遠ざかっていることを検出し、MADU202にこれを警告する。MADU202はその後、図5において上記説明されたアルゴリズムに従い、代替の下位インターフェイス201の気付アドレスCoA.2を選択する。このアドレスは、他のノード(例えば移動端末200のホームエージェント)にこの新たな結合を伝える結合更新メッセージを送ることにより、ホームアドレスHoA.1に結合される。
このようにして、期間212においては、下位インターフェイス201−aは新たな(一時的)気付アドレスであるCoA.2を使用し始める。注意すべきは、この期間212においては、下位インターフェイス201−aは依然としてBS151によりアクセス可能であり、よって、CoA.BS1宛てに移動端末200に送られた何れのパケットも依然として移動端末200に送り届けられることができるという点である。
時間213において、移動端末200はBS151からずっと遠く離れたために基地局151と下位インターフェイス201−aとの間のリンクはダウンする。このため、期間214においては、下位インターフェイス201−aは最早、CoA,BS1に未だ宛てられているパケットを受け取ることができない。最後に、時間215において、下位インターフェイス201−aは新たな基地局、すなわち、BS152に対応付けられている。そして、下位インターフェイス201−aは、BS152のドメインにおいて位相的に適合である、新たな気付アドレスであるCoA.BS2を割り当てられる。このため、期間216において、ホームアドレスHoA.1は気付アドレスCoA.BS2に結合されている。注意すべきは、CoA.2の「借り受け」先である下位インターフェイス201がアクティブである限り、CoA.2に宛てられたパケットは、依然として移動端末200によって受け取られることができるという点である。
上記の記載から明らかなように、本実施の形態では、何れの時点においても少なくとも一基の下位インターフェイスがアクティブであることを条件として、移動端末200が常にそのホームアドレスを通じてアクセスされることができるようになる。本実施の形態はまた、基地局に特別の動作を要求することなく、ハンドオフの後に前の気付アドレスに転送されたパケットが受信できないという課題を解決する。
図6で説明された時系列を注意深く見てみると、気付アドレスCoA.BS1宛てに移動端末200に対して転送されたパケットが、移動端末200に到達できない可能性が僅かながらある。このことは、下位インターフェイス201−aがBS151から切断された後(すなわち、時間213の後)に、パケットがBS151に到達する場合に起こる。これを回避するために、期間212(すなわち、時間長t_pred)は、依然としてホームアドレスHoA.1が気付アドレスCoA.BS1と結合されていると了解している他の全てのノードから送られたパケットが時間213の前には既に送り届けられているように、十分な長さにしなければならない。
これには二つの部分があることに注意すべきである:その第一は、該送信ノードは実際にはHoA.1とCoA.BS1の間の結合を知っている場合があることで、第二は、該送信ノードが該パケットをHoA.1に送り、下位インターフェイス201−aのホームエージェントが該パケットをトンネル化して、CoA.BS1に送ることである。これゆえ、時間長t_predは、HoA.1とCoA.2の間の新しい結合を含む結合更新メッセージがHoA.1とCoA.BS1の間の結合を知っている全てのノードに到達するための時間、さらに加えて、これらのノードにより基地局151に届くように送られたパケットのための追加のトランジット時間が十分に得られる長さでなければならない。真にシームレスなハンドオフを確保するためには、数学的には時間長t_predは以下の式(式1)の条件を満たすものとなる。
t_pred >= t_bu + t_pkt (式1)
ここで、t_predは、接続断が起きることを下位インターフェイス201−aが予測してから実際に接続断が起きるまでの時間であり、t_buは移動端末200により送られた結合更新メッセージが意図された受け手に到達するまでにかかる平均時間、t_pktは他の何れかのノードにより送られたパケットが移動端末200に到達するまでにかかる平均時間である。注意すべきは、標準的なパケット交換型データ通信ネットワーク(例えばIPまたはIPv6)ではパケットのトランジット時間は制限されていないので、十分な時間長を設けることはハンドオフによるパケットの損失を最小限にするのみに留まるという点である。通常は、t_buおよびt_pktは推定するのが難しい。そこで、パケットが移動端末200から他のノードに渡り、そして戻ってくるのにかかる平均時間を示すラウンドトリップ時間t_rttとしても知られるそれらの合計を推定することが、しばしば実践される。これにより、上記(式1)は次の式(式2)となる。
t_pred >= t_rtt (式2)
したがって、ハンドオフ予測を用いる移動端末200のような装置は一時アドレスを事前に借り受けることができ、これにより、基地局の動作に何ら特別の考慮を要することなく、真にシームレスなハンドオフを実現することができる。
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3に係る移動端末の構成を示すブロック図である。図7に示される移動端末300は実施の形態1で説明した移動端末の構成と同様の基本構成を有するため、移動端末100の構成要素と同一の移動端末300の構成要素に対しては同一の参照番号をそれぞれ付し、その詳細な説明は省略する。
移動端末300は、移動端末100の下位インターフェイス101−1〜101−M、およびMADU104の代わりに、M基の下位インターフェイス301−1〜301−M、およびMADU302を有する。下位インターフェイス301−1〜301−Mの何れか一つまたはそれ以上について言及する場合には、以後、該下位インターフェイスを「下位インターフェイス301」と記載する。
上述した実施の形態は、移動端末100,200が複数のアクティブなアクセスリンクとシームレスなハンドオフを実現することのできる方法について開示した。これに対して、本実施の形態では、移動端末300が通常の環境下において、如何なる一時点においても一つのアクセス機構がアクティブでありさえすれば良いという点まで、該方法を発展させることができる。アクティブなアクセス機構が基地局への接続を失う時にのみ、MADU302は代替のアクセス機構を作動させるようにする。
この種の「オンデマンド」の作動は、移動端末が二つの異なるタイプのアクセス機構、すなわち、一のアクセス機構は低コスト(または高速)であるが、アクセスがショートレンジなもの(例えばIEEE802.11またはブルートゥース)で、もう一つのアクセス機構は高コスト(または低速)であるものの、アクセスがロングレンジなもの(例えばGPRSまたはサテライトリンク)を有する場合に、とりわけ有益である。通常の状況において、移動端末300は、より低コストの(またはより高速な)アクセス機構をプライマリのアクセス方法として使用することを指向する。これに対して、移動端末300がレンジから外れた場合には、移動端末300が該プライマリアクセス機構の新たな動作エリアに到達する時まで、より高コストな方の(またはより低速な方の)アクセス機構を稼動させて、接続を維持する。
したがって、下位インターフェイス301−1〜301−Mは異なるタイプのアクセス機構に対応付けられる。下位インターフェイス301−1〜301−Mの他の如何なる特徴も移動端末100の下位インターフェイス101−1〜101−Mのものと同一である。
また、上述したように、MADU302は、アクセス機構が基地局への接続を失うことを知った場合に、代替アクセス機構を作動させたり、非作動にさせたりする。MADU302の他の何れの特徴も移動端末100のMADU104のものと同一である。
次に、上記の構成を有する移動端末300のMADU302における動作について、図8を用いて説明する。MADU302は図8に表されるアルゴリズムに従う。
ステップ1000において、ダウンした下位インターフェイス、例えば下位インターフェイス301−a(下位インターフェイス101−aと同等)を検出した後、MADU302は、ステップ2500において、ダウンした下位インターフェイス301−aに対応付けられていたアクセス機構とは異なるタイプの代替アクセス機構に対応付けられる一基またはそれ以上の下位インターフェイス301を検索するために、下位インターフェイス301−1〜301−Mをスキャンする。そのような下位インターフェイスを以降「代替下位インターフェイス」と呼ぶこととする。
その後、ステップ3500において、MADU302は、実施の形態1において説明されたものと同一の選択方法に基づいて、代替下位インターフェイス301の一つ、例えば下位インターフェイス301−b(下位インターフェイス101−bと同等)を選択する。
そして、ステップ3600において、選択された代替下位インターフェイス301−b(すなわち、選択された代替下位インターフェイス301−bのアクセス機構)を作動させる。これには、選択された代替下位インターフェイス301−bの電源投入、基地局への対応付け、および、必要であれば気付アドレスの設定のための待ちが伴う。選択された代替下位インターフェイス301−bがアクティブになると、MADU302はステップ4000に進む。そして、ステップ4000〜8000の動作が実行される。これらのステップは図3に示され、実施の形態1で説明されたものと同一である。
このように、本実施の形態によれば、一時的アドレスが確実に使用できるよう、代替アクセス機構をオンデマンドで作動させることのできる移動端末300とその方法が記載されている。
本実施の形態に記載される技術の採用は、インターネットプロトコル(IP)環境において、典型的に見られる。ここでは、例えば、個人用携帯型情報端末(PDA)のような移動端末が二つの異なるアクセスインターフェイス、すなわち、GPRS(汎用パケット無線サービス)を用いた、より低速ではあるがレンジの長いアクセスインターフェイスと、米国電気電子技術者協会(IEEE)規格802.11bを用いた、より高速ではあるがレンジの短いアクセスインターフェイスを持ち得る。
移動端末は、一のインターネットサービスプロバイダー(ISP)に契約して、両方の機構を使用することができる。この場合、ISPは大概において、両方のアクセスインターフェイスを管理するための単一のホームエージェントを提供する。或いは、移動端末は異なるアクセスインターフェイスについて、別々のISPと契約することもできる。この場合には、各々のISPがそれぞれのアクセスインターフェイスを管理するための一のホームエージェントを提供する。
本実施の形態に記載された方法を用いて、人気の高まりつつあるホットスポットで見つけることができる、802.11bのアクセスポイントの動作レンジに移動端末がある間は、802.11bを用いて、該移動端末はインターネットにアクセスすることができる。移動端末がレンジ外に移動した場合、該移動端末が別の802.11bアクセスポイントのレンジ内に移動するまで、よりレンジの長いGPRSが用いられ、これによりインターネットへの一時的アクセスを得ることができる。注意すべきは、単一のISP(したがって、単一のホームエージェント)が関わっているか、複数のISP(したがって、複数のホームエージェント)であるかは関係がないという点である。
このようにして、本実施の形態に開示される技術はシームレスに動作する。また、移動端末は、経路最適化の技術を用いて、結合更新をホームエージェント以外のノードに送ることもできる。本実施の形態の方法により、移動端末は、全ての必要なノードにアドレス結合を知らせさえすれば、連続的なハンドオフにわたってのセッション連続性を維持することができる。
(実施の形態4)
図9は本発明の実施の形態4に係る移動端末の構成を示すブロック図である。図9に示される移動端末400は実施の形態1で説明した移動端末の構成と同様の基本構成を有するため、移動端末100の構成要素と同一の移動端末400の構成要素に対しては同一の参照番号をそれぞれ付し、その詳細な説明は省略する。
移動端末400は、移動端末100の下位インターフェイス101−1〜101−M、およびMADU104の代わりに、M基の下位インターフェイス401−1〜401−M、およびMADU402を有する。下位インターフェイス401−1〜401−Mの何れか一つまたはそれ以上について言及する場合には、以後、該下位インターフェイスを「下位インターフェイス401」と記載する。
本実施の形態をより良く理解するために述べると、本実施の形態における技術的特徴は、実施の形態2において説明された予測技術と、実施の形態3において説明された「オンデマンド」の作動技術との組合せである。実施の形態3において説明された装置および方法のもたらす効果は、先述の予測技術と合わせることで、さらに高めることができる。
したがって、下位インターフェイス401−1〜401−Mは、下位インターフェイス301−1〜301−Mのように、異なるタイプのアクセス機構に対応付けられる。また、下位インターフェイス401−1〜401−Mは、下位インターフェイス201−1〜201−Mのように、ハンドオフ予測を行う。下位インターフェイス401−1〜401−Mの他の如何なる特徴も実施の形態1で説明された下位インターフェイス101−1〜101−Mのものと同一である。
MADU402は、MADU302のように、アクセス機構が基地局への接続を失うことを知った場合に、代替アクセス機構を作動させたり、非作動にさせたりする。また、MADU402がMADU202のように、信号パス113を介して、下位インターフェイス401が今まさに切断されようとしていることを示す、下位インターフェイス401によって生成されたインターフェイスリリース表示メッセージを受け取ると、MADU402は該インターフェイスリリース表示メッセージを事前に送っている下位インターフェイス401(すなわち、示唆下位インターフェイス)のホームアドレスを再度対応付けるための処理を取る。MADU402の他の何れの特徴も実施の形態1で説明されたMADU104のものと同一である。
次に、上記の構成を有する移動端末400のMADU402における動作について、図10を用いて説明する。MADU402は図10に表されるアルゴリズムに従う。
実施の形態2で説明したステップ1500の後、MADU402は、実施の形態3で説明したステップ2500、ステップ3500、ステップ3600へと進み、そして、実施の形態1で説明したステップ4000へと進む。その後、ステップ4000でのチェック結果に基づいて、実施の形態2で説明したステップ5500、または、ステップ6500へと進み、さらに、実施の形態2で説明したステップ7500とステップ8500へと進む。
そのようなオンデマンドの作動とハンドオフ予測を組み合わせることで、次のような追加のメリットがもたらされる:移動端末400がそのプライマリの下位インターフェイス401を介して、シームレスなハンドオフを実現できるだけでなく、代替下位インターフェイス401をそれが必要となる時までオフのモードにしておくことによって、端末のオペレーションコストも低く保つことができる(何れのアクセス機構をプライマリとするかを選択する際に、何れの基準を用いるかによって、コストは金銭的な値、送信遅延または電力消費の点から測定される)。例として、前の基地局、例えばBS152からハンドオフされる下位インターフェイス、例えば下位インターフェイス401−a(下位インターフェイス101−aと同等)が図11において、時系列で示されている。
期間411において、下位インターフェイス401−aとBS151の間のリンクはアクティブであり、下位インターフェイス401−aのホームアドレスHoA.1は、BS151のドメインで位相的に適合である気付アドレスCoA.BS1に結合されている。時間412において、下位インターフェイス401−aは端末がBS151から遠ざかっていることを検出し、MADU402にこれを警告する。そして、MADU402は図10に表されているアルゴリズムに従って、代替下位インターフェイス401を作動のために選択する。この代替下位インターフェイス401は時間413において作動され、気付アドレスCoA.2を割り当てられる。MADU402は、その後、MSU102に対して、他のノード(例えば移動端末400のホームエージェント)にこの新たな結合を伝える結合更新メッセージを送ることにより、HoA.1とCoA.2の間に結合を設定するよう指示する。したがって、期間414においては、下位インターフェイス401−aは新たな(一時的)気付アドレスであるCoA.2を使用し始める。注意すべきは、この期間414においては、下位インターフェイス401−aは依然としてBS151によりアクセス可能であり、よって、CoA.BS1宛てに移動端末400に送られた何れのパケットも依然として移動端末400に送り届けられることができるという点である。
時間415において、移動端末400はBS151からずっと遠く離れたために基地局151と下位インターフェイス401−aとの間のリンクはダウンしている。このため、期間416においては、下位インターフェイス401−aは最早、CoA,BS1に未だ宛てられているパケットを受け取ることができない。その後、移動端末400は、時間417において、BS152のレンジ内に移動する。そして、下位インターフェイス401−aは、BS152のドメインにおいて位相的に適合である、新たな気付アドレスであるCoA.BS2を割り当てられる。このため、期間418において、ホームアドレスHoA.1は気付アドレスCoA.BS2に結合されている。注意すべきは、CoA.2の「借り受け」先である代替下位インターフェイス401がアクティブである限り、CoA.2に宛てられたパケットは、依然として移動端末400によって受け取られることができるという点である。したがって、代替下位インターフェイス401は、時間419において、CoA.2に転送された残りの全てのパケットが送り届けられるよう、幾らかの遅延t_delayの後にはじめて遮断される。
図11においてt_predおよびt_delayで示されている、真にシームレスなハンドオフを確実にするための二つの重要な時間長がある。時間長t_predは、接続断が起きることを下位インターフェイス401−aが予測してから、実際に接続断が起きるまでの時間である。ハンドオフによるパケットの損失を最小限にするために、時間長t_predは、以下の時間の合計以上でなければならない。
(i)代替の下位インターフェイス401を作動させるのに要する時間;
(ii)フォーリンドメインにある場合には、代替下位インターフェイス401がアドレス結合を設定するのに要する時間;
(iii)結合更新メッセージが意図された受け手に到達するのに要する平均時間;および
(v)他のノードにより送られたパケットが移動端末400に到達するのに要する平均時間。
数学的には、これは次の式(式3)を意味する。
t_pred >= t_activate + t_bu+ t_pkt (式3)
ここで、t_predは、接続断が起きることを下位インターフェイス401−aが予測してから実際に接続断が起きるまでの時間であり、t_activateは、フォーリンドメインにある場合に代替下位インターフェイス401がアドレス結合を設定するのに要する時間を含めた、代替下位インターフェイス401を作動させるのに要する時間であり、t_buは移動端末400により送られた結合更新メッセージが意図された受け手に到達するまでにかかる平均時間であり、t_pktは他の何れかのノードにより送られたパケットが移動端末400に到達するまでにかかる平均時間である。t_buおよびt_pktに代えて、ラウンドトリップ時間t_rttが推定される場合には、上記の式(式3)は以下の式(式4)となる。
t_pred >= t_activate + t_rtt (式4)
時間長t_delayは、ダウンした下位インターフェイス401−aがBS152に対応付けられてから、代替下位インターフェイス401をシャットダウンするまでの遅延である。ハンドオフによるパケットの損失を最小限にするために、時間長t_delayは、結合更新メッセージが意図された受け手に到達するまでにかかる平均時間と、他の何れかのノードにより送られたパケットが移動端末400に到達するまでにかかる平均時間の合計以上でなければならない。数学的には、これは次式(式5)を意味する。
t_delay >= t_bu + t_pkt (式5)
或いは、ラウンドトリップ時間t_rttを用いるならば、上記(式5)は次の式(式6)となる。
t_delay >= t_rtt (式6)
従って、ハンドオフ予測を用いる移動端末400のような装置は一時アドレスを事前に借り受けることができ、これにより、基地局の動作に何ら特別の考慮を要することなく、真にシームレスなハンドオフを実現することができる。