JP4249322B2 - 電線損傷表示器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、落雷による送電線路の損傷の有無を表示するための電線損傷表示器に関する。
【0002】
【従来の技術】
送電線路への落雷によって、落雷個所の架空地線等に素線切れなどの損傷を生ずる場合のあることが知られている。このような素線損傷が生じた場合にそのまま放置すると、他の素線にかかる荷重が増大して電線が断線し、地絡あるいは短絡事故を招来するばかりでなく、鉄塔径間の張力変化および断線で垂れ下がった電線などにより2次災害を生じるおそれがある。そのため、従来から、ヘリコプターによる送電線路の巡視あるいはラジコン操作の自走機などによって、送電線路の損傷を発見する方法がとられている。ヘリコプターによる巡視は、ヘリコプター上から送電線路の目視点検を行なうと共にビデオ撮影することにより、送電線路の損傷個所を発見しようとするものである。自走機による方法は、ビデオカメラを搭載した自走機をラジコン操作によって鉄塔径間の電線上を自走させ、ビデオ映像を目視点検することにより、送電線路の損傷個所を発見しようとするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなヘリコプター巡視および自走機による方法では、落雷によって送電線路に損傷が生じたか否かを知る場合、長い距離にわたって送電線路を詳細に目視点検する必要があるので、送電線路の損傷発見の容易性を欠くばかりでなく、損傷発見に長時間を要することになるなどの問題点があった。
【0004】
本発明は上記観点に基づいてなされたもので、その目的は、落雷によって送電線路に損傷が生じたか否かを的確に表示することができ、しかも、動作電源が不要で保守が極めて容易な電線損傷表示器を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、落雷による送電線路の損傷の有無を表示するための表示器であって、前記送電線路への落雷によって流れる雷電流に基づいて電圧を発生する電圧発生手段と、前記送電線路に損傷を与える波形持続時間の長い落雷を前記送電線路が受けた場合に作動する損傷検出手段と、前記電圧発生手段によって充電される充電手段を有し、前記損傷検出手段が作動することで前記充電手段の充電電圧を出力する制御手段と、前記制御手段の出力によって駆動される表示手段とを有し、前記電圧発生手段が誘導コイルで、前記損傷検出手段がリードスイッチである電線損傷表示器によって、上記目的を達成する。
【0006】
このような構成によれば、送電線路に落雷が生じると、それによって流れる雷電流に基づいて電圧発生手段が電圧を発生し、この電圧で制御手段の充電手段がが充電される。そして、当該落雷が送電線路に損傷を与える波形持続時間の長いものである場合に損傷検出手段が作動し、充電手段に充電された電圧によって表示手段が駆動される。送電線路に損傷を与えるのは、エネルギの大きな雷すなわち雷電流とその持続時間との積で与えられる電荷量の大きな雷である。雷電流の波高値が高くても波形持続時間が短い場合には電荷量が大きくはならないので、送電線路に損傷を生じることはない。これに対して、波高値が高い場合はもとより波高値が低い場合でも波形持続時間が長いと、電荷量が大きくなり、送電線路に素線溶損あるいは素線切れなどの損傷を与える。本発明では、このような送電線路に損傷を与える波形持続時間の長い落雷の場合に損傷検出手段が作動し表示手段が駆動されるので、落雷によって送電線路に損傷が生じたことを的確に表示することができる。しかも、雷電流に基づいて得られる電圧を動作電源として利用するので、電源を設ける必要がない。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態の一例を示す構成図、図2は図1の構成を矢印A方向からみた正面図である。
【0008】
図において、1は電圧発生手段としての誘導コイル、2は損傷検出手段としてのリードスイッチ、3は制御手段、4は表示手段である。
【0009】
誘導コイル1,リードスイッチ2および制御手段3は、樹脂製の本体ケース5に収納されている。本体ケース5は、一面に突設の円筒部6を有し他面に収納凹部7が形成された本体部材8と、収納凹部7を閉成するように本体部材8の他面に接合される背板部材9とを有している。本体部材8の円筒部6は自由端面が開放されており、その内部に制御手段3が収納されるようになっている。誘導コイル1およびリードスイッチ2は、背板部材9によって閉成される収納凹部7に収納されるようになっている。このような本体ケース5は、背板部材9の外表面を取付面として、送電線路の鉄塔の主柱材10に背板部材9の外表面が密着するように固定される。
【0010】
誘導コイル1は、本例では空心の角形ボビン11に巻回して設けられ、鉄塔の主柱材10に流れる雷電流で電圧を発生するように本体ケース5の収納凹部7に収納されている。角形ボビン11に必要に応じて磁心を設けることができることは勿論である。リードスイッチ2は、図2に示すように誘導コイル1からの磁界の影響を受けないように誘導コイル1とは離間して設けられ、鉄塔の主柱材10に流れる雷電流によって生じる磁界を受けるように本体ケース5の収納凹部7に収納されている。リードスイッチ2は、送電線路に損傷を与える波形持続時間の長い落雷があった場合に鉄塔の主柱材10に流れる雷電流によって生じる磁界に応答して閉成するように、構成されている。送電線路は、電荷量が20〜30クーロン以上になると素線溶損が生じ、電荷量が更に高くなると素線溶断に至るので、例えば20〜30クーロンの電荷量を与える波形持続時間を有する雷電流によって生じる磁界でオンするように、リードスイッチ2が構成される。夏季雷に多くみられるように、波高値が高くても雷電流の波形持続時間が数十〜数百μsecと短い場合には、波形持続時間が極めて短いので電荷量は20クーロン以下であり、送電線路に損傷を生じることはない。このような場合には、雷電流の波形持続時間が短いので、それによって生じる磁界には応答しきれず、リードスイッチ2はオンすることはない。これに対して、冬季雷に多くみられるように、波高値が夏季雷で多くみられるような波高値の数十分の一程度と低いにも拘らず、雷電流の波形持続時間が数十〜数百msecと極めて長い場合には、電荷量が20〜30クーロン以上の大きな値となり、送電線路に素線溶損や素線溶断が生じる。このような場合には、雷電流の波形持続時間が長いので、それによって生じる磁界に応答してリードスイッチ2がオン状態になる。
【0011】
制御手段3は、誘導コイル1に発生した電圧で後述のコンデンサ22を充電し、リードスイッチ2が閉成することでその充電電圧を表示手段4に出力する。このような制御手段3は図3に示すような構成を有している。
【0012】
図3は図1の制御手段3の一例を示す回路図で、第1の保護回路12,整流回路13,充電手段としての充電回路14および第2の保護回路15を有している。第1の保護回路12は、過電圧防止用の両極性ダイオード16とバリスタなどのサージ吸収素子17との並列接続を有し、誘導コイル1に発生した電圧を入力して整流回路13に与える。雷には正極性のものと負極性のものとがあるが、いずれの場合でも両極性ダイオード16によって波高値が抑制され、後段回路への過電圧の流入が防止されるようになっていると共に、サージ吸収素子17によって後段回路へのサージの流入が防止されるようになっている。整流回路13は、4つのダイオード18,19,20,21からなるブリッジ整流回路で、整流電圧を充電回路14に与える。充電回路14は、整流回路14からの整流電圧が与えられるコンデンサ22と抵抗23との並列接続を有し、その一方の出力端が表示手段4の後述するソレノイド35の一端に接続され、他方の出力端がリードスイッチ2の一端に接続されるようになっている。リードスイッチ2の他端は表示手段4のソレノイド35の他端に接続されるようになっている。第2の保護回路15は、リードスイッチ2に並列に接続されるバリスタなどのサージ吸収素子24を有し、後段回路へのサージの流入を防止するようになっている。このような制御手段3は、誘導コイル1に電圧が発生すると、第1の保護回路12および整流回路13を介して、充電回路14のコンデンサ22を抵抗23との時定数に従って充電する。雷電流の波形持続時間が短くリードスイッチ2がオンしない場合には、コンデンサ22の充電電圧は抵抗23を通して放電する。一方、雷電流の波形持続時間が送電線路に損傷を与えるほどに長いと、リードスイッチ2のオンにより、表示手段4のソレノイド35にコンデンサ22の充電電圧を印加する。
【0013】
表示手段4は、一端面が開放の円筒状の表示部ケース26と、表示部ケース26の開放端面を閉成する表示部蓋体27と、表示部蓋体27を開成する駆動手段28とを有している。
【0014】
表示部ケース26は底部26aを有し、底部26a側が本体ケース5の円筒部6の自由端面に固着されるようになっている。表示部ケース26の内部中央部分にはシリンダ部材29が底部26aから突設されており、シリンダ部材29の自由端部の内周に環状のケース用永久磁石30が設けられていると共に、このシリンダ部材29の内部に駆動手段28の後述するピストン39が摺動自在に収納されている。表示部蓋体27の内面中央部分には、表示部ケース26のシリンダ部材29の自由端部分を受容するように係合する係合円筒部材31が突設されており、この係合円筒部材31に、シリンダ部材29のケース用永久磁石30と位置対応するように環状の蓋用永久磁石32が設けられている。ケース用永久磁石30および蓋用永久磁石32は互いに吸着するように着磁されており、両者の磁気吸着力によって表示部蓋体27が表示部ケース26を閉成するようになっている。表示部ケース26には更に表示体33が収納されている。表示体33は、一端が表示部ケース26に固定され他端が自由端になっているコイル状の表示スプリング33aと、表示スプリング33aの素線表面を覆うように設けられた例えば赤色などの表示布33bとによって構成されている。表示体33は、シリンダ部材29の周囲に収納されるようになっており、表示部蓋体27を開成する方向に付勢するようになっている。表示体33の付勢力はケース用永久磁石30と蓋用永久磁石32との間の磁気吸着力よりも遥かに弱く、従って表示体33の付勢力によって表示部蓋体27が開成することはない。表示部蓋体27はチェーン34を介して表示部ケース26に結合されている。
【0015】
駆動手段28は、制御手段3によって励磁されるソレノイド35と、ソレノイド35に移動自在に保持されたプランジャ36と、プランジャ36をソレノイド35から突出する方向に付勢するプランジャ付勢スプリング37と、プランジャ付勢スプリング37の付勢力に抗してプランジャ36を最引込み状態に吸着するプランジャ吸着マグネット38と、プランジャ36に係合しプランジャ36の突出で表示部蓋体27を外方に押出すピストン39とを有している。ソレノイド35は、本体ケース5の円筒部6内に収納されるように、表示部ケース26の底部26aの外端面に保持されている。プランジャ36は、表示部ケース26の底部26aに形成された開口40を通してシリンダ部材29内のピストン39に係合している。ピストン39は、ケース用永久磁石30の内周面およびシリンダ部材29の内周面を摺動面とし、プランジャ36がソレノイド35から突出することで表部蓋体27を外方に押出すようになっている。このような駆動手段28は、制御手段3によってソレノイド35が励磁されることで、プランジャ吸着マグネット38の磁力を打消し、プランジャ付勢スプリング37の付勢力と相俟ってプランジャ36を突出させ、これによりピストン39を移動させて、図4に示すように表示部蓋体27を開成する。図4は表示手段4が作動した状態を示す図である。
【0016】
図5は図1の構成の電線損傷表示器の動作説明図で、50は図1で述べた電線損傷表示器、51は送電線路の鉄塔、52は送電線路の架空地線である。以下、図5を併用して図1の構成の動作を説明する。
【0017】
電線損傷表示器50は鉄塔51の主柱材10に前述したように取付けられる。電線損傷表示器50が取付けられた状態で、例えば架空地線52に落雷Sが生じたとすると、架空地線52に雷電流Isが流れると共に、鉄塔51に分流し、分流した雷電流Is1が、電線損傷表示器50が固定されている主柱材10を通してグランドに流れる。主柱材10に雷電流Is1が流れることで、電線損傷表示器50の誘導コイル1に電圧が発生し、これによって制御手段3のコンデンサ22が充電される。落雷Sによる雷電流Isの波形持続時間が架空地線52に損傷を与えるほどに長い場合には、鉄塔51の主柱材10に流れる雷電流Is1も同様に波形持続時間が長くなるので、それによって生ずる磁界に応答してリードスイッチ2が閉成し、コンデンサ22の充電電圧が表示手段4のソレノイド35に与えられる。これにより、表示手段4のプランジャ36がソレノイド35から突出し、ピストン39によって表示部蓋体27がケース用永久磁石30と蓋用永久磁石32との磁気吸着力に抗して外方に押出され、表示体33の付勢力とも相俟って、図4に示すように、表示部蓋体27が開成して表示体33が露出状態になり、送電線路の損傷が表示される。
【0018】
送電線路の鉄塔の抵抗値は架空地線などよりも十倍以上大きいので、各鉄塔に分流する雷電流は大きな減衰を受ける。そのため、落雷個所に近い鉄塔ほど分流する雷電流が大になり、遠い鉄塔ほど小になるので、落雷個所に近い鉄塔51に設けられた電線損傷表示器50が作動することとなり、落雷個所を特定することができる。
【0019】
一方、落雷Sによる雷電流Isの波形持続時間が短く、架空地線52に損傷を与えない場合には、リードスイッチ2がオンになることはなく、コンデンサ22に充電された電荷は抵抗23を通して放電されることとなる。
【0020】
なお、表示作動した表示手段4のリセットは、ピストン39を押込むことによりプランジャ36がプランジャ吸着マグネット38によって吸着された図1の状態にし、表示体33を表示部ケース26に収納して表示部蓋体27で閉成すればよい。表示部蓋体27は磁気吸着力によって表示部ケース26に結合されるので、極めて容易に表示部ケース26を閉成することができる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、落雷によって流れる雷電流に基づいて電圧発生手段が発生する電圧で充電手段を充電し、送電線路に損傷を与える波形持続時間の長い落雷があった場合に損傷検出手段が作動することによって、充電手段に充電された電圧で表示手段を駆動するように構成したので、落雷による送電線路の損傷を的確に表示することができ、しかも、動作電源が不要なため保守が極めて容易な電線損傷表示器を提供することができる。
【0022】
また、送電線路の鉄塔に流れる雷電流で作動するように電圧発生手段および損傷検出手段を設けることとしたので、落雷個所の特定がしやすい電線損傷表示器を提供することができる。
【0023】
更に、充電手段の電圧で励磁されるソレノイドによってプランジャおよびピストンを駆動することにより電線損傷を表示するようにしたので、表示作動した後、何らの部品交換も必要もなく再使用することができ、しかも、磁気吸着力を利用して表示部ケースと表示部蓋体とを結合するようにしているので、極めて簡単に再セットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施の形態の一例を示す構成図である。
【図2】図2は図1の構成を矢印A方向からみた正面図である。
【図3】図3は図1の制御手段の一例を示す回路図である。
【図4】図4は図1の表示手段が作動した状態を示す図である。
【図5】図5は図1の構成の電線損傷表示器の動作説明図である。
【符号の説明】
1 誘導コイル
2 リードスイッチ
3 制御手段
4 表示手段
5 本体ケース
10 主柱材
22 コンデンサ
26 表示部ケース
27 表示部蓋体
30 ケース用永久磁石
32 蓋用永久磁石
33 表示体
33a 表示スプリング
35 ソレノイド
36 プランジャ
37 プランジャ付勢スプリング
38 プランジャ吸着マグネット
39 ピストン
Claims (4)
- 落雷による送電線路の損傷の有無を表示するための表示器であって、
前記送電線路への落雷によって流れる雷電流に基づいて電圧を発生する電圧発生手段と、
前記送電線路に損傷を与える波形持続時間の長い落雷を前記送電線路が受けた場合に作動する損傷検出手段と、
前記電圧発生手段によって充電される充電手段を有し、前記損傷検出手段が作動することで前記充電手段の充電電圧を出力する制御手段と、
前記制御手段の出力によって駆動される表示手段と、
を有し、前記電圧発生手段が誘導コイルで、前記損傷検出手段がリードスイッチである電線損傷表示器。 - 取付面が前記送電線路の鉄塔に密着するように設けられる樹脂製の本体ケースを有し、この本体ケースに、前記鉄塔に流れる雷電流で作動するように前記電圧発生手段および前記損傷検出手段を収納配置すると共に、前記制御手段を収納した請求項1に記載の電線損傷表示器。
- 前記表示手段が、
前記本体ケースの取付面と反対側に設けられ、表示体を収納する端面開放の表示部ケースと、
前記表示部ケースとの間の磁気吸着力により前記表示部ケースの開放端面を閉成する表示部蓋体と、
前記制御手段の出力で励磁されるソレノイドを有し、前記ソレノイドが励磁されることで磁気吸着力に抗して前記表示部蓋体を開成して、前記表示体を露出させる駆動手段とを有する請求項2に記載の電線損傷表示器。 - 前記駆動手段が、
前記ソレノイドに移動自在に保持されたプランジャと、
前記プランジャを前記ソレノイドから突出する方向に付勢するプランジャ付勢スプリングと、
前記プランジャ付勢スプリングの付勢力に抗して前記プランジャを最引込み状態に吸着するプランジャ吸着マグネットと、
前記プランジャに係合し、前記プランジャの突出で前記表示部蓋体を外方に押出すピストンとを有し、
前記ソレノイドの励磁で前記プランジャ吸着マグネットの磁力を打消すことにより前記プランジャを突出させる構成を有すると共に、
前記表示体が、前記表示部蓋体を開成方向に付勢する表示スプリングを有する請求項3に記載の電線損傷表示器。
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