JP4247523B2 - キトサン誘導体を含有する組成物、その製法、前記組成物から形成されたフィルムおよび前記フィルムを用いた止血剤 - Google Patents

キトサン誘導体を含有する組成物、その製法、前記組成物から形成されたフィルムおよび前記フィルムを用いた止血剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海産物のカニなどに含まれるキチンの脱アセチル化物であるキトサン、ホルムアルデヒドおよび活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸を反応させてなるキトサン誘導体を含有する組成物、その製法、前記組成物から形成されたフィルムおよび前記フィルムからなる止血剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
下式で代表されるキトサンはバイオマス材料として知られ、多様な機能を有している。以下にその応用分野および用途をあげる。
【0003】
【化1】
Figure 0004247523
【0004】
・食品分野:健康食品・食品の添加剤・防腐剤・ペット用飼料・その他
・医療分野:人工皮膚・縫合糸・人工透析膜・人工じん帯・人工支柱・動物用治療具・薬剤用カプセル・除放性フィルム・その他
・農業分野:土壌改良剤・成長促進剤・殺虫剤・抗ウイルス剤・ウイルス病の防除・その他
・工業分野:石鹸・毛髪剤・衣類・寝具類・玩具類・クロマトグラフィー担体・染料紙・各種フィルム類・化粧品・ハミガキ・入浴剤・木工塗料・無公害プラスチック・TVブラウン管・各種被覆剤・その他
・環境分野:廃液凝集材・重金属排除剤・汚水処理剤・貴金属吸着剤・放射線物質吸着剤・その他
・その他
【0005】
このようにキトサン(キチンを含む)の応用分野は多方面にわたっている。また、前記キトサンを有効に利用するために、種々の研究が行なわれている。
【0006】
たとえば、特許文献1には、多孔質粒状キトサンをジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの溶媒に溶解させたジカルボン酸誘導体で架橋させたのちアセチル化することにより、リゾチームの精製に適したアフィニティークロマトグラフィー担体が得られることが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、多孔質粒状キトサンをジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの溶媒中、ジカルボン酸活性エステルで架橋処理してなる酵素固定化用担体が記載されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、キトサン多孔性ビーズを、水、エーテル類、カルボン酸類、ピリジンなどの溶媒中、架橋処理剤(ジカルボン酸、その誘導体、ジアルデヒド、ジイソシアナートなど)により架橋処理したクロマトグラフィー用吸着担体が得られることが記載されている。
【0009】
また、特許文献4には、酸水溶液として存在するキトサンまたはその誘導体を、潜在アルカリ性触媒の存在下、アミノ基またはイミノ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物(ジカルボン酸、その誘導体など)と反応させて架橋せしめ、得られた溶液を乾燥させることにより、キトサンまたはその誘導体からなる成形体を製造する方法が記載されている。
【0010】
さらに、特許文献5には、キトサンにホルムアルデヒドとシアン化水素を反応させて得られるN−シアノメチル化キトサンを加水分解してN‐カルボキシキトサンを得ることが記載されている。
【0011】
【特許文献1】
特開昭63−44884号公報(2〜4頁)
【特許文献2】
特開昭63−44887号公報(2〜3頁)
【特許文献3】
特開昭63−48451号公報(2〜4頁)
【特許文献4】
特開平7−2904号公報(3〜5頁)
【特許文献5】
特開平8−277304号公報(2〜15頁)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
たとえば、特開昭63−44884号公報、特開昭63−48451号公報および特開昭63−48451号公報に記載のアフィニティークロマトグラフィー担体、酵素固定化用担体およびクロマトグラフィー用吸着担体の場合、多孔質粒状キトサンやキトサン多孔性ビーズを製造したのち、有機溶媒などの溶媒中に溶解させた架橋処理剤により処理することにより架橋させているため、製造工程が長い。また、製造されるものは、多孔質粒状体に限られる。さらに、架橋部がたとえばアミノ基およびカルボキシル基が反応して形成されるアミド結合により形成されるため、吸水性などの新しい特性は期待できない。
【0013】
また、特開平7−2904号公報に記載の成形体は、キトサンまたはその誘導体を架橋せしめ、得られた溶液を乾燥させることにより、製造される成形体であるが、架橋部がたとえばアミノ基およびカルボキシル基が反応して形成されるアミド結合により形成されるため、吸水性などの新しい特性は期待できない。
【0014】
さらに、特開平8−277304号公報には、キトサンにホルムアルデヒドとシアン化水素を反応させて得られるN−シアノメチル化キトサンを加水分解してN‐カルボキシキトサンを得ることが記載されているが、使用する原料がシアン化水素という毒性の高いものであり、得られたN−シアノメチル化キトサンをさらに加水分解してN‐カルボキシキトサンを得なければならないというものである。
【0015】
以上のように、キトサンが本来有する性質を保持するとともに、新しい特性を示すものが求められているが、新しい特性を示すキトサン由来のものがあまり得られていないのが実状である。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、キトサンをホルムアルデヒドおよび活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸と反応させることによって、キトサン誘導体を含有する組成物を、毒性の低い原料を用いて短い簡単な工程で製造することができること、該キトサン誘導体を含有する組成物は、フィルムの製造に使用することができ、製造されたフィルムは、水を吸収してゲル化するが、アルコールと接触しても吸収しないという特性を有すること、また、前記組成物は、錯化剤、保湿剤などとして使用し得る可能性があることが見出されたことによってなされたものであり、
キトサン(グルコサミンの重合物)100重量部(以下、部という)に対して、ホルムアルデヒド1.86〜22.3部および活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸をホルムアルデヒド1モルに対して0.2〜1.5モル反応させてなるキトサン誘導体を含有する組成物(請求項1)、
キトサン、ホルムアルデヒドおよび活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸の反応が、キトサンに含まれるアミノ基にホルムアルデヒドに由来するメチレン基を介して活性CH基からHがとれた基が結合した構造が生成する反応である請求項1記載の組成物(請求項2)、
キトサン誘導体を含有する組成物が、酸性水溶液に、キトサン、ホルムアルデヒドおよび活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸がこれらの合計として1.5〜10重量%(以下、%という)含有されている請求項1記載の組成物(請求項3)、
酸性水溶液に溶解させたキトサン(グルコサミンの重合物)100部、ホルムアルデヒド1.86〜22.3部および活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸をホルムアルデヒド1モルに対して0.2〜1.5モル混合して反応させることを特徴とするキトサン誘導体を含有する組成物の製法(請求項4)、
請求項1、2または3記載の組成物から形成されたフィルム(請求項5)、および
請求項5記載のフィルムからなる止血剤(請求項6)
に関する。
【0017】
前記キトサンをホルムアルデヒドおよび活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸(以下、特定の多価カルボン酸ともいう)と混合することによるキトサン誘導体の生成は、たとえば下記反応式により示される。ホルムアルデヒドの使用モル数と比較して、特定の多価カルボン酸の使用モル数が等モル以上の場合、特定の多価カルボン酸中の活性CH基の1個が反応するものの割合が多くなり、特定の多価カルボン酸がホルムアルデヒドに由来するメチレン基を介してキトサンのアミノ基にペンダント状に結合したものの割合が多くなる。一方、ホルムアルデヒドの使用モル数と比較して、特定の多価カルボン酸の使用モル数がたとえば1/2モル付近まで少なくなると、特定の多価カルボン酸中の活性CH基の2個以上が反応するものの割合が多くなり、特定の多価カルボン酸がホルムアルデヒドに由来するメチレン基を介してキトサンのアミノ基2個と結合したものとなり、下記反応式に示されるごとき構造となりやすくなる。
【0018】
【化2】
Figure 0004247523
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のキトサン誘導体を含有する組成物は、キトサン(グルコサミンの重合物)、ホルムアルデヒドおよび活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸を特定割合で反応させることにより得られる。
【0020】
前記キトサンは、キチンを脱アセチル化処理することにより得られるD−グルコサミンまたはこれとN−アセチル−D−グルコサミンとからなる多糖類であって、脱アセチル化の程度によってD−グルコサミンとN−アセチル−D−グルコサミンとの比率が種々異なる組成物である。一般には、溶解性や作業性などの点から脱アセチル化度50〜100%、さらには70〜100%、数平均分子量が1万〜100万、さらには3万〜100万のものが好ましく用いられる。
【0021】
前記キトサンは市販のものでもよく、また、カニ、エビなどの甲殻から常法により分離・精製して得られるキチンをアルカリ水溶液中で処理することによっても入手したものでもよい。
【0022】
前記ホルムアルデヒドにはとくに限定はなく、市販のパラホルムアルデヒド、ホルマリン水溶液などを使用することができる。これらのうちでは、パラホルムアルデヒドが一般的で使用しやすい点から好ましい。
【0023】
なお、ホルムアルデヒドのかわりにアセトアルデヒドやベンズアルデヒドを使用した場合、本発明のキトサン誘導体を含有する組成物は得られない。
【0024】
前記活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸(特定の多価カルボン酸)としては、たとえばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、酒石酸のごとき水酸基を有していてもよい飽和の脂肪族ジカルボン酸や、クエン酸などの3価以上のカルボン酸があげられる。2つまたは3つ以上のカルボキシル基を除く炭素数は1〜8、さらには1〜4であるのが、薄膜の成形性および強度の点から好ましい。前記多価カルボン酸のうちでは、2価カルボン酸が、酒石酸であることが適度な水分吸収量および最大の引っ張り強度を持つフィルムが得られる点から好ましい。
【0025】
前記活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸における活性CH基というのは、カルボキシル基が結合する炭素に結合した水素原子の数のことであり、たとえばマロン酸の場合2個、コハク酸やグルタル酸の場合4個、酒石酸の場合2個、クエン酸の場合4個である。
【0026】
本発明のキトサン誘導体を含有する組成物を製造する際のキトサン、ホルムアルデヒドおよび特定の多価カルボン酸の使用割合は、キトサン100部に対し、ホルムアルデヒド1.86〜22.3部、さらには3.72〜20.5部であるのが、薄膜成形性の点から好ましい(前記使用割合は、キトサンに含まれるアミノ基1モルに対して、およそホルムアルデヒド0.1〜1.2モル、さらには0.2〜1.1モルに相当する)。ホルムアルデヒドの割合が少なすぎる場合、薄膜を形成させようとしても薄膜を形成することなく粉末になりやすく、逆に、多すぎる場合、薄膜の形成は可能であるが、得られる薄膜の柔軟性が不足し、脆くなりやすくなる。また、未反応物がのこりやすくなる。また、特定の多価カルボン酸の使用量は、ホルムアルデヒド1モルに対して0.2〜1.5モル、さらには0.4〜1.2モルであるのが、得られる薄膜の引張強度向上の点から好ましい(前記使用割合は、キトサンに含まれるアミノ基1モルに対して、およそ特定の多価カルボン酸0.02〜1.8モル、さらには0.08〜1.32モルに相当する)。特定の多価カルボン酸の割合が少なすぎる場合、薄膜を形成させようとしても薄膜を形成することなく粉末となりやすく、逆に、多すぎる場合、薄膜の形成は可能であるが、得られる薄膜が脆くなりやすくなる。
【0027】
本発明のキトサン誘導体を含有する組成物というのは、キトサンに存在するアミノ基と特定の多価カルボン酸に存在する活性CH基とが、ホルムアルデヒドを介して結合するマンニッヒ反応により結合したものであり、特定の多価カルボン酸に存在する活性CH基の1個が反応する場合には、特定の多価カルボン酸がホルムアルデヒドに由来するメチレン基を介してキトサンのアミノ基にペンダント状に結合したものとなる。この場合、キトサン誘導体を含有する組成物は、液状となり、組成物を流延・乾燥させることにより、フィルム状に成形することができる。また、前記キトサン誘導体は、アミノ基とカルボキシル基とを有する化合物であるため、イオン封鎖剤、分散剤などへの利用も期待される。
【0028】
一方、特定の多価カルボン酸に存在する活性CH基の2個以上が反応する場合には、架橋構造となる。この場合、通常、特定の多価カルボン酸が架橋構造を取るものとペンダント状に結合したものとが混在したものとなるが、その割合は、概ねアミノ基にホルムアルデヒドが結合したアミノメチロール基の数と特定の多価カルボン酸の数とによりきまる。特定の多価カルボン酸が架橋構造を取るものとペンダント状に結合したものとが混在するものにおいて、ペンダント状に結合したものが多い場合には、特定の多価カルボン酸に存在する活性CH基の1個が反応した場合に近い特性の組成物となり、架橋構造を取るものが多くなるにしたがって、架橋物が多くなり、ゲル状物になりやすくなる。たとえばアミノメチロール基の数と特定の多価カルボン酸の数とが2/1付近になり、特定の多価カルボン酸中の活性CH基の2個以上が反応する割合が高くなると、本発明のキトサン誘導体を含有する組成物は、ゲル状を呈しやすくなる。このような組成物は、乾燥・粉砕することにより、金属イオンの吸着剤などへの利用が期待される。前記ゲル状物は、また、サプリメントとしての健康飲料物(ゲル)としての利用が期待される。本発明のキトサン誘導体を含有する組成物をゲル状物として利用する場合、架橋の程度は、キトサンに存在するアミノ基の約40%以上、さらには60%以上が架橋構造をとっていることが好ましい。アミノ基が反応する上限は理論的には100%である。
【0029】
前記のごとき本発明のキトサン誘導体を含有する組成物は、たとえばフィルム状に成形することができ、水と接触することにより水を吸収し、ゲル化するが、アルコールと接触してもアルコールを吸収しない、また、水吸収ゲル物質は、乾燥空気に接触させると短時間で元の薄膜に戻るなどの特徴のある性質を有するものである。前記水の吸収量は、最大で自重の600%程度、通常200〜570%程度である。ただし、速やかな生分解性は有さない。このようなフィルム状キトサン誘導体は、たとえば医療分野における止血剤などとしての利用が期待される。また、四輪車や二輪車などの部材に使用することができ、これらが廃車になった場合、部材が基本的に生分解性の高分子材料で構成されているため、産業廃棄物問題が起こりにくく、近年、社会から求められている材料に該当し、さらに多方面の応用分野への発展が期待されている。
【0030】
本発明のキトサン誘導体を含有する組成物は、たとえばキトサン(グルコサミンの重合物)にホルムアルデヒドおよび特定の多価カルボン酸を反応させることにより製造することができる。
【0031】
前記キトサンは、たとえばホルムアルデヒドとともに酸性水溶液に溶解せしめられ、得られた酸性水溶液と特定の多価カルボン酸とを混合し、反応せしめられる。
【0032】
前記酸性水溶液としては、たとえば酢酸、塩酸などの1〜10%水溶液があげられる。前記酸のかわりに、多価カルボン酸として用いるカルボン酸を用いた酸性水溶液を用いてもよい。この場合、多価カルボン酸以外の酸性物質が不要である点から好ましい。
【0033】
なお、酸性水溶液の調製に多価カルボン酸を使用する場合、この多価カルボン酸もアミノメチロール基と反応するため、ホルムアルデヒド1モルに対して0.2〜1.5モル反応させる多価カルボン酸の一部となる。
【0034】
前記酸性水溶液に溶解せしめられるキトサンは、濃度が1〜5%、さらには1.5〜3%になるのが、溶解性の点から好ましい。濃度が高すぎる場合、溶液が不均一となりやすく、逆に低すぎる場合、薄膜を成形する場合の取出作業に手間取りやすい。
【0035】
ホルムアルデヒドおよび特定の多価カルボン酸の濃度は、キトサンとこれらの成分との使用割合から決められる。
【0036】
製造されるキトサン、ホルムアルデヒドおよび特定の多価カルボン酸を含む酸性水溶液中におけるキトサン、ホルムアルデヒドおよび特定の多価カルボン酸の濃度は、通常、1.5〜10%、さらには2〜7%である。
【0037】
キトサン、ホルムアルデヒドおよび特定の多価カルボン酸の反応温度は、たとえば40〜90℃、さらには50〜80℃であるのが、反応が円滑に進み、均一な組成物が得られやすい点から好ましい。反応温度が高すぎる場合、反応液が変色しやすくなり、低すぎる場合、キトサンが溶解しにくく、反応が円滑に進行しにくくなる。反応時間は、たとえば1〜3時間、さらには1.5〜2.5時間であるのが、反応が完結する点から好ましい。
【0038】
前記キトサン、ホルムアルデヒドおよび特定の多価カルボン酸の反応(マンニッヒ反応)は、たとえば酸性水溶液下で行なわれるが、これは、活性カルボニウムイオンを生成させるためである。このような反応が酸性水溶液中で行なわれる例は知られておらず、新しい反応系における反応である。
【0039】
なお、酸性水溶液として、多価カルボン酸として用いるカルボン酸の酸性水溶液を使用する場合、キトサンを溶解させる酸性水溶液と多価カルボン酸とを兼ね備えさせることができる。
【0040】
前記のごとき方法により製造された本発明のキトサン誘導体を含む組成物は、一般にキトサン誘導体が、酸性水溶液に、キトサン、ホルムアルデヒドおよび活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸がこれらの合計として約1.5〜10%程度の割合で酸性水溶液に含有された組成物で、そののち、たとえばガラス板上あるいはステンレス板上に該組成物を塗布または流延して乾燥させる、あるいは液を濃縮するなどすることにより、薄膜状(フィルム状)などに成形したキトサン誘導体や、粉末または塊状などのキトサン誘導体とされる。
【0041】
前記成形時に、たとえばガラス板上あるいはステンレス板上に塗布または流延して乾燥させて薄膜状にする場合には、キトサン誘導体からなるたとえば厚さ1〜100μmで、薄膜表面は極めて滑らかで無色透明な形態の薄膜を製造することができる。このような薄膜は、たとえばキトサンのすぐれた生体親和性およびキトサン誘導体の特性を利用した止血剤などに使用することができる。前記薄膜を止血剤として使用する場合、たとえば厚さ1〜3μmであることに加えて、短時間で止血、除菌および適度な水分を保持する形態であるのが好ましく、また、使用後は簡便に取り除くまたは放置しても生体に影響のないものであるのが好ましい。
【0042】
前記薄膜形成時の乾燥条件としては、たとえば流延して広げたキトサン誘導体を含む組成物を室温で風乾またはホットプレート(30〜40℃)上で水を蒸発させるごとき条件があげられる。
【0043】
また、成形時に、たとえば本発明のキトサン誘導体を含む組成物を10%水酸化ナトリウム水溶液に注射針によって滴下する場合には、キトサン誘導体からなる、たとえば楕円形の粒状多孔体を製造することができる。
【0044】
本発明は、とくにキトサンのすぐれた生体親和性に着目し、キトサンを原料とする簡便かつ経済的なキトサン誘導体を含む組成物およびその製法に関する。
【0045】
原料としてキトサンを用い、ホルムアルデヒドおよび特定の多価カルボン酸を、たとえば1%酢酸水溶液中で反応させて得られるキトサン誘導体を含む組成物は、水のみを選択的に好んで吸収し、ゲル状に変化する。また、反応液をガラスまたはステンレス板に注ぎ、溶媒をゆっくり蒸発させることによって薄膜を形成することができる。
【0046】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(使用した材料)
キトサンとして、WAKO Chitosan 10(和光純薬(株)製、粘度(5−20cP)、推定数平均分子量約5万)を用いた。
【0048】
また、酢酸、パラホルムアルデヒドおよび各多価カルボン酸(マロン酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸)は、市販の試薬を用いた。
【0049】
実施例1
(キトサン誘導体を含む組成物の製造)
1%酢酸水溶液50mlに、キトサン(Chitosan 10)0.805g(グルコサミン単位(分子量161)5.0mmol)とパラホルムアルデヒド0.075g(ホルムアルデヒド(分子量30)2.5mmol)を加えた。
【0050】
得られた混合物を60℃に加熱し、液全体が均一になるまで約15分間かき混ぜた。均一になった液に特定の多価カルボン酸(2.5mmol)を固体のまま加え、さらに、同温度で約2時間加熱した。均一になった反応液を室温まで冷却し、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去し、固形物を定量的に得た。
【0051】
なお、得られた固形物(水を吸収し、ゲル状となる固形物)がどのような反応によって得られたかを確認するために、つぎのような比較実験を行なった。
▲1▼キトサン、パラホルムアルデヒド、1%フマル酸水溶液の反応
▲2▼キトサン、2価カルボン酸(マロン酸)の反応
▲3▼キトサン、パラホルムアルデヒド、2価カルボン酸(マロン酸)の反応
▲4▼キトサン、パラホルムアルデヒド、多価カルボン酸(クエン酸)の反応
▲5▼キトサン、アセトアルデヒド、2価カルボン酸(マロン酸)の反応
【0052】
いずれの実験も、その他の条件は実施例1と同一にした。この結果、▲1▼と▲2▼の場合、水を吸収し、ゲル状となる固形物は得られず、▲3▼と▲4▼の場合、得られた固形物は水を吸収し、ゲル状となることがわかった。また、▲5▼の場合も、水を吸収し、ゲル状となる固形物は得られなかった。
【0053】
前記実験から、水を吸収し、ゲル状となる固形物は、キトサン、パラホルムアルデヒドおよび多価カルボン酸の組合せが必須であることがわかる。また、▲1▼の実験から、活性CH基が存在しないフマル酸を使用した場合、水を吸収し、ゲル状となる固形物が得られないことがわかる。このことから、本反応に使用する多価カルボン酸には活性CH基が必要であることがわかる。
【0054】
▲3▼で得られた固形物に関するFT−IR分析(図1)、固体13C−NMR分析(図2)から、得られた固形物の構造が下記のものであることを決定した。
【0055】
比較のために、市販キトサンの固体13C−NMR分析結果を図3に示す。
【0056】
図1のFT−IRスペクトルにおける2939cm-1はC−H、1600cm-1はカルボニルの吸収である。
【0057】
また、図3の固体NMRスペクトルにおけるδ175ppm付近のブロードな小さいシグナルは、キチンのN−またはO−アセチル基のカルボニル炭素に相当する。これは、キチンからキトサンへの脱アセチル基の残留基と考えられる。
【0058】
一方、図2を図3と比較すると、δ75ppm前後に新たなピークが出現することからN−CH2基の存在を示していることがわかる。
【0059】
以上の結果から、▲3▼で得られた固形物は、反応式:
【0060】
【化3】
Figure 0004247523
【0061】
で示される反応などが起こり、その構造は、
【0062】
【化4】
Figure 0004247523
【0063】
に示すごとき−NH−CH2−CH(COOH)−構造を有していると考えられる。
【0064】
すなわち、本発明の方法によって製造されたキトサン誘導体を含有する組成物は、マンニッヒ反応によって、キトサン基本骨格であるグルコサミン部のアミノ基のメチレン化および特定の多価カルボン酸のα−CH基との炭素−炭素結合によって反応が進行したと考えられる。ホルムアルデヒドが反応に必須の成分であることからも、前記反応が進行していることがわかる。
【0065】
前記反応式中、化合物2は、マロン酸から合成した化合物をa、酒石酸から合成した化合物をc、アジピン酸から合成した化合物をdとする。
【0066】
得られたキトサン誘導体が水を吸収したことから、前述の架橋構造([化4])を有し、親水性基である−COOH基が水分子を包接する要因となっていると考えられる。すなわち、特定の多価カルボン酸はホルムアルデヒド由来のメチレン基を介してアミノ基に結合していると考えられ、その部分に水分子が入り込んでいると考えられる。
【0067】
しかし、水以外に対する吸収性の検討のためにアルコール(メタノール・エタノール)の吸収性を調べたところ、アルコールに対してはいずれも吸収性を示さなかった。これらの架橋キトサンは水のみに対して選択的に吸収性を示すと考えられる。また、架橋鎖の長いアジピン酸を用いた場合、短いマロン酸の場合よりも水吸収率が向上することがわかる。
【0068】
各キトサン誘導体の水吸収率について、以下に示す(示していない他の条件は同じ)。
【0069】
【表1】
Figure 0004247523
【0070】
水吸収率できわめて特徴的なケースは表1のa−2である。
【0071】
多価カルボン酸はマロン酸で同じであるが、反応溶媒をクエン酸水溶液にかえると、得られた生成物の水吸収率はa−2/a−1=2.6/1となった。また、アミノ基、ホルムアルデヒドおよび多価カルボン酸の反応部に親水基(OH基)を導入することにより、吸収率を高めようとした。多価カルボン酸が酒石酸の場合、マロン酸の場合と比較して、c/a−1=1.6/1となった。このことより反応溶媒中のクエン酸がマロン酸の一部のかわりに多価カルボン酸として反応に関与していると考えられる。
【0072】
前述の実験結果から、酢酸水溶液よりもクエン酸水溶液の方が水吸収率は向上することがわかる。
【0073】
(キトサン誘導体のゲル生成)
得られた固形物(0.04g)を適当量の水の中に入れると、固形物は直ちに水を吸収し、ゲル化した。30分後の水吸収率の結果を表1に示す。
【0074】
一方、水以外の液体であるアルコール(メタノール・エタノール)および気体であるホルムアルデヒドの吸収性についても検討したが、前述のごとく、アルコールに対しては吸収性を示さず、ホルムアルデヒドに対しても薄膜をホルムアルデヒド雰囲気下で暴露したが吸収性を示さなかった。
【0075】
(キトサン誘導体の薄膜)
得られた均一反応液をステンレス板またはガラス板上に広げ、一昼夜かけて溶媒を自然に蒸発させ、薄膜(厚さ約8−80μm)を得た。少量のエタノールまたは水で薄膜全体を濡らしたのち、薄膜を自然乾燥させることによってキトサン誘導体の薄膜を得た。薄膜の厚さおよび引張強度(耐重量)を測定した結果を表2に示す。
【0076】
なお、キトサン誘導体薄膜の引張強度は、加重試験機を用いて測定した。
【0077】
【表2】
Figure 0004247523
【0078】
【発明の効果】
本発明は、キトサン、ホルムアルデヒドおよび多価カルボン酸が特定の割合で反応したキトサン誘導体を含有する組成物であり、この組成物は、原料としてキトサン、ホルムアルデヒドおよび多価カルボン酸というありふれた市販品を使用して簡便な操作によって短時間で製造することができ、低コストである。
【0079】
また、得られた組成物から、薄膜を容易に形成することができる。
【0080】
さらに、得られた組成物からのフィルムは、水のみを選択的に吸収してゲル化するため、たとえば水分と接触してゲル化させることによって、止血効果を発現させることができ、医療用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】キトサン、パラホルムアルデヒドおよびマロン酸の反応により得られた架橋キトサン薄膜のFT−IRスペクトルである。
【図2】キトサン、パラホルムアルデヒドおよびマロン酸の反応により得られた架橋キトサンの固体13C−NMRスペクトルである。
【図3】キトサンの固体13C−NMRスペクトルである。

Claims (4)

  1. キトサン100重量部に対して、ホルムアルデヒド1.86〜22.3重量部および活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸をホルムアルデヒド1モルに対して0.2〜1.5モル反応させてなるキトサン誘導体。
  2. キトサン、ホルムアルデヒドおよび活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸の反応が、キトサンに含まれるアミノ基にホルムアルデヒドに由来するメチレン基を介して活性CH基からHがとれた基が結合した構造が生成する反応である請求項1記載のキトサン誘導体
  3. 酸性水溶液に溶解させたキトサン100重量部、ホルムアルデヒド1.86〜22.3重量部および活性CH基を2個以上有する多価カルボン酸をホルムアルデヒド1モルに対して0.2〜1.5モル混合して反応させることを特徴とするキトサン誘導体の製法。
  4. 請求項1または2記載のキトサン誘導体から形成されたフィルム止血剤。
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