以下、図面を参照して本発明の各実施の形態を説明する。
[実施の形態1−1〜1−7]
背景技術において説明したリストレーション方式に基づくネットワーキングを実現する手段として、現用パスの設定と類似のシグナリング処理により予備パスの帯域を確保するには、予備パスの設定であることを明確にする識別情報を含む必要がある。また、リストレーション方式を有効に機能させるには、ネットワーク装置の一部の故障に伴って切り替わる複数の現用パスが、同一の予備チャネル帯域を互いに確保しあう競合状態が発生しないように予備パスを登録する必要がある。このような競合状態を防ぐ手段として、予備チャネル群に必要とされるチャネル数をリンク単位で自律的に確保する管理制御機能も重要である。
実施の形態1−1〜実施の形態1−7では、上記の機能を実現するための技術について説明する。
(実施の形態1−1(予備パス帯域確保方法))
本実施の形態の予備パス帯域確保方法が適用される通信ネットワークは、図1に示すものとする。この通信ネットワークは、波長単位の光パスを定義する光パスネットワークであり、これら光パスのクロスコネクションを実現する光クロスコネクトノードにより構成されている。
光パスは、始点ノード#1から終点ノード#8の間にポイントツーポイントに定義され、中継ノード#3,#6で光パスの波長は他の光パスとの衝突を避けるために波長変換される。この光パスの帯域は、例えば10Gbit/sであり、ITU-T G.709 仕様のOTNフォーマットで転送される。また、この光パスは、ファイバリンクに50GHz間隔に収容され、各ファイバリンクでは32波長の波長分割多重伝送が実現される。
このネットワークでは、図6に示すネットワークの管理モデルに従い、予備光パスに用いるL本中M本のOPコネクション、すなわち光チャネルが管理上バンドル化され、光チャネル群として管理される。図6において、●はファイバラベル、○は波長ラベル、□は予備光チャネル群ラベルの各インタフェースを示し、光チャネルのみならず光チャネル群に対しても識別番号を付与する。そして、予備光パスの帯域確保は、各リンクの予備光チャネル群を指定することにより行われる。
図7は、実施の形態1−1の予備パス帯域確保方法における現用光パスと予備光パスの設定シグナリングシーケンスを示す図である。
現用光パスのシグナリングシーケンスは、RSVP−TEプロトコルが用いられる。RSVP−TEプロトコルは、上流ノードから下流ノードにPathメッセージを流し、光パスの設定に必要となるリソースを各ノードで仮予約する。終点ノードも含めて途中の経由ノードのリソース仮予約に成功すると、下流ノードから仮予約したリソースをResvメッセージにより確保していく。その際に、当該光パスが経由するノードおよびリンクの危険分類番号情報を記録し、上流ノードに通知する。
現用光パスのシグナリングに成功すると、次は予備光パスのシグナリングシーケンスに移る。上流ノードは予備光パスの経路計算を行うが、経路計算の際には前述のResvメッセージで通知された現用光パスの危険分類番号情報を利用し、この危険分類番号情報を有するリンクまたはノードを経由しないように制約をつけて予備光パスの経路を決定する。ここで、危険分類番号情報とは、ノードまたはリンク単体、あるいはこれらの集合に対して付与した故障シナリオ番号である。現用光パスと同一の故障シナリオが含まれるように予備光パスの経路が決定される。
なお、本実施の形態の"危険分類番号"の概念は、SRLG(Shared Risk Link Group(IETFインターネットドラフトdraft−ietf−ipo−framework−01.txt))に基づくものである。SRLGの技術は、各リンクもしくはノード装置の故障をシナリオ番号として管理し、各故障シナリオ毎に現用回線を救済するバックアップ回線の設定経路を事前に取り決めておく技術である。
図8は、実施の形態1−1の予備光パスの設定シグナリングシーケンスを示す図である。予備光パスのシグナリングシーケンスでもRSVP−TEプロトコルが用いられる。
RSVP−TEプロトコルは、上流ノードから下流ノードにPathメッセージを流し、光パスの設定に必要となるリソースを各ノードで仮予約する。
Pathメッセージには、このメッセージが予備光パスの設定であることを示す予備識別子、当該予備パスの現用パスが経由するリンク及びノードに付与された危険分類番号情報があり、これら情報はリソースを仮予約したノードに保存されていく。
終点ノードも含めて途中の経由ノードのリソース仮予約に成功すると、下流ノードから仮予約したリソースをResvメッセージにより「予備予約」していく。ここで、「予備予約」は予備リソースとして用いる光チャネルまたは光チャネル群の識別番号を指定することにより行われ、光スイッチの物理的な設定は必須としない。Resvメッセージには、当該予備パスを収容する予備光チャネル群識別番号が含まれている。予備光パスを収容する予備光チャネル群番号情報はリンク毎に異なる。本実施の形態では、ノード#7−#8間でチャネル群2、ノード#4−#7間でチャネル群1、ノード#2−#4間でチャネル群3、ノード#4−#1間でチャネル群1が選択されており、ノード#2からノード#1に向けて送信されるResvメッセージにはルート情報(経由ノード番号情報)に加えて、各リンクで選択した光チャネル群番号情報が含まれている。ノード#1(Ingressノード)は前記情報を受信することにより、当該予備光パスの経路と選択予備波長チャネル群番号を把握できる。
本実施の形態の方法は、現用光パスの故障救済に必要となる予備光パスリソースとしての光チャネルを共用することにより、光チャネルの必要数を削減することが可能になるとともに、複数の「予備予約」された光チャネルをバンドル化して1つの識別番号情報の元に一元管理することにより、予備光チャネルリソースの管理オブジェクト数をネットワーク全体で大幅に削減することができる。さらに、切替発生に伴う予備光パスリソースの再確保処理の頻度を大幅に低減することができる。
(実施の形態1−2(予備パス帯域確保方法))
各ノードは、ファイバリンクの利用状態と、「予備予約」された各光チャネル群で救済する現用光パスの識別情報と、この現用光パスが通過する危険分類番号情報を保持している。「予備予約」された光チャネル群を用いる予備光パスの追加、またはこの光チャネル群を用いて「予備予約」されている予備光パスの削除に伴い、この光チャネル群を構成する光チャネルの必要数に変化が生じる。実施の形態1−2では、実施の形態1−1の「予備予約」された光チャネル群の管理制御方法の追加例を示す。
図9は、実施の形態1−2のシグナリングシーケンスを示す。ここで、マスターノードおよびスレーブノードは、互いに隣接関係にある2つのノード間に定義され、その2つのノードに割り当てられたノード識別番号の大きい方がマスターノード、小さい方がスレーブノードとして決定される。あるいはその逆でもよい。
予備光パスの予備予約状態の変化を検出したスレーブノード#2はマスタノード#4に対して、光チャネル群を構成する光チャネルの候補をPathメッセージを用いて推薦する。マスタノード#4は、推薦された光チャネル(1,2,3,4)のうち、光チャネル群の構成員として適用可能な光チャネル(ここでは、2,3,4)のみを選抜し、その結果をスレーブノード#2にResvメッセージを用いて通知する。
なお、光チャネル群が隣接ノード間で確立していない場合でも、全く同じシーケンスが用いられる。光チャネル群の削除は、光チャネル群を構成する光チャネル数が0本または1本になった場合に行われることがある。
このように本実施の形態は、隣接ノード間で自律的に予備光パスを収容する光チャネル群の維持、確立、削除を行うものであり、光チャネル群の構成員となる光チャネルを自律分散的に制御する手段を示す。これにより、予備光パスを収容する光チャネル群の光チャネル数を柔軟に変化させることができ、ネットワークリソースの有効利用と、現用光パス故障に対する高い救済率を実現することができる。
(実施の形態1−3(予備パス帯域確保方法))
実施の形態1−3では、実施の形態1−2の「予備予約」された光チャネル群の管理制御方法の変形例を示す。ここでは、光チャネル群と光チャネル群を構成する光チャネルは、隣接ノード間で自律的に確立されているものとする。
図10は、実施の形態1−3のシグナリングシーケンスを示す。予備光パスの予備予約状態の変化を検出したスレーブノード#2はマスタノード#4に対して、光チャネル群を構成する光チャネルの候補をPathメッセージを用いて推薦するが、このときに光チャネル群の故障サービスクラスも通知する。マスタノード#4は、推薦された光チャネル(1,2,3,4)のうち、光チャネル群の構成員として適用可能な光チャネル(ここでは、2,3,4)のみを選抜し、その結果をスレーブノード#2にResvメッセージを用いて通知する。このときに、光チャネル群の故障サービスクラスも考慮に入れて構成員となる光チャネルを選抜する。
このように本実施の形態は、隣接ノード間で自律的に予備光パスを収容する光チャネル群の維持、確立、削除を行うものであるが、光チャネル群の故障サービスクラスを定義することにより、光チャネル群の構成員となる光チャネル数を故障サービスクラスに応じて増減することができる。すなわち、高い故障サービスクラスには、多くの光チャネルを構成員とすることにより高い救済率を実現することができる。
(実施の形態1−4(予備パス帯域確保方法))
実施の形態1−4では、実施の形態1−2の「予備予約」された光チャネル群の管理制御方法の変形例を示す。ここでは、光チャネル群と光チャネル群を構成する光チャネルは隣接ノード間で自律的に確立されが、この光チャネル群の確立と予備光パスの「予備予約」が同時に行われる方法を示す。
図11は、実施の形態1−4のシグナリングシーケンスを示す。予備光パスの仮予約と同時に光チャネル群の予備予約状態の変化を検出した上流ノードは、下流ノードに対して光チャネル群を構成する光チャネルの候補をPathメッセージを用いて推薦する。下流ノードは、推薦された光チャネル(1,2,3,4)のうち、光チャネル群の構成員として適用可能な光チャネル(ここでは、2,3,4)のみを選抜し、その結果を予備光パスの「予備予約」を確立するResvメッセージに追加して上流ノードに通知する。
このように本実施の形態は、現用光パスの故障救済に必要となる予備光パスリソースとしての光チャネル群を、予備光パス設定と同時に確立できるようにしたものである。予備光パスの設定要求により、光チャネル群の構成員である光チャネルの数が不足している場合は、本実施形態の方法により迅速に光チャネル群の光チャネル数を増加させることができる。また、予備光パスを収容しようとする光チャネル群が必要チャネル数を確保できない場合には、この予備光パスの「予備予約」は失敗となるが、このような処理も迅速に行うことができ、別経路を用いた予備光パス設定も短時間で行うことができる。
なお、以上示した各実施形態では、パスの物理媒体として光(波長)パスを例として記載したが、SONET/SDHのVC−3、VC−4パス、ATMのVPI識別子の設定により実現されるバーチャルパス、MPLS技術で実現されるラベルスイッチパス、EtherのTag−VLAN技術で実現されるEtherパスのいずれかを用いてもよい。
なお、本発明の予備パス帯域確保方法において、予備パス帯域として確保しているM本のチャネルに関して、送受信器の故障等の要因によりM本のチャネルのうちのいずれかのチャネルを予備パス帯域として確保されていない他のチャネルと交換する必要が生じた場合は、少なくとも新たなチャネルの識別番号情報を当該チャネルの対向側終端点にあるノードに対して推薦するフェーズを含む。
(実施の形態1−5(パス切替装置))
図12は、本発明の実施の形態1−5におけるパス切替装置の構成図である。本実施形態のパス切替装置は、上記の予備パス帯域確保方法の各実施形態を実現するものである。なお、以降図示する装置の構成図間において、対応する機能部には同じ参照番号を付している。
図12において、パス切替装置は、波長パス単位のクロスコネクションを実現する光スイッチ部10と、これを管理制御する管理制御機能部20と、チャネル管理データベース15により構成される。光スイッチ部10は、光スイッチ機能部11と光スイッチ機能部11を制御するスイッチ制御部12により構成される。本実施形態の光スイッチ部10は、128×128スイッチを用い、光パスが32波多重されたファイバリンクを4本入出力する能力を有する。各光パスの伝送速度は2.5Gbit/s であり、SONETOC-48インタフェースで終端される。
制御回線は、155Mbit/s の伝送速度を有するSONETOC-3回線で構成されている。制御信号は、例えば光ルータネットワークのネットワークトポロジーを取得するためのOSPF/IS-ISプロトコルパケット、パケットスイッチ間で設定される光パスを設定・解除するRSVP-TE/CR-LDRプロトコルパケット、各ファイバリンクの障害監視を行うLMPプロトコルパケットである。
管理制御機能部20は、これらの制御信号プロトコルを処理する機能部を実装しており、光パスの設定・解除・切替・ルーティングを実現するルーティング処理機能部(OSPF/IS-ISプロトコル処理機能)21、光パス設定・解除シグナリングを行うパス設定管理機能部(RSVP-TE/CR-LDRプロトコル処理機能)22、制御信号を伝送する制御回線網の障害監視を行う制御回線管理機能部(LMPプロトコル処理機能)23、IP処理部24により構成される。
パス設定管理機能部22は、RSVP-TEプロトコルのコアであるシグナリング処理部221、現用パス設定・削除処理機能部222、予備パス設定・削除処理機能部223、予備パス起動処理部224、パス管理データベース225を含む。
なお、シグナリング処理部221は、CR-LDPプロトコルを用いても同様である。現用パス設定・削除処理機能部222と予備パス設定・削除処理機能部223と予備パス起動処理部224は、チャネル管理データベース15に接続され、現用パス設定・削除処理機能部222と予備パス設定・削除処理機能部223はルーティング処理機能部21に接続され、現用パス設定・削除処理機能部222と予備パス起動処理部224はスイッチ制御部12に接続される。現用パス設定時には、現用パス設定・削除処理部222にシグナリング情報が入出力される。同様に、予備パス設定時には、予備パス設定・削除処理部223にシグナリング情報が入出力される。
チャネル管理データベース15は、図6の管理モデルに従った光チャネル管理が可能なように、予備光パスを収容する資源として複数の予備光チャネルをバンドルした光チャネル群を定義して管理できるデータ構造を有し、光チャネルの状態監視を行っている。さらに、チャネル管理データベース15には、パス切替装置およびパス切替装置に接続される各リンクの危険分類番号情報、パス切替装置に収容される光チャネルまたは光チャネル群に登録されている危険分類番号情報を保持する光チャネル危険分類データベースが含まれている。
予備光パス設定・削除処理機能部223は、同一対地に接続される予備パスを収容する帯域として確保しているL本(Lは自然数)のチャネルのうちM本(MはL以下の自然数)のチャネルをチャネル群として一体管理する。そのために、各チャネル群を特定する識別番号を付与するとともに、光チャネル群の構成員となる光チャネルを選抜し、この光チャネルの識別情報を対応する光チャネル群識別番号と関連付けてデータベースに出力する。
シグナリング処理部221は、隣接ノードから通知された予備パス起動信号を予備パス起動処理部224に出力し、また予備パス起動処理部224からの予備パス起動信号を隣接ノードへ出力する。また、シグナリング処理部221は、予備パス帯域確保時に隣接のパス切替装置から通知された確保するチャネルまたはチャネル群の識別番号情報と当該パスが予備パスであることを示す識別情報が隣接のパス切替装置から入力されると、その情報を予備光パス設定・削除処理機能部223に振り分ける。予備光パス設定・削除処理機能部223は、ルーティング処理機能部21のルーティングテーブルを参照することにより、当該予備パスの出力ポートを検索し、当該予備パスの出力側で確保するチャネルまたはチャネル群の識別番号情報をシグナリング処理部221に出力し、隣接ノードに通知する。
また、予備パス帯域確保時に隣接のパス切替装置から通知された危険分類番号情報も同様に処理される。シグナリング処理部221に入力された危険分類番号情報は、予備光パス設定・削除処理機能部223を介してチャネル管理データベース15に入力され、予備光パスが確保しようとしている光チャネルまたは光チャネル群に登録されている危険分類番号情報に追加登録され、光チャネルまたは光チャネル群の識別番号情報と危険分類番号情報が隣接ノードに通知される。
予備光パス起動処理部224は、シグナリング処理部221を介して隣接ノードとの間で予備パス起動信号を入出力する。また、予備光パス起動処理部224は予備パス起動処理を実際に行い、スイッチを駆動する。
また、ルーティング処理機能部21は、制御回線管理機能部23及びチャネル管理データベース15より、自ノードに接続されているリンク状態を収集する。次に、ルーティング処理機能部21は、収集したリンク情報を他隣接ノードに向けてIP処理部24を通じて送信する。同時に、他隣接ノードからはこれらノードで受信した全てのリンク情報がルーティング処理機能部21に向けて通知されてくる。この結果を元に、ネットワーク内の各ノードに光パスをルーティングするためのNext Hop情報が作成される。
作成されるNext Hop情報は下記のようなデータ構造を有する。
ノード ID 出力IF
10.10.105.1 IF 1
10.10.105.2 IF 2
10.11.106.2 IF 1
この情報は、例えば10.10.105.1というノードまで光パスを開通するには、IF1から光パスを接続することを指示していることを意味する。
現用パス設定・削除処理部225、予備パス設定・削除処理部223は、上流ノードから通知されてきたPathメッセージの中に含まれている光パスの終点ノードID情報を元に、ルーティング処理機能部21に保持されるNext Hop情報を検索し、シグナリング処理部221及びIP処理部24を通じて、検索した出力IFから下流ノードに向けてPathメッセージを送出する。シグナリング処理部221においては、Pathメッセージを送出する際には、自身のNode ID情報を付加する。そうすることにより、終点ノードから始点ノードに向けてResvメッセージを返却する際には、Pathメッセージを送信したノードを経由することが可能になる。このような処理を通じて生成された現用パス・予備パスはパス管理データベース225に保存される。パス管理データベース225には図13に示すデータ構造で情報が保存される。
図13に示す例では、本ノードには予備パスが1本設定されており、かつこの予備パスが現用パス2の予備パスである。またこのパス管理データベース225を保持するノードが10:10:101:2もしくは10:10:108:1のIDを有している場合、現用パスと予備パスの終端点(すなわち現用パスが故障した場合に、予備パスに切替動作を行う点)である。
次に現用パスに故障が発生した場合の動作を説明する。光スイッチ部10で検出された故障通知情報は、予備パス起動処理部224に転送される。この情報を元に、故障切替すべきパス情報をパス管理データベース225から検索する。検索したパス情報より、故障切替命令を送出するべきか否かを判断し、故障切替命令を送出する必要がある場合は、シグナリング処理部221及びIP処理部24を通じて事前に予約した予備パス経路に沿って予備光パス起動命令を通知する。
(実施の形態1−6(パス切替装置))
図14は、本発明の実施の形態1−6におけるパス切替装置の構成図である。本実施の形態のパス切替装置は、実施の形態1−6の光スイッチ部10に代えて電気スイッチ部30を備える。電気スイッチ部30は、電気スイッチ機能部31と電気スイッチ機能部31を制御するスイッチ制御部32と、管理制御機能部20と制御信号を交換するディジタルクロスコネクトインタフェース(DCC−IF)33により構成され、SONETOC-48リンクを32×32でディジタルクロスコネクションを実現する。
制御回線は、SONETOC-48のDCCチャネルを用いて構成される。制御信号は、例えばネットワークトポロジーを取得するためのOSPF/IS-ISプロトコルパケット、パケットスイッチ間で設定されるパスを設定・解除するRSVP-TE/CR-LDRプロトコルパケット、各ファイバリンクの障害監視を行うLMP プロトコルパケットである。
管理制御機能部20の構成は実施の形態1−5と同様である。ここでは、光チャネルの代わりに、SONETで定義されるVC−4(155 Mbit/s )チャネルを管理制御する。
(実施の形態1−7(パス切替装置))
図15は、本発明の実施の形態1−7におけるパス切替装置の構成図を示す。本実施の形態のパス切替装置は、実施の形態1−5の光スイッチ部10に代えて電気スイッチ部40を備える。電気スイッチ部40は、セルスイッチ機能部41とセルスイッチ機能部41を制御するスイッチ制御部42と、管理制御機能部20と制御信号を交換する制御信号インタフェース(IP over ATM)43により構成され、SONETOC-48リンクを入出力32本収容可能であり、これらの間でセルスイッチングを実現する。
制御回線は、通信キャリアの共通線信号網を用いて構成される。制御信号は、例えばネットワークトポロジーを取得するためのOSPF/IS-ISプロトコルパケット、パケットスイッチ間で設定されるパスを設定・解除するRSVP-TE/CR-LDRプロトコルパケット、各ファイバリンクの障害監視を行うLMPプロトコルパケットである。
管理制御機能部20の構成は実施の形態1−5と同様である。ここでは、光チャネルの代わりに、ATMスイッチ間で定義されるVPIを管理制御する。ノード間リンクごとに定義されるVPIは、光パスや電気パスを収容するチャネルに相当する。すなわち、図に示すように、各ノード装置で入出力間のVPIの相関をとることは、光パスや電気パスのクロスコネクション動作に相当する。
また、本実施の形態は、レイヤ2.5のMPLS技術を用いることによりIPパケットトラヒックに対する仮想パスを提供可能なラベルスイッチルータ、同様にEther フレームに対する仮想パスを提供可能なEther over MPLS スイッチに対しても適用可能である。
以上説明したように、本発明の実施の形態1−1〜1−7に係る予備パス帯域確保方法およびパス切替装置は、パス帯域が離散的あるいは固定的に設定され、かつ現用パスと予備パスの帯域を完全に一致させる必要があるネットワークにおいて、現用パスの故障救済に必要となる予備パス資源としてのチャネルを共用することで、その必要数を削減することを可能にする。
さらに、複数の「予備予約」された光チャネルをバンドル化して1つの識別番号情報の元に一元管理することにより、予備チャネル資源の管理オブジェクト数をネットワーク全体で大幅に削減することが可能である。また、切替発生に伴う予備パス資源の再確保処理の頻度を大幅に低減可能である。また、予備パスが必要とする設備量の増大を防ぎつつ高信頼な通信ネットワークを構築することが可能になる。また、予備パス資源に対しても故障クラスを定義し、故障クラスに応じて予備パス救済率を変化させ、サービスグレードの差別化を図ることが可能になる。
[実施の形態2−1〜2−3]
(実施の形態2−1)
図16は、実施の形態2−1のパス切替装置の構成例を示す。この構成は実施の形態1−5のパス切替装置と同じである。
すなわち、実施の形態2−1のパス切替装置は、波長パス単位のクロスコネクションを実現する光スイッチ部10と、これを管理制御する管理制御機能部20と、チャネル管理データベース15により構成される。光スイッチ部10は、光スイッチ機能部11と光スイッチ機能部11を制御するスイッチ制御部12により構成される。なお、ルーティング処理機能部21は、各ファイバリンクにコストを定義し、設定しようとする光パスの始点ノードと終点ノード間で累計されるファイバリンクコストが最小になる経路を検索する機能を有する。その探索アルゴリズムには、ダイクストラ法が適用される。
このような構成により、予備光パスの設定は予備光パスを収容する光チャネル群をリンクごとに指定するだけで可能になる。また、光チャネル管理データベース15を現用パス設定・削除処理部222と共用しているために、予備光パスを収容する光チャネル群を構成する光チャネルとして、現用光パスを設定しないように制御可能である。これにより、各ノードは、予備資源として「予備予約」する光チャネルをリンク単位に自律分散的に設定することができる。
以下、実施の形態1−5のパス切替装置と異なる点を主に説明する。
図17は、本実施の形態が適用される光通信ネットワークの構成例を示す。現用光パスとしてノード#1−#3−#6−#8に帯域を確保すると、この経路に沿って光パスを開通させる。その一方で、予備光パスとしてノード#1−#2−#4−#7−#8に帯域を予約するだけで、実際のコネクション設定は現用光パスが何らかの障害により接続不能になるまで行われない。
予備光パスを収容する光チャネル群には、収容している予備光パスに対する現用光パスに付与される危険分類番号情報が記録される。ここでは、現用光パスの経路が有する故障シナリオを危険分類番号情報として{12,18,21}が付与される。このとき、この現用光パスに対する予備光パスを収容する光チャネル群の属性情報として、危険分類番号情報{12,18,21}が添付される。この危険分類番号情報は、予備光パス設定時に上流ノードから下流ノードに順次通知される。各ノードは、自身のシグナリング処理部221を介してこの危険分類番号情報をチャネル管理データベース15に登録する。その結果、危険分類番号情報は予備光パスを収容する光チャネル群の識別番号情報と関連付け、予備光パス経路上のすべてのノードのチャネル管理データベース15に保存される。
図18は、実施の形態2−1における予備パス設定・削除処理部223の予備パス設定処理シーケンスを示す。予備パス設定・削除処理部223は、光チャネル群に登録されている予備光パス数n、それぞれの危険分類番号rの切替要因に関して現用光パスから予備光パスへの切替動作が発生した際に当該光チャネル群に切り替えられる予備光パス数をP(r) 、この危険分類番号rに対して得られる予備光パス数P(r) の最大値をMax{P(r)}としたとき、光チャネル群を構成する光チャネル数Mが、Max{P(r)}以上n以下になるように設定する命令をシグナリング処理部221に送出する。例えば、光チャネル群を構成する光チャネル数Mが、Max{P(r)}より小さくなる場合には光チャネル数を増加し、Max{P(r)}より大きくなる場合には光チャネル数を削減し、等しい場合にはそのままとする。
これにより、予備光パスの設定は、現用光パスに付与された危険分類番号情報を考慮に入れながら行われ、当該予備光パスを収容するチャネル群は、随時それを構成する光チャネル数の確認をとりながら、必要な光チャネル数を確保することができる。
例えば、図19に示すように、光チャネル群を構成する現在の光チャネル数Mが3で、6本の予備光パスA〜Fが設定されているものとする(n=6)。この光チャネル群では、危険分類番号{12}の単一故障発生時に当該光チャネル群に切り替えられる予備光パスがA,B,Dの3本あり、Max{P(r)}がr=12の場合で3となる。したがって、Max{P(r)}=Mであり、このままの状態で危険分類番号{12}の故障発生に対して 100%の救済が達成される。
ここで、例えば図17に示すノード#2−#4のリンク区間#24において、図20に示すように、3本の光チャネルから構成される光チャネル群(M=3)に対して、危険分類番号{12,18,21}を有する現用光パスに対する7本目の予備光パスXを追加設定しようとする。この場合には、Max{P(r)}がr=12の場合で4となるので、危険分類番号{12}に対する現用光パスのすべてを救済するには3本の光チャネルでは不足する。そこで、図18に示すシーケンスのように、光チャネル群を構成する光チャネル数を1本増設し(図20では空チャネルの中からチャネル4を追加)、4本の光チャネルでチャネル群を構成するようにする。これにより、危険分類番号{12}のリンクを通過する4本の光パスに対して、単一故障に対する 100%の救済を実現することができる。
このように、本実施の形態では、予備光パスの設定は現用光パスに付与された危険分類番号情報を考慮に入れ、単一故障に対する100%の救済を実現しながら予備光パス資源を可能な限り節約することができる。また、光チャネル群に必要とされる光チャネル数に応じて、その光チャネル群に帰属する光チャネルを動的に追加/削減することができる。
(実施の形態2−2)
本実施の形態では、チャネル管理データベース15に保存される情報として、予備光パスを収容する光チャネル群に故障サービスクラスの属性情報を追加する。これは、様々な故障サービスクラスを有する光パスを提供することにより、多重故障に起因したパス不稼動率の差別化を図り、ユーザに対してきめ細やかな故障サービスグレード要求に応えるものである。
図21は、実施の形態2−2における予備パス設定・削除処理部223の予備パス設定処理シーケンスを示す。ここでは、光チャネル群が保持している故障サービスクラスと同等(あるいはそれ以下)の故障サービスクラスの現用光パスに対する予備光パスのみが、当該光チャネル群に収容されるように制限が加えられて処理される。
光チャネル群に最低限必要とされる光チャネル数Max{P(r)}に代わり、故障サービスクラス属性情報fに応じた正の値a(f) を定義し、故障サービスクラス属性fの光チャネル群に必要な光チャネル数αとして、min{a(f)×Max{P(r)},n}を用いる。例えば、図22に示すように、光チャネル群を構成する光チャネル数Mが5で、5本の予備光パスA〜Eが設定されているものとする(n=5)。この光チャネル群では、危険分類番号{2}の単一故障発生時に当該光チャネル群に切り替えられる予備光パスがA,B,Cの3本あり、Max{P(r)}がr=2の場合で3となる。実施の形態2−2の場合では、危険分類番号{2}のリンクを通過する3本の光パスに対して、現在の光チャネル5本から1〜2本減らしても単一故障に対する 100%の救済を実現することができる。
これに対して、本実施の形態では、故障サービスクラス属性「Gold」に応じた値a(f) を2とすると、光チャネル群に最低限必要とされる光チャネル数αとして min{2×3,5}=5を用いる。この光チャネル数αは予備光パス数n(=5)を越えることはない。これにより、故障サービスクラス「Gold」に対応する共用リストレーションを実現することができる。すなわち、より多くの現用光パスに故障が発生しても、高い故障サービスクラスが設定されている現用光パスに対しては救済される確率が高くなり、多重故障に起因したパス不稼動率を低減することができる。
また、図23に示すように、光チャネル群を構成する光チャネル数Mが3で、3本の予備光パスF〜Hが設定されているものとする(n=3)。この光チャネル群では、危険分類番号{3}の単一故障発生時に当該光チャネル群に切り替えられる予備光パスがF,Hの2本あり、Max{P(r)}がr=3の場合で2となる。一方、故障サービスクラス属性「Silver」に応じた値a(f) を1とすると、光チャネル群に最低限必要とされる光チャネル数αは min{1×2,3}=2となる。したがって、図21に示すシーケンスのように、光チャネル群を構成する光チャネル数は現在の3本から1本減らし、故障サービスクラス「Silver」に対応する共用リストレーションを実現することができる。
(実施の形態2−3)
図24は、本発明のパス切替装置の他の構成例を示す。本構成例のパス切替装置は、図16に示す構成例の光スイッチ部10に代えて電気スイッチ部30を備える。電気スイッチ部30は、電気スイッチ機能部31と電気スイッチ機能部31を制御するスイッチ制御部32と、管理制御機能部20と制御信号を交換するディジタルクロスコネクトインタフェース(DCC−IF)33により構成され、SONETOC-48リンクを32×32でディジタルクロスコネクションを実現する。
制御回線は、SONETOC-48のDCCチャネルを用いて構成される。制御信号は、例えばネットワークトポロジーを取得するためのOSPF/IS-ISプロトコルパケット、パケットスイッチ間で設定されるパスを設定・解除するRSVP-TE/CR-LDRプロトコルパケット、各ファイバリンクの障害監視を行うLMP プロトコルパケットである。
管理制御機能部20の構成も同様であり、光チャネルの代わりに、SONETで定義されるVC−4(155 Mbit/s )チャネルを管理制御する。
以上説明したように、実施の形態2−1〜2−3の発明によれば、予備パス設定の自動化を図ることができるとともに、予備パスの設備量を必要最小限に抑えながら、単一のリンク故障に対する確実な故障救済を実現するとともに、多重リンク故障に対する不稼動状態の発生率をユーザに提供するサービスグレードにより差別化することができる。
[実施の形態3−1〜3−2]
(実施の形態3−1)
図25は、実施の形態3−1のパス切替装置の構成例を示す。本装置は、ATMネットワーク上に定義されるバーチャルパス(VP)切替を実現するATMスイッチを構成するものである。
図において、パス切替装置は、ATMスイッチ部10と、これを管理制御する管理制御機能部20と、ATMリンクチャネル管理データベース15により構成される。ATMスイッチ部10は、スイッチ機能部11とスイッチ機能部11を制御するスイッチ制御部12により構成される。この構成は実施の形態1−5、実施の形態2−1のパス切替装置とほぼ同様であるが、光パスに代えてVPを扱う点が異なる。各部の機能も実施の形態2−1のパス切替装置と、光パスに代えてVPを扱う点を除いて同様である。
管理制御機能部20は、制御信号プロトコルを処理する機能部を実装しており、VPの設定・解除・切替・ルーティングを実現するルーティング処理機能部(OSPF/IS-ISプロトコル処理機能)21、VP設定・解除シグナリングを行うパス設定管理機能部(RSVP-TE/CR-LDRプロトコル処理機能)22、制御信号を伝送する制御回線網の障害監視を行う制御回線管理機能部(LMPプロトコル処理機能)23、IP処理部24により構成される。
ルーティング処理機能部21は、各ATMリンクにコストを定義し、設定しようとするVPの始点ノードと終点ノード間で累計されるATMリンクコストが最小になる経路を検索する機能を有する。その探索アルゴリズムには、ダイクストラ法が適用される。
パス設定管理機能部22は、RSVP-TE プロトコルのコアであるシグナリング処理部221、現用パス設定・削除処理部222、予備パス設定・削除処理部223、予備パス起動処理部224、パス管理データベース225を含む。なお、シグナリング処理部221は、CR-LDPプロトコルを用いても同様である。現用パス設定・削除処理部222と予備パス設定・削除処理部223と予備パス起動処理部224は、ATMリンクチャネル管理データベース15に接続され、現用パス設定・削除処理部222と予備パス設定・削除処理部223はルーティング処理機能部21に接続され、現用パス設定・削除処理部222と予備パス起動処理部224はスイッチ制御部12に接続される。現用パス設定時には、現用パス設定・削除処理部222にシグナリング情報が入出力される。同様に、予備パス設定時には、予備パス設定・削除処理部223にシグナリング情報が入出力される。
ATMリンクチャネル管理データベース15は、図26の管理モデルに従ったATMリンクチャネルを管理するデータベースが構築されている。ATMネットワークでは、図26に示すように、VCレイヤ、VPレイヤ、ATMリンクレンヤの3レイヤに分離して管理される。
さらに、ATMリンクチャネル管理データベース15には、パス切替装置およびパス切替装置に接続される各リンクの危険分類番号情報、パス切替装置に収容されるATMリンクに登録されている危険分類番号情報を保持する危険分類データベースが含まれている。
ここでは、故障救済処理はVP単位で行われることを想定しており、2つのATMスイッチを接続するリンク中に設定されるVPを収容する帯域を「チャネル」とする。各々のVPを収容する「チャネル」を識別する手段として、VP識別子(VPI)が設定されているものとする。
本実施の形態では、予備パスの救済に用いられる帯域MのVPIとチャネルが管理上バンドル化し、チャネル群(VPI群)として管理される。予備パスの帯域確保は、各リンクのVPI群を指定することにより行われる。
予備パス設定・削除処理部223は、同一対地に接続される予備パスを収容する帯域として確保しているLのうちM(M≦L)の予備パス帯域をそれぞれVPI群として一体管理する。そのために、各VPI群を特定する識別番号を付与するとともに、VPI群の構成員となるチャネルを選抜し、このチャネルの識別情報を対応するVPIと関連付けてデータベースに出力する。
シグナリング処理部221は、隣接ノードから通知された予備パス起動信号を予備パス起動処理部224に出力し、また予備パス起動処理部224からの予備パス起動信号を隣接ノードへ出力する。予備パス帯域確保時に、確保するVPIまたはVPI群の識別番号と当該パスが予備パスであることを示す識別情報が隣接のパス切替装置から通知されると、それらの情報を振り分けて予備パス設定・削除処理部223に出力する。予備パス設定・削除処理部223は、ルーティング処理機能部21のルーティングテーブルを参照することにより、当該予備パスの出力ポートを検索し、当該予備パスの出力側で確保するVPIまたはVPI群の識別番号情報をシグナリング処理部221に出力し、隣接ノードに通知する。
予備パス起動処理部224は、シグナリング処理部221を介して隣接ノードとの間で予備パス起動信号を入出力する。また、予備パス起動処理部224は予備パス起動処理を実際に行い、スイッチを駆動する。
このような構成により、予備パスの設定は予備パスを収容するVPI群をリンクごとに指定するだけで可能になる。また、ATMリンクチャネル管理データベース15を現用パス設定・削除処理部222と共用しているために、予備パスを収容するVPI群を構成するVPIとして、現用パスを設定しないように制御可能である。これにより、各ノードは、予備資源として「予備予約」するVPIをリンク単位に自律分散的に設定することができる。
図27は、本実施の形態が適用される通信ネットワークの構成例を示す。現用パスとしてノード#1−#3−#6−#8に帯域を確保すると、この経路に沿ってパスを開通させる。その一方で、予備パスとしてノード#1−#2−#4−#7−#8に帯域を予約するだけで、実際のコネクション設定は現用パスが何らかの障害により接続不能になるまで行われない。
予備パスを収容するVPI群には、収容している予備パスに対する現用パスに付与される危険分類番号情報が記録される。ここでは、現用パスの経路が有する故障シナリオを危険分類番号情報として{12,18,21}が付与される。このとき、この現用パスに対する予備パスを収容するVPI群の属性情報として、危険分類番号情報{12,18,21}が添付される。この危険分類番号情報は、予備パス設定時に上流ノードから下流ノードに順次通知される。各ノードは、自身のシグナリング処理部221を介してこの危険分類番号情報をATMリンクチャネル管理データベース15に登録する。その結果、危険分類番号情報は予備パスを収容するVPI群の識別番号情報と関連付け、予備パス経路上のすべてのノードのATMリンクチャネル管理データベース15に保存される。
図28は、実施の形態3−1における予備パス設定・削除処理部223の予備パス設定処理シーケンスを示す。予備パス設定・削除処理部223は、VPI群に登録されている予備パス帯域の総和b、それぞれの危険分類番号rの切替要因に関して現用パスから予備パスへの切替動作が発生した際に当該VPI群に切り替えられる予備パスの総和をP(r)、この危険分類番号rに対して得られる予備パスの総和P(r) の最大値をMax{P(r)}としたとき、VPI群を構成する予備パス帯域Mが、Max{P(r)}以上b以下になるように設定する命令をシグナリング処理部221に送出する。例えば、VPI群を構成する予備パス帯域Mが、Max{P(r) }より小さくなる場合には予備パス帯域を増加し、Max{P(r)}より大きくなる場合には予備パス帯域を削減し、等しい場合にはそのままとする。
これにより、予備パスの設定は、現用パスに付与された危険分類番号情報を考慮に入れながら行われ、当該予備パスを収容するVPI群は、随時それを構成する予備パス帯域の確認をとりながら、必要な予備パス帯域を確保することができる。
例えば、図29に示すように、VPI群の現在の確保済予備パス帯域Mが800Mbit/sで、6本の予備パスA〜Fが設定されているものとする(ここでb=1000Mbit/sとする)。このVPI群では、危険分類番号{12}の単一故障発生時に当該VPI群に切り替えられる予備パスがA,B,Dの3本あり、Max{P(r)}がr=12の場合で 800Mbit/s となる。したがって、Max{P(r)}=Mであり、このままの状態で危険分類番号{12}の故障発生に対して100%の救済が達成される。
ここで、例えば図27に示すノード#2−#4のリンク区間#24において、図30に示すように、VPI群の現在の確保済予備パス帯域(M=800Mbit/s )に対して、危険分類番号{12,18,21}を有する現用パスに対する7本目の予備パスXを追加設定しようとする。この場合には、Max{P(r)}がr=12の場合で1000Mbit/s となるので、危険分類番号{12}に対する現用パスのすべてを救済するには 800Mbit/s の予備パス帯域では不足する。そこで、図28に示すシーケンスのように、VPI群を構成する予備パス帯域を1000Mbit/s に増加する。これにより、危険分類番号{12}のリンクを通過する4本のパスに対して、単一故障に対する100%の救済を実現することができる。
このように、本実施の形態では、予備パスの設定は現用パスに付与された危険分類番号情報を考慮に入れ、単一故障に対する100%の救済を実現しながら予備パス資源を可能な限り節約することができる。また、VPI群に必要とされる予備パス帯域に応じて、そのVPI群に帰属する予備パス帯域を動的に追加/削減することができる。
(実施の形態3−2)
本実施の形態では、チャネル管理データベース15に保存される情報として、予備パスを収容するVPI群に故障サービスクラスの属性情報を追加する。これは、様々な故障サービスクラスを有するパスを提供することにより、多重故障に起因したパス不稼動率の差別化を図り、ユーザに対してきめ細やかな故障サービスグレード要求に応えるものである。
図31は、実施の形態3−2における予備パス設定・削除処理部223の予備パス設定処理シーケンスを示す。ここでは、VPI群が保持している故障サービスクラスと同等(あるいはそれ以下)の故障サービスクラスの現用パスに対する予備パスのみが、当該VPI群に収容されるように制限が加えられて処理される。
VPI群に最低限必要とされる予備パス帯域Max{P(r)}に代わり、故障サービスクラス属性情報fに応じた正の値a(f) を定義し、故障サービスクラス属性fのVPI群に必要な予備パス帯域αとして、min{a(f)×Max{P(r)},b}を用いる。例えば、図32に示すように、VPI群の予備パス帯域Mが800Mbit/s 、5本の予備パスA〜Eが設定されているものとする(b=1000Mbit/s )。このVPI群では、危険分類番号{2}の単一故障発生時に当該VPI群に切り替えられる予備パスがA,B,Cの3本あり、Max{P(r)}がr=2の場合で600Mbit/s となる。実施の形態3−1の場合では、危険分類番号{2}のリンクを通過する3本のパスに対して、現在の予備パス帯域800Mbit/s から200Mbit/s減らしても単一故障に対する100%の救済を実現することができる。
これに対して、本実施の形態では、故障サービスクラス属性「Gold」に応じた値a(f) を2とすると、VPI群に最低限必要とされる予備パス帯域αとしてmin{2×600,1000}=1000Mbit/s を用いる。この必要予備パス帯域αは予備パス帯域の総和b(=1000)を越えることはない。この場合には、危険分類番号{2}に対する現用パスを故障サービスクラス「Gold」で救済するには800Mbit/s の予備パス帯域では不足する。そこで、図31に示すシーケンスのように、VPI群を構成する予備パス帯域を1000Mbit/sに増加する。これにより、故障サービスクラス「Gold」に対応する共用リストレーションを実現することができる。すなわち、より多くの現用パスに故障が発生しても、高い故障サービスクラスが設定されている現用パスに対しては救済される確率が高くなり、多重故障に起因したパス不稼動率を低減することができる。
また、図33に示すように、VPI群の予備パス帯域Mが600Mbit/sで、3本の予備パスF〜Hが設定されているものとする(b=600Mbit/s )。このVPI群では、危険分類番号{3}の単一故障発生時に当該VPI群に切り替えられる予備パスがF,Hの2本あり、Max{P(r)}がr=3の場合で300Mbit/sとなる。一方、故障サービスクラス属性「Silver」に応じた値a(f) を1とすると、VPI群に最低限必要とされるチャネル数αは min{1×300,600 }=300となる。したがって、図31に示すシーケンスのように、VPI群の予備パス帯域を現在の600Mbit/s から300Mbit/s に減らしても、故障サービスクラス「Silver」に対応する共用リストレーションを実現することができる。
以上の実施の形態の説明では、ATMのVPを例にしたが、同様の考え方で定義されるMulti Protocol Label Switch ルータのLabel Switched Pathに対する故障救済に対しても、同様に本発明を適用することができる。
以上説明したように、本実施の形態3−1〜3−2によれば、予備パス設定の自動化を図ることができるとともに、予備パスの設備量を必要最小限に抑えながら、単一のリンク故障に対する確実な故障救済を実現するとともに、多重リンク故障に対する不稼動状態の発生率をユーザに提供するサービスグレードにより差別化することができる。
[実施の形態4−1〜4−4]
M:Nシェアードリストレーション方式において、サービスの中断を可能な限り避けるために、ネットワークの故障発生に伴う現用光パスの切断の救済を高速に実行する必要がある。実施の形態4−1〜4−4では、救済を高速に実行するための技術について説明する。
さて、M:Nシェアードリストレーション方式は、各リンク区間ごとにM本の予備光チャネルを定義し、この予備光チャネル資源をN本の現用光パスが自身のバックアップ資源として共用する。実際に、故障が発生して切替を実行するまでは、M本の予備光チャネル資源を管理するデータベースに、これを予備光パスの資源として利用する現用光パスの識別番号情報が登録されているだけの状態である。すなわち、故障が発生して現用光パスが予備光パスに切り替わるまで、この予備光パスを収容する光チャネルを決定することができない。
ここで、自律分散型の光通信ネットワークにおいて、M:Nシェアードリストレーション方式に基づいた高速救済を実現するには、故障発生に伴う予備光パスの起動を高速化する必要がある。
しかし、M:Nシェアードリストレーション方式では、切替発生時まで各リンク区間でのチャネル(光ネットワークの場合は波長チャネル)が確定しないため、次のような問題が発生する。
例えば、図34に示すように、現用パス(1)としてノード#1−#3−#6−#8に帯域が確保され、現用パス(2)としてノード#4−#3−#6−#8に帯域が確保されている状況で、ノード#3−#6間でリンク切断が発生すると、このリンク区間を通過する現用光パス(1),(2)に切替動作が発生する。ここで、現用光パス(1)の切替シグナリングがノード#1−#2−#4−#7−#8で発生し、現用光パス(2)の切替シグナリングがノード#8−#7−#4で発生する場合を想定する。このとき、図35に示すように、ノード#4−#7において、上流ノードと下流ノードの両方からの切替シグナリングによる同一の光チャネルの奪い合いが確率1/2で発生する。ノード#7−#8間でも同様である。このような衝突が発生すると、衝突回避処理によりこの2ノード間で光チャネルの再設定処理が必要になり、高速切替の実現を妨げる要因になる。このような問題を解決する技術を次の各実施の形態においてに説明する。
(実施の形態4−1(高速パス切替方法))
図36は、本実施の形態の高速パス切替方法が適用される光通信ネットワークの構成例を示す。現用光パス(1)はノード#1−#3−#6−#8に帯域を確保し、現用光パス(2)はノード#4−#3−#6−#8に帯域を確保し、現用光パス(3)はノード#4−#5に帯域を確保し、現用光パス(4)はノード#5−#7に帯域を確保しているときに、ノード#3−#6間でリンク切断が発生すると、このリンク区間を通過する現用光パス(1),(2)に切替動作が発生する。このとき、現用光パス(1)の切替シグナリングがノード#1−#2−#4−#7−#8で発生し、現用光パス(2)の切替シグナリングがノード#8−#7−#4で発生する場合を想定する。
一方、ノード#4−#7のリンクには32波の光チャネルが定義され、そのうち予備光パス設定用に確保されている光チャネル群は2波とする。この光チャネル群には、合計で4本の現用光パス(1)〜(4)に対する予備光パスが登録されているものとする。すなわち、2:4シェアードリストレーション方式に対応する。
図37は、本実施の形態の高速パス切替方法におけるシグナリングシーケンスを示す。ここで、隣接関係にあるノード#4,#7は、OSPFまたはLMPプロトコルを用いた通信の結果、マスターノードおよびスレーブノードとして互いに役割分担を行う。なお、本実施の形態では、2つのノードに割り当てられたノード識別番号の大きい方がマスターノード、小さい方がスレーブノードとして決定される。あるいはその逆でもよい。シグナリングシーケンスは、RSVP−TEプロトコルが用いられる。
ここで、ノード#4,#7において、故障に伴う予備光パス起動メッセージが双方から入力されたとする。このとき何も処理をしなければ、所定の確率で同一の光チャネルを奪い合う事態が発生する。そこで、図38に示すように、マスターノード(#7)からスレーブノード(#4)へ予備光パス起動メッセージが通知される場合は、小さい(あるいは大きい)識別番号を有する光チャネルを起動する。一方、スレーブノード(#4)からマスターノード(#7)へ予備光パス起動メッセージが通知される場合は、大きい(あるいは小さい)識別番号を有する光チャネルを起動する。これにより、互いに逆方向の予備光パス起動メッセージが通知される場合でも、衝突の発生を回避して高速に予備光パスを起動することができる。
また、マスターノード(#7)からスレーブノード(#4)へ相次いで予備光パス起動メッセージが通知される場合には、先着順に従って小さい(あるいは大きい)識別番号を有する光チャネルから順に起動する。一方、スレーブノード(#4)からマスターノード(#7)へ相次いで予備光パス起動メッセージが通知される場合は、先着順に従って大きい(あるいは小さい)識別番号を有する光チャネルを順に起動する。これにより、互いに逆方向の予備光パス起動メッセージが相次いで通知される場合でも、衝突の発生確率を低減して高速に予備光パスを起動することができる。
(実施の形態4−2(パス切替装置))
図39は、本実施の形態のパス切替装置の構成図である。この構成は実施の形態1−5で説明したパス切替装置の構成と同じである。本実施の形態では、予備光パス起動処理部224などが、実施の形態4−1で説明した方法により、予備光パスを起動する点が実施の形態1−5と異なる。
(実施の形態4−3(パス切替装置))
図40は、本実施の形態のパス切替装置の構成図である。本実施形態のパス切替装置は、実施の形態4−2の光スイッチ部10に代えて電気スイッチ部30を備える。電気スイッチ部30は、電気スイッチ機能部31と電気スイッチ機能部31を制御するスイッチ制御部32と、管理制御機能部20と制御信号を交換するディジタルクロスコネクトインタフェース(DCC−IF)33により構成され、SONETOC-48リンクを32×32でディジタルクロスコネクションを実現する。
制御回線は、SONETOC-48のDCCチャネルを用いて構成される。制御信号は、例えばネットワークトポロジーを取得するためのOSPF/IS-ISプロトコルパケット、パケットスイッチ間で設定されるパスを設定・解除するRSVP-TE/CR-LDRプロトコルパケット、各ファイバリンクの障害監視を行うLMPプロトコルパケットである。
管理制御機能部20の構成は実施の形態4−2と同様である。ここでは、光チャネルの代わりに、SONETで定義されるVC−4(155 Mbit/s )チャネルを管理制御する。
(実施の形態4−4(パス切替装置))
図41は、本実施の形態のパス切替装置の構成図である。本実施形態のパス切替装置は、実施の形態4−2の光スイッチ部10に代えて電気スイッチ部40を備える。電気スイッチ部40は、セルスイッチ機能部41とセルスイッチ機能部41を制御するスイッチ制御部42と、管理制御機能部20と制御信号を交換する制御信号インタフェース(IP over ATM)43により構成され、SONETOC-48リンクを入出力32本収容可能であり、これらの間でセルスイッチングを実現する。
制御回線は、通信キャリアの共通線信号網を用いて構成される。制御信号は、例えばネットワークトポロジーを取得するためのOSPF/IS-ISプロトコルパケット、パケットスイッチ間で設定されるパスを設定・解除するRSVP-TE/CR-LDRプロトコルパケット、各ファイバリンクの障害監視を行うLMPプロトコルパケットである。
管理制御機能部20の構成は実施の形態4−2と同様である。ここでは、光チャネルの代わりに、ATMスイッチ間で定義されるVPIを管理制御する。ノード間リンクごとに定義されるVPIは、光パスや電気パスを収容するチャネルに相当する。すなわち、図に示すように、各ノード装置で入出力間のVPIの相関をとることは、光パスや電気パスのクロスコネクション動作に相当する。
また、本実施の形態は、レイヤ2.5 のMPLS技術を用いることによりIPパケットトラヒックに対する仮想パスを提供可能なラベルスイッチルータ、同様にEtherフレームに対する仮想パスを提供可能なEther over MPLSスイッチに対しても適用可能である。
以上説明したように、実施の形態4−1〜4−4の高速パス切替方法およびパス切替装置は、M:Nシェアードリストレーション方式を採用した分散制御通信ネットワークにおいて、互いに逆方向の切替シグナリングによって同一の光チャネルが競合する状態を回避し、高速に予備光パスを起動させることができる。
[実施の形態5−1、5−2]
次に、プリアサインリストレーション方式において、経路長の長い予備パスへの故障切替を高速に行うための技術について説明する。
プリアサインリストレーション方式では、1つのパストランクを転送するのに定義される現用パスと予備パスは、始点終点ノードを除いて互いに異なる経路になるように経路選択される。さらに、予備パスの経路は現用パスの故障が発生する前に事前に帯域予約され、この予備パス帯域は他の現用パスを救済するための定義された予備パスと共用される。
例えば、図42A、Bに示す例では、ノード#1−#2間、ノード#2−#3間、ノード#1−#4間、ノード#2−#5間、ノード#3−#6間、ノード#4−#5間、ノード#5−#6間が、それぞれ危険分類番号{11}、{12}、{13}、{14}、{15}、{16}、{17}のリンクを介して接続される。ノード#1−#2−#3−#6間の現用光パスAは危険分類番号{11, 12, 15}、ノード#2−#3間の現用光パスBは危険分類番号{12}、ノード#2−#5間の現用光パスCは危険分類番号{14}の各リンクを通過するときに、それぞれの予備光パスA,B,Cは危険分類番号{13,16,17}、危険分類番号{14,17,15}、危険分類番号{12,15,17}のリンクを通過する経路に設定される場合を想定する。
ここで、予備光パスに関する帯域の共用では、現用光パスが通過する危険分類番号{11},{12}, {14},{15}のいずれかのリンクの単一故障が発生しても救済の妨げにならないように予備光チャネルが共用される。これまでに説明したように、リストレーション方式では、危険分類番号{12}のリンクを通過する現用光パス数が最大2であるので、その故障発生時に予備光パスに切り替えられれば十分であり、予備光チャネル数は2本あればよい。リストレーション方式は、これを最大限に利用することにより、予備パスを収容するのに必要となるネットワーク設備量を大幅に削減可能にしている。
さて、現用パスから予備パスに切り替える際に予備パス経路上のノードでは、確実に物理的なクロスコネクション設定(スイッチング処理)を行いながら、迅速に故障した現用パスを予備パスに切り替える必要がある。このときの故障通知方法には、図43A、B、Cに示す3通りがある。
第1の方法は、図43Aに示すように、故障検出点のノードからネットワーク全体に故障通知をフラッディングさせる方法である。故障検出点のノードから予備パス上の各ノードに対して故障通知を最短経路で通知可能な場合が多く、高速な故障切替動作の実現が見込める。ただし、故障発生に伴いネットワーク全体に故障通知が発信されることを前提としており、実際の故障切替動作が不要なノードでもこの故障通知を転送する必要があるなど、非効率な側面もある。
第2の方法は、図43Bに示すように、故障検出点のノードから現用パス−予備パスの切替点のノード(図では両ノードは同じ)に対して故障発生を通知し、この切替点のノードから予備パス上の各ノードに対して故障通知をマルチキャストする方法である。この方法では、予備パスを各リンクのどのチャネルに実際に割り当てるかについても、事前に決定しておくことが前提となる。
第3の方法は、図43Cに示すように、故障検出点のノードから現用パス−予備パスの切替点のノード(図では両ノードは同じ)に対して故障発生を通知し、この切替点のノードから予備パス上のノードに経路順に故障通知を転送する方法である。
第3の方法は、第1の方法に比べて故障検出点から予備パスへの切替点のノードまで故障発生を通知する必要があるので故障救済動作が遅くなりがちである。ただし、SDHパスや光パスの故障検出については、必ずしも故障発生点に隣接するノードに限定されることはなく、予備パスへの切替点での検出も可能である。特に、SDHパスの場合には、故障発生時に下流ノードに対して異常発生信号(AIS)を通知する機能があり、光パスの場合も同様の機能または光パス信号自体のパワー断により検出可能である。したがって、SDHパスや光パスの故障救済については、第3の方法でも比較的高速に予備パスへの切り替えを行うことができる。
また、第3の方法は、第2の方法に比べて予備パスを各リンクのどのチャネルに割り当てるかについて、故障通知を転送しながら上流ノードから下流ノードに(またはその逆方向に)順に決定していくことができるので、柔軟性のある運用が可能である。
ところで、この第3の方法により故障通知を行い、現用パスから予備パスに故障切替を行う場合に、所定の遅延が発生せざるをえない事情がある。それは、クロスコネクト装置における予備パスの設定があくまでも切替先チャネルの「予約」に過ぎず、物理的な予備パスの接続が行われていないことに起因している。すなわち、故障発生に伴う故障通知を事前に予約された予備パスの経路に沿って順に転送し、予備パスの接続設定を各ノードで実際に行っていく必要があり、そのための時間が必要になる。具体的には、(1)光信号の伝搬速度で決定される予備パスの故障通知の伝搬遅延と、(2)各ノードにおける故障通知の転送遅延の累積である。前者の遅延は1000kmあたり5ミリ秒の割合で累積され、後者の遅延は1ノードあたり1〜10ミリ秒程度が累積される。したがって、例えば50ミリ秒以内の時間での故障救済が要求されるリストレーション方式では、予備パスの経路が数ノード以上になるように設定することは事実上困難になり、ネットワークスケールを制限する要因になる。このような点に鑑みて、切り替えを高速に行う技術について以下の各実施の形態で説明する。
(実施の形態5−1(高速パス切替方法))
図44A、Bは、本実施の形態の高速パス切替方法を説明するための図である。図44Aにおいて、ノード#1−#2−#3−#4−#8間に現用パスAが設定され、ノード#1−#5−#6−#7−#8間に予備パスAが設定され、ノード#9−#10間に現用パスBが設定され、ノード#9−#6−#7−#10間に予備パスBが設定される場合を想定する。
本実施の形態では、故障通知の転送による切替処理に多大の遅延(例えば20ミリ秒以上)が見込まれる予備パスAについては、図44Aに示すように予備パスAの経路上の各ノードにおいて物理的な接続を実現しておく(図中実線で示す)。このような予備パスを「ホットステート予備パス」という。一方、予備パスBの経路上の各ノードでは物理的な接続は行わず、予備パス帯域が予約されるだけである(図中破線で示す)。
ホットステート予備パスは、経路長が所定の長さを越える、または経由ノード数が所定数を越える場合に設定される。予備パスAの始点ノード#1では、現用パスAと同一のデータ(SDH伝送システムではSDHフレームのペイロード部のみ)を複製し、終点ノード#8まで転送される。現用パスAの故障発生時には、終点ノード#8のAPS(Automatic Protection Switching) 切替により、現用パスAから予備パスAに切り替えられる。このとき、予備パスAは、予備パス経路に沿って始点終点間で接続性が確保されているので、現用パスAの故障発生時には終点ノードにおける切替処理のみで、現用パスAから予備パスAへの切替を予備パス経路長に依存せずに高速に行うことができる。なお、ノード#8を始点としノード#1を終点とする逆方向のパスについても同様である。
通常のリストレーション方式では、図45に示すように、始点ノード#1から終点ノード#8までの予備パスAや始点ノード#9から終点ノード#10までの予備パスBは予備パス帯域が予約されるだけで、経路上の各ノードは故障切替まで物理的な接続を行わない。したがって、予備パスAと予備パスBはノード#6−#7間の帯域を共用し、かつ対等に扱われる。
一方、本実施の形態では、ホットステート予備パスとして占有している帯域について、他の現用パスを救済する手段として開放することを許容する。すなわち、予備パスBがノード#6−#7間に設定される場合には、予備パスAと予備パスBはノード#6−#7間の帯域を共用する点において、従来のプリアサインリストレーション方式と同等に予備帯域の共用効果を得る。具体例は後述する。
なお、従来の1+1プロテクション方式は、現用パスと予備パスに同一データが流れており、現用パスの故障切替が終点ノードにおけるAPS切替により対応できる点において本実施の形態のホットステート予備パスと同様であるが、現用パスと予備パスの双方が事実上「現用」として利用されており、予備パスが占有する帯域を他の予備パスと共用できない点において本発明と異なる。
また、従来のM:Nプロテクション方式は、現用パスの複製データを予備パスに流さず、予備パスが占有する帯域を複数の現用パスを救済する予備パス間で共用するが、それらの現用パスは互いにすべて同一の始点終点ノード間に設定されていることが前提となっており、本実施の形態のように予備パスの任意の区間で帯域の共用は想定されていない。
次に、図44A、Bを参照して本発明のパス切替方法の動作例について説明する。まず、図44Aに示すように、現用パスA,Bおよび予備パスA,Bが設定されるデフォルト状態では、経路長の長い予備パスAが物理的に接続されたホットステート予備パスに設定される。一方、予備パスBについては、帯域を予約するだけで物理的な接続は行われない。ここで、ノード#6−#7間では、予備パスA,Bが同一の光チャネルを共用するが、ノード#6,#7では予備パスAが接続されるように設定される。
この状態で現用パスAに故障が発生すると、図44Aに示すように、APS切替により現用パスAから予備パスAへの切り替えが行われる。この時点で現用パスAから予備パスAへの切り替えは終了し、予備パスAは現用パスとして利用開始となる。このとき、現用パスAの始点ノード#1から予備パスAの経路上にある各ノードに対して経路順に、予備パスAが現用パスに切り替えられた旨を通知する。これは、図43Cに示す従来の故障通知方法と同じであるが、すでに故障切替は終了しているので、故障通知の転送遅延は問題にならない。この通知により、予備パスBは、ノード#6−#7間で予備パスAと共用していた帯域の使用が禁止され、予備パスAから切り替えられた現用パスが物理的に接続される状態が維持される。
一方、図44Aのデフォルト状態において現用パスBに故障が発生すると、予備パスAと帯域を共用しているノード#6,#7で物理的な接続が予備パスBに切り替えられる。この状態を図44Bに示す。これにより、予備パスAの接続は一時的に遮断される。なお、現用パスBの故障が復旧し、予備パスBから現用パスBへ切戻しされると、予備パスAの物理的な接続が自動的に復活し、ホットステート予備パスとして機能する。
このように、経路長の短い予備パスに対しては、故障通知による故障救済処理を行う一方で、経路長が長い予備パスに対してはAPS切替を実現し、かつ予備パス帯域(光チャネル)を経路長の短い予備パスと共用する。これにより、いずれの故障発生に対してもすべての光パスについて一定の時間内に故障救済を完了させることができる。同時に、ホットステート予備パスを用いないリストレーション方式と同程度の予備パス帯域の共用効果を見込むことができ、経済性と故障救済の高速性を両立させることができる。
(実施の形態5−2(パス切替装置))
図46は、本実施の形態のパス切替装置の構成図である。図において、パス切替装置は、波長パス単位のクロスコネクションを実現する光スイッチ部10と、これを管理制御する管理制御機能部20と、チャネル管理データベース15により構成される。光スイッチ部10は、光スイッチ機能部11と、光スイッチ機能部11を制御するスイッチ制御部12および管理制御機能部20と制御信号を交換する制御信号インタフェース(IP over OSC)13により構成される。
管理制御機能部20の構成と動作は、パス管理部225を除いて実施の形態1−5とほぼ同じである。
パス管理部225は、ホットステート予備パスと、ホットステート予備パスでない予備パスとを区別して管理するとともに、ホットステート予備パスとして占有している帯域について、他の現用パスを救済する手段として帯域開放を許容する手段を含む。
この手段では、ホットステート予備パスの属性情報としてパストランク識別番号情報と入出力インタフェース番号を有し、始点・終点ノードを除く各ノードで物理的に接続されることを示すとともに、他の予備パスとの帯域共用を許容することが示される。
また、パス設定管理機能部22は、隣接ノードとの間で設定した予備パスがホットステート予備パスであるか否かを示す識別情報を送受信する手段を含む。これにより、ネットワーク全体で上記の方法による高速故障救済を自律分散的に行うことができる。
また、パス設定管理機能部22は、故障発生時に現用パスから予備パスへ切り替えるための切替メッセージを予備パス経路に沿って送受信する際に、パス管理部225にアクセスしてホットステート予備パスを収容しているチャネル帯域情報を取得し、このチャネル帯域を含めて予備パスの切り替え先を選択して切替メッセージを作成する手段を含む。これにより、図44Bに示すようなケースにおいて、物理的に接続されたホットステート予備パスの設定を一時的に解除し、これから故障救済処理により開通させようとする別の予備パスを新たに設定することができる。これは、ホットステート予備パスに対して高速切替を可能にするとともに、ホットステート予備パスを用いないリストレーション方式と同様の帯域共用を可能にしている。ただし、ホットステート予備パスどうしの帯域共用は行わないものとする。
また、パス設定管理機能部22は、現用パスに故障が発生した場合にその現用パスを救済するホットステート予備パスの経路のパス切替装置に沿って、ホットステート予備パスの帯域を他のパスの故障救済用に帯域開放しないように要求するメッセージを転送する。これにより、ホットステート予備パスが現用パスとして利用されるときに、ホットステート予備パスの帯域を他の予備パスが使用することが禁止することができる。
以上説明したように、本実施の形態5−1、5−2の高速パス切替方法およびパス切替装置は、予備パス帯域を複数の予備パス(ホットステート予備パスおよび通常の予備パス)で共用することにより、ネットワーク全体で必要とされる設備量を削減することができる。さらに、通常のリストレーション方式では困難であった経路長の長い予備パスについても、現用パスから予備パスへの切り替えを高速に行うことができる。
[実施の形態6]
図42A、Bで説明したようなリストレーション方式は単一リンクの故障に対して、100%の故障救済が行われるように予備パスの帯域共用が行われるもので、ネットワーク中で多重故障が発生した場合には予備パスの帯域共用が行われている区間で帯域確保の競合が発生し、故障救済に失敗することがある。
例えば、図47に示す例では、ノード#1−#3−#6−#8間に現用光パスAが設定され、対応する予備光パスAがノード#1−#2−#4−#7−#8間に設定され、ノード#4−#5間に現用光パスBが設定され、対応する予備光パスBがノード#4−#7−#5間に設定される場合に、ノード#3−#6間とノード#4−#5間のリンクに同時に故障が発生した場合を想定する。ノード#4−#7間の2本の予備光パスが1本の予備光チャネルを共用する場合、このような多重故障を救済するには予備光チャネルが不足し、帯域確保のために競合することになる。
リストレーション方式において、このような多重故障発生時の競合制御についてはいろいろ検討がなされている。例えば、非特許文献6(T.Yahara, R.Kawamura,"Virtual path self-healing scheme based on multi-reliability ATM network concept", IEEE Globcom '97, vol.3, pp.3-8, 1997)では、予備パスを複数のクラスに分類し、帯域を共用している予備チャネルへの切り替え時に競合が発生しても調整可能な方法が提案されている。例えば、予備パスの優先クラスを定義し、多重故障発生時に優先クラスの高い予備パスを優先的に救済する方法である。これにより、優先クラスの高い予備パスから順に効率的に故障救済が行われる。
また、故障救済の対象となるすべてのパスについて故障救済の優先順位を付与し、帯域を共用している予備系への切り替え時に競合が発生しても調整可能な方法が提案されている。この方法では、故障発生時に優先順位の高いパスから順に予備系への切り替えが行われ、多重故障発生時にも効率的に故障救済が行われる。
ところで、リストレーション方式における多重故障発生時の競合制御は、優先クラスの高い予備パスを優先的に救済するなど、競合した場合の調整に重点が置かれており、多重故障を可能な限り救済するという観点ではなかった。また、いずれもパス管理を集中的に行うネットワークマネジメントシステムにより制御されており、故障救済処理の高速性に問題があるとともに、ネットワークスケールを制限する要因になっていた。
上記の点に鑑み、多重故障時の故障救済を分散制御により効率的に行う技術について説明する。
図48は、本実施の形態のパス管理装置を含むパス切替装置の構成例を示す。図において、パス切替装置は、波長パス単位のクロスコネクションを実現する光スイッチ部10と、これを管理制御する管理制御機能部20と、チャネル管理データベース15により構成される。光スイッチ部10は、64×64の光スイッチ機能部11と、光スイッチ機能部11を制御するスイッチ制御部12および管理制御機能部20と制御信号を交換する制御信号インタフェース(IP over OSC)13により構成される。なお、光スイッチ機能部11に代えて、2.5 Gbit/s のSDHリンクを8本入出力し、VC−4(150 Mbit/s )単位でクロスコネクション処理可能なスイッチ機能部であっても同様である。
管理制御機能部20の構成と動作は、パス管理装置225を除いて実施の形態1−5とほぼ同じである。
本実施の形態のパス管理装置225は、予備パス起動処理部224およびシグナリング処理部221を介して、予備パスの設定状態を予備パスが経由する各ノードに通知する機能を有し、予備パスを収容する光チャネルが故障するか他の予備パスに使用され、すでに起動不可(故障救済不能)になっている予備パスを検出したときに、その予備パスが経由するノードに対して「予備パス起動不可メッセージ」を通知する。さらに、予備パスが経由する各ノード区間ごとの起動可否を把握し、その情報を「予備パス起動不可メッセージ」に盛り込むようにしてもよい。
図49A、B、Cは、予備パス起動不可メッセージの転送方法を示す。第1の方法は、図49Aに示すように、予備パスの起動不可を検出したノードから、当該予備パスが経由するノードに対して「予備パス起動不可メッセージ」をマルチキャストする。
第2の方法は、図49Bに示すように、予備パスの起動不可を検出したノードから当該予備パスの始点ノードに対して「予備パス起動不可メッセージ」を通知し、この始点ノードから当該予備パスの終点ノードまでの各ノードに対して「予備パス起動不可メッセージ」をマルチキャストする。
第3の方法は、図49Cに示すように、予備パスの始点ノードから終点ノード(あるいはその逆方向)に向けて正常性確認のために定期的に転送される予備パス管理メッセージ(図では RSVP-TEプロトコルで標準仕様の Helloメッセージ)を用いる。予備パスの起動不可を検出したノードは、「予備パス起動不可メッセージ」を Helloメッセージに追加することにより、当該予備パスが経路するすべてのノードに通知することができる。
このような方法により転送された「予備パス起動不可メッセージ」を受信したノードのパス管理装置では、予備パスの管理属性情報として予備パスの起動可否を把握することができ、起動不能の予備パスに対して無用な切替処理を行うことを回避することができる。これにより、起動不能の予備パスを含む複数の予備パス同士が帯域を確保しあう無用な競合を回避することができる。
また、事前予約されている予備パスによる故障救済が不可能であることを事前に把握できることにより、現用パスを別の経路を介して救済する等の対策を迅速にとることが可能になる。
また、予備パスが経由するノードでは、他のノード区間で当該予備パスを収容するチャネルが故障や他の予備パスにすでに利用されている場合など、当該予備パスが起動不可であることを把握することができるので、次に示すように当該予備パスのチャネルを他の予備パスに転用することが可能となり、他の予備パスは多重故障発生時でも救済される確率が高くなる。
図50は、本実施の形態のパス管理装置におけるパス管理例を示す。図において、故障サービスクラス1の予備パスAは単独で光チャネル1が割り当てられ、故障サービスクラス2の予備パスB,C,Dは光チャネル2を共有しているものとする。ここで、予備パスAが他のノード区間において故障や他の予備パスが使用しているために光チャネルの確保ができない場合、予備パスAは起動不可となり、このノードで予備パスAを収容している光チャネル1が使用されることはない。このとき、予備パスB,Cに対応する区間で多重故障が発生し、同時に光チャネルを確保する必要が生じ、共有している光チャネル2に対する競合が発生する場合を想定する。この状況において、図49A〜Cに示す方法により予備パスAがすでに起動不可となっていることが通知されていれば、予備パスAを収容する光チャネル1を予備パスBまたは予備パスCを収容する光チャネルとして転用することができる。これにより、多重故障に対して予備パスB,Cによる同時救済が可能になる。
図51は、本実施の形態のパス管理装置における他のパス管理例を示す。図において、故障サービスクラス1の予備パスA,Bは光チャネル1を共有し、故障サービスクラス2の予備パスC,D,Eは光チャネル2,3を共有しているものとする。ここで、多重故障の発生により予備パスA,Bが同時に光チャネル1を確保しようとした場合を想定する。このとき、予備パスA,Bの両方が救済されるように、より低い故障サービスクラスの予備パスC,D,Eを収容する光チャネル2または光チャネル3を予備パスAまたは予備パスBを収容する光チャネルとして転用する。これにより、多重故障に対して予備パスA,Bによる同時救済が可能になる。
以上説明したように、本実施の形態のパス管理装置では、他のノード区間で収容するチャネルを確保できなくなった予備パスを起動不可として、当該予備パスが経路するノードに通知することにより、多重故障の発生時に起動不能の予備パスを含む複数の予備パス同士の無用な競合を回避することができる。
さらに、起動不可となった予備パスの通知により、起動不可の予備パスに供されるチャネルを転用したり、低い故障サービスクラスの予備パスに供されるチャネルを転用するパス管理を行うことにより、多重故障が発生した場合における予備パスの起動成功確率を高めることができる。
[実施の形態7−1、7−2]
図5に示したように、光ルータを用いたネットワークは、ユーザ情報を転送するスイッチ機能部で形成されるデータプレーンと、通信ネットワークの制御信号を転送する制御装置で形成される制御プレーンが分離した構成になっている。
データプレーンは、SDHまたはOTN(Optical Transport Network) 技術をベースとした高信頼ネットワークである。一方、制御プレーンは、EtherスイッチまたはIPルータをベースとしたネットワークであり、データプレーンよりも冗長度の高いネットワーク構成となるのが一般的である。
GMPLSの標準化組織であるIETF(Internet Engineering Task Force) では、この制御プレーンの正常性を確認するプロトコルとしてLink Management Protocol(LMP)の標準化が進められている(IETF:draft-ietf-ccamp-lmp-07.txt) 。
LMPは、図52に示すように、データプレーンで隣接関係にあるノード間で制御プレーンの制御装置を介して制御チャネルを確立し、その制御チャネルを介してノード間でシーケンス番号のみを通知するハローパケットを交換しあう。このハローパケットの交換に失敗すると、制御チャネルの異常として検出される。このハローパケットの交換周期は標準で10〜100msec であり、異常検出を高速に行うことが可能である。ここで、制御プレーンに異常がある状態(LMP Degrated State) では、各ノードは制御プレーンの故障につられて、正常なデータプレーンに悪影響を及ぼさないようにする必要がある。例えば、データプレーンで設定されているパスの切断、制御チャネル故障をリンク断と誤認識することにより、不要な切替動作が発生しないようにする必要がある。
ところで、データプレーンのパスは、図52に示すような制御プレーンを介するシグナリング処理により設定されるが、この設定されたパスの維持管理の概念として、ハードステートとソフトステートがある。
ハードステートでは、一度設定したパスは、明確な切断命令がない限り、各ノードでのパス設定状態が半永久的に保存され、パスを開通させるクロスコネクション状態は維持される。このハードステートの利点は、一度設定されたパス状態の維持管理処理が不要であり、制御プレーンに故障が発生した場合でも、切断や不要な切替動作が発生することはない。その反面、通信不能のノードが発生するような大規模災害が発生すると、残りの正常なネットワーク装置を用いた高速なネットワークの再構成が困難になる。例えば、図53に示すようにノード#1−#2−#3−#6の経路のうちノード#2−#3間に障害が発生し、ノード#1−#4−#5−#6の経路に切り替えるときに、ノード#1−#2、#3−#6のパスに対して故障パス切断命令がなされず、無効パスが残留することにより無駄にネットワークリソースが消費される状態が続くことになる。
一方、ソフトステートでは、設定したパスは制御プレーンを介する周期的なシグナリング処理により正常性確認が行われる。例えば、RSVP-TE プロトコルでは、パスの正常性を確認するハローパケットが周期的にパス端間で交換される。そして、所定時間内に正常性が確認されないときに、各ノードでのパス設定状態が削除され、パスを開通させるクロスコネクション状態も解消される。これにより、無効パスの生成を抑制し、パス登録削除ミスによりネットワークリソースの無駄遣いを完全に排除することができる。また、大規模災害時でも削除すべき故障パスを迅速かつ自動的に消去し、ネットワークの再構成による迅速な復旧が可能になり、異常発生時のネットワーク運用の柔軟性を高めることが可能になる。
ハードステートおよびソフトステートにはそれぞれ一長一短があり、例えばハードステートでは異常終了されたパス設定の後処理が必要になるが、ソフトステートでは異常終了されたパス設定状態は自動的に解消されるので、ソフトウェア制御の異常処理に必要となるソフト開発量を大幅に削減することができる利点がある。しかし、ソフトステートでは、上記の制御プレーンに異常がある状態(LMP Degraded State) の厳格な定義が必要であり、制御プレーンの故障が正常なデータプレーンに悪影響を及ぼさないような高信頼設計が必要であり、この点が課題になる。
ここで、ソフトステートとハードステートの両者の利点を得るために、中間ステートとしてソフトハードステートを定義する。ソフトハードステートは、ハードステートのような半永久的なパス設定ではなく、数日程度の故障ではパス設定が削除されないソフトステートである。ソフトハードステートは、いわゆるレガシーサービスと呼ばれる電話、ディジタル専用線、ATM専用線に適用する。従来のソフトステートは、低品質クラスの公衆IPトラヒックを収容する回線に提供する。
以下、各実施の形態において、このようなパス管理を実現するために必要となる制御機能を提供し、制御プレーン故障による悪影響としてデータプレーンに設定された正常なパスの切断や不要な切替動作を抑止する制御を可能にするネットワーク制御装置について説明する。
(実施の形態7−1)
まず、本実施の形態における制御方法の概要について説明する。
本実施の形態のネットワーク制御装置では、まず正常確認経過時間が閾値を超過したときに、パス管理データベースに登録されているパス管理情報を削除するソフトステートが導入されている。ここで、ソフトステートからハードステートへの状態遷移は、各ノードにおいて、制御プレーンに異常がある状態(LMP Degraded State) の検出が契機になる。
そして、LMP Degrade を検出したノードで、制御リンクに対応するデータリンクの正常性を確認し、データリンクに異常がなければ、そのデータリンクを通過するパスをソフトハードステートに遷移させる。さらに、そのパスをソフトステートからソフトハードステートに遷移させるために、そのパスが通過する全ノードにその旨を通知して認識させる。これにより、制御プレーン故障によりデータプレーンに設定された正常なパスの切断や不要な切替動作を抑止することができる。
また、ソフトハードステートからソフトステートへの遷移は、制御リンクの復旧確認と、データリンクの正常性を確認できた段階で行われる。この場合も同様に、パスが通過する全ノードにその旨を通知して認識させる。以上の状態遷移の様子を図54に示す。
図55は、実施の形態7−1のネットワーク制御装置を示す。図において、ネットワーク制御装置は、波長パス単位のクロスコネクションを実現する光スイッチ部10と、これを管理制御する管理制御機能部20と、チャネル管理データベース15により構成される。光スイッチ部10は、光スイッチ機能部11と光スイッチ機能部11を制御するスイッチ制御部12により構成される。本実施の形態の光スイッチ部10は、128×128スイッチを用い、光パスが32波多重されたファイバリンクを4本入出力する能力を有する。各光パスの伝送速度は 2.5Gbit/s であり、SONETOC-48インタフェースで終端される。
制御回線は、155 Mbit/sの伝送速度を有するSONET OC-3回線で構成されている。制御信号は、例えば光ルータネットワークのネットワークトポロジーを取得するためのOSPF/IS-ISプロトコルパケット、パケットスイッチ間で設定される光パスを設定・解除するRSVP-TE/CR-LDRプロトコルパケット、各ファイバリンクの障害監視を行うLMPプロトコルパケットである。
管理制御機能部20は、制御信号プロトコルを処理する機能部を実装しており、光パスの設定・解除・切替・ルーティングを実現するルーティング処理機能部(OSPF/IS-ISプロトコル処理機能)21、光パス設定・解除シグナリングを行うパス設定管理機能部(RSVP-TE/CR-LDRプロトコル処理機能)22、制御信号を伝送する制御回線網の障害監視を行う制御リンク管理機能部(LMP プロトコル処理機能)23、IP処理部24により構成される。
パス設定管理機能部22は、シグナリング処理部221、現用パス設定・削除処理部222、予備パス設定・削除処理部223、予備パス起動処理部224、データネットワークに設定されたパスの設定管理を行うパス管理データベース225、タイマ処理部226を備える。シグナリング処理部221は、パスの新設、削除、パスの故障復旧に伴う切替通知処理を行うだけでなく、パス設定後に定期的にパス端間でハローパケットを送受信することにより、パス設定を維持する機能を備えている。
シグナリング処理部221は、図56に示すように、ハローパケットの到着とハロー処理を行ったパス識別番号をタイマ処理部226に通知し、タイマ処理部226は該当するパスに対するタイマ処理をリセットする。
すなわち、現用パスおよび予備パスの各々に対して定期的なハローパケット交換によりパス設定を維持しているが、タイマ処理部226は各パスに対してタイマ処理のプロセスまたはインスタンスを生成する。タイマ処理により経過した正常確認経過時間が閾値を超過すると、パス管理データベース225に登録されているパス管理情報を削除するとともに、光クロスコネクト間の波長チャネルを管理するチャネル管理データベース15を操作し、削除するパスが占有していたチャネル状態を空き状態に遷移させる。さらに、光スイッチ部10のクロスコネクション状態を解消する。以上により、ソフトステートによるパスの維持管理を実現する。
また、制御プレーンとデータプレーンが明確に分離されているネットワークにおいて、次のようにして信頼性の高いネットワーキングを実現する。制御リンク管理機能部23は、図57に示すように、自ノードに接続されている制御リンクの異常を検出し、かつ制御リンクに対応するデータリンクの正常性を確認すると、故障が発生した制御チャネルを介して設定維持(ハローパケットの交換)をしているパスに対してタイマ処理を行っているタイマ処理部226にタイマ停止信号を出力する。なお、タイマ停止処理するパスは、故障が発生した制御チャネルを介してハローパケットの交換が行われているものに限られる。該当するパスの検索は、シグナリング処理部221から現用パス設定・削除処理部222、予備パス設定・削除処理部223に問い合わせることで行われる。
タイマ処理部226は、このタイマ停止信号の入力により、設定されているパスの正常確認経過時間のタイマ処理を停止する。これにより、制御リンクの故障に伴う不用意なパスの切断処理が行われないようにする。すなわち、これらのパスはソフトステートからソフトハードステートに遷移することになる。
また、シグナリング処理部221は制御リンクの故障に伴い、この制御リンクを介してハローパケットの交換をしているパスに対するタイマ停止処理を行う。その結果、ソフトステートからソフトハードステートに遷移したパスについて、その旨をパスが経由するすべてのノードに通知する。これにより、設定されているパスの全区間において、ソフトステートからソフトハードステートに遷移させる。なお、ソフトステートからソフトハードステートへの遷移を通知する手段として、RSVP-TE またはCR-LDPなどのシグナリングプロトコルが用いられる。
(実施の形態7−2)
図58は、実施の形態7−2のネットワーク制御装置の構成図である。本実施の形態のネットワーク制御装置は、実施の形態7−1の光スイッチ部10に代えて電気スイッチ部30を備える。電気スイッチ部30は、SDHフレームVC−4(155Mbit/s ) 単位のクロスコネクションを実現する32×32のディジタルクロスコネクトスイッチ機能部31とそれを制御するスイッチ制御部32と、管理制御機能部20と制御信号を交換するディジタルクロスコネクトインタフェース(DCC−IF)33により構成される。
制御回線は、STM16信号のDCCチャネルを用いて構成される。制御信号は、例えばネットワークトポロジーを取得するためのOSPF/IS-ISプロトコルパケット、パケットスイッチ間で設定されるパスを設定・解除するRSVP-TE/CR-LDRプロトコルパケット、各ファイバリンクの障害監視を行うLMPプロトコルパケットである。
管理制御機能部20の構成は実施の形態7−1とほぼ同様であるが、制御リンク管理機能部23に機能追加がある。それは、自ノードに接続された制御リンクの異常を隣接ノードに通知する機能と、隣接ノードから通知された制御リンクの異常を他の隣接ノードに通知する機能が追加される。これにより、制御リンクの故障を制御エリア全体に通知し、この制御エリア内で設定されているパスをすべてソフトステートからソフトハードステートに遷移させる。同時に、この制御エリアを通過するVC−4パスの新設を一時停止させ、パス運用の安定化を図る。すなわち、制御リンクの故障に対して、通信ネットワークにソフトステートを導入すると同時に、ソフトステートの導入に伴うVC−4パスの切断動作、不要な切替動作をある一定のエリア内で抑止し、パス運用の安定化を確保することが可能になる。
なお、本実施の形態では、SONET/SDH フレームのSTS-3/VC-4パスのネットワーキングを実現するディジタルクロスコネクトネットワークに適用しているが、ATMネットワークのバーチャルパス、MPLSネットワークのラベルスイッチドパスの管理制御にも適用可能である。
また、制御リンクの故障を制御エリア全体に通知する際に、制御リンクに対応するデータリンクを通過するパスの識別番号情報をその制御エリア内に通知することにより、データリンクに設定されているパスのみをソフトステートからソフトハードステートに遷移させることも可能である。
以上説明したように、実施の形態7−1、7−2のネットワーク制御装置は、ソフトステートの導入によりパス管理の異常処理ソフトウェアの開発量の削減によるコスト削減が可能になる。
さらに、制御リンクに対応するデータリンクの正常性を確認し、データリンクに異常がなければ、そのデータリンクを通過するパスをソフトハードステートに遷移させることにより、制御プレーン故障によりデータプレーンに設定された正常なパスの切断や不要な切替動作を抑止することができる。これにより、制御プレーンの信頼性に左右されない高信頼のパスネットワーキングが可能になる。
なお、本発明は、上記の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内で種々変更・応用が可能である。