JP4220755B2 - 工具用磁気保持装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工具により取り扱う部品類を希土類磁石を用いて磁気保持するための工具用磁気保持装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
希土類磁石は磁気特性が良好であり、かつまた価格も比較的安価な部類に属するため、各種用途に使用されつつある。しかし、吸着時の接触衝撃や、工具振動の共振破壊、摩耗等により、微粉、微塊を生じやすく、或いは錆び粉も発生するため、これらが吸着対象物に付着してその特性を著しく阻害し、性能を損なうおそれがある。磁気を嫌う時計などの機器、電磁波、磁気記憶装置、高周波回路、GPSシステム等にあっては、強力なネオジウムマグネットの破片などでも甚大な影響を被ることが予測される。
【0003】
また本発明の対象である工具とともに扱われるねじのような部品類では、使用目的により六角頭部の高さが種々異なるものがあり、これらの中でフランジ付きねじ類はフランジによってソケットに挿入される寸法が規制されるために、磁石の吸着面高さを夫々のねじに合わせる必要があり、さらにナットでは締め付けるにしたがってボルト部が突出する分、磁石を後退させることが必要なケースもある。こうしたことは、工具のマグネット機構部の大型化を招いており、作業者への重量的な負担増となって跳ね返っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の点に着目してなされたものであり、その課題は、強力な磁力を発揮し部品類を確実に保持するにも拘ず安心して使用することができる工具用磁気保持装置を提供することである。また本発明の他の課題は小型軽量に形成し得る安全な工具用磁気保持装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため本発明は、希土類磁石としてネオジウムマグネットを用い、
ネオジウムマグネットは工具類又は部品類を受け入れ可能なリング状を呈するとともに、リング状のものを中心軸と平行な方向に正2分した半リング状のものから成り、半リング状のものの内側部と外側部をN極とS極に分極し、リング状の内側を、磁気吸着する工具を配置するための空間部分とし、
上記ネオジウムマグネットが微粉、微塊或いは錆び粉を生じたときにそれらを外部に漏出させないようにその表面をカバーによって密閉し、上記カバーは、リングの内側に位置する内側部と、リングの外側に位置する外側部と、リングの一端に位置する一端部と、リングの他端に位置する他端部とを設けて全体を密閉した構成を有しており、上記密閉されたカバーの内側部を、部品類に磁気吸着する磁気保持部とするという手段を講じたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の工具用磁気保持装置は、部品類を希土類磁石を用いて磁気保持する工具のためのものである。
【0007】
希土類磁石としては、ネオジウムマグネットを使用する。ネオジウムマグネットは、保磁力、最大エネルギー積、残留磁束密度いずれも大きく、小型化及び軽量化に最良である。本発明によるネオジウムマグネットは工具類を受け入れ可能なリング状を呈するとともに、その表面をカバーによって密閉し、その密閉された箇所の一部を、部品類に対する磁気吸着のための磁気保持部とする。
【0008】
ネオジウムマグネットは、複数個のものをリング状に並べたものであっても良いし、また円形のリング状ないし筒状のものであっても良い。このネオジウムマグネットを密閉するカバーは、リング状等の内側に位置する内側部と、リング状等の外側に位置する外側部と、リング状等の一端に位置する一端部と、リング状等の他端に位置する他端部とを有している構成を持つものとする。
【0009】
ネオジウムマグネットとして、リング状のものを中心軸と平行な方向に正2分した半リング状のものを2個使用したときは、半リング状のものの内側部と外側部をN極とS極とに分極し、リング状の中心部に配置した工具を磁気吸着する構成とすることができる(請求項2記載の発明、図2参照)。
【0010】
またカバーは、リングの内側に位置する内側部を他の部分より薄く形成し、それによってリングの内側の領域をも磁気保持部に使用することができる(請求項記載の発明)。つまりカバー材の構造を磁気吸着力の強弱調整手段として併用しても良い。
【0011】
さらに請求項の発明では、ネオジウムマグネットは、その内面と外面及び一端を、カバーの内側部と外側部及び一端部によって囲み、かつ他端は、磁気保持部として鉄ヨークを設けて全体を密閉し、さらに鉄ヨークを工具本体の先端部側に配置して、工具本体に対して前後移動可能に組み合わせるとともに、ネオジウムマグネットを作業後定位置に戻すためのばね部材を設けている。これにより、例えばねじ類の六角頭部の高さが異なるものや、ナット締め付けの進行にしたがってボルト部が突出すること、などに対応することが可能になる。本発明を適用し得る工具としては、いわゆるドライバービット、ボックスビット、ソケットレンチ、ユニバーサルジョイント工具等、ねじ、ボルト類の締め緩め工具全般が対象となる。
【0012】
【実施例】
以下図示の実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明の実施例1に関するもので、11は長目のリング状に型成形されたネオジウムマグネットで、リング状のものを中心軸と平行な方向に正2分した半リング状のものから成り、2個の半リング状のものの内側部と外側部をN極とS極に分極し、中間にスペースSを設けてリング状を呈するように配置されている。12はその表面を密閉するカバーであり、リングの内側に位置する内側部13と、リングの外側に位置する外側部14と、リングの一端に位置する一端部15とを有している。カバー12の内側部13は密閉カバー材の材厚が特別に薄く形成され、磁気保持部としての磁気吸着能力を持っている。
【0013】
また、リングの他端に位置しているカバー12の他端部に相当する部分16は開放しており、そこはかしめて取り付けた別部材の非磁性カバー17によって塞がれ、全体としてカバー12、17によるネオジウムマグネットの密閉が完結している。実施例1のカバー12は鉄(SS)製、また非磁性カバー17はアルミ合金製である。リングの中心に相当する箇所は、カバー12の内側部13によって囲まれる空間であるが、同時に、本発明の磁気保持装置10を工具に取り付ける部分18となり、例えばドライバービットを差し込む場所として使用される。
【0014】
よって本装置10の上記空間部分18にドライバービット19を差し込むと、例えば2個の半リング状マグネットの内側をS極、外側をN極に分極した場合、ドライバービットの軸側は図2に示すようにN極となるので、磁気吸着により固定される。その磁気吸着力は、ドライバービット19の軸部を磁化し、図3に示すようにビット先端からハンドルHの方向へ本装置10をスライドさせても、ビット先端における磁気吸着力は衰えることなく、ビット先端部と契合するねじ類Pに及ぶので、そのねじ類Pを確固に磁気保持することができる。よってねじ類Pを本装置10で隠さずに十分露出させたまま移動することができ、取り落とすおそれもない。また実施例1の装置は10はカバー12の外側で着磁及び脱磁を行えるという機能をも有する。
【0015】
図4、図5は、本発明の実施例2に関するもので、この磁気保持装置20は、円筒状のネオジウムマグネット21、非磁性カバー22及び鉄ヨーク27から成り立っている。このネオジウムマグネット21は実施例1のような内外分極ではなく、両端分極とされ、その1極に、磁気保持部兼カバーとして鉄ヨーク27が配置されている(図4(b)参照)。非磁性カバー22は、内側部23と外側部24及び一端部25とを有し、ネオジウムマグネット21の他端に相当する部分26には、円筒状の鉄ヨーク27が接着により取り付けてあって、非磁性カバー22とともにネオジウムマグネット2を密閉している。実施例2の場合非磁性カバー22の材厚に特に差は設けておらず、磁気吸着能力も必要ではない。ネオジウムマグネット21の中心及び鉄ヨーク27の中心には夫々空間部分28、29が設けられている。
【0016】
実施例2の磁気保持装置20における磁気吸着能力は鉄ヨーク27に集中して発揮されている。このような実施例2の磁気保持装置20において、図4に示すようにネオジウムマグネット21を工具本体30の先端部側に収納するために、工具本体内部にはボックスレンチのレンチ部に相当する係合部31が先端部に設けられ、その軸方向内方に磁気保持装置20を前後移動可能に設けた空間32が設けられていて、さらにその奥に、ネオジウムマグネット21を定位置に戻すためのばね部材33の収容部兼ネオジウムマグネット後退のための空間34が設けられている。
【0017】
図5に例示した磁気保持装置20の場合、鉄ヨーク27の外周に前向きの段部35が設けられ、かつ工具本体側には後向きの段部36が設けられていて、両端部35、36間に止め輪37を介在させているので、前方への抜け出しが防止される。なおこの適用例の工具本体30は、ボックスビットである。
【0018】
実施例2の場合でも、ネオジウムマグネット21は非磁性カバー22及びカバーの一部である鉄ヨーク27によって完全に密閉されており、磁気吸着物との衝突、工具自体の振動、工具取り扱いの粗雑等によってネオジウムマグネット21が損傷したとしてもその飛散を防止し、また錆を外部に漏出させることがない。これは実施例1のものと同様である。また、ネオジウムマグネット11、21は極性を自在に着磁することができるので、リング状のものを半円状に2分して各分断端部に極性を得るのみならず、半円の内側と外側に異なる極性を持たせることができるのは既に見たとおりである。
【0019】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成されかつ作用するものであるから、強力な磁力を発揮するにも拘ず安心して使用することができ、かつまた小型軽量に形成し得る安全な工具用磁気保持装置を提供することができる。また、ネオジウムマグネットは損傷しないかしても表に漏れないため、回収再利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)本発明の工具用磁気保持装置の実施例1を示す一方の端面図。
(b)同じく実施例1のものの縦断面図。
(c)図1(a)の反対側の端面図。
【図2】 実施例1の磁極の関係を示す斜視図。
【図3】 同じく実施例1の装置の使用説明図。
【図4】 (a)本発明の実施例2を示す端面図。
(b)同じく縦断面図。
【図5】 実施例2のものの適用例を示す一部破断側面図。
【符号の説明】
10、20 工具用磁気保持装置
11、21 ネオジウムマグネット
12、17、22 カバー
27 鉄ヨーク
30 工具本体

Claims (2)

  1. 部品類を希土類磁石を用いて磁気保持するための工具用磁気保持装置であって、希土類磁石としてネオジウムマグネットを用い、ネオジウムマグネットは工具類を受け入れ可能なリング状を呈するとともに、リング状のものを中心軸と平行な方向に正2分した半リング状のものから成り、半リング状のものの内側部と外側部をN極とS極に分極し、リング状の内側を、磁気吸着する工具を配置するための空間部分とし、上記ネオジウムマグネットが微粉、微塊あるいは錆び粉を生じたときにそれらを外部に漏出させないようにその表面をカバーによって密閉し、上記カバーは、リングの内に位置する内側部と、リングの外側に位置する外側部と、リングの中心軸と平行な方向の一端に位置する一端部と、その中心軸と平行な方向かつ上記一端部と反対方向である他端に位置する他端部で構成され、その他端部は、工具を当該磁気保持具に差し込んだ場合において上記工具に磁気保持される部品類側に位置するものであって、上記カバーは、リングの内に位置する内側部が他の部分より薄く形成され、リングの他端を密閉する非磁性部分とともに、全体を密閉した構成を有しており、上記密閉されたカバーの内側部を、工具類を介して部品類に磁気吸着する磁気保持部としたことを特徴とする工具用磁気保持装置。
  2. 部品類を希土類磁石を用いて磁気保持するための工具用磁気保持装置であって、希土類磁石としてネオジウムマグネットを用い、ネオジウムマグネットは部品類を受け入れ可能なリング状を呈するとともに、リング状の内側を、磁気吸着する部品類を配置するための空間部分とし、上記ネオジウムマグネットが微粉、微塊あるいは錆び粉を生じたときにそれらを外部に漏出させないようにその表面をカバーによって密閉し、上記カバーは、リングの内側に位置する内側部と、リングの外側に位置する外側部と、リングの中心軸と平行な方向の一端に位置する一端部と、その中心軸と平行な方向かつ上記一端部と反対方向である他端に位置する他端部とを有し、その他端部においては磁気保持部としての鉄ヨークを配置し、ネオジウムマグネットは、一端と他端において両極分極とし、ねじ類の六角頭部の高さが異なるものやナットの締め付けの進行に従ってボルト部が突出することに対応するため、鉄ヨークを工具本体の先端部側に配置して、工具本体に対して前後移動可能に組み合わせるとともに、作業後、ネオジウムマグネットを定位置に戻すためのばね部材を設けたことを特徴とする工具用磁気保持装置。
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