JP4197617B2 - 炉心制御棒反応度効果評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子炉制御棒の反応度効果の評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
原子炉では、熱の発生源である核分裂の増減をコントロールするために、核分裂に寄与する中性子を吸収する物質から構成されている制御棒を用いる。従って、炉心内に制御棒を挿入すると、中性子が吸収されて核分裂が減少し、原子炉の熱出力が低下することとなり、逆に炉心内から制御棒を引く抜くと、中性子の吸収が少なくなるため核分裂が増加し、原子炉の熱出力が増加することとなる。
【0003】
このような制御棒の炉心内への挿入及び引き抜きによって原子炉に与えられる影響は一般に反応度の添加と呼ばれている。制御棒の引き抜きによる原子炉の熱出力増加は、正の反応度添加と称され、制御棒の挿入による原子炉の熱出力減少は、負の反応度添加と称されている。
【0004】
反応度の添加量(ρ)は、制御棒を移動させる前の炉心の実効増倍率K0 effと制御棒を移動させた後の炉心の実効増倍率K1 effとから、反応度添加量(ρ)=(K1 eff−K0 eff)/K1 eff・K0 effの式から計算することができる。
【0005】
制御棒は、車におけるアクセルとブレーキの役割を果たしているため、挿入もしくは引き抜きによる反応度添加量を正確に予測することは極めて重要である。そこで、原子炉の炉心設計においては、複数組ある制御棒の反応度添加量を予測している。
【0006】
従来から、制御棒の反応度添加量は、原子炉の炉心の核的な振る舞いをシミュレートする計算プログラムによって計算されている。原子炉の炉心は三次元形状であることから、核的な振る舞いのシミュレーションも実際の炉心を模擬して三次元で行われるのが一般的である。
【0007】
炉心核特性シミュレーションを行うプログラムでは、炉心はメッシュと呼ばれる小領域に分割されて核的挙動が評価されるが、制御棒の反応度効果もこのメッシュ分割されたプログラムで評価される。具体的には、各メッシュに、中性子の反応のしやすさを表すパラメータである巨視的断面積を割り当てて計算を行い、制御棒の反応度添加量が求められる。
【0008】
計算方法によってメッシュの大きさは様々であるが、例えば加圧水型軽水炉の場合、半径方向には1〜10cm程度、軸方向には10〜20cm程度の幅で分割が行われている。各メッシュでは、温度、積算熱出力、燃料タイプ、制御棒挿入の有無などが異なるため、各メッシュ毎にそれぞれ対応する巨視的断面積が割り当てられる。
【0009】
しかしながら、炉心の上部又は下部から炉心に挿入される制御棒は、全引き抜き位置から全挿入位置までの間を連続的に移動するため、場合によっては制御棒の先端位置が軸方向のメッシュ境界に一致せず、一つのメッシュ内部、即ち当該メッシュの上下軸方向の途中に位置してしまうことがある。炉心の核特性シミュレーションプログラムでは、一つのメッシュに対しては1セットの巨視的断面積しか割り当てないため、このような1メッシュ内部に制御棒先端が位置するような場合はそのまま取り扱うことができない。
【0010】
即ち、制御棒が部分的に挿入されたメッシュの場合、制御棒が挿入されている領域と挿入されてない領域とに対応する2セットの巨視的断面積が必要となるのに対して、炉心核特性シミュレーションプログラムでは、1セットの巨視的断面積しか使えないため、特別な取り扱いが必要となる。この問題を解決するために大きく分けて二種類の方法が提案されている。
【0011】
第1の方法は、制御棒先端部で新たにメッシュ分割を行い、制御棒が部分的に挿入されたメッシュを、制御棒が完全に挿入された領域のみからなるメッシュと、制御棒が完全に非挿入である領域からなるメッシュとに分割する方法である。しかし、この方法では、プログラムの構造が複雑になり、反応度添加量の計算に手間がかかるため、結果としてプログラムの拡張・保守などの面で負担となるなどの問題が生じる可能性がある。
【0012】
第2の方法は、制御棒が部分的に挿入されたメッシュ内の巨視的断面積を何らかの方法で平均化するものである。平均化を行うことでメッシュの分割を避けることができるため、プログラムの構造を簡素化することが可能となる。平均化の方法としては、さらにいくつかの方法に分類されている。
【0013】
例えば、制御棒が部分的に挿入されたメッシュの巨視的断面積を、以下の(2)式に示すように制御棒の挿入量を重みとして平均化する方法がある。
【0014】
Σave =(ΣRod−inVRod−in+ΣRod−outVRod−out)/(VRod−in+VRod−out ) ・・・(2)式
ここでは、Σave :メッシュ平均巨視的断面積、ΣRod−in:制御棒挿入部巨視的断面積、ΣRod−out :制御棒非挿入部巨視的断面積、VRod−in:制御棒挿入部体積、VRod−out :制御棒非挿入部体積、である。
【0015】
しかしこの方法では、メッシュに部分的に挿入された制御棒の反応度効果を過大評価し、精度良く計算できないことが知られている。そこで、以下の(3)式に示すように、制御棒が部分的に挿入されたメッシュを、制御棒の挿入量および中性子束を重みとして平均化する方法がある。
【0016】
Σave =(ΣRod−inVRod−inφRod−in+ΣRod−outVRod−outφRod−out )/(VRod−inφRod−in+VRod−outφRod−out) ・・・(3)式
ここでは、Σave :メッシュ平均巨視的断面積、ΣRod−in:制御棒挿入部巨視的断面積、ΣRod−out :制御棒非挿入部巨視的断面積、VRod−in:制御棒挿入部体積、VRod−out :制御棒非挿入部体積、φRod−in:制御棒挿入部中性子束、φRod−out:制御棒非挿入部中性子束、である。
【0017】
後者の平均化法を用いることで、部分的に挿入された制御棒の効果を精度良く評価可能になることが知られている。そこでこの方法が炉心の核特性シミュレーションで広く用いられている。ただし、この平均化法を用いる場合、制御棒挿入部と非挿入部の中性子束を求める必要がある。
【0018】
一方、多くの原子炉では、直径1cm程度の燃料棒を多数束ねた集合体を単位として燃料交換を行っており、この燃料集合体の径方向の幅寸法は、例えば沸騰水型軽水炉用燃料集合体で約10cm、加圧水型軽水炉用燃料集合体で約20cmである。
【0019】
これに対して、広く使われている炉心の核特性シミュレーションプログラムでは、径方向のメッシュ分割幅が計算時間の観点から10cm程度となっている(例えば、非特許文献1参照)。このようにメッシュの径方向分割幅を10cm程度とすると、当然ながら個々の燃料棒をそれぞれ1メッシュ毎に割り当てて直接扱うことができず、燃料集合体の中を平均化して取り扱う必要が生じる。沸騰水型軽水炉では、一つの燃料集合体を径方向1メッシュに、加圧水型軽水炉では一つの燃料集合体を径方向2×2の4メッシュに分割することが通常行われている。
【0020】
なお、前記炉心の核特性シミュレーションプログラムでは、制御棒挿入部と非挿入部の各中性子束分布を求める際、制御棒が部分的に挿入されたメッシュに注目する。即ち、図1に示すように、当該メッシュを取り出し、制御棒が挿入された部分と挿入されていない部分との軸方向二領域に分けた上で、各メッシュ領域内の中性子束を独立した一次元問題として求め、得られた中性子束を前記(3)式に利用している。
【0021】
しかし近年、より精度良く炉心の核特性をシミュレーションするため、1メッシュの径方向幅寸法を1cm程度とし、従来のように燃料集合体内の燃料棒を平均化せず、個々の燃料棒を直接取り扱うことが試みられている(例えば、非特許文献2参照)。このような試みは、特に加圧水型軽水炉において盛んに行われている。
【0022】
【非特許文献1】
K.S.Smith,"Assembly Homogenization Technique for Light Water Reactor Analysis," Progress Nuclear Energy,17,303(1980).
【非特許文献2】
M.Tatsumi,A.Yamamoto,"Object-Oriented Three-Dimensional Fine-Mesh Transport Calculation on Parallel/Distributed Environments for Advanced Reactor Core Analysis," Nuclear Science and Engineering,141,190(2002).
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記のように1メッシュの径方向幅寸法を10cm程度として取り扱っている従来のプログラムにおいて、制御棒部分挿入メッシュを制御棒挿入部と非挿入部との二領域に分けて一次元問題として取り扱うことで精度良い評価が可能であったのは、1メッシュの径方向幅寸法が比較的大きく、集合体内部が平均化されたためであり、このような方法は、個々の燃料棒を直接扱う場合には直接適用できない。
【0024】
これは、個々の燃料棒を直接取り扱う場合、1メッシュの径方向幅寸法が1cm程度、軸方向の長さ寸法が10〜20cmとなり、当該メッシュにつき横(幅)方向からの中性子の流入・流出の影響が大きくなることから、これまでと同様の軸方向一次元での取り扱いでは、精度良い解析は困難であるためであり、実際、1メッシュの幅寸法を約1cmとする設定で中性子の流入・流出を考慮しない一次元計算では、(3)式で用いる重みの中性子束を正確に評価できないことが確認されている。
【0025】
横方向からの中性子の流入・流出を精度良く評価するためには、図2に示すように隣接燃料を考慮した三次元体系で中性子束の分布を計算する必要が生じる。即ち、従来のプログラムを用いた方法では、軸方向一次元計算で精度良い評価が行えたのに比べて、1メッシュの径方向の幅を1cm程度にして個々の燃料棒が割り当てられる設定にした場合には三次元計算が必要となるため、計算時間が多大になるだけでなく、そのためのプログラムが必要となり、作業が煩雑になる。
【0026】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、制御棒が部分的に挿入されたメッシュが存在する三次元炉心の核特性シミュレーションプログラムにおいて、従来より制御棒の反応度効果を精度良く評価することのできる方法を提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る炉心制御棒反応度効果評価方法は、炉心の三次元分割メッシュに基づく炉心核特性シミュレーションプログラムを用い、各燃料棒をメッシュに割り当てると共に、制御棒部分挿入メッシュに対する巨視的中性子断面積を当該メッシュの制御棒挿入量及び中性子束による重み付けで平均化して三次元炉心における制御棒の反応度効果を評価する方法において、前記平均化のための重み付け係数として、燃料集合体を対象とする集合体核特性評価プログラムで求められた燃料棒及び非燃料棒における中性子エネルギースペクトルを用いて制御棒案内管セルにおける制御棒挿入時と制御棒非挿入時のそれぞれについて求めた第1群の中性子エネルギースペクトルφ1 と第2群以下の中性子エネルギースペクトルφg との比φg/φ1を用いるものである。
【0028】
また、請求項2に記載の発明に係る炉心制御棒反応度効果評価方法は、請求項1に記載の炉心制御棒反応度効果評価方法において、前記制御棒部分挿入メッシュに対する巨視的中性子断面積の平均化を数1に基づいて演算するものである。
【数1】
Σave ={ΣRod−inVRod−in(φg Rod−in/φ1 Rod−in)+ΣRod−outVRod−out(φg Rod−out/φ1 Rod−out )}/{VRod−in(φg Rod−in/φ1 Rod−in)+VRod−out(φg Rod−out/φ1 Rod−out )}
ただし、Σave はメッシュ平均巨視的断面積、ΣRod−inは制御棒挿入部巨視的断面積、ΣRod−out は制御棒非挿入部巨視的断面積、VRod−inは制御棒挿入部体積、VRod−out は制御棒非挿入部体積、φg Rod−in は制御棒挿入時の制御棒案内管セルにおけるg群の中性子スペクトル、φ1 Rod−in は制御棒挿入時の制御棒案内管セルにおける1群の中性子スペクトル、φg Rod−outは制御棒非挿入時の制御棒案内管セルにおけるg群の中性子スペクトル、φ1 Rod−outは制御棒非挿入時の制御棒案内管セルにおける1群の中性子スペクトル、である。
【0029】
また請求項3に記載の発明に係る炉心制御反応度効果評価方法は、請求項1に記載の炉心制御棒反応度効果評価方法において、前記三次元分割メッシュの単位メッシュ幅寸法をほぼ燃料棒1本分の径寸法に設定するものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明は、炉心の三次元分割メッシュに基づく核特性シミュレーションプログラムを用いて核的挙動を評価する際に、各メッシュに対応する巨視的断面積を割り当てて制御棒の反応度添加量を計算し、制御棒反応度効果を評価するものであり、径方向(炉心軸方向と直交する方向)に関して各燃料棒をメッシュに割り当てて個々の燃料棒を直接取り扱う設定においても、制御棒反応度効果を精度良く評価するためのものである。
【0031】
即ち、個々の燃料棒を扱う設定での核特性シミュレーションプログラムにおいては、制御棒部分挿入メッシュに対する巨視的断面積として当該メッシュの制御棒挿入量及び中性子束による重み付けで平均化したものを用いる際に、従来はこの平均化巨視的中性子断面積を精度良く求めるのが困難であったのに対して、炉心の核的挙動を計算するプログラムでは燃料集合体を対象とする集合体核特性評価プログラムにより計算された巨視的断面積が使用されており、この集合体核特性評価プログラムでは全ての燃料棒および非燃料棒における中性子のエネルギー分布(中性子のエネルギースペクトル)を求めていることに着目し、本発明においては、この中性子エネルギースペクトルを前記重み係数に利用することによって、制御棒部分挿入メッシュの巨視的断面積の平均化を精度良く行うことができることを見出し、従って制御棒反応度添加効果の評価を精度良く行うことを可能とするものである。
【0032】
一般に、炉心の核的挙動を計算するプログラムでは、中性子のエネルギー群は2群ないしそれより多い群数で計算され、1群目は高速群となっている。高速群では中性子の飛行距離が長いため、メッシュ内で中性子束の分布が平坦であると仮定できる場合が多い。そこで、制御棒が部分的に挿入されたメッシュにおいても、第1群の中性子束は平坦である、即ちメッシュ内で分布がないと仮定する。さらに、制御棒が挿入された部分と挿入されていない部分とのそれぞれにおいて、中性子エネルギースペクトルが集合体核特性評価プログラムで求められたものと大きく異なっていないと仮定する。
【0033】
これら二つの仮定をおくと、前記(3)式で重みに用いている中性子束φRod−in、及びφRod−out は、それぞれ集合体核特性評価プログラムの計算結果から求められるφg Rod−in/φ1 Rod−in・・・(4)式、及びφg Rod−out/φ1 Rod−out・・・(5)式、の重み係数で精度良く置き換え(数1を得る)ることができる。
【0034】
ここで、φg Rod−in は制御棒挿入時の制御棒案内管セルにおけるg群(2群以下)の中性子スペクトル、φ1 Rod−in は制御棒挿入時の制御棒案内管セルにおける1群の中性子スペクトル、また、φg Rod−outは制御棒未挿入時の制御棒案内管セルにおけるg群の中性子スペクトル、φ1 Rod−outは制御棒未挿入時の制御棒案内管セルにおける1群の中性子スペクトル、である。
【0035】
以上の(4)式および(5)式で求められる第1群の中性子エネルギースペクトルφ1と第2群以下(g群)の中性子エネルギースペクトルφgとの比φg/φ1を重み係数に用いると、第1群に対する巨視的断面積は体積平均となり、2群以下(g群)は、制御棒の有無による中性子束のエネルギースペクトルの変化を考慮したものとなる。(4)式、(5)式は、核特性評価で用いるスペクトルインデックスの逆数となっているため、このスペクトルインデックス逆数を制御棒部分挿入メッシュ内の巨視的断面積の平均化における重み付け係数として用いる方法を逆スペクトルインデックス重み法と呼ぶことができる。
【0036】
このような逆スペクトルインデックス重み法を用いれば、径方向に関して各燃料棒を1メッシュ毎に割り当てて個々の燃料棒を直接扱う設定での炉心核特性シミュレーションプログラムにおいて、(3)式で表した制御棒部分挿入メッシュの巨視的断面積の平均化の重み係数としての中性子束を求めるために多大な計算時間が掛かる三次元計算をおこなう必要なく、精度良く制御棒の反応度効果の評価を行うことができる。
【0037】
なお、個々の燃料棒を直接取り扱うための炉心の三次元メッシュ分割は、分割メッシュの単位メッシュ幅寸法をほぼ燃料棒1本分の径寸法に設定すれば良い。
【0038】
一方、上記の本発明における逆スペクトルインデックス重み法は、径方向に関して1燃料棒を1メッシュ毎に割り当て個々の燃料棒を直接取り扱う炉心核特性シミュレーションプログラムによる評価の場合に限らず、軸方向に異なる組成の燃料が存在する軸方向非均質燃料に対しても適用可能である。即ち、組成の境界がメッシュ境界に一致していなくても制御棒の場合と同様の考え方で本方法を適用できる。
【0039】
従って、従来の径方向に関して1燃料集合体を1メッシュに割り当てるプログラムにおいても、この逆スペクトルインデックス重み法を用いれば、制御棒部分挿入メッシュを挿入部と非挿入部との二領域に分けてそれぞれ行っていた一次元計算までも必要なく、メッシュ平均巨視的断面積を簡便に精度良く求めることができ、制御棒の反応度効果を精度良く評価することが可能となる。
【0040】
【実施例】
本発明の一実施例として、燃料集合体3行3列の小型炉心を想定し、制御棒の反応度添加量の計算を行った場合を以下に説明する。本実施例においては、使用燃料は、加圧水型軽水炉で用いられている17×17型のものであり、濃縮度が2wt%のものを想定した。
【0041】
また制御棒は中央の集合体に炉心上部から挿入されるものとした。1燃料集合体のサイズは径方向が約20cm、軸方向が約360cmである。メッシュ分割は、径方向に関して単位メッシュ幅寸法をほぼ燃料棒単位に一致(約1cm)させ、軸方向に関しては等分割の20メッシュ(1メッシュ約18cm)とした。
【0042】
以上の炉心設計において、制御棒の挿入は、その先端が炉心上部から6メッシュ目内に位置するものとし、この制御棒が部分挿入された第6メッシュについて前記数1の式を用いて巨視的断面積の平均化処理を行った上で反応度添加量を求めた。
【0043】
ここで、本実施例の比較対照として、同じ第6メッシュに関して、従来の体積重み法による前記(2)式を用いて巨視的断面積の平均化処理を行った上で反応度添加量も求め、それぞれの結果を図3に示した。なお、リファレンスとして、当該メッシュを制御棒の先端部位置で制御棒挿入領域と非挿入領域とに分け(このとき軸方向メッシュ数は21個となる)て計算を行った結果に基づいても反応度添加量を求め、これも同様に図3に示した。この場合、対象メッシュ内における制御棒の平均化を行っておらず、最も正確な解が与えられる。
【0044】
本実施例における、メッシュ平均巨視的断面積の解、およびこれを割り当てて反応度添加量を得るまでの演算は、図4のフローチャートに示す手順の通りである。
【0045】
図3に示す結果から明らかなように、図中白四角(□)で表した本実施例における逆スペクトルインデックス重み法による巨視的断面積の平均化に基づく制御棒の反応度添加量の解(図中縦軸に反応度効果Δk/kとして示す)は、図中黒三角(▲)で表したリファレンス解とほぼ一致しており、本発明の方法によれば、制御棒の反応度効果評価は、多大な計算時間を必要とせず、簡便でありながらも高精度なものであることが確認できた。
【0046】
なお、炉心の核特性プログラムでは、メッシュ内の中性子束分布を多項式などの関数で展開することがよく行われる。以上の実施例においては、第1群の中性子エネルギースペクトルと第2群以下の中性子エネルギースペクトルとの比を、(4)式及び(5)式において第1群の中性子束を平坦であると仮定して導出したが、中性子束分布を多項式などの関数で展開している場合、制御棒挿入領域と非挿入領域とで展開関数を積分することで制御棒部分挿入メッシュ内の制御棒挿入領域と非挿入領域における第1群の中性子束の変化割合を計算して重み係数に反映することも可能である。
【0047】
また、注目するメッシュと軸方向の上下に隣接するメッシュの平均中性子束を多項式の関数でフィッティングし、得られた多項式を用いて前記メッシュ内の制御棒挿入領域と非挿入領域における第1群の中性子束の変化割合を計算して重み係数に反映することもできる。さらに、J.C.Gehin,"A Quasi Static Polynomial Nodal Method for Nuclesr Reactor Analysis," Ph.D.Thesis,MIT,USA,PP.59-60,(1992). に示す方法で制御棒挿入領域と非挿入領域における第1群の中性子束の変化割合を計算し、重み係数に反映することもできる。
【0048】
さらに、注目するメッシュの平均中性子束と、上下端における表面中性子束を多項式等の関数でフィッティングし、得られた多項式を用いて前記メッシュ内の制御棒挿入領域と非挿入領域における第1群の中性子束の変化割合を計算し、重み係数に反映することもできる。
【0049】
なお、本発明は、制御棒が部分的に挿入されたメッシュに関して考察したものであるが、本発明の考え方は、メッシュ内に制御棒の境界だけでなく、他の物質境界が存在する場合への応用も可能であると考えられる。例えば、沸騰水型軽水炉では燃料集合体の軸方向に燃料濃縮度や可燃性毒物濃度などの分布がつけられており、燃料濃縮度の境界がメッシュ境界と一致しないでメッシュ内部に位置する場合などにも、炉心の核特性評価プログラムにおいて、中性子エネルギースペクトル比を重み係数に用いることで、付加的な計算を行うことなく精度よく炉心特性の評価を行える可能性がある。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の方法によれば、制御棒が部分的に挿入されてたメッシュが存在する炉心の核特性評価プログラムにおいても、時間の掛かる付加的な計算を行うことなく、簡便に精度の良い制御棒の反応度効果を評価することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の三次元分割メッシュに基づく炉心核特性評価プログラムにおける制御棒部分挿入メッシュの取り扱いを説明する模式図である。
【図2】詳細なメッシュ分割に基づく炉心核特性評価プログラムにおける制御棒部分挿入メッシュの取り扱いを説明する模式図である。
【図3】本発明の一実施例による小型炉心における制御棒部分挿入メッシュの制御棒の反応度価値の計算結果を示すグラフ図であり、横軸の当該メッシュ下端からの距離に応じた反応度効果(Δk/k)を縦軸に表したものである。
【図4】本実施例における制御棒の反応度価値を算出するための手順を示すフローチャート図である。
Claims (3)
- 炉心の三次元分割メッシュに基づく炉心核特性シミュレーションプログラムを用い、各燃料棒をメッシュに割り当てると共に、制御棒部分挿入メッシュに対する巨視的中性子断面積を当該メッシュの制御棒挿入量及び中性子束による重み付けで平均化して三次元炉心における制御棒の反応度効果を評価する方法において、
前記平均化のための重み付け係数として、燃料集合体を対象とする集合体核特性評価プログラムで求められた燃料棒及び非燃料棒における中性子エネルギースペクトルを用いて制御棒案内管セルにおける制御棒挿入時と制御棒非挿入時のそれぞれについて求めた第1群の中性子エネルギースペクトルφ1 と第2群以下の中性子エネルギースペクトルφg との比φg/φ1を用いることを特徴とする炉心制御棒反応度効果評価方法。 - 前記制御棒部分挿入メッシュに対する巨視的中性子断面積の平均化を以下の数1に基づいて演算することを特徴とする請求項1に記載の炉心制御棒反応度効果評価方法。
- 前記三次元分割メッシュの単位メッシュ幅寸法をほぼ燃料棒1本分の径寸法に設定することを特徴とする請求項1に記載の炉心制御棒反応度効果評価方法。
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