JP4171972B2 - 金属製品の評価方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料の成形体に加わる歪や変形による素材の劣化状態を直接的に、または間接的に読み取る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に使われている劣化診断方法としては外観検査を中心に行われており、超音波による反射特性解析や磁場分布測定により金属疲労を測定することも行われている。
【0003】
このような劣化診断では外観検査であると酸化状態の確認は可能であるが、金属の内部疲労については分からないために、過去に重大な事故が起きる要因となっていた。そこで、金属内部疲労を確認するために、超音波による反射特性を調べる方法が検討されてきたが、この方法では金属内部で極端な変化が生じないと判別しにくいという問題があった。例えば密度が広範囲で変化する場合や、組成変化はあっても密度的な変化が微小量の場合には超音波の反射特性が大きく変わらないために、これらの劣化には対応できなかった。更に形状が複雑なものであると超音波の反射特性を用いて評価できないという問題もあった。
【0004】
また、磁気的に測定する方法として、一般的な鋼材は主成分がFeであり,これに含まれるNi,Cr,C,Mn等があり、鋼材に加わる歪や変形等により組成が変化したり、マルテンサイト変態に伴う磁性の変化が生じるために、その際に発生する磁場を測定する方法がデンソーテクニカルレビューVol.6No2(2001)や塑性と加工 第42巻 第488号(2001.9)、サイクル機構技報 No.14(2002.3)に報告されている。また出願番号 特願平5−101095に示されている。この方法では主成分がFe等の磁性金属に限られた鋼材であり、例えばAl,Mg,Zn,Ti,W,等の非磁性金属には対応できなかった。また、一般の鋼材では歪や変形を受けたときに、鋼材組成を意図的に変化させて磁性が出る工夫は取られていないために、Fe系の金属鋼材でも歪や変形による組成偏析で出る磁気的な変化量は小さい。
【0005】
Fe系の鋼材で通常使用される代表的なものとして、マルテンサイト系鋼材、フェライト系鋼材、オーステナイト系鋼材があり、それぞれCr,Ni,Cの含有量が異なり、耐食性、耐酸化性、加工性、硬度、強度等により鋼材に含ませるCr,Ni,Cの各量を変えている。例えばSUS430の場合にはCrを18%程度入れ耐食性を改善したものである。SUS301の場合にはCrを17%程度入れNiを7%程度入れ、冷間加工により高強度を得たものである。これらのような素材では意図的に鋼材の組成変化をさせられない場合があり、応力歪や加工時の歪の調査のための磁性変化を調べにくい問題もあった。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の考え方では所定の組成で決められた金属の疲労劣化を磁気的な変化で調べる方法であったが、これらの方法では非磁性金属では困難であることや、また磁性があるものでも、意図的に磁気変化を大きくするような磁性元素を添加することがないために磁気的な変化が小さく、より効果的な方法が求められていた。
【0007】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、従って、簡単に金属材料の劣化状態を判断でき、金属部品のセキュリティレベルを高めることを目的にしたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
金属に加えられた力や金属に加えられた変形による劣化を示させるために、金属に磁性金属元素Fe,Co,Ni,Mn,Crの金属元素、または,La,Sm,Ndのランタノイド系金属元素等を添加し応力や変形に伴って磁性金属元素の組成偏析、または組成変動による磁気的な変化を生じさせて、その磁気的な変化より加えられた力や変形を評価することが本発明のひとつの方法である。この場合、組成偏析が生じやすくするために、なるべく基本の結晶相を構成する原子に比較して材料中の原子半径が違うことが望ましい。格子間に入る侵入型の原子として入る場合と、格子の位置に入る場合もあるが、金属結合する際の結合半径が違う方が応力により変化を生じやすく、望ましくは10%近い大きさの違いが望ましい。
【0009】
金属に加えられた力や金属に加えられた変形による劣化を示させるために磁性金属元素を添加して金属に力や変形を加えられた部分が結晶転移や変態を生じる際に磁気的な変化も付随させることにより加えられた力や変形を評価する方法では、例えばマルテンサイトとオーステナイト間の変態では、主にCr,Si,Mo,Ti,Al等を添加することによりオーステナイトからマルテンサイトへの変態しやすさが変わるので、意図的にこれらの元素を導入して、これらの変態を大きくし、これらの変態に伴う磁性変化を大きくすることにより応力歪等を測定する。この際に母体金属の熱伝導性や金属強度、酸化性等の特性が添加金属量により変化するので、これらの特性を踏まえながら添加することが望ましい。
【0010】
また、金属製品の母体金属に組成偏析変化や変態促進のために、意図的に磁性元素や非磁性元素を入れることができない場合には、母体金属組成に近いものに、もしくは同一の組成鋼材に意図的に組成偏析変化や変態促進のために意図的に磁性元素や非磁性元素を入れて鋼材を作製し、これを歪等による劣化状態のモニターとして金属製品に装着することができる。もしくはこの鋼材で、金属製品と同じ形状のものを試作して、この試作品を用いて金属製品と同様な試験環境下に置き、磁気的な性質を評価することにより劣化や加わる歪状態を解析するものである。具体的にはSUS304で製造されたギアに加わるストレスによる金属素材の劣化をモニターするために、SUS304に意図的にMo 5atm%を添加して、オーステナイト相からマルテンサイト相を誘起しやすくし、この鋼材を用いて同じギアを製造してストレスを磁気的に評価するものである。
【0011】
同様に磁性金属母材に非磁性金属元素を意図的に添加して、この金属母材の応力ストレスによる組成偏析や結晶変態、転移を意図的に誘起しやすくなるようにし、この磁性金属母材を用いて作製された製品に加わる力や衝撃等によるストレス等を磁気的な変化から推定することができる。例えば非磁性金属元素として、アルカリ金属、アルカリ土類金属やS,B,P、更にはTi,W,In,Te等の非磁性金属元素等がある。この際、磁性金属母材に添加する元素としては組成偏析が生じやすくするために、磁性金属母材に比較して、金属結合半径として少なくとも10%以上異なることが望ましい。
【0012】
磁気的な評価方法としては、ホールプローブによる磁場分布測定や、MFM(Magnetic Force Microscope)を用いた局所的な磁場分布測定、フラックスゲート型磁束密度測定器による数cm面積の平均的な強度、VSM(Vibrating Sample Magnetometer)を用いた磁化測定、製品に一時側のコイルを巻き、更に製品の別の箇所にピックアップ用の二次側コイルを巻いて一次コイルで誘導される磁束をピックアップコイルで計測する方法等がある。これらの方法の選択は評価する製品、またはサンプル形状により変わり、また目的に応じても変える必要がある。特に局所的な組成偏析の分布による磁性変化はMFMが妥当であり、丸棒や板等の大きなものの歪による変化の場合にはマクロ的な評価になるが、コイルを用いて磁束変化を評価する方法が妥当である。
【0013】
放射性元素による放射線強度から歪の変化を調べる方法では、母体金属に加えられた力や母体金属に加えられた変形による劣化を示させるために、金属に放射線元素を添加し応力変形に伴って放射性元素の組成偏析、または組成変動による放射線の強度変化を生じさせて、その放射線の強度変化より加えられた力や変形を評価する。この時の放射線元素としてはα、β、γ線のいずれでもよいが、特に人体への影響を考えた場合にはβ線元のトリチウム、プロメチウム147等が妥当である。また、この場合には放射線の強度の代わりに同位体元素の量を測定することでも同様な効果がある。
【0014】
放射線強度を測定する方法として、母体金属に放射線元素を添加し応力変形に伴って放射性元素の組成偏析、または組成変動による放射線の強度変化を生じさせた時にその放射線の強度変化を放射線で発光する材料を金属表面に塗布したものにより視覚化させ、その発光強度より加えられた力や変形を評価する。この場合には放射線で発光する蛍光体として、CaF2:Eu,BaF,CaWO4,ZnS,NaI,アントラセン、トランススチルベン等がある。
【0015】
放射性元素や磁性元素を金属に添加して金属の放射線の分布強度変化や磁束分布強度変化を生じる金属を劣化モニター用の試験品として用いることにより、金属製品の母体金属にはこれらの添加金属を加えずに金属製品の被検体に設置し被検体に加わる力による歪を、この試験品で間接的に評価する。この際、金属製品の被検体が加わる力と同じ力が加わるように劣化モニター用試験品を設置する。この結果、金属製品には金属疲労をモニターするための、放射性元素や磁性元素の添加をしないですむために金属製品の母体金属の組成や結晶相を変える必要がない。
【0016】
金属製品に放射性元素を添加しストレスを加えた後、放射線強度分布の測定を行うことによりストレスを評価する方法や金属製品に磁性元素を添加してストレスを加えた後、磁性変化や漏れ磁場の強度分布の測定を行うことによりストレスを評価する方法を用いて、金属化合物やセラミックスと金属の焼結体からなる製品にも歪や劣化評価を目的に同様に使用することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
【実施例1】
本発明による金属の劣化状態の確認方法について具体的に説明する。純度99%のAl金属を用いて、長さ10cm幅2cm厚み1mmの試験片を作製し、これを中心部で30度に繰り替えし折りまげると、曲がった部分にひびが発生し亀裂が発生して破断した。この時、ホールプローブによる磁気測定では劣化した中心部に磁気的な変化は見られなかった。そこで、本発明の磁性元素として、Al金属にCo元素を10%添加して、同様に繰り返しの曲げ試験を行った結果、以下の表1の結果が得られた。表では100回の折り曲げ試験で発生した磁場(gauss)の最大強度値を用いて規格化した数値を示す。このため、数値は単位がないものである。同様にCo以外にFe,Niやランタン系元素のNd,Smを添加しても同様な効果が得られて、磁性による劣化診断ができた。
Figure 0004171972
【0018】
【実施例2】
劣化診断用の磁性変化材としてAl金属にCo元素を10atm%添加したものを厚さ0.5mm長さ2cm幅1cmの金属板に成型作製し、これをAl金属で作製した長さ10cm幅2cm厚み1mmにボンドで接着固定させて取り付け、実施例1と同様な試験を行った結果、Al金属で作製した長さ10cm幅2cm厚み1mmの試験片の亀裂劣化に至るまでの劣化を、劣化診断用の磁性変化材で、実施例1の表の結果に基づいて磁性変化から間接的に調べることができた。
【0019】
【実施例3】
SUS304系の材に誘起されるマルテンサイト層を増やすために、Moを0.5から10atm%添加し、非磁性層のオーステナイト中にマルテンサイト層を増やした材料を作製し、この合金を用いて長さ10cm幅2cm厚み1mmの試験片を作製した。作製した金属試験片を中心部で30度に繰り替えし折りまげると、曲がった部分にひびが発生した。このひびが発生するまで、ホールプローブによる磁気測定では劣化した中心部は磁気的な変化が大きく見られた。繰り返しの曲げ回数を100回に固定してMo量を変えたサンプルでの発生磁場の最大強度を測定した時のMo量と最大磁場強度の関係を表2に示した。最大磁場強度はサンプルNo4のものを用いて規格化した数値にした。
Figure 0004171972
Figure 0004171972
【0020】
【実施例4】
純度99%のNi磁性金属を用いて、長さ10cm幅2cm厚み1mmの試験片を作製し、これを中心部で30度に繰り替えし折りまげると、曲がった部分にひびが発生し亀裂が発生して破断した。この時、MFMによる磁気測定では劣化した中心部に大きな磁気的な変化は見られなかった。そこで、非磁性元素として、Al金属を添加して、同様に繰り返しの曲げ試験を行った結果、以下の表3の結果が得られた。表では100回の折り曲げ試験で発生した漏れ磁場(gauss)の最大強度値を用いて規格化した数値を示す。このため、数値は単位がないものである。同様にAl以外にSr,Mg,Ti,W,Moを添加しても同様な効果が得られて、磁性による劣化診断ができた。
Figure 0004171972
【0021】
Ni金属に添加する量を5atm%で固定し、金属の原子半径が異なるもので、磁気的な変化を起こす状態について比較した。この結果、以下の表4に示すようになり、少なくとも10%以上の違いがあった方が望ましい。表の数値は最高の強度のもので規格化した。表中の金属の原子半径は文献値を用いたもので、実際の合金中では結晶形態や組成により変化するために、これらの数値は添加する際に参考値として用いて試験を行ったものである。ここで、母体のNi金属の原子半径は1.25Åとなっている。
Figure 0004171972
【0022】
【実施例5】
放射性元素による金属の劣化状態の確認方法について説明する。Al金属やSUS材料にトリチウムやプロメチウム147等のβ線放射元素を添加し合金を作成し、それを適度な大きさに加工して試験片を作製する。これを繰り替えし折りまげて、曲がった部分の状態をβ線の放射分布を測定し劣化を観察するものである。劣化を観察する際にはβ線で励起発光する蛍光体の粉CaF2:Euをアクリル系接着剤に混ぜたものを折り曲げた部分に付着させると、発光蛍光強度から分布状態の視覚化ができる。また、このような放射性元素を入れた金属製品を作製し、実際に金属疲労の発生を評価することにより劣化のモニターが簡易にできる。このような方法により、金属の非磁性、磁性に関わらず、放射線強度の変化より金属劣化を観察することができる。また、α線やγ線を放射する放射性元素を用いて同様な効果がある。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、金属に加えられた力や金属に加えられた変形による劣化を示させるために意図的に磁性金属元素を添加して金属に力や変形を加えられた部分が結晶転移や変態、組成偏析等を生じさせて磁気的な変化を大きく生じさせることにより加えられた力や変形を磁気的に評価するので、簡易に金属疲労が検出できる。また、放射性元素を用いることにより金属疲労を生じたときに放射性元素の分布より蛍光強度が材料の表面で分布を持ち、この発光強度から金属疲労を視覚的に観察することができる。

Claims (2)

  1. 金属製品と同じ形状のものを試作して金属製品に加えられた力や金属製品に加えられた変形による劣化や歪みを評価するために金属製品を構成する金属材料に、Fe,Co,Mn,Ni,CrとLa,Nd,Smのいずれかの元素を0.5atm%以上添加し応力や変形に伴って金属元素の組成偏析、または組成変動による発生磁場の変化により金属製品に加えられた力や変形、歪みや劣化を評価することを特徴とする方法。
  2. 金属製品と同じ形状のものを試作して金属製品に加えられた変形による劣化や歪みを評価するために金属製品を構成する金属材料に、Fe,Co,Mn,Ni,CrとLa,Nd,Smのいずれかの元素を0.5atm%以上添加して金属製品に力や変形を加えた部分が結晶転移や変態を生じる際に発生磁場の変化を付随させることにより金属製品に加えられた力や変形、歪みや劣化を発生磁場の変化から評価することを特徴とする方法。
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