JP4133582B2 - ブラシ状交互共重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な交互共重合体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、親水性マクロモノマーと疎水性マクロモノマーからなる両親媒性交互共重合体であって、その構造上、界面への強固で安定な吸着膜を提供する機能を発揮することにより、乳化剤、分散剤、カプセル、被膜剤等への応用が可能なブラシ状構造をとり得る交互共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
乳化剤、分散剤、カプセル、皮膜剤等に利用されるポリマーとして、両親媒性ポリマーが挙げられる。両親媒性ポリマーの一般的な構造としては、ランダム共重合体とブロック共重合体が挙げられる。
【0003】
ランダム共重合体は、親水性モノマーと疎水性モノマーの配列が制御されておらず、ポリマー鎖の界面に対する吸着効率が悪い。
これに対して、ブロック共重合体は、親水性モノマーと疎水性モノマーが規則的に配列しており、ポリマー鎖の界面への吸着効果が優れている。しかしながら、各セグメントが大きな分子量を有しているために、ポリマー鎖が密に吸着することができず、満足する吸着能が得られていない。
【0004】
上記の観点から、末端ビニルベンジル型ポリスチレンと、末端メタクリル型ポリエチレンオキサイドとからなるブラシ状両親媒性交互共重合体が開発されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。これは、末端ビニルベンジル型ポリスチレン(PS−VBと略す)と末端メタクリロイル型ポリエチレンオキサイド(PEO−MCと略す)とを共重合体するにあたって種々の条件が検討された結果、この重合系にSnCl4を添加すると、PEO−MC/SnCl4からなる錯体が形成されて、PS−VBとの交互共重合体が得られることが見出されたものである。この交互共重合体においては、PS−VBがドナー、PEO−MC/SnCl4がアクセプターとなる1対1の電荷移動錯体が形成され、両者の1対1電荷移動錯体の単独重合が起こっていると予想される。PS−VBとPEO−MCとからなる両親媒性交互共重合体は、主鎖に対して、高密度かつ互いに相溶しない側鎖を有しており、高アスペクト比のブラシ状構造をとる。そして、界面で両親媒側鎖が互い違いに配向するために、吸着能に優れ、また、吸着密度も優れている。
【0005】
【非特許文献1】
K. Ishizu, X.X. Shen and K. Tsubaki, Polymer, 41, 2053(2000)
【非特許文献2】
K. Tsubaki, H. Kobayashi, J. Satoh and K. Ishizu, J. Colloid Interface Sci.,241,275(2001)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリスチレンとポリエチレンオキサイドをそれぞれ交互に側鎖に有する上記のブラシ状交互共重合体は、有機溶媒を分散媒とする乳化能や分散能に優れているものの、化粧品や医薬品等で汎用される油やシリコーン溶媒への応用が困難である。
【0007】
そこで、本発明者らは上述の観点に鑑み、化粧品や医薬品で汎用される油やシリコーン溶媒への乳化、分散に利用できるような新規なブラシ状交互共重合体を得るべく鋭意研究を重ねた結果、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとを交互に側鎖に有する両親媒ブラシ状交互共重合体の重合に成功して本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の目的は、化粧品や医薬品で汎用される油やシリコーン溶媒への乳化、分散に優れる構造を有する新規な両親媒ブラシ状交互共重合体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、末端ビニルベンジル型ポリエチレンオキサイドと、末端(メタ)アクリル型ポリプロピレンオキサイドと
又は
末端ビニルベンジル型ポリプロピレンオキサイドと、末端(メタ)アクリル型ポリエチレンオキサイドと
を交互共重合して得られることを特徴とする交互共重合体であって、下記繰り返し単位(1)を有し、前記交互共重合体の重量平均分子量が5000〜10000000であることを特徴とする交互共重合体を提供するものである。
【化2−1】
(1)
m、nは1〜100の数(好ましくは、m、nはともに20〜100の数)であり、Rは水素若しくは炭素原子数1〜13の直鎖若しくは分枝のアルキル基を表す。
【0010】
また、本発明は、上記の交互共重合体において、下記式(1)のm、nが20〜100の数であることを特徴とする交互共重合体を提供するものである。
【化2】
(1)
m、nは20〜100の数であり、Rは水素若しくは炭素原子数1〜13の直鎖若しくは分枝のアルキル基を表す。
【0012】
また、本発明は、末端(メタ)アクリル型ポリプロピレンオキサイド又は末端(メタ)アクリル型ポリエチレンオキサイドがルイス酸と電荷移動錯体を形成して、末端ビニルベンジル型ポリエチレンオキサイド又は末端ビニルベンジル型ポリプロピレンオキサイドと1対1のコンプレックスを形成して、開始剤の存在下に溶媒中にてラジカル重合することを特徴とする上記の交互共重合体の製造方法を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0014】
一般にブラシ状重合体とは、主鎖に対して高密度グラフト側鎖を有するポリマーが、両溶媒中で側鎖の排除体積効果により、主鎖が主軸方向に伸びきり状態になり、剛直なシリンダー状の構造を形成する重合体を意味する。
特に、モノマーにマクロモノマーを用いると、高密度でかつ、大きな排除体積効果が期待され、シリンダー状構造をとりやすい。また、重合体の分子量は、構造に関係があり、重合度が小さい場合には、シリンダー状とはならず、球状もしくはラグビーボール状といった楕円体になるために、ブラシ状になるためには、大きな重合度が必要である。
【0015】
本発明の交互共重合体は、スチレンとMMAから由来する構造の交互共重合体を基本骨格とする主鎖に対して、交互に(主鎖の炭素の一つおきに)、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの側鎖を有する両親媒性交互共重合体である。したがって、極めて高密度に親水性と疎水性のグラフト側鎖が存在するため、ブラシ状共重合体と言え、剛直なシリンダー状の構造(ロッド)を形成しやすい。また、重量平均分子量は5000〜10000000の交互共重合体が容易に重合され、重合度の観点からもブラシ状構造を形成しやすい。
【0016】
本発明において、末端ビニルベンジル型(ポリプロピレン)ポリエチレンオキサイド(PEO−VBと略す)とは、下記の式(2)を基本構造とするビニルベンジル型ビニルモノマーである。末端ビニルベンジル型(ポリプロピレン)ポリエチレンオキサイドとは、末端ビニルベンジル型ポリエチレンオキサイドまたは末端ビニルベンジル型ポリプロピレンオキサイドのいずれかを意味するものとする。
本発明の交互共重合体が重合される限り、式(2)の炭素には任意の置換基が置換していてもかまわない。
【化3】
(2)
Xは重合度及び末端構造が任意のポリエチレン(またはポリプロピレン)オキサイドからなる側鎖である。例えば、重合度1〜100で、OH、アルキルエーテルの末端のポリエチレン(またはポリプロピレン)オキサイドからなる。
好ましくは、PEO−VBは重合度が20〜100のマクロマーである。
好ましいXは下記である。
【化4】
mまたはnは20〜100であり、Rは水素若しくは炭素原子数1〜13の直鎖若しくは分枝のアルキル基を表す。
【0017】
PEO−VBは、市販の任意の分子量を有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテルまたはポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルを、トルエン中でNaHによりアルコキシ化した後、市販のp−クロロメチルスチレンと常法により反応させて得られる。具体的には、市販の任意の分子量を有するポリエチレン(またはポリプロピレン)グリコールモノメチルエーテルをベンゼンで凍結乾燥後、窒素雰囲気下で脱水トルエン溶媒を加え、2倍量のナトリウムハイドライドを加えアルコキシ化した後、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル/トルエン溶液とし、2倍量のp−クロロメチルスチレンを加え、反応を行う。生成したナトリウム塩をろ過で除き、溶液をエバポレーションして濃縮し、濃縮液をヘキサン中に滴下して、沈殿させ、ろ過する。沈殿物をアセトンに再溶解させ、残存する塩をろ過で除去し、ろ液をエバポレーションにより濃縮し、ヘキサン中に滴下して沈殿させ、精製する。なお、市販のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル末端は、メチル、ラウリル、オレイル、ミリスチル等がある。任意の分子量及び任意のアルキル末端を有するポリエチレン(またはポリプロピレン)グリコールモノアルキルエーテルを常法により製造して、任意のPEO−VBが得られる。
【0018】
本発明において、末端(メタ)アクリル型ポリプロピレンオキサイド(PPO−MCと略す)とは、下記の式(3)を基本構造とする(メタ)アクリル型ビニルモノマーである。
本発明において、末端(メタ)アクリル型(ポリエチレン)ポリプロピレンオキサイド(PPO−MCと略す)とは、末端(メタ)アクリル型ポリプロピレンオキサイドまたは末端(メタ)アクリル型ポリエチレンオキサイドを意味する。ただし、前記PEO−VBが末端ビニルベンジル型ポリエチレンオキサイドの場合には末端(メタ)アクリル型ポリプロピレンオキサイドを意味し、また、前記PEO−VBが末端ビニルベンジル型ポリプロピレンオキサイドの場合には、末端(メタ)アクリル型ポリエチレンオキサイドを意味するものとする。
また、(メタ)アクリル型とはメタクリル型またはアクリル型を意味し、アクリル型の場合は式(3)中のメチルは水素である。メタクリル型が好ましい。
本発明の交互共重合体が重合される限り、式(3)の炭素には各種の置換基が置換していてもかまわない。
【化5】
(3)
Yは重合度及び末端構造が任意のポリプロピレン(またはポリエチレン)オキサイドからなる側鎖である。例えば、重合度1〜100で、OH、アルキルエーテル等の末端のポリプロピレン(またはポリエチレン)オキサイドからなる。
好ましくは、PPO−MCは重合度20〜100のマクロマーである。
好ましいYは下記である。
【化6】
mまたはnは20〜100であり、Rは水素若しくは炭素原子数1〜13の直鎖若しくは分枝のアルキル基を表す。
【0019】
PPO−MCは、市販の任意の分子量を有するポリプロピレン(またはポリエチレン)グリコールモノアルキルエーテルと市販のメタクリロイルクロライド(又はアクリロイルクロライド)とをTHF中で、トリエチルアミンを添加剤として、常法により反応させて得られる。具体的には、市販の任意の分子量を有するポリプロピレングリコールモノブチルエーテルをベンゼンで凍結乾燥後、真空中で脱水THF溶媒を加え、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル/THF溶液とし、5倍量のメタクリロイルクロライドを加え、添加剤としてトリエチルアミンを加えて、反応を行う。生成物をヘキサンで沈殿させ、乾燥させた後、THFに再溶解させ、ジエチルエーテルで沈殿、乾燥させて精製する。
任意の分子量及び任意のアルキル末端を有するポリプロピレン(またはポリエチレン)グリコールモノアルキルエーテルを常法により製造して、任意のPPO−MCが得られる。
【0020】
本発明の両親媒性交互共重合体は、PPO−MCを電荷移動錯体のアクセプターとして機能させるために、ルイス酸を添加することが必要である。ルイス酸は、メタクリルのエステル部分と錯体を形成し、ビニル部分の電子密度を低下させる。これによって、アクセプターとしての機能が高まる。本発明においては、特にSnCl4または、ZnCl2を用いることが好ましい。PEO−VBはドナーとして機能して、PEO−VBとPPO−MC/ルイス酸とのコンプレックスを形成して重合が進行し、PEO−VBとPPO−MCとの交互共重合体が生成する。コンプレックスの模式図を図1に示す。
【0021】
重合溶媒は、PEO−VBとPPO−MC/ルイス酸とのコンプレックス形成を阻害しなければ特に限定されない。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフランなどのエーテル系化合物類を使用する。
【0022】
重合開始剤は、ラジカル重合を開始する能力があれば特に限定されない。例えば、フリーラジカル重合の開始剤であるアゾイソブチロニトニル、過酸化ベンゾイル、リビングラジカル重合であれば、開始種であるN,N−ジエチルジチオカルバメート基、1,1,2,2−テトラフェニルエタン誘導体、ハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
【0023】
重合温度は、ラジカル重合の開始剤により適宜決定される。例えば、フリーラジカル重合の開始剤であれば、開始剤の10時間半減期付近の温度で行う。アゾビスイソブチロニトリルでは、40〜80℃で行う。またリビングラジカル重合の開始種であるN,N−ジエチルジチオカルバメート基であれば、紫外線照射によってラジカルを発生するため、特に制限されない。また、開始種がハロゲン化アルキルで金属錯体によってラジカルが生成される場合においても、重合温度は特に制限されない。開始種が、1,1,2,2−テトラフェニルエタン誘導体である場合には、熱でラジカルが発生するため、50〜150℃で重合を行う。
【0024】
反応容器は、通常のラジカル重合で使用されるものを用いるが、N,N−ジエチルジチオカルバメート基などの光イニファータ基を開始種に用いた場合は、紫外線照射を用いる場合のみ、透明容器を用いる。
重合開始前には、反応系内の酸素を十分に除去することが必要であり、窒素、アルゴンなどの不活性ガスで系内を置換させることが必要である。
【0025】
重合時間は、0.5時間から100時間程度を必要とする場合もあり、この範囲内で重合を行う。
【0026】
重合の停止は、加熱によってラジカルが生成しているのであれば加熱の停止による。紫外線照射によってラジカル生成を起こしているのであれば紫外線照射の停止による。また、金属錯体の添加によってラジカルを生成しているのであれば、金属錯体の除去もしくは酸素の封入などによる不活性化によって速やかに重合は停止される。また、モノマーを全て重合により消費した場合にも重合は停止される。
【0027】
ポリマーの精製は、一般的なポリマーの精製方法に従い、貧溶媒による沈殿、透析、重合溶媒の留去などによって行う。
【0028】
上記の重合により得られる交互共重合体の重量平均分子量は、5000〜10000000である。加える重合開始剤量、モノマー濃度、重合時間、重合温度などによって調整される。
なお、重量平均分子量は、単分散ポリスチレン標準試料換算のGPC測定(ユニバーサル法)によって求められる数値である。
【0029】
上記によって得られる本発明の両親媒性交互共重合体を構成する好ましい繰り返し単位は下記の式(1)である。
【化7】
(1)
m、nは1〜100の数であり、好ましくはm、nがともに20〜100である。Rは水素若しくは炭素原子数1〜13の直鎖若しくは分枝のアルキル基を表す。
【0030】
本発明の両親媒性交互共重合体は、その特性を実質的に阻害しない限り、他の汎用モノマーがPEO−VBとPPO−MCの交互ユニットの間に少量重合されていたり、あるいは、PEO−VB若しくはPPO−MCのダイアドやトリアド等が存在していたりする場合も、本発明の交互共重合体の均等範囲に含まれる。また、交互共重合体の主鎖の末端も任意である。
【0031】
本発明の両親媒性交互共重合体は、主鎖に対して、高密度かつ互いに相溶しない側鎖を有しており、高アスペクト比のブラシ状構造をとる。したがって、乳化剤や分散剤等の界面活性剤としての機能が発揮される。また、適切な溶媒中で数ミクロンのロッド状会合体を形成するため、カプセルとしての利用も可能である。さらに、剛直なシリンダー状の構造(ロッド)を形成するため、会合性と併せて、増粘剤としての機能が発揮される。しかも、その側鎖は、ポリプロピレンオキサイド(PPO)とポリエチレンオキサイド(PEO)であり、化粧料等の汎用油分への溶解に適している。したがって、化粧料原料として、界面活性剤、増粘剤、被膜剤等としての優れた応用が可能である。本発明の交互共重合体の特に好ましい用途は、両親媒性高分子界面活性剤、両親媒性高分子分散剤、両親媒性高分子増粘剤等である。
【0032】
本発明の両親媒性交互共重合体がとり得るブラシ状構造の模式図を図2に示す。交互共重合体を模式した円柱状の下半分は点線で示した高密度のポリエチレンオキサイド側鎖(PEO側鎖と略す)が存在する領域を表している。また、上半分は実線で表した高密度のポリプロピレンオキサイド側鎖(PPO側鎖と略す)が存在する領域を表している。PEO側鎖とPPO側鎖とを有する中央の太線は、スチレンとMMAの基本骨格から由来する主鎖を表している。
図3はブラシ状共重合体が水中で会合したロッド状会合体の模式図である。
【0033】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
得られたブラシ状交互共重合体は次の方法により物性を測定した。
「分子量及び分子量分布」
大塚電子社製のDLS7000を用いて、He−Neレーザー(波長632.8mm)で、ベンゼン中で25℃で測定を行った。Zimm−plotを作製し、重量平均分子量Mwと慣性半径Rgを算出した。重合度(DP)Aは、PPO/PEOの交互ユニットを単位として、全体の分子量から算出した。
トーソー社製の高速液体クロマトグラフHLC−8120に、低角光散乱検出器LS−8(He−Neレーザー、検出角度5度)を接続して、GPC測定を行った。カラムは、2本のTSKゲルカラムを用い、GMHXL、G2000HXLを用いた、溶媒は0.1MのLiBrを溶解させたDMF、測定温度は38℃である。GPCプロファイルより分子量分布を算出した。
「ポリマーの組成比」
1H−NMR(JEOL社製、GSX−500NMR spectrometer)を用い、PEO−VBの末端メチル基(3.4ppm)とPPO−MCのPPO中のメチル基(1.35ppm)の面積比から、ポリマー中のPEO−VBとPPO−MCユニット比を算出した。
「ポリマーの分子間会合」
大塚電子社製のDLS7000を用い、ベンゼン中、25℃で動的光散乱測定を行った。ポリマー濃度による、交互共重合体の並進の拡散係数を測定し、分子間会合の状態と、会合体の立体的な構造について評価を行った。
【0035】
「合成例1:PEO−VB(Mn=2000)」
PEO−VBは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(Mn=2000、20g)をベンゼンで凍結乾燥後、窒素雰囲気下で脱水THF(80ml)を加え、ナトリウムハイドライド(0.48g)を加えて、アルコキシ化した後、p−クロロメチルスチレン(2.30g)を加えて、反応を行った。反応後、溶媒をエバポレーションで除去した。アセトンを加えて、生じたNaCl塩をろ過した。ろ液を再び濃縮して、ヘキサンで沈殿させて、精製した。
1H−NMRより求めた数平均分子量は、2000であった。
【0036】
「合成例2:PPO−MC(Mn=1200)」
PPO−MCは、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(Mn=1200、20g)をベンゼンで凍結乾燥後、真空中で脱水THFを加え、メタクリロイルクロライド(2.62g)を加え、脱酸剤としてトリエチルアミン(2.53g)を加えて2時間反応を行った。生じたトリエチルアミン塩酸塩をろ過し、溶媒をエバポレーションで除去した。粗生成物にアセトンを加えて、シリカゲルカラムで分別し、メタクリル酸を除去した。アセトン、残存するトリエチルアミンを真空蒸留して除去し、液状のPPO−MCを得た。
1H−NMRより求めた数平均分子量は1200であった。
【0037】
「実施例1」
透明反応容器に、上記で得られたPEO−MC(8.4g)とPEO−VB(14.0g)とをベンゼン(10ml)に溶解させ、凍結乾燥を行った。次いでベンゼン(10ml)を加え、攪拌し、マクロモノマーを溶解させた。次いでSnCl4(2.735g)を加えて攪拌し、系内が褐色になり、錯体が形成していることを確認した。次いでアゾビスイソブチロニトリル(0.328g)を添加した。その後、脱気し、封管した。反応容器を60℃の恒温槽に入れ、振とうしながら、120時間重合を行った。
重合後、反応溶液を大量のヘキサンに注ぎ込み、ポリマーを沈殿させて回収した。未反応のPEO−VBは、大量の水で除去した。また未反応のPPO−MCは、ベンゼン−ヘキサン系で、溶媒組成を変えて沈殿したフラクションを回収した。得られた交互共重合体(PCB1と略す)の特性を表1に示す。上記の反応スキームを図4に示す。図4にて、m、n、Lは重合度を表す。
【0038】
【表1】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Mw Mw/Mn (DP)A Rg(nm) R h (nm)
(*1) (*2) (*3) (*1) (*4)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.366x106 1.21 403 86.7 48.1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*1:25℃ベンゼン中にて、静的光散乱により測定
*2:0.1M LiBrを溶解したDMF中にてGPCにより測定
*3:PPO/PEOの交互ユニットを単位とした重合度
*4:25℃ベンゼン中にて動的光散乱により測定
【0039】
図5に、PCB1の散乱ベクトルqに対するΓeq2を示す。強い角度依存が見られたことから、PCB1は、球状ではなく、短い側鎖と長い主鎖に由来するブラシ状構造による異方性が現れていると考えられる。
【0040】
図6に、PCB1のベンゼン中における濃度に対する並進の拡散係数D(C)を示す。濃度0〜4mg/mlの範囲において、D(C)は一定の値を示した。このことから、PCB1はこの濃度範囲で、単分子ポリマーとして存在していることがわかった。
【0041】
表1に、ベンゼン中での並進の拡散係数D0とEinstein−Stokesの式により求めた、流体力学的半径Rhを示す。Rg/Rhの値は、球状では0.775、剛直なロッド状では2.0を示すと言われており、PCB1の値1.8は、良溶媒中で剛直なロッド状に近い形状であることを示唆している。
【0042】
図7に、PCB1の水中の動的光散乱測定による、サイズ分布を示す。ポリマー濃度0.001mg/mlでは、流体力学的半径が320nmであった。水中では、ポリマー濃度0.001〜0.1mg/mlにおいて、水溶液は白濁していたが、沈殿は見られなかった。この濃度域において、安定な会合体を形成していることが示唆された。
【0043】
図8に、PCB1の会合体のFE−SEM写真を示す。ポリマー濃度は0.001mg/mlである。SEM写真より、会合体のサイズは、半径が0.22±0.01μm、長軸方向が1.5±0.2μmであった。会合したロッド状物質は、水中で親水性のPEOにより安定化されている。また、ポリマー濃度が0.1mg/mlにおけるSEM写真においても、会合体のサイズはほとんど同じであった。このことから、ポリマー濃度0.001−0.1mg/mlにおいて、安定な同じサイズの会合体を形成していると考えられる。
【0044】
以上から、末端ビニルベンジル型ポリエチレンオキサイドと末端メタクリル型ポリプロピレンオキサイドとを交互共重合体の重合に成功し、新規なブラシ状交互共重合体が得られている。
【0045】
【発明の効果】
本発明の交互共重合体は、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドの側鎖を交互に有する新規な両親媒性交互共重合体である。
本発明の交互共重合体は、スチレンとMMAから由来する構造の交互共重合体を基本骨格とする主鎖に対して、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの側鎖を、交互に(主鎖の炭素の一つおきに)有する両親媒性交互共重合体である。したがって、極めて高密度に親水性と疎水性のグラフト側鎖が存在し、剛直なシリンダー状の構造(ロッド)を形成しやすい。また、重量平均分子量が5000〜10000000の交互共重合体が容易に重合され、重合度の観点からもブラシ状構造を形成しやすい。
発明の交互共重合体は主鎖に高密度かつ互いに相溶しないポリマー側鎖を有しており、高アスペクト比のブラシ状構造をとる。したがって、乳化剤や分散剤等の界面活性剤としての機能が発揮される。また、適切な溶媒中で数ミクロンのロッド状会合体を形成するため、カプセルとしての利用も可能である。さらに、剛直なシリンダー状の構造(ロッド)を形成するため、会合性と併せて、増粘剤としての機能が発揮される。しかも、その側鎖はポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドであり、化粧料等の汎用油分への溶解に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】PEO−VBとPPO−MCからなるコンプレックスの模式図である。
【図2】本発明の両親媒性交互共重合体がとり得るブラシ状構造の模式図である。
【図3】ブラシ状共重合体が会合したロッド状会合体の模式図である。
【図4】実施例1の反応スキームである。
【図5】実施例1で得られたPCB1の散乱ベクトルqに対するΓeq2である。
【図6】実施例1で得られたPCB1のベンゼン中における濃度に対する並進の拡散係数D(C)である。
【図7】実施例1で得られたPCB1の水中での動的光散乱測定によるサイズ分布である。
【図8】実施例1で得られたPCB1の会合体のFE−SEM写真図である。
Claims (3)
- 末端(メタ)アクリル型ポリプロピレンオキサイド又は末端(メタ)アクリル型ポリエチレンオキサイドがルイス酸と電荷移動錯体を形成して、末端ビニルベンジル型ポリエチレンオキサイド又は末端ビニルベンジル型ポリプロピレンオキサイドと1対1のコンプレックスを形成して、開始剤の存在下に溶媒中にてラジカル重合することを特徴とする請求項1又は2記載の交互共重合体の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2003145648A JP4133582B2 (ja) | 2003-05-23 | 2003-05-23 | ブラシ状交互共重合体及びその製造方法 |
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