JP4086974B2 - 鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟口蓋の鼻腔側面が咽頭後壁に接触する位置と接触面の垂直応力分布とを同時に計測することができる鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
音声は、言語情報と同時に、話者の個人性情報や感情等の情報を簡便に伝達することができるので、日常の会話や通信で最もよく利用される伝達手段の一つである。この音声は、喉頭、舌、顎を中心とした調音器官等の音声生成器官の巧妙な協調運動によって生成される。この音声の生成において、軟口蓋は重要な役割を担っている。
【0003】
詳細には、図1に示すように、軟口蓋11が鼻腔12側に移行し、軟口蓋の鼻腔側面13と咽頭14の後壁15が接触することによって、咽頭鼻部16と咽頭口部17が空間的に分離され、口腔18からみて鼻咽腔が閉鎖された状態となる。一方、軟口蓋が口腔側に移行すると、咽頭鼻部と咽頭口部が空間的に結合され、鼻腔と口腔が一つの空間となる。このように、軟口蓋は、鼻腔と口腔を空間的に分離させ、又は結合させる機能を有している。
【0004】
そこで、/m/、/n/等の鼻音の生成においては、口唇部を閉じて、軟口蓋が口腔側に移行することによって、声帯からの音源波が咽頭から鼻腔に伝わり、鼻腔での共鳴を得ることができる。他方、/p/、/t/、/k/等の破裂音では、軟口蓋が鼻腔側に移行し、口腔からみて、鼻腔が閉鎖された状態となり、更に、口唇部を閉じることによって、口腔内圧を高めることが可能となる。このように、軟口蓋は、音声言語の生成において、重要な働きをしており、ここに、鼻咽腔閉鎖応力は、音声の音響的性質と明瞭度とを決定する重要な物理量である。
【0005】
そこで、従来、X線画像を利用した軟口蓋の運動計測や、音圧センサによる鼻腔と口腔内の音圧測定に基づく鼻咽腔閉鎖機能の計測が行なわれている。更に、ファイバースコープによって、鼻咽腔閉鎖の状態を鼻腔側から観測する手法が提案されている。
【0006】
しかしながら、X線画像、音圧センサ、ファイバースコープ等の手段によっては、直接に鼻咽腔閉鎖応力を検出することは原理的に難しい。他方、鼻咽腔閉鎖応力を直接に計測する方法としては、ビニールチューブを介してビニールバルーンを圧力センサに接続し、系全体を生理食塩水で満たし、このビニールバルーンを軟口蓋と咽頭後壁に挟まれるように配置する方法が提案されている。しかし、この方法による計測値は、軟口蓋の鼻腔側と咽頭後壁の接触面全体での圧縮力を表わすので、この接触面積が未知であるとき、鼻咽腔閉鎖応力を正確に計測しているとはいい難い。また、この方法では、軟口蓋の鼻腔側と咽頭後壁の接触位置や接触面での応力分布を計測することが原理的に不可能である。
【0007】
一方、人体が床や物体と接触する際の体圧分布を感圧フィルムや感圧導電性ゴム等を用いて測定する方法が知られている。しかし、これらの方法は、人間が着座した時の座面、足底面の圧分布、咬合力等を計測対象としたもので、荷重の測定範囲が数百g重から数十kg重であること、感圧フィルムや感圧導電性ゴムの応力−抵抗値特性にはヒステリシスが存在すること等の理由から、鼻咽腔閉応力度分布の測定に適用することは困難である。そこで、感圧フィルムや感圧導電性ゴムに代えて、小型の荷重変換器を用いる方法も考えられるが、これらによれば、定格負荷が数g重であり、小型且つ薄型でセンサ単体で任意に配置できる荷重変換器は開発されていない。
【0008】
このように、従来、生体を対象とした多種多様な計測方法が提案されているもの、軟口蓋が咽頭後壁に接触する位置と接触面の応力に関する情報を同時に得る鼻咽腔閉鎖応力分布を測定することができる装置は、知られていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、人間の顎口腔機能、特に、軟口蓋の力制御機能を解析するために、軟口蓋が咽頭後壁に接触する位置と接触面の応力を同時に計測することができる鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
軟口蓋が咽頭後壁に接触する位置と接触面での垂直応力分布を同時に計測するための本発明による鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置は、筺体内に可撓性を有する薄板を支持し、この薄板上に上記筺体から突出するように力伝達ブロックを固定し、この力伝達ブロックへの垂直応力を測定するための歪みセンサを上記筺体内に設けて、力センサを形成し、この力センサの複数を柔軟なテープ状のフィルム上に直線状に配列してなることを特徴とする。
【0011】
特に、好ましい態様によれば、本発明による鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置は、筺体内に可撓性を有する第1の薄板を支持し、この第1の薄板の表面上に上記筺体から突出するように第1の力伝達ブロックを固定し、上記筺体内に可撓性を有する第2の薄板を上記第1の薄板に平行に支持し、この第2の薄板の表面上に第2の力伝達ブロックを固定し、上記第2の薄板の裏面に上記第1の力伝達ブロックへの垂直応力を上記第2の力伝達ブロックを介して測定するための歪みセンサを上記筺体内に固定して、力センサを形成し、この力センサの複数を柔軟なテープ状のフィルム上に直線状に配列してなることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明による鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図2及び図3は、本発明による鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置を示し、柔軟性を有するテープ状のフィルム21の上に薄型の力センサ22を直線状に、好ましくは、適当な間隔を有するように適宜のピッチにて配設して、力センサアレイ23としたものである。フィルム上の複数の力センサの配置や間隔は、個々人の鼻咽腔の形態に合わせて任意に決めればよい。それぞれ力センサ22は、後述するように、これに加わる垂直応力を例えば電気抵抗の変化として検出し、これをそれぞれリード線24を経て歪み計に伝える。リード線は、例えば、柔軟なプラスチックチューブ25にて被覆されている。
【0014】
図4に示すように、このような力センサアレイを人体の咽頭腔において、軟口蓋の鼻腔側面と咽頭後壁に挟まれる任意の位置に配置することによって、例えば、音声の生成に伴って、個々の力センサが例えば電気抵抗の変化として検出した歪み(垂直応力)は、個々の力センサ22a、22b、22c、22d、22e及び22fからリード線24にて6チャンネルの歪み計に伝えられ、他方、生成された音声は、マイクロフォン31で集められ、オーディオアンプリファイヤから、コンピュータに送りこまれて、歪みに関する情報と共に処理され、かくして、本発明による装置を用いることによって、軟口蓋が咽頭後壁に接触する位置と接触面の垂直応力を同時に計測することができる。
【0015】
上記フィルムは、柔軟性を有し、毒性を示さないものあれば、何ら制限されることなく、任意のものを用いることができる。代表的な例として、厚さ0.5mmのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸アルキル共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性合成樹脂からなるシートを挙げることができる。
【0016】
本発明による装置においては、筺体内に可撓性を有する薄板を支持し、その上に筺体から突出するように力伝達ブロックを固定し、この力伝達ブロックへの垂直応力を検出することができる歪みセンサを上記筺体内に設けることによって、個々の力センサが形成されている。
【0017】
図5及び図6に本発明の鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置における力センサ22の好ましい一例を示す。これによれば、上壁41に開口42を有する筺体43の上壁の長手方向の一端の裏面に第1のプラスチック板44を介して可撓性を有する第1の薄板45、例えば、ステンレス箔がその一端において筺体に固定されている。上記第1のプラスチック板44は、筺体の上壁の裏面に接着固定されている。
【0018】
上記第1の薄板45の他端の表面上に上記開口から筺体の外へ突出するように第1の力伝達ブロック46が固定されている。更に、上記第1の薄板45に平行して、可撓性を有する第2の薄板47が第2のプラスチック板48と第3のプラスチック板49とに挟まれて、その一端において、筺体に固定されている。この第2の薄板45の他端の表面上に、好ましくは、前記第1の力伝達ブロックに対応する位置に、上記第1の力伝達ブロック46と第1の薄板への垂直応力を第2の薄板に伝達するために、第2の力伝達ブロック50が固定されている。第1及び第2の薄板は、一端でのみ、固定されている。
【0019】
更に、上記第2の薄板の裏面の適宜の位置に、上記第1の力伝達ブロックから垂直応力が第2の力伝達ブロックに伝達され、その結果、第2の薄板が弾性的に変形せしめられたとき、即ち、撓んだときに、その弾性的な撓み、即ち、歪みを例えば電気抵抗の変化として検出する歪みセンサ51が固定されている。上記第3のプラスチック板49は、筺体の下壁52の内面に接着固定されており、また、筺体は、その下壁52が前記フィルム21に接着固定されている。
【0020】
本発明においては、第2の薄板の表面上の第1の力伝達ブロックと第2の薄板の裏面の力センサのそれぞれの位置は、第1の薄板の表面上の第1の力伝達ブロックに加わる垂直応力が第2の力伝達ブロックを介して、第2の薄板の撓みとして、力センサに伝達される限りは、特に限定されるものではない。
【0021】
前述したように、このような力センサの複数を柔軟性を有するテープ状のフィルム上に直線状に間隔をおいて配設して、力センサアレイとし、これを人体の軟口蓋の鼻腔側面と咽頭後壁に挟まれる任意の位置に配置することによって、例えば、音声の生成に伴う軟口蓋からの垂直応力は、第1の力伝達ブロック46を介して第1の可撓性を有する薄板45に伝えられて、第1の薄板は撓み、即ち、歪みを生じ、この第1の薄板の歪みが第2の力伝達ブロック50に伝えられ、これを介して第2の可撓性を有する薄板47に伝えられ、かくして、第2の可撓性を有する薄板47に撓み、即ち、歪みが生じ、この歪みを第2の薄板の裏面に固定されている上記歪みセンサで検出することによって、鼻咽腔閉鎖時の垂直応力を測定することができる。
【0022】
特に、このような力センサによれば、第1の薄板45の表面上に第1の力伝達ブロック46が固定されており、第2の薄板47の表面上に第2の力伝達ブロック50が固定されており、第2の薄板の裏面に歪みセンサ50が固定されているが、第2の力伝達ブロックは、第1の薄板の裏面に固定されていない。従って、軟口蓋が咽頭後壁に接触したとき、咽頭後壁に対して垂直な力成分は、第1の力伝達ブロック、第1の薄板、第2の力伝達ブロック、そして第2の薄板へとこの順序にて伝達されるが、しかしながら、咽頭後壁面に対して平行な力成分は、第1の力伝達ブロックと第1の薄板に伝達されても、第2の力伝達ブロックと第2の薄板には伝達されない。かくして、本発明の装置によれば、軟口蓋が咽頭後壁に沿って平行に移行しながら、咽頭後壁に接触する場合であっても、鼻咽腔閉鎖応力の垂直成分のみを検出することができる。
【0023】
図7及び図8に本発明の鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置における力センサ22の別の好ましい一例を示す。図6及び図7と同じ部材には同じ参照番号が付されている。
【0024】
この力センサにおいても、上壁41に開口42を有する筺体43の上壁の長手方向の一端の裏面に第1のプラスチック板44を介して可撓性を有する第1の薄板45、例えば、ステンレス箔がその一端において筺体に固定されている。上記第1のプラスチック板44は、筺体の上壁の裏面に接着固定されている。
【0025】
上記第1の薄板45の他端の表面上に上記開口から筺体の外へ突出するように第1の力伝達ブロック46が固定されている。更に、上記第1の薄板45に平行して、可撓性を有する第2の薄板47が第2のプラスチック板48と第3のプラスチック板49とに挟まれて、その一端において、筺体に固定されていると共に、他端においても、プラスチック板53と54とに挟まれて筺体に固定されている。上記第3のプラスチック板は、筺体の下壁52の内面に接着固定されており、上記プラスチック板53は、筺体の上壁の裏面に、また、上記プラスチック板54は、筺体の下壁の内面に、それぞれ接着固定されている。この第2の薄板45の中央部の表面上に前記第1の力伝達ブロックに対応する位置に第2の力伝達ブロック50が固定されている。
【0026】
更に、上記第2の薄板の裏面の適宜の位置に、例えば、中央部に、上記第1の力伝達ブロックからの垂直応力を第2の力伝達ブロックが受けて、その結果、第2の薄板が弾性的に変形せしめられたとき、即ち、撓んだときに、その弾性的な撓み、即ち、歪みを例えば電気抵抗の変化として検出する歪みセンサ51が固定されている。上記第3のプラスチック板は、筺体の下壁52の内面に接着固定されている。筺体は、その下壁51が前記フィルム21に接着固定されている。
【0027】
前述したように、第2の薄板の表面上の第1の力伝達ブロックと第2の薄板の裏面の力センサのそれぞれの位置は、第1の薄板の表面上の第1の力伝達ブロックに加わる垂直応力が第2の力伝達ブロックを介して、第2の薄板の撓みとして、力センサに伝達される限りは、特に限定されるものではない。
【0028】
このような力センサも、軟口蓋が咽頭後壁に沿って平行に移行しながら、咽頭後壁に接触する場合であっても、鼻咽腔閉鎖応力の垂直成分のみを検出することができる。
【0029】
上記第1及び第2の薄板としては、可撓性乃至弾性を有し、発錆し難く、毒性を示さない材料であれば、何ら制限されることなく、任意のものを用いることができる。代表的な例として、ステンレスや弾性プラスチック等からなる薄板を挙げることができる。
【0030】
また、本発明において、上記歪みセンサとしては、薄型であれば、特に限定されることはなく、従来より知られているものを適宜に用いることができる。例えば、代表的な例として、歪ゲージ、半導体歪センサ、圧電性高分子フィルム等、圧電効果を利用したセンサを挙げることができる。
【0031】
力センサの筺体内に唾液が充填されると、第1及び第2の薄板の力学的特性が変化し、薄板の歪みを正確に検出することができない場合がある。そこで、好ましくは、歪みセンサを防水性被膜(図示せず)で被覆する。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0033】
実施例1
図5及び図6に示した薄型力センサを以下のようにして製作した。厚さ0.2mmのアルミニウム板からなる筺体の上壁の長手方向の端部に直径2mmの開口を設けた。筺体の長手方向の他端の上壁の裏面に厚さ0.2mmの第1のプラスチック板を接着固定し、この第1のプラスチック板に、厚さ50μm、5×1.4mmの可撓性を有する第1のステンレス箔が筺体内を延びるように、その一端を接着固定し、この第1のステンレス箔の表面上に第1の力伝達ブロックが上記開口から筺体の外へ突出するように接着固定した。
【0034】
更に、上記第1のステンレス箔に平行して、可撓性を有する厚さ50μm、5×1.4mmの可撓性を有する第2のステンレス箔を第1のステンレス箔と同じ位置で第2のプラスチック板と第3のプラスチック板とで挟んで筺体に固定した。この第2のステンレス箔の表面の前記第1の力伝達ブロックに対応する位置に厚さ0.2mm、0.5×1.4mmのプラスチック板を第2の力伝達ブロックとして固定した。更に、上記第2のステンレス箔の裏面のほぼ中央部に厚さ1.3mmの歪みセンサを接着固定し、この歪みセンサをプラスチックフィルムで被覆して防水処理を施した。
【0035】
図9は、上記薄型力センサの一つの荷重−出力電圧特性の測定例であり、第1の力伝達ブロックに0から10.0g重ずつ、加重したときの荷重と歪み計の出力電圧の関係を示す。応力は、荷重を第1の力伝達ブロックの断面積で除することにより求められ、このセンサに1.0g重の荷重を加えたときの応力は、5.54kPaに換算される。この結果から、上記薄型力センサは、ヒステリシスが0.44%、非直線性が0.35%、測定誤差が3.5%であることが示された。その他の薄型力センサについても同様な結果が得られた。
【0036】
上記薄型力センサ2a、2b、2c、2d、2e及び2fを柔軟なポリエチレンフィルム上にその間に僅かの間隔を有するようにピッチ6.9mmにて直線状に配設して力センサアレイとし、これを、図4に示すように、成人男子の鼻孔から挿入し、軟口蓋と咽頭後壁に挟まれる位置に配置した。そして、音声をマイクロフォンにより採取し、力センサアレイを接続した歪み計(6チャンネル)の出力電圧と共に、A/D変換器を介し、サンプリング周波数10kHzでコンピュータに入力した。核力センサの荷重−出力電圧特性に基づいて、歪み計の出力電圧を荷重に換算した。
【0037】
図4に示すように、咽頭後壁に沿って最上部に位置する力センサ2aの位置を基準として、力センサアレイ上の薄型力センサ2a、2b、2c、2d、2e及び2fの位置を横軸にとり、縦軸に各力センサにより測定された垂直応力をとった鼻咽腔閉鎖応力分布の測定例を図10に示す。
【0038】
このようにして、6点の計測結果に基づいて、鼻咽腔閉鎖応力分布を3次スプライン関数により推定した結果を実線で示し、この鼻咽腔閉鎖応力分布曲線から、その最大値と平均値を求めた。各時刻毎に力センサの出力より鼻咽腔閉鎖応力分布を求め、その時間変化を図11と図12に示す。
【0039】
図11は母音発声時の結果を示し、上段には音声波形、中段には力センサアレイに沿っての位置(咽頭後壁に沿っての上下方向の位置)を縦軸にとり、鼻咽腔閉鎖応力を濃淡で表わした結果を示す。下段には鼻咽腔閉鎖応力分布から求めた最大値と平均値の時間変化を示す。
【0040】
これによれば、軟口蓋が咽頭後壁に接触してから、音声が発声されるまでの時間(VOT)は、約150msであり、最大値に達するまでの時間は220msであった。母音発声時の鼻咽腔閉鎖応力は、平均で2g重(11.1kPa)、最大で11.5g重(63.7kPa)であり、咽頭後壁の接触範囲は16mmであった。
【0041】
また、図12は、10ccの水を嚥下したときの鼻咽腔閉鎖応力分布の時間変化を示し、鼻咽腔閉鎖応力は平均で2.5g重(13.85kPa)であった。同図中段の結果から、接触範囲が鼻腔から口腔の方に移行することが認められた。このように、本発明による鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置によれば、軟口蓋が咽頭後壁に接触する位置によって、垂直応力が異なる様子を示すことができる。
【0042】
かくして、本発明による装置によれば、軟口蓋の鼻腔側面が咽頭後壁に接触する位置と接触面の垂直応力分布とを同時に計測することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明の鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置は、柔軟性を有するテープ状のフィルムの上に薄型の力センサの複数を直線状に、好ましくは、間隔をおいて、配設して、力センサアレイとしたものからなり、これを人体の咽頭腔において、軟口蓋の鼻腔側面と咽頭後壁に挟まれる任意の位置に配置することによって、例えば、音声を生成するとき、軟口蓋が咽頭後壁に接触する位置と接触面の垂直応力を同時に、しかも、再現性よく、計測することができる。
【0044】
力センサの厚さは、測定時の咽頭部における違和感を軽減するために、可能な限りに薄いことが望まれるが、本発明によれば、柔軟性を有するフィルムと薄型の力センサを一体化させることにより、力センサアレイの厚さを1.3mm程度にすることもできる。
【0045】
更に、本発明によれば、第1の力伝達ブロックを接着した第1の薄板に平行に第2の薄板を筺体内に支持し、この第2の薄板の表面上に第2の力伝達ブロックを接着すると共に、この第2の薄板の裏面に歪みセンサを接着固定しており、従って、咽頭後壁に対して垂直な力成分のみが、第1の力伝達ブロックから第1の薄板、第2の力伝達ブロック、第2の薄板へと伝わり、咽頭後壁面に対して平行な力成分は、第2の薄板には伝わらない。従って、軟口蓋が咽頭後壁に沿って平行に移行しながら、咽頭後壁に接触する場合であっても、鼻咽腔閉鎖応力の垂直成分のみを検出することができる。かくして、本発明の装置によれば、通常、測定誤差を3.5%以下とした高感度にて鼻咽腔閉鎖応力を計測することができる。
【0046】
本発明による鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置は、医用生体工学や音声言語学的用途に好適に用いることができる。例えば、鼻咽腔閉鎖不全症に起因した言語障害者の発話訓練は、従来、医療言語聴覚士の経験に基づいて行なわれ、発声時の軟口蓋の力感覚に関する適切な指導ができないことが大きな問題として指摘されているが、本発明の装置を用いることによって、発声時に軟口蓋が咽頭後壁に接触する位置と接触面の垂直応力の情報を訓練者にフィードバックできる発話機能訓練装置を実現することができる。
【0047】
更に、本発明による鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置と音声分析装置を併用することによって、発話機能分析装置の開発が期待できる。また、音声生成モデルに基づく音声認識・合成技術の確立を目指す音声情報工学の分野では、発話時における軟口蓋の力制御機能を解析し、連続音声発声時の調音結合等、音声生成機構を解明する発話機能計測システムに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、人体における軟口蓋、口腔、鼻腔及び咽頭を示す断面図である。
【図2】は、本発明による鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置(力センサアレイ)の正面図である。
【図3】は、図2の鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置(力センサアレイ)の平面図である。
【図4】は、本発明の装置(力センサアレイ)を用いる鼻咽腔閉鎖応力分布の計測を示す図である。
【図5】は、本発明の鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置における力センサの好ましい一例の正面断面図である。
【図6】は、図5において、A−A線に沿う部分断面図である。
【図7】は、本発明の鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置における力センサの好ましい別の一例の正面断面図である。
【図8】は、図7において、B−B線に沿う部分断面図である。
【図9】は、本発明の実施例において用いた力センサの一つの荷重−出力電圧特性の測定例である。
【図10】は、図9の力センサを用いた行なった咽頭後壁に沿う鼻咽腔閉鎖応力分布の測定例である。
【図11】は、母音/a/発声時の鼻咽腔閉鎖応力分布の測定例である。
【図12】は、水嚥下時の鼻咽腔閉鎖応力分布の測定例である。
【符号の説明】
11…軟口蓋、12…鼻腔、14…咽頭、15…咽頭後壁、18…口腔、21…フィルム、22(22a、22b、22c、22d、22e及び22f)…力センサ、23…力センサアレイ、31…マイクロフォン、43…筺体、45…可撓性を有する第1の薄板、46…第1の力伝達ブロック、47…可撓性を有する第2の薄板、第2の力伝達ブロック、51…歪みセンサ。
Claims (4)
- 筺体内に可撓性を有する薄板を支持し、この薄板上に上記筺体から突出するように力伝達ブロックを固定し、この力伝達ブロックへの垂直応力を測定するための歪みセンサを上記筺体内に設けて、力センサを形成し、この力センサの複数を柔軟なテープ状のフィルム上に直線状に配列してなることを特徴とする軟口蓋が咽頭後壁に接触する位置と接触面での垂直応力分布を同時に計測するための鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置。
- 筺体内に可撓性を有する第1の薄板を支持し、この第1の薄板の表面上に上記筺体から突出するように第1の力伝達ブロックを固定し、上記筺体内に可撓性を有する第2の薄板を上記第1の薄板に平行に支持し、この第2の薄板の表面上に第2の力伝達ブロックを固定し、上記第2の薄板の裏面に上記第1の力伝達ブロックへの垂直応力を上記第2の力伝達ブロックを介して測定するための歪みセンサを上記筺体内に固定して、力センサを形成し、この力センサの複数を柔軟なテープ状のフィルム上に直線状に配列してなることを特徴とする軟口蓋が咽頭後壁に接触する位置と接触面での垂直応力分布を同時に計測するための鼻咽腔閉鎖応力分布計測装置。
- 力センサを間隔をおいてフィルム上に直線状に配列する請求項1又は2に記載の装置。
- 力センサを防水性被膜で被覆する請求項1から3のいずれかに記載の装置。
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JP2000060804A (ja) | 2000-02-29 |
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