JP4081029B2 - 核融合ターゲット及び核融合点火方法 - Google Patents

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Description

本発明は、核融合燃料に対してエネルギー線を照射することによって核融合反応を点火させる慣性核融合に用いられる核融合ターゲット、及び核融合点火方法に関するものである。
DT反応などの核融合反応は、将来のエネルギー源として期待されている。特に、慣性核融合の一方式であるレーザ核融合の分野では、超高出力のペタワット(PW)レーザ光を用いた高速点火方式が1990年代初頭に提案されて以来、各研究機関で精力的に開発が推進されており、その基礎的研究は急速な進展を遂げつつある。
レーザ核融合においては、燃料での核融合反応をどのようにして点火させるか、また、入力に対して100倍以上のエネルギー利得での出力をいかに取り出すかが重要である。従来の中心点火方式では、点火用のレーザ光でMJ(メガジュール)以上のエネルギーが必要とされ、かつ、核融合ターゲットに対するレーザ光照射の高い均一性が求められる。このため、この点火方式では、レーザ光を均一に照射するために数100本のレーザビームが必要であり、装置が複雑化するとともに高コストとなるという問題がある。
これに対して、ペタワットレーザ光を利用した高速点火方式では、まず、レーザ光を核融合ターゲット(ペレット)に照射することによって、ターゲットの中心部に燃料を圧縮(爆縮)させ、超高密度状態を作り出す。そして、ペタワットレーザ光によって発生させた高速電子を輸送することによって、最終的に圧縮燃料を加熱、点火する(例えば非特許文献1参照)。
TANAKA Kazuo et al., "Fast Ignitor Research with Use of Ultra-Intense Laser System", プラズマ・核融合学会誌第75巻第4号, p.452-458 (1999)
上記した高速点火方式によるレーザ核融合は、従来の中心点火方式に比べて比較的低い圧縮一様性と圧縮密度での点火が可能であり、かつ、より高いエネルギー利得が見込めるなど、優れた特性を有している。しかしながら、この点火方式には依然として解明されていない物理が多く、最終エネルギー利得を決定するエネルギー結合効率の評価なども充分に行うことができていない。このことは、レーザ核融合の開発を効率的に進めていく上で問題となる。また、ペタワットレーザ光源が非常に高価であり、その動作の安定性などの点でも問題がある。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、燃料での核融合反応を効率良く点火することが可能な核融合ターゲット、及び核融合点火方法を提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明による核融合ターゲットは、核融合燃料に対してエネルギー線を照射することによって核融合反応を点火させる慣性核融合に用いられる核融合ターゲットであって、(1)点火部となる中心部からみて第1領域を囲むように設けられた主燃料層、及び主燃料層の外周上に設けられた第1アブレータ層を有する主燃料部と、(2)中心部からみて第1領域を除く第2領域に対して設けられた点火用燃料層、及び点火用燃料層の外周上に設けられた第2アブレータ層を有する点火用燃料部と、(3)主燃料部及び点火用燃料部を隔てるとともに中心部に向かって開放された開口部を有し、点火用燃料層をエネルギー線の照射時に開口部を経て中心部へと誘導するための誘導部材とを備えることを特徴とする。
また、本発明による核融合点火方法は、核融合燃料に対してエネルギー線を照射することによって核融合反応を点火させる慣性核融合における核融合点火方法であって、(a)点火部となる中心部からみて第1領域を囲むように設けられた主燃料層を有する主燃料部と、中心部からみて第1領域を除く第2領域に対して設けられた点火用燃料層を有する点火用燃料部と、主燃料部及び点火用燃料部を隔てるとともに中心部に向かって開放された開口部を有する誘導部材とを備える核融合ターゲットを用い、(b)主燃料部に対して圧縮用のエネルギー線を照射し、主燃料層を中心部へと圧縮させる圧縮ステップと、(c)点火用燃料部に対して加速用のエネルギー線を照射し、点火用燃料層を誘導部材によって開口部を経て中心部へと誘導しつつ加速させる加速ステップと、(d)中心部へと圧縮された主燃料層に加速された点火用燃料層を衝突させることによって核融合反応を点火させる点火ステップとを備えることを特徴とする。
上記した核融合ターゲット及び核融合点火方法においては、核融合燃料からなる主燃料層に対し、同じく核融合燃料からなる点火用燃料層を別に設けている。そして、開口部を設けた誘導部材を用いて、高速に加速された点火用燃料層を主燃料に衝突させ、その運動エネルギーを熱エネルギーに直接変換することによって核融合反応を点火させている。このようなターゲット構造及び点火方法によれば、核融合反応を高効率で確実に点火することが可能となる。
また、この点火方式では、従来の高速点火方式などと異なり、核融合反応の点火の物理現象を流体力学的要素のみで記述することが可能である。したがって、エネルギー結合効率の評価、核融合ターゲットの具体的な構造の設計、高効率が得られるエネルギー線の照射条件の設定などが容易化される。また、ペタワットレーザ光源を用いる必要がなく、装置全体を低コスト化することができる。なお、主燃料層及び点火用燃料層の核融合燃料としては、例えばDT燃料を用いることができる。また、核融合燃料に対して照射するエネルギー線としては、例えばレーザ光、X線、荷電粒子線などを用いることができる。
ここで、核融合ターゲットは、主燃料層が、中心部からみて第1の径の球面形状に設けられ、点火用燃料層が、中心部からみて第2の径の球面形状に設けられていることが好ましい。これにより、燃料層の中心部への圧縮、加速を充分な一様性で好適に実現することができる。
また、誘導部材は、開口部から点火用燃料部への開き角度を90°以上180°以下として形成されていることが好ましい。これにより、点火用燃料層の中心部への誘導、及びその主燃料との衝突を好適に実現することができる。
また、点火用燃料層は、主燃料層よりも薄く形成されていることが好ましい。さらに、点火用燃料層は、主燃料層よりも大きい中心部からの距離で配置されていることが好ましい。これらの点火用燃料層の構成条件は、エネルギー線の照射時に点火用燃料層を中心部へと高速に加速する上で有効である。
核融合点火方法は、加速ステップにおいて、点火用燃料層の速度が主燃料層の圧縮される速度よりも速くなるように点火用燃料層の加速を行うことが好ましい。このように、点火用燃料層を高速に加速することにより、点火用燃料層の運動エネルギーを熱エネルギーに変換することによる核融合反応の点火を好適に実現することができる。
また、加速ステップにおいて、加速用のエネルギー線としてレーザ光を用いることが好ましい。これにより、点火用燃料層を中心部へと充分な速度で加速することができる。
本発明による核融合ターゲット及び核融合点火方法によれば、圧縮された主燃料層に対して高速に加速された点火用燃料層を衝突させることにより、核融合反応を高効率で確実に点火することが可能となる。
以下、図面とともに本発明による核融合ターゲット及び核融合点火方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
図1は、本発明による核融合ターゲットの一実施形態の構成を示す断面図である。この核融合ターゲット1は、核融合燃料に対してエネルギー線を照射することによって核融合反応を点火させる慣性核融合に用いられるターゲットである。以下においては、主にエネルギー線としてレーザ光を用いたレーザ核融合を例として説明する。また、ここでは、核融合反応としてD(重水素)−T(三重水素)反応を、また、対応する核融合燃料としてDT燃料を想定しているが、以下のターゲット構造及び点火方法は、他の核融合反応及び燃料に対しても同様に適用可能である。
核融合ターゲット1は、核融合燃料が配置される燃料部として、主燃料部10と、点火用燃料部20との2つの燃料部を備え、軸Axを中心軸として対称に構成されている。また、ターゲット1の中心部Cは、本ターゲット1にレーザ光を照射して核融合反応を点火させる際に、その点火部となる領域である。
主燃料部10は、内側の主燃料層11と、外側の第1アブレータ層12とを有する。主燃料層11は、DT燃料層(核融合燃料層)であり、中心部Cからみて所定の領域(第1領域、図1においては下方及び側方の領域)を囲むように設けられている。また、この主燃料層11は、図1に示すように、所定の半径(第1の径)R1を有する球面形状に設けられている。第1アブレータ層12は、レーザ光の照射時に主燃料層11を中心部Cへと圧縮するために用いられるものであり、主燃料層11の外周上に設けられている。
点火用燃料部20は、内側の点火用燃料層21と、外側の第2アブレータ層22とを有する。点火用燃料層21は、好ましくは主燃料層11よりも薄く形成されたDT燃料層であり、中心部Cからみて主燃料層11の第1領域を除く領域(第2領域、図1においては上方の領域)を囲むように設けられている。また、この点火用燃料層21は、図1に示すように、第1の径R1よりも大きい所定の半径(第2の径)R2の球面形状に設けられている。第2アブレータ層22は、レーザ光の照射時に点火用燃料層21を中心部Cへと加速するために用いられるものであり、点火用燃料層21の外周上に設けられている。
これらの主燃料部10及び点火用燃料部20において、DT燃料層11、21は、それぞれ氷の状態での重水素(D)及び三重水素(T)の混合燃料層のシェルであり、その外周上にレーザアブレーションのためのアブレータ層12、22が被膜された構造となっている。アブレータ層12、22としては、好ましくはポリスチレンなどのプラスチックシェルが用いられる。
主燃料部10と点火用燃料部20とは、コーン部材30によって互いに隔てられて配置されている。コーン部材30は、レーザ光の照射時に点火用燃料層21をターゲット1の中心部Cへと誘導するための誘導部材である。また、このコーン部材30は、中心部Cに向かって開放された開口部31を有するとともに、開口部31から点火用燃料部20への開き角度を所定の開き角度θとして中空円錐状に形成されている。点火用燃料部20は、このコーン部材30の内部に収容され、レーザ光の照射時に加速された点火用燃料層21が開口部31を経て中心部Cへと誘導されるようになっている。
コーン部材30は、主燃料層11の圧縮及び点火用燃料層21の加速等による衝撃に対して充分な強度を有することが好ましく、その材質としては、金やアルミニウム等の比較的重い金属(中〜重金属)を用いることが好ましい。また、燃料部10、20によって囲まれたターゲット1の内部空間にはDTガスが存在しているが、コーン部材30に開口部31が設けられているため、主燃料部10側の空間と点火用燃料部20側の空間とでDTガスの圧力は等圧に保たれている。
次に、上記構成の核融合ターゲット1を用いた本発明による核融合点火方法について説明する。図2は、図1に示した核融合ターゲットを用いた核融合点火方法について示す図である。ここで、図2(a)は、燃料部にレーザ光を照射することによる燃料層の圧縮、加速について示す模式図であり、図2(b)は、主燃料層及び点火用燃料層の半径の時間変化を示すグラフである。
図2(a)においては、レーザ光の照射前の燃料層11、21等を破線で示し、レーザ光の照射後で中心部Cへと圧縮、加速された燃料11a、21aを実線で示している。一方、図2(b)においては、グラフA1は主燃料層11(主燃料11a)の半径の時間変化を示し、グラフB1は点火用燃料層21(点火用燃料21a)の半径の時間変化を示している。また、図2(b)における破線のグラフA2、B2は、ターゲット1の内部空間に存在するDTガスにおいて発生する衝撃波の進行について示している。
図1の核融合ターゲット1を用いた核融合点火方法においては、主燃料部10及び点火用燃料部20のそれぞれに対してレーザ光を照射する。そして、それによるロケット反作用を利用したアブレーティブ加速方式で主燃料層11及び点火用燃料層21のDT燃料を中心部Cへ向けて圧縮、加速させることによって、中心部Cを点火部として核融合反応を点火する。燃料部10、20に対して照射されるレーザ光としては、好ましくはnsec(ナノ秒)オーダのパルスレーザ光が用いられる。
具体的には、主燃料部10に対して圧縮用のレーザ光(圧縮用のエネルギー線)15が照射されると、第1アブレータ層12が加熱されて外側へと急激に膨張する。このとき、第1アブレータ層12の膨張の反作用で、主燃料層11のDT燃料がターゲット1の内側へ向けて圧縮され、中心部Cにおいて圧縮された主燃料11aとなる(圧縮ステップ)。
一方、点火用燃料部20に対して加速用のレーザ光(加速用のエネルギー線)25が照射されると、同様に、第2アブレータ層22の膨張の反作用で、点火用燃料層21のDT燃料がコーン部材30によって中心部Cへと誘導されつつ加速される(加速ステップ)。特に、図1及び図2(a)に示した構成では、点火用燃料層21が、主燃料層11よりも薄く、かつ大きい径(R2>R1)で形成されている。このため、図2(b)のグラフB1に示すように、点火用燃料層21は主燃料層11の圧縮される速度よりも早い速度で加速される。
高速に加速された点火用燃料層21は、コーン部材30の開口部31を経て点火用燃料による点火スポット21aとなって、中心部Cへと圧縮された主燃料11aに衝突する。これにより、加速された点火用DT燃料の運動エネルギーが例えば数10psec(ピコ秒)程度の極めて短時間の間に熱エネルギーに直接変換され、中心部Cにおいて核融合反応が点火される(点火ステップ)。
上記実施形態による核融合ターゲット及び核融合点火方法の効果について説明する。
図1及び図2に示した核融合ターゲット1及びそれを用いた核融合点火方法では、DT燃料からなる主燃料層11に対し、同じくDT燃料からなる点火用燃料層21を別に設けている。そして、開口部31を設けたコーン部材30を用い、ターゲット1の中心部Cに主燃料層11が圧縮されて生成される主燃料11aに対して、点火用燃料層21が高速に加速された点火スポット21aを衝突させることによって核融合反応を点火させている。この点火方式は、従来の高速点火方式などとは全く異なり、主燃料に衝突していく点火用燃料自体を高温プラズマに転じせしめようというものである。このようなターゲット構造及び点火方法によれば、核融合反応を高効率で確実に点火することが可能となる。
ここで、図3は、従来の(a)中心点火方式、及び(b)高速点火方式による核融合点火方法について示す図である。
中心点火方式では、図3(a)に示すように、DT燃料層61及びアブレータ層62から構成された球状ターゲット6が用いられる。このターゲット6に対してレーザ光65を照射することによって、球状の燃料層61を球対称に圧縮する。そして、その最終段階で中心部にできた比較的低密度の高温プラズマを周囲の低温高密度のプラズマが圧縮することによって、中心部において点火用のホットスポットを生成する。
この点火方式を実現するためには、固体密度の3000〜4000倍程度の高い圧縮密度が必要とされ、結果として、高い爆縮一様性とレーザ光の照射一様性が要求されることとなる。また、核融合反応の点火に必要なレーザ光エネルギーは少なくとも1.2MJ、高いエネルギー利得を得るためには5〜10MJが必要である。また、核融合反応が点火されるだけの充分な温度と厚みを持ったホットスポットが生成されなければならず、爆縮の一様性が悪ければ点火さえ実現できない。
一方、高速点火方式では、図3(b)に示すように、DT燃料層71、アブレータ層72、及びコーン80から構成されたターゲット7が用いられる。このターゲット7は、コーン80に開口部が設けられておらず、また、コーン80の内部が単に中空になっている点で、図1に示したターゲット1とは異なる構成となっている。
この点火方式は、ペタワットレーザと呼ばれる超高強度の短パルスレーザを用い、爆縮の一様性がある程度悪くても外部から強制的に急加熱して点火部を生成するものである。ペタワットレーザは、従来の核融合実験に用いられてきたレーザに比べ、パルス幅が1/100〜1/1000となる1〜10psec程度、ピークパワーが100倍近い1PW程度のレーザ光を出力するレーザ光源である。
この方式では、ターゲット7の燃料部に対してレーザ光75を照射することによって、燃料層71を中心部へと圧縮する。さらに、コーン80側からペタワットレーザ光85を照射し、コーン80の先端部において高エネルギー電子を生成する。この高エネルギー電子がコーン80の金の薄膜を透過、輸送され、最終的に高密度に圧縮された燃料を加熱することによって、ホットスポットが生成される。しかしながら、この高エネルギー電子の輸送による点火方式には、依然として解明されていない物理が多く、必要なエネルギーを含めて充分に理解されていない。
これに対して、図1及び図2に示した核融合ターゲット及び核融合点火方法では、中心部Cに圧縮された主燃料層11に対して点火用燃料層21を衝突させ、その運動エネルギーを熱エネルギーに直接変換することにより、加速された点火用燃料層21自体を点火用のホットスポットとして利用するものである。このような点火方式では、核融合反応の点火の物理現象を流体力学的要素のみで記述することが可能である。また、このような流体力学的知識に関しては、現在までに積み重ねられた実験、理論、シミュレーションによって充分なデータベースが構築されている。したがって、エネルギー結合効率の評価、核融合ターゲットの具体的な構造の設計、高効率が得られるエネルギー線の照射条件の設定などが高速点火方式などに比べて容易かつ精度良く行うことが可能である。例えば、レーザ光の吸収から最終的なプラズマの熱エネルギーへのエネルギー結合効率は、10%程度の効率が充分に期待される。
また、従来の高速点火方式では、燃料がほぼ均等に一定の圧縮密度を持ち、その一部を1〜10psecという極めて短時間のうちに急加熱するものであるが、ペタワットレーザ光のエネルギーをある程度の範囲内に抑える必要から、燃料はある程度高密度に圧縮される必要がある。これに対して、上記したターゲット構造及び点火方法では、圧縮された主燃料部と点火用のホットスポット部とは、主燃料層11と点火用燃料層21とによって分離して圧縮、生成される。このため、燃料の高密度圧縮の要請、換言すれば爆縮の一様性に対する要請が緩和されることとなる。これは、レーザ核融合の実現に向けて極めて有効である。また、極めて高価なペタワットレーザ光源を用いる必要がないことから、装置全体を低コスト化することができ、開発研究費も抑えることが可能などの利点もある。
なお、図1に示した核融合ターゲット1においては、主燃料層11と点火用燃料層21とを、それぞれ半径R1、R2の球面形状(球面形状の一部分)に設けている。これにより、燃料層11、21の中心部Cへの圧縮、加速を充分な一様性で好適に実現することができる。
また、点火用燃料層21は、主燃料層11よりも中心部Cからの距離が大きい位置に配置されていることが好ましく、上記のように球面形状の場合には、その径がR2>R1に設定されていることが好ましい。また、点火用燃料層21の厚さについては、主燃料層11よりも薄く設定することが好ましい。これらの点火用燃料層21の構成条件は、点火用のホットスポット部を形成するための点火用燃料層21を中心部Cへと高速に加速する上で有効である。
また、ターゲット1を用いた核融合点火方法においては、図2(b)に半径の時間変化のグラフA1、B1によって示すように、点火用燃料層21の衝突速度が主燃料層11の圧縮速度よりも速くなるように点火用燃料層21の加速を行うことが好ましい。これにより、点火用燃料層21の運動エネルギーを熱エネルギーに変換することによる核融合反応の点火を好適に実現することができる。点火に必要な典型的な速度としては、例えば、主燃料層11の圧縮速度(爆縮速度)が3×10cm/sec程度、点火用燃料層21の衝突速度が主燃料層11の約3倍速く1×10cm/sec程度である。
また、上記した核融合点火方法では、このような燃料層11、21の速度の設定に加えて、燃料層11、21の圧縮、加速、及び中心部Cにおける衝突のタイミングを精度良く合わせることが重要である。これらの点火条件は、ターゲット1における燃料層11、21の中心部Cからみた配置、厚さ、及び燃料部10、20に照射される圧縮用、加速用のレーザ光15、25の照射条件等によって調整することができる。レーザ光15、25の照射条件については、燃料層11、21の衝突による核融合反応の点火が効率良く実現されるように、その照射タイミングやパルス波形等を個々に最適化することが好ましい。
また、図1に示したコーン部材30のような点火用燃料層21を中心部Cへと誘導するための誘導部材の開き角度θについては、燃料部10、20の具体的な構成やレーザ光の照射条件などを考慮して適宜設定すれば良いが、一般には、その開き角度θを90°以上180°以下とすることが好ましい。これにより、点火用燃料層21の誘導及び主燃料層11への衝突を好適に実現することができる。なお、コーン部材30の厚さは例えば10μm程度、その開口部31は例えば半径100〜150μm程度である。
燃料部10、20に照射されるエネルギー線については、上記実施形態においてはレーザ光としたが、一般には例えばレーザ光、X線、荷電粒子線などを用いることができる。また、ターゲット1に対するエネルギー線の照射方法については、直接照射法及び間接照射法のいずれを用いても良い。
図4は、ターゲットに対するエネルギー線の照射方法について模式的に示す図であり、図4(a)は直接照射法を、図4(b)は間接照射法を示している。図4(a)に示す照射法では、主燃料部10、点火用燃料部20に対し、エネルギー線であるレーザ光15、25を直接照射している。
一方、図4(b)では、点火用燃料部20に対しレーザ光25を直接照射している点では図4(a)と同様であるが、主燃料部10に対しては、ターゲット1の外側に取り付けられた外殻部40にレーザ光16を照射し、それによって発生したX線17をエネルギー線として主燃料部10に照射する間接照射法を用いている。ただし、点火用燃料部20に対して照射する加速用のエネルギー線については、図4(a)及び(b)に示すレーザ光25のようにレーザ光を用いることが好ましい。これにより、中心部Cに誘導されて点火用のホットスポット部となる点火用燃料層21を充分な速度で加速することができる。
ここで、図1に示した核融合ターゲット1の具体的な構成例を挙げておく。核融合燃料層としては、初期密度が0.2g/cmのDT燃料を用い、また、アブレータ層としては、初期密度が1.0g/cmのプラスチックを用いる。主燃料部10については、燃料層11を質量0.76mg、内半径1.5mm、厚さ0.2mm、アブレータ層12を質量1.56mg、内半径1.7mm、厚さ0.07mmとする。点火用燃料部20については、燃料層21を質量0.28mg、内半径2.0mm、厚さ0.065mm、アブレータ層22を質量1.1mg、内半径2.065mm、厚さ0.05mmとする。
また、主燃料部10に対して照射する圧縮用のレーザ光を波長0.35μm、パルス幅1.4nsec、照射強度5×1014W/cm、エネルギー150kJとする。また、点火用燃料部20に対して照射する加速用のレーザ光を波長0.35μm、パルス幅1nsec、照射強度7×1014W/cm、エネルギー150kJとする。また、コーン部材30の開き角度θを160°とする。これらの条件において、各物理量に対する期待値は、主燃料層11の圧縮密度が約200g/cm、点火用燃料層21の圧縮密度が約100g/cm、エネルギー利得が約100である。
図5は、図1に示した核融合ターゲットを用いた核融合によるエネルギー利得を示すグラフである。ここでは、主燃料層11の圧縮密度ρc、及び点火用燃料層21の圧縮密度ρiの値を変えて、9つのグラフC1〜C3、D1〜D3、E1〜E3を示している。また、このグラフにおいて、横軸は主燃料部10及び点火用燃料部20に照射されるレーザ光の合計のドライバエネルギー(kJ)を示し、縦軸は核融合で得られるエネルギー利得を示している。
具体的には、主燃料層11の圧縮密度ρcについては、グラフC1、D1、E1はρc=100g/cm、グラフC2、D2、E2はρc=200g/cm、グラフC3、D3、E3はρc=300g/cmでのエネルギー利得を示している。また、点火用燃料層21の圧縮密度ρiについては、グラフC1〜C3はρi=100g/cm、グラフD1〜D3はρi=200g/cm、グラフE1〜E3はρi=300g/cmでのエネルギー利得を示している。また、ここでは、主燃料層11の圧縮状態を示すパラメータαcを3、主燃料層11でのエネルギー結合効率をηc=0.1、点火用燃料層21でのエネルギー結合効率をηi=0.1としている。
これらのグラフに示すように、上記したターゲット構造及び点火方法によれば、従来の中心点火方式、高速点火方式のいずれと比べても、低いドライバエネルギーで高いエネルギー利得が得られることがわかる。例えば、上記したターゲット構造及び点火方法では、核融合反応の点火には50〜100kJ、高利得を得るためには100〜200kJ程度のエネルギーが必要と見積もられる。これは、中心点火方式と比べると1桁以上低いエネルギーである。
なお、図5において、グラフC1〜C3、D1〜D3、E1〜E3のそれぞれを比較すると、点火用燃料層21の圧縮密度ρiについては、ρiが高いときにエネルギー利得が大きくなっている。また、主燃料層11の圧縮密度ρcについては、ρcが低いときの方がややエネルギー利得が大きくなっている。
本発明による核融合ターゲット及び核融合点火方法は、上記した実施形態及び構成例にう限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記した構成では、点火用燃料層は主燃料層の第1領域を除く第2領域を囲むように設けられているが、一般には、この点火用燃料層は、第2領域に対して所定領域に設けられていれば良い。また、主燃料層及び点火用燃料層に用いられる核融合燃料としては、利用しようとする核融合反応に応じてDT燃料以外の燃料を用いても良い。
本発明は、燃料での核融合反応を効率良く点火することが可能な核融合ターゲット、及び核融合点火方法として利用可能である。
核融合ターゲットの一実施形態の構成を示す断面図である。 図1に示した核融合ターゲットを用いた核融合点火方法について示す図である。 従来の(a)中心点火方式、及び(b)高速点火方式による核融合点火方法について示す図である。 ターゲットに対するエネルギー線の照射方法について示す図である。 図1に示した核融合ターゲットを用いた核融合によるエネルギー利得を示すグラフである。
符号の説明
1…核融合ターゲット、10…主燃料部、11…主燃料層、12…第1アブレータ層、15…圧縮用のレーザ光、20…点火用燃料部、21…点火用燃料層、22…第2アブレータ層、25…加速用のレーザ光、30…コーン部材(誘導部材)、31…開口部、40…外殻部、Ax…中心軸、C…中心部。

Claims (8)

  1. 核融合燃料に対してエネルギー線を照射することによって核融合反応を点火させる慣性核融合に用いられる核融合ターゲットであって、
    点火部となる中心部からみて第1領域を囲むように設けられた主燃料層、及び前記主燃料層の外周上に設けられた第1アブレータ層を有する主燃料部と、
    前記中心部からみて前記第1領域を除く第2領域に対して設けられた点火用燃料層、及び前記点火用燃料層の外周上に設けられた第2アブレータ層を有する点火用燃料部と、
    前記主燃料部及び前記点火用燃料部を隔てるとともに前記中心部に向かって開放された開口部を有し、前記点火用燃料層をエネルギー線の照射時に前記開口部を経て前記中心部へと誘導するための誘導部材と
    を備えることを特徴とする核融合ターゲット。
  2. 前記主燃料層は、前記中心部からみて第1の径の球面形状に設けられ、前記点火用燃料層は、前記中心部からみて第2の径の球面形状に設けられていることを特徴とする請求項1記載の核融合ターゲット。
  3. 前記誘導部材は、前記開口部から前記点火用燃料部への開き角度を90°以上180°以下として形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の核融合ターゲット。
  4. 前記点火用燃料層は、前記主燃料層よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の核融合ターゲット。
  5. 前記点火用燃料層は、前記主燃料層よりも大きい前記中心部からの距離で配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の核融合ターゲット。
  6. 核融合燃料に対してエネルギー線を照射することによって核融合反応を点火させる慣性核融合における核融合点火方法であって、
    点火部となる中心部からみて第1領域を囲むように設けられた主燃料層を有する主燃料部と、前記中心部からみて前記第1領域を除く第2領域に対して設けられた点火用燃料層を有する点火用燃料部と、前記主燃料部及び前記点火用燃料部を隔てるとともに前記中心部に向かって開放された開口部を有する誘導部材とを備える核融合ターゲットを用い、
    前記主燃料部に対して圧縮用のエネルギー線を照射し、前記主燃料層を前記中心部へと圧縮させる圧縮ステップと、
    前記点火用燃料部に対して加速用のエネルギー線を照射し、前記点火用燃料層を前記誘導部材によって前記開口部を経て前記中心部へと誘導しつつ加速させる加速ステップと、
    前記中心部へと圧縮された前記主燃料層に加速された前記点火用燃料層を衝突させることによって核融合反応を点火させる点火ステップと
    を備えることを特徴とする核融合点火方法。
  7. 前記加速ステップにおいて、前記点火用燃料層の速度が前記主燃料層の圧縮される速度よりも速くなるように前記点火用燃料層の加速を行うことを特徴とする請求項6記載の核融合点火方法。
  8. 前記加速ステップにおいて、前記加速用のエネルギー線としてレーザ光を用いることを特徴とする請求項6または7記載の核融合点火方法。
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