JP4075052B2 - 重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、硬質被覆層が高強度を有し、かつすぐれた高温硬さおよび耐熱性も具備し、したがって各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、特に重切削条件で行なった場合に、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具(以下、被覆超硬工具という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、被覆超硬工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
【0003】
また、被覆超硬工具として、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットからなる基体(以下、これらを総称して超硬基体と云う)の表面に、
組成式:(Ti1-AAlA)CB1-B
(ただし、原子比で、A:0.30〜0.50、B:0.50〜0.70)、
を満足するTiとAlの複合炭窒化物[以下、(Ti,Al)CNで示す]層からなる硬質被覆層を、例えば2〜20μmの平均層厚で蒸着してなる被覆超硬工具が提案され、各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削加工に用いた場合にすぐれた切削性能を発揮することも知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
さらに、上記の被覆超硬工具が、例えば図1に概略縦断面図で示される通り、中央部にステンレス鋼製の反応ガス吹き出し管が立設され、前記反応ガス吹き出し管には、図2(a)に概略斜視図で、同(b)に概略平面図で例示される黒鉛製の超硬基体支持パレットが串刺し積層嵌着され、かつこれらがステンレス鋼製のカバーを介してヒーターで加熱される構造を有する化学蒸着装置を用い、超硬基体を前記超硬基体支持パレットの底面に形成された多数の反応ガス通過穴位置に図示される通りに載置した状態で前記化学蒸着装置に装入し、
反応ガス組成:容量%で、TiCl4:0.04〜2.5%、AlCl3:0.4〜6%、CH4:2〜10%、N2:0.5〜20%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1000〜1050℃、
反応雰囲気圧力:10〜20kPa、
の条件で(Ti,Al)CNからなる硬質被覆層を形成することにより製造されることも知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−56565号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求も強く、これに伴い、切削加工は重切削化の傾向にあるが、上記の従来被覆超硬工具においては、これを通常の切削加工条件で用いた場合には問題はないが、特に切削加工を高切り込みや高送りなどの重切削条件で行なった場合には、硬質被覆層の強度不足が原因で、硬質被覆層にチッピング(微少欠け)が発生し易く、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に重切削加工条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆超硬工具を開発すべく、上記の従来被覆超硬工具を構成する硬質被覆層に着目し、研究を行った結果、
(a)上記の図1,2に示される化学蒸着図装置を用いて形成された従来被覆超硬工具を構成する(Ti,Al)CN層は、厚さ全体に亘って実質的に均一な組成を有し、したがって均質な強度、さらに高温硬さおよび耐熱性を有するが、(Ti,Al)CN層を形成するに際して、例えば図3に反応ガス組成自動制御システムが概略チャート図で示される通り、反応ガス組成および流量中央制御装置に、前記(Ti,Al)CN層からなる硬質被覆層に層厚方向にそってTiおよび窒素の最高含有点とTiおよび窒素の最低含有点とを所定間隔をおいて交互に繰り返し形成させる目的で、前記Tiおよび窒素の最高含有点並びにTiおよび窒素の最低含有点に対応した反応ガス組成、並びに前記両点間のTiと窒素の連続変化に対応した反応ガス組成(この場合Tiおよび窒素の連続変化に対応してAlおよび炭素の含有量も変化することは当然である)、さらに前記両点間の間隔および硬質被覆層の全体層厚を、過去の実績データに基づいてインプットし、この反応ガス組成および流量中央制御装置からの制御信号にしたがって、原料ガスボンベからのH2ガス、CH4ガス、N2ガス、およびHClガスの流量、さらにAlCl3ガスおよびTiCl4ガスの流量をそれぞれの原料流量自動制御装置にて制御しながら、化学蒸着装置の反応ガス吹き出し管に導入すると、層厚方向にそって、Tiおよび窒素の最高含有点とTiおよび窒素の最低含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Tiおよび窒素の最高含有点から前記Tiおよび窒素の最低含有点、前記Tiおよび窒素の最低含有点から前記Tiおよび窒素の最高含有点へTiと窒素、並びにAlと炭素の含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造をもつたTiとAlの複合炭窒化物[以下、(Ti,Al)CNで示す]層からなる硬質被覆層が形成されるようになること。
【0008】
(b)上記(a)の繰り返し連続変化成分濃度分布構造の(Ti,Al)CN層において、
上記Tiおよび窒素の最高含有点が、
組成式:(Ti1-XAlX)CY1-Y
(ただし、原子比で、X:0.02〜0.20、Y:0.02〜0.20)、
上記Tiおよび窒素の最低含有点が、
組成式:(Ti1-AAlA)CB1-B
(ただし、原子比で、A:0.30〜0.50、B:0.50〜0.70)、
を満足し、かつ隣り合う上記Tiおよび窒素の最高含有点と上記Tiおよび窒素の最低含有点の厚さ方向の間隔を0.01〜0.2μmとすると、
上記Tiおよび窒素の最高含有点部分では、相対的に含有割合の高いTiと窒素成分による一段の強度向上が図られ、一方上記Tiおよび窒素の最低含有点部分では、上記の従来(Ti,Al)CN層のもつ高温硬さと耐熱性に相当する高温硬さと耐熱性が確保され、かつこれらTiおよび窒素の最高含有点と上記Tiおよび窒素の最低含有点の間隔をきわめて小さくしたことから、層全体の特性として前記従来(Ti,Al)CN層に比して、高温硬さと耐熱性は同等で、強度が一段と向上したものになり、したがって、硬質被覆層がかかる構成の(Ti,Al)CN層からなる被覆超硬工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、特に高い機械的衝撃を伴なう重切削条件で行なった場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになること。以上(a)および(b)に示される研究結果を得たのである。
【0009】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、超硬基体の表面に、(Ti,Al)CN層からなる硬質被覆層を2〜20μmの全体平均層厚で蒸着してなる被覆超硬工具において、
上記硬質被覆層が、層厚方向にそって、Tiおよび窒素の最高含有点とTiおよび窒素の最低含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Tiおよび窒素の最高含有点から前記Tiおよび窒素の最低含有点、前記Tiおよび窒素の最低含有点から前記Tiおよび窒素の最高含有点へTiと窒素の含有量、並びにAlと炭素の含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、
さらに、上記Tiおよび窒素の最高含有点が、
組成式:(Ti1-XAlX)CY1-Y
(ただし、原子比で、X:0.02〜0.20、Y:0.02〜0.20)、
上記Tiおよび窒素の最低含有点が、
組成式:(Ti1-AAlA)CB1-B
(ただし、原子比で、A:0.30〜0.50、B:0.50〜0.70)、
を満足し、かつ隣り合う上記Tiおよび窒素の最高含有点と上記Tiおよび窒素の最低含有点の間隔が、0.01〜0.2μmである、
重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆超硬工具に特徴を有するものである。
【0010】
つぎに、この発明の被覆超硬工具において、硬質被覆層の構成を上記の通りに限定した理由を説明する。
(a)Tiおよび窒素の最高含有点
上記の通り硬質被覆層である(Ti,Al)CN層の厚さ方向に沿ってTiおよび窒素成分の含有割合が相対的に高い部分を繰り返し形成して層自体の強度を一段と向上させ、一方上記の従来(Ti,Al)CN層と同等の組成を有するTiおよび窒素の最低含有点部分を繰り返し形成して層自体に高温硬さと耐熱性を確保するものであり、したがって、この結果硬質被覆層は高強度を具備することになるので、重切削での耐チッピング性が前記従来(Ti,Al)CN層に比して著しく向上するようになるが、この場合AlのTiとの相対含有割合を示すX値が、原子比で(以下同じ)0.02未満であったり、また同じく炭素の窒素との相対含有割合を示すY値が、0.02未満であったりすると、Alおよび炭素不足が原因でTiおよび窒素の最高含有点に所定の高温硬さと耐熱性を確保することができず、これが原因で相対的にすぐれた高温硬さと耐熱性を有するTiと窒素の最低含有点が隣接して存在しても摩耗が促進するようになり、一方同X値が0.20を越えたり、また同Y値が同じく0.20を越えたりすると、強度が急激に低下し、重切削条件ではTiおよび窒素の最高含有点が破壊の起点となり、切刃部にチッピングが発生し易くなるのが避けられないことから、X値を0.02〜0.20、Y値を0.02〜0.20と定めた。
【0011】
(b)Tiおよび窒素の最低含有点
上記の通りTiおよび窒素の最高含有点は一段と高い強度を有するが、反面相対的に高温硬さと耐熱性が不十分であるため、このTiおよび窒素の最高含有点の高温硬さと耐熱性不足を補う目的で、上記の従来(Ti,Al)CN層のもつ高温硬さと耐熱性と同等の相対的にすぐれた高温硬さと耐熱性を有するTiおよび窒素の最低含有点を厚さ方向に交互に介在させるものである。しかし、AlのTiとの相対含有割合を示すA値が0.30未満になったり、炭素の窒素との相対含有割合を示すB値が、0.50未満であったりすると、Tiおよび窒素の最低含有点に所定のすぐれた高温硬さと耐熱性を確保することができず、これが摩耗進行促進の原因とり、一方同A値が0.50を越えたり、B値が0.70を越えたりすると、高強度を有するTiと窒素の最高含有点が隣接して存在しても層自体の強度低下が避けられず、切刃部にチッピングが発生し易くることから、A値を0.30〜0.50、B値を0.50〜0.70と定めた。
【0012】
(c)Tiおよび窒素の最高含有点とTiおよび窒素の最低含有点間の間隔
その間隔が0.01μm未満ではそれぞれの点を上記の組成で明確に形成することが困難であり、この結果層に所定の高温硬さと耐熱性を確保した上で、一段と高い強度を確保することができなくなり、またその間隔が0.2μmを越えるとそれぞれの点がもつ欠点、すなわちTiおよび窒素の最高含有点であれば高温硬さと耐熱性不足、Tiおよび窒素の最低含有点であれば強度不足が層内に局部的に現れ、これが原因でチッピングが発生し易くなったり、摩耗進行が促進されるようになることから、その間隔を0.01〜0.2μmと定めた。
【0013】
(d)硬質被覆層の全体平均層厚
その層厚が2μm未満では、所望の耐摩耗性を確保することができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を2〜20μmと定めた。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の被覆超硬工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、平均粒径:6.5μmを有する粗粒WC粉末、同3.5μmを有する中粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr32粉末、同1.0μmの(Ti,W)CN(質量比で、TiC/TiN/WC=24/20/56)粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間混合し、減圧乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を、表面部にCo富化層を形成するものについては13.3Pa、そして全体に亘って均一組織を有するものについては6.7Paの真空中、温度:1430℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.08のホーニング加工を施してISO規格・CNMG160608のチップ形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体A1〜A10を形成した。なお、超硬基体A−1、A−3、A−4、A−6、A−7、およびA−9の表面部にCo富化層の形成が見られた。
【0015】
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.10のホーニング加工を施してISO規格・CNMG160612のチップ形状をもったTiCN系サーメット製の超硬基体B1〜B6を形成した。
【0016】
つぎに、上記の超硬基体A1〜A10およびB1〜B6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した後、図1に示される化学蒸着装置内に、第2図に示される超硬基体支持パレットの位置決め穴に載置した状態で装入し、まず、装置内をヒーターで900℃に加熱したところで、TiCl4:4.2%、N2:30%、H2:残りからなる組成を有する反応ガスを反応ガス吹き出し管を通して導入して、装置内の反応雰囲気圧力を15kPaとし、この状態で30分間保持して前記超硬基体表面に、下地密着層として0.3μmの平均層厚をもった窒化チタン(TiN)層を形成し、ついで、同じく装置内の雰囲気温度をヒーターにて加熱して1020℃とした後、図3に示される反応ガス組成自動制御システムの反応ガス組成および流量中央制御装置に、過去の実績データにしたがって、表3に示されるTiおよび窒素の最高含有点:Ti/N最高点1〜10の目標組成、並びに表4に示されるTiおよび窒素の最低含有点:Ti/N最低点1〜10の目標組成に対応する反応ガス組成、前記Tiおよび窒素の最高含有点とTiおよび窒素の最低含有点間のTiと窒素およびAlと炭素の含有量の連続変化に対応する反応ガス組成、さらに表4,6に示される前記両点間の目標間隔および硬質被覆層の目標全体層厚をインプットし、この反応ガス組成および流量中央制御装置からの信号にしたがって作動するコントロールバルブ内蔵の原料ガス流量自動制御装置を通して、原料ガスであるH2ガス、N2ガス、CH4ガス、AlCl3ガス、およびTiCl4ガス(この場合、前記TiCl4ガスは図示の通り流量制御されたH2ガスをキャリアガスとしてTiCl4ガス気化器に送り、ここで液体から気化されたTiCl4と共に原料ガス流量自動制御装置に送られ、また前記AlCl3ガスは、AlCl3発生器で金属Alと流量制御されたHClガスを反応させることにより形成される)を、それぞれのガス流量を自動制御しながら、図1の化学蒸着装置の反応ガス吹き出し管から装置内に導入し(装置内の反応雰囲気圧力は常に7kPaに保持される)、もって前記超硬基体の表面に、層厚方向に沿って表3,4に示される目標組成のTiおよび窒素の最高含有点と、Tiおよび窒素の最低含有点とが交互に表5,5に示される目標間隔で繰り返し存在し、かつ前記Tiおよび窒素の最高含有点から前記Tiおよび窒素の最低含有点、前記Tiおよび窒素の最低含有点から前記Tiおよび窒素の最高含有点へTiと窒素の含有量、並びにAlと炭素の含有量がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、かつ同じく表5,6に示される目標全体層厚の硬質被覆層を蒸着することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
【0017】
また、比較の目的で、上記の超硬基体A1〜A10およびB1〜B6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した後、同じくそれぞれ図1,2に示される通常の化学蒸着装置に装入し、上記したTiN層形成条件と同じ条件で下地密着層として0.3μmの平均層厚を有するTiN層を形成し、ついで反応雰囲気温度を1020℃に加熱した後、それぞれ表4のTiおよび窒素の最低含有点:Ti/N最低点1〜10の目標組成と同じ組成の反応ガスを反応ガス吹き出し管から導入し、反応雰囲気圧力を7kPaに一定とした条件で、前記超硬基体A1〜A10およびB1〜B6のそれぞれの表面に、表7に示される目標全体層厚を有し、かつ層厚方向に沿って実質的に組成変化のない(Ti,Al)CN層からなる硬質被覆層を蒸着することにより、従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、従来被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
【0018】
つぎに、上記本発明被覆超硬チップ1〜16および従来被覆超硬チップ1〜16について、これを工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM440の丸棒、
切削速度:150m/min.、
切り込み:6mm、
送り:0.35mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(通常の切り込み量は3mm)での合金鋼の乾式連続高切り込み切削加工試験、
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:230m/min.、
切り込み:4mm、
送り:0.5mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(通常の送り量は0.3mm/rev.)での炭素鋼の乾式断続高送り切削加工試験、さらに、
被削材:JIS・FC300の丸棒、
切削速度:250m/min.、
切り込み:8mm、
送り:0.4mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(通常の切り込み量は3mm)での鋳鉄の乾式連続高切り込み切削加工試験を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表4〜7に示した。
【0019】
【表1】
Figure 0004075052
【0020】
【表2】
Figure 0004075052
【0021】
【表3】
Figure 0004075052
【0022】
【表4】
Figure 0004075052
【0023】
【表5】
Figure 0004075052
【0024】
【表6】
Figure 0004075052
【0025】
【表7】
Figure 0004075052
【0026】
この結果得られた本発明被覆超硬チップ1〜16および従来被覆超硬チップ1〜16を構成する硬質被覆層について、厚さ方向に沿ってTi、Al、窒素、および炭素の含有量をオージェ分光分析装置を用いて測定しところ、本発明被覆超硬チップ1〜16の硬質被覆層では、Tiおよび窒素の最高含有点と、Tiおよび窒素の最低含有点とがそれぞれ目標値と実質的に同じ組成および間隔で交互に繰り返し存在し、かつTiおよび窒素の最高含有点からTiおよび窒素の最低含有点、前記Tiおよび窒素の最低含有点からTiおよび窒素の最高含有点へTiと窒素の含有量、並びにAlと炭素の含有量がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有することも確認され、また、硬質被覆層の全体平均層厚も目標全体層厚と実質的に同じ値を示した。一方前記従来被覆超硬チップ1〜16の硬質被覆層では厚さ方向に沿って組成変化が見られず、かつ目標組成と実質的に同じ組成および目標全体層厚と実質的に同じ全体平均層厚を示すことが確認された。
【0027】
【発明の効果】
表3〜7に示される結果から、硬質被覆層が層厚方向に、相対的に一段と高い高温硬さと耐熱性を有するTiおよび窒素の最高含有点と上記の従来(Ti,Al)CN層のもつ高温硬さと耐熱性に相当する相対的に高い高温硬さと耐熱性を有するTiおよび窒素の最低含有点とが交互に所定間隔をおいて繰り返し存在し、かつ前記Tiおよび窒素の最高含有点から前記Tiおよび窒素の最低含有点、前記Tiおよび窒素の最低含有点から前記Tiおよび窒素の最高含有点へTiと窒素の含有量、並びにAlと炭素の含有量がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有する本発明被覆超硬チップ1〜16は、いずれも各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、高切り込みや高送りの重切削条件で行なった場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮するのに対して、硬質被覆層が層厚方向に沿って実質的に組成変化のない従来被覆超硬チップ1〜16においては、特に高強度が要求される重切削条件では強度不足が原因で切刃部にチッピングが発生し易くなり、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆超硬工具は、通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、重切削条件で行なった場合にも、すぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】被覆超硬工具を構成する硬質被覆層を形成するのに用いられている化学蒸着装置を例示する概略縦断面図である。
【図2】化学蒸着装置の構造部材である超硬基体支持パレットを示し、(a)が概略斜視図、(b)が概略平面図である。
【図3】この発明の被覆超硬工具を構成する硬質被覆層の形成に用いられる反応ガス組成自動制御システムの概略チャート図である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金基体または炭窒化チタン系サーメット基体の表面に、TiとAlの複合炭窒化物層からなる硬質被覆層を2〜20μmの全体平均層厚で蒸着してなる表面被覆超硬合金製切削工具において、
    上記硬質被覆層が、層厚方向にそって、Tiおよび窒素の最高含有点とTiおよび窒素の最低含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Tiおよび窒素の最高含有点から前記Tiおよび窒素の最低含有点、前記Tiおよび窒素の最低含有点から前記Tiおよび窒素の最高含有点へTiと窒素の含有量、並びにAlと炭素の含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、
    さらに、上記Tiおよび窒素の最高含有点が、
    組成式:(Ti1-XAlX)CY1-Y
    (ただし、原子比で、X:0.02〜0.20、Y:0.02〜0.20)、
    上記Tiおよび窒素の最低含有点が、
    組成式:(Ti1-AAlA)CB1-B
    (ただし、原子比で、A:0.30〜0.50、B:0.50〜0.70)、
    を満足し、かつ隣り合う上記Tiおよび窒素の最高含有点と上記Tiおよび窒素の最低含有点の間隔が、0.01〜0.2μmであること、
    を特徴とする重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具。
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