JP4046450B2 - 表面プラズモン共鳴センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光の波長または光の入射角度を変化させることにより生じる表面プラズモン共鳴現象を利用し、例えば、屈折率(または誘電率)変化を監視して液体を識別する液体識別センサあるいは抗原と反応する物質の濃度を測定すると共に物質を特定するバイオセンサ等に用いられる表面プラズモン共鳴センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生化学、分析化学等の分野において、極めて微量の物質の物性を測定し、物質を特定する技術開発がさかんに成されてきているが、その中でも表面プラズモン共鳴現象を利用して、屈折率あるいは誘電率等の物性を測定し、その結果、物質の濃度または物質を識別する表面プラズモン共鳴センサが注目されている。
従来、このような表面プラズモン共鳴センサには、プリズムを用いて表面プラズモン共鳴を得るようにしたプリズム型表面プラズモン共鳴センサおよび光ファイバを用いて表面プラズモン共鳴を得るようにした光ファイバ型表面プラズモン共鳴センサが提案されている。
【0003】
前者のものは、金などの金属薄膜を設けた面を有するプリズムに測定されるべき物質を配置し、このプリズムに全反射角以上の入射角度で光を入射させてプリズムへの表面プラズモン共鳴の損失が大きい入射角度から屈折率あるいは誘電率等を求めるものであるために、構造的にセンサ部の小型化が困難であると共に、その際の入射角を変化させるための光源および検出器の駆動機構が必要となってセンサ装置の大型化が避けられないという問題点がある。また、光源および検出器とプリズムとの光結合においては,センサの感度の低下を招かないためにも高精度の位置合わせが必要とされる問題点もある。
【0004】
これに対し、後者のものは、光ファイバの端部部分のクラッドを除去してガラスからなるコアを露出させ、この露出したコアに金などの金属薄膜を被覆すると共に、光ファイバの端部に銀などのミラーを反射面として設け、多重波長の光を、この光ファイバに入射させ、表面プラズモン共鳴の損失が起こる波長およびその時の減衰量を計測する方法であるために、その測定感度を上げるためにはかなり長い光ファイバ、例えば数センチメートルの長さの光ファイバが必要となり、この場合においてもセンサ部の小型化が困難という問題点があると共に、光ファイバに入射する光源および反射光を検出する受光装置、さらに入射波、反射波を分離するビームスプリッターで構成されなくてはならず、センサ装置の大型化を招くものとなる。
【0005】
その上、このタイプのセンサを作製する場合には、光ファイバの端部部分のクラッドを除去してガラスからなるコアを露出させ、この露出したコアに金などの金属薄膜を被覆するが、クラッドを除去してコアに金属薄膜を被覆する際、光ファイバを、その光軸中心に回転させて加工するため、きわめて高い回転精度をもって回転させなければ金属薄膜の厚さにむらが生じ、その結果、分析されるべき物質の屈折率あるいは誘電率等を求めるための共鳴損失ピークに対する波長測定に誤差が生じるので、加工が容易ではない。さらに、上記した光ファイバ型表面プラズモン共鳴センサにバイオセンサとしての機能を持たせるためにセンサ部の金属薄膜表面に有機物を付着させる場合には、光ファイバのセンサの円柱状の表面に有機物を付着させなければならず、有機物の膜厚の制御が困難であるという問題がある。
【0006】
また、表面プラズモン共鳴センサの小型化を図るという観点から光導波路型の表面プラズモン共鳴センサが提案されているが、これまでの光導波路型表面プラズモン共鳴センサでは、ガラスに不純物をイオン注入して形成したクラッドに、コアを埋め込み、コアに金のような金属薄膜を被覆してセンサ部を構成する埋め込みタイプの光導波路型表面プラズモン共鳴センサであり、このようなセンサは、ガラスという無機系材料のクラッド、コアからなる光導波路を作製する際、ガラスの処理温度等、製造上の面からも困難性を伴うと共に、ガラスに不純物をイオン注入する方法ではコア径の大きいマルチモードの光導波路を作製することが困難である。したがって、上記したような光導波路型表面プラズモン共鳴センサでは、小型化を図るために、ガラスで形成されたセンサ部と他の光学素子との接続を考慮した場合、例えばガラスで形成されたセンサ部の導波路部分と受発光素子との位置合わせが困難であり、この接続精度が良好でない場合には、接続部分に関わる光損失が増加し、S/N比が悪くなるなどセンサ感度が低下するという問題も生じる。
【0007】
また、上記したガラスに不純物をイオン注入する方法では、イオン注入をして屈折率を上げる部分と、イオン注入をせずに屈折率を変化させない部分との境界面の屈折率がなだらかに変化してしまうので、例えば入射光を全反射させるために光導波路のコア端面を斜めにカットしてミラー構造にすることは困難であったり、またコアとクラッド間の屈折率差が極端に小さいため、臨界角が大きくなってしまい、ミラー構造を構成することができなかった。このような場合にはコア端面に銀等を蒸着してミラー構造を形成しなければならないという問題点がある。
【0008】
さらに、このようにして形成された上記光導波路型の表面プラズモン共鳴センサは、上記したように金属薄膜を被覆したセンサ部が単一の直線状部分からなっているので、このセンサ部の表面積の増大に応じて感度が向上するという上記センサの特性に鑑みて、感度の向上を図ろうとすればセンサ部の長大化が避けられず、換言すればセンサの大型化が避けられず、これと反対にセンサの小型化、すなわちセンサのコンパクト化を図ろうとしてセンサ部の短小化を行うと、センサ感度の向上が期待できなくなるという問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、コンパクトで、良好な感度を有すると共に、他の光学素子との光接続が容易にして、製造も容易な表面プラズモン共鳴センサを提供することである。
本発明の他の目的は、コンパクトで、かつ大幅な感度向上を図ることができると共に、他の光学素子との光接続が容易にして、製造も容易な表面プラズモン共鳴センサを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板上にクラッド層およびコア層を順次、積層して形成した光導波路を有し、さらにこの光導波路のコア層の表面に金属薄膜を設けて形成したセンサ部を備える表面プラズモン共鳴センサであって、前記光導波路のコア層およびクラッド層が樹脂で形成され、かつ前記センサ部を光学的な一平面上に複数個、配設し、これら複数個の光導波路を、光が光学的に連続して通過し、実質的にセンサ部の長さを長くした表面プラズモン共鳴センサである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の表面プラズモン共鳴センサは、基板上に樹脂からなるクラッド層およびコア層を順次、積層して光導波路を形成し、さらにこの光導波路のコア層の表面に金のような金属薄膜を設けて形成したセンサ部を備える表面プラズモン共鳴センサの、センサ部を光学的な一平面上に複数個、配設し、これら複数個のセンサ部を、光が光学的に連続して通過し、実質的にセンサ部の長さを長くしたので、換言するとセンサ部の表面積を実質的に大幅に増加させたので、表面プラズモン共鳴センサの感度を大幅に向上させることができる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を、添付図面を参照して説明する。図1は、表面プラズモン共鳴センサを説明する参考例の斜視図であり、図2(a)乃至(e)は、図1に示す表面プラズモン共鳴センサを作製する工程を説明する図である。
【0014】
図1には、第1の参考例の表面プラズモン共鳴センサ1が示されており、この表面プラズモン共鳴センサ1は、他の光学素子との光接続を容易に行うことができ、モジュール化を容易にするために基板に、例えば一辺が25mmX25mmの半導電性のシリコン基板2を備えている。このシリコン基板2上には、非晶質フッ素樹脂であるテフロンAF1600(屈折率1.31、デュポン社製)のクラッド層3が、6μmの厚さで形成され、このシリコン基板2上に形成されたクラッド層3上のほぼ中央部において、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと称す)のコア層4(屈折率1.49)が、高さ5μm、幅5μm、長さ10mmの寸法を有して形成され、これらのクラッド層3およびコア層4で装荷型光導波路5を構成している。この光導波路5のコア層4の表面には、金を40nm(ナノメートル)の厚さで蒸着、被覆した金属被膜6が形成されており、光導波路5に金属被膜6を設けた部分がセンサ部7として構成されている。
【0015】
このようにして構成される上記光導波路型の表面プラズモン共鳴センサ1の作製方法について、図2(a)〜(e)を参照して以下に述べる。
まず始めに、例えば一辺が25mmX25mmのシリコン基板2を準備し、このシリコン基板2上に、フロリナートFC−75(スリーエム社製)で溶解した屈折率1.31のテフロンAF1600(8%溶液)を滴下し、スピンナー(図示せず)を用い、シリコン基板2を600rpm(毎分回転数)の速度で20秒間回転させ、テフロンAF1600の8%溶液をシリコン基板2上に塗布する。このシリコン基板2を、温度180度Cに設定した温風循環乾燥機(図示せず)内に挿入して1時間放置し、溶媒のフロリナートを乾燥、除去して、厚さ6μmのテフロンAF1600のクラッド層3を形成する(図2(a)参照)。
【0016】
次に、このクラッド層3の表面をドライエッチングにより表面改質し、親水性をもたせ、この表面改質したクラッド層3の上に、屈折率1.49のPMMAとメチルメタクリレート(以下、MMAと称す)との混合溶液(PMMAが10%、MMAが90%で構成される溶液)を滴下し、スピンナー(図示せず)で、この混合溶液が滴下されたシリコン基板2を4000rpmの速度で15秒間回転させ、PMMAとMMAとの混合溶液をクラッド層3上に塗布する。このクラッド層3上に混合溶液が塗布されたシリコン基板2を、温度180度Cに設定した温風循環乾燥機内に挿入して1時間加熱して乾燥させ、PMMAのコア層4を形成する(図2(b)参照)。なお、上述したドライエッチングの条件は、ドライエッチングのチャンバ圧力が30Pa(パスカル)、酸素ガス流量200sccm(標準立法センチメートル毎分)、パワー200W、時間30秒とした。
【0017】
次に、このPMMAのコア層4が所定の寸法を有してシリコン基板2のほぼ中央部で残存、形成されるように、コア層4の所定範囲において電子線描画装置(図示せず)で電子線を照射し、以降、現像液による現像、水洗いによる濯ぎ、ポストベークを経て、高さ5μm、幅5μm、、長さ10mmの寸法のPMMAのコア層4が形成され、これらクラッド層3およびコア層4で装荷型光導波路5を構成している(図2(c)、(d)参照)。なお、上記電子線照射の条件は、加速電圧20KV、1平方センチメートル当りのドーズ量は100μC(マイクロクーロン)、電流値1X10のマイナス8乗アンペアとし、上記ポストベークの条件は、温度が170度Cで20分間のベーキングとした。
【0018】
その後、このようにして形成されたPMMAのコア層4の表面に、コア層4の両側から金を真空蒸着装置(図示せず)により成膜して金属薄膜6を形成し、センサ部7を作製した(図2(e)参照)。この成膜は、抵抗加熱方式により行い、膜厚が40nmになるまで堆積させた。
【0019】
上記の工程を経て形成される光導波路型の表面プラズモン共鳴センサ1は、従来のガラスを用いたものに比して、樹脂による導波路5のコア径を容易に大きくでき、測定されるべき物質の屈折率等を測定する場合、このセンサ1のコア層4と光源および検出器等の他の光学素子とを光接続する際にも光接続の位置合わせが非常に容易であり、光接続の位置合わせ精度不良によって生じる光損失によるセンサ感度の低下を招くこともない。また、この表面プラズモン共鳴センサ1は、従来のプリズム型表面プラズモン共鳴センサあるいは光ファイバ型表面プラズモン共鳴センサに比べて、センサ部7のコンパクト化が図れると共に、センサ装置全体の小型化も図ることができる。
しかも上記した表面プラズモン共鳴センサ1の光導波路5のクラッド層3およびコア層4を、上記したようなスピンコート等の工程を用いて成膜、形成できる樹脂で成形するので、従来のガラスに不純物をイオン注入して形成する光導波路に較べると、光導波路5を作製する際、ガラスの処理温度等の製造上の困難性を大幅に軽減でき、容易に作製することができる。
【0020】
次に第2の参考例を以下に述べる。第2の参考例は、上述した第1の参考例とほぼ同様であるが、クラッド層3およびコア層4に非晶質フッ素樹脂を用いた点が主に異なっている点であり、シリコン基板2上のクラッド層3に有機高分子材料の樹脂として非晶質フッ素樹脂であるテフロンAF1600(屈折率1.31、デュポン社製)を用い、コア層4に有機高分子材料の樹脂として非晶質フッ素樹脂であるサイトップ(屈折率1.34、旭硝子社製)を用いているものである。
【0021】
第2の参考例の表面プラズモン共鳴センサ1の作製方法は、上述した第1の参考例とほぼ同様であるので、同じく図2(a)〜(e)を参照して以下に述べるが、同じ構成部分には同一の参照番号を付して説明する。まず始めに、第1の参考例と同様に、一辺が25mmX25mmのシリコン基板2を準備し、このシリコン基板2上に、フロリナートFC−75(スリーエム社製)で溶解した屈折率1.31のテフロンAF1600(8%溶液)を滴下し、スピンナーを用い、シリコン基板2を600rpmの速度で20秒間回転させ、テフロンAF1600の溶液をシリコン基板2上に塗布する。このシリコン基板2を、温度300度Cに設定した温風循環乾燥機内に挿入して1時間加熱し、溶媒のフロリナートを乾燥、除去して、厚さ6μmのテフロンAF1600のクラッド層3を形成する(図2(a)参照)。
【0022】
次に、このクラッド層3の上に、溶媒CT−Solv.180(旭硝子社製)で溶解した屈折率1.34のサイトップ(8%溶液)を滴下し、スピンナーで、この溶液が滴下されたシリコン基板2を800rpmの速度で20秒間回転させ、サイトップ溶液をクラッド層3上に塗布する。このクラッド層3上にサイトップ溶液が塗布されたシリコン基板2を、温度300度Cに設定した温風循環乾燥機内に挿入して1時間加熱し、溶媒を乾燥、除去して、サイトップのコア層4を形成する(図2(b)参照)。
【0023】
次に、コア層4の表面をドライエッチングにより表面改質し、親水性をもたせ、この表面改質したコア層4の上にポジ型フォトレジストOFPR8600(東京応化工業社製)を滴下し、スピンナーを用いて4000rpmの速度で20秒間回転させて塗布する。なお、ドライエッチングの条件は、ドライエッチングのチャンバ圧力が30Pa、酸素ガス流量200sccm、パワー200W、時間30秒である。このようにしてコア層4の上にフォトレジストを塗布したシリコン基板2を温度80度Cに設定した温風循環乾燥機内に挿入して40分間加熱し、乾燥する。
【0024】
その後、温風循環乾燥機からこのシリコン基板2を取り出し、紫外線露光装置(図示せず)によりフォトレジストに紫外線を照射し、さらに専用現像液による現像、水洗いによる濯ぎ、温度140度Cで20分間のポストベークを経てフォトレジストのコアパターンを形成する。このフォトレジストをエッチングマスクとしてコア層4のドライエッチングを行う。なお、このドライエッチングは、チャンバ内圧力45Pa、酸素ガス、四フッ化炭素ガス、アルゴンガスの雰囲気下のもとで、、パワー200W、時間20分で行った。フォトレジストを専用剥離液で剥離し、所望の高さ10μm、幅50μm、長さ10mmの寸法のサイトップのコア層4を形成し、これらクラッド層3およびコア層4で装荷型光導波路5を構成している(図2(c)、(d)参照)。
【0025】
その後、このようにして形成されたサイトップのコア層4の表面に、コア層4の両側から金を真空蒸着装置により成膜して金属薄膜6を形成し、センサ部7を作製した(図2(e)参照)。この成膜は、抵抗加熱方式により行い、膜厚が40nmになるまで堆積させた。
【0026】
このようにして作製した第2の参考例の光導波路型の表面プラズモン共鳴センサ1も、第1の参考例と同様に、樹脂による導波路5のコア径を容易に大きくでき、測定されるべき物質の屈折率等を測定する場合に、このセンサ1のコア層4と光源および検出器等の他の光学素子とを光接続する際にも光接続の位置合わせが非常に容易であり、光接続の位置合わせ精度不良によって生じる光損失によるセンサ感度の低下を招くこともない。また、この表面プラズモン共鳴センサ1も、従来のプリズム型表面プラズモン共鳴センサあるいは光ファイバ型表面プラズモン共鳴センサに比べて、センサ部7のコンパクト化が図れると共に、センサ装置全体の小型化も図ることができる。しかも上述の参考例と同様に、この表面プラズモン共鳴センサ1の光導波路5のクラッド層3およびコア層4を、上記したようにスピンコート等の工程を用いて成膜、形成できる樹脂で成形するので、従来のガラスに不純物をイオン注入して形成する光導波路に較べると、光導波路5を作製する際、ガラスの処理温度等の製造上の困難性を大幅に軽減でき、容易に作成することができると共に、これらの樹脂が全部フッ素樹脂であるので、耐薬品性および耐熱性に優れたものとなる。
【0027】
次に第3の参考例を以下に述べる。この参考例は、上述した第1の参考例および第2の参考例とほぼ同様であるが、図3に示されるように、シリコン基板2上に下部クラッド層3およびこの下部クラッド層3上に2個の側部クラッド層33が設けられ、これらの側部クラッド層33の間に形成される溝部32の間にコア層4が形成され、このコア層4の表面に金属薄膜6を形成してセンサ部7を作製したものであるが、クラッド層3および33に有機高分子材料の樹脂としてSU−8(屈折率1.38、主にビスフェノール ノボラック グリシジルエーテルからなる。マイクロケム社製、マサチューセット州アメリカ)の感光性樹脂を用いた点、およびコア層4にPMMAを用いた点が主として異なる点である。
【0028】
この第3の参考例の表面プラズモン共鳴センサ1の作製方法について、図4(a)〜(e)を参照して以下に述べるが、第1の参考例および第2の参考例と同じもしくは類似の構成部分には同一もしくは類似の参照番号を付して説明する。まず始めに、第1の参考例および第2の参考例と同様に、一辺が25mmX25mmのシリコン基板2を準備し、このシリコン基板2上に、SU−8を滴下し、スピンナーを用い、この溶液が滴下されたシリコン基板2を2000rpmの速度で15秒間回転させ、SU−8の溶液をシリコン基板2上に塗布する。このようにしてSU−8溶液が塗布されたシリコン基板2を、温度70度Cに設定した温風循環乾燥機内に挿入して10分間加熱した後、さらに温度90度Cで1時間加熱し、その後、紫外線露光装置(図示せず)で紫外線を照射し、さらに温度100度Cで60分間加熱した後、厚さ100μmのSU−8の下部クラッド層3を形成する(図4(a)参照)。
【0029】
次に、この下部クラッド層3が形成されたシリコン基板2上に、さらに、上記と同様に、SU−8を滴下し、スピンナーを用い、この溶液が滴下されたシリコン基板2を2000rpmの速度で15秒間回転させ、SU−8の溶液をシリコン基板2上に塗布する。このようにして下部クラッド層3の上にさらにSU−8溶液が塗布されたシリコン基板2を、温度70度Cに設定した温風循環乾燥機内に挿入して10分間加熱した後、さらに温度90度Cで1時間加熱し、その後、紫外線露光装置で紫外線を照射し、さらに温度100度Cで60分間加熱した後、厚さ100μmのSU−8の側部用クラッド層31を形成する(図4(b)参照)。
【0030】
次に、このSU−8の側部用クラッド層31は、図4(c)に示すように、シリコン基板2上の側部用クラッド層31のほぼ中央部に溝部32が形成されると共に、この溝部32の両側には突出部33が形成されて所定の寸法を有して残存、形成されるように、所定の範囲において紫外線露光装置(図示せず)で紫外線を照射し、さらに温度90度Cで30分間加熱した後、現像液による現像及び濯ぎを行うことにより、高さ100μmで垂直壁を有するSU−8の突出部33、すなわち側部クラッド層33が溝部32の両側に形成される(図4(c)参照)。
【0031】
このSU−8で作製された側部クラッド層33の間に形成される溝部32に、屈折率1.49のPMMAとMMAとの混合溶液を滴下し、塗布する。この溝部32にPMMAの混合溶液が塗布されたシリコン基板2を、温度180度Cに設定した温風循環乾燥機内に挿入して1時間加熱して乾燥させ、PMMAのコア層4を形成する。これら下部クラッド層3、側部クラッド層33およびコア層4で光導波路5を構成している(図4(d)参照)。
【0032】
その後、このようにして形成されたPMMAのコア層4の表面に、金を真空蒸着装置により成膜して金属薄膜6を形成し、センサ部7を作製した(図4(e)参照)。この成膜は、抵抗加熱方式により行い、膜厚が40nmになるまで堆積させた。
【0033】
このようにして作製した第3の参考例の光導波路型の表面プラズモン共鳴センサ1も、第1の参考例および第2の参考例と同様に、樹脂による導波路5のコア径を容易に大きくでき、測定されるべき物質の屈折率等を測定する場合、このセンサ1のコア層4と光源および検出器等の他の光学素子とを光接続する際にも光接続の位置合わせが非常に容易であり、光接続の位置合わせ精度不良によって生じる光損失によるセンサ感度の低下を招くこともない。また、この表面プラズモン共鳴センサ1も、従来のプリズム型表面プラズモン共鳴センサあるいは光ファイバ型表面プラズモン共鳴センサに比べて、センサ部7のコンパクト化が図れると共に、センサ装置全体の小型化も図ることができる。しかも上述参考例と同様に、この表面プラズモン共鳴センサ1の光導波路5の下部クラッド層3および側部クラッド層33等を、上記したようにスピンコート等の工程を用いて成膜、形成できる樹脂で成形するので、従来のガラスに不純物をイオン注入して形成する光導波路に較べると、光導波路5を作製する際、ガラスの処理温度等の製造上の困難性を大幅に軽減でき、容易に作製することができる。
【0034】
本発明の実施例を説明する。本発明の表面プラズモン共鳴センサ1においては、上述した第1の参考例乃至第3の参考例と同じもしくは類似の構成部分には同一もしくは類似の参照番号を付して説明する。本発明は、図5および図6に示すように、上述した第1の参考例乃至第2の参考例において、クラッド層3、コア層4およびこのコア層4の表面に金属薄膜6が被覆されて成形されたセンサ部7を所望の長さに形成し、この所望の長さに形成されたセンサ部7を光学的な一平面上に2乃至3個以上の複数個(本実施例では4個で、図5の上側からセンサ部7a、7b、7c、7dとする)、例えば並設して表面プラズモン共鳴センサ1を構成したものである。さらに具体的に述べると、シリコン基板2上に形成される所定範囲の領域を有するクラッド層3の上に、コア層4a、4b、4cおよび4dが形成され、クラッド層3とこれらのコア層4a、4b、4cおよび4dで、それぞれ、装荷型光導波路5a、5b、5cおよび5dを形成している。
【0035】
その際、コア層4aの一方の端面部10は、全反射する角度を持つて形成され、例えば45度の角度を持つ斜面に形成され、このコア層4aの一方の端面部10と光学的なミラー関係になるように、これと対応するコア層4bの一方の端面部11も45度の斜面に形成されると共に、コア層4bの他方の端面部12も45度の斜面に形成されている。同様にして、このコア層4bの他方の端面部12と対応するコア層4cの他方の端面部13も45度の斜面に形成されると共に、コア層4cの一方の端面部14も45度の斜面に形成されると共に、コア層4dの一方の端面部15も45度の斜面に形成されている。なお、上記した光学的なミラー関係は、本発明による樹脂で構成されたクラッド層3およびコア層4により、光導波路5の各端面部において、それぞれ使用する樹脂の屈折率差が、クラッド層3およびコア層4の境界面で明確に形成されることにより容易に成される。
【0036】
このように形成されたコア層4a、4b、4cおよび4dの各端面部10乃至15を覆うと共に、コア層4a、4b、4cおよび4dの各中央部を露出させるように、クラッド層3およびコア層4a、4b、4cおよび4dの上にさらに、例えば非晶質フッ素樹脂であるテフロンAF1600、PMMAあるいはSU−8等の好適な樹脂の被覆層16がスピンコート法により所定領域に設けられている。その際、コア層4a、4b、4cおよび4dの各中央部を露出させる部分においては、コア層4a、4b、4cおよび4dとクラッド層3の各中央部分の露出させるべき部分に予めシール等(図示せず)を施し、その後、クラッド層3およびコア層4a、4b、4cおよび4dの上に被覆層16となる好適な樹脂のスピンコートを行って被覆し、この被覆後、シール等を除去することによって、シール等の除去部分に窓17が形成される。
【0037】
その結果、コア層4a、4b、4cおよび4d、すなわち光導波路5a、5b、5cおよび5bの各中央部が露出し、それらの周囲は被覆層16によって覆われていることになり、コア層4a、4b、4cおよび4dの各端面部10乃至15においては、相互の光学的なミラー状態に影響を与えることなく、光がこれらのコア層を連続して通過することができるようになる。なお、このスピンコートの条件は1000rpmで20秒間行い、その後オーブンで300度、45分間の乾燥処理を行った。また、このスピンコート法による被覆層16の形成は、所定の厚みに至るまで、必要に応じて、所望回数、繰り返しても良い。その後、窓17の部分において露出しているコア層4a、4b、4cおよび4dの表面には、金を真空蒸着装置(図示せず)により成膜して、それぞれ金属薄膜6a、6b、6cおよび6dを形成し、センサ部7a、7b、7cおよび7dをそれぞれ作製した。
【0038】
このように構成した本発明の表面プラズモン共鳴センサでは、測定されるべき物質の屈折率等を測定する場合、表面プラズモン共鳴センサの光路を説明する概略図である図7を参照すると容易に理解されるように、センサ部7aの他方の端面部から光を入射させると、その光路は、光学的なミラー関係により、センサ部7aを通過して、その一方の端面部10で反射してセンサ部7bの一方の端面部11によりセンサ部7bを通過し、さらにセンサ部7bの他方の端面部12で反射してセンサ部7cの他方の端面部13によりセンサ部7cを通過し、さらにセンサ部7cの一方の端面部14で反射してセンサ部7dの一方の端面部15によりセンサ部7dを通過してセンサ部7dの他方の端面部へ向かうことになる。
【0039】
このことは、光路が長くなって、一平面上でコンパクトに、しかも表面プラズモン共鳴センサのセンサ部の表面積が実質的に大幅に増加することを意味し、その結果、上記した第1の参考例乃至第3の参考例に比べて、コンパクトにして表面プラズモン共鳴センサの感度を大幅に向上させることができる。この場合において、従来のガラスに不純物をイオン注入する方法では、すでに述べたように、入射光を全反射させるために光導波路のコア端面を斜めにカットしてミラー構造にすることが困難なゆえ、コア端面に銀等を蒸着してミラー構造を形成する場合に較べて、非常に簡単な方法でミラー構造を形成することができる。
【0040】
なお、上記したことは、たとえ測定されるべき物質が非透光性のものであっても、被覆層16がコア層4a、4b、4cおよび4dの各端面部を覆っているので、コア層4a、4b、4cおよび4dの相互の光学的なミラー状態に影響を与えることなく、換言すればセンサ部7aから7dまでの光の通過には何ら影響を与えることなく、光が通過することができ、その結果、この場合にも表面プラズモン共鳴センサ部の表面積が実質的に大幅に増加させることができる。なお、上記実施例では、第1の参考例乃至第2の参考例の関連において述べたが、第3の参考例のものにおいても、表面プラズモン共鳴センサのセンサ部を複数個、設け、これらのセンサ部を、入射した光が、光学的に連続して通過し、実質的にセンサ部の長さを長くすることができるような構成とすることにより同様な効果を得ることができるのは言うまでもないことである。
【0041】
なお、上記した光路は、センサ部7の端面部を45度の斜面に形成して得た場合について述べたが、本発明は、この実施例に限らず、これらのセンサ部7a乃至7bを光学的に連続して通過し、実質的にセンサ部の長さを長くすることができるような、例えば端面部の斜面角度およびセンサ部7の配設を変化させて光路を長くすることができるような手段を設けても良い。
【0042】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の表面プラズモン共鳴センサによれば、クラッド層およびコア層により構成される光導波路のコア層の表面に金属薄膜を設けて形成したセンサ部を光学的な一平面上に複数個、配設した本発明の表面プラズモン共鳴センサでは、これらの複数個のセンサ部を、光が光学的に連続して通過し、実質的にセンサ部の長さを長くしたので、表面プラズモン共鳴センサの感度を大幅に向上させることができる。
【0044】
【図面の簡単な説明】
【図1】表面プラズモン共鳴センサの参考例の斜視図である。
【図2】図1に示す表面プラズモン共鳴センサを作製する工程を説明する図である。
【図3】表面プラズモン共鳴センサの他の参考例を説明する平面図である。
【図4】図3に示す表面プラズモン共鳴センサを作成する際の工程図である。
【図5】本発明の表面プラズモン共鳴センサの説明する平面図である。
【図6】図5に示す表面プラズモン共鳴センサのA−A線に沿う断面図である。
【図7】図5に示す表面プラズモン共鳴センサの光路を説明する概略図である。
【符号の説明】
1…表面プラズモン共鳴センサ
2…シリコン基板
3…クラッド層、
4、4a、4b、4c、4d…コア層
5、5a、5b、5c、5d…光導波路
6、6a、6b、6c、6d…金属薄膜、
7、7a、7b、7c、7d…センサ部
10、11、12、13、14、15…端面部
16…被覆層
17…窓

Claims (1)

  1. 基板上にクラッド層およびコア層を順次、積層して形成した光導波路を有し、さらにこの光導波路のコア層の表面に金属薄膜を設けて形成したセンサ部を備える表面プラズモン共鳴センサであって、前記光導波路のコア層およびクラッド層が樹脂で形成され、かつ前記センサ部を光学的な一平面上に複数個、配設し、これら複数個の光導波路を、光が光学的に連続して通過し、実質的にセンサ部の長さを長くしたことを特徴とする表面プラズモン共鳴センサ。
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