JP4035612B2 - 係留ドルフィンの疲労被害予測方法 - Google Patents

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本発明は、浮体に作用する外力の非線形性や係留ドルフィンの非線形反力特性を考慮した係留ドルフィンの疲労被害予測方法に関する。
図12を参照しつつ背景技術について説明する。
図12は、石油を備蓄するタンクを洋上で係留する方式の一例を示す模式図である。
図12には、海中に設置された石油備蓄タンク(浮体構造物:メガフロート)1が示されている。この石油備蓄タンク1は、係留ドルフィン3A、3Bによって海中に係留されている。係留ドルフィン3A、3Bは、水底から立ち上がった主要杭5A、5Bと、これらの上端内側に設けられたフェンダー6A、6Bを備えている。石油備蓄タンク1の動揺に伴う衝撃は、主要杭5A、5B上端のフェンダー6A、6Bで抑えられる。係留ドルフィン3A、3Bの外側は、防波堤7で取り囲まれている。この防波堤7の内側に静穏海域が形成されることで石油備蓄タンク1の動揺が抑えられ、よって係留ドルフィン3A、3Bの受ける負荷(疲労)が低減されるようになっている。
図12に示す係留方式では、石油備蓄タンク1の動揺を抑えるため、防波堤7の設置が必須である。しかしながら、防波堤7を常に設置しなければならないとなると、石油備蓄タンク1が大型化した場合等には、多額の建造費用がかかってしまう。さらに、防波堤7を設置すると、海流を阻害することとなるため、周辺海域の環境への悪影響も懸念される。あるいは、石油備蓄タンク1を沖合に配置する場合には、そもそもタンク周囲への防波堤の設置自体が不可能となる。
そこで、防波堤を建造せず、石油備蓄タンク等の浮体構造物を長期にわたって係留し続ける方式が求められている。防波堤を建造しない場合、浮体構造物は、波浪外力や潮流力を直接的に受けることとなるため、係留ドルフィンに加わる負荷も大きくなる。そこで、浮体構造物や係留ドルフィンの将来的な健全性を定量的に予測診断し、ダメージに至りそうな箇所を未然に見つけて適切に補修し、長期的な維持管理を円滑に実施できるようにすることが必要となる。特に、浮体構造物からの負荷を受ける係留ドルフィンについては、正確な疲労状況を予測することが不可欠の要請となる。
このような係留ドルフィンの疲労被害予測診断については、従来より、例えば非特許文献1に記載されている方法が知られている。この方法は、浮体構造物に作用する外力(風力、波力、潮流力)を定常成分と変動成分に分離し、これら各々の成分に対する係留反力を足し合わせて、全体の係留反力を評価するものである。但し、この方法では、外力の変動成分を計算するに当たって、浮体構造物の運動の応答関数と統計理論を組み合わせて計算している。
社団法人・日本造船研究協会、第179研究部会、『浅海域における箱型海洋構造物の運動特性及び係留システムの設計基準に関する研究報告書』、1983年3月
前述した非特許文献1においては、外力の変動成分から係留反力を見積もる際に、浮体構造物の運動の応答関数と統計理論を組み合わせて計算しているため、線型理論の範囲内での取り扱いとなっている。しなしながら、実際の現象は非線形であるから、線型理論の範囲内で問題を取り扱っていては、係留反力の見積もり精度が低い。そのため、係留ドルフィンの疲労状況を正確に予測することも困難である。
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであって、浮体に作用する外力の非線形性や係留ドルフィンの非線形反力特性を考慮することで、係留ドルフィンの疲労被害予測をより正確に行なうことができる方法を提供することを目的とする。
本発明の係留ドルフィンの疲労被害予測方法は、液面上で浮体を係留する係留ドルフィンの疲労被害を予測する方法であって、浮体及び係留ドルフィンの設置環境下における、風、潮流、波のうち少なくとも波を含む自然環境条件を取り込みこの自然環境条件に基づく環境外力が作用した際の浮体の運動状態、及び、この運動状態に応じて浮体が係留ドルフィンから受ける係留反力の時系列を、非線形性を含む該浮体の運動方程式を時間領域で解くことにより予測し、前記係留反力の時系列の統計処理により前記係留ドルフィン自体が受ける負荷のレベルと頻度との関係を予測し、予測した負荷のレベルと頻度との関係とともに、前記係留ドルフィン中の特定箇所におけるS−N線図、及び長期波浪頻度データとを用いて該係留ドルフィン中の特定箇所の疲労度合いを予測し、この疲労度合いを予測する過程において、前記非線形時運動方程式の時間領域解法の結果を用いることを特徴とする。
本発明によれば、浮体に作用する外力の非線形性や係留ドルフィンの非線形反力特性を考慮した非線形時系列シミュレーションを実施することで、係留ドルフィンの疲労被害予測をより正確に行なうことができる。これにより、ダメージに至りそうな箇所を未然に見つけて適切に補修することができるので、係留ドルフィンの長期的な維持管理を円滑に実施することができる。
本発明の係留ドルフィンの疲労被害予測方法においては、前記第2ステップ中の浮体の運動状態を、次式の運動方程式に基づき予測することが好ましい:
Figure 0004035612
但し、
i=1、2、6
ii(∞):周波数無限大での付加質量及び付加慣性モーメント、
Vi:粘性減衰力及びモーメント、
ii:メモリー影響関数、
Mi:係留反力、
Hi (1):線形波力及びモーメント
Hi (2):長周期変動波力及びモーメント
Wi:風力及びモーメント
Ci:潮流力及びモーメント
である。
本発明の係留ドルフィンの疲労被害予測方法においては、前記メモリー影響関数Liiを、次式に基づき算出することが好ましい:
Figure 0004035612
但し、
ii(ω):造波減衰力係数
である。
本発明によれば、浮体に作用する外力の非線形性や係留ドルフィンの非線形反力特性を考慮した非線形時系列シミュレーションを用いることで、係留ドルフィンの疲労被害予測をより正確に行なうことができ、係留ドルフィンの長期的な維持管理を円滑に実施できる効果がある。
発明を実施するための形態
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(A)は本実施例に係る浮体及び係留ドルフィンを示す平面図であり、図1(B)は同浮体の側面図である。
図2は、同係留ドルフィンの全体構成を示す斜視図である。
図3は、同係留ドルフィンの詳細図である。(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は正面図である。
図1には、本実施例に係る浮体(メガフロート)10が示されている。この浮体10は、図1中に示す矢印x方向及びy方向に広がる長方形板状をしている。浮体10は、x方向に延びる岸壁に沿って配置されている。図1(B)に示すように、浮体10の沖側下端縁には、下方(水中)に垂下したカーテンウォール部11が形成されている。本実施例における浮体10の性状は、岸壁側長さL1=203.0m・沖側長さL2=201.5m(公称長さ200m)、幅B=100m、高さD=3m、浮体主要部の喫水高さd=1m、カーテンウォール部を含む喫水高さd′=2.5mであって、横曲げ剛性が2.037×1010Nm、縦曲げ剛性が1.656×1010Nmである。
浮体10の両側部には、矩形状に抉られた切欠き部13が形成されている。各切欠き部13の内側には、係留ドルフィン20が配置されている。図2及び図3に詳細に示すように、本実施例の係留ドルフィン20は、水底から立ち上がった円柱状の主要杭21a〜21h(計8本)を備えている。一対の主要杭21aと21b、21cと21d、21eと21f並びに21gと21hにより、係留ドルフィン20をなすジャケット構造の4側面が構成される。主要杭21a・21bで構成される面は、浮体10の切欠き部13の底辺に対向し、主要杭21c・21d、及び、21e・21fで構成される面は、浮体10の切欠き部13の両側辺に対向する(図1参照)。図2に示すように、主要杭21a〜21hの上端寄りには矩形枠状の歩廊22が設けられており、この歩廊22の両側には手摺24が設けられている。
図2及び図3に示すように、隣り合う各主要杭21a〜21h間のそれぞれには、横梁23が架け渡されている。これらの横梁23は、主要杭21a〜21hの高さ方向上端寄り、及び、高さ方向中央近くにおいて、合計16本架け渡されている。さらに、各主要杭21a〜21hの内側には、水底から立ち上がった円柱状の仮受杭25(計4本)が設けられている(図2参照)。そして、これら仮受杭25の上側には、主要杭21a〜21hの内側に架け渡された、井型に組まれた井型梁27が配置されている(図3(A)参照)。井型梁27は、主要杭21a〜21hの高さ方向上端寄り、及び、高さ方向中央近くにおいて、合計2組架け渡されている。
図2及び図3(C)に示すように、主要杭21aと21bの間において、それらを繋ぐ横梁23間には、さらに2本の縦梁28が架け渡されている。そして、これら縦梁28には、ハイブリッドフェンダー30が取り付けられている。このハイブリッドフェンダー30は、両縦梁28に固定される取付板に設置された係留力検出装置33を備えている。この係留力検出装置33には、直列に接続された定反力型フェンダー35及びエアフェンダー37が突設されている。これらフェンダー35、37間には接続板36が介装されており、エアフェンダー37の先端には受衝板39が取り付けられている。接続板36には、浮体10からハイブリッドフェンダー30に過剰な負荷がかかるのを防止するためのストッパー36aが形成されている。
図3(B)にわかり易く示すように、主要杭21cと21d、並びに、21eと21fの間の奥側において、上下の井型梁27間には、さらに2本ずつの縦梁29が架け渡されている。そして、これら縦梁29には、二重フェンダー40が取り付けられている。二重フェンダー40は、主要杭21c・21d側、21e・21f側のそれぞれに設けられており(図3(A)、(C)参照)、両者とも同一構成である。
図2及び図3(A)にわかり易く示すように、二重フェンダー40は、両縦梁29に固定される取付板に設置された係留力検出装置43を備えている。この係留力検出装置43には、直列に接続された2つの定反力型フェンダー45、47が突設されている。これらフェンダー45、47の先端には、受衝板49が取り付けられている。この受衝板49は、前述したエアフェンダー37の受衝板39よりも大きく形成されている。各二重フェンダー40の受衝板49は、シェアチェーン51を介して、主要杭21a〜21hに固定された支持部材53にも支持されている。
前述のハイブリッドフェンダー30の係留力検出装置33、及び、両二重フェンダー40の係留力検出装置43は、制御装置に接続されている。この制御装置内では、図4に示す手順で、係留ドルフィン10の疲労被害を予測する。係留ドルフィンは、フェンダーの非線形反力特性や、浮体10の水平面内動揺の長周期運動等の非線形現象の影響を大きく受ける。本発明に係る方法は、短期不規則波中での応力の極値分布が、線形理論から導かれるRayleigh分布であると仮定する従来の方法とは異なり、以下に述べる非線形シミュレーションを用いて疲労被害予測を行なうものである。
以下、図4を参照して、係留ドルフィンの疲労被害予測方法について説明する。
図4は、本実施例に係る係留ドルフィンの疲労被害予測方法の手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、まずステップS1で、浮体10及び係留ドルフィン20の配置環境下における自然環境条件(波、潮流、風条件)を取り込み、ステップS2へと移行する。ステップS2では、ステップS1で取り込んだ自然環境条件に基づく環境外力が作用した際の浮体10の運動状態について、非線形時系列シミュレーションを実施し、ステップS3へと移行する。ステップS3では、ステップS2で実施された非線形時系列シミュレーションに応じて、浮体10が係留ドルフィン20から受ける係留反力時系列データを統計処理し、係留ドルフィン20自体の受ける負荷についての頻度データを用意する。次いで、ステップS4において、後述する図7等のS−N線図(繰り返し外力と破壊までの繰り返し回数との関係)を取り込み、ステップS5へと移行する。
ステップS5では、ステップS4で取り込んだS−N線図と、ステップS3で得られた係留反力時系列データの統計処理結果から、後述する「数9」式に基づいて係留ドルフィン20自体の受ける負荷(短期疲労被害の度合い)を計算する。次いで、ステップS6において、後述する「表1」の長期波浪頻度表に基づき長期波浪頻度を取り込み、ステップS7へと移行する。そして、ステップS7では、ステップS5における短期疲労被害の度合いと、ステップS6における長期波浪頻度から、係留ドルフィン20の長期にわたる疲労被害を予測する。
以下、前述のフローチャート(図4参照)における各ステップの内容について詳細に説明する。
ステップS1で取り込む自然環境条件(波力、潮流力、風力)は、以下の通りとする。
波条件は、本実施例では次の「表1」に示す波浪頻度表
Figure 0004035612
に従うものとし、波高が0.25m〜3.25m、波周期が3.0秒〜11.0秒までの範囲をとり得るものとする。なお、実際には、「表1」のデータに限らず、考慮対象となる海域に応じた波浪頻度表を用意する。波向きは、最も頻度が高い63.8°(NE)とする。波スペクトルは、港湾域で広く使用されているブレッドシュナイダー光易型スペクトルとし、方向分布関数としては光易型を用いるものとする。なお、波の方向集中度パラメータは、東京湾で一般的な10を用いるものとする。
潮流条件は、流向0°、流速0.5ノットとする。
風条件については、前述の波条件から予測する。風向は波向と同一とし、1つの波条件に対して時間tが3時間分のシミュレーション計算を行なうものとする。
ステップS2において行なう非線形時系列シミュレーションの内容について説明する。
まず、前述したような浮体(メガフロート)の流体力係数、波浪外力及び係留反力特性の算定方法について説明する。
流体力係数としては、付加質量mjj(ω)、造波減衰力係数Njj(ω)及び無次元粘性減衰力係数αを求める必要がある。
付加質量mjj(ω)及び造波減衰力係数Njj(ω)については、それぞれ剛体モデルに基づく数値計算から求め、動揺周波数ωごとにデータベース化しておく。
無次元粘性減衰力係数αは、自由動揺試験から求めることができる。この自由動揺試験は、浮体を水平運動方向に強制変位させ、その後にリリースすることで、減衰振動波形を実験的に求める試験である。
この無次元粘性減衰力係数αは、以下の通りに定義される。すなわち、粘性減衰力NVjについては、一般に速度の二乗に比例するが、本実施例に係る浮体のように広大な没水底面を有するものの場合には、速度(d/dt)xに比例する。但し、j=1、2、6であって、j=1は前後揺モード、j=2は左右揺モード、j=6は回頭揺モードをそれぞれ表す。ここで、浮体の水平面内動揺の特性周波数(等価固有周波数)をω0jとすると、無次元粘性減衰力係数αは次式「数5」で表される:
Figure 0004035612
但し、
M:浮体の質量
jj0j):水平面内動揺の付加質量
である。
波浪外力については、本実施例のような浮体は波長に比べて喫水が非常に小さいので、浮体周囲における水位を用いて評価することができる(線型及び長周期変動波力)。
係留反力特性は、以下に述べる図5及び「数6」に基づき決定する。
図5(A)、(B)は、本実施例に係る合成フェンダー(各々ハイブリッドフェンダー及び二重フェンダー)の反力特性を示すグラフである。
図5(A)、(B)の縦軸はそれぞれ係留反力(単位kN)を示し、横軸はそれぞれ歪(単位%)を示す。横軸の歪(%)は、フェンダー高さに対する変位量の比を歪量として表している。
前述の通り、本実施例の係留ドルフィン20においては、合成フェンダー(図1のx方向のハイブリッドフェンダー30(1個)と、y方向の二重フェンダー40(2個))を有している。図5(A)及び(B)のグラフに示す特性をそれぞれf、fで表すと、係留反力特性FM1、FM2、FM6は、次式「数6」で表される:
Figure 0004035612
但し、
:浮体の回転中心から二重フェンダーと浮体の接点までの距離
であり、指数の1、2、6については、前述の通り、1が前後揺モード、2が左右揺モード、6が回頭揺モードをそれぞれ表す。
次に、前述の環境外力が作用した際の浮体の運動状態を予測する原理(浮体の水平面内動揺の時間領域運動方程式)について説明する。
浮体の面内剛性は十分大きいものとし、浮体の水平面内の動揺は3自由度剛体運動であると仮定する。この場合、浮体の水平面内の運動方程式は、前述した流体力係数、波浪外力、係留反力特性を用いて、次式「数7」で表される。この「数7」を時間領域で解くことにより、時々刻々の応答値(水平面内動揺及び係留力)が求められる。
Figure 0004035612
但し、
i=1、2、6
ii(∞):周波数無限大での付加質量及び付加慣性モーメント、
Vi:粘性減衰力及びモーメント、
ii:メモリー影響関数、
Mi:係留反力、
Hi (1):線形波力及びモーメント
Hi (2):長周期変動波力及びモーメント
Wi:風力及びモーメント
Ci:潮流力及びモーメント
である。
なお、「数7」におけるメモリー影響関数Liiは、次式「数8」に基づき算出することができる:
Figure 0004035612
但し、
ii(ω):造波減衰力係数
である。
ステップS3における時系列データの統計処理について説明する。
本実施例における時系列データの統計処理は、次の(1)〜(3)に示す要領で行なった。
(1)β方向(β=x、y)の各々について、反力レベルFβiごとの極値頻度数nβiを求める。
(2)左右揺れ方向については、プラスマイナス両方向の反力を考慮する。
(3)極値頻度数のカウントは、反力の絶対値について行なう。
ステップS4において取り込むS−N線図について説明する。
図6は、本実施例に係る係留ドルフィンの構造解析モデルを示す図である。
図7は、図6の構造解析モデルを用いたS−N特性の評価結果の一例を示すグラフである。
本実施例において、係留ドルフィンのS−N特性の評価は、図6に示す有限要素モデルを作成して行なった。本実施例では、地盤条件をも考慮した上で、図6中に矢印で示すx方向及びy方向に外力を加えた際に最大応力が発生する点(疲労損傷の著しい箇所)として、主要杭21a′、21b′、21g′、21h′と、それらを繋ぐ下横梁23′、井型梁27′との格子点(図6中の格子点LP1、LP2、LP3、LP4)を抽出してS−N特性を求めた。なお、図6中に符号30′で示すものが前述のハイブリッドフェンダーに相当し、符号40′で示すものが前述の二重フェンダーに相当する。
図7は、前述の各格子点のうち、主要杭21a′上の格子点LP4について求めたS−N線図である。このグラフは、具体的には以下(1)、(2)の通りに求めた。
(1)各フェンダーに98kN刻みで繰り返し荷重を載荷し、各節点に作用する応力変動幅をFEM解析により求める。この際、応力集中係数は、(財)沿岸開発技術センター編、「ジャケット工法技術マニュアル」、2000年発行、の標準値を用いた。
(2)応力変動幅に対する許容繰り返し回数を、前述の「ジャケット工法技術マニュアル」の第39ページを参照して求めた。
ステップS5における短期疲労被害の度合いの計算について説明する。
ステップS5における短期疲労被害度は、マイナー則を用いて、次式「数9」に基づき計算する。計算結果は、波高、周期ごとのそれぞれについてデータベース化を行なう。
Figure 0004035612
但し、
β=x、y
βi:Fβiに対する許容繰り返し数
であり、Nβiのデータについては、前述した図7等の各格子点におけるS−N線図を用いるものとする。
ステップS6において取り込む長期波浪頻度表は、前述の「表1」に示す波浪頻度表に基づくものとする。
ステップS7における長期疲労被害の度合いの計算について説明する。
ステップS7における長期疲労被害度の算定は、前述のステップS5におけるデータベースを用い、次式「数10」に基づき算定した:
Figure 0004035612
但し、
α(H、T):α年間に、有義波高H、平均波周期Tである海象が発生する延べ時間
である。この延べ時間fα(H、T)は、ステップS6で取り込んだ長期波浪頻度表から求めることができる。
次に、本発明者らが行なった水槽模型試験について述べる。
この水槽模型試験は、独立行政法人・海上技術安全研究所内の海洋構造物試験水槽(長さ40m×幅27m)を用いて行なった。供試模型の縮尺は1/50とし、その性状は、公称長さ4000mm、幅B=2000mm、高さD=70mm、浮体主要部の喫水高さd=20mm、カーテンウォール部を含む喫水高さd′=50mmであって、横曲げ剛性・縦曲げ剛性がともに715Nmである。
この試験に用いた模型(水槽実験用浮体)の主構造は、厚さ5mmのアルミ平板であり、このアルミ平板下面に浮力材として発泡ウレタンを接着して喫水を実機に合わせた。模型側面には、深さ3cm、スリット幅0.5cmの波エネルギー吸収装置(カーテンウォール)を取り付けた。さらに、アルミ板と鋼材を用いて設置海域の海底地形を再現した。
水槽実験用浮体を係留する係留装置としては、前述した図2、図3に示すような係留ドルフィン方式であって、図5に示す通りのフェンダー反力特性を有する模型を作成した。
図8は、本実施例に係る水槽模型試験における計測位置を説明する図である。
図8には、各計測項目に対応した計測装置の設置位置が示されている。各計測項目とその計測装置は、
・浮体模型の水平方向変位:ポジションセンサー
・浮体模型の鉛直方向変位並びにフェンダー変位:ポテンショメータ
・浮体模型の加速度:三軸加速度計
・入射波高:サーボ式波高計
・係留反力:ロードセル型検力計
・浮体模型周辺の相対水位:容量式波高計
・浮体模型の歪み:歪みゲージ
の通りである(図8下側参照)。
水槽模型試験は、(1)開水域(水深が実機相当で20m)の場合、(2)岸壁が平板の場合、(3)岸壁が実機と同じく円筒ケーソンの場合、の3通りの状態を想定して行なった。前述の波エネルギー吸収装置については、これら(1)〜(3)の各状態について、波エネルギー吸収装置がある場合とない場合とで計測を行なった。なお、この波エネルギー吸収装置として、スリット(実機相当で0.25m幅)付きカーテンウォールとスリットのないものを準備した。
Figure 0004035612
「表2」には、水槽模型試験の計測条件が示されている。この「表2」中の不規則波とは、左から順に、設置海域における2、10、50年確率波である。さらに、波向きは設置海域における主方向である63.8°とした。なお、波向きχの定義は、図8の上側に示す角度を意味する。さらに、この水槽模型試験の他に、水槽実験用浮体の自由動揺試験も併せて行なった。
図9は、本実施例に係る水槽模型試験における不規則波(10年確率波)中のフェンダー変位の時系列データの一例を示すグラフである。
図9に示す時系列グラフにおいて、縦軸はフェンダー変位(単位m)を表し、横軸は時刻(単位sec)を表す。次の「表3」は、この不規則波(10年確率波)中の各フェンダーの最大変位(有義波高2.6m、波周期5.5sec)を示す。
Figure 0004035612
次いで、このような不規則波(10年確率波)の水槽模型実験に対応して、前述した図4のフローチャートに基づき非線形時系列シミュレーションを行い、得られた係留反力時系列データの統計処理を行なって、係留反力の標準偏差、最大値を推定した。この推定結果の一例を次の「表4」に示す。
Figure 0004035612
この「表4」において、係留反力の番号(No.)は、前述した図8中のフェンダー番号に相当する。「表4」中の値は全て実機換算値であり、比較ケースは岸壁が円筒ケーソンでスリット付波エネルギー吸収装置がある場合である。本ケースにおける推定結果は、No.5の係留反力の計測結果とは若干の差があるが、係留反力が最も大きいNo.1係留反力に関しては、推定結果と計測結果はよい一致を示しており、本推定法が有効であることがわかる。なお、浮体の水平面内動揺の粘性減衰力係数に関しては、前述した自由動揺試験の結果を用いている。
次に、本発明者らが行なった実海域実証実験について述べる。
本実験では、図1の浮体10上で、波高計、風速計、KGPS、加速度計、水圧計、歪みゲージ等を用い、自然環境、浮体挙動等を計測した。
図10は、本実施例に係る実海域実証実験における計測位置を説明する図である。
図11は、本実海域実証実験におけるGPSの測定値から求めた浮体の挙動と、本発明の疲労被害予測方法を用いて予測した浮体の挙動とを比較して示すグラフである。(A)の縦軸はヨー角(単位deg)、横軸は時間(単位sec)を示し、(B)の縦軸は浮体の揺れ(単位mm)、横軸は時間(単位sec)を示す。
図10には、本実海域実証実験における浮体上での各計測器の設置位置が示されている。本実験では、水圧計(P1〜P13:計13個)、相対水位計(RW1〜RW5:計5個)、風速計(計2個)、加速度計(G1〜G12:計12個)、KGPS(KGP0〜KGP2:計3個)を用い、その他必要に応じて波高計や歪みゲージ等を用いている。
図11(A)、(B)に示す実験結果から明らかなように、本発明に係る浮体の水平面内挙動予測結果(点線で示すグラフ)と、実海域実証実験においてGPSで実際に測定した浮体の水平面内挙動(実線で示すグラフ)との比較を示すと、両曲線はよく一致していることがわかる。このように、浮体の挙動を正確に予測することができるので、係留ドルフィンの疲労被害予測をより正確に行なうことができるといえる。したがって、実際上は、係留ドルフィンのダメージに至りそうな箇所を未然に見つけて適切に補修することができるので、係留ドルフィンの長期的な維持管理を円滑に実施することができるといえる。
図1(A)は本実施例に係る浮体及び係留ドルフィンを示す平面図であり、図1(B)は同浮体の側面図である。 同係留ドルフィンの全体構成を示す斜視図である。 同係留ドルフィンの詳細図である。(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は正面図である。 本実施例に係る係留ドルフィンの疲労被害予測方法の手順を示すフローチャートである。 本実施例に係る合成フェンダー(各々ハイブリッドフェンダー及び二重フェンダー)の反力特性を示すグラフである。 本実施例に係る係留ドルフィンの構造解析モデルを示す図である。 図6の構造解析モデルを用いたS−N特性の評価結果の一例を示すグラフである。 本実施例に係る水槽模型試験における計測位置を説明する図である。 本実施例に係る水槽模型試験における不規則波(10年確率波)中のフェンダー変位の時系列データの一例を示すグラフである。 本実施例に係る実海域実証実験における計測位置を説明する図である。 本実海域実証実験におけるGPSの測定値から求めた浮体の挙動と、本発明の疲労被害予測方法を用いて予測した浮体の挙動とを比較して示すグラフである。 石油を備蓄するタンクを洋上で係留する方式の一例を示す模式図である。
符号の説明
10 浮体(メガフロート) 11 カーテンウォール部
13 切欠き部 20 係留ドルフィン
21a〜21h 主要杭 23 横梁
25 仮受杭 27 井型梁
28、29 縦梁
30 ハイブリッドフェンダー 33 係留力検出装置
35 定反力型フェンダー 37 エアフェンダー
39 受衝板
40 二重フェンダー 43 係留力検出装置
45、47 定反力型フェンダー 49 受衝板

Claims (5)

  1. 液面上で浮体を係留する係留ドルフィンの疲労被害を予測する方法であって、
    浮体及び係留ドルフィンの設置環境下における、風、潮流、波のうち少なくとも波を含む自然環境条件を取り込み
    この自然環境条件に基づく環境外力が作用した際の浮体の運動状態、及び、この運動状態に応じて浮体が係留ドルフィンから受ける係留反力の時系列を、非線形性を含む該浮体の運動方程式を時間領域で解くことにより予測し
    前記係留反力の時系列の統計処理により前記係留ドルフィン自体が受ける負荷のレベルと頻度との関係を予測し、
    予測した負荷のレベルと頻度との関係とともに、前記係留ドルフィン中の特定箇所におけるS−N線図、及び長期波浪頻度データとを用いて該係留ドルフィン中の特定箇所の疲労度合いを予測し、
    この疲労度合いを予測する過程において、前記非線形運動方程式の時間領域解法の結果を用いることを特徴とする係留ドルフィンの疲労被害予測方法。
  2. 記浮体の運動方程式が以下の式であることを特徴とする請求項1記載の係留ドルフィンの疲労被害予測方法:
    Figure 0004035612
    但し、
    i=1、2、6
    ii(∞):周波数無限大での付加質量及び付加慣性モーメント
    Vi:粘性減衰力及びモーメント
    ii:メモリー影響関数
    Mi:係留反力
    Hi (1):線形波力及びモーメント
    Hi (2):長周期変動波力及びモーメント
    Wi:風力及びモーメント
    Ci:潮流力及びモーメント
  3. 前記メモリー影響関数Liiを、次式に基づき算出することを特徴とする請求項2記載の係留ドルフィンの疲労被害予測方法:
    Figure 0004035612
    但し、
    ii(ω):造波減衰力係数
  4. 予測した前期係留反力の時系列データを統計処理し、係留ドルフィン自体の受ける負荷についての頻度データを用意し、
    前記係留ドルフィン中の特定箇所についてのS−N線図と、前記係留反力の時系列データの統計処理結果から、係留ドルフィン自体の受ける負荷(短期疲労被害の度合い)を計算した後、該短期疲労被害の度合いと、前記長期波浪頻度から、係留ドルフィンの長期にわたる疲労被害を予測することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の係留ドルフィンの疲労被害予測方法。
  5. 前記時系列データの統計処理において、反力レベルF βi ごとの極値頻度数n βi を求めることを特徴とする請求項4記載の係留ドルフィンの疲労被害予測方法。
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