JP4030103B2 - 打込み試験装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転体への投射物の打込みを試験する打込み試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジェットエンジンの性能試験の一種として、エンジンへの投射物の打込み試験がある。
図3は、従来の打込み試験装置の模式図である。打込み試験装置は、回転体1への投射物4の打込みを試験する装置であり、回転駆動装置50、物体打込機器52、観測・計測機器54及びタイマー56等で構成される。回転体1は、高速で回転するもので、例えばジェットエンジンのロータ2とその周囲に配置されたブレード3である。投射物4は、試験対象の物体であり、例えば、鳥又はこれに質量又は密度を合わせたゼラチン等である。
【0003】
以下、打込み試験方法を説明する。
回転駆動装置50は、ロータ2を把持し回転軸51を高速で回転させる。物体打込み機器52は、打ち出し器54を使用して、高速回転するブレード3にめがけて投射物4を発射する装置である。物体打込み機器52は、始動タイミング信号を受けて、打ち出し器53に打ち出し信号を出力する。
【0004】
観測・計測機器54は、観測装置54aと計測装置54bからなる。観測装置54aは、高速度ビデオカメラや高速度カメラであり、タービンブレード3に投射物4が打込まれた様子を撮影する。計測装置54bは、所望の計測を行う装置であり、例えば、ブレード3に仕込まれた測定器55(ストレンゲージ等)により、飛散時や打込み時のブレード3に生ずる歪み等を測定記録する。タイマー56は、打込機器52と観測・計測機器54とに始動タイミング信号を出力する装置であり、回転駆動装置20を始動して、定格回転数になったであろう時間をカウントした後で、始動タイミング信号を出力する。
【0005】
上述した打込み試験装置の場合、タイマー56が始動タイミング信号を出力したときに、ロータ2に設けられたどのブレード3に投射物4が当たるか不明であったので、全てのブレードに測定器55(ストレンゲージ等)を仕込んで、全ての出力を記録していた。
【0006】
しかし観測機器54aで使用される高速度カメラや高速度ビデオカメラは、短時間に大量のフレームを撮影可能な特殊装置であるが、非常に高価である。また、計測機器54bは、読み取りを行わないデータを含めて大量のデータを記録しなければならなかった。
そこで、観測・計測機器54及び測定器55の数を減らすために、所定のブレード3に投射物4を打込みたいという要望があった。
【0007】
この要望を満たすために、本発明の発明者等は先に、図4に模式的に示す「回転体の物体飛散・打込み試験装置」を創案し出願した(特願2002-140920、未公開)。
この物体飛散・打込み試験装置は、回転体1を回転させる回転軸51と、回転軸の回転位相を検知してタイミング信号を出力する位相検知手段56と、前記タイミング信号に応じて回転体からの物体の飛散または回転体への物体の打込みを行う物体飛散・打込み機器52と、前記タイミング信号に応じて観測又は計測のデータ取得シーケンスをスタートさせる観測・計測機器54と、を備えたものであり、位相検知手段56が特定の回転位相を検知した時に前記タイミング信号を出力するように予め定めることで、物体飛散・打込み機器52が特定の回転位相にある回転体1への物体4の打ち込みを行い、観測・計測機器54がその物体4の打ち込みのデータ取得をすることができるようになっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の装置において、回転駆動装置50や物体打込機器(物体飛散・打込み機器52)の単体での精度は高いが、双方を同期させて試験する場合には、タイミング信号と実際に物体(投射物)が対象物に衝突する時点との間に時間差Δtがある。この時間差Δtを従来はできるかぎり正確に予測し、これに基づいて目標とするブレードに打ち込み試験を行っていた。
【0009】
しかし、この時間差の予測は、投射物が飛翔する時間等も含むため、厳密な予測が困難であり、実際には目標以外の対象物に衝突し試験をやり直さざる得ない場合も多かった。すなわち、従来の試験方法は、依然として一発勝負的な要素を含んでおり、高価な実物を用いた試験において、成功率が低く、試験費用が過大となる問題点があった。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、回転駆動装置と物体打込機器の位相同期を正確に合わせることができ、これにより高速回転する複数の対象物のうち特定の1つに、投射物を高い成功率で確実に衝突させることができる打込み試験装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、対象物(3)を取付けた回転体(1)を回転軸(11)を中心に回転させる回転装置(12)と、前記回転軸の回転位相を検知してタイミング信号S1を出力する位相検知手段(14)と、前記タイミング信号に応じて投射物(4)を投射する打込み装置(16)と、投射物が衝突する標的(18a)を有しその衝突信号S2を出力するターゲット装置(18)と、タイミング信号S1と衝突信号S2を記録する計測制御装置(20)とを備え、前記打込み装置は、回転装置とターゲット装置の両方に択一的に投射物を投射できるようになっている、ことを特徴とする打込み試験装置が提供される。
【0012】
上記本発明の構成によれば、打込み装置(16)が、回転装置(12)とターゲット装置(18)の両方に択一的に投射物(4)を投射できるようになっているので、ターゲット装置(18)に投射物(4)を投射して、打込み試験の予備試験を高価な実物(ブレード等)を損傷させることなく繰返し実施することができる。
【0013】
また、ターゲット装置(18)により標的(18a)に投射物が衝突する瞬間の衝突信号S2を出力し、計測制御装置(20)によりタイミング信号S1と衝突信号S2を記録するので、タイミング信号と実際に物体(投射物)が対象物に衝突する時点との間に時間差Δtをターゲット装置(18)を用いた予備試験で高精度に計測することができ、回転駆動装置と物体打込機器の位相同期を正確に合わせることができる。
【0014】
従って、予備試験で時間差Δtを高精度に計測した後に、相対位置をターゲット装置(18)と合わせた回転装置(12)に投射先を変更して、投射物(4)を実物(ブレード等)に投射することにより、高速回転する複数の対象物のうち特定の1つに、投射物を高い成功率で確実に衝突させることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記回転装置(12)に隣接して設けられ衝突信号S2に応じて発光する発光素子(22)と、該発光素子を回転装置と共に撮像する高速撮像装置(24)とを備える。
【0016】
この構成により、発光素子(22)が衝突信号S2に応じて同時に発光し、高速撮像装置(24)により発光素子を回転装置と共に撮像するので、撮像された画像から発光素子の発光時の回転装置の位相を確認できる。
従って、タイミング信号と実際に物体(投射物)が対象物に衝突する時点との間の対象物の位相差を撮像された画像からも確認でき、回転駆動装置と物体打込機器の位相同期をより一層正確に合わせることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の打込み試験装置の全体構成図である。この図に示すように、本発明の打込み試験装置10は、回転装置12、位相検知手段14、打込み装置16、ターゲット装置18、計測制御装置20、発光素子22及び高速撮像装置24を備える。
【0019】
回転装置12は、回転軸11を所定の速度で高速回転させる。この回転速度は、回転体1の試験目的により、例えば7000〜20000rpm程度である。
回転体1は、例えば高速で回転するジェットエンジンのロータ2とその周囲に配置された対象物3である。対象物3は、例えばファン、コンプレッサ、又はタービンのブレードであるが、その他のものでもよい。
【0020】
位相検知手段14は、回転軸11の回転位相を検知してタイミング信号S1を出力する。位相検知手段14は、例えばパルス発生器であり、回転軸11の360度の任意の一箇所に設けられた検出部11aを磁気センサ等で検知し、その結果をタイミング信号S1として出力する。このタイミング信号S1は、計測制御装置20を介して打込み装置16に出力される。打込み装置16に出力される出力信号は、計測制御装置20により任意の時間差が設定できるのが好ましいが、タイミング信号S1の受信と同時でもよい。
【0021】
打込み装置16は、タイミング信号S1に応じて投射物4を投射する。この打込み装置16は、回転装置12とターゲット装置18の両方に択一的に投射物を投射できるようになっている。またこの打込み装置16は、回転装置12とターゲット装置18の両方との相対位置が正確に一致している。従って、打込み装置16の投射先をターゲット装置18から回転装置12に変更した場合、投射物4を打込み装置16の特定の衝突位置に正確に投射できるように予め調整されている。この衝突位置は、回転体1の一部であり、特に、対象物3が高速回転して通過する旋回部分に設定されている。
【0022】
ターゲット装置18は、投射物4が衝突する標的18aを有し、その衝突信号S2を出力する。ターゲット装置18及び標的18aは、投射物4を繰返し衝突させても損傷しないように頑丈に構成されている。また、ターゲット装置18は、衝撃センサ19を有し、投射物4が衝突する際に発生する衝撃信号を出力する。衝撃センサ19は、例えばピエゾ型の高精度加速度センサであるのがよい。
【0023】
計測制御装置20は、タイミング信号S1と衝突信号S2を記録する。計測制御装置20は、例えばコンピュータとデータレコーダからなり、タイミング信号S1と衝突信号S2を記録すると共に、打込み装置16及び発光素子22に出力信号を出力するようになっている。
【0024】
発光素子22は、例えば、発光ダイオードであり、回転装置12に隣接して設けられ、衝突信号S2に応じて発光する。発光素子22に出力される出力信号は、衝突信号S2と同時に設定されている。
【0025】
高速撮像装置24は、高速度ビデオカメラ又は高速度カメラであり、発光素子22を回転装置12と共に撮像する。高速撮像装置24は、例えば1秒間に4500〜40500のフレームを撮像できるものを用いる。撮像画像は、高速撮像装置24内にそのまま記録されるのが好ましいが、その一部、例えば発光素子22が発光したフレームを、計測制御装置20に取り込んでもよい。
【0026】
図2は、本発明による計測データの模式図である。この図は、計測制御装置20に記録されたタイミング信号S1と衝突信号S2の関係を示しており、横軸は時間、縦軸は出力信号である。
この図からタイミング信号と実際に物体(投射物)が対象物に衝突する時点との間に時間差Δtを高精度に計測することができる。
また、発光素子22が発光したフレーム(図示せず)から、タイミング信号S1と実際に物体(投射物)が対象物に衝突する時点S2との間の対象物3の位相差を撮像された画像からも正確に確認できる。
【0027】
上述した本発明の構成によれば、打込み装置16が、回転装置12とターゲット装置18の両方に択一的に投射物4を投射できるようになっているので、ターゲット装置18に投射物4を投射して、打込み試験の予備試験を高価な実物(ブレード等)を損傷させることなく繰返し実施することができる。
【0028】
また、ターゲット装置18により標的18aに投射物が衝突する瞬間の衝突信号S2を出力し、計測制御装置20によりタイミング信号S1と衝突信号S2を記録するので、タイミング信号と実際に物体(投射物)が対象物に衝突する時点との間に時間差Δtをターゲット装置18を用いた予備試験で高精度に計測することができ、回転駆動装置と物体打込機器の位相同期を正確に合わせることができる。
【0029】
従って、予備試験で時間差Δtを高精度に計測した後に、相対位置をターゲット装置18と合わせた回転装置12に投射先を変更して、投射物4を実物(ブレード等)に投射することにより、高速回転する複数の対象物のうち特定の1つに、投射物を高い成功率で確実に衝突させることができる。
【0030】
また、発光素子22が衝突信号S2に応じて同時に発光し、高速撮像装置24により発光素子を回転装置と共に撮像するので、タイミング信号S1と実際に物体(投射物)が対象物に衝突する時点S2との間の対象物3の位相差を撮像された画像からも正確に確認でき、回転駆動装置と物体打込機器の位相同期をより一層正確に合わせることができる。
【0031】
なお本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0032】
【発明の効果】
上述したように、本発明の打込み試験装置は、回転駆動装置と物体打込機器の位相同期を正確に合わせることができ、これにより高速回転する複数の対象物のうち特定の1つに、投射物を高い成功率で確実に衝突させることができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の打込み試験装置の全体構成図である。
【図2】本発明による計測データの模式図である。
【図3】従来の装置の模式図である。
【図4】先行出願の装置の模式図である。
【符号の説明】
1 回転体、2 ロータ、3 ブレード(対象物)、
4 物体(投射物)
10 打込み試験装置、11 回転軸、11a 検出部、
12 回転装置、14 位相検知手段、
16 打込み装置、18 ターゲット装置、18a 標的、
19 衝撃センサ、20 計測制御装置、
22 発光素子、24 高速撮像装置、
50 回転駆動装置、51 回転軸、
52 物体打込機器(物体飛散・打込機器)、
53 打ち出し器、54 観察・計測機器、
54a 観察機器、54b 計測機器、
55 測定器、56 位相検知手段、
S1 タイミング信号、S2 衝突信号
Claims (2)
- 対象物(3)を取付けた回転体(1)を回転軸(11)を中心に回転させる回転装置(12)と、前記回転軸の回転位相を検知してタイミング信号S1を出力する位相検知手段(14)と、前記タイミング信号に応じて投射物(4)を投射する打込み装置(16)と、投射物が衝突する標的(18a)を有しその衝突信号S2を出力するターゲット装置(18)と、タイミング信号S1と衝突信号S2を記録する計測制御装置(20)とを備え、
前記打込み装置は、回転装置とターゲット装置の両方に択一的に投射物を投射できるようになっている、ことを特徴とする打込み試験装置。 - 前記回転装置(12)に隣接して設けられ衝突信号S2に応じて発光する発光素子(22)と、該発光素子を回転装置と共に撮像する高速撮像装置(24)とを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の打込み試験装置。
Priority Applications (1)
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JP2002343808A JP4030103B2 (ja) | 2002-11-27 | 2002-11-27 | 打込み試験装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002343808A JP4030103B2 (ja) | 2002-11-27 | 2002-11-27 | 打込み試験装置 |
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ID=32705505
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JP2002343808A Expired - Lifetime JP4030103B2 (ja) | 2002-11-27 | 2002-11-27 | 打込み試験装置 |
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2002
- 2002-11-27 JP JP2002343808A patent/JP4030103B2/ja not_active Expired - Lifetime
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