JP4030062B2 - 船舶設計検討システム - Google Patents
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しかしながら、近年のコンピュータ技術の発達と低価格化に伴って、パーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という)レベルで行えるように変化してきている。このような変化に伴って、設計者は、従前には専任者が行っていた電子計算機作業を自ら行わなければならなくなっており、設計検討を行いながら、部材計算と作図作業を同時に行うことは甚だ負担である状況にあった。。
また、近年、韓国ならびに中国における造船業の躍進は目ざましいものがあり、日本の造船をとりまく環境は厳しさを増している。そのため、設計者には、船価と性能の両面から、幾つもの試し設計を行い、十分に設計を比較検討することが求められている。当然、この比較検討は、設計初期の段階で短時間かつ容易に行われなければならない。
信川寿,周国強,「船体構造の最適化について」,1996年、「構造ワークシップ」,船舶構造設計における製品とプロセスの最適化、西武造船会技術研究会構造部会、(1996年)pp.69〜125 鈴木克幸,菊地昇,大坪英臣,「マイクロストラクチャーを用いた平板の最適形状レイアイト設計」,日本造船学会論文集,第171号(1992年),pp.251〜257 岡田哲夫,根木勲,「遺伝的アルゴリズムによる船体構造最適設計」,日本造船学会論文集,第171号(1992年) 岸光男,有馬正和,前田朝樹,「神経回路モデルによる船体中央横断面の離散的最適設計」,関西造船協会誌,第214号(1990年),pp.11〜17
特に、有限要素法を用いた場合は、選択した変数と条件によっては得られる解の信頼性が低下することは広く知られている問題であり、また変数と条件の増加に伴って、最適解を決定するための反復計算は莫大な計算量となる。
よって、これらの最適化手法は、設計初期の段階で必要な結果が得られない場合も考えられ、現在、設計者に求められている設計業務に耐え得る実用的、汎用的な設計システムとなええていないのではないかという欠点があった。
そこで、本発明は、上述した欠点を解消し、船舶設計を行うにあたって船舶構造パラメータをパーソナルコンピュータに与え、当該パーソナルコンピュータでSub optimization理論に基づいた最適化法を当該船舶構造パラメータに適用することにより船舶設計作業の効率化と品質向上を図ったる船舶設計検討システムを提供することを目的とする。
(1)船殻設計作業の効率化と品質向上が図れる。
(2)設計検討、部材計算、作図、重量見積といった一つに結びつけ、これにより、船舶設計作業全体の品質向上ができる。
図1は、本発明を実施するための最良の形態に係る船舶設計検討システムが適用されたパーソナルコンピュータシステムを示す外観図である。
この図1において、本発明を実施するための最良の形態に係る船舶設計検討システムは例えばパーソナルコンピュータシステム1で構成したものであって、前記パーソナルコンピュータシステム1は、入力手段から入力された船舶構造パラメータを所定の入力データファイルに格納する処理を実行する入力処理手段と、前記入力処理手段によって入力データファイルに格納された船舶構造パラメータを用い、船舶構造の設計変数を船殻構造を構成する各区画に整理し、当該区画についてSub optimization理論を適用し、全体構造に影響を及ぼす所定の区画の設計変数を代表変数とし、その他の区画をそれ以外の設計変数とし、当該代表変数を最初に最適化することにより制約条件を決定し、当該決定した制約条件をそれ以外の設計変数に導入して最適化する最適化手段と、 前記最適化手段で決定された代表変数の区画について所定のルールにより設計条件を可変しながら少なくとも重量、コストを計算し、その計算結果を基にそれ以外の設計変数における区画について前記ルールにより同様に所定の条件を可変しながら少なくとも重量、コストを計算し、その計算結果を提示できる部材計算手段とを実現している。
この図2において、前記コンピュータ装置本体3は、例えば、各種演算処理やその他の処理を実行する中央処理ユニット31と、前記中央処理ユニット31で実行するためのオペレーティングシステムやアプリケーションプログラムやその他のデータベースなどを中央処理ユニット31が処理するために記憶する主メモリ32と、オペレーティングシステムや本発明を実施するための最良の形態に係る船舶設計検討システム用のアプリケーションプログラムや本発明で使用するデータベースやその他必要なデータを格納しておくハードディスク装置33と、前記キーボード5およびマウス7を接続する入力用インターフェース(入力用I/F)34と、前記ディスプレイ9を接続する表示用インターフェース(表示用I/F)35と、前記プロッタ11を接続する作図用インターフェース(作図用I/F)36と、前記プリンタ13を接続する印刷用インターフェース(印刷用I/F)37と、これらを結ぶバスライン38とを少なくとも備えている。
(1)初期構造計画時に利用可能な計算時間、部材計算手法および計算精度を選択した。
(2)初期のパラメータ入力作業を最小限なものとする最適化手法の選択をした。
(3)最適化の過程が設計者に理解できるような計算結果の提示方法を提案した。
(4)特別な操作訓練を必要としないインターフェースを提案した。
まず、上記第(1)項に関しては、初期構造計画時の船体中央横断面構造を決定することができるものとして、部材設計については船級協会のルール計算手法を用いることとした。
「全探索方最適化手法」は、固定的な最適化手法であり、全設計案を評価して比較する方法である。すべての設計案を比較することによって、最適解を得ることができ、また手法も単純で開発が容易である。しかしながら、膨大な計算時間が必要であるので、規模の大きな問題への適用は近内であり、初期構造計画時での利用には不向きである。
「乱数探索型最適化手法」は、乱数を有効的に操作することによって、最適化設計案を求める手法である。数学的な表現に変えられない離散的な大規模問題を探索することが可能である。しかしながら、最適化過程中に掲載する設計案の数が多いのが、当該手法の決定であた、また充分な設計案の比較を行わないと最適値にたどりつくことができないため、初期構造計画時への最適は容易ではない。
次に、上記第(3)項と、上記第(4)項に関しては、設計者が日常から慣れ親しんでいるMs−Excel(エクセル;登録商標)を利用することにした。
この図4において、設計対象とする船舶はブロダクトタンカーとした。この船種は、二重船殻構造を有しており、一例として次のような主要項目となっている。
DWT:46,000〔t〕
Lpp:172.00〔m〕
Bmld:32.20〔m〕
Dmld:18.70〔m〕
この図5において、本発明を実施するための最良の形態に係る船舶設計検討システムでは、「入力処理手段を実現する入力インターフェース」、「最適化手段を実現する最適化プログラム」、「部材計算手段を実現する構造計算プログラム」の3つのアプリケーションプログラムを採用している。入力インターフェースおよびメインプログラムには、「Microsoft−Eexcel(以下、「エクセルという)」101を採用している。また、最適化プログラムには、「Optimization Engine(以下、「最適化エンジン」という)」103を採用している。さらに、構造計算プログラムには、「NK Rule’s Calculation Program(以下、「NKルール計算プログラム」という)」105を採用している。これら、エクセル101、最適化エンジン103およびNKルール計算プログラム105は、本発明を実施するための最良の形態に係る船舶設計検討システムを実現するアプリケーションプログラムとして前記コンピュータ装置本体3のハードディスク装置33に格納されている。
設計者は、まず、入力インターフェースであるエクセル101に比較的少数の構造パラメータを入力する。具体的には、エクセル101のシート上に必要な数値を入力すればよい。エクセル101は、入力された数値から、計算に使用される設計変数の初期入力データファイルを作成する。このエクセル101は、初期データの入力、結果出力を担当する。
このNKルール計算プログラム105において、計算された結果は、最適化エンジン103に渡される(S203)。また、最適化エンジン103は、結果をエクセル101に戻す(S204)。
なお、船舶設計検討システムでは、えられた最適解のデータをCADに出力できるようにしている。これにより、設計初期段階で、CADの機能を利用して中央横断面図、外板展開図、対象部材の物量灯の必要な情報の取得を行い、設計作業の支援を行えるようにしている。
最適設計問題Aを数式1の制約条件の基で、数式2を最小にするXを決定する問題であるとする。ここに、XはAにおいて互いに独立な全ての設計変数である。なお、数式1の中のmは制約条件の総数である。
このような「Sub optimization理論」を、最適化エンジン103としてコンピュータ装置本体3の中央処理ユニット31で処理可能にするため、以下のようにしている。
この二重船側区画の最適化を最初に行うことで、フレーム間隔と桁配置の制約条件が決定される。この制約条件を他の区画側へ導入することで、他の区画計算量を飛躍的に減少させることができる。また、隔壁区画る隔壁板の設計変数は他の構造から独立しているので、その部材計算を独立して行い、この計算結果をスツール区画の制約条件としている。
本発明に係る船舶設計検討システムでは、コンピュータ装置本体3において、ステップ401〜ステップ414の順序で処理が実行される。
エクセル101で必要なインプットデータを入力して最適化エンジン103に与える(S401)。
最適化エンジン103では、所定の最適化の処理を行った後に、NKルール計算プログラム105のホールドパートプログラム105aに必要なデータを与えて(S402)、ホールドパートプログラム105aで処理を実行し、その結果を再び最適化エンジン103に取り込む(S403)。
また、最適化エンジン103は、所定の最適化処理をし所定のデータをNKルール計算プログラム105のビルジパートプログラム105cに与え(S406)、NKルール計算プログラム105のビルジパートプログラム105cの処理結果を取り込む(S407)。
また、最適化エンジン103は、所定の最適化処理をし所定のデータをNKルール計算プログラム105のスツールパートプログラム105eに与え(S410)、NKルール計算プログラム105のスツールパートプログラム105eの処理結果を取り込む(S411)。
そして、最適化エンジン103は、すべての結果を取り込むと、最適化した結果を出力する(S414)。
上記処理ルーチンにおいて、部材計算で用いられる設計変数で初期入力時点で未定な変数については、初期値として「0.0」に設定されており、区画の最適化計算によって決定された値が、次の区画の最適化プログラムへ定数として引き渡されている。
(A)は全設計変数を全検索型によって最適化を行った場合の結果を示す。
(B)は二重船側区画を代表変数として、「Sub optimization理論」に基づいた最適化を行った場合を示す。
(C)は二重船底区画を代表変数として、「Sub optimization理論」に基づいた最適化を行った場合を示す。
(D)は全設計変数を遺伝的アルゴリズム利用による乱数検索型によって最適化した場合を示す。
(A)の結果を「1」とした場合の計算結果と計算時間を比較をしたものが表2に示されている。
この図8において、全検索型(A)による計算結果は黒三角で示されており、二重船側区画(B)による計算結果は黒菱形で示されており、また、二重船底区画(C)による計算結果は黒四角で示されている。
この図9において、全検索型(A)による計算結果は黒三角で示されており、二重船側区画(B)による計算結果は黒菱形で示されており、また、二重船底区画(C)による計算結果は黒四角で示されている。
また、「Sub optimization理論」の代表変数を二重船側区画とした結果(B)と、代表変数を二重船底区画とした結果(C)では、結果(B)のほうがより最適値に近い結果を得られた。
さらに、図8および図9から、代表変数を二重船側区画とした結果(B)では、解の推移が全検索型(A)と同じ傾向を示すことがわかる。
これらのことから、船殻中央横断面構造の最適化問題において、代表変数を二重船側区画としたことは妥当なものといえる。それは、二重船側区画の重量が他の区画の重量に比較して大きいことが影響しているものと思われる。
上述した結果に基づいて、本発明を実施するための最良の形態に係る船舶設計検討システムが実現されている。
本発明を実施するための最良の形態に係る船舶設計検討システムにおけるSub optimization理論による制約条件と、他の手法による制約条件について、コンピュータ装置本体3によって計算させた。この場合、例えばロンジスペースを設計変数としたときに、二重船底の計算結果が図10に示されている。ここでは、ロンジスペースを700[mm]から900[mm]の間で、10[mm]間隔長さで計算を行った結果が図10に示すグラフである。
計算結果を設計者に判断しやすい形式でグラフ化することが可能になっている。設計者は、表示された図11のグラフをみて、A案、B案を比較検討し、設計案の選択を行うことができる。
Sub optimization理論に基づき、以降の区画計算に選択した設計案の制約条件を用いて最適化を行う。以上により、制約条件が減少し、全体の計算最適化の計算量が飛躍的に減少する。なお、この制約条件の決定を、コスト最適化、重量最適化といった条件に基づいて自動決定する設定にもできるようになっている。
この図12において、本発明を実施するための第2の最良の形態に係る船舶設計検討システムは、上記図1に示すパーソナルコンピュータシステム1を使用し、前記パーソナルコンピュータシステム1のコンピュータ装置本体3において、上記第1の最良の形態で実現した最適化エンジン103およびNKルール計算プログラム105からなる中央横断面構造最適化エンジンプログラム107を実行できるようにするとともに、3次元モデル化エンジンプログラム109を実行できるようにし、これらの間のデータの受け渡しをエクセル101で仲立ちさせて全体の処理を可能としたものである。
この中央横断面構造最適化エンジンプログラム107は、既に説明したように、中央横断面平行部の重量、コスト最適化ルーチンを含めており、ここで中央横断面構造の構造最適化が行われる。構造最適化には、Sub Optimization理論を採用していることは既に説明したとおりである。
本発明を実施するための第2の最良の形態に係る船舶設計検討システムでは、Sub optimization理論と、トッポロジー理論の2つの数学的な理論から船殻構造を分析できるようにしている。両理論とも、船殻構造全体を、主要構造や区画という単位の部分構造から構築されるとして捉えており、その点からも両理論から開発したシステムはデータのやりとりが容易である。
本発明を実施するための第2の最良の形態に係る船舶設計検討システムでは、システム活用で設計検討をフットワークの良いものとし、設計者が必要とする情報を素早く簡単に提供できるようにしている。
まず、前記パーソナルコンピュータシステム1のコンピュータ装置本体3が中央横断面構造最適化エンジンプログラム107を実行することにより中央横断面の部材配置を決定する(S701)。この中央横断面構造最適化エンジンプログラム107は、設計者に、その最適化の過程を図中の801で示すようにグラフで示す構造を持っており、最適化の過程を確認しながら設計者の判断を優先し最適化を進めることが可能である。
さらに、パーソナルコンピュータシステム1のコンピュータ装置本体3では、3次元モデル化エンジンプログラム109を実行し、中央断面図、外板展開図、鋼材配置図等の作図を可能である(S703)。
さらに、前記コンピュータ装置本体3は、3次元モデル化エンジンプログラム109を実行し、前記ステップS704で得られた前記ブロックの3次元データを用いて、組み立て要領図を作成することができる(S705)。
3・・・コンピュータ装置本体
5・・・キーボード
7・・・マウス
9・・・ディスプレイ
11・・・プロッタ
31・・・中央処理ユニット
32・・・主メモリ
33・・・ハードディスク装置
Claims (1)
- 入力手段から入力された船舶構造パラメータを所定の入力データファイルに格納する処理を実行する入力処理手段と、
前記入力処理手段によって入力データファイルに格納された船舶構造パラメータについて船殻構造を構成する各区画を船側区画、二重底区画、ビルジ部区画、上甲板区画および隔壁区画・スツール区画に整理し、船舶の構造全体の最適化構造に影響を及ぼす区画を船側区画と決定して当該船側区画を代表設計変数とし、その他の区画を前記代表設計変数以外の設計変数とし、代表設計変数を最初に最適化し、当該決定した制約条件を前記代表設計変数以外の設計変数に導入して船舶の構造全体を最適化できる最適化手段と、
前記最適化手段で決定された代表変数の区画について船級ルールにより設計条件を可変しながら少なくとも重量、コストを計算し、その計算結果を基にそれ以外の設計変数における区画について前記ルールにより同様に所定の条件を可変しながら少なくとも重量、コストを計算し、その計算結果を提示できる部材計算手段と、
前記部材計算手段で得られた船体構造のデータを作図する3次元モデル化エンジンとを備え、
前記最適化手段は、船舶の構造全体Zを、数式1の制約条件の基で、数式2を最小とするXを決定することにより得られるものとし、さらに、船舶の構造全体の最適化に影響を及ぼす区画を船側区画を代表設計変数X l とし、その他の区画を前記代表設計変数X l 以外の設計変数X Π とし、同様に制約条件も数式4、数式5が成立するものとし、最終的に、数式10の制約条件の基で、数式11を最小とする設計変数X l 'と、設計変数X Π とを決定することにより一つの区画の最適解Z lj を求めることができるものとし、これによって得られた最適解Z lj を用いてその他の区画の最適解を求めることができるようにした処理手段を有し、
前記最適化手段は、その結果を踏まえて次の区画の最適解を求めて、その次の区画の最適解を前記部材計算手段に与え、最後の区画が終了するまで前記処理を繰り返しを実行し、船舶構造全体の最適解を得るものであることをとを特徴とする船舶設計検討システム。
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