JP4021321B2 - 強磁性材料の応力測定 - Google Patents
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Description
(発明の技術分野)
本発明は、強磁性材料、特に、長い物体における応力を測定する方法および装置に関する。たとえば、本発明は、オイルまたはガスを搬送するのに使用されるような鋼製パイプラインにおける応力を測定するのに適している。
【0002】
(発明の背景技術)
パイプラインの応力は、さまざまな原因から生じる。この原因は、温度の変化、周囲の土壌の移動および周囲の土壌からの圧力、パイプライン内の流体の圧力を含む。また、長いパイプの製造、パイプ同士の溶接、そして、製造中に個々のパイプが受ける任意の曲げから生じる残留応力もあり得る。製造に起因する残留応力は、個々のパイプを製造する方法に依存し、また、個々のパイプが応力除去熱処理を受けたかどうかに依存する。いずれにしても、主応力方向は、通常、円周方向、長手方向にある。磁気測定は、通常、微細構造のような他の材料特性によっても影響を受けるけれども、さまざまな磁気技術が応力に対して或る程度の感度を有することは知られている。鋼板における応力を測定する1つの方法が、英国特許第GB2,278,450号に記載されている。この方法では、電磁コアを収容するプローブを用いて鋼板に交番磁場を発生させ、次いで、2つのセンサからの測定値を組み合わせる。一方のセンサからの測定値は、応力誘起性磁気異方性の測定値であり、他方のセンサからの測定値は、方向性有効透過率の測定値である。プローブは、磁場が鋼板において複数の異なった方位を有するように徐々に方向転換させ、これらの方位の各々での測定値を採取する。良好な空間分解能を達成すると共に、表面の曲率の影響を最小限に抑えるために、小さいプローブ、直径50mm未満、好ましくは、20mm未満のプローブの使用が推奨される。この手法によれば、鋼板の或る特定の部位のところで応力を正確に測定することができる。しかしながら、長い物体における応力を測定するためには、物体の全長にわたって移動しながら測定を行うことができると望ましいであろう。
【0003】
本発明は、強磁性材料からなる物体の応力を測定する装置であって、前記装置は、プローブの直線アレイと、前記アレイ内のプローブが、物体の表面上の或る部位を連続的に通過するように物体に対して移動するように配置したアレイ用の支持構造とを含み、各々のプローブが、1つの電磁コア、および、2つの間隔を置いた電磁極を構成する電磁石手段と、前記電磁石手段に、したがって、物体に交番磁場を発生させるように交流電流を供給する手段と、前記電磁石手段の電磁極間の磁気回路部分の磁気抵抗を検知し、交流電流と同位相の成分、および、交流電流に対して直交位相の成分に分解できる対応する信号を発生する磁気センサとを含み、前記磁気センサからの信号は、バンド幅を有するフィルタ手段によって処理されるようになっており、交番磁場の周波数、各々のプローブの磁極の中心間の分離距離、および、物体に対する前記アレイの速度は、前記周波数が、前記速度を、前記プローブの磁極の中心間の分離距離の二倍で割ることによって算出された値よりも、少なくとも前記バンド幅だけ大きくなるように選定してあり、前記アレイ内の連続したプローブが異なった方位に向いており、物体内の磁場の対応する方位が異なるようにしてある。
【0004】
好ましくは、アレイは、プローブの直線アレイを含んでおり、このプローブの直線アレイにおいては、プローブの少なくともいくつかが、2つの電磁極間にあり、電磁極間の自由空間磁場の方向に対して直角な磁束密度を検出するように配置した第1の磁気センサを含み、プローブの少なくともいくつかが、電磁石手段の電磁極間の磁気回路部分の磁気抵抗を検出するように配置した第2の磁気センサを含んでいる。
【0005】
材料が平坦なプレートであり、正確に等方性の場合には、第1のセンサは信号を検出しない。しかしながら、応力が、材料の磁気特性に異方性を誘起すると、第1のセンサが信号を受信し、これらの信号が、この応力誘起磁気異方性(SMA)の測度となる。プローブが物体上の或る部位を通過するにつれて、異なる方位のプローブからのSMA信号における変動により、主応力軸線の方向を正確に測定することが可能になる。SMA信号は、また、応力にも関連することができる。
【0006】
第2のセンサは、磁束が材料を通って電磁極間を通過するときの材料の透磁率の測度を提供し、したがって、材料の有効透磁率を示す信号を提供する。それ故、プローブが物体上の或る部位を通過するときに、異なった方位のプローブからの対応する測定値が、異なった方向における有効透過率を示す。これは、方向性有効透過率(DEP)と呼ばれる。これらのDEP信号により、応力の値を決定することが可能になる。
【0007】
プローブからのDEP信号は、好ましくは、バックオフされる。すなわち、応力無し部位に隣接したプローブを有するセンサからの信号に等しい信号をまず減算することによって処理される。それ故、応力によるDEPにおける小さい変化を検出するのがより容易となる。次いで、DEP信号を、交番磁場を発生させる電流と同じ位相の成分と、それに対して直角位相にある成分(インピーダンス位相における抵抗および磁気抵抗に類似する成分)とに分解することができる。表面とプローブの間のギャップ(リフトオフ)が変化する場合、これもDEP信号に影響を及ぼす。この変化は、リフトオフ方向と呼ばれる方向における方位に向いたインピーダンス平面の方向に対応する。それ故、リフトオフにおける変化によるスプリアス効果を避けるために、出力DEP信号は、インピーダンス平面においてリフトオフ方向に対して直角である信号成分となる。異なったプローブから得られたこの分解成分の値により、主応力軸線の方向と整合する磁場を有する分解成分の値を決定し、それ故、その部位のところでの主応力の値を算出することができる。好ましくは、プローブからのDEP信号を最初にデジタル化し、これらのデジタル信号の分析にバックオフ補正およびリフトオフ補正を適用する。
【0008】
あるいは、パイプラインにおける曲げ応力を決定することだけを望む場合には、パイプの直径方向に対向した側面で得られるDEP測定値を互いに減算するだけでよいかも知れない。
【0009】
これらの概念のいくつかは、プローブのアレイがあり、このアレイが表面に対して移動するという点を除いて、前述の英国特許第GB2278450号で使用される概念に類似している。磁場は、アレイの移動によってひずむ傾向があり、これは、渦電流を発生させる。強磁性物体の表面への浸透を達成するために、200Hz未満の交番周波数、より好ましくは、10Hz〜100Hzの交番周波数で作動することが望ましい。このような低い周波数では、交番磁界の単一期間中にかなりのプローブ移動があることは了解できよう。さらに、数メートル/秒まで直線速度でスキャンするとき、たとえば1mmほどのオーダーのリフトオフの変動があることを避けるのは困難であるから、測定技術がこのような変動によって実質的に影響を受けなくてすむことが望ましいであろう。
【0010】
したがって、各プローブに、少なくとも75mm、より好ましくは、少なくとも100mmであり、しかも、好ましくは、350mm以下である幅(width)および横幅(breadth)を持たせることが望ましい。このような大きいプローブは、リフトオフに対する感度が小さく、渦電流が問題を起こす前に、高い移動速度を達成することができる。好ましくは、各プローブは、また、そのプローブについてのリフトオフを示す信号を提供する近接センサを含み、各リフトオフ値でのDEP信号、SMA信号の対応する減衰程度を示すように近接センサを較正し、DEP信号、SMA信号を補正することができるようにする。
【0011】
一般的に、応力レベルおよび主軸線の決定をより正確に行える測定値を採取できるように、もっと異なったプローブ方位を使用する。多くの場合、主応力軸線は、特定の方向(パイプの場合、軸線方向、円周方向)において整合していると仮定することができ、たとえば、その結果、DEPについての信号最大値、最小値がこれらの方向に沿って存在すると予想されることになり、SMAについての信号最大値、最小値がこれらの方向間の交差角度に沿って存在すると予想されることになる。英国特許第GB2278450号の方法においては、測定値は、10度の間隔で採取されると記載されているが、それと対照的に、本発明のアレイは、プローブが10より少なくてもよく、たとえば、移動方向に対して0度、45度、90度、135度に向いた4つのプローブを持てばよい。
【0012】
(発明の好ましい実施形態)
以下、本発明を、実施形態によって、添付図面を参照しながら、さらに詳しく説明する。
【0013】
まず図1を参照すると、地下パイプ12の壁における応力を測定するための点検ピッグ10が示してある。このピッグ10は、2つのほぼ円筒形のハウジング14、15からなり、各ハウジングは、4つの弾力的なカップ・シールによってパイプ12内に支持され、これらのカップ・シールは、ピッグ10が、パイプ12内の流体の流れと共に左から右へ(図で見て)移動できるような向きになっている。2つのハウジング14、15は、万能継手18によって連結されている。ハウジング14、15は、電源となる電池と、信号処理ユニットと、データ記録ユニット(図示せず)とを収容している。これらの構成要素の動作は後に説明する。前部ハウジング15は、4つのプローブ直線アレイを担持している(そのうち2だけが図示してあり、プローブそれ自体は図1には示していない)。各アレイは、弾力的に装着したアーム22によって連結した支持バー20によって支持されており、アレイがパイプ12の内壁面に向かって外方へ押圧されるようになっている。各アレイは、パイプ12の長手方向軸線と平行に整合しており、また、長手方向軸線まわりに等間隔で隔たっており、したがって、たとえば、ハウジング15の上、下、左右に存在する。後部ハウジング14は、パイプ12の内面に沿って転がるように配置し、ピッグの移動した距離、速度を測定することができるホイール24を担持している。
【0014】
次ぎに図2を参照すると、支持バー20は、4つのプローブ30を担持している。図3も参照すると、各プローブ30は、シリコン鉄からなるU字形コア32を含み、このコアは、共通平面にある2つの矩形磁極34を構成している。各磁極は、110mm×30mmであり、磁極間のスペースは、110mm×50mmである。磁極34の面は、やや湾曲しており、パイプ12の壁の湾曲に一致している。連続したプローブ30間の分離距離もまた110mmである。巻型がU字形コア32の上端まわりにあり、2つの重畳コイル36が巻型に巻き付けられている。1つのコイル36は、500巻(500ターン)の巻回部を有しており、使用時、60Hzの周波数で0.2Aの交流電流の供給を受ける。このコイルは電圧印加コイルである。電圧を印加した時、このコイルは、U字形コア32内およびパイプ12の隣接した壁に交番磁場を発生させる。この磁場は、パイプ壁の材料に対する飽和磁場に比べて小さい。他方のコイル36は、DEP信号を提供する検知コイルである。
【0015】
2つの磁極34の中間には、1000巻(1000ターン)の巻回部を有する矩形コイル38を巻き付けた巻型があり、各巻回部は、図3の巻回部に対して平行な平面に位置し、したがって、コイル38の長手方向軸線は、磁極34の中心間のラインに対して直角である(すなわち、パイプ12が存在しないときの磁場の方向である自由空間磁場方向に対して直角である)。コイル38は、U字形コア32のアーム間に固定した支持プレート40上に支持されており、したがって、コイル38の下面は、磁極34の平面内にある。コイル38は、SMA信号を提供する。コイル38の側面と磁極34の側面との間には、近接検知コイル42の2つの半分部分があり、この近接検知コイルの長手方向軸線は、自由空間磁場方向に対して平行である(2つの半分部分は電気的に直列である)。このコイル42は、漏洩磁束を検出し、リフトオフによってかなりの影響を受ける。DEP信号とSMA信号の両方の信号は、ヘッド増幅器によって増幅されてから、さらなる処理を受ける。
【0016】
ここで再び図2を参照すると、4つのプローブ30は、同一の構造であるが、方位が異なっている。すなわち、右(図示の通り)から、すなわち、支持バー20の前方から作動するとして、第1のプローブは、移動方向に対して平行な磁場を持つ方位となっており、第2のプローブは、移動方向に対して90度の磁場を持つ方位となっており、第3のプローブは、移動方向に対して45度の磁場を持つ方位となっており、第4のプローブは、移動方向に対して135度の磁場を持つ方位となっている。
【0017】
したがって、作動時、電圧印加用コイル36に電圧が印加されると、各プローブ30に隣接したパイプ12の壁は、交番磁場を受けることになる。磁場は、鋼内に限られた距離しか透過できない。これは、本質的に、標準の軟鋼が、逆比例のルートHzあたり約17mmの浸透深さを示し、20Hzの場合、約3.8mmの浸透を示し、そして、60Hzの場合、約2.2mm.の浸透を示すスキン効果のためである。もし引っ張り応力がパイプ壁内に存在し、適用磁束が応力方向に関して或る角度にあるならば、磁界は、引っ張り軸線に向かって回転する傾向がある。これは、SMA信号およびDEP信号の両方の信号に影響を及ぼし、特に、プローブ方向が応力についての主軸線をほぼ二等分するときに最大SMA信号が発生する。パイプ12に関連して、主応力方向は、円周方向(フープ)および長手方向であることを予想することができ、その結果、第3のプローブおよび第4のプローブ30が最大のSMA信号を与えると予想することができる。
【0018】
リフトオフは、信号の大きさに影響を及ぼすが、リフトオフに対する感度は、より小さいプローブの場合よりもかなり小さい。図4を参照すると、図4には、リフトオフhの異なった値についての、プローブ30に隣接したパイプ壁における磁束密度Bの変化を示すグラフが示してあり、比較のために、12mm×12mmである小さいプローブ(実質的に、英国特許第GB2278450号に記載されているものと同じ)での対応する値も示してある。磁束密度の減少(DEP信号、SMA信号の減少を示す)は、より大きいプローブ30についてはかなり小さい。
【0019】
プローブ30のサイズも、応力に対する感度に影響する。応力の変化が10%のパイプ壁透磁率変化となると仮定して、磁気回路における全体的な磁気抵抗変化(DEP測定値に対応する)を、小さいプローブの場合のたったの0.79%と比べて、プローブ30の場合、3.44%として算出した。
【0020】
代表的には、ピッグ10は、1〜4m/s(たとえば、2.4m/s)の速度でパイプ12に沿って移動することができる。パイプ壁に対するプローブ30の移動も、壁内の磁場に影響を及ぼす。すなわち、それをひずませる。この影響は、渦電流の見地から説明され得る。第1のプローブ30(これの磁場は移動方向に対して平行である)を考えてみると、誘起渦電流の主周波数fは、磁極34の中心間の距離dと、速度vとによって決まる。それは、南磁極が1サイクル分先にあったところに北磁極が達するのに必要な距離の2倍、プローブ30が移動するのに充分な速度の時に生じる。すなわち、
f=v/2d
であり、主周波数は、他のプローブ30についても同様となる。この例では、所望の信号は、60Hzの周波数で発生し、したがって、渦電流信号は、好ましくは、この周波数よりかなり小さい。それ故、発生した交番磁場の周波数は、表面に対するアレイの速度を、前記プローブ30の磁極の中心間の分離距離の二倍で割ることによって算出した周波数よりもかなり大きくなければならない。たとえば、信号がバンド幅40Hzのフィルタを使用して処理した場合、渦電流周波数fは、好ましくは、20Hz未満であり、より一般的には、渦電流周波数fは、少なくともフィルタのバンド幅分だけ駆動周波数から異なっていなければならない。プローブ30は、約80mmのdの値を有し、したがって、2.4m/sの速度で、予想渦電流周波数fは、15Hzとなり、これは、充分に低い。ここで、ピッグ10がかなり高い速度で移動する必要がある場合、この渦電流ひずみは、より大きいプローブを使用しても除去できるが、これは、明らかに、測定値の分離度を減らす。
【0021】
駆動周波数の選択も、応力、リフトオフの両方に対するプローブ30の感度に影響する。実際に、ピッグ10がパイプ12に沿って移動するときに、リフトオフは、1〜5mmの範囲内にあると予想することができ、プローブ30は、耐磨耗性非磁性スペーサ(図示せず)、たとえば、セラミック製のスペーサを備え、コイル38、42が確実にパイプ12との接触による損傷を受けないようにしてもよい。駆動周波数が増大するにつれて、パイプ壁内の磁気回路部分の磁気抵抗が増大し、その結果、応力による何らかの変化がDEP信号により大きい影響を与える。同様に、より高い周波数では、磁極34とパイプ壁との間のギャップが、磁気回路における磁気抵抗の割合をより少なくするのに貢献し、したがって、プローブ30のリフトオフに対する感度が小さくなる。これは、以下で参照する図5に示してある。この図5は、応力に対する相対感度(グラフS)、リフトオフに対する相対感度(グラフT)、応力感度対リフトオフ感度の比(グラフR)を示している。この図5は、周波数が高ければ有利であることを示唆しているが、より高い周波数では、電力消費が大きくなる。すなわち、ピッグ10がダイナモ(ホイール24に連結していてもよい)も含まない限り、電力消費量が高くなれば、運転時間が短縮し、これは電池の能力で決まる。
【0022】
SMA信号、DEP信号の解釈は、英国特許第GB2278450号に記載されているのと同様の方法で実施することができる。パイプ表面の応力状態は、3つのパラメータ、すなわち、2つの主応力レベルと主応力方向(他の主応力は直交方向である)によって特徴づけることが可能である。パイプ12の場合、主軸線が長手方向であり、円周方向であると仮定するのが合理的である。それ故、DEP信号の場合、最も重要な値は、第1のプローブ(すなわち、0度のプローブ)、第2のプローブ30(すなわち、90度のプローブ)によって得られた値であり、一方、最も重要なSMA値は、第3のプローブ(すなわち、45度のプローブ)、第4のプローブ30(すなわち、135度のプローブ)によって得られた値である。実際に、DEP信号は、角度に応じてコサイン・グラフとして変化する。その結果、他の方位に沿った測定値は、最大値、最小値の評価を向上させる。
【0023】
測定が行われる前に、応力を無視することができる(または、任意既知のレートにある)パイプラインの領域にプローブ30のアレイを設置し、DEP信号の値をバックオフしてゼロ信号を与える。それ故、応力によるDEPにおける小さな変化を測定するのがより容易になる。次ぎに、プローブ30をパイプ表面から離れる方向に徐々に移動させる。そして、DEP信号、SMA信号の減衰値と同様に、異なったリフトオフ値での近接コイル42からの信号を書き留める。近接コイル42からの信号、コイル38からのSMA信号および検知コイル36からのDEP信号の各々は、交番磁界を発生させる電流と同位相の成分と、この成分に対して直交位相の成分とに分解することができる。これらの成分は、インピーダンス平面における抵抗および磁気抵抗に対応する。リフトオフの変化によるスプリアス効果を回避するために、出力DEP信号は、インピーダンス平面におけるリフトオフ効果に対して直角の方向において分解されたものとなる。近接コイル42からの信号は、インピーダンス平面における応力効果に対して直角の方向において分解される。その結果、こうして生じた近接信号は、リフトオフにのみ依存する。DPE測定値についてのバックオフおよびリフトオフの両方の初期化と、近接コイル42についての分析および較正は、共に、測定を行う前に実施しなければならない。
【0024】
ピッグ10の使用時、近接コイル42からの信号、DPE検知コイル36からの信号およびSMAコイル38からの信号は、増幅してから保存する。しかしながら、データの保存前に、ピッグ10において、或る種の信号処理を実施してもよい。保存したデータは、その後、ダウンロードし、分析してパイプ12に沿った応力を決定する。特に、これらの信号をバックオフし(DEP信号の場合)、同相および直交位相成分に復調し、ローパスフィルタ出力(たとえば、40Hzでカットオフ)に通してDC値を決定すると好ましい。そして、(DEP信号の場合)、これらの信号をリフトオフ効果に対して直角な方向において分解する。この信号処理は、保存前に実施してもよい。近接コイル42からの信号(応力効果に対して直角に分解した信号)を使用して、DEP信号、SMA信号の適切な増幅を決定し、リフトオフによる減衰を補正する。DEP、SMAについての適切に分解した信号値は、次ぎに、適切な量だけ増幅することができる。これらの信号処理段階は、すべて、デジタル的に実施すると好ましい。
【0025】
図6を参照すると、ピッグ10内の電子システムが概略的に示してある。各プローブ30内の各センサ・コイル、すなわち、DEPコイル36、SMAコイル38および近接コイル42は、前置増幅器44を備え、電気接続部から電子機器の残りの部分までのコイルのインピーダンスを緩衝し、環境における電気ノイズに対して充分に強くなるように信号を増幅する。増幅された信号は、マルチプレクサ46およびアナログディジタル変換器48を経てデジタル信号プロセッサ50に送られる。各プローブ30は、駆動回路52も有し、電圧印加用コイル36に60Hzの駆動電流を与える。駆動回路52は、同じ位相の信号も信号プロセッサ50に送る。信号プロセッサ50は、上述したように個々のセンサ出力を復調し、濾波し、データを一時的に保存する。次いで、このデータは、シリアル通信バス54およびノード・プロセッサ56を経てデータ記憶ユニット58に送られる。
【0026】
アレイにおける他のプローブ30からの対応する信号も、また、シリアル・バス54を経てプロセッサ56に送られる。データ記憶ユニット58は、同様の要領で、ピッグ10内のすべてのアレイにおけるすべてのプローブ30からデータを受け取り、そして、データを保存する。
【0027】
次いで、主応力軸線の方向における応力の値は、これらの方向におけるDEPの結果として生じた実験測定値から(すなわち、第1のプローブおよび第2のプローブ30から)決定することができ、そして、交差方向におけるSMA信号の値の差から(すなわち、SMA信号が最小値、最大値を持つと予想される方向にある第3のプローブおよび第4のプローブ30から)決定できる。このことは、理論的な分析から行うことができ、あるいは、或る較正方法によって行うことができ、種々の異なった応力を加えながらパイプ12と同じタイプの材料のサンプルについて、上述の要領で、測定値を採取する。これは、十字形サンプルで行ってもよい。その場合、十字形サンプルのアームがテスト・リグの軸線と整合しており、SMAの測定およびDEPの測定は、サンプルの中心で行われるが、その場合、主応力方向は、テスト・リグの軸線と整合している。したがって、英国特許第GB2278450号に記載されているように、第1のプローブ30(すなわち、1つの軸線に対して平行な磁場)からのDEPの較正測定値を、応力平面における輪郭としてプロットすることができ、第2のプローブ30(すなわち、直交軸線に対して平行な磁場)からのDEPの実験測定値も応力平面における輪郭としてプロットすることができる。そして、第3のプローブ、第4のプローブ30からの直交位相SMA測定値の差も、応力平面における輪郭としてプロットすることができる。次ぎに、ピッグ10がパイプ12を通って移動するにつれて、これらの較正マップを用いてこれらのパラメータの測定値からパイプ壁における二軸応力を決定することができる。実際に、プローブ30のうちの1つに類似し、それより小さい単一のプローブを使用してこれらの較正をより容易に実施してもよい。
【0028】
ここで、プローブ30のアレイが、主応力軸線と整合したプローブ30だけでなく、4つすべてのプローブ30からDEP測定値を得ることを理解することができる。他のプローブからのDEPの測定値は、角度に応じたDEP信号の変動がコサイン・グラフをたどらなければならないために、主応力軸線に対して平行な値の、もっと正確な決定値を得るのに使用してもよい。
【0029】
ここで、本発明の点検ピッグが上述の形態と異なっていてもよいことは了解されたい。たとえば、アレイは、異なる弾力性のある支持体で支えてもよい。実際に、アレイ内のプローブ30を個別に支持してもよい。パイプを点検するのに使用されるアレイの数は、たとえば、2であってもよく、3であってもよく、または、5であってもよく、1つのアレイ内に、異なった数のプローブ30があってもよく、たとえば、26個のプローブ30があってもよいし、36個のプローブ30があってもよいし、56個のプローブ30があってもよいし、または、6個のプローブ30があってもよい。SMA信号のためのセンサは、上述したものと異なっていてもよいし、DEP信号のためのセンサは、上述したものと異なっていてもよい。たとえば、SMA信号をホール効果センサまたはマグネトレジスタによって検知してもよいし、代わりにDEP信号を、駆動コイル36のインピーダンスをモニタすることによって決定してもよい。その結果、検知コイル36が不要となる。また、プローブ30の直線アレイを使用して、パイプではなくて、平坦な物体を点検することもできる。たとえば、レールに沿ってスキャンしてもよいし、ガーダーに沿ってスキャンしてもよいし、または、鋼板に沿ってスキャンしてもよい。相対移動は、アレイの移動ではなく、物体の移動から生じるようにしてもよい。同様に、プローブ30の直線アレイを使用して、パイプ壁の応力を測定するために、外側から穿設パイプを点検してもよい。このようなアレイを、ピッグではなく手動で移動させてもよいし、あるいは、車両によって移動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプローブ・アレイを組み込んでいるパイプライン点検ピッグの一部断面全体図を示している。
【図2】 プローブ・アレイの、図1の矢印方向における平面図を示している。
【図3】 プローブのうちの1つの、図2の矢印Bの方向における立面図を示している。
【図4】 プローブと壁の分離量が変化するときの、パイプ壁における磁場の変動を示すグラフである。
【図5】 駆動周波数が変化するときの、応力およびリフトオフに対するプローブの相対的な感度の変動を示すグラフである。
【図6】 図1のピッグの電子回路を示すブロック図である。
Claims (8)
- 強磁性材料からなる物体(12)の応力を測定する装置であって、前記装置は、プローブ(30)の直線アレイと、前記アレイ内のプローブが、物体の表面上の或る部位を連続的に通過するように物体に対して移動するように配置したアレイ用の支持構造(20、22)とを含み、各々のプローブ(30)が、1つの電磁コア(32)、および、2つの間隔を置いた電磁極(34)を構成する電磁石手段と、前記電磁石手段に、したがって、物体に交番磁場を発生させるように交流電流を供給する手段と、前記電磁石手段の電磁極間の磁気回路部分の磁気抵抗を検知し、交流電流と同位相の成分、および、交流電流に対して直交位相の成分に分解できる対応する信号を発生する磁気センサ(36)とを含み、前記磁気センサ(36)からの信号は、バンド幅を有するフィルタ手段によって処理されるようになっており、交番磁場の周波数、各々のプローブ(30)の磁極の中心間の分離距離、および、物体(12)に対する前記アレイの速度は、前記周波数が、前記速度を、前記プローブ(30)の磁極の中心間の分離距離の二倍で割ることによって算出された値よりも、少なくとも前記バンド幅だけ大きくなるように選定してあり、前記アレイ内の連続したプローブが異なった方位に向いており、物体(12)内の磁場の対応する方位が異なるようにしてあることを特徴とする装置。
- 前記アレイが、プローブ(30)の直線アレイを含み、少なくとも複数のプローブ(30)が、2つの磁極(34)間に位置し、前記磁極(34)間の自由空間磁場の方向に対して直角の磁束密度を検知するように配置した第1の磁気センサ(38)を含み、また、少なくとも複数のプローブ(30)が、前記電磁石手段の磁極(34)間の磁気回路の部分の磁気抵抗を検知するように配置した第2の磁気センサ(36)を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 各々のプローブ(30)の面が、少なくとも50mmであるが、350mm以下の幅を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の装置。
- 各々のプローブ(30)の面が、少なくとも100mmの幅を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置。
- 磁気回路の前記部分の磁気抵抗を表している信号を、交流電流と同位相の成分と、交流電流に対して直交位相の成分とに処理する手段をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置。
- 前記アレイが、10個未満のプローブ(30)を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の装置。
- 前記アレイが、移動方向に対して0度、45度、90度、135度の方位となっているプローブ(30)を含むことを特徴とする請求項6に記載の装置。
- 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置を使用することによって、強磁性材料からなる物体の応力を測定することを特徴とする方法。
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