JP4021215B2 - 電気泳動方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はDNAやRNAなどの遺伝子(核酸)の解析を行う電気泳動装置に係り、特に遺伝子の欠失やヘテロ接合性の消失など、がんなどの疾病と関連のある遺伝子異常などを、遺伝子多型マーカを手がかりとして、非変性条件の電気泳動法(1本鎖DNA断片高次構造多型解析法、以下SSCP法)により解析する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子の多型性、即ち配列の個人差をマーカとして利用することにより、がんの確定診断を行う方法として、Int. J. Cancer (Pred. Oncol.), 74, 403-406 (1997)に示される方法(以下、公知例1という)がある。この公知例1の概略を以下に説明する。遺伝子配列中の特定の領域を標識プライマーを用いてポリメラーゼチェインリアクション法(PCR)により増幅した後、3’→5’エクソヌクレアーゼ活性を有する酵素(Klenowフラグメント等)により3’末端を平滑化する。このDNA断片についてスラブゲル型電気泳動装置を非変性条件下で使用するSSCP法による解析を行い、1塩基置換多型(SNPs)を有する対立遺伝子(アリル)を分離検出する。健常なヘテロ接合体の場合、それぞれのアリルの存在量比は理論的に1:1である。ヘテロ接合体をSSCP法で解析すると、2つの遺伝子型のアリルに対応する2つのピークが独立に観測され、両者の信号強度比はほぼ1:1となる。一方、ほとんどのがん細胞では遺伝子の欠失や増幅などの異常が生じる。観測する多型のサイトにおいて、ヘテロ接合体の片方の対立遺伝子が欠失や増幅を起こすと、いわゆるヘテロ接合性の消失(LOH)が生じる。SSCP法においてはLOHはヘテロ接合体の各アリルに対応する2つのピークの信号強度比が1:1から外れる現象として観測される。
【0003】
公知例1では、ポリアクリルアミド−ビスアクリルアミド共重合体を主成分とする網目状ゲルを非変性条件で電気泳動媒体として使用した。また正常組織として末梢血白血球由来、並びにがんを疑われる検査対象組織由来のゲノムDNAをテンプレートとして使用した。末梢血白血球由来の試料における2つのピークの信号強度比と、検査対象組織由来の試料における2つのピークの信号強度比とから、がん細胞由来の核DNA量が2倍体であると仮定して、検査対象組織中のがん細胞の割合を推定した。公知例1の実施例4においては、多型マーカとしてp53遺伝子領域におけるSNPsマーカ3箇所(exon4、intron1、intron7、以下それぞれEx4、Int1、Int7と略す)に着目して解析し、がん細胞の割合が10%未満の場合を正常(LOH−、陰性)、10%を越えた場合を異常(LOH+、陽性)と判断した。
【0004】
上記公知例1に関連する方法として、Int. J. Cancer, 78, 425-429 (1998)(以下、公知例2という)がある。公知例2では、SNPsマーカ2箇所(VAV2、ALDOB)以外に、4塩基リピート型のマイクロサテライト多型マーカ3箇所(D9S303,D9S304,D9S775)について同様にSSCP法によるLOH解析を行い、その結果が膀胱がん再発予測に有効であること報告している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の公知例1,2はスラブゲル型電気泳動装置を使用したが、ルーチンの臨床検査に適用するためには自動化、省力化、高速化が求められる。そこで本発明者らは、分離媒体(ポリマ)の自動充填機構やサンプルの自動注入機構を有するポリマ詰替方式のキャピラリ電気泳動装置を適用することにより、自動化、省力化、高速化を図ることを検討した。
【0006】
このキャピラリ電気泳動装置を用いるSSCP法に関しては、例えばアプライドバイオシステムズ(ABI)社刊、"GeneScan(R) Reference Guide, Chemistry Reference for the ABI PRISM(R) 310 Genetic Analyzer"、P/N 4303189 Rev. A、(1997年)の第7章"SSCP Analysis"(以下、公知例3という)に開示されている方法がある。
【0007】
しかしながら、キャピラリ電気泳動装置を用いたSSCPは研究段階にあり、多くの課題が残されている。特に、ポリマ詰替方式のキャピラリ電気泳動装置では、ポリマの濃度が高いと詰替操作などが困難となるため、スラブゲル方式と比較して低い濃度の分離媒体しか使用できず、結果的にスラブゲル方式と比較して分離が悪いという課題があった。
【0008】
例えば、Hebenbrock et al., Electrophoresis, 16, 1429 (1995)(以下、公知例4という)によると、キャピラリ電気泳動装置を用いたSSCPにおいて、ポリマ濃度を8%以上に高めることにより分離が改善する。しかし、ポリマ濃度を8%以上とすると泳動時間が増加し、取扱いも困難になるため、ポリマの分子量を低減して粘性を下げる試みを報告している。最終的にはポリマ詰替の容易さ、分離、泳動時間を鑑み、最適なポリマ濃度は7%と結論づけている。公知例4の結論を公知例3のキャピラリ電気泳動装置に適用し、濃度7%のポリマを用いてキャピラリ電気泳動によるSSCPを検討したところ、公知例1のスラブゲル型よりも分離が低い、という課題が確認された。
【0009】
また、より根本的な問題もあった。従来、スラブゲル電気泳動法におけるSSCP分離の改善策として、ビスアクリルアミドの含量を高くし、ゲルの架橋度を上げる方法が知られていた。一方、詰替方式のキャピラリ電気泳動法では直鎖状ポリマを用いる必要があるが、このポリマの架橋度はゼロである。従って、架橋度がゼロの詰替ポリマを用いるキャピラリ電気泳動装置では、架橋度が高いゲルを用いるスラブゲル電気泳動装置と同等のSSCP分離を得ることは原理的に不可能である、と従来は考えられていた。
本発明の目的は、ポリマ詰替方式のキャピラリ電気泳動装置において、公知例1,2に記載のスラブゲル電気泳動装置と同等のSSCP分離を達成することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、SSCP法による解析を行うための、ポリマ詰替方式のキャピラリ電気泳動装置に関する上記課題を追求する過程でなされた。
【0011】
本発明はポリマ詰替方式のキャピラリ電気泳動装置において、12〜18重量%、好ましくは約15重量%の濃度のポリマを分離媒体として使用し、このポリマを測定毎に詰め替えて使用する。また本発明は、内径が50μmより太く100μmより細い、好ましくは約75μm(75±5μm)のキャピラリを使用する。また本発明は、電気伝導度が0.4mS/cm以下の泳動媒体を使用する。好ましくは泳動媒体中の緩衝剤成分として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとグリシンを用い、好ましくはそれぞれの濃度を約25mM、約192mMとする。
以上の構成により、本発明によるキャピラリ電気泳動措置はスラブゲル電気泳動措置と同等のSSCP分離を達成することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
〔実施形態1〕
本発明の第1の実施形態を以下に説明する。本実施形態において、試料の調製は基本的に公知例1に記載の方法を踏襲した。また電気泳動装置・方法としては公知例3に記載のものに基づいたが、それを抜本的に改良して使用した。即ち、本実施形態と公知例1との最大の相違点は、SSCP法を実施する電気泳動の装置として、スラブゲル電気泳動装置の代わりにキャピラリ電気泳動装置を使用した点である。本実施形態と公知例3との相違点は後述する。
【0013】
本実施形態では、公知例1に記載のがん抑制遺伝子(p53遺伝子)における3種のSNPsマーカのうち、SSCP法による分離が最も困難なマーカについてまず検討した。Ex4におけるcodon 72はC/GのSNPs型の多型マーカであることが知られているが、それを含む分子量115bpsのDNA断片のうち、蛍光標識プライマーを使用して増幅したreverse鎖を使用した。以下、この標的DNA断片を単にEx4と記す。
【0014】
ボランティアから同意を得て採取した血液から、ゲノムDNAを抽出した。これをテンプレートとして、公知例1と同様の手順によりPCR増幅を行い、標的DNA断片を得た。公知例1で用いたプライマーセットと同じ塩基配列のプライマーを本実施形態でも用いたため、標的DNA断片の領域や長さは公知例1と同じである。ただし、公知例1においてはreverse鎖のプライマーの5’端を蛍光色素Cy5で標識したのに対し、本実施形態においてはFAMで標識した。
【0015】
なお、本実施形態においてはPCR酵素としてTaqの代わりに、3’末端に対するアデニン付加作用の少ないポリメラーゼを用い目的とする115bpsの標的DNA断片を得た。
【0016】
本実施形態においては、電気泳動装置として公知例3に示された1本のキャピラリを有するキャピラリ電気泳動装置であるABI社のPRISM(R) 310型ジェネティックアラナイザ(以下、ABI310型という)を使用した。公知例3記載の実験条件で追試を行った所、後述の通り分離が不十分であったため、公知例3の実験条件を抜本的に改良することにより、前記試料のSSCPによる分離検出を行った。この装置は、泳動ポリマをキャピラリに自動充填する機構と、オートサンプラ上の試料を電気的に注入する機構、4色の蛍光色素の分光干渉を補正してそれぞれ独立に同時に計測するソフトウエアなどを備えるため、全自動の連続測定が可能であり、ルーチンの臨床検査としての使用に適している。
【0017】
電気泳動部分の構成概略は以下の通りである。3方流路を有する耐圧ブロックの第1出口に泳動ポリマを充填したシリンジ、第2出口にキャピラリの第1端、第3出口に電磁弁を介して第1の泳動バッファが接続される。キャピラリの第2端は、オートサンプラにより、第2の泳動バッファ、又は任意の試料溶液に浸される。第1の泳動バッファ中と、キャピラリの第2端の近傍にはそれぞれ白金電極が設けられ、両電極間には高電圧電源装置が接続される。キャピラリは両端部分を除いて恒温槽に収納される。キャピラリの第1端近傍には、レーザ光源と蛍光検出器が設置される。
【0018】
電気泳動の手順概略は以下の通りである。予めブロックの3方流路に泳動ポリマを充填し、恒温槽によりキャピラリ温度を一定に保持する。電磁弁を閉じた後、シリンジを一定圧力で一定時間駆動することにより、耐圧ブロックを経由してキャピラリに泳動ポリマを注入する。オートサンプラを動作させ、キャピラリの第2端を試料溶液に浸す。高電圧電源を動作させ、試料中の荷電成分をキャピラリに電界注入する。オートサンプラを動作させ、キャピラリの第2端を第2の泳動バッファに浸す。高電圧電源を動作させ、キャピラリの第1端に向けて電気泳動を行う。レーザ光源を連続駆動し、蛍光検出器によりスペクトルを測定することにより、蛍光標識された試料成分の電気泳動スペクトルを取得する。複数の試料を異なる蛍光色素により標識して同時に泳動する場合でも、互いの分光干渉を補正し、それぞれの試料を独立に同時に計測する。サイズスタンダードを同時に測定し、泳動時間を規格化することができる。
【0019】
SSCP法のための具体的な実験条件は以下の通りである。
試料溶液の調製条件
PCR反応液を水で1/20ないし1/50に希釈した溶液1μL、サイズスタンダード(ABI社製GeneScan 500(TM) TAMRA)0.5μL、ホルムアミド12μLを混合、94℃で2分間熱変性、室温まで放冷。
【0020】
電気泳動条件
キャピラリ:ポリマイクロテクノロジーズ社製の内径75μm、外径363μm、有効長36cm、全長47cmの溶融石英キャピラリ。
泳動バッファ:25mM Tris(hydroxymethyl)aminomethane(以下、トリスという)、192mMグリシンの緩衝溶液(以下、トリス−グリシンバッファという)。
分離媒体:ABI社製GeneScan(TM) Polymerを用い、ポリマ濃度が15重量%で、上記泳動バッファと同濃度の緩衝剤成分を含む、泳動ポリマを調合した。
泳動ポリマのキャピラリへの充填時間:10分間。
試料の電界注入条件:印加電圧15kV、時間5秒。
泳動電圧:15kV。
恒温槽の設定温度:主に30℃としたが、必要に応じて最適温度を選択した。なお、泳動媒体中には尿素などの変性剤を含まず、泳動温度も30℃前後と低めの温度を採用したため、電気泳動の条件としては、SSCP法の特徴である非変性条件の電気泳動である。
【0021】
上記試料について、SSCP法による典型的な電気泳動パターン(エレクトロフェログラム)の一部を図1に示した。横軸は装置単位の時間軸であり、1カウントの幅は0.22秒に相当する。なお、基本的に泳動開始時刻を原点としたが、解析ソフトの都合上、場合によって原点をオフセットして表示する場合があった。また上記の通り、サイズスタンダードを基準として時間軸を規格化する場合があった。ただし図1については、オフセットは0、また規格化も行っていない。図1の2つ目のピークの泳動時間は約7735カウント、即ち約28.4分である。縦軸は特定の蛍光波長における蛍光信号の強度軸(任意目盛)であり、その波長で蛍光を発する色素で標識されたDNA断片の濃度に比例する。図1の縦軸は、Ex4試料を標識している蛍光色素(この場合はFAM)の蛍光波長の信号強度に基づき、他に3つの波長の信号からの分光干渉を補正マトリクスを用いて除去した値を示す。以降のエレクトロフェログラムの意味も図1と同様である。
【0022】
事前検討において、標的DNA断片(Ex4)のcodon72におけるC/Gの一塩基多型に関し野生型(reverseなのでG)の標準試料は図中の1のピークと同じ位置に、また変異型(C)の標準試料は図中の2のピークと同じ位置に、それぞれ単一のピークを示すことを確認した。従って、両ピークはそれぞれEx4のreverse鎖の野生型と変異型のピークであり、この標的DNA断片はEx4のSNPsに関し、野生型と変異型とを含むヘテロ接合型であることが理解される。両断片が、本実施形態によるSSCP法により分離検出できることが示された。なおこの実験では各ピークの泳動時間はそれぞれ28.1分、28.4分、信号強度はピーク高さがそれぞれ208、177(任意単位)、ピーク面積がそれぞれ2501、2336(任意単位)であった。
【0023】
ここで本発明の主要な課題である分離の定量的取扱いについて詳述する。液体クロマトグラフの分野において、クロマトグラム上の2つのピークの分離(Rs)は、各ピークの溶出時間t1,t2の差を、各ピークのバンド幅(W1,W2)の平均値で除した値として定義される。ここでバンド幅は、ピーク波形の2変曲点における2接線が挟むベースライン上の長さである。例えば、標準偏差が1、平均がそれぞれ0と4、平均における強度が1であるガウス分布型の2つのピークが混合した場合のクロマトグラムを図2に示した。●印、◇印はそれぞれ第1、第2のガウス分布型ピークを示し、実線がそれらの和、すなわち混合した結果を示す。この場合はt1=0、t2=4、W1=W2=4であり、Rs=1である。ピークのバンド幅Wに代えて、半値全幅hを用いる場合は、図中に示した係数α(約0.5887)を乗ずる。電気泳動の結果得られるエレクトロフェログラムもクロマトグラムと同様に取り扱うことができるので、電気泳動における分離も、上記の定義を当てはめて考察することができる。
【0024】
図1のエレクトロフェログラムについて両ピークがガウス分布型であると仮定し、各ピークの泳動時間と半値全幅を図2中の計算式に当てはめて求めた分離はRs=3.7である。液体クロマトグラフの分野においては、Rsが1.5以上であればほぼ完全な分離と見なされており、本実施形態のRsはその倍以上であることから、分離が極めて高いことが理解される。
【0025】
次に、上記の高い分離を達成するために本実施形態で採用した、本発明特有のSSCP条件について、検討結果を詳細に説明する。
図3に、Ex4のSSCP分離(Rs)についてポリマ濃度の影響を検討した結果を示した。○印で示したデータは、基本的に上記実施形態1と同じ測定条件における結果である。ただしポリマ濃度変更に伴い、泳動ポリマのキャピラリへの充填時間を以下の様に変更した。9%以下:3分30秒、12%:5分、15%:10分。この場合、ポリマ濃度15%まで、分離は概ね濃度に比例して高くなった。一方、□印で示したデータは基本的に上記同様であるが、キャピラリの内径が50μmである場合の結果である。この場合、ポリマ濃度12%を境に分離は飽和する傾向を示し、15%では正常なエレクトロフェログラムが取得できなかった。これは本実施形態で採用したポリマを12%以上の高濃度とすると、高粘性となるため、本実施形態の条件下で内径50μmのキャピラリに再現性よく均一に充填するのが困難であるためと考えられる。
【0026】
公知例3では標準で3%、最大でも5%までのポリマ濃度を推奨しており、公知例4でも操作性などの観点から最適なポリマ濃度は7%と結論している。従って、本実施形態における15%というポリマ濃度は、当業者にとって画期的な高濃度である。公知例3の内径50μmのキャピラリに12%以上の濃度のポリマを適用した場合、不具合が生じるのも当然の帰結である。内径50μmのキャピラリに濃度15%のポリマを充填時間10分間により注入した際の充填量は約0.3μLであった。この値はキャピラリの内容積0.92μLの35%しかなく、この条件では詰替が十分行えない。充填時間を増やす方法も考えられるが、スループット低下の観点から好ましくない。一方、本実施形態で採用した条件通り、15%ポリマを内径75μmのキャピラリに適用した場合は、充填時間10分間のポリマの充填量は約2.7μLであった。この値はキャピラリの内容積約2.1μLの約1.3倍であり、詰替が十分行われたため、良好な結果が得られたと考えられる。
【0027】
ポリマ濃度18%の場合は、内径100μmのキャピラリを用い充填時間を15分に延長することにより、SSCP分離が得られた。しかし、充填時間延長やキャピラリ内径拡大に伴う泳動電流増大の問題以外に、シリンジやブロック内のポリマにおける気泡の除去が困難で、泳動時間が長く、それに伴って感度が低下するなどの困難も生じた。シリンジ駆動圧力の増大などの対策を講じれば、約18%のポリマを内径75μmのキャピラリに適用できる可能性はある。しかし、シリンジやブロックの耐圧が問題になる可能性があり、また気泡や泳動時間などの約18%の高濃度ポリマ固有の課題が残る。以上の結果から、本実施形態の条件では、ポリマ濃度は概ね12%ないし18%の範囲が好適で、特に好ましくは約15%が好適な濃度であると判断される。
【0028】
SSCP法のために使用可能なポリマについては各種報告されている。直鎖状ポリアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドなど各種のポリマを入手して、比較検討を行った。その結果、平均分子量が約50万〜200万、特に好ましくは平均分子量約100万のポリアクリルアミド系のポリマ、特に好ましくはポリ(アクリルアミド−ジメチルポリアクリルアミド)重合体を分離媒体として使用すると、上記市販ポリマと同等の分離を示すことが確認された。逆に、本発明で好適に使用可能なポリマはポリアクリルアミド系のポリマ、特に好ましくはポリ(アクリルアミド−ジメチルポリアクリルアミド)重合体であり、その平均分子量は約50万〜200万、特に好ましくは平均分子量約100万のポリマである。ただし、この重合体を必要量入手するのは困難であったため、以降の検討には上記実施形態1に記載の市販ポリマを使用した。
【0029】
図4に、上記と同じ試料のSSCP法における泳動時間について、ポリマ濃度の影響を検討した結果を示した。図中の○、□印で示したデータは、図3同様、それぞれ内径75μm、50μmのキャピラリを用い、他の条件は上記実施形態1と同じとした場合の結果である。泳動時間はポリマ濃度増加に伴い、指数的に長くなる傾向を示した。これはポリマ濃度増加に伴って粘性が指数的に増加し、試料の移動度が低下するためと考えられる。キャピラリ内径は泳動時間に影響を及ぼさなかった。一方、参考のために公知例3に記載の条件、即ち泳動バッファや泳動ポリマ中に緩衝成分としてトリス−硼酸−EDTA(以下、TBEという)を含み、さらにグリセロールを10%含む場合の結果も菱形印で示した。この場合は本実施形態と比較して約1.6倍泳動時間が長かった。この原因は明確ではないが、TBEとともに使用されるグリセロールによる粘性増加が一因と考えられる。トリス−グリシンバッファの方が高速化の観点でTBEバッファより有利である。
【0030】
図5に、同じ試料の泳動電流についてポリマ濃度の影響を検討した結果を示した。図中のプロット記号の意味は上記図4と同様である。一般に、泳動電流はポリマ濃度とともに漸減する傾向がみられた。これは、媒体中の電流を担うイオンの移動度が媒体の粘性の影響を受け、ポリマ濃度増加に伴い低下するためと考えられる。本実施形態で採用した、キャピラリ内径75μmにおける泳動電流は約6〜4μAであったが、内径が50μmの場合はその半分以下であった。これは、電気泳動路の半径比が1.5であるため、断面積比が2.25であり、これが電流比に反映したためと考えられる。一方、TBEバッファ系では内径50μmにおいて9〜7μAであった。これは同内径のトリス−グリシンバッファの3.5〜4.5倍、また本実施形態と比較しても約1.6倍である。
【0031】
泳動電流を規定する電気抵抗は主にキャピラリ部分に由来すると考えられるため、電圧15kVと上記電流値から電気抵抗を求め、さらにキャピラリの長さ47cmと内径とから、電気伝導度の概算値を求めた。なおコンダクタンスの単位[1/Ω ]を、[S](Siemens)と表記した。TBEバッファの電気伝導度は1.4[mS/cm](ポリマ濃度6%)〜1.1[mS/cm](同12%)であり、概ね1[mS/cm]以上であった。一方、トリス−グリシンバッファの場合は0.32[mS/cm](同6%、内径50μm)〜0.28[mS/cm](同15%、75μm)と、概ね0.4[mS/cm]以下であった。トリス−グリシンバッファの場合は、同じ泳動ポリマに対する電気伝導度がキャピラリ内径により最大2割異なる場合があったが、これは泳動電流測定値の量子化誤差に起因すると考えられる。この誤差を考慮に入れても、TBEバッファとトリス−グリシンバッファの電気伝導度に4〜5倍の格差があることが理解される。
【0032】
キャピラリ電気泳動においてはジュール熱による熱暴走が問題となる場合があり、また特にSSCP法においては分離が温度により鋭敏に影響を受ける。従って、ジュール熱による温度変化や熱暴走回避の観点で、電気伝導度が0.4[mS/cm]以下と低いトリス−グリシンバッファの方が1[mS/cm]以上のTBEバッファより有利である。なお、トリス−グリシンバッファの濃度を低減することにより、電気伝導度をさらに低減する試みを行った。具体的には、上記バッファ組成(トリス25mMとグリシン192mM)の両成分の濃度比を維持したまま、濃度を1/2、1/4に低減し、その他の条件は上記実施形態1と同じ条件にて電気泳動を行った。その結果、1/2のバッファ系では問題なく電気泳動が行えたが、1/4のバッファ系(トリス6.25mMとグリシン48mM)においては、Ex4のエレクトロフェログラムが多数のノイズピークを呈し、またEx4のSSCP分離も低下するという不都合が確認された。ちなみにこの1/4のバッファ系を使用した際の泳動電流は約1μA、この値から上記同様に求めた電気伝導度は約0.07[mS/cm]である。従って、本実施形態における電気伝導度の好ましい範囲は約0.07〜0.4[mS/cm]にあると判断される。
【0033】
キャピラリ内径については100μmより本実施形態の75μm、また75μmより50μmの方が泳動電流が低いため、ジュール熱抑制の観点からは好ましい。しかし、75μmでもトリス−グリシンバッファを採用すれば公知例3記載の50μm−TBEバッファ系よりは低電流である。高濃度ポリマ適用の観点からは、キャピラリ内径は50μmより太い方が好ましい。分離の観点からは、さらに内径の太いキャピラリと15%以上の高濃度ポリマの利用も考えられるが、例えば内径100μmのキャピラリのジュール熱は50μmの4倍、75μmの約1.8倍となるため、ジュール熱による温度変化や熱暴走回避の観点で不利である。従って、キャピラリ内径は100μmより細いことが好ましい。以上を総合して、入手の容易さも鑑み、本実施形態では内径70〜80μmのキャピラリ、特に内径75μmのキャピラリが最も好適であると判断して使用した。
【0034】
泳動時間と泳動電流の検討結果をバッファ組成の観点から整理すると、トリス−グリシンバッファはTBEバッファよりも泳動時間が短く、かつ電気伝導度と泳動電流が低い。泳動電圧や泳動路長などの物理的条件を変更する場合は、泳動時間の短縮のためには泳動電流が増加し、泳動電流低減のためには泳動時間が増加するなど、両特性は一般に背反関係にある。従って両特性を同時に改善できるトリス−グリシンバッファは、従来一般に用いられているTBEバッファと比較して予想外に好適な特徴を有することが理解される。なお、従来はSSCP分離改善のためにTBEバッファとともにグリセロールが使用されることが多かった。驚くべきことに、グリセロールを含有せずとも、トリス−グリシンバッファにより十分に高い分離が得られたことは前述のとおりである。以上の検討結果に基づき、本実施形態では(グリセロールを含有しない)トリス−グリシンバッファを採用した。
【0035】
なお、本実施形態では緩衝溶液ならびに泳動ポリマ中の緩衝剤成分としてトリスとグリシンとの組み合わせを使用したが、他の緩衝剤成分も同様に使用することができる。トリスと同等の性能を発揮する他の緩衝剤成分の例としては、各種の3置換メチルアミノメタン誘導体などのアミノ化合物や、Good's Bufferと総称される一群の化合物がある。Good's Bufferの例としては、MES, Bis-Tris, ADA, PIPES, ACES, MOPSO, BES, MOPS, TES, HEPES, DIPSO, TAPSO, POPSO, HEPPSO, EPPS, Tricine, Bicine, TAPS, CHES, CAPSO, CAPSなどがあり、これらは本発明において緩衝剤成分として好適に使用できる。グリシンについても、正負両荷電を分子内に有するいわゆるZwitter ion構造の類似化合物を同様に使用することができる。例えば、アラニン、バリンなどの各種アミノカルボン酸、イミノカルボン酸、アミノスルホン酸類などである。また、上記のGood's Bufferの多くもZwitter ion 構造を有するため、同様に使用することができる。
【0036】
以上はEx4を標的DNA断片とする場合の検討結果である。本実施形態の汎用性を確認するために、公知例1,2に記載の他のSNPsマーカ合計5種類に関してキャピラリ電気泳動によるSSCPの検討を行った。得られたエレクトロフェログラムの一例を図6に、またそれを解析して得られた分離Rsの値を図7の本発明の列に示した。図6におけるパネル(A)〜(E)はそれぞれ、Ex4、Int1、Int7、ALDOB、VAV2のSNPsマーカを試料として、本実施形態に基づいて測定した結果である。測定装置並びに条件は上記と同じとした。いずれのSNPsマーカについてもRs>2.5と分離は良好であり、公知例1,2のスラブゲル法(図7中の従来例1の列に示した)と同等の分離が得られた。従って、本実施形態に示したキャピラリ電気泳動装置によるSSCP法は、多くの種類のSNPsマーカについて十分高い分離を実現できる方法である、という特徴がある。
【0037】
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態を以下に説明する。第実施形態2は上記実施形態と同様であるが、標的DNA断片としてSNPsではなく、マイクロサテライト多型を対象とした点が異なる。本実施形態では、公知例2に記載の、繰り返し単位が4塩基のマイクロサテライト多型を含む、3種類のマーカについて検討した。マイクロサテライト多型の場合は繰り返し数(n)の多様性が大きいため、それぞれのマーカについて、3人のボランティア(A〜C)から同意を得て抽出したゲノムDNAをテンプレートとしたPCR産物を試料とした。
【0038】
試料毎の多様性を評価するため、事前に変性ポリマ(ABI社製POP-6(TM))を用いて断片長により分離する電気泳動を行い、断片長解析を行った。その結果、検討した全試料の標的DNA断片について、エレクトロフェログラムのピークが2つずつ得られた。即ち全試料が断片長(繰り返し数)の異なる対立遺伝子を有するヘテロ接合体であった。それぞれのピークに対応する繰り返し数nから、その差(Δn)を求めて図8の「繰り返し数(Δn)の差」の列に記した。この断片長解析モードにおける2ピークの分離Rsを求め、図中「断片長解析」の列に示した。なお再現性を確認するため、同一マーカを2回ずつ測定し、両方のデータをカンマで区切って並記した。
【0039】
変性ポリマPOP-6(TM)による分離Rsは、繰り返し数の差(Δn)にほぼ比例し、その比例係数(Rs/Δn)は図8の最下段に示したとおり平均値は4.4であり、標準偏差は0.3であった。この平均値は、単位繰り返し数差で規格化した分離に相当し、標準偏差は、この指標の試料毎のばらつきの大きさを示す。
【0040】
次に、上記各試料について実施形態1と同条件でキャピラリ電気泳動によるSSCP法の検討を行った。エレクトロフェログラムの一例を図9に、それを解析して得られた分離Rsの値を図8中「本発明」の列に示した。図9のパネル(A),(B),(C)はそれぞれD9S303、D9S304、D9S775のマーカについて、テンプレートAに基づく試料を測定した結果である。マイクロサテライト多型試料をSSCPモードで解析した場合の分離Rsも、繰り返し数の差(Δn)に概ね比例した。比例係数(Rs/Δn)は平均5.8であった。この値は上記断片長解析モードにおける平均値4.4よりも大きい。従って、SSCPモードの方が断片長解析モードよりも単位繰り返し数差あたりの分離が平均的に高い。試料個別の比較においても、全試料において、SSCPモードにおけるRsの方が断片長解析モードよりも大きかった。
【0041】
本実施形態に特有の効果は、マイクロサテライト多型を解析する場合においても高いSSCP分離を実現できることである。また、実施形態1と組み合わせた場合、同一の装置設定、同一の泳動ポリマを用いてSNPsとマイクロサテライト多型の解析ができる。従って、両種の試料を測定する場合でも、ポリマ交換の手間や時間がかからず、自動化に適し、スループットが高い、という特徴がある。
【0042】
〔実施形態3〕
本発明の第3の実施形態を以下に説明する。図10は、本発明の実施形態3で使用したキャピラリアレイ電気泳動装置の構成概略図である。本実施形態の最大の特徴は、電気泳動用のキャピラリを複数(16本)備えたキャピラリアレイを採用したことである。
【0043】
以下、使用した装置の構成を説明する。緩衝溶液3内にキャピラリアレイ4の一端と白金製の陰極5がセットされ、またキャピラリアレイ4の他端は束ねられた後、ポンプブロック6の流路7に接続されている。ポンプブロック6にはシリンジ8、8’、電磁弁9、逆止弁10、流路11が接続又は内蔵され、緩衝溶液3’内には白金製の陽極5’が設置されている。即ち陰極5と陽極5’の間には緩衝溶液3、キャピラリアレイ4、ポンプブロック6の流路7、電磁弁9、流路11,緩衝溶液3’が設けられ、これらが電気泳動路を形成する。陰極5と陽極5’は高圧電源12に接続されている。シリンジ8、8’はそれぞれシリンジ駆動機構(図示省略)に接続されており、シリンジ8、8’には泳動ポリマ13、13’が充填される。キャピラリアレイ4の両端を除くほとんどの部分は温度調節器14に内包されており、特にそのポリマブロックに近い一部は検出器15に接している。検出器15には光源16、16’(レーザ)と受光器(分光器とCCDカメラなどを含む、図示省略)が含まれる。緩衝溶液3はオートサンプラ17に保持され、オートサンプラ17の上には緩衝溶液3の他、洗浄液18、試料溶液19などが保持される。試料溶液19中にはDNA、RNAなどの陰イオン性の測定対象物質が含まれ、これらは蛍光色素で標識されている。装置全体は計測制御装置(図示省略)と接続されている。
【0044】
次に、本装置の動作の概略を図10を用いて説明する。シリンジ8内の補充用泳動ポリマ13の一部を、ポンプブロック6の流路7、流路11に充填しておく。恒温槽14によりキャピラリアレイ4の温度を一定に保持する。電磁弁9を閉じた後、シリンジ8と8’の操作により、シリンジ8内の泳動ポリマ13の一部を流路7、逆止弁10を経由してシリンジ8’内部の注入用泳動ポリマ13’へ移し替える。オートサンプラ17を動作させ、キャピラリアレイの先端を洗浄液18に浸す。シリンジ8’を一定圧力で一定容量駆動することにより、ポンプブロック6内部の流路7を経由して、キャピラリアレイ4に泳動ポリマ13’を注入する。
【0045】
次に、電磁弁9を開ける。オートサンプラ17を動作させ、キャピラリアレイの先端を試料溶液19に浸す。高電圧電源を動作させ、試料中の荷電成分をキャピラリアレイに電界注入する。オートサンプラ17を動作させ、キャピラリアレイの先端を泳動バッファ3に浸す。高電圧電源を動作させ、キャピラリアレイ4の中の試料中成分を、検出器15の方向に電気泳動を行う。光源16、16’を連続駆動し、キャピラリアレイ4の両側面から照射する。各キャピラリのレンズ効果により、外側から中央のキャピラリに向かってレーザ光がキャピラリ内部を順次透過し、試料を励起する。試料中成分の蛍光スペクトルを検出器15により分光計測することにより、蛍光標識された試料成分の電気泳動スペクトルを取得する。複数の試料を異なる蛍光色素により標識して同時に泳動する場合でも、互いの分光干渉を補正し、それぞれの試料を独立に同時に計測する。サイズスタンダードを同時に測定し、泳動時間を規格化する。1つの試料セットの測定終了後、引き続き別の試料セットを測定する場合は、泳動ポリマ13を13’に移し替える操作から繰り返す。以上の全ての動作はオペレータの指示に基づき、計測制御装置が自動的に執り行う。
【0046】
次に、本装置の使用条件の概略を説明する。本実施形態においては、上記装置をSSCP解析のために使用した。そのための条件は、基本的に実施形態1に記載のシングルキャピラリ装置におけるものと同様である。主な変更点は下記の通りである。市販のキャピラリアレイは内径50μmのもののみであるため、内径75μm、外径365μmのキャピラリ16本を有するキャピラリアレイ4を試作して使用した。測定毎のポリマ注入量は、標準条件(80μL)の2倍の160μLとした。試料の電界注入条件は、印加電圧10kV、時間8秒とした。
【0047】
キャピラリアレイ4の信号の一例を、図11に示す。図11はキャピラリアレイにトリス−グリシンバッファベースの15%ポリマを充填し、水のラマン散乱を測定した結果である。図11のパネル(A)は従来の内径50μm、パネル(B)は本発明による内径75μmのキャピラリアレイに関する結果である。縦軸は信号強度を表す軸であり、目盛は任意単位であるが、両パネルのスケールは共通である。横軸はアレイ配列方向軸のCCDカメラの画素数を表し、約15ピクセルに1つの割合で各キャピラリの信号ピークが周期的に現れている。なお、縦軸には迷光や暗電流によるベースラインが観測され、その値はパネル(A)、(B)についてそれぞれ約1447、1311である。図中にこのベースラインを横線で示した。また、以下の考察はこのベースラインを差し引いた正味のピーク信号強度について行う。
【0048】
(A)の従来の内径50μmのキャピラリにおいては、右から1,2,16番目の両端のキャピラリの信号強度が中央付近と比較して飛び抜けて高く、最大(レーン1)と最小(レーン12,13)の比は約2.1と大きな差がある。また、16レーンの信号強度の平均は6917、相対標準偏差は27%と、大きなばらつきがある。一方、(B)の本発明の内径75μmのキャピラリにおいては、最大(レーン3)と最小(レーン16)の比は約1.3と、開きが小さい。また、16レーンの信号強度の平均は11481、相対標準偏差は8%である。従って、本発明の方が従来よりも平均して信号強度が約1.7倍高く、ばらつきが約3.8分の1に収まっており、よく揃っている。これは内径の大きなキャピラリを用いることにより光のアレイ透過性が高くなり、レーザ光を入射する両端のキャピラリばかりでなく、その透過光を用いる中央付近のキャピラリも効率よく励起できるためと考えられる。本実施形態には、信号強度が高く、ばらつきの少ない多数の信号が同時に得られる、という特有の効果がある。
【0049】
本実施形態によるSSCP法の結果の一例を、図12に示す。図12は、本実施形態の構成を用いて、Ex4(実施形態1で説明した試料)を同時に測定した際のエレクトロフェログラムの一例である。図中の16個のパネルはそれぞれキャピラリアレイ4の16本のキャピラリについての結果を表す。各パネルの意味は基本的に図1と同じである。パネル内右上の( )内に、「ch」の後に続けてレーン(キャピラリ)番号を示した。横軸の時間軸は、同時に測定したTAMRA標識のサイズマーカの泳動時間を基準として、規格化した値を用いた。図から明らかなとおり、どのレーンについても規格化された時間軸、強度軸ともによく揃ったエレクトロフェログラムが得られた。各エレクトロフェログラムについてそれぞれ分離を求めた結果、Rsの平均値は3.31、標準偏差は0.11であった。Rsの値は実施形態1よりも僅かに低かったが、実用上十分な値が得られた。また、Rsの再現性は極めて高く、異なるレーンを用いても再現性の高い結果が得られることが確認された。ちなみに、本実施形態における泳動電流は、約67〜47μAと経時的に減少した。
【0050】
本実施形態によるSSCP法により、実施形態1の図6と同じSNPs 5種類の試料を各3試料ずつ、合計15レーンで同時に測定した。エレクトロフェログラムの一例を図13に、各試料について1レーンずつ抜粋して示した。実験条件は基本的に前記Ex4の場合と同じであるが、ALDOBの場合のみ、恒温槽の温度を18℃とした。図13の各パネルと試料との対応関係は、実施形態1における図6と同じである。Ex4(reverse)、Int1(reverse)、Int7(forward)、ALDOB(forward)、VAV2(reverse)、の分離Rsの値はそれぞれ3.2〜3.3、9.2〜9.3、5.5〜6.2、11〜13、4.2〜4.4であった(〜の前後は各種類における3試料の最低と最高を表す)。これらの値は実施形態1と比較して高いケース(int1、int7)、同等のケース(VAV2)、やや低いケース(Ex4)、温度条件が異なるために直接比較ができないケース(ALDOB)があったが、総合的には同等以上であり、実用上十分な分離が得られた。実施形態1と本実施形態3の結果が微妙に異なる原因は明確ではないが、装置構成(キャピラリの本数、恒温槽の構造)が異なること、測定環境の温度が異なったこと、などが影響した可能性がある。
【0051】
なお、本実施形態の実験条件を検討する過程において、従来のTBE系泳動ポリマを用いると正常なエレクトロフェログラムが得られない場合がある、という課題があった。最終的には実施形態1と同じくトリス−グリシンに基づく泳動バッファ、泳動ポリマを本実施形態において採用することにより、この問題を回避した。本実施形態において、泳動ポリマと泳動バッファのみを従来条件に戻した実験系、即ちTBEベースの6%ポリマを使用した場合、泳動電流は約320μAと、本実施形態の約5〜7倍高かった。泳動電流が高いと、ジュール熱が大きく、本装置の様に多数のキャピラリが密集して配置される構成において熱暴走の誘因となりやすかった、と考えられる。従って、本発明で採用したトリス−グリシンバッファは、本実施形態のごとき複数のキャピラリを用いる構成において、特に効果が大きい。
【0052】
本実施形態では16本のキャピラリを有するキャピラリアレイを用いたが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、16以上、あるいは16以下の複数のキャピラリを有する装置構成においても同様に適用可能である。16以上のキャピラリからなるキャピラリアレイを使用する装置としては、例えば108本のキャピラリを有する市販のDNAアナライザなどがある。
本実施形態に特有の効果は、複数のキャピラリを同時に用いることにより、並列処理が可能となり、スループットが高いことである。
【0053】
〔実施形態4〕
次に説明する実施形態は上記実施形態1、2と同じ装置構成を用いたが、測定する試料、並びにデータ解釈の方法が異なる。実施形態1、2ではSNPsやマイクロサテライト多型を有する試料の分離検出を行ったが、実施形態4では複数の試料についてSSCP法に基づく分離を同時に行い、分離結果について試料相互の比較を行うことにより、含有比が他試料と異なる成分を検出した。この様な解析方法を行う代表的な例として、ディファレンシャルディスプレイ(DD)法に基づく遺伝子発現量解析がある。
【0054】
図14に、実施形態1で説明した装置、方法を用いて、DD法に基づく遺伝子発現量解析を行った結果の一例を示した。実施形態1と異なるのは試料の調製方法であり、具体的には健常者並びにがん組織からRNAを抽出し、逆転写酵素によりcDNAとした後、蛍光標識ランダムプライマでPCRを行って増幅して得たDNA断片を試料とした。図14中、本実施形態の結果をパネル(C)、(D)に示した。また比較のため、従来法として公知例3記載の実験条件下で同一試料の測定を行ったが、バッファ組成が異なるためかエレクトロフェログラムが上記本実施形態と大幅に異なり、相互比較は困難であった。そこで従来例に準じた実験条件として、ポリマ濃度を6%、キャピラリ内径を50μmとし、その他は本実施形態と同じ実験条件下で測定を行い、その結果をパネル(A)、(B)に示した。なお、(A)、(C)はそれぞれ健常者、(B)、(D)はがん細胞由来の試料である。
【0055】
図から明らかなとおり、本実施形態におけるエレクトロフェログラム(C)、(D)においては各々のピークは一般に互いに良好な分離を示し、識別と定量が容易であった。例えば、(C)におけるピーク101’、102’は、それぞれ(D)におけるピーク103’、104’に対応し、他のピークとの強度比の比較から、これらのピークは(C)よりも(D)、即ち健常者よりもがん細胞において相対的に強く発現していることが理解され、がん関連遺伝子に対応する可能性がある。一方、従来例に準じた条件下のエレクトロフェログラム(A)、(B)においては各々のピークは一般に分離が悪く、識別と定量が困難であった。例えば、上記に対応する各ピークはそれぞれ101、102、ならびに103、104と考えられるが、それらは互いに重なり合っており、定量的な解釈が困難である。また、その他のピークについても同様に分離が悪い。従って、一般に本実施形態の方が従来例よりもDD法おける各ピークの識別と定量が容易であることが理解される。以上の通り、本実施形態は従来例よりも高い分離を実現できるため、DD法による遺伝子発現解析において微妙な発現の差異を高精度に判別できる、という効果がある。
ここではSSCPモードにおけるDD法を例にとって説明したが、泳動ポリマ中に尿素などの変性剤を入れ、また高い温度にて泳動を行うことにより、変性条件とし、断片長解析モードで分離を行うことも可能である。
【0056】
〔実施形態5〕
本実施形態は上記実施形態1と類似の装置構成を用いたが、分離した試料成分を回収する機構をキャピラリの出口端に設けた点が異なる。本実施形態で採用した回収機構の模式図を図15に示した。図において、3”はシース液用バッファ、4’は電気泳動用キャピラリ、4”はサンプリング用キャピラリ、20はシースフローセル、21は試料回収チューブ、22は廃液受けであり、その他は図10と同様である。また、シースフローセル20の構成概略図を図16に示した。5’は陽極、16は光源、23はシース液用チューブ、24はシース液の流れを示し、他は図15と同じである。なお、本実施形態の動作を始めるに当たっては、予め図10に示したものと同様のポリマ充填機構を用いて電気泳動用キャピラリ4’に泳動用ポリマを充填しておく必要があるが、図15ではそれを省略し、ポリマ充填後の電気泳動並びに回収時の構成のみを示した。
【0057】
次に、本実施形態の動作概略を図15,16を用いて説明する。上述の通り、予め電気泳動用キャピラリ4’に泳動用ポリマを充填した後、図15,16の構成として、実施形態3と同様に電気泳動を行う。実施形態3と異なるのは、電気泳動用のキャピラリの本数が1本であること、シースフローセル20にはシース液用チューブ23を介してシース液用バッファ3”が満たされており、重力によりシース液の流れ24が生じていること、電気泳動用キャピラリ4’と陽極5’とがシースフローセル20の中のシース液用バッファ3”を介して電気的に接続され、電気泳動用キャピラリ4’のシースフローセル側出口端まで試料が電気泳動されること、それ以降は試料はシース液の流れ24に乗ってサンプリング用キャピラリ4”に導入され、その途中で光源16で励起され、検出器(図示省略)により検出されること、回収を要する成分が検出された場合、適切なタイミングでオートサンプラ17を駆動し、サンプリング用キャピラリ4”の出口端を所定の試料回収チューブ21に導くこと(不要な成分は廃液受け22に廃棄)、である。
【0058】
以上の装置構成により、分離検出した特定の試料成分の分取を行って再利用することが可能となる。例えば回収成分をテンプレートとしてPCRやクローニングを行い、さらにそれを元にシーケンシングを行うことにより、各ピーク成分が同定可能となる。前記実施形態4と組み合わせた場合、高分離のDD法により特定のピーク成分を高純度に分離精製できるため、例えばがん細胞に特異的に発現している遺伝子を精密に解析することが可能となる。
本実施形態に特有の効果は、高分離のキャピラリSSCPで分離した後回収を行うことにより、高純度の成分を簡便迅速に回収可能であることである。
【0059】
〔実施形態6〕
本実施形態は上記実施形態3と類似構成の装置を用いたが、電気泳動路の形成方法が異なる。実施形態3では複数のキャピラリを束ねて電気泳動路を形成したが、本実施形態では電気泳動路4をガラス等の透明基板にエッチング等の方法により溝を形成し、平板状のカバーと張り合わせるなどの方法で形成した、いわゆる電気泳動チップを採用した。
【0060】
図17に、本実施形態の電気泳動チップの構成概略図を示した。図17の上半分は電気泳動チップの上面図、図17の下半分はその断面図である。この電気泳動チップの構成は基本的に実施形態3のキャピラリアレイ電気泳動装置と同様であるが、試料注入用バッファ3'''と試料注入用流路4'''を備える点が異なる。本実施形態の電気泳動チップの動作は、基本的に実施形態4のキャピラリアレイ電気泳動装置と同様であるが、試料溶液19の導入方法がやや異なる。まず、3’側から3’、電気泳動路4、試料注入用流路4'''に泳動ポリマを充填する(図示省略)。次に試料注入用バッファ3'''と試料溶液19を注入し、それぞれに陽極、陰極(図示省略)を挿入して高電圧を印加して電気泳動を行うことにより、4と4'''の交差する領域に試料を導入する。次に3’と3にそれぞれに陽極、陰極(図示省略)を挿入して高電圧を印加して電気泳動を行うことにより、4と4'''の交差する領域に導入した試料を3’に向けて泳動する。この際、3'''と19には陽極を挿入して低電圧をかけ、試料の逆流を防止することができる。光源16の位置まで泳動された試料は蛍光を発し、検出器5により検出される。なお、以上は1つの電気泳動路についての説明であるが、同一の電気泳動チップ上に複数の電気泳動路を設けることができるのは図17に例示した通りである。図中3及び3’から垂直に伸びる流路を2重線で示したのは、この部分の内径を他の電気泳動路よりも太くし、電気伝導度を低くすることにより、複数の電気泳動路の実質的な電気泳動路長を揃える工夫が可能なことを示す。
一般に電気泳動チップは泳動路長が短い場合が多く、分離が低いという課題がある。本実施形態は、泳動路長が短い電気泳動チップにおいても高い分離を得ることができる、という特有の効果がある。
【0061】
次に、本発明の効果について説明する。
ここで、本発明との対比のために2種類の従来例を示す。第1の従来例は、公知例1,2に記載のスラブゲル型電気泳動装置を用いるSSCP法である。第2の従来例は、公知例3に記載のキャピラリ電気泳動装置を、基本的に公知例3に記載のプロトコルで使用するSSCP法である。ただし、従来例2のポリマ濃度のみ公知例4の結論を参考にして7%とした。従来例2との比較を可能とするために、本発明としては実施形態1を比較対象とした。
【0062】
つまり、本発明と従来例1は主に以下の点が異なる。本発明はキャピラリ電気泳動装置に基づくSSCP法であり、電気泳動媒体として非架橋の直鎖状高分子(ポリマ)を用いた。一方、従来例1はスラブゲル電気泳動装置に基づくSSCP法であり、電気泳動媒体として架橋した3次元網目状高分子(ゲル)を用いた。また、本発明と従来例2は主に以下の点が異なる。第1に、本発明は15%のポリマ、従来例は7%のポリマを含有する泳動ポリマを使用したこと。第2に、本発明は内径75μmのキャピラリ、従来例は内径50μmのキャピラリを使用したこと。第3に、本発明はトリス−グリシンベースの泳動バッファと泳動ポリマ、従来例は10%のグリセロールを含有するTBEベースの泳動バッファと泳動ポリマを使用したこと、である。
【0063】
従来例と本発明の比較結果の一例を、図7に示した。図7は、本発明の実施形態1に記載のSNPsの試料5種類について、本発明と従来例に基づくSSCP解析を行い、それぞれの試料について得られた分離(Rs)を示したものである。本発明のデータは、前述の通り実施形態1のデータである。従来例1のデータには、基本的に論文記載のエレクトロフェログラムを解析して得たRs値を示した。ただし、公知例1発表後に、測定条件の改良が図られ、分離が改善されている。そこで、公知例1のp53のデータのみ、改良した測定条件で再測定を行い、その結果を各欄下段に[ ]に入れて示した。
【0064】
本発明並びに従来例1(公知例2と、改良条件下の公知例1)の場合、5種のいずれのSNPs試料についてもRsが2.5以上であり、両者のRsは総合的にはほぼ同等であった。一方、従来例2はRs2.5以上の試料は1種のみであり、2種の試料のRsが1.5未満、特にVAV2は分離しなかった。従って、従来例2に基づくキャピラリ電気泳動装置は分離が不十分であるのに対し、本発明に基づくキャピラリ電気泳動装置は従来例1のスラブゲル電気泳動装置と同等の高い分離を達成できることが理解される。
【0065】
次に、本発明と従来例の他の比較結果の例を図8に示した。図8に、本発明の実施形態2に記載の3種のマイクロサテライト多型マーカと、3種のテンプレートの組み合わせについて、本発明と従来例2を用いてSSCP解析を行い、それぞれの試料について得られた分離(Rs)を示した。本発明(並びに断片長解析)のデータは、実施形態2に説明した通りである。
【0066】
本発明の場合、3マーカ、3テンプレートのいずれのマイクロサテライト試料についても、Rsが全て4.5以上となったのに対し、従来例2の場合は2種の試料のRsが2以下、特にD9S304のテンプレートAは1.5以下であった。
従来例1については同一の試料が入手不可能であったため直接比較できなかったが、論文に記載されたエレクトロフェログラムから解析した分離の最低値は3.1であった(マーカ:D9S303)。またstutter product(4ベース短いPCR産物)と考えられるサイドバンドの泳動時間を参考にして繰り返し数の差(Δn)を推定し、Rs/Δnを求めた所、2.4〜3.5の間であった。従って、分離の最低値、並びにRs/Δnについて本発明と従来例1を比較すると、本発明は従来例1と同等又はそれ以上の分離性能を有すると考えられる。
【0067】
以上により、本発明に基づくキャピラリ電気泳動装置は、従来例2に基づくキャピラリ電気泳動装置より格段に高分離であり、従来例1のスラブゲル電気泳動装置と同等の極めて高い分離を達成できることが理解される。
ちなみに、従来の技術に記したとおり、架橋度がゼロの直鎖状ポリマを用いる詰替方式のキャピラリ電気泳動法では、スラブゲル同等の高い分離を得ることは不可能であると従来は考えられていた。本発明は、この常識を覆し、架橋度ゼロのポリマを用いてもスラブゲル同等の高分離を達成できるということを示した点でも画期的である。
【0068】
電気泳動に要する時間について比較すると、本発明の泳動時間は実施形態1、2に記載の通り、試料により約28〜55分の範囲で、従来例2の場合は約20〜45分であった。一方、従来例1の場合は公知例1において最大600分、公知例2において最大1000分、公知例1の改良条件による追試結果では約400〜830分であった。従って、本発明の泳動時間は従来例1の1桁以上短く、従来例2と比較してほとんど遜色ない。
【0069】
以上により、本発明に基づくキャピラリ電気泳動装置は、従来のキャピラリ電気泳動装置と比較して極めて高いSSCP分離を達成でき、スラブゲル電気泳動装置同等のSSCP分離を達成できることが分かる。また本発明のキャピラリ電気泳動装置の泳動時間は、スラブゲル電気泳動装置と比較して1桁以上短く、高分離と迅速性を兼備する。もちろん、自動化や連続測定などのキャピラリ電気泳動装置特有の特徴も兼備している。
【0070】
以上の検討における本発明と従来例2の比較はキャピラリを1本有するシングルキャピラリ装置を使用した場合の比較検討結果であるが、キャピラリを多数本有するマルチキャピラリ装置を使用した場合においても、同様の分離が得られたことは実施形態3に記載の通りである。この場合はスループットがさらにキャピラリの本数倍高い、という効果がある。従って、本発明によるキャピラリ電気泳動装置をSNPsやマイクロサテライトなどの遺伝子多型の検出に適用することにより、高精度のデータを簡便迅速、高スループットに提供できる。
【0071】
【発明の効果】
この様に本発明によれば、ポリマ詰替方式のキャピラリ電気泳動装置において、スラブゲル電気泳動装置と同等のSSCP分離を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に基づくキャピラリ電気泳動装置を用いてEx4 (reverse鎖)をSSCP法により測定した結果(エレクトロフェログラム)を示す図。
【図2】分離(Rs)の定義図。
【図3】本発明の実施形態1に基づくSSCP法における、分離のポリマ濃度依存性を説明する図。
【図4】本発明の実施形態1に基づくSSCP法における、泳動時間のポリマ濃度依存性を説明する図。
【図5】本発明の実施形態1に基づくSSCP法における、泳動電流のポリマ濃度依存性を説明する図。
【図6】本発明の実施形態1に基づき、5種類のSNPsマーカをSSCP法により測定した結果(エレクトロフェログラム)を示す図。
【図7】本発明の実施形態1、並びに従来例に基づく、5種類のSNPsマーカのSSCP分離(Rs)を比較した図。
【図8】本発明の実施形態1、並びに従来例に基づく、3種類のマイクロサテライト多型マーカ、3種のテンプレートに対するSSCP分離(Rs)を比較した図。
【図9】本発明の実施形態2に基づき、3種類のマイクロサテライト多型マーカをSSCP法により測定した結果(エレクトロフェログラム)を示す図。
【図10】本発明の実施形態3に基づく、キャピラリアレイ電気泳動装置の構成概略図。
【図11】従来例、並びに本発明の実施形態3に基づくキャピラリアレイにおける、水のラマン散乱の信号強度を示す図。
【図12】本発明の実施形態3に基づくキャピラリアレイ電気泳動装置を用いてEx4 (reverse鎖)をSSCP法により測定した結果(エレクトロフェログラム)を示す図。
【図13】本発明の実施形態3に基づき、5種類のSNPsマーカをSSCP法により測定した結果(エレクトロフェログラム)を示す図。
【図14】従来例と、本発明の実施形態4に基づき、DD法により健常者とがん細胞由来の遺伝子発現解析を行った結果(エレクトロフェログラム)を比較した図。
【図15】本発明の実施形態5に基づく、試料回収機構を備えたキャピラリアレイ電気泳動装置の構成概略図。
【図16】本発明の実施形態5に基づく、シースフローセルの構成概略図。
【図17】本発明の実施形態6に基づく、電気泳動チップの構成概略図。
【符号の説明】
1…Ex4 (reverse)の野生型、2…Ex4 (reverse)の変異型、3,3’…緩衝溶液、3”…シース液用バッファ、3'''…試料注入用バッファ、4…キャピラリアレイ又は電気泳動路、4’…電気泳動用キャピラリ、4”…サンプリング用キャピラリ、4''' …試料注入用流路、5…陰極、5’…陽極、6…ポンプブロック、7…流路、8,8’…シリンジ、9…電磁弁、10…逆止弁、11…流路、12…高圧電源、13…泳動ポリマ、14…温度調節器、15…検出器、16,16’…光源、17…オートサンプラ、18…洗浄液、19…試料溶液、20…シースフローセル、21…試料回収チューブ、22…廃液受け、23…シース液用チューブ、24…シース液の流れ、101,101’,103,103’…第1の試料成分のピーク、102,102’,104,104’…第2の試料成分のピーク。

Claims (5)

  1. 緩衝剤と、12重量%から18重量%の高分子分離媒体とを含有し、電気伝導度が0.4mS/cm以下である泳動媒体を1又は複数のキャピラリに充填し、非変性条件で1本鎖の核酸を電気泳動することを特徴とする電気泳動方法。
  2. 前記キャピラリの内径が50μmから100μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動方法。
  3. 前記キャピラリの内径が75±5μmであることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動方法。
  4. 前記高分子分離媒体が、直鎖状のアクリルアミド重合体、又は、直鎖状の(N−アルキル)アクリルアミド重合体であることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動方法。
  5. 前記泳動媒体は、前記緩衝剤として、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとグリシンとを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気泳動方法。
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