JP4021167B2 - 廃水中の揮発性有機化合物を分離処理する装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は,地下水又は産業廃水等の廃水にトリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン等のような揮発性有機化合物を含んでいる場合に,この揮発性有機化合物を,廃水から分離処理するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来,地下水又は産業廃水等の廃水の処理に際して,これに含まれているトリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン等のような揮発性有機化合物を,前記廃水から分離したのち分解処理するには,この被処理廃水に対して空気を吹き込むというバブリング(曝気)を行い,被処理廃水中における揮発性有機化合物を,この被処理廃水に吹き込んだ空気中に揮発させることにより,被処理廃水から分離し,次いで,この揮発性有機化合物を含む空気を,活性炭による吸着処理又は紫外線の照射等による分解装置に導いて,前記揮発性有機化合物を分解するという方法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし,このバブリング方法においては,揮発性有機化合物のからの分離率を高くすることのために,被処理廃水に対して吹き込むバブリング空気の量を多くしなければならず,多量の空気を取り扱うために,装置全体の大型化を避けることができないばかりか,空気を圧送するブロワーの大型化による騒音及び消費電力の増大を招来するという問題がある。
【0004】
また,前記バブリング方法においては,被処理廃水から分離した揮発性有機化合物は,当該揮発性有機化合物を被処理廃水から分離することのために吹き込んだ多量の空気によって希釈されることにより,前記被処理廃水からの排出空気に含まれる揮発性有機化合物の濃度は極めて低いから,この濃度が極めて低い揮発性有機化合物を分解処理することに,大きな装置と多大のランニングコストとが必要であるという問題もある。
【0005】
本発明は,被処理廃水に含まれている揮発性有機化合物を被処理廃水から分離処理することを,装置の大型化を招来することなく,高い熱効率のもとで確実にできるようにした装置を提供することを技術的課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を達成するため本発明の請求項1は,
「揮発性有機化合物を含む廃水を沸騰・蒸発する第1蒸発缶及び第2蒸発缶と,この両蒸発缶における水蒸気及び揮発性有機化合物のガスを含む気体を,両蒸発缶内を大気圧以下の減圧にするように吸引したのち蒸発缶内よりも高い圧力にまで圧縮するようにした吸引圧縮手段と,前記吸引圧縮手段からの圧縮気体に対する凝縮器とを備え,更に,前記被処理廃水を,前記凝縮器における水蒸気凝縮の冷却水として当該凝縮器を通過したのち前記第1蒸発缶に供給し,この第1蒸発缶から排出される被処理廃水を,前記凝縮器における水蒸気凝縮の冷却水として当該凝縮器を通過したのち前記第2蒸発缶に供給するように構成した。」
ことを特徴としている。
【0007】
また,本発明の請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記凝縮器から排出される揮発性有機化合物を含む凝縮水を,超音波発信器を備えた分解容器に導入する。」
ことを特徴としている。
【0008】
更にまた,本発明の請求項3は,
「前記請求項1又は2の記載において,前記第1蒸発缶から排出される被処理廃水の一部を,超音波発信手段を備えたノズルより前記第1蒸発缶内の上部に噴出する一方,前記第2蒸発缶から排出される被処理廃水の一部を,超音波発信手段を備えたノズルより前記第2蒸発缶内の上部に噴出するように構成した。」
ことを特徴としている。
【0009】
【発明の作用・効果】
揮発性有機化合物を含む被処理廃水を,大気圧以下の減圧にした蒸発缶内に導いて沸騰・蒸発することで,この被処理廃水の一部が水蒸気になると同時に,この被処理廃水中に含まれている揮発性有機化合物は,水の沸騰・蒸発と同時に揮発しガスになって被処理廃水から分離することができる。
【0010】
そこで,前記蒸発缶内における,水蒸気及び前記揮発性有機化合物のガスとを含む気体を,吸引圧縮手段にて吸引して圧縮したのち凝縮器に導いて凝縮する。
【0011】
これにより,前記被処理廃水に含まれている揮発性有機化合物を被処理廃水から分離することを,前記した従来のバブリングではなく,蒸発とその後における凝縮によって,高い分離率で確実に行うことができるから,装置の大幅な小型化と,騒音及び運転経費の大幅な低減とを同時に達成できる。
【0012】
しかも,前記蒸発缶における水蒸気及び揮発性有機化合物のガスを含む気体を,吸引圧縮手段にて,両蒸発缶内を大気圧以下の減圧にするように吸引したのち蒸発缶内よりも高い圧力にまで圧縮することにより,前記吸引圧縮手段による吸引により蒸発缶内を大気圧以下の減圧にして,減圧の状態で被処理廃水の沸騰・蒸発を行うことができる。
【0013】
その上,前記蒸発缶における水蒸気及び揮発性有機化合物のガスを含む気体を,吸引圧縮手段にて,蒸発缶内よりも高い圧力にまで圧縮して凝縮器に供給することに加えて,被処理廃水を,前記凝縮器における水蒸気凝縮の冷却水として当該凝縮器を通過したのち前記蒸発缶に供給することにより,前記蒸発缶内で発生した水蒸気を,当該蒸発缶内で被処理廃水を沸騰・蒸発するための熱源として利用できるから,熱効率のアップを図ることができる。
【0014】
この場合,本発明は,請求項1に記載した構成であることにより,前記した各効果に加えて,被処理廃水の沸騰・蒸発,ひいては,この沸騰・蒸発による揮発性有機化合物の被処理廃水からの分離を,第1蒸発缶と,第2蒸発缶との二回にわたって行うことができるから,揮発性有機化合物の被処理廃水からの分離率を更に向上できるのである。
【0015】
一方,被処理廃水からの前記揮発性有機化合物の分離は,蒸発缶内における被処理廃水の沸騰・蒸発にて行うことにより,前記凝縮器においては,蒸発缶における水蒸気及び揮発性有機化合物のガスを含む気体の凝縮が行われる。このために,凝縮器で凝縮された凝縮水は,これに含まれる揮発性有機化合物の濃度が高くなっているから,この凝縮器から排出される揮発性有機化合物を含む凝縮水を,請求項2に記載したように,超音波発信器を備えた分解容器に導入することにより,この分解容器での超音波の照射にて,当該凝縮水中の揮発性有機化合物を,簡単な装置にて,効率良く,且つ,低ランニングコストで確実に分解処理できるのである。
更に,請求項3に記載した構成によると,揮発性有機化合物の廃水からの分離率をより向上できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態を,図1の図面について説明する。
【0017】
この図において,符号1は,減圧式の第1蒸発缶を,符号2は,同じく減圧式の第2蒸発缶を各々示す。
【0018】
符号3は,吸引圧縮手段としての一つの実施の形態であるところの吸引圧縮機を示し,この吸引圧縮機3は,前記第1蒸発缶1及び第2蒸発缶2内における水蒸気及び揮発性有機化合物のガスを含む気体を,蒸気ダクト4,5を介して吸引して,第1蒸発缶1内を大気圧以下の減圧(例えば,約20Torr)の状態に,第2蒸発缶2内を大気圧以下の減圧(例えば,約20Torr)の状態にし,そして,前記両蒸発缶1,2内よりも高い圧力(例えば,約780Torr)にまで圧縮し,この圧縮気体を蒸気ダクト3aを介して後述する凝縮器6に供給する。
【0019】
なお,前記両第1蒸発缶1及び第2蒸発缶2内における水蒸気及び揮発性有機化合物のガスを含む気体の吸引・圧縮は,一台の吸引圧縮機3にて行うことに代えて,直列に並べた複数台の吸引圧縮機にて行うように構成しても良い。
【0020】
前記凝縮器6は,伝熱管6aの多数本を束ねて成る多管式であり,その各伝熱管6aの外側に,前記吸引圧縮機3で圧縮した気体を導入する。また,その一端における入り口ヘッダー6b内は第1入り口室6b′と,第2入り口室6b″とに,他端における出口ヘッダー6c内は第1出口室6c′と,第2出口室6c″とに各々区画されている。
【0021】
廃水供給管路7より送られてくる被処理廃水は,前記凝縮器6の入り口ヘッダー6bにおける第1入り口室6b′に送られ,各伝熱管6aを通過して出口ヘッダー6cにおける第1出口室6c′から,管路8を介して前記第1蒸発缶1内に,その底部に設けたノズル9から噴出される。
【0022】
この第1蒸発缶1内に入った被処理廃水は,前記ノズル9より適宜高さHだけ高い部位に設けた排出口10から流出し,ポンプ11付き管路12を介して前記凝縮器6の入り口ヘッダー6bにおける第2入り口室6b″に送られ,各伝熱管6aを通過して出口ヘッダー6cにおける第2出口室6c″から,管路13を介して前記第2蒸発缶2内に,その底部に設けたノズル14から噴出される。
【0023】
この第2蒸発缶2内に入った被処理廃水は,前記ノズル14より適宜高さHだけ高い部位に設けた排出口15から流出し,ポンプ16付き管路17を介して排出される。
【0024】
この構成において,トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン等のような揮発性有機化合物を含む被処理廃水は,凝縮器6において給水加熱されたのち減圧に保持された第1蒸発缶1内に入り,ここで沸騰・蒸発することにより,この廃水の一部が水蒸気になると同時に,この被処理廃水中に含まれている揮発性有機化合物は,被処理廃水の沸騰・蒸発と同時に揮発しガスになって被処理廃水から分離する一方,この第1蒸発缶1内における水蒸気及び揮発性有機化合物のガスを含む気体は,吸引圧縮機3にて第1蒸発缶1内によりも高い圧力にまで圧縮されたのち,前記凝縮器6に送られて被処理廃水の給水加熱に供される。
【0025】
前記第1蒸発缶1から排出された被処理廃水は,前記凝縮器6において再度給水加熱されたのち減圧に保持された第2蒸発缶2内に入り,ここで沸騰・蒸発することにより,この廃水の一部が水蒸気になると同時に,この被処理廃水中に含まれている揮発性有機化合物は,被処理廃水の沸騰・蒸発と同時に揮発しガスになって被処理廃水から分離する一方,この第2蒸発缶2内における水蒸気及び揮発性有機化合物のガスを含む気体は,吸引圧縮機3にて第2蒸発缶2内によりも高い圧力にまで圧縮されたのち,前記凝縮器6に送られて被処理廃水の給水加熱に供される。
【0026】
そして,このようにして,第2蒸発缶2において揮発性有機化合物を分離した後の被処理廃水は,第2蒸発缶2内からポンプ16付き管路17を介して排出される。
【0027】
一方,前記凝縮器6における凝縮水は,管路18を介して分解容器19内に導き,ここで,これに設けた超音波発信手段20にて超音波を照射する。
【0028】
この超音波の照射により,前記凝縮水中の揮発性有機化合物は,水,炭酸ガス及び塩酸等の最終分解化合物に分解され,凝縮水は,管路21より排出されるか,或いは,その一部又は全部が二点鎖線で示す管路22を介して,前記廃水供給管路7に合流される一方,前記ガスは,気体放出管路23からガス浄化器24に導かれ,ここで,未分解の揮発性有機化合物を吸着処理するか,或いは,分解処理したのち,大気中に放出される。
【0029】
この場合,本発明者達の実験によると,前記超音波の照射に際しては,その超音波を例えば200KHzにすることによって,分解容器19内にキャビテーションを発生するように構成することにより,このキャビテーションにて,気泡が発生することと,この気泡が潰れ消滅することとを激しく繰り返し,前記液封用液体に溶解している揮発性有機化合物を,前記キャビテーションにおいて発生した気泡が潰れ消滅するときの高温・高圧状態の反応場で水,炭酸ガス及び塩酸等のような最終分解化合物に分解処理することができるから,超音波の照射による揮発性有機化合物の分解効率を大幅に向上できるのであった。
【0030】
なお,前記大気への気体放出管路23の途中には,活性炭等による吸着式のガス浄化器24,又は,ガスを触媒の存在のもとで燃焼するという熱分解式のガス浄化器を設けて,揮発性有機化合物を大気中に放出しないように構成している。
【0031】
なお,本発明者達の実験によると,前記第1蒸発缶1及び第2蒸発缶2内に適宜液深さHに蓄えた被処理廃水の沸騰・蒸発を,第1蒸発缶1及び第2蒸発缶2内における大気圧以下の減圧度及び/又は被処理廃水の供給温度の設定にて,当該被処理廃水の水面からの液深さが深い部分より行うように構成することにより,被処理廃水中から揮発性有機化合物を沸騰・蒸発にて分離するときにおける分離率を,被処理廃水の沸騰・蒸発を廃水の水面のみにおいて行うように構成した場合に比べて,大幅に向上できるのであった。
【0032】
また,本発明者達の実験によると,前記第1蒸発缶1及び第2蒸発缶2における排出口10,15から流出する被処理廃水の一部を,管路25,26より取り出し,これを前記第1蒸発缶1及び第2蒸発缶2内の上部に設けたノズル27,28から,当該ノズル27,28に設けた超音波発信手段(図示せず)にて超音波を照射したのち噴出することにより,揮発性有機化合物の廃水からの分離率をより向上できるのであった。
【0033】
更にまた,本発明者達は,前記した装置において,テトラクロロエチレンの濃度が4.2ppmの被処理廃水を処理する実験を行ったところ,前記第1蒸発缶1のみによる処理により0.39ppmまで低減でき,第1蒸発缶1及び第2蒸発缶2の両方の処理により0.14ppmまで低減できるのであった。
【0034】
前記実施の形態は,二つの蒸発缶を使用して,揮発性有機化合物の分離を二段で行うようにした場合であったが,本発明は,三つ以上の複数個の蒸発缶を使用して,揮発性有機化合物の分離を三段以上の複数段で行うように構成することができることはいうまでもなく,これにより,揮発性有機化合物の廃水からの分離率を更に向上できるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態を示すフローシートである。
【符号の説明】
1 第1蒸発缶
2 第2蒸発缶
3 吸引圧縮機
4,5 蒸気ダクト
6 凝縮器
7 廃水供給管路
Claims (3)
- 揮発性有機化合物を含む廃水を沸騰・蒸発する第1蒸発缶及び第2蒸発缶と,この両蒸発缶における水蒸気及び揮発性有機化合物のガスを含む気体を,両蒸発缶内を大気圧以下の減圧にするように吸引したのち蒸発缶内よりも高い圧力にまで圧縮するようにした吸引圧縮手段と,前記吸引圧縮手段からの圧縮気体に対する凝縮器とを備え,更に,前記被処理廃水を,前記凝縮器における水蒸気凝縮の冷却水として当該凝縮器を通過したのち前記第1蒸発缶に供給し,この第1蒸発缶から排出される被処理廃水を,前記凝縮器における水蒸気凝縮の冷却水として当該凝縮器を通過したのち前記第2蒸発缶に供給し,この第2蒸発缶から排出するように構成したことを特徴とする廃水中の揮発性有機化合物を分離処理する装置。
- 前記請求項1の記載において,前記凝縮器から排出される揮発性有機化合物を含む凝縮水を,超音波発信器を備えた分解容器に導入することを特徴とする廃水中の揮発性有機化合物を分離処理する装置。
- 前記請求項1又は2の記載において,前記第1蒸発缶から排出される被処理廃水の一部を,超音波発信手段を備えたノズルより前記第1蒸発缶内の上部に噴出する一方,前記第2蒸発缶から排出される被処理廃水の一部を,超音波発信手段を備えたノズルより前記第2蒸発缶内の上部に噴出するように構成したことを特徴とする廃水中の揮発性有機化合物を分離処理する装置。
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