JP4009140B2 - トンネル内面被覆シートの貼付装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トンネル内面被覆シートの貼付装置に関し、さらに詳細には、例えば下水道シールドトンネルの紫外線硬化型FRPシートによる内面被覆施工において、シートを貼り付ける際の位置決め精度の向上、貼付作業の省力化、及び省人化を図るための貼付装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンクリート構造物の耐久性が問題となっている。例えば、下水道シールドトンネルにおいては、硫化水素等に起因する腐食環境に常時さらされており、このため一次覆工であるセグメントの内面には耐久性に優れた防食腐食層を形成することが要求され、通常コンクリートによる二次覆工がその役割を果たしている。しかしながら、コンクリートによる二次覆工は覆工厚が厚く、このため管渠の所要の内空断面を確保するにはトンネル設計断面を大きくせざるを得ない。
【0003】
そこで、コンクリートに代わる二次覆工材料として、優れた物理特性・化学特性を備えた紫外線硬化型FRP(ガラス繊維強化プラスチック)シートを使用して、これを一次覆工の内面に貼り付けて水密性の高い強固な防食被覆層を形成する施工方法が開発され、実施されている。
【0004】
このFRPシート被覆施工において、シートの貼り付け作業は一次覆工の施工面全面にプライマーを塗布し、その上から寸法に合わせて裁断したFRPシートを手で押し付けて付着させた後、金属へらや脱泡ローラ等により内部の空気溜まりを押し出して(脱泡作業)、シート全面を密着させることにより行われている。
【0005】
しかしながら、この従来の貼り付け作業は、特にトンネル上半部の施工に関し、次のような問題があった。
(1) 作業者が手でシートを持ち上げて位置合わせをするため、位置合わせに時間と労力が掛かるうえ、施工精度も悪い。
(2) シートを全面密着させるまで一次覆工とシートとの付着をプライマーの粘性に頼っているため、施工中にシートがその自重により剥がれ落ちる危険があり、このため一度に大面積を施工できない。
(3) 作業者の手で押し付けてシートを付着させているため、施工性が悪い。
(4) 空気溜まりが多く脱泡作業に時間を要するため、施工効率が悪い。
(5) 貼り付け作業に最低でも4名以上の作業者が必要となるため、大型の作業足場が必要となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、シートの位置合わせを簡単に精度良く行うことができ、施工性に優れたトンネル内面被覆シートの貼付装置を提供することにある。
この発明の別の目的は、シートを完全に密着させて貼り付けることができ、脱泡作業を不要とすることができるトンネル内面被覆シートの貼付装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、トンネル内面に被覆シートを貼り付けるための貼付装置であって、
ベース上に昇降自在に搭載されたアーム支持部材と、
このアーム支持部材を昇降させる駆動部材と、
前記アーム支持部材に設けられた門形のシート固定アームと、
このシート固定アームを挟む両側に位置するように下端部が前記アーム支持部材にそれぞれ枢支され、上端部が前記シート固定アームに接近する折り畳み位置と該シート固定アームから離間する拡開位置との間を回動自在な門形のシート保持アームと
を備えてなるトンネル内面被覆シートの貼付装置にある。
【0008】
より具体的には、前記シート保持アームは、前記シート固定アームの両側に水平方向に間隔を置いてそれぞれ複数設けられている。また、前記シート固定アームを挟む両側に近接して位置するように下端部が前記ベースにそれぞれ枢支され、かつ伸縮自在であって前記シート保持アームの外周を回動自在な門形のシート押圧アームを備えている。さらに、前記シート押圧アームは、上部にブラシを有している。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、この発明の実施形態を示す正面図、図2は側面図である。貼付装置はベースを構成する台車1を備えている。台車1は下面に自在キャスター2が設けられ、トンネル軸方向及び軸直角方向に移動自在である。また、台車1の下面にはペダル式のロック3が設けられている。
【0010】
台車1の上面には1対の駆動シリンダ4が直立して設けられている。具体的には、各駆動シリンダ4のピストンロッド4bの先端部が台車1の上面に固定されている。また、各駆動シリンダ4のシリンダ部4aは、台車1の上面に設けた支持ブラケット5に支持リング6を介して摺動自在に支持されている。
【0011】
各駆動シリンダ4のシリンダ部4aには、1対のアーム支持部材7がそのほぼ中央位置においてUボルトなどの固定部材8によりそれぞれ固定されている。また、各シリンダ部4aの上部には門形のシート固定アーム9の1対の本体アーム部9aがそれぞれ嵌合固定されている。本体アーム部9aの上端部間を連結する連結部材9b(図2参照)の上面にはシート固定パッド10が設けられている。
【0012】
シート固定アーム9を挟む両側に位置するように、各側に関してそれぞれ2つずつの門形のシート保持アーム11,12が水平方向に間隔を置いて配置されている。シート保持アーム11,12は、それらの1対の本体アーム部11a,12aの下端部においてアーム支持部材7に枢支されている。シート保持アーム11,12の本体アーム部11a,12aの上端部間は、それぞれローラ11b,12bによって連結されている。
【0013】
以上の構成により、アーム支持部材7は駆動シリンダ4の駆動によって昇降し、それに伴ってシート固定アーム9及びシート保持アーム11,12も昇降する。また、シート保持アーム11,12は上端部がシート固定アーム9に接近する折り畳み位置とシート固定アーム9から離間する拡開位置との間を回動自在である。因みに、図1の実線位置はアーム支持部材7が上昇位置にあって、シート保持アーム11,12が拡開位置にある状態を示している。
【0014】
シート固定アーム9を挟む両側に近接して位置するように、2つ(各側1つずつ)の門形のシート押圧アーム13が配置されている。これらのシート押圧アーム13の1対の本体アーム部13aは、台車1の上面に設けられた支持ブラケット14に枢支されている。本体アーム部13aは大径部15とその上部に摺動自在に嵌合された小径部16とからなり伸縮自在である。また、図1の実線位置で示すように伸長することによってシート保持アーム11,12の外周を回動自在である。
【0015】
シート押圧アーム13において、本体アーム部13aの上端部間を連結する連結部材13bの上面にはブラシ17が設けられている(図2参照)。また、連結部材13bの上面にはブラシ17を挟む両側位置にローラ18が設けられている。
【0016】
次に上記貼付装置を使用したシート貼付手順について、図3〜図7を参照しながら説明する。一次覆工内面の貼付箇所にプライマーを塗布した後、支障物がないかどうか確認したうえで、図3に示すように、装置を貼付施工位置に移動してセットする。このとき、アーム支持部材7は下降位置にあり、またシート保持アーム11,12は折り畳み位置にある。
【0017】
次に、図4に示すように、装置の片側から紫外線硬化型FRPシート(以下、シートという)Sをたくし上げるようにして載せ、シート固定アーム9に設けたパッド10の中央にシートSの長手方向中心線を合わせる。そして、シート保持アーム11,12を拡開させ、シートSの幅方向両端縁が保持アーム11,12すなわちローラ11b,12bに載っていることを確認する。このシートの位置合わせの際、シート保持アーム11,12は上部がローラ11b、12bで構成されているので、シートを移動させ易く位置合わせが容易である。なお、シートSはローラ11b,12bの長さとほぼ等しい幅に裁断されている。
【0018】
次に、シート裏側には透明フィルムが貼り付けられているので、これを剥がす。透明フィルムは長手方向の中心部が予めカットされており、そこから左右に剥がすことができる。そして、図5に示すように、駆動シリンダ4によりアーム支持部材7を上昇させて、シートSをその貼り付け面に近づけ、台車1を前後左右に適宜移動させてシート中心位置と一次覆工天端の墨出し位置とを合わせる。シートSの前後左右の位置を合わせたら、ペダル式ロック3により台車1を固定する。そして、駆動シリンダ4によりアーム支持部材7をさらに上昇させ、シート固定パッド10でシートSの天端部分を貼り付け面に押し付けて固定する。
【0019】
次に、図6に示すように、一方のシート押圧アーム13を伸長させ、上部のブラシ17をシート固定パッド10側(貼り付け開始位置)に押し付ける。そして、その位置から一気に下方に向かってシート押圧アーム13を回動させ、シート表面を貼り付け面に押し付けながら貼り付ける。このとき、貼り付け面とシートとの間に空気溜まりができないように、上から下に空気を押し出すようにして密着させていく。
【0020】
次に、図7に示すように、シートSの片側半分を水平位置まで貼り付けたら、他方のシート押圧アーム13により、残りの片側半分を貼り付ける。このようにしてシート全体を貼り付けたら、シート押圧アーム13を縮めるとともに、シート保持アーム11,12を折り畳み、アーム支持部材7を下降させる。以下、この手順を繰り返して、シートを貼り付けていく。なお、一次覆工の下側半部は、上記のような装置を使わなくとも、シートの貼り付けは容易に行うことができる。
【0021】
上記実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1) 拡開したシート保持アーム11,12によりシートを拡げた状態で、貼り付け面の近くまで持ち上げて位置合わせをすることができるので、位置決めを簡単に精度良く行うことができる。
(2) シート固定アーム9によりシート天端部を貼り付け面に固定した状態で貼り付け作業を行うことができるので、貼り付け作業中にシートがずれたり剥がれ落ちることがない。
(3) 上部にブラシ17を有するシート押圧アーム13により、貼り付け面の凹凸に追従して空気を押し出しながらシートを貼り付けることができるので、シートを貼り付け面に完全に密着させることができ、したがって脱泡作業が不要となる。
(4) シート保持アーム11,12は内側に折り畳みできる構造であるので、装置の移動・セットを容易に行うことができる。
(5) 電気等の動力源が不要である。
【0022】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態ではシート保持アームを昇降させる駆動部材としてシリンダを使用したが、原動機とピニオン・ラック機構とからなる駆動部材を使用することも可能である。また、シートを貼り付け面に押し付けるブラシに代えて、ゴムローラ等を使用することもできる。さらに、シート押圧アームの本体アーム部を空気圧シリンダ構造とし、空気圧によって伸長させてシートを押し付けるようにしてもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、シートの位置合わせを簡単に精度良く行うことができ、施工性を向上させることができる。また、シートを完全に密着させて貼り付けることができ、脱泡作業を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態を示す正面図である。
【図2】同実施形態の側面図である。
【図3】シート貼付手順を示す正面図である。
【図4】図3に引き続くシート貼付手順を示す正面図である。
【図5】図4に引き続くシート貼付手順を示す正面図である。
【図6】図5に引き続くシート貼付手順を示す正面図である。
【図7】図6に引き続くシート貼付手順を示す正面図である。
【符号の説明】
1:台車
2:自在キャスター
3:ペダル式ロック
4:駆動シリンダ
4a:シリンダ部
4b:ピストンロッド
7:アーム支持部材
9:シート固定アーム
9a:本体アーム部
9b:連結部材
10:シート固定パッド
11,12:シート保持アーム
11a,12a:本体アーム部
11b,12b:ローラ
13:シート押圧アーム
13a:本体アーム部
13b:連結部材
15:大径部
16:小径部
17:ブラシ
S:紫外線硬化型シート
Claims (4)
- トンネル内面に被覆シートを貼り付けるための貼付装置であって、
ベース上に昇降自在に搭載されたアーム支持部材と、
このアーム支持部材を昇降させる駆動部材と、
前記アーム支持部材に設けられた門形のシート固定アームと、
このシート固定アームを挟む両側に位置するように下端部が前記アーム支持部材にそれぞれ枢支され、上端部が前記シート固定アームに接近する折り畳み位置と該シート固定アームから離間する拡開位置との間を回動自在な門形のシート保持アームと
を備えてなるトンネル内面被覆シートの貼付装置。 - 前記シート保持アームは、前記シート固定アームの両側に水平方向に間隔を置いてそれぞれ複数設けられていることを特徴とする請求項1記載のトンネル内面被覆シートの貼付装置。
- 前記シート固定アームを挟む両側に近接して位置するように下端部が前記ベースにそれぞれ枢支され、かつ伸縮自在であって前記シート保持アームの外周を回動自在な門形のシート押圧アームとを備えてなる請求項1又は2記載のトンネル内面被覆シートの貼付装置。
- 前記シート押圧アームは、上部にブラシを有していることを特徴とする請求項3記載のトンネル内面被覆シートの貼付装置。
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