(実施例1)以下本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明による伝送装置のシステム全体図を示す。入力部2と分離回路部3と変調器4と送信部5をもつ送信機1は複数の多重化された入力信号を分離回路3により第1データ列,D1、と第2データ列,D2、と第3データ列,D3に分離し変調器4により、変調信号として送信部5より出力し、アンテナ6により、この変調信号は伝送路7により人工衛星10に送られる。この信号は人工衛星10においてはアンテナ11で受信され、中継器12により増幅され、アンテナ13により再び地球へ送信される。
送信電波は、伝送経路21、31、41により第1受信機23、第2受信機33、第3受信機43に送られる。まず、第1受信機23ではアンテナ22を介して入力部24より入力し、復調器25により第1データ列のみが復調され、出力部26より出力される。この場合第2データ列、第3データ列の復調能力はもたない。
第2受信機33では、アンテナ32を介して入力部34より出力した信号は復調機35により第1データ列と第2データ列が復調され、合成器37により一つのデータ列に合成され、出力部36より出力される。
第3受信機43ではアンテナ42からの入力は入力部44に入り復調器45により第1データ列、第2データ列、第3データ列の3つのデータ列が復調され合成器47により一つのデータ群となり出力部46より出力される。
以上のように同じ送信機1からの同一の周波数帯の電波を受けても、上述の3つの受信機の復調器の性能の違いにより受信可能な情報量が異なる。この特長により一つの電波帯で性能の異なる受信機に対してその性能に応じた両立性のある3つの情報を同時に伝送することが可能となる。例えば同一番組のNTSCとHDTVと超解像度型HDTVの3つのデジタルTV信号を伝送する場合、スーパーHDTV信号を低域成分、高域差成分、超高域差成分に分離し、各々を第1データ列、第2データ列、第3データ群に対応させれば、1チャンネルの周波数帯で両立性のある中解像度、高解像度、超高解像度の3種のデジタルTV信号を同時に放送できる。
この場合、小型アンテナを用いた少値復調の受信機ではNTSC-TV信号を、中型アンテナを用いた中値復調可能なの受信機ではHDTV信号を、大型アンテナを用いた多値復調可能なの受信機では超高解像度型HDTVを受信できる。図1をさらに説明するとNTSCのデジタルTV放送を行うデジタル送信機51は入力部52より第1データ群と同様のデータのみを入力し、変調器54により変調し、送信機55とアンテナ56により伝送路57により衛星10に送り伝送路58により地球へ再び送信される。
第1受信機23では、デジタル送信機1からの受信信号を復調器24により、第1データ列に相当するデータを復調する。同様にして、第2受信機33と第3受信機43は、第1データ列と同じ内容のデータ群を復調する。つまり3つの受信機は、デジタル一般TV放送等のデジタル放送も受信できる。
では、各部の説明をする。図2は送信機1のブロック図である。
入力信号は入力部2に入り、分離回路3で第1データ列信号と第2データ列信号と第3データ列信号の3つのデジタル信号に分離される。
例えば映像信号が入力された場合、映像信号の低域成分を第1データ列信号、映像信号の高域成分を第2データ列信号、映像信号の超高域成分を第3データ列信号に割り当てることが考えられる。分離された3つの信号は、変調器4の内部の変調入力部61に入力される。ここでは外部信号に基づき信号点の位置を変調もしくは変更する信号点位置変調/変更回路67があり外部信号に応じて信号点の位置を変調もしくは変更する。変調器4の中では直交した2つの搬送波の各々に振幅変調を行い、多値のQAM信号を得る。変調入力部61からの信号は第1AM変調器62と第2AM変調器63に送られる。cos(2πfct)なる搬送波発生器64からの搬送波のうち一つは第1AM変調器62によりAM変調され、合成器65に送られ、もう一つの搬送波はπ/2移相器66に送られ90°移相されて、sin(2πfct)の状態で第2AM変調器63に送られ、多値の振幅変調を受けた後、合成器65で、第2AM変調波と合成され、送信部5により送信信号しとして出力される。この方式そのものは従来より一般的に実施されているため詳しい動作の説明は省略する。
図3の16値の一般的なQAMの信号スペースダイアグラムの第1象限を用い動作を説明する。変調器4で発生する全ての信号は、直交した2つの搬送波Acos2πfctのベクトル81とBsin2πfctのベクトル82の2つのベクトルの合成ベクトルで表現できる。0点からの合成ベクトルの先端を信号点と定義すると、16値QAMの場合a1、a2、a3、a4の4値の振幅値とb1、b2、b3、b4の4値の振幅値の組み合わせにより合計16ケの信号点が設定できる。図3の第1象限では信号点83のC11、信号点84のC12、信号点85のC22、信号点86のC21の4つの信号が存在する。
C11はベクトル0-a1とベクトル0-b1の合成ベクトルであり、C11=a1cos2πfct−b1sin2πfct=Acos(2πfct+dπ/2)となる。
ここで図3の直交座標上における0−a1間の距離をA1、a1−a2間をA2、0−b1間をB1、b1−b2間をB2と定義し、図上に示す。
図4の全体ベクトル図に示すように、合計16ケの信号点が存在する。このため各点を4bitの情報に対応させることにより、4bitの情報伝送が1周期つまり1タイムスロット中に可能となる。
図5に2進法で各点を表現した場合のその一般的な割り付け例を示す。当然、各信号点間の距離が離れている程、受信機の方で区別し易い。従って、一般的には各信号点間の距離を、できるだけ離すような配置にする。もし、特定の信号点間の距離を近付けた場合、受信機ではその2点間の識別が困難となり、エラレートが悪くなる。従って一般的には図5のように等間隔の配置にするのが望ましいといわれている。従って16QAMの場合A1=A2/2なる信号点の配置が一般的に実施されている。
さて、本発明の送信機1の場合、まず、データを第1データ列と第2データ列場合により第3データ列にに分割する。そして図6に示すように、16ケの信号点もしくは信号点群を4つの信号点群に分割し、第1データ列の4つのデータをまず、各々の信号点群に割り当てる。つまり第1データ列が11の場合第1データ象限の第1信号点群91の4つの信号点のうちのいずれか一つを送信し、01の場合は第2象限の第2信号点群92、00の場合、第3象限の第3信号点群93、10の場合第4象限の第4信号点群94、の中の各々4つの信号点の中から一つの信号点を第2データ列の値に応じて選択して送信する。次に16QAMの場合第2データ列の2bit、4値のデータ、64値QAMの場合4bit、16値のデータを91、92、93、94の各分割信号点群の中の4つの信号点もしくは副信号点群に図7のように割り当てる。どの象限も対象配置となる。信号点の91、92、93、94への割り当ては第1データ群の2bitデータにより優先的に決められる。こうして第1データ列の2bitと第2データ列の2bitは全く独立して送信できる。そして第1データ列は受信機のアンテナ感度が一定値以上あれば4PSK受信機でも復調できる。アンテナにさらに高い感度があれば本発明の変形16QAM受信機で第1データ群と第2データ群の双方が復調できる。
ここで図8に、第1データ列の2ビットと第2データ列の2ビットの割り当て例を示す。
この場合、HDTV信号を低域成分と高域成分に分け第1データ列に低域映像信号を割り当て、第2データ列に高域映像信号を割り当てることにより、4PSKの受信システムでは第1データ列のNTSC相当の映像を、16QAM又は、64QAMの受信システムでは第1データ列と第2データ列の双方が再生でき、これらを加算して、HDTVの映像を得ることができる。
ただ図9のように信号点間距離を等距離にした場合、4PSK受信機からみて第1象限に斜線で示した部分との間のスレシホルド距離がある。スレシホルド距離をATOとするとで4PSKを送るだけならATOの振幅でよい。しかしをATOを維持しながら16QAMを送ろうとすると3ATOつまり3倍の振幅が必要である。つまり、4PSKを送信する場合に比べて、9倍のエネルギーを必要とする。何も配慮をしないで4PSKの信号点を16QAMモードで送ることは電力利用効率が悪い。また搬送波の再生も難しくなる。衛星伝送の場合使用できる電力は制約される。このような電力利用効率の悪いシステムは、衛星の送信電力が増大するまで現実的でない。将来デジタルTV放送が開始されると4PSKの受信機が大量に出回ることが予想されている。一旦普及した後にはこれらの受信感度を上げることは受信機の両立性の問題が発生するため不可能といえる。従って、4PSKモードの送信電力は減らせない。このため16QAMモードで疑似4PSKの信号点を送る場合、送信電力を従来の16QAMより下げる方式が必要となることが予想される。そうしないと限られた衛星の電力では送信できなくなる。
本発明の特徴は図10のように図番91〜94の4つの分割信号点群の距離を離すことにより、疑似4PSK型16QAM変調の送信電力を下げることができる点にある。
ここで受信感度と送信出力との関係を明らかにするために図1に戻りデジタル送信機51と第1受信機23の受信方式について述べる。
まず、デジタル送信機51と第1受信機23は一般的な伝送装置で、データ伝送もしくは放送を含む映像伝送を行っている。図7に示すようにデジタル送信機51は4PSK送信機であり、の図2で説明した多値QAMの送信機1からAM変調機能を除いたものである。入力信号は入力部52を介して変調器54に入力される。変調器54では変調入力部121により、入力信号を2つの信号に分けて基準搬送波を位相変調する第1−2相位相変調回路122と基準搬送波と90°位相が異なる搬送波を変調する第2−2相位相変調回路123に送り、これらの位相変調波は合成器65で合成され、送信部55により送信される。
この時の変調信号スペースダイアグラムを図18に示す。4つの信号点を設定し、電力利用効率を上げるために一般的には信号点間距離は等間隔にするのが常識となっている。一つの例として、信号点125を(11)、信号点126を(01)、信号点127を(00)、信号点128を(10)と定義した場合を示す。この場合4PSKの第1受信機23が満足なデータを受信するためにはデジタル送信機51の出力に一定以上の振幅値が要求される。図18で説明すると第1受信機23がデジタル送信機51の信号を4PSKで受信するのに最低必要な送信信号の最低振幅値つまり0−a1間の距離をATOと定義すると送信限界の最低振幅ATO以上で送信すれば、第1受信機23が受信可能となる。
次に第1受信機23について述べる。第1受信機23は送信機1からの送信信号もしくはデジタル送信機51からの4PSKの送信信号を衛星10の中継器12を介して、小型のアンテナ22で受信し、復調器24により受信信号を4PSK信号とみなして復調する。第1受信機23は本来、デジタル送信機51の4PSKまたは2PSKの信号を受信し、デジタルTV放送やデータ送信等の信号を受信するように設計されている。
図19は第1受信機の構成ブロック図で衛星12からの電波をアンテナ22で受信した、この信号は入力部24より入力した後、搬送波再生回路131とπ/2移相器132により搬送波と直交搬送波が再生され、各々第1位相検出回路133と第2位相検波回路134により、直交している成分が各々独立して検波され、タイミング波抽出回路135によりタイムスロット別に各々独立して識別され、第1識別再生回路136と第2識別再生回路137により2つの独立した復調信号は第1データ列再生部232により第1データ列に復調され、出力部26により出力される。
ここで受信信号を図20のベクトル図を用いて説明する。デジタル送信機51の4PSKの送信電波に基づき第1受信機23で受信され信号は、もし伝送歪みやノイズが全くない理想的な条件では図20の151〜154の4つの信号点で表せる。
しかし、実際は伝送路中のノイズと伝送系の振幅歪みや位相歪みの影響を受け受信された信号点は信号点の周囲のある一定の範囲に分布する。信号点から離れると隣の信号点と判別できなくなるためエラーレートが次第に増え、ある設定範囲を越えるとデータを復元できなくなる。最悪条件の場合でも設定されたエラーレート以内で復調するためには隣接信号点間距離をとればよい。この距離を2AROと定義する。4PSKの限界受信入力の時信号点151が図20の|0−aR1|≧AR0、|0−bR1|≧AR0の斜線で示す第1弁別領域155に入るように伝送システムを設定すれば、後は搬送波が再生できれば復調できる。アンテナ22の設定した最低の半径値をr0とすると、送信出力をある一定以上にすれば全てのシステムで受信できる。図18における送信信号の振幅は第1受信機23の4PSK最低受信振幅値、AR0になるようにに設定する。この送信最低振幅値をAT0と定義する。このことによりアンテナ22の半径がr0以上なら受信条件が最悪であっても第1受信機23はデジタル送信機51の信号を復調できる。本発明の変形16QAM、64QAMを受信する場合第1受信機23は搬送波を再生することが、困難となる。このため図25(a)のように送信機1が(π/4+nπ/2)の角度上の位置に8つの信号点を配置し送信すれば、4逓倍方式により搬送波を再生できる。又、図25(b)のようにnπ/8の角度の延長線上に16ケの信号点を配置すれば搬送波再生回路131に16逓倍方式の搬送波再生方式を採用することにより信号点が縮退し疑似4PSK型16QAM変調信号の搬送波を容易に再生できる。この場合A1/(A1+A2)=tan(π/8)となるように送信機1の信号点を設定し送信すればよい。ここでQPSK信号を受信する場合を考えてみる。図2の送信機の信号点位置変調/変更回路67のように信号点位置は(図18)のQPSK信号の信号点位置をAM等の変調を重畳することもできる。この場合第1受信機23の信号点位置復調部138は信号点の位置変調信号もしくは位置変更信号をPM,AM等の復調する。そして送信信号から第1データ列と復調信号を出力する。
次に送信機1に戻り図9のベクトル図を用いてここで送信機1の16PSKの送信信号を説明すると図9のように信号点83の水平ベクトル方向の振幅A1を図18のデジタル送信機51の4PSK最低送信出力ATOより大きくする。すると、図9の第1象限の信号点83、84、85、86の信号は斜線で示す第14PSK受信可能領域87に入る。これらの信号を第1受信機23で受信した場合、この4つの信号点は図20の受信ベクトル図の第1弁別領域に入る。従って、第1受信機23は図9の信号点83、84、85、86のいずれを受信しても図20の信号点151と判断し、(11)なるデータをこのタイムスロットに復調する。このデータは図8に示したように、送信機1の第1分割信号点群91の(11)、つまり第1データ列の(11)である。第2象限、第3象限、第4象限の場合も同様にして第1データ列は復調される。つまり、第1受信機23は16QAMもしくは32QAMもしくは64QAMの送信機1からの変調信号の複数のデータ列のうち、第1データ列の2bitのデータのみを復調することになる。この場合は第2データ列や第3データ列の信号は全て第1〜第4の分割信号点群91に包含されるため第1データ列の信号の復調には影響を与えない。しかし搬送波の再生には影響を与えるので後で述べるような対策が必要である。
もし、衛星の中継器の出力に限界がないなら図9のような従来の信号点等距離方式の一般の16〜64QAMで実現できる。しかし、前述のように地上伝送と違い、衛星伝送では衛星の重量が増えると打ち上げコストが大幅に増大する。従って本体の中継器の出力限界と太陽電池の電力の限界から送信出力は制約されている。この状態はロケットの打ち上げコストが技術革新により安くならない限り当分続く。送信出力は通信衛星の場合20W、放送衛星でも100W〜200W程度である。従って、図9のような信号点等距離方式の16QAMで4PSKを伝送しようとした場合16QAMの振幅は2A1=A2であるから3ATO必要となり電力で表現すると9倍必要となる。両立性をもたせるために4PSKの9倍の電力が必要である。かつ4PSKの第1受信機も小型のアンテナで受信可能にしようとすると、現在、計画されている衛星ではこれだけの出力を得ることは難しい。例えば40Wのシステムでは360W必要となり経済的に実現できなくなる。
ここで、考えてみると確かに全ての受信機が同じ大きさのアンテナの場合、同じ送信電力なら等距離信号点方式外地番効率がよい。しかし大きさの異なるアンテナの受信機群とを組合わせたシステムを考えてみると新たな伝送方式が構成できる。
これを具体的に述べると4PSKは小型のアンテナを用いた簡単で低コストの受信システムで受信させ受信者数を増やす。次に16QAMは中型アンテナを用いた高性能であるが高コストの多値復調受信システムで受信させ投資に見合ったHDTV等の高付加価値サービスを行い特定の受信者に対象を限定すればシステムとして成立する。こうすれば送信出力を若干増加させるだけで4PSKと16QAM、場合により64DMAを階層的に送信することができる。
例えば図10のようにA1=A2となるように信号点間隔をとることにより、全送信出力を下げることができる。この場合4PSKを送信するための振幅A(4)はベクトル95で表現でき、2A1 2の平方根となる。全体の振幅A(16)はベクトル96で表現でき(A1+A2)2+(B1+B2)2の平方根となる。
|A(4)|2=A1 2+B1 2=ATO 2+ATO 2=2ATO 2
|A(16)|2=(A1+A2)2+(B1+B2)2=4ATO 2+4ATO 2=28ATO 2
|A(16)|/|A(4)|=2
つまり、4PSKを送信する場合の2倍の振幅、4倍の送信エネルギーで送信できる。等距離信号点で伝送する一般的な受信機では変形16値QAMの復調はできないがA1とA2の2つの閾値を予め設定することにより第2受信機33で受信できる。図10の場合、第1分割信号点群91の中の信号点の最短距離はA1であり、4PSKの信号点間距離2A1と比べるとA2/2A1なる。A1=A2より1/2の信号点間距離となり、同じエラーレートを得ようとすると2倍の振幅の受信感度、エネルギーでは4倍の受信感度が必要となる。4倍の受信感度を得るには、第2受信機33のアンテナ32の半径r2を第1受信機23のアンテナ22の半径半径r1に比べて2倍すなわちr2=2r1にすればよい。例えば第1受信機23のアンテナが直径30cmなら第2受信機33のアンテナ直径を60cmにすれば実現できる。このことにより第2データ列の復調により、これをHDTVの高域成分に割り当てればHDTV等の新たなサービスが同一チャンネルで可能となる。サービス内容が倍増することから受信者はアンテナと受信機の投資に見合った分のサービスを受けることができる。従って第2受信機33はその分高コストでもよい。ここで、4PSKのモード受信のために最低送信電力が決まっているため、図10のA1とA2の比率により4PSKの送信電力に対する変形16APSKの送信電力比n16と第2受信機33のアンテナ半径r2が決定する。
この最適化を計るため計算してみると、4PSKの最低必要な送信エネルギーは{(A1+A2)/A1}2倍これをn16と定義すると、変形16値QAMで受信するときの信号点間距離はA2、4PSKで受信するときの信号点間距離は2A1、信号点間距離の比率はA2/2A、であるから受信アンテナの半径をr2とすると図11のような関係となる。曲線101は送信エネルギー倍率n16と第2受信機23のアンテナ22の半径r2の関係を表す。
点102は等距離信号点の場合の16QAMを送信する場合で、前述のとおり9倍の送信エネルギーを必要とし実用的ではない。図11からn16を5倍以上増やしても第2受信機23のアンテナ半径r2はさほど小さくならないことがグラフからわかる。
衛星の場合、送信電力は限定されており、一定値以上はとれない。このことからn16は5倍以下が望ましいことが明らかになる。この領域を図11の領域103の斜線で示す。例えばこの領域内なら例えば点104は送信エネルギー4倍で第2受信機23のアンテナ半径r2は2倍になる。また、点105は送信エネルギーが2倍でr2は約5倍になる。これらは、実用化可能な範囲にある。
n16が5より小さいことをA1とA2で表現すると
n16=((A1+A2)/A1)2≦5
A2≦1.23A1
図10から分割信号点群間の距離を2A(4),最大振巾を2A(16)とすると、A(4)とA(16)−A(4)はA1とA2に比例する
従って
{A(16)}2≦5{A(14)}2とすればよい
次に変形の64APSK変調を用いた例を示す。第3受信機43は、64値QAM復調ができる。
図12のベクトル図は図10のベクトル図の分割信号点群を4値から16値に増加させた場合である。図12の第1分割信号点群91の中には信号点170を始めとして4×4=16値の信号点が等間隔に配置されている。この場合、4PSKとの両用性をもたせるため送信振巾のA1≧ATOに設定しなければならない。第3受信機43のアンテナの半径をr3として、送信、出力信号n64と定義した場合のr3の値を、同様にして求めると
r3 2={62/(n−1)}r1 2
となり、図13 64値QAMの半径r3−出力倍数nのようなグラフとなる。
ただし、図12のような配置では第2受信機33で受信した場合4PSKの2bitしか復調できないので第1、第2、第3の3つの両立性を成立させるには、第2受信機33に変形64値QAM変調波から変形16値QAMを復調する機能をもたせることが望ましい。
図14のように3階層の信号点のグルーピングを行うことにより3つの受信機の両立性が成立する。第1象限だけで説明すると、第1分割分割信号点群91は第1データ列の2bitの(11)を割りあてたことは述べた。
次に、第1副分割信号点群181には第2データ列の2bitの(11)を割りあてる。第2副分割信号点群182には(01)を、第3副分割信号点群183には(00)を第4副分割信号点群184には(10)を割りあてる。このことは図7と等価である。
図15の第1象限のベクトル図を用いて第3データ列の信号点配置を詳しく説明すると例えば信号点201,205,209,213を(11)、信号点202,206,210,214を(01)、信号点203,207,211,215を(00)、信号点204,208,212,216を(10)とすれば、第3データ列の2bitのデータを第1データ、第2データと独立して、3階層の2bitデータが独立して伝送できる。
6bitのデータが送るだけでなく本発明の特徴として3つのレベルの性能の異なる受信機で、2bit,4bit,6bitの異なる伝送量のデータが伝送できしかも、3つの階層の伝送間の両立性をもたせることができる。
ここで、3階層伝送時の両立性をもたせるために必要な信号点の配置方法を説明する。
図15にあるように、まず、第1データ列のデータを第1受信機23で受信させるためには、A1≧ATOであることはすでに述べた。
次に第2データ列の信号点、例えば図10の信号点91と図15の副分割信号点群の182,183,184の信号点と区別できるように信号点間距離を確保する必要がある。
図15では2/3A2だけ離した場合を示す。この場合第1副分割信号点群181の内部の信号点201,202の信号点間距離はA2/6となる。第3受信機43で受信する場合に必要な受信エネルギーを計算する。この場合、アンテナ32の半径をr3として、必要な送信エネルギーを4PSK送信エネルギーのn64倍であると定義すると、
r3 2=(12r1)2/(n−1)となる
このグラフは図16の曲線221で表せる。例えば点222,223の場合4PSK送信エネルギーの6倍の送信エネルギーが得られれば8倍の半径のアンテナで、また9倍の送信エネルギーなら6倍のアンテナで第1、第2、第3のデータ列が復調できることがわかる。この場合、第2データ列の信号点間距離が2/3A2と近づくため
r2 2=(3r1)2/(n−1)となり
曲線223のように若干第2受信機33のアンテナ32を大きくする必要がある。
この方法は、現時点のように衛星の送信エネルギーが小さい間は第1データ列と第2データ列を送り、衛星の送信エネルギーが大巾に増加した将来において第1受信機23や第2受信機33の受信データを損なうことなく、また改造することなく第3データ列を送ることができるという両立性と発展性の両面の大きな効果が得られる。
受信状態を説明するために、まず第2受信機33から述べる。前述の第1受信機23が本来半径r1の小さいアンテナでデジタル送信機51の4PSK変調信号及び送信機1の第1データ列を復調できるように設定してあるのに対し、第2受信機33では送信機1の図10に示した16値の信号点つまり第2データ列の16QAMの2ビットの信号を完全に復調できる。第1データ列と合わせて4bitの信号を復調できる。この場合A1,A2の比率が送信機により異なる。このデータを図21の復調制御部231で設定し、復調回路に閾値を送る。これによりAM復調が可能となる。
図21の第2受信機33のブロック図と、図19の第1受信機23のブロック図はほぼ同じ構成である。違う点は、まずアンテナ32がアンテナ22より大きい半径r2をもっている点にある。このため、より信号点間距離の短い信号を弁別できる。次に、復調器35の内部に復調制御部231と、第1データ列再生部232と第2データ列再生部233をもつ。第1識別再生回路136は変形16QAMを復調するためAM復調機能をもっている。この場合、各搬送波は4値の値をもち、零レベルと±各2値の閾値をもつ。本発明の場合、変形16QAM信号のため、図22の信号ベクトル図のように閾値が送信機の送信出力により異なる。従って、TH16を基準化したスレシホールド値とすると、図22から明らかなように
TH16=(A1+A2/2)/(A1+A2)
となる。
このA1,A2もしくはTH16及び、多値変調の値mの復調情報は、送信機1より、第1データ列の中に含めて送信される。また復調制御部231が受信信号を統計処理し復調情報を求める方法もとれる。
図26を用いてシフトファクターA1/A2の比率を決定していく方法を説明する。A1/A2を変えると閾値が変わる。受信機側で設定したA1/A2が送信機側で設定したA1/A2の値から離れるに従いエラーは増える。図26の第2データ列再生部233からの復調信号を復調制御回路231にフィールドバックしてエラーレートの減る方向にシフトファクターA1/A2を制御することにより第3受信機43はシフトファクターをA1/A2を復調しなくても済むため回路が簡単になる。また送信機はA1/A2を送る必要がなくなり伝送容量が増えるという効果がある。これを第2受信機33に用いることもできる。
復調制御回路231はメモリー231aを持つ。TV放送のチャンネル毎に異なるしきい値、つまりシフト比や信号点数や同期ルールを記憶し再びそのチャンネルを受信するとき、この値を呼び出すことにより受信が速く安定するという効果がある。
この復調情報が不明の場合、第2データ列の復調は困難となる。以下、(図24)のフローチャートを用いて説明する。
復調情報が得られない場合でもステップ313の4PSKの復調及びステップ301の第1データ列の復調はできる。そこで、ステップ302で第1データ列再生部232で得られる復調情報を復調制御部231に送る。復調制御部231はステップ303でmが4又は2ならステップ313の4PSKもしくは2PSKの復調を行う。NOならステップ304でmが8又は16ならステップ305へ向う。NOの場合はステップ310へ向う。ステップ305ではTH8とTH16の演算を行う。ステップ306で復調制御部231はAM復調の閾値TH16を第1識別再生回路136と第2識別再生回路137に送り、ステップ307、315で変形16QAMの復調と第2データ列の再生がなされる。ステップ308でエラーレートがチェックされ、悪い場合はステップ313に戻り、4PSK復調を行なう。
またこの場合、図22の信号点85.83はcos(ωt+nπ/2)の角度上にあるが、信号点84.86はこの角度上にない。従って図21の第2データ列再生部233より搬送波再生回路131へ第2データ列の搬送波送出情報を送り信号点84.86のタイミングの信号からは搬送波を抽出しないように設定してある。
第2データ列が復調不能な場合を想定して送信機1は第1データ列によりを搬送波タイミング信号を間欠的に送っている。この信号により第2データ列が復調できなくても、第1データ列のみでも信号点83.85がわかる。このため、搬送波再生回路131に搬送波送出情報を送ることにより搬送波が再生できる。
次に送信機1より、図23に示すような変形64QAMの信号が送られてきた場合、図24のフローチャートに戻るとステップ304でmが16でないか判断されステップ310でmが64以下かがチェックされ、ステップ311で等距離信号点方式でない場合、ステップ312に向かう。ここでは変形64QAM時の信号点間距離TH64を求めると
TH64=(A1+A2/2)/(A1+A2)
であり、TH16と同じである。しかし、信号点間距離が小さくなる。
第1副分割信号点群181の中にある信号点間の距離をA3とすると、第1副分割信号点群181と第2副分割信号点群182の距離は(A2−2A3)、基準化すると(A2−2A3)/(A1+A2)となる。これをd64と定義すると、d64が第2受信機33の弁別能力T2以下である場合、弁別できない。この場合、ステップ313で判断し、d64が許容範囲外であればステップ313の4PSKモードに入る。弁別範囲にある場合はステップ305へ向い、ステップ307の16QAMの復調を行う。ステップ308でエラーレートが大きい場合は、ステップ313の4PSKモードに入る。
この場合、送信機1が図25(a)に示すような信号点の変形8QAM信号を送信すれば、全ての信号点がcos(2πf+n・π/4)の角度上にあるため、4逓倍回路により、全ての搬送波が同じ位相に縮退されるため搬送波の再生が簡単になるという効果が生まれる。この場合、配慮をしていない4PSK受信機でも第1データ列の2bitは復調でき、第2受信機33では第2データ列の1bitが再生でき、合計3bit再生できる。
次に第3受信機43について述べる。図26は第3受信機43のブロック図で、図21の第2受信機33とほぼ同じ構成となる。違う点は第3データ列再生部234が追加されていることと識別再生回路に8値の識別能力があることにある。アンテナ42の半径r3がr2よりさらに大きくなるため、より信号点間距離の近い信号、例えば32値QAMや64値QAMも復調できる。このため、64値QAMを復調するため、第1識別再生回路136は検信号波に対し、8値のレベルを弁別する必要がある。この場合7つの閾値レベルが存在する。このうち1つは0のため1つの象限には3つの閾値が存在する。
図27の信号スペースダイアグラムに示すように、第1象限では3つの閾値が存在する。
図27に示すように3つの正規化された閾値、TH164とTH264とTH364が存在する。
TH164=(A1+A3/2)/(A1+A2)
TH264=(A1+A2/2)/(A1+A2)
TH364=(A1+A2−A3/2)/(A1+A2)
で表わせる。
この閾値により、位相検波した受信信号をAM復調することにより、図21で説明した第1データ列と第2データ列と同様にして第3データ列のデータが復調される。図23のように第3データ列は例えば第1副分割信号群181の中の4つの信号点201、202、203、204の弁別により、4値つまり2bitとれる。こうして6bitつまり変形64値QAMの復調が可能となる。
この時の復調制御部231は第1データ列再生部232の第1データ列に含まれる復調情報により、m、A1、A2、A3の値がわかるのでその閾値TH164とTH264とTH364を計算して第1識別再生回路136と第2識別再生回路137に送り、変形64QAM復調を確実に行うことができる。この場合復調情報にはスクランブルがかかっているので許可された受信者しか64QAMを復調できないようにすることもできる。図28は変形64QAMの復調制御部231のフローチャートを示す。(図24)の16値QAMのフローチャートと違う点のみを説明する。図28のステップ304よりステップ320になりm=32ならステップ322の32値QAMを復調する。NOならステップ321でm=64か判別し、ステップ323でA3が設定値以下から再生できないため、ステップ305に向い、図24と同じフローチャートになり、変形16QAMの復調を行なう。ここでステップ323に戻ると、A3が設定値以上ならステップ324で閾値の計算を行い、ステップ325で第1、第2識別再生回路へ3つの閾値を送りステップ326で変形64QAMの再生を行い、ステップ327で第1、第2、第3データの再生を行い、ステップ328でエラーレートが大きければステップ305に向い16QAM復調をして小さければ64QAM復調を継続する。
ここで、復調に重要な搬送波再生方式について述べる。本発明は変形16QAMや、変形64QAMの第1データ列を4PSK受信機で再生させるところに特徴の一つがある。この場合、通常の4PSK受信機を用いた場合は搬送波の再生が困難となり正常な復調ができない。これを防止するため送信機側と受信機側でいくつかの対策が必要となる。
本発明による方法として2通りの方式がある。第1の方式は一定規則基つき間欠的に(2nー1)π/4の角度上の信号点を送る方法である。第2の方式はnπ/8の角度上に略略、全ての信号点を配置し送信する方法である。
第一の方法は、図38に示したように4つの角度、π/4、3π/4、5π/4、7π/4の角度上にある信号点例えば信号点83、85の信号を送る時、図38の送信信号のタイムチャート図の中のタイムスロット群451のうち斜線で示す間欠的に送られる同期タイムスロット452、453、454、455をある一定の規則に基ずき設定する。そして、この期間中に必ず上記角度上の8つの信号点の中のひとつの信号点を送信する。それ以外のタイムスロットでは任意の信号点を送信する。そして送信機1は、このタイムスロットを送る上記の規則を図41に示すデータの同期タイミング情報部499に配置して送信する。
この場合の送信信号の内容を図41を用いてさらに詳しく説明すると同期タイムスロット452、453、454、455を含むタイムスロット群451は1つの単位データ列491、Dnを構成する。
この信号には同期タイミング情報の規則に基づき間欠的に同期タイムスロットが配置されているので、この配置規則がわかれば、同期タイムスロットにある情報を抽出することにより搬送波再生は容易にできる。
一方データ列492のフレームの先頭部分には、Sで示す同期領域493がありこれは斜線で示す同期タイムスロットだけで構成されている。この構成により上記の搬送波再生用の抽出情報が多くなるので4PSK受信機の搬送波再生が確実にしかも早くできるという効果がある。
この同期領域493は、S1、S2、S3で示す同期部496、497、498、等を含み、この部分には、同期のためのユニークワードや前述の復調情報が入っている。さらにITで示す位相同期信号配置情報部499もあり、この中には、位相同期タイムスロットの配置間隔の情報や配置規則の情報等の情報が入っている。
位相同期タイムスロットの領域の信号点は特定の位相しかもたないため搬送波は4PSK受信機でも再生できるため、位相同期部配置情報ITの内容は確実に再生できるため、この情報入手後は搬送波を確実に再生できる。
図41の同期領域493の次に復調情報部501があり、変形多値QAM信号を復調するときに必要なスレシホルド電圧に関する復調情報が入っている。この情報は多値QAMの復調に重要なので、図41の同期領域502のように同期領域の中に復調情報502を入れると復調情報の入手がより確実になる。
図42はTDMA方式によりバースト状の信号を送る場合の信号配置図である。図41との違いはデータ列492、Dnと他のデータ列との間にガードタイム521が設けられ、この期間中、送信信号は送信されない。またデータ列492の先頭部には同期をとるための同期部522が設けられている。この期間中は前述の(2n−1)π/4の位相の信号点しか送信されない。従って4PSKの復調器でも搬送波が再生できる。こうしてTDMA方式でも同期及び搬送波再生が可能となる。
次に図19の第1受信機23の搬送波再生方式について図43と図44を用いて詳しく述べる。図43において入力した受信信号は入力回路24に入り、同期検波回路541で同期検波された復調信号の1つは出力回路542に送られ出力され、第1データ列が再生される。抽出タイミング制御回路543で図41の位相同期部配置情報部499が再生され、どのタイミングで(2n−1)π/4の位相同期部の信号が入ってくるかわかり、図44のような間欠的な位相同期制御信号561が送られる。復調信号は逓倍回路545に送られ、4逓倍されて搬送波再生制御回路54に送られる。図44の信号562のように真の位相情報563の信号とそれ以外の信号を含む。タイミングチャート564の中の斜線に示すように(2nー1)π/4の位相の信号点からなる位相同期タイムスロット452が間欠的に含まれる。これを位相同期制御信号564を用いて搬送波再生制御回路544により、サンプリングすることにより位相標本信号565が得られる。これをサンプリングホールドすることにより、所定の位相信号566が得られる。この信号はループフィルタ546を通り、VCO547に送られ搬送波が再生され、同期検波回路541に送られる。こうして図39の斜線に示すような(2nー1)π/4の位相の信号点が抽出される。この信号を基に4逓倍方式により正確な搬送波が再生できる。この時、複数の位相が再生されるが図41の同期部496にユニークワードを入れることににより、搬送波の絶対位相を特定できる。
図40のように変形64QAM信号を送信する場合、略略(2nー1)π/4の位相の斜線で示す位相同期領域471の中の信号点に対してのみ位相同期タイムスロット452、452b等を送信機は送る。このため通常の4PSK受信機では搬送波は再生できないが、4PSKの第1受信機23でも、本発明の搬送波再生回路を装備することのより搬送波が再生できるという効果がある。
以上はコスタス方式の搬送波再生回路を用いた場合である。次に逆変調方式搬送波再生回路に本発明を用いた場合を説明する。
図45は本発明の逆変調方式搬送波再生回路を示す。入力回路24からの受信信号は同期検波回路541により、復調信号が再生される。一方、第1遅延回路591により遅延された入力信号は4相位変調器592において上記復調信号により逆復調され搬送波信号となる。搬送波再生制御回路544を通過できた上記搬送波信号は、位相比較器593に送られる。一方VCO547からの再生搬送波は第2遅延回路594により、遅延され、位相比較器593で前述の逆変調搬送波信号と位相比較され、位相差信号はループフィルタ546を通してVCO547に供給され、受信搬送波と同位相の搬送波が再生される。この場合、図43のコスタス形搬送波再生回路と同様にして、抽出タイミング制御回路543は図39の斜線で示した領域の信号点のみの位相情報をサンプリングさせるので16QAMでも64QAMでも、第1受信機23の4PSKの変調器で搬送波を再生できる。
次に、16逓倍方式により搬送波を再生する方式について述べる。図2の送信機1は、図46に示すように変形16QAMの信号点をnπ/8の位相に配置して変調および送信を行なう。図19の第1受信機23の方では、図48に示すような16逓倍回路661をもつコスタス型の搬送波再生回路を用いることにより、搬送波が再生できる。16逓倍回路661により、図46のようなnπ/8の位相の信号点は第1象現に縮退されるためループフィルタ546とVCO541により搬送波が再生できる。ユニークワードを同期領域に配置することにより16相から絶対位相を抽出することもできる。
次に16逓倍回路の構成を説明する。復調信号から和回路662と差回路663により、和信号、差信号を作り、乗算器664で掛け合わせてcos2θをつくる。また乗算器665ではsin2θをつくる。これらを乗算器666で乗算し、sin4θをつくる。
sin2θとcos2θから、同様にして、和回路667差回路668と乗算器670によりsin8θをつくる。和回路671と差回路672と乗算器によりcon8θをつくる。そして乗算器674によりsin16θをつくることにより16逓倍ができる。
以上のような16逓倍方式により、図46のような信号点配置をした変形16QAM信号の全ての信号点の搬送波を特定の信号点を抽出することなしに再生できるという大きな効果がある。
また図47のような配置をした変形64QAM信号の搬送波も再生できるが、いくつかの信号点は同期領域471より若干ずれているので、復調時エラーレートが増えてしまう。
この対策として2つの方法がある。1つは同期領域をはずれた信号点の信号を送信しないことである情報量は減るが構成は簡単になるという効果がある。もう1つは図38で説明したように同期タイムスロットを設けることである。タイムスロット群451の中の同期タイムスロットの期間中に斜線で示すnπ/8の位相の同期位相領域471、471a等の信号点を送ることにより、この期間中に正確に同期をとることができるため位相誤差がすくなくなる。
以上のようにして16逓倍方式により、簡単な受信機の構成で4PSK受信機により変形16QAMや変形64QAMの信号の搬送波を再生できるという大きな効果がある。また、さらに同期タイムスロットを設定した場合、変形64QAMの搬送波再生時の位相精度を上げるという効果が得られる。
以上詳しく述べたように本発明の伝送装置を用いることにより、1つの電波帯域で複数のデータを階層構造で同時に伝送することができる。
この場合に、一つの送信機に対し異なる受信感度と復調能力をもつ3つの階層の受信機を設定することにより、受信機の投資に見合ったデータ量を復調できるという特長がある。まず小さなアンテナと低分解能であるが低コストの第1受信機を購入した人受信者は第1データ列を復調再生できる。次に、中型のアンテナと中分解能の高コストの第2受信機を購入した受信者は第1、第2データ列を再生できる。また、大型のアンテナと高分解能の、かなり高コストの第3受信機を購入した人は第1、第2、第3データ列の全て復調再生できる。
もし第1受信機を家庭用デジタル衛星放送受信機にすれば多数の一般消費者に受け容れられるような低い価格で受信機を実現できる。第2受信機は当初は大型のアンテナを必要とする上に高コストのため消費者全般には受け容れられるものではないがHDTVを視聴したい人々には多少高くても意味がある。第3受信機は衛星出力が増加するまでの間かなり大型の産業用アンテナが必要で家庭用には現実的でなく産業用途に当初は適している。例えば超高解像HDTV信号を送り、衛星により各地の映画館に伝送すれば、映画館をビデオにより電子化できる。このばあい映画館やビデオシアターの運営コストが安くなるという効果もある。
以上のように本発明をTV伝送に応用した場合、3つの画質の映像サービスを1つの電波の周波数帯域で提供でき、しかもお互いに両立するという大きな効果がある。実施例では4PSK、変形8QAM、変形16QAM、変形64QAMの例を示したが、32QAMや256QAMでも実現できる。又、8PSKや16PSK、32PSKでも実施できる。また実施例では衛星伝送の例を示したが地上伝送や有線伝送でも同様にして実現できることはいうまでもない。
(実施例2)
実施例2は実施例1で説明した物理階層構造をエラー訂正能力の差別化等により論理的にさらに分割し、論理的な階層構造を追加したものである。実施例1の場合それぞれの階層チャンネルは電気信号レベルつまり物理的な復調能力が異なる。これに対し実施例2ではエラー訂正能力等の論理的な再生能力が異なる。具体的には例えばD1の階層チャンネルの中のデータを例えばD1-1とD1-2の2つに分割し、この分割データの1つ例えばD1-1データのエラー訂正能力をD1-2データより高め、エラー訂正能力を差別化することより、復調再生時にD1-1とD1-2のデータのエラー後調能力が異なるため、送信信号のC/N値を低くしていった場合、D1-2が再生できない信号レベルにおいてもD1-1は設定したエラーレート内に収まり原信号を再生できる。これは論理的な階層構造ということができる。 つまり、変調階層チャンネルのデータを分割し、誤り訂正符号と積符号の使用等の誤り訂正の符号間距離の大きさを差別化することによ誤り訂正能力による論理的な階層構造が追加され、さらに細かい階層伝送が可能となる。
これを用いると、D1チャンネルはD1-1,D1-2の2つのサブチャンネル,D2チャンネルはD2-1,D2-2の2つのサブチャンネルに増える。
これを入力信号のC/N値と階層チャンネル番号の図85を用いて説明すると、階層チャンネルD1-1は最も低い入力信号で再生できる。このCN値をdとすると、CN=dの時、D1-1は再生されるがD1-2,D2-1,D2-2は再生されない。次にCN=c以上になるとD1-2がさらに再生され、CN=bの時D2-1が加わり、CN=aの時D2-2が加わる。このようにCNが上がるにつれて、再生可能な階層の総数が増えていく。逆をいうとCNが下がるにつれて、再生可能な階層の総数が減っていく。これを図86の伝送距離と再生可能CN値の図で説明する。一般的に図86の実線861に示すように伝送距離が長くなるに従い、受信信号のC/N値は低下する。図85で説明したCN=aとなる地点の送信アンテナからの距離をLaとし,CN=bではLb,CN=cではLc,CN=dではLd,CN=eではLeとなるとする。送信アンテナよりLdの距離より迫い地域は図85で説明したようにD1-1チャンネルのみが再生できる。このD1-1の受信可能範囲を斜線の領域862で示す。図から明らかなようにD1-1チャンネルは一番広い領域で再生できる。同様にしてD1-2チャンネルは送信アンテナより距離Lc以内の領域863で再生できる。距離Lc以内の範囲では領域862も含まれるためD1-1チャンネルも再生できる。同様にして領域864ではD2-1チャンネルが再生でき、領域865ではD2-2チャンネルが再生可能となる。このようにして、CN値の劣化に伴い伝送チャンネルが段階的に減少する階層型伝送ができる。データ構造を分離して階層構造にし、本発明の階層伝送を用いることにより、アナログ伝送のようにC/Nの劣化に伴いデータ量が次第に減少する階層型の伝送が可能となるという効果がある。
次に、具体的な構成を述べる。ここでは物理階層2層、論理階層2層の実施例を述べる。図87は送信機1のブロック図である。基本的には実施例1で説明した図2の送信機のブロック図と同じなので詳しい説明は省略するが、エラー訂正符号エンコーダが付加されている点が異なる。これをECCエンコーダと略す。分離回路3は1-1、1-2、2-1、2-2の4つの出力をもち、入力信号をD1-1、D1-2、D2-1、D2-2の4つの信号に分離して出力する。このうち、D1-1、D1-2信号は第1ECCエンコーダ871aに入力され、各々、主ECCエンコーダ872aと副ECCエンコーダ873aに送られ、誤り訂正の符号化がなされる。
ここで主ECCエンコーダ872aは副ECCエンコーダ873aよりも強力なエラー訂正能力をもっている。このため、図85のCN−階層チャンネルのグラフで説明したように、復調再生時、D1-1チャンネルはD1-2チャンネルより低いC/N値においてもD1-1は基準エラーレート以下で再生できる。D1-1はD1-2よりC/Nの低下に強い論理的な階層構造となっている。誤り訂正されたD1-1、D1-2信号は合成器874aでD1信号に合成され、変調器4に入力される。一方、D2-1、D2-2信号は第2ECCエンコーダ871bの中の各々主エンコーダ872bと副ECCエンコーダ873bにより誤り訂正符号化され合成器874bによりD2信号に合成され、変調器4により入力される。主ECCエンコーダ872bは副ECCエンコーダ873bよりエラー訂正能力が高い。この場合、変調器4はD1信号、D2信号より階層型の変調信号を作り、送信部5より送信される。以上のように図87の送信機1はまず実施例1で説明した変調によるD1、D2の2層の物理階層構造をもっている。この説明は既に述べた。次に、エラー訂正能力の差別化によりD1-1とD1-2叉はD2-1、D2-2の各々2層の論理的階層構造をもっている。
次にこの信号を受信する状態を説明する。図88は受信機のブロック図である。図87の送信機の送信信号を受信した第2受信機33の基本構成は、実施例1の図21で説明した第2受信機33とほぼ同じ構成である。ECCデコーダ876a、876bを追加した点が異なる。この場合、QAM変復調の例を示すが、ASKもしくはPSK、FSK変復調でもよい。
さて、図88において、受信された信号は復調器35によりD1、D2信号として再生され分離器3a、3bにより、各々D1-1とD1-2、D2-1、D2-2の4つの信号がつくられ、第1ECCデコーダ876aと第2ECCデコーダ876bに入力される。第1ECCデコーダ876aでは、D1-1信号が主ECCデコーダ877aにより誤り訂正されて合成部37に送られる。一方、D1-2信号は副ECCデコーダ878aにより誤り訂正され合成部37に送られる。同様にして第2ECCデコーダ876bにおいてD2-1信号は主ECCデコーダ877bにおいて、D2-2信号は副ECCデコーダ878bにおいて誤り訂正され、合成部37に入力される。誤り訂正されたD1-1、D1-2、D2-1、D2-2信号は合成部37において1つの信号となり出力部36より出力される。
この場合、論理階層構造によりD1-1はD1-2より、またD2-1はD2-2より誤り訂正能力が高いため図85で説明したように、入力信号のC/N値がより低い状態においても所定の誤り率が得られ、原信号を再生できる。
具体的に主ECCデコーダ877a,877bと副ECCデコーダ878a,878bの間に誤り訂正能力の差別化を行う方法を述べる。副ECCデコーダにリードソロモン符号やBCH符号のような標準的な符号間距離の符号化方式を用いた場合、主ECCデコーダにリードソロモン符号とリードソロモン符号の両者の積符号や長符号化方式を用いた誤り訂正の符号間距離の大きい符号化方式を用いることにより誤り訂正能力に差をつけることができる。こうして論理的階層構造を実現できる。符号間距離を大きくする方法は様々な方法が知られているため他の方式に関しては省略する。本発明は基本的にはどの方式も適用できる。
ここで論理的な階層構造を図89のC/Nと誤り訂正後のエラーレートの関係図を用いて説明する。図89において、直線881はD1-1チャンネルのC/Nとエラーレートの関係を示し、直線882はD1-2チャンネルのC/Nと訂正後のエラーレートの関係を示す。
入力信号のC/N値が小さくなればなる程、訂正後のデータのエラーレートは大きくなる。一定のC/N値以下では誤り訂正後のエラーレートがシステム設計時の基準エラーレートEth以下に収まらず原データが正常に再生されない。さて、図89において徐々にC/Nを上げてゆくとD1-1信号の直線881が示すようにC/Nがe以下の場合D1チャンネルの復調ができない。e≦C/N<dの場合D1チャンネルの復調はできるが、D1-1チャンネルのエラーレートはEthを上回り、原データを正常に再生できない。
C/N=dの時、D1-1は誤り訂正能力がD1-2より高いため、誤り訂正後のエラーレートは点885dに示すようにEth以下になり、データを再生できる。一方、D1-2の誤り訂正能力はD1-1ほど高くないため訂正後のエラーレートがD1-1ほど低くないため訂正後のエラーレートがE2とEthを上回るため再生できない。従ってこの場合D1-1のみが再生できる。
C/Nが向上してC/N=Cになった時、D1-2の誤り訂正後のエラーレートが点885Cに示すようにEthに達するため、再生可能となる。この時点ではD2-1、D2-2つまりD2チャンネルの復調は不確実な状況にある。C/Nの向上に伴い、C/N=b'においてD2チャンネルが確実に復調できるようになる。
さらにC/Nが向上しC/N=bになった時点で、D2-1のエラーレートが点885bに示すようにEthまで減少し、D2-1が再生できるようになる。この時、D2-2のエラーレートはEthより大きいため再生できない。C/N=aになって点885aに示すようにD2-2のエラーレートがEthにまで減少しD2-2チャンネルが再生できるようになる。
このようにして、誤り訂正能力の差別化を用いることにより物理階層D1、D2チャンネルをさらに2層の論理階層2分割し、計4層の階層伝送ができるという効果が得られる。
この場合、データ構造を高階層のデータが欠落しても原信号の一部が再生できるような階層構造にし、本発明の階層伝送と組み合わせることにより、アナログ伝送のようにC/Nの劣化に伴いデータ量が次第に減少する階層型伝送が可能となるという効果がある。特に、近年の画像圧縮技術は急速に進歩しているため、画像圧縮データを階層構造とし階層伝送と組み合わせた場合、同一地点間において、アナログ伝送よりはるかに高画質の映像を伝送すると同時に、アナログ伝送のように段階的に受信信号レベルに応じて画質を低くしながら広い地域で受信できる。このように従来のデジタル映像伝送にはなかった階層伝送の効果をデジタルによる高画質を保ちながら得ることができる。
(実施例3)
以下本発明の第3の実施例について図面を参照しながら説明する。
図29は実施例3の全体図である。実施例3は本発明の伝送装置をデジタルTV放送システムに用いた例を示し、超高解像度の入力映像402は、第1画像エンコーダー401の入力部403に入力し、分離回路404により、第1データ列と第2データ列と第3データ列に分離され、圧縮回路405により圧縮され出力される。
他の入力映像406,407,408は各々第1画像エンコーダー401と同様の構成の第2画像エンコーダー409,410,411により圧縮され出力される。
これらの4組のデータのうち、第1データ列の4組の信号は、多重器412の第1多重器413によりTDM方式等の時間的に多重化されて、第1データ列として、送信機1に送られる。
第2データ列の信号群の全部もしくは1部は多重器414により多重化され、第2データ列として送信機1に送られる。また、第3データ列の信号群の全部もしくは1部は多重器415により多重化され、第3データ列として送信機1に送られる。
これらを受けて送信機1では3つのデータ列を変調器4により実施例1で述べた変調を行い、送信部5によりアンテナ6と伝送路7により、衛星10に送り中継器12により、第1受信機23等の3種の受信機に送られる。
第1受信機23では伝送路21により半径r1の小径のアンテナ22で受けて、受信信号の中の第1データ列のみを第1データ列再生部232で再生し、第1画像デコーダー421によりNTSC信号もしくはワイドNTSC信号等の低解像度の映像出力425と426を再生し出力させる。
第2受信機33では、半径r2の中径のアンテナ32で受けて、第1データ列再生部232と第2データ列再生部233により第1データ列と第2データ列を再生し、第2画像デコーダー422により、HDTV信号等の高解像度の映像出力427もしくは映像出力425、426を再生し出力させる。
第3受信機43では、半径r3の大径のアンテナ33で受けて、第1データ列再生部232と第2データ列再生部233と第3データ列再生部234により、第1データ列と第2データ列と第3データ列を再生し、ビデオシアターや映画館用の超高解像度HDTV等の超高解像度の映像出力428を出力する。映像出力425、4266,427も出力できる。一般のデジタルTV放送は、デジタル送信機51から放送され、第1受信機23で受信した場合、NTSC等の低解像の映像出力426として出力される。
では、次に図30の第1画像エンコーダー401のブロック図に基ずき、構成を詳しく述べる。超高解像度の映像信号は入力部403に入力され、分離回路404に送られる。分離回路404ではサブバンドコーディング方式により4つの信号に分離する。QMF等の水平ローパスフィルタ451と水平ハイパスフィルタ452により、水平低域成分と水平高域成分に分離され、サブサンプリング部453,454により、各々の成分はサンプリングレートを半分にした後、水平低域成分は垂直ローパスフィルタ455と垂直ハイパスフィルタ456により、各々水平低域垂直低域信号、略してHLVL信号と水平低域垂直高域信号、略してHLVH信号に分離され、サブサンプリング部457と458により、サンプリングレートを落として圧縮部405に送られる。
水平高域成分は、垂直ローパスフィルタ459と垂直ハイパスフィルタ460により、水平高域垂直低域信号、略してHHVL信号と、水平高域垂直低域信号、略してHHLH信号に分離され、サブサンプリング部461,462によりサンプリングレートを下げて、圧縮部405に送られる。
圧縮部405ではHLVL信号を第1圧縮部471でDCT等の最適の圧縮を行い第1出力部472より第1データ列として出力する。
HLVH信号は第2圧縮部473で圧縮され第2出力部464に送られる。HHVL信号は第3圧縮部463により圧縮され第2出力部464へ送られる。HHVH信号は分離回路465により高解像度映像記号(HHVH1)と超高解像度映像信号(HHVH2)に分けられ、HHVH1は第2出力部464へ、HHVH2は第3出力部468へ送られる。
次に図31を用いて第1画像デコーダー421を説明する。第1画像デコーダー421は第1受信機23からの出力、第1データ列つまりD1を入力部501に入力しデスクランブル部502によりスクランブルを解いた後伸長部503により、前述のHLVL信号に伸長した後画面比率変更回路504と出力部505により画面比率を変更してNTSC信号の画像506、NTSC信号でストライプ画面の画像507、ワイドTVのフル画面の画像508もしくは、ワイドTVのサイドパネル画面の画像509を出力する。この場合、ノンインタレースもしくはインタレースの2つの走査線のタイプが選べる。走査線もNTSCの場合525本と二重描画による1050本が得られる。また、デジタル送信機51からの4PSKの一般のデジタルTV放送を受信した場合は、第1受信機23と第1画像デコーダ421によりTV画像を復調、再生できる。次に図32の第2画像デコーダーのブロック図を用いて第2画像デコーダーを説明する。まず第2受信機33からのD1信号は第1入力部521より入力し、第1伸長部522で伸長され、オーバーサンプリング部523により2倍のサンプリングレートになり垂直ローパスィルタ524により、HLVL信号が再生される。D2信号は第2入力部530より入力し、分離回路531により3つの信号に分離され、第2伸長部532と第3伸長部533と、第3伸長部534により各々伸長及び、デスクランブルされ、オーバーサンプリング部535、536、537により2倍のサンプリングレートとなり、垂直ハイパスフィルター538、垂直ローパスフィルタ539、垂直ハイパスフィルタ540により送られる。HLVL信号とHLVH信号は加算器525で加算され、オーバーサンプリング部541と水平ローパスフィルター542により水平低域映像信号となり、加算器543に送られる。HHVL信号とHHVH1信号は加算器526により加算され、オーバーサンプリング部544と水平ハイパスフィルター545により水平高域映像信号になり加算器543によりHDTV等の高解像度映像信号HD信号となり出力部546からHDTV等の画像出力547が出力される。場合によりNTSC信号も出力される。
図33は第3画像デコーダーのブロック図でD1信号は第1入力部521からD2信号は第2入力部530から入力し高域画像デコーダー527により前述の手順でHD信号が再生される。D3信号は第3入力部551より入力し超高域部画像デコーダー552により伸長、デスクランブル、および合成されHHVH2信号が再生される。この信号はHD信号と合成器553で合成され超高解像度TV信号、S−HD信号となり出力部554より超高解像度映像信号555が出力される。
次に図29の説明で触れた多重器401の具体的な多重化方法について述べる。図34はデータ配列図であり、第1データ列、D1と第2データ列、D2と第3データ列D3に6つのNTSCチャンネルL1、L2、L3、L4、L5、L6と6つのHDTVチャンネルM1〜M6と6つのS-HDTVチャンネルH1〜H6をTの期間中に、時間軸上にどう配置するかを描いたものである。図34はまずTの期間にD1信号にL1からL6をTDM方式等で時間多重により配置するものである。D1のドメイン601に第1チャンネルのHLVL信号を送る。次にD2信号のドメイン602には第1チャンネルに相当する時間領域に第1チャンネルのHDTVとNTSCとの差分情報M1つまり、前述のHLVH信号とHHVL信号とHHVH1信号を送る。またD3信号のドメイン603には第1チャンネルのスーパーHDTV差分情報H1,すなわち図30で説明したHHVHー2H1を送る。
ここで第1チャンネルのTV局を選択した場合を説明する。まず小型アンテナと第1受信機23と第1画像デコーダ421のシステムをもつ一般の受信者は図31のNTSCもしくはワイドNTSCのTV信号が得られる。次に中型アンテナと第2受付信機33と第2画像エンコーダ422をもつ特定の受信者はチャンネル1を選択した場合第1データ列、D1のドメイン601と第2データ列、D2のドメイン602の信号を合成してチャンネル1のNTSC番組と同じ番組内容のHDTV信号を得る。
大型アンテナと多値復調できる第3受信機43と第3画像デコーダー423をもつ映画館等の一部の受信者はD1のドメイン601とD2のドメイン602とD3のドメイン603の信号を合成し、チャンネル1のNTSCと同じ番組内容で映画館用の画質の超解像度HDTV信号を得る。2から3までの他のチャンネルも同様にして再生される。
図35は別のドメインの構成である。まずNTSCの第1チャンネルはL1に配置されている。このL1はD1信号の第1タイムドメインのドメイン601の位置にあり、先頭部にNTSC間のデスクランブル情報と実施例1で説明した復調情報を含む情報S11が入っている。次にHDTVの第1チャンネルはL1とM1に分割されて入っている。M1はHDTVとNTSCとの差分情報であり、D2のドメイン602とドメイン611の両方に入っている。この場合6MbpsのNTSC圧縮信号を採用しL1に収容すると、M1の帯域は2倍の12Mbpsになる。L1とM1とを合わせると18Mbpsの帯域が第2受信機33と第2画像デコーダ423から復調再生可能である。一方、現在提案されている圧縮方法を用い約15Mbpsの帯域でHDTV圧縮信号を実現することができる。従って図35の配置でチャンネル1でHDTVとNTSCを同時に放送できる。この場合チャンネル2ではHDTVの再生はできない。S21はHDTVのデスクランブル情報である。また、スーパーHDTV信号はL1とM1とH1に分割して放送される。スーパーHDTVの差分情報はD3のドメイン603,612,613を用い、NTSCを6Mbpsに設定した場合、合計36Mbps送れ、圧縮を高くすれば映画館用画質の走査線約2000本のスーパーHDTV信号も伝送できる。
図36の配置図はD3で6つのタイムドメインを占有させスーパーHDTV信号を伝送した場合を示す。NTSC圧縮信号を6Mbpsに設定した場合9倍の54Mbpsが伝送できる。このためより高画質のスーパーHDTVを伝送できる。
以上は、送信信号の電波の水平もしくは垂直の偏波面の片方を利用する場合である。ここで水平と垂直の2つの偏波面を使うことにより、周波数利用効率は2倍となる。以下に説明をする。
図49は第1データ列の水平偏波信号DV1と垂直偏波信号DH1及び第2データ列の同じくDV2とDH2、第3データ列のDV3とDH3の信号配置図を示す。この場合、第1データ列の垂直偏波信号DV1にNTSC等の低域TV信号が入っており第1データ列の水平偏波信号DH1に高域TV信号が入っている。従って、垂直偏波アンテナしかもっていない第1受信機23は,NTSC等の低域信号を再生できる。一方、垂直、水平の両方向の偏波アンテナをもつ第1受信機23は、例えば、L1とM1信号を合成しHDTV信号を得ることができる。つまり、第1受信機23を用いた場合、アンテナの能力により、一方ではNTSCが、他方ではんTSCとHDTVが再生できるため2方式が両立するという大きな効果がある。
図50はTDMA方式にした場合で、各データバースト721の先頭部に同期部731とカード部741が設けられている。又、フレームの先頭部には同期情報部720が設けられている。この場合は、各タイムスロット群が、各々1つのチャンネルが割りあてられている。例えば、第1タイムスロット750で第1チャンネルの全く同じ番組のNTSC、HDTV、スーパーHDTVを送ることができる。各々のタイムスロット750〜750eが完全に独立している。従って特定の放送局が特定のタイムスロットを用いてTDMA方式で放送する場合、他局と独立してNTSC、HDTV、スーパーHDTVの放送ができるという効果がある。又、受信側も水平偏波アンテナで第1受信機23をもつ構成の場合NTSC TV信号を両偏波アンテナなら、HDTVを再生できる。第2受信機33にすると低解像度のスーパーHDTVを再生できる。第3受信機43にするとスーパーHDTV信号を完全に再生できる。以上のように両立性のある放送システムを構築出来る。この場合、図50のような配置で、バースト状のTDMA方式でなく、図49のような連続信号の時間多重も可能である。また図51に示すような信号配置にすればより高解度のHDTV信号を再生できる。
以上述べたように実施例3により超高解像度型HDTV、HDTVとNTSC-TVの3つの信号の両立性のあるデジタルTV放送が可能になるという顕著な効果がある。とくに映画館等に伝送した場合、映像を電子化することができるという新たな効果がある。
ここで、本発明による変形QAMをSRQAMと呼び、具体的なエラーレートについて述べる。
まず、16SRQAMのエラーレートを計算する。図99は16SRQAMの信号点のベクトル図である。第1象限において、16QAMの場合、信号点83a、83b、84a、85、83a等の各16ヶの信号点の間隔は等間隔であり、全て2δである。
16QAMの信号点83aは座標軸のI軸、Q軸よりδの距離にある。ここで16SRQAMにする場合、nをシフト値と定義すると、信号点83aはシフトして、座標軸からの距離をnδの位置の信号点83へ移動させる。この場合nは 0<n<3
である。また他の信号点84a、86aもシフトして信号点84、86の位置に移動する。
第1データ列の誤り率をPe1とすると
第2データ列の誤り率をPe2とすると
となる。
次に36SRQAMもしくは32SRQAMのエラーレートを計算する。図100は36SRQAMの信号ベクトル図である。第1象限において36QAMの信号点間距離は2δであると定義する。
36QAMの信号点83aは座標軸よりδの距離にある。この信号点83aは36SRQAMになると信号点83の位置にシフトし、座標軸よりnδの距離となる。各々の信号点はシフトして信号点83、84、85、86、97、98、99、100、101となる。9ヶの信号点からなる信号点群90を一つの信号点とみなして、変形4PSK受信機で受信し、第1データ列D1のみー再生した場合の誤り率をPe1とし、信号点群90の中の9個の信号点を各々弁別し、第2データ列D2を再生した場合の誤り率をPe2とすると
となる。
この場合、図101のC/N〜エラーレート図はエラーレートPeと伝送系のC/Nとの関係を計算した一例を示す。曲線900は比較のため従来方式の32QAMのエラーレートを示す。直線905はエラーレートが10の−1.5乗の直線を示す。本発明のSRQAMのシフト量nを1.5とした場合の第1階層D1のエラーレートは曲線901aとなり、エラーレートが10-1.5において曲線900の32QAMに対してC/N値が5dB下がってもD1は同等のエラーレートで再生できるという効果がある。
次にn=1.5の場合の第2階層D2のエラーレートは曲線902aで示される。エラーレートが10-1.5において、曲線900に示す32QAMに比べてC/Nを2.5dB上げないと同等のエラーレートで再生できない。曲線901b、曲線902bはn=2.0の場合のD1、D2を示す。曲線902CはD2を示す。これをまとめると、エラーレートが10の−1.5乗の値において22n=1.5、2.0、2.5の時、32QAMに比べて各々D1は5、8、10dB改善され、D2は2.5dB劣化する。
32SRQAMの場合にシフト量nを変化させた場合に所定のエラーレートを得るのに必要な第1データ列D1と第2データ列D2のC/N値を図103のシフト量nとC/Nの関係図で示す。図103をみると明らかなように、nが0.8以上であれば、階層伝送つまり第1データ列D1と第2データ列D2の伝送に必要なC/N値の差が生まれ、本発明の効果が生じることがわかる。従って、32SRQAMの場合n>0.85の条件下で効果がある。16SRQAMの場合のエラーレートは図102のC/Nとエラーレートの関係図のようになる。
図102において曲線900は16QAMのエラーレートを示す。曲線901a、901b、901cは各々第1データ列D1のn=1.2、1.5、1.8の場合のエラーレートを示す。曲線902a、902b、902cは各々第2データ列D2のn=1.2、1.5、1.8の場合のエラーレートを示す。
図104のシフト量nとC/Nの関係図は16SRQAMの場合にシフト量nを変化させた場合に特定のエラーレートを得るのに必要な第1データ列D1と第2データ列D2のC/Nの値を示したものである。図104から明らかなように16SRQAMの場合n>0.9であれば本発明の階層伝送が可能となることがわかる。以上からn>0.9なら階層伝送が成立する。
ここで具体的にデジタルTVの地上放送に本発明のSRQAMを適用した場合の一例を示す。図105は地上放送時の送信アンテナと受信アンテナとの距離と、信号レベルとの関係図を示す。曲線911は送信アンテナの高さが1250ftの場合の受信アンテナの信号レベルを示す。まず、現在検討が進められているデジタルTV放送方式において要求される伝送系の要求エラーレートを10の−1.5乗と仮定する。領域912はノイズレベルを示し、点910はC/N=15dBになる地点で従来方式の32QAM方式の受信限界点を示す。このL=60mileの地点においてデジタルのHDTV放送が受信できる。しかし、天候等の受信条件の悪化によりC/Nが低下すると急激にHDTVの受信が不能となる問題を持っている。また地形や建築物の影響により、少なくとも10dB程度の変動が見込まれ、60mileの半径内の全ての地点で受信できる訳でない。この場合、アナログと違いデジタルの場合完全に映像が伝送できない。従って従来のデジタルTV放送方式のサービスエリアは不確実なものであった。
一方、本発明の32SRQAMの場合、前述のように第1階層D1でNTSC等の中解像度TV成分を送り、第2階層D2でHDTVの高域成分のみを送ることができる。例えば図105において第1階層のサービスエリアは点910aのように70mile地点まで拡大し、第2階層は910bのように、55mile地点まで後退する。図106の32SRQAMのサービスエリア図はこの場合のサービスエリアの面積の違いを示す。図106は図53をより具体的に説明したものである。図106において領域708、703a、703b、712は各々従来方式の32QAMのサービスエリア、第1階層D1のサービスエリア、第2層D2のサービスエリア、隣接アナログ局のサービスエリアを示す。
つまり、従来方式の32QAMでは各目上60マイルのサービスエリアを、設定できる。しかし、実際は天候や地形の条件変化により受信限界地近傍においてきわめて受信状態が不安定であった。
しかし、本発明の32SRQAMを用い、第1階層D1でNTSCグレードの中低域TV成分を送信し、第2階層D2でHDTVの高域TV成分を送信することにより、図106のように高解像度グレードのサービスエリアの半径が5マイル縮小するものの、中低解像度グレードのサービスエリアの半径が10マイル以上拡大するという効果が生まれる。
このことにより、一番目に従来方式では、受信条件が悪い地域において存在した受信不能地域においても本発明のSRQAM方式を適用することにより、少なくとも設定したサービスエリア内においては殆んどの受信機で中低解像度グレードでTV放送を受信できるような送信が可能となる。従ってビルかげや低地の受信不能領域と隣接アナログ局からの妨害を受ける地域において受信不能地域が大巾に減少し、これに伴い受信者数が増加する。
二番目に従来方式では高価なHDTV受信機と受像機をもつ受信者しか受信できなかったため、サービスエリア内においても一部の受信者しか視聴できなかった。しかし本発明では従来のNTSCやPALやSECAM方式の従来型のTV受像機を持っている受信者もデジタル受信機のみを増設することにより、デジタルHDTV放送の番組をNTSCグレードではあるが受信可能になるという効果がある。このため受信者はより少ない経済的負担で番組が視聴できる。
同時に総受信者数が増えるためTV送信者側はより多くの視聴者を得られるためTV事業としての経営がより安定するという社会的効果が生まれる。
三番目に中低解像度グレードの受信地域の面積はn=2.5の場合、36%従来方式に比して拡大する。拡大に応じて受信者が増える。サービスエリアの拡大と受信者数の増加によりその分TV事業者の事業収入が増大する。このことによりデジタル放送の事業リスクが減りデジタルTV放送の普及が早まることが期待できる。
さて、図107の32SRQAMのサービスエリア図にみるように、n=1.8の場合も同様の効果が得られる。シフト値nを変更することにより、各々の放送局がHDTV受像機とNTSCTV受像機の分布状況等の地域特有の条件や事情に応じてnを変更し、SRQAMのD1とD2のサービスエリア703aと703bを最適な条件に設定することにより、受信者は最大の満足を放送局は最大の受信者数を得ることができる。
この場合
n>1.0
の時、以上のような効果が得られる。
従って、32SRQAMの場合nは
1<n<5
となる。
同様にして16SRQAMの場合nは
1<n<3
となる。
この場合図99、図100のようにシフトさせて第1と第2階層を得るSRQAM方式において、16SRQAM、32SRQAM、64SRQAMにおいてnが1.0以上であれば、地上放送において本発明の効果が得られる。
実施例では映像信号を伝送した場合を説明したが音声信号を高域部もしくは高分解能部と低域部もしくは低分解能部にわけ、それぞれ第2データ列、第1データ列として本発明の伝送方式を用いて伝送すると、同様の効果が得られる。
PCM放送、ラジオ、携帯電話に用いるとサービスエリアが広がるという効果がある。
また、実施例では時間分割多重(TDM)方式と組み合わせてTDMによるサブチャンネルを設け、その各サブチャンネルのエラー訂正のコードゲインを差別化することにより、各サブチャンネルの閾値に差をつけることができた。SRQAMは“C−CDM”とよばれる本発明の信号点符号分割多重方式(Constellation-Code Division Multiplex)をrectangle-QAMに応用したものである。C−CDMはTDMやFDMと独立した多重化方式である。コードに対応した信号点コードを分割することにより、サブチャンネルを得る方式である。この信号点の数を増やすことによりTDMやFDMにはない伝送容量の拡張性が得られる。このことは従来機器とほぼ完全な互換性を保ちながら実現する。このような優れた効果をもつ多重化技術である。
さて、C−CDMとTDMを組み合わせた実施例を用いたが周波数分割多重方式(FDM)と組み合わせても、同様の閾値の緩和効果が生まれる。例えば、TV放送に用いた場合、図108のTV信号の周波数分布図に示すようになる。従来のアナログ放送例えばNTSC方式の信号はスペクトラム725のような周波数分布をしている。一番大きな信号は映像のキャリア722である。カラーのキャリア723や音声のキャリア724はそれほど大きくない。お互いの干渉を避けるためにはデジタル放送の信号をFDMにより2つの周波数に分ける方法が考えられる。この場合、図に示すように映像のキャリア722を避けるように第1キャリア726と第2キャリア727に分割し各々第1信号720と第2信号721を送ることにより干渉は軽減できる。第1信号720により低解像度TV信号を大きな出力で送信し、第2信号721により高解像度信号を小さな出力で送信することにより、妨害を避けながらFDMによる階層型放送が実現する。
この時、まず第1信号720にC−CDMにより得られる32SRQAMを用いてサブチャンネルを追加する。次にこの閾値の低いサブチャンネルにさらに低解像度の成分をのせる。一方のサブチャンネルに普通解像度の成分を伝送することにより、さらに階層の数が増え、低解像度のサービスエリアが拡がるという効果が生まれる。この閾値の低いサブチャンネルに音声情報叉は同期情報、各データのヘッダー等の重要な情報を入れることにより、この重要な情報は確実に受信できるため安定した受信が可能となる。第2信号721に、同様の手法を用いると、サービスエリアの階層が増える。HDTVの走査線が1050本の場合、525本に加えて、C−CDMにより775本のサービスエリアが加わる。
このようにして、FDMとC−CDMを組み合わせるとサービスエリアが拡大するという効果が生まれる。この場合FDMにより2つのサブチャンネルを設けたが3つの周波数に分割し、3つのサブチャンネルを設けてもよい。
次にTDMとC−CDMを組み合わせて妨害を避ける方法を述べる。図109に示すようにアナログTV信号には水平帰線部732と映像信号部731がある。水平帰線部732の信号レベルが低いことと、この期間中は妨害を受けても画面に出力されないことを利用する。デジタルTV信号の同期をアナログTV信号と合わせ、水平帰線部732の期間の水平帰線同期スロット733、733aに重要なデータ、例えば同期信号等を送るか高い出力で多くのデータを送ることができる。このことにより、妨害を増やさないでデータ量を増やしたり出力を上げられるという効果がある。なお垂直帰線部735、735aの期間に同期させて垂直帰線同期スロット737、737aを設けても同様の効果が得られる。
図110はC−CDMの原理図である。叉、図111は16QAMの拡張版のC−CDMのコード割り当て図を示し、図112は32QAM拡張版のコード割り当て図を示す。図110、111に示すように256QAMは第1、2、3、4層740a、740b、740c、740dの4つの層に分けられ、各々4、16、64、256ケのセグメントを持つ。第4層740dの256QAMの信号点コードワード742dは8bitの“11111111”である。これを2bitずつ4つのコードワード741a、741b、741c、741dに分割し、各第1、2、3、4層740a、740b、740c、740dの信号点領域742a、742b、742c、742dに各々“11”、“11”“11”、“11”を割り当てる。かくして、2bitずつのサブチャンネルすなわち、サブチャンネル1、サブチャンネル2、サブチャンネル3、サブチャンネル4ができる。これを信号点符号分割多重方式という。図111は16QAMの拡張版の具体的な符号配置を示し、図112は36QAMの拡張版を示す。C−CDM多重化方式は独立したものである。従って従来の周波数分割多重方式(FDM)や時間分割多重方式(TDM)と組み合わせることにより、更にサブチャンネルが増やせるという効果がある。こうしてC−CDM方式により新しい多重化方式を実現できる。Rectangle-QAMを用いてC−CDMを説明したが、信号点をもつ他の変調方式例えば他の形のQAMやPSK、ASK、そして周波数領域を信号点とみなし、FSKも同様に多重化できる。
(実施例4)
以下本発明の第4の一実施例について図面を参照しながら説明する。
図37は実施例4の全体のシステム図である。実施例4は実施例3で説明した伝送装置を地上放送に用いたもので、ほぼ同じ構成、動作である。実施例3で説明した図29との違いは、送信用のアンテナ6aが地上伝送用アンテナになっている点と各受信機の各々のアンテナ21a,31a,41aが地上伝送用アンテナになっている点のみである。その他の動作はまったく同じであるため重復する説明を省略する。衛星放送と違い、地上放送の場合は送信アンテナ6aと受信機との距離が重要となる。遠距離にある受信機は到達電波が弱くなり、従来の送信機で単に多値QAM変調した信号では全く復調できず番組を視聴することはできない。
しかし本発明の伝送装置を用いた場合、図37のように遠距離にアンテナ22aがある第1受信機23は変形64QMA変調信号もしくは変形16QAM変調信号を受信して4PSKモードで復調し第1データ列のD1信号を再生するのでNTSCのTV信号が得られる。従って電波が弱くても中解像度でTV番組を視聴できる。
次に中距離にアンテナ32aがある第2受信機33では到達電波が充分強いため変形16または64QAM信号から第2データ列と第1データ列を復調できHDTV信号が得られる。従って同じTV番組をHDTVで視聴できる。
一方、近距離にあるか超高感度のアンテナ42aをもつ第3受信機43は電波が変形64QAM信号の復調に充分な強度であるため第1、2、3、データ列D1,D2,D3を復調し超高解像度HDTV信号が得られる。同じTV番組を大型映画と同じ画質のスーパーHDTVで視聴できる。
この場合の周波数の配置方法は図34、図35、図36の図を用いて時間多重配置を周波数配置に読み代えることにより説明できる。図34のように1から6チャンネルまで周波数がわり割当られている場合D1信号にNTSCのL1を第1チャンネルに、D2信号の第1チャンネルのM1にHDTVの差分情報を、D3信号の第1チャンネルのH1に超高解像度HDTVの差分情報を配置することによりNTSCとHDTVと超解像度HDTVを同一のチャンネルで送信することができる。また図35、図36のように他のチャンネルのD2信号やD3信号を使用することが許可されれば、より高画質のHDTVや超高解像度HDTVが放送できる。
以上のように互いに両立性のある3つのデジタルTV地上放送を1つのチャンネルもしくは他のチャンネルのD2,D3信号領域を使用して放送できるという効果がある。本発明の場合、同じチャンネルで同じ内容のTV番組を中解像度であれば、より広範囲の地域で受信できるという効果がある。
デジタル地上放送として16QAMを用いた6MHzの帯域のHDTV放送等が提案されている。しかしこれらの方式はNTSCとの両立性がないため同じ番組をNTSCの別チャンネルで送信するサイマルキャスト方式の採用が前提となっている。また16QAMの場合、伝送できるサービスエリアが狭くなることが予想されている。本発明を地上放送に用いることにより別にチャンネルを設ける必要がなくなるだけでなく、遠距離の受信機でも中解像度で番組を視聴できるため放送サービスエリアが広いという効果がある。
図52は従来提案されている方式のHDTVのデジタル地上放送時の受信妨害領域図を示すもので、従来提案されている方式を用いたHDTVのデジタル放送局701からHDTVの受信できる受信可能領域702と隣接するアナログ放送局711の受信可能領域712を示している。両者の重複する重複部713においてはアナログ放送局711の電波妨害により、少なくともHDTVを安定して受信することができなくなる。
次に図53は本発明による階層型の放送方式を用いた場合の受信妨害領域図を示す。本発明は従来方式と同一の送信電力の場合、電力利用効率が低いため、HDTVの高解像度受信可能領域703は上述の従来方式の受信可能領域702より若干狭くなる。しかし、従来方式の受信可能領域702より広い範囲のデジタルNTSC等の低解像度受信可能領域704が存在する。以上の2つの領域から構成される。この場合のデジタル放送局701からアナログ放送局711への電波妨害は図52で示した従来方式と同レベルである。
この場合、本発明ではアナログ放送局711からのデジタル放送局701への妨害は3つの領域が存在する。1つはHDTVもNTSCも受信できない第1妨害領域705である。第2は妨害を受けるもののNTSCを妨害前と同様に受信できる第2妨害領域706で一重斜線で示す。ここではNTSCはC/Nが低くても受信可能な第1データ列を使用しているためアナログ局711の電波妨害によりC/Nが低下しても妨害の影響範囲は狭い。
第3は妨害前はHDTVが受信できていたが妨害後はNTSCのみ受信できる第3妨害領域707で2重斜線で示す。
以上のようにして従来方式より妨害前のHDTVの受信領域は若干狭くなるが、NTSCを含めた受信範囲は広くなる。さらにアナログ放送局711からの妨害により従来方式ではHDTVが妨害により受信できなかった領域においてもHDTVと同一の番組をNTSCで受信可能となる。こうして番組の受信不能領域が大巾に削減するという効果がある。この場合、放送局の送信電力を若干増やすことにより、HDTVの受信可能領域は従来方式と同等になる。さらに従来方式では全く番組を視聴できなかった遠方地域や、アナログ局との重複地域において、NTSCTVの品位で番組が受信できる。
また2階層の伝送方式を用いた例を示したが、図78の時間配置図のように3階層の伝送方式を用いることもできる。HDTVをHDTV、NTSC、低解像度NTSCの3つのレベルの画像に分離し、送信することにより、図53の受信可能領域は2層から3層に広がり最外層は広い領域となるとともに2階層伝送では全く受信不可能であった第1妨害領域705では低解像度NTSCTVの品位で番組が受信可能となる。以上はデジタル放送局がアナログ放送に妨害を与える例を示した。
次にデジタル放送がアナログ放送に妨害を与えないという規制条件のもとにおける実施例を示す。現在米国等で検討されている空きチャンネルを利用する方式は、隣接して同じチャンネルを使用する。このため後から放送するデジタル放送は既存のアナログ放送に妨害を与えてはならない。従ってデジタル放送の送信レベルを図53の条件で送信する場合より下げる必要がある。この場合、従来方式の16QAMや4ASK変調の場合、図54の妨害状態図に示すように二重斜線で示した受信不能領域713が大きいためHDTVの受信可能領域708は大巾に小さくなってしまう。サービスエリアが狭くなり、その分受信者が減るためスポンサーが減る。従って従来方式では放送事業が経済的に成立しにくいことが予想されている。
次に図55に本発明の放送方式を用いた場合を示す。HDTVの高解像度受信可能領域703は、従来方式の受信可能領域708より若干狭くなる。しかし、従来方式より広い範囲のNTSC等の低解像度受信可能領域704が得られる。一重斜線で示す部分は、同一番組をHDTVレベルでは受信できないが、NTSCレベルで受信できる領域を示す。このうち第1妨害領域705においてアナログ放送局711からの妨害を受け、HDTVも、NTSCも両方受信できない。
以上のように同じ電波強度の場合、本発明の階層型放送ではHDTV品位の受信可能地域は若干狭くなる一方で、同一番組をNTSCTVの品位で受信できる地域が増える。このため放送局のサービスエリアが増えるという効果がある。より多くの受信者に番組を提供できる効果がある。HDTV/NTSCTVの放送事業を、より経済的に安定して成立させることができる。将来デジタル放送受信機の比率が増えた段階ではアナログ放送への妨害規則は緩和されるため電波強度を強くすることができる。この時点でHDTVのサービスエリアを大きくすることができる。この場合、第1データ列と第2データ列の信号点の間隔を調整することにより図55で示したデジタルHDTVINTSCの受信可能地域とデジタルNTSCの受信可能地域を調整することができる。この場合、前述のように第1データ列に、この間隔の情報を送信することにより、より安定して受信ができる。
図56は、将来デジタル放送に切り替えた場合の妨害状況図を示す。この場合、図52と違い隣接局はデジタル放送を行うデジタル放送局701aとなる。送信電力を増やすことができるため、HDTV等の高解像度受信可能領域703はアナログTV放送と同等の受信可能領域702まで拡大できる。
そして両方の受信可能領域の競合領域714では互いに妨害を受けるため通常の指向性のアンテナでは番組をHDTVの品位では再生できないが、受信アンテナの指向性の方向にあるデジタル放送局の番組をNTSCTVの品位で受信できる。また非常に高い指向性のアンテナを用いた場合アンテナの指向性方向にある放送局の番組をHDTVの品位で受信できる。低解像度受信可能領域704は、アナログTV放送の標準の受信可能領域702より広くなり、隣接の放送局の低解像度受信可能領域704aの競合領域715、716ではアンテナの指向性の方向にある放送局の番組がNTSCTVの品位で再生できる。
さて、かなり将来のデジタル放送の本格普及時期においては規制条件がさらに緩和され、本発明の階層型放送により広いサービスエリアのHDTV放送が可能となる。この時点においても、本発明の階層型放送方式を採用するにより従来方式と同程及の広い範囲のHDTV受信範囲を確保するとともに従来方式では受信不可能であった遠方地域や競合地域においてもNTSCTVの品位で番組が受信できるため、サービスエリアの欠損部が大巾に減少するという効果がある。
(実施例5)
実施例5は本発明を振巾変調つまりASK方式に用いた場合の実施例である図57は実施例5の4値のASK信号信号点配置図を示し、4つの信号点721、722、723、724をもつ。4値の場合2bitのデータを1周期で送ることができる。信号点721、722、723、724を例えば00、01、10、11に対応させることができる。
本発明による階層型伝送を行うために、図58に示すように、信号点721、722を1つのグループつまり第1の信号点群725として扱い、信号点723、724を別のグループ、第2の信号点群726と定義する。そして2つの信号点群の間の間隔を等間隔の信号点の間隔より広くする。つまり信号点721、722の間隔をLとすると信号点723、724の間隔は同じLで良いが、信号点722と信号点723の間隔LoはLより大きく設定する。
つまり Lo>L
と設定する。これが本発明の階層型伝送システムの特徴である。ただしシステムの設計によっては条件や設定により一時的もしくは恒久的にL=Loになっても良い。
そして図59(a)のように2つの信号点群に第1データ列D1の1bitのデータを対応させることができる。例えば第1の信号点群725を0、第2の信号点群726を1と定義すれば、第1データ列の1bitの信号が定義できる。次に第2データ列D2の1bitの信号を各信号群の中の2つの信号点群に対応させる。例えば、図59(b)のように信号点721、723をD2=0とし、信号点722、724をD2=1とすれば第2データ列D2のデータを定義できる。この場合も2bit/シンボルとなる。
このように信号点を配置することにより、ASK方式で本発明の階層型伝送が可能となる。階層型伝送システムは信号対雑音比つまりC/N値が充分高い時は従来の等間隔信号点方式と変わりはない。しかし、C/N値が低い場合、従来方式では全くデーターを再生できない条件においても本発明を用いることにより第2データ列D2は再生できなくなるが、第1データ列D1は再生できる。これを説明するとC/Nが悪くなった状態は図60のように示せる。つまり受信機で再生した信号点はノイズや伝送歪等により、分散信号点領域721a722a、723a、724aの広い範囲にガウス分布状に分散する。このような場合、信号点721と信号点722、信号点723と信号点724の区別が難しくなる。つまり第2データ列D2のエラーレートが非常に高くなる。しかし図から明らかなように信号点721,722のグループと信号点723,724のグループとの区別は容易である。つまり第1の信号点群725と第2の信号点群726との区別ができる。このため、第1データ列D1は低いエラーレートで再生できることになる。
こうして2つの階層のデータ列D1とD2が送受信できる。従って伝送システムのC/Nの良い状態及び地域では第1データ列D1と第2列D2の両方がC/Nの悪い状態及び地域では第1データ列D1のみが再生される階層型伝送ができるという効果がある。
図61は送信機741のブロック図で入力部742は第1データ列入力部743と第2データ列入力部744から構成される。搬送波発生器64からの搬送波は入力部742からの信号を処理部745でまとめた入力信号により乗算器746において振巾変調されさらにフィルタ747により帯域制限されVSB信号等のASK信号となり出力部748から出力される。
ここでフィルタを通過した後の出力波形について述べる。図62(a)はASK変調信号の周波数分布図である。図のようにキャリアの両側に側波帯がある。この信号をフィルタ747のバンドパスフィルタ図62(b)の送信信号749のようにキャリア成分を少し残して片側の側波帯を取り去る。これをVSB信号というが、f0を変調周波数帯域とすると、約f0/2の周波数帯域で送信できるため、周波数利用効率が良いことが知られている。図60のASK信号は元来2bit/シンボルであるがVSB方式を用いると同一周波数帯域で16QAMの4bit/シンボルに相当する情報量が伝送できる。
次に図63のブロック図で示す受信機751では地上のアンテナ32aで受けた信号は入力部752を経て、チャンネル選択により可変する可変発振器754からの信号と、混合器753において混合され、低い中間周波数に変換される。次に検波器755において検波され、LPF756によりベースバンド信号となり識別再生器757により第1データ列D1と第2データ列D2が再生され第1データ列出力部758と第2データ列出力部759から出力される。
次にこの送信機と受信機を用いてTV信号を送る場合を説明する。図64は映像信号送信機774のブロック図である。HDTV信号等の高解像度TV信号は第1画像エンコーダー401の入力部403に入力し、サブバンドフィルター等の映像の分離回路404により、HLVL,HLVH,HHVL,HHHH等の高域TV信号と低域TV信号に分離される。この内容は実施例3で図30を用いて説明したので詳しい説明は省略する。分離されたTV信号は圧縮部405において、MPEG等で用いられているDPCMDCT可変長符号化や等の手法を用いて符号化される。動き補償は入力部403において処理される。圧縮された4つの画像データは合成器771によって第1データ列D1と第2データ列D2の2つのデータ列となる。この場合HLVL信号つまり低域の画像信号は第1データ列に含まれる。送信機の741の第1データ列入力部743と第2データ列入力部744に入力され振巾変調を受け、VSB等のASK信号となり、地上アンテナから放送される。
このデジタルTV放送のTV受信機全体のブロック図が図65である。地上アンテナ32aで受信した放送信号はTV受信機781の中の受信機751の入力部752に入力され、検波復調部760により受信者が希望する任意のチャンネルの信号が選局され復調され、第1データ列D1と第2データ列D2が再生され第1データ列出力部758と第2データ列出力部759から出力される。詳しい説明は重なるため省く。D1,D2信号は分離部776に入力される。D1信号は分離器777により分離されHLVL圧縮成分は第1入力部521に入力される。他方は合成器778によりD2信号と合成され第2入力部531に入力される。第2画像デコーダにおいて第1入力部521に入ったHLVL圧縮信号は、第1伸長部523によりHLVL信号に伸長され画像合成部548と画面比率変更回路779に送られる。元のTV信号がHDTV信号の場合、HLVL信号はワイドのNTSC信号になり、元の信号がNTSC信号の場合、MPEG1のようなNTSCより品位が低い低解像度TV信号になる。
この説明では元の映像信号をHDTV信号と設定しているため、HLVL信号はワイドNTSCのTV信号となる。TVの画面アスペクト比が16:9であれば16:9の画面比率のまま出力部780を介して映像出力426として出力する。もし、TVの画面アスペクト比が4:3であれば、画面比率変更回路779により16:9から4:3の画面アスペクト比のレターボックス形式かサイドパネル形式に変更して出力部780を介して映像出力425として出力する。
一方、第2データ列出力部759からの第2データ列D2は、分離部776の合成器778において分離器777の信号と合成され、第2画像デコーダの第2入力部531に入力され、分離回路531によりHLVH、HHVL、HHVHの圧縮信号に分離されて各々第2伸張部535、第3伸長部536、第4伸長部に送られ、伸長されて元のHLVH、HHVL、HHVH信号となる。これらの信号にHLVL信号を加え、画像合成部548に入力され、合成されて1つのHDTV信号となり出力部546より出力され、出力部780を介してHDTVの映像信号427として出力される。
この出力部780は第2データ列出力部759の第2データ列の誤まり率を誤まり率検知部782で検知しエラーレートが高い場合は自動的にHLVL信号の低解像度の映像信号を出力させる。
以上のようにして、階層型放送の送信、受信が可能となる。伝送条件が良い場合、例えばTV送信アンテナが近い放送に対しては、第1データ列と第2データ列の両方が再生できるので、HDTVの品位で番組を受信できる。また送信アンテナとの距離が遠い放送に対しては、第1データ列を再生し、このVLHL信号から低解像度のTV信号を出力する。このことにより、HDTVの品位もしくはNTSCTVの品位で同一番組をより広い地域で受信できるという効果がある。
また図66のTV受信機のブロック図のように第1データ列出力部768だけに受信機751の機能を縮小すると受信機は第2データ列およびHDTV信号を扱わなくてもよくなるため、構成が大巾には簡略化できる。画像デコーダーは(図31)で説明した第1画像デコーダ421を用いればよい。この場合NTSCTVの品位の画像が得られる。HDTVの品位では番組を受信できないが受信機のコストは大巾に安くなる。従って広く普及する可能性がある。このシステムでは従来のTVディスプレイをもつ多くの受信システムを変更しないでアダプターとして追加することにより、デジタルTV放送が受信できるという効果がある。
図67のような構成にするとPSK信号を復調する衛星放送受信機とASK信号を復調する地上放送受信機の機能をもつ受信機を簡単に構成できる。この場合、衛星アンテナ32から受信したPSK信号は発振器787からの信号と混合器786において混合され、低い周波数に変換されTV受信機781の入力部34に入力され、図63で説明した混合器753に入力される。衛星TV放送の特定のチャンネルの低い周波数に変換されたPSK、もしくはQAM信号は復調部35によりデータ列D1、D2が復調され、分離部788を介して第2画像エンコーダ422により、画像信号として再生され、出力部780より出力される。一方、地上用のアンテナ32aにより受信されたデジタル地上放送とアナログ放送は、入力部752に入力され図63で説明したのと同じプロセスで混合器753により特定のチャンネルが選択され、検波され、低域のみのベースバンド信号となる。アナログ衛星TV放送に混合器753に入り復調される。デジタル放送の場合は、識別再生器757によりデータ列D1とD2が再生され第2画像デコーダ422により映像信号が再生され、出力される。また地上と衛星のアナログTV放送を受信する場合は映像復調部788によりAM復調されたアナログTV信号が出力部780より出力される。図67の構成をとると混合器753が衛星放送と地上放送で共用できる。また第2画像デコーダ422も共用できる。又、デジタル地上放送でASK信号を用いた場合、AM復調のため従来のアナログ放送と同様の検波器755とLPF756等の受信回路を兼用できる。以上のように図67の構成にすると大巾に受信回路を共用化し、回路を削減するという効果がある。
また、実施例では4値のASK信号を2つのグループに分け、D1、D2の2層の各1bitの階層型伝送を行った。しかし、図68のように8値のASK信号を用いるとD1、D2、D3の3層の各1bitの階層型伝送を行うことができる。図68ではD3信号の信号点は信号点721aと721b、722aと722b、723aと723b、724aと724bの2値つまり1bitである。次にD2の信号点は信号点群721と722、信号点群723と724の2値の1bitである。D3のデータは大信号点群725と726の2値の1bitとなる。この場合、図57の4つの信号点721、722、723、724を各2ヶの信号点721aと721b、722aと722b、723aと723b、724aと724bに分離し、各グループの間の距離を離すことにより3層の階層型伝送が可能となる。
この3層の階層型伝送システムを用いて3層の映像伝送を行うことは実施例3と3で説明したもので動作の詳しい説明は省略する。
さて実施例3では図30のような画像エンコーダ401を説明したが、図30のブロック図は、図69のように書き換えることができる。内容は全く同じであるため説明は省略する。このように、画像エンコーダ401はサブバンドフィルタ等の映像の分離回路404、404aを2つもつ。これらを分離部794とすると、図70の分離部のブロック図に示す。ように1つの分離回路に信号を時分割で2回通すことにより回路を削減できる。これを説明すると、第1サイクルでは入力部403からのHDTVやスーパーHDTVの映像信号は時間軸圧縮回路795により、時間軸を圧縮されて分離回路404により、HHVH−H、HHVL−H、HLVH−H、HLVL+1の4つの成分に分けられる。この場合、スイッチ765、765a、765b、765cは1の位置にあり、圧縮部405に、HHVH−H、HHVL−H、HLVH−Hの3つの信号を出力する。しかし、HLVL−Hの信号はスイッチ765cの出力1から時間軸調整回路795の入力2へ入力し、第2サイクルつまり時分割処理の空き時間に分離回路404に送られ分離処理されHHVH、HHVL、HLVH、HLVLの4つの成分に分けられ出力される。第2サイクルではスイッチ765、765a、765b、765cは出力2の位置に変わるため、4つの成分は圧縮部405へ送られる。このようにして図70の構成をとり時分割処理することにより分離回路が削減できるという効果がある。
次にこのような3層の階層型の画像伝送を行うと受信機側には実施例3の図33のブロック図で説明したような、画像デコーダが必要となる。これを、書き換えると図71のようなブロック図となる。処理能力は違うものの同じ構成の合成器566が2つ存在することになる。
これは図72のような構成をとると図70の分離回路の場合と同様にして1つの合成器で実現できる。図72を説明すると、5つのスイッチ、765a,765b,765c,765dにより、まず、タイミング1において、スイッチ765、765a,765b,765cの入力が1に切り替わる。すると、第1伸長部522、第2伸長部522a,第3伸長部522b,第4伸長部522cから各々HLVL,HLVH,HHVL,HHVHの信号が、スイッチを介して合成器556の対応する入力部に入力され、合成処理されて1つの映像信号となる。この映像信号はスイッチ765dに送られ出力1より出力し再びスイッチ765cの入力2に送られる。この映像信号はもともと、高解像度映像信号を分割したHLVL−H成分の信号である。次のタイミング2において、スイッチ765、765a,765b,765cは入力2に切替わる。こうして、今度はHHVH−H,HHVL−H,HLVH−HそしてHLVL−H信号が合成器556に送られ、合成処理されて1つの映像信号が得られる。この映像信号はスイッチ765dの出力2より出力部554から出力される。
このようにして、3層の階層型放送を受信する場合時分割処理により2ケの合成器を1ケに削減するという効果がある。
さて、この方式は、まずタイミング1においてHHVH,HHVL,HLVH,HLVL信号を入力させ、HLVL−H信号を合成させる。その後、タイミング1と別の期間タイミング2において、HHVH−H,HHVL−H,HLVH−Hと上記のHLVL−H信号を入力させ、最終の映像信号を得るという手順をとっている。従って、2つのグループの信号のタイミングをずらす必要がある。
もし、もともと、入力した信号の上記成分のタイミングの順序が違っていたり重複している場合は時間的に分離するためスイッチ765、765a,765b,765cにメモリを設け蓄積し、時間軸を調整することが必要となる。しかし送信機の送信信号を図73のようにタイミング1とタイミング2に時間的に分離して送信することにより、受信機側に時間軸調整回路が不要となる。従って、受信機の構成が簡単になるという効果がある。
図73の時間配置図のD1は送信信号の第1データ列D1を示し、タイミング1の期間中にDチャンネルでHLVL,HLVH,HHVL,HHVH信号を送り、タイミング2の期間にD2チャンネルでHLVH−H,HHVL−H,HHVH−Hを送る場合の信号の時間配置を示している。このようにして時間的に分離して送信信号を送ることにより、受信機のエコンコーダの回路構成を削除するという効果がある。
次に受信機の伸長部の数が多い。これらの数を削減する方法について述べる。図74(b)は送信信号のデータ810、810a,810b,810cの時間配置図を示す。この図において、データの間に別データ811,810a,811b,811cを送信する。すると、目的とする送信データは間欠的に送られてくることになる。すると、図74(a)のブロック図に示す第2画像エンコーダ422はデータ列D1を第1入力部521とスイッチ812を介して次々と伸長部503に入力する。例えば、データ810の入力完了後は別データ811の時間中に伸長処理を行い、データ810の処理修了後、次のデータ810aが入力することになる。こうすることにより、合成器の場合と同様の手法で時分割で1つの伸長部503を共用することができる。こうして、伸長部の総数を減らすことができる。
図75はHDTVを送信する場合の時間配置図である。例えば放送番組の第1チャンネルのNTSC成分に相当するHLVL信号をHLVL(1)とすると、これをD1信号の太線で示すデータ821の位置に時間配置する。第1チャンネルのHDTV付加成分に相当するHLVH,HHVL,HHVH信号はD2信号のデータ821a,821b,821cの位置に配置する。すると第1チャンネルの全てのデータの間には別のTV番組の情報である別データ822,822a,822b,822cが存在するため、この期間中に伸長部の伸長処理が可能となる。こうして1つの伸長部で全ての成分を処理できる。この方式は伸長器の処理が速い場合に適用できる。
また、図76のようにD1信号に、データ821,821a,821b,821cを配置しても同様の効果が得られる。通常の4PSKや4ASKのように階層がない伝送を用いて送受信する場合に有効である。
図77は、例えばNTSCとHDTVと高解像度HDTVもしくは、低解像度NTSCとNTSCとHDTVのような3層の映像を物理的に2層の階層伝送方式を用いて階層放送を行う場合の時間配置図を示す。例えば、低解像度NTSCとNTSCとHDTVの3層の映像を放送する場合D1信号には低解像NTSC信号に相当するHLVL信号がデータ821に配置されている。又、NTSCの分離信号であるHLVH,HHVL,HHVHの各成分の信号はデータ821a,821b,821cの位置に配置されている。HDTVの分離信号であるHLVH−H,HHVL−H,HHVH−H信号はデータ823,823a,823bに配置されている。
ここでは、実施例2で説明したエラー訂正能力の差別化による論理的な階層伝送を追加している。具体的にはHLDLはD1信号の中のD1-1チャンネルを用いている。D1-1チャンネルは実施例2で述べたようにD1-2チャンネルより大巾に訂正能力の高い誤り訂正方式を採用している。D1-1チャンネルはD1-2チャンネルに比べて冗長度は高いが再生後のエラーレートは低いため、他のデータ821a,821b,821cよりC/N値の低い条件においても再生できる。このためアンテナから遠い地域や自動車の車内等の受信条件の悪い場合においても低解像度のNTSCTVの品位で番組を再生することができる。実施例2で述べたようにエラーレートの観点でみた場合、D1信号の中のD1-1チャンネルにあるデータ821はD1-2チャンネルにある他のデータ821a,821b,821cより受信妨害に強く、差別化されており論理的な階層が異なる。実施例2で述べたようにD1,D2の階層は物理的階層といえ、このエラー訂正符号間距離の差別化による階層構造は論理的な階層構造といえる。
さて、D2信号の復調には物理的にD1信号より高いC/N値を必要とする。従って、遠隔地等のC/N値の一番低い受信条件では,HLVL信号つまり、低解像度NTSC信号が再生される。そして、C/N値が次に低い受信条件では加えてHLVH,HHVL,HHVHが再生され、NTSC信号が再生できる。さらにC/N値の高い受信条件ではHLVLに加えてHLVH−H,HHVL−H,HHVH−Hも再生されるためHDTV信号が再生される。こうして3つの階層の放送ができる。この方式を用いることにより図53で説明した受信可能領域は図90の受信妨害領域図に示すように2層から3層に拡大し、より番組受信可能領域が拡がる。
ここで図78は図77の時間配置の場合の第3画像デコーダのブロック図を示す。基本的には図72のブロック図からD3信号の第3入力部551を省いた構成に図74(a)のブロック図の構成を加えた構成になっている。
動作を説明するとタイミング1において入力部521よりD1信号が、入力部530よりD2信号が入力される。HLVH等の各成分は時間的に分離されているためこれらはスイッチ812により伸長部503に順次、独立して送られる。この順序を図77の時間配置図を用いて説明する。まず、第1チャンネルのHLVLの圧縮信号が伸長部503に入り、伸長処理される。次に第1チャンネルのHLVH,HHVL,HHVHが伸長処理され、スイッチ812aを介して、合成器556の所定の入力部に入力され、合成処理され、まずHLVL−H信号が合成される。この信号はスイッチ765aの出力1からスイッチ765の入力2に入力され、合成器556のHLVL入力部に入力される。
次にタイミング2において、図77の時間配置図に示すようにD2信号のHLVH−H,HHVL−H,HHVH−H信号が入力され伸長部503により伸長され、スイッチ812aを介して各信号が合成器556の所定の入力に入力され、合成処理されHDTV信号が出力される。このHDTV信号はスイッチ765aの出力2より出力部521を介してHDTV信号が出力される。上述のように図77の時間配置により送信することにより受信機の伸長部と合成器の数を大巾に削減するという効果がある。なお、図77は時間配置図ではD1,D2信号の2つの段階を用いたが、前述のD3信号を用いると、高解像度HDTVを加え4つの階層のTV放送ができる。
図79はD1,D2,D3の3層の物理階層を用いた3つの階層の映像を放送する階層型放送の時間配置図である。図から明かなように同一TVチャンネルの各成分は時間的に重複しないように配置してある。又、図80は図78のブロック図で説明した受信機に第3入力部521aを加えた受信機である。図79の時間配置により放送することにより、図80のブロック図で示すような簡単な構成で受信機が構成できるという効果がある。
動作は、図77の時間配置図、図78のブロック図とほぼ同じである。このため説明は省略する。又、図81の時間配置図のようにD1信号に全ての信号を時間多重することもできる。この場合、データ821と別データ822の2つのデータはデータ821a,812b,821cに比べてエラー訂正能力を高めてある。このため、他のデータに比べて階層が高くなっている。前述のように物理的には一層であるが論理的には2層の階層伝送となっている。又、番組チャンネル1のデータの間に別の番組チャンネル2の別データが括入されている。このため、受信機側でシリアル処理が可能となり、図79の時間配置図と同じ効果が得られる。
図81の時間配置図の場合、論理的な階層となっているが、データ821,別データ822の伝送ビットレートを1/2や1/3に落とすことにより、このデータの伝送時のエラーレートが下がるため、物理的な階層伝送をすることもできる。この場合、物理階層は3層となる。
図82は、図81の時間配置図のような、データ列D1信号のみを伝送する場合の画像デコーダ423のブロック図で、図80のブロック図に示す画像デコーダに比べて、より簡単な構成となる。動作は図80で説明した画像デコーダと同じため説明を省略する。
以上のように、図81の時間配置図のような送信信号を送信すると図82のブロック図のように伸長部503合成器556の数を大巾に削減できるという効果がある。又、4つの成分が時間的に分離されて入力されるため、合成器556つまり図32の画像合成部548の内部の回路ブロックを入力する画像成分に応じて接続変更により、いくつかのブロックを時分割で共用し回路を省略することもできる。
以上のようにして簡単な構成で受信機が構成できるという効果がある。
なお、実施例5では、ASK変調を用いて動作を説明したが、実施例5で説明した多くの手法は実施例1,2,3で説明したPSKやQAM変調にも使える。
又、これまでの実施例はFSK変調にも使える。
例えば、図83のようにf1,f2,f3,f4の多値のFSK変調を行う場合、実施例5の図58の信号点配置図のようにグループ化を行い、各グループの信号点位置を離すことにより、階層型伝送ができる。
図83において周波数f1,f2の周波数群841をD1=0と定義し、周波数f3,f4の周波数群842をD1=1と定義する。そして、f1,f3をD2=0,f2,f4をD2=1と定義すると、図に示すように、D1,D2の各1bit、計2bitの階層型伝送が可能となる。例えば、C/Nの高い場合はt=t3において、D1=0,D2=1が再生でき、t=t4においてD1=1,D2=0が再生できる。次にC/Nが低い場合はt=t3においてD1=0のみが,t=t4においてD=1のみが再生できる。こうしてFSKの階層型伝送ができる。実施例3,4,5で説明した映像信号の階層型の放送にこのFSKの階層型伝送方式を用いることもできる。
又、図84のような、ブロック図に示す磁気記録再生装置に本発明の実施例5を用いることもできる。実施例5はASKのため磁気記録再生ができる。
図84を説明すると、磁気記録再生装置851は、入力した映像信号を画像エンコーダ401により分離および圧縮し、入力部742の中の第1データ列入力部743にHLVL成分等の低域映像信号を、第2データ列入力部744にHHVH成分等を含む高域映像信号を入力し、変復調器852の中の変調部749に入力する。これまでの動作は実施例5の図64の送信機とほぼ同じである。変調信号は記録再生回路853と磁気ヘッド854により磁気テープ855に記録される。この記録の手法は従来のデジタルの多値記録を変形して物理的な階層記録もできるし、実施例1、3のような位相変調や位相振巾変調による階層記録もできる。磁気テープ上の多トラックによる階層記録もできる。データ送信レートの変更による階層記録もできる。又、エラー訂正能力を変えて、データを差別化することによる論理的な階層記録もできる。
次に、再生する時は磁気テープ855を磁気ヘッド854と磁気再生回路853により再生信号を変復調器852に送る。以下は実施例1,3,4とほぼ同様な動作をする。復調部760により第1データ列D1と第2データ列D2を再生し、画像デコーダー422により映像信号を出力する。この場合、階層記録を行っているためC/Nが高いときはHDTV等の信号高解像度TV信号を再生できる。一方C/Nが低い場合もしくは機能の低い磁気再生装置で再生した場合、NTSC、TV信号もしくは低解像度NTSCTV信号が出力される。
以上のように本発明を用いた磁気再生装置においては、C/Nが低くなったり、エラーレートが高く場合においても同一内容の映像を低い解像度、もしくは低い画質で再生できるという効果が得られる。
(実施例6)
実施例6は本発明を4階層の映像階層伝送に用いたものである。実施例2で説明した4階層の伝送方式と4階層の映像データ構造を組み合わせることにより図91の受信妨害領域図に示すように4層の受信領域ができる。図に示すように最内側に第1受信領域890a、その外側に第2受信領域890b、第3受信領域890c、第4受信領域890dができる。この4階層を実現する方式について述べる。
4階層を実現するには変調による4層の物理階層やエラー訂正能力の差別化による4層の論理階層があるが、前者は階層間のC/N差が大きいため4層では大きなC/Nが必要となる。後者は、復調可能なことが前提であるため、階層間のC/N差を大きくとれない。現実的であるのは、2層の物理階層と2層の論理階層を用いて、4層の階層伝送を行うことである。では、まず映像信号を4層に分離する方法を述べる。
図93は分離回路3のブロック図である分離回路3は映像分離回路895と4つの圧縮回路から構成される。分離回路404a、404b、404cの内部の基本的な構成は、図30の第1画像エンコーダ401の中の分離回路404のブロック図と同じなので説明は省略する。分離回路404a等は映像信号を低域成分HLVLと高域成分HHVHと中間成分HHVL、HLVHの4つの信号に分離する。
この場合、HLVLは解像度が元の映像信号の半分になる。
さて入力した映像信号は映像分離回路404aにより高域成分と低域成分に2分割される。水平と垂直方向に分割されるため4つの成分が出力される。高域と低域の分割点はこの実施例では中間点にある。従って、入力信号が垂直1000本のHDTV信号の場合HLVL信号は垂直500本の、水平解像度も半分のTV信号となる。
低域成分のHLVL信号は分離回路404cにより、さらに水平、垂直方向の周波数成分が各々2分割される。従ってHLVL出力は例えば垂直250本、水平解像度は1/4となる。これをLL信号と定義するとLL成分は圧縮部405aにより圧縮され、D1-1信号として出力される。
一方、HLVLの高域成分の3成分は合成器772cにより1つのLH信号に合成され、圧縮部405bにより圧縮されD1-2信号として出力される。この場合、分離回路404cと合成器772cの間に圧縮部を3つ設けてもよい。
高域成分のHHVH、HLVH、HHVLの3成分は合成器772aにより一つのHHVH−H信号となる。圧縮信号が垂直水平とも1000本の場合、この信号は水平、垂直方向に500本〜1000本の成分をもつ。そして分離回路404bにより4つの成分に分離される。
従ってHLVL出力として水平、垂直方向の500本〜750本の成分が分離される。これをHH信号とよぶ。そしてHHVH、HLVH、HHVLの3成分は750本〜1000本の成分をもち、合成器772bで合成され、HH信号となり圧縮部405dで圧縮され、D2-2信号として出力される。一方HL信号はD2-1信号として出力される。従ってLL、つまりD1-1信号は例えば0本〜250本以下の成分、LHつまりD1-2信号は250本以上500本以下の周波数成分HLつまりD2-1信号は500本以上750本以下の成分、HHつまりD2-2信号は750本以上1000本以下の周波数成分をもつ。この分離回路3により階層型のデータ構造ができるという効果がある。この図93の分離回路3を用いて実施例2で説明した図87の送信機1の中の分離回路3の部分を置きかえることにより、4層の階層型伝送ができる。
こうして階層型データ構造と階層型伝送を組み合わせることにより、C/Nの劣下に伴い段階的に画質が劣下する画像伝送が実現できる。これは放送においてはサービスエリアの拡大という大きな効果がある。次にこの信号を復調再生する受信機は実施例2で説明した図88の第2受信機と同じ構成と動作である。従って全体の動作は省略する。ただ映像信号を扱うため合成部37の構成がデータ送信と異なる。ここでは合成部37を詳しく説明する。
実施例2において図88の受信機のブロック図を用いて説明したように、受信した信号は復調され、エラー訂正され、D1-1、D1-2、D2-1、D2-2の4つの信号となり、合成部37に入力される。
ここで図94は合成部33のブロック図である。入力されたD1-1、D1-2、D2-1、D2-2信号は伸長部523a、523b、523c、523dにおいて伸長され、図93の分離回路において説明したLL、LH、HL、HH信号となる。
この信号は、元の映像信号の水平、垂直方向の帯域を1とするとLLは1/4、LL+LHは1/2、LL+LH+HLは3/4、LL+LH+HL+HHは1の帯域となる。LH信号は分離器531aにより分離され画像合成部548aにおいてLL信号と合成されて画像合成部548cのHLVL端子に入力される。画像合成部531aの例の説明に関しては図32の画像デコーダ527で説明したので省略する。一方、HH信号は分離器531bにより分離され、画像合成部548bに入力される。HL信号は画像合成部548bにおいてHH信号と合成され、HHVH−H信号となり分離器531cにより分離され、画像合成部548cにおいてLHとLLの合成信号と合成され、映像信号となり合成部33から出力される。そして図88の第2受信機の出力部36でTV信号となり出力される。この場合、原信号が垂直1050本、約1000本のHDTV信号ならば図91の受信妨害図に示した4つの受信条件により4つの画質のTV信号が受信される。
TV信号の画質を詳しく説明する。図91と図86を一つにまとめたのが図92の伝送階層構造図である。このようにC/Nの向上とともに受信領域862d、862c、862b、862aにおいてD1-1、D1-2、D2-1、D2-2と次々と再生できる階層チャンネルが追加されデータ量が増える。
映像信号の階層伝送の場合図95伝送階層構造図のようにC/Nの向上とともにLL、LH、HL、HH信号の階層チャンネルが再生されるようになる。従って送信アンテナからの距離が近づくにつれ、画質が向上する。L=Ldの時LL信号、L=Lcの時LL+LH信号、L=Lbの時LL+LH+HL信号、L=Laの時LL+LH+HL+HH信号が再生される。従って、原信号の帯域を1とすると1/4、1/2、3/4、1の帯域の画質が各々の受信地域で得られる。原信号が垂直走査線1000本のHDTVの場合、250本、500本、750本、1000本のTV信号が得られる。このようにして段階的に画質が劣化する階層型映像伝送が可能となる。図96は従来のデジタルHDTV放送の場合の受信妨害図である。図から明らかなように従来方式ではCNがVO以下でTV信号の再生は全く不可能となる。従ってサービスエリア距離Rの内側においても他局との競合地域、ビルかげ等では×印で示すように受信できない。図97は本発明を用いたHDTVの階層放送の受信状態図を示す。図97に示すように、距離LaでC/N=a、LbでC/N=b、LcでC/N=c、LdでC/N=dとなり各々の受信地域で250本、500本、750本、1000本の画質が得られる。距離La以内でもC/Nが劣下し、HDTVの画質そのものでは再生できない地域が存在する。しかし、その場合でも画質が落ちるものの再生はできる。例えばビルかげのB地点では750本、電車内のD地点では250本、ゴーストを受けるF地点では750本、自動車内のG地点では250本、他局との競合地域であるL地点でも250本の画質で再生できる。以上のようにして本発明の階層伝送を用いることにより従来提案されている方式では受信再生できなかった地域でも受信できるようになり、TV局のサービスエリアが大巾に拡大するという著しい効果がある。また、図98の階層伝送図に示すようにD1-1チャンネルでその地域のアナログ放送と同じ番組の番組Dを放送し、D1-2、D2-1、D2-2チャンネルで他の番組C、B、Aを放送することにより、番組Dのサイマルキャストを全地域で確実に放送し、サイマルキャストの役割を果たしながら他の3つの番組をサービスするという多番組化の効果も得られる。
本発明の階層型伝送方式の一つの特徴は周波数利用効率を向上させるものであるが一部の受信機にとっては電力利用効率がかなり低下する。従って全ての伝送システムに適用できるものではない。例えば特定受信者間の衛星通信システムならその時期に得られる最高の周波数利用効率と最高の電力利用効率の機器にとりかえるのが最も経済性が高い方法である。このような場合必ずしも本発明を使う必要はない。
しかし、衛星放送方式や地上放送方式の場合は本発明のような階層型伝送方式が必要である。なぜなら衛星放送の規格の場合50年以上の永続性が求められる。この期間、放送規格は変更されないが技術革新に伴い衛星の送信電力は飛躍的に向上する。放送局は数十年後の将来において現時点においても製造された受信機がTV番組を受信視聴できるように互換性のある放送を行わなければならない。本発明を用いると既存のNTSC放送とHDTV放送との互換性と将来の情報伝送量の拡張性という効果が得られる。
本発明は電力効率よりも周波数効率を重視したものであるが、受信機側に各伝送段階に応じて設計受信感度を設けた各々、何種類かの受信機を設定することにより送信機の電力をさほど増やす必要はなくなる。このため現在の電力の小さい衛星でも充分送信可能である。また将来、送信電力が増大した場合でも同一の規格で伝送できるため将来の拡張性と、新旧の受信機との間の互換性が得られる。以上述べたように本発明は衛星放送規格に用いた場合、顕著な効果がえられる。
また本発明の階層型伝送方式を地上放送に用いた場合、電力利用効率を全く考慮する必要がないため衛星放送より本発明は実施しやすい。前述のように従来のデジタルHDTV放送方式では存在したサービスエリア内の受信不能地域を大巾に減少させるという顕著な効果と前述のNTSCとHDTV受信機もしくは受像機の両立性の効果がある。またTV番組のスポンサーからみた場合のサービスエリアが実質的に拡大するという効果もある。なお、実施例ではQPSKと16QAMと32QAMの変調方式を用いた例を用いて説明したが、64QAMや128QAMや256QAM等に適用できることはいうまでもない。また、図を用いて説明したように多値のPSKやASKやFSKに適用できることもいうまでもない。本発明とTDMを組み合わせて伝送する実施例を説明したが、FDM,CDMAや拡散通信方式を組み合わせて伝送することもできる。
以上のように本発明は、信号入力部と、位相の異なる複数の搬送波を上記入力部からの入力信号により変調し信号ベクトル図上になるm値の信号点を発生させる変調部と、変調信号を送信する送信部からなりデータ伝送を行う伝送装置においてn値の第1データ列と第2データ列を入力し、上記信号をn個の信号点群に分割し、該信号点群の各々第1データ列のデータに割りあて上記信号点群の中の各信号点に第2データ群の各データを割りあて、送信する送信機により信号を送信し、該送信信号の入力部と、信号スペースダイヤグラム上でp値の信号点のQAM変調波を復調する復調器と出力部を有する受信装置において上記信号点をn値の信号点群に分割し、各信号点群n値の第1データ列を対応させて復調し、信号点群の中の略々p/n値の信号点にp/n値の第2データ列のデータを復調再生し、受信装置を用いてデータを伝送することにより、例えば送信機1の変調器4により、n値の第1データ列と第2データ列と第3データ列を信号点群にデータを割りあてて変形m値のQAM変調信号を送信し、第1受信機23では、復調器25によりn値の第1データ列を、第2受信機33では第1データ列と第2データ列を、第3受信機43では第1データ列、第2データ列、第3データ列を復調することにより、効果として最大m値のデータを変調した多値変調波をn<mなるn値の復調能力しかない受信機でもn値のデータを復調可能とした両立性と発展性のある伝送装置が得られる。さらに、QAM方式の信号点のうち最も原点に近い信号点とI軸もしくはQ軸との距離をfとした場合、この距離がn>1なるnfとなるように上記信号点をシフトさせることにより、階層型の伝送が可能となる。
この伝送系にNTSC信号を第1データ列、HDTVとNTSCとの差信号を第2データ列として送信することにより、衛星放送においてはNTSC放送とHDTV放送との両立性があり、情報量の拡張性の高いデジタル放送が可能となり、地上放送においてはサービスエリアの拡大と受信不能地域の解消という顕著な効果がある。