JP3977779B2 - 超音波診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波診断装置、特に、ボリュームレンダリング演算を用いて3次元の生体組織画像と血流画像とを同時に表示する場合、その前後の位置関係を明確に表現することのできる超音波診断装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、超音波3次元画像を形成する装置が提案されている。その3次元画像の形成原理は、生体内に設定される3次元空間に対して、複数のレイ(実際には超音波ビームに一致)が設定され、各レイごとに、エコーデータが順番に参照され、各エコーデータごとにボリュームレンダリング法に基づくレンダリング演算(ボクセル演算)が逐次的に実行される。そして、所定の終了条件を満たした時点で、そのレンダリング演算は終了し、その時点での演算値が当該レイに対応する画素値として決定される。各レイごとに画素値を決定すれば、その集合として3次元空間を投影した3次元画像を構築できる。
【0003】
レンダリング演算の好適な例では、i番目のエコーデータのエコー値(ボクセル値)をeiとし、その際のオパシティ(不透明度)をαi(但し、0≦αi≦1.0)とし、COUTiをi番目のエコー値についての演算結果(出力光量に相当)とし、CINiをi番目のエコー値についての入力値(これはi−1番目の演算結果と同じで、入力光量)とした場合、以下の式で示すことができる。
【0004】
OUTi=CINi(1−αi)+eiαi
ここで、(1−αi)は透明度と称され、それはオパシティ(不透明度)から演算される。
【0005】
レイ上に沿って逐次的に上記演算を行っていく場合において、それと並行して各オパシティを積算し、その値が1以上になった場合には、当該レイについての演算は終了する。また、最終のエコーデータについての演算が終了した場合にも当該レイについての演算は終了する。その終了時点の出力光量が画素値に相当する(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このような超音波3次元画像は、超音波の振幅情報から被検体(生体組織)の主に表面を強調したものであり、例えば羊水中の胎児等の形状や臓器を3次元表示することが可能となる。
【0007】
一方、血液が流れる血管部位は血液が充満しているためその部位からのエコー振幅は極めて小さい。そのため同様な手法による3次元表示は不可能であるが、血液が流れることにより起こる超音波ドプラ効果を応用し、ドプラ効果の生じている部位をエコー信号の位相情報から抽出し、その部位を3次元表現することにより3次元の血管画像とすることが提案されている。
【0008】
前述したように、エコー信号の振幅情報を用いた方法は、胎児や臓器等の生体組織の3次元表示が可能であるが、血管の表示はできない。逆にドプラ効果(血流情報)を用いた方法では、血管のみの表示はできるが、ドプラ効果を生じない生体組織(動かない、または極低速で動いている)の3次元表示は行うことができない。
【0009】
そこで、各情報、すなわち振幅情報を示すボクセルデータと血流情報を示すボクセルデータに対しそれぞれボリュームレンダリング演算を施し3次元表示データを算出し、3次元画像表示の直前で両者の合成を行うことにより、同一画面上に、生体組織と血管とが表示された3次元画像を形成することが考えられた。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−33538号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
エコーデータの振幅情報を用いてボリュームレンダリングを行うことにより、生体組織間の位置関係(例えば、臓器の前後関係や奥行き感)の表現は可能である。同様に、血流情報を用いた血管の3次元画像でも血管の奥行き感は表現することができる。しかし、上述したように、3次元画像表示の直前で両者の合成を行うことにより、同一画面上に、生体組織と血管とを表示する単純なデータの重ね合わせを行う場合、生体組織と血管像の間における前後関係の情報が一切得られないため、生体組織と血管像の3次元的な位置関係が全く分からなくなってしまうという問題がある。特に、超音波検査で実臓器と血管の三次元的な位置関係や内臓内にできた腫瘍組織とそれを養う栄養血管との相対的な位置関係の観察は、治療方針を決定する上で極めて重要な情報となり得るため、同一画面上で両者の位置関係を容易に明確に表示したいという要望が強い。
【0012】
本発明は、上記のような要望を満たすためになされたものであり、3次元の生体組織画像と血流画像とを同時に表示する場合、その前後の位置関係を明確に表現することのできる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明は、超音波を被検体に対し送受信して得た3次元エコーデータに対し、各エコーデータごとにオパシティを利用したボリュームレンダリング演算を行って3次元画像を形成する超音波診断装置において、取得したエコーデータから得られる振幅情報を示すボクセルデータ及び血流情報を示すボクセルデータを記憶する記憶部と、取得した振幅情報を示すボクセルデータと、血流情報を示すボクセルデータとを合成するデータ合成部と、前記憶部から読み出された振幅情報を示すボクセルデータに対しボリュームレンダリングを行う少なくとも一つの第1レンダリング部と、前記データ合成部で合成されたボクセルデータに対しボリュームレンダリングを行う第2レンダリング部と、前記第1レンダリング部及び第2レンダリング部の演算結果に基づいて3次元画像を表示する表示部と、を含み、前記第2レンダリング部は、その演算結果を3次元画像を表示するためのR入力部、G入力部、B入力部のいずれか1つまたは2つに入力し、第1レンダリング部は、その演算結果を残りの入力部に入力して3次元画像を形成することを特徴とする。
【0014】
例えば、振幅情報のみを反映する第1レンダリング部の演算結果をG入力部、B入力部に入力し、振幅情報及び血流情報を反映する第2レンダリング部の演算結果をR入力部に入力した場合、血管部分は赤く表示され、生体組織部分は白く表示される。また、両者の重なる部分はその混合色として表示される。
【0015】
この時、各レンダリング部で利用するオパシティを適宜変更することにより生体組織部分と血管部分の前後関係をより明確に表現することができる。例えば、オパシティを小さくすることにより、振幅情報に対し、血流情報を強調することが可能になり、血管の前方にある生体組織の影響度が低下し生体組織内部や生体組織後方の血管が前方から透けて見えるように表示される。逆にオパシティを大きくすることにより血管の前方にある生体組織の影響度が大きくなり組織内部や組織後方の血管が前方から見えなくなる。例えば、生体組織の深い位置に血管が存在する場合、オパシティを少し変化させただけですぐに血管が見えなくなる。逆に血管が浅い位置に存在する場合には、オパシティを多く変化させても血管の見え方の変化は小さい。つまり、オパシティの設定に応じて血管部分の表示状態が変化するので、生体組織と血管との前後関係を容易に把握することができる。
【0016】
なお、上述の処理を行う場合、血流情報の取得は、異なるタイミングで得られるエコー信号の位相差に基づいて行ったり、異なるタイミングで得られるエコー信号の振幅の差に基づいて、また、必要に応じて位相差及び振幅差の両方に基づいて行うことができる。また、血液の流れを示す情報であれば、この他、例えば、血液中に血流によって移動するバブルを存在させ、そのバブルから反射してくる二次高調波を取得し、その二次高調波成分を血液の流れと認識し、血流情報としてもよい。
【0017】
また、表示部とは、レンダリングの演算結果を直接入力することのできるR入力部、G入力部、B入力部を有するRGBカラーモニターであってもよいし、テレビジョン標準方式に基づき表示を行う表示器、つまり、R入力部、G入力部、B入力部に入力された各演算結果を、テレビジョン標準方式、例えば、NTSC方式やPAL方式、SECAM方式等に対応する所望の方式の信号にそれぞれ変換し、テレビジョン標準方式の表示器に表示するようにしてもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)を図面に基づき説明する。
【0019】
図1には、本実施形態の超音波診断装置の全体構成を説明する概念ブロック図が示されている。
【0020】
3次元プローブ10は3次元エコーデータ取込用超音波探触子である。3次元プローブ10は体表面上に当接して用いられたり、体腔内に挿入して用いられる。3次元プローブ10は、例えば1次元配列された複数の振動素子からなる1次元アレイ振動子を有している。この1次元アレイ振動子にて超音波ビームが形成され、その超音波ビームを電子走査することにより走査面が形成される。1次元アレイ振動子をその走査面と直交する方向に機械的に走査すれば、3次元エコーデータ取込空間(ボクセルデータ空間)を形成することができる。もちろん2次元アレイ振動子を用いて2次元的に超音波ビームを電子走査することにより、3次元データ取込空間を形成するようにしてもよい。
【0021】
送信部12は送信ビームフォーマーとして機能し、受信部14は受信ビームフォーマーとして機能する。すなわち、送信部12は複数の振動素子に対して所定の遅延関係をもって複数の送信駆動信号を供給する。一方、受信部14は3次元プローブ10から出力される複数の受信信号に対して整相加算処理を実行し、その整相加算後の受信信号を出力する。
【0022】
信号処理部18は受信信号に対して必要な信号処理を実行する回路である。本実施形態においては、生体組織(臓器等)の3次元画像を形成するために受信信号の振幅情報に関する処理を行うと共に、血管の3次元画像を形成するため血管血流からの血流情報(例えばドプラ情報)に関する処理を行う。具体的な信号処理としては、振幅情報の場合、例えばフィルタ処理、検波、対数圧縮などが含まれる。また、血流情報の場合、別のフィルタによる処理の後、直交検波やレンジゲート処理、ドプラフィルタ処理等が含まれる。なお、血流情報は振幅情報を取得した受信信号から取得してもよいし、独自に取得してもよい。
【0023】
3次元メモリ20(記憶部)は3次元エコーデータ取込空間内において取り込まれた複数のエコーデータ(ボクセルデータ)を格納する記憶容量を有し、各エコーデータは3次元空間内の座標に対応したアドレスに書き込まれる。本実施形態の場合、後述するが振幅情報用の3次元メモリと血流情報用の3次元メモリを含んでいる。
【0024】
レンダリング演算部22はボリュームレンダリング演算を実行するものであり、特にオパシティ決定関数を用いてエコー値に基づいて決定されるオパシティを用いてボリュームレンダリング演算を実行する。表示部26には、形成された3次元画像が表示される。なお、表示部としては、R入力部、G入力部、B入力部を有するRGBカラーモニターや、テレビジョン標準方式に基づき表示を行う表示器、つまり、R入力部、G入力部、B入力部に入力された各演算結果を、テレビジョン標準方式、例えば、NTSC方式やPAL方式、SECAM方式等に対応する所望の方式の信号にそれぞれ変換し、テレビジョン標準方式の表示器に表示するようにしてもよい。RGBカラーモニターを利用する場合、演算結果を特別な変換等を行うことなく直接R入力部、G入力部、B入力部に供給すればよいので、シンプルな構成で3次元画像の表示を行うことができる。一方、テレビジョン標準方式の表示器を用いる場合、演算結果を所望の表示方式に変換する必要があるが、画像情報として同軸ケーブルで送ったり、電波に載せて送ることが用であり、画像情報の取り扱いバリエーションを容易に向上させることができる。
【0025】
制御部16は装置内に含まれる各構成の動作制御を行っており、特にレンダリング演算部22におけるオパシティ決定関数の特性を切り替えている。そのオパシティ決定関数は関数の形式でそのまま保有してもよいし、あるいはメモリテーブルとしてレンダリング演算部22内に格納するようにしてもよい。
【0026】
制御部16には入力部24が接続されている。この入力部24は例えばキーボールやトラックボールなどによって構成される操作パネルである。この入力部24を用いてオパシティ決定関数の特性を適宜修正することができる。つまり、オパシティ変更手段として機能する。
【0027】
本実施形態の特徴的事項は、振幅情報のみでボリュームレンダリング演算を行った結果と、振幅情報と血流情報とを合成した後ボリュームレンダリング演算を行った結果とを用いて生体組織と血管とを同時に3次元表示するところである。なお、本実施形態において、血管の存在する部分には血液が流れ、ドプラ情報が取得可能であるとし、逆にドプラ情報が得られる部分は血管であると見なす。つまり、ドプラ情報を血管の存在を示す情報であると見なし、例えば、異なるタイミングで得られるエコー信号の位相差に基づいて算出されるドプラ情報を血流情報とする。
【0028】
図2(a)には、本実施形態の特徴を説明するために図1から3次元メモリ20、レンダリング演算部22、表示部26のみを抜き出し詳細化したものが示されている。なお、図2(a)及び後述する図2(b)においては、R,G,B入力部を有するRGBカラーモニターを表示部26として用いる例を説明する。
【0029】
図2(a)において、生体組織、例えば肝臓の3次元画像を白黒画像として表示するために、レンダリング演算部22は3次元メモリ20に含まれる振幅情報用3次元メモリ20aから3つのレンダリング演算部22a,22b,22c用に並列的に振幅情報を呼び出す。一方、血流情報(例えばドプラ情報)を格納する血流情報用3次元メモリ20bから血流情報を呼び出し、並列的に呼び出した振幅情報の一つに加算器28を介して加算する。
【0030】
例えば、レンダリング演算部22に含まれるレンダリング演算部22a,22b(第1レンダリング部として機能する)には、振幅情報を示すボクセルデータのみが入力され、周知のボリュームレンダリング演算が実行される。一方、レンダリング演算部22c(第2レンダリング部として機能する)には、振幅情報を示すボクセルデータと血流情報を示すボクセルデータとが合成された合成データが入力され、ボリュームレンダリング演算が実行される。
【0031】
そして、レンダリング演算部22aの演算結果である3次元画像を表示部26の例えばB入力部に提供し、レンダリング演算部22bの演算結果を表示部26のG入力部に提供し、レンダリング演算部22cの演算結果を表示部26のR入力部に提供する。その結果、R入力部に提供される演算結果が強調される。つまり、生体組織が存在する部分は、表示部26上で白色に表示され、血管が存在する部分は赤色に表示される。
【0032】
なお、図2(a)において、レンダリング演算部22a,22bの演算結果は、同じであるため、図2(b)に示すように、レンダリング演算部22aの演算結果をB入力部及びG入力部に並列に提供するようにすれば、図2(a)の構成に比べ、レンダリング演算部22bを排除し構成をシンプル化することができる。もちろん、表示部26に表示される結果は同じである。
【0033】
本実施形態の原理を図3以降の図を加え説明する。
【0034】
例えば図3に示すように、生体組織から得られるエコーデータ(ボリュームレンダリング演算のための視線に沿うデータ)が存在するとすると、血管以外の生体組織の部分では振幅情報が得られる。また、血管部位は血流情報(例えばドプラ情報)が得られる。
【0035】
図4(a),(b)には、振幅情報及び血流情報の個々データを用いて視線方向にボリュームレンダリング演算を行った出力結果の一例が示されている。なお、ボリュームレンダリング演算の中で使用するオパシティ(不透明度)は、振幅情報や血流情報等の入力データの強度に比例する(正確な比例関係は必要ない)ものとする。振幅情報のみを用いて演算を行った場合、ボリュームレンダリング演算の出力値は、図4(a)に示すように演算の進行に伴って増加する。大きなオパシティを用いた場合、演算の出力値は演算の途中で最大値(例えば飽和値:255)に達する場合がある。同様に、血流情報のみを用いた場合も、視線が血管部位を通過するところの出力値は大きくなる(図4(a)では204)。
【0036】
ところで、図5に示すように、振幅情報及び血流情報に関し、個々にボリュームレンダリング演算を行い、表示部26での表示直前に合成した場合を考える。この場合、生体組織(振幅情報)の演算結果(飽和値の255)が図6(a)に示すように、B入力部、G入力部に割り当てられる。一方、R入力部には、生体組織の演算結果(255)に血管(血流情報)の演算結果(204)を加算した459の値を割り当てることになる。ただし、実際に表示部26上に画像表示を行う場合、R,G,B各入力部に入力する前に正規化回路を介して、図6(b)に示すように最大値459が255になるように正規化する。この場合、Rの値が他の値に比して大きな値であるから表示画像は赤色に近いものになる。つまり、血管部位を貫く視線方向では、赤色のボリュームレンダリング像の結果となる。従って、図5の構成の場合、図3において、血管の前にエコー強度の大きなデータが存在するか否かに関わりなく、血管部位の3次元画像が赤色の画像となって表示されてしまう。言い換えれば、血管の表示は可能であるが生体組織に対する前後関係は全く無視された表示となってしまう。
【0037】
一方、図2(a),(b)の構成によれば、G,B入力部に対しては、振幅情報のみのボリュームレンダリングが行われ、R入力部に対しては、振幅情報と血流情報とを合成した上でボリュームレンダリングが行われる。この時、例えば、各ボリュームレンダリングの時に用いるオパシティを大きくすると、図7(a),(b)に破線で示すように、R,G,Bの成分全ての入力値(ボリュームレンダリング演算の出力値)は、最大値の255になるため(図6(c)参照)、表示される画像は白色となる。つまり、血流の情報は反映されず、図8に示すように、血管が生体組織の内部または後に存在することを適切に示す3次元画像を形成することができる。
【0038】
逆に各ボリュームレンダリングの時に用いるオパシティを小さくして、図7(a)に実線で示すように、G,Bの成分の入力値(ボリュームレンダリング演算の出力値)が、153になったとする。一方、Rの成分では、図7(b)に示すように、振幅情報に血流情報が加算されるため、ボリュームレンダリング演算の出力値は、血流情報の影響を受け153より大きな値、例えば230になる。この結果を図6(d)に示し、正規化後の状態を図6(e)に示す。この場合、R成分の影響が多くなるため、図9に示すように、生体組織の中に存在する血管が現れる。この時、R成分は生体組織の振幅情報の影響も受けるので、表示色は赤と白の混合色となり、血管が生体組織後方に存在することを容易に判断することが可能になる。
【0039】
なお、振幅情報がゼロ、すなわち臓器等の生体組織が無く、血流情報のみが存在する場合、3次元画像は赤い血管のみが表示される。また振幅情報のみの場合、R,G,B成分は全て同じになるので、白い生体組織の3次元画像が表示される。そして、振幅情報及び血流情報の両方が存在する場合、血管が赤く、生体組織が白く、両者の重なる部分はオパシティの設定に応じて中間色のピンクになる。
【0040】
このように、本実施形態においては、ボリュームレンダリング演算に用いるオパシティの値を大きくする時には、血管の前方にある生体組織の影響により重なっている血管が見えなくなり、逆にオパシティの値を小さくすると生体組織の後方に存在する血管が見えるようになる。例えば、血管が深い位置に存在する場合、オパシティを少し大きくしただけでもすぐに血管は見えなくなってしまう。逆に血管が浅い位置にある場合、オパシティを大きく変化させても血管の見え方はあまり変化しない。このように、本実施形態においてはオパシティの設定と血管の位置によってその3次元画像が変化するので、生体組織と血管の3次元表示を同時に行いつつ、その前後関係を明確に表現することが可能になる。
【0041】
なお、本実施形態において、前述した例では異なるタイミングで得られるエコー信号の位相差に基づいてドプラ情報を取得し、それを血流情報としているが、例えば、異なるタイミングで得られるエコー信号の振幅の差に基づいて血流情報を算出してもよい。例えば、異なるタイミングで得られるエコー信号の振幅の差を取ることにより、静止物、つまり生体組織が取り除かれ、動いているもののみを残して表示することができる。このように、動いているものを表示し、動かないものを取り除くという処理は、例えば、図10に示すように、FIRフィルタをハイパスフィルタとして利用することにより行うことができる。このFIRフィルタを用いることにより、Bモード画像から直接血流情報を取得することができる。
【0042】
すなわち、探触子30は、送信部32で発生した信号に基づいて所望のフォーカスがかけられた超音波を送信し、その反射波を受信部34で受信し、エンベロープ検波回路36で検波した後の信号をFIRフィルタ38に供給する。図11には、エンベロープ検波した後の信号の成分のスペクトラムの例が示されている。ここで、実臓器等の生体組織は静止または低速で動いているためその分布は縦長に低領域に分布する。一方、動いている血球からのエコーはそれより広がりを持って高領域に分布する。そして、FIRフィルタ38は、フィルタ係数を適宜変化させることにより実線で示すようなファイパスフィルタとして機能させることができるので、生体組織からのエコーを落として、血球からのエコーを通過させることができる。その結果、動いているものの情報、すなわち血流情報を取得し、上述した3次元画像を形成するためのデータとすることができる。もちろん、必要に応じて位相差と振幅差の両方に基づいて血流情報を認識してもよい。
【0043】
なお、本実施形態において、血流情報とは、血液の流れを表す情報であり、例えば、血液の流れを示す情報であれば、この他、例えば、血液中に血流によって移動するバブルを存在させ、そのバブルから反射してくる二次高調波を取得し、その二次高調波成分を血液の流れと認識し、血流情報としても上述した実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態において、レンダリング演算を行う前に、取得した振幅情報を示すボクセルデータと、血流情報を示すボクセルデータとを合成し、その後、振幅情報を示すボクセルデータに対しボリュームレンダリングを行うと共に、振幅情報と血流情報とを合成したボクセルデータに対しボリュームレンダリングを行い、上述のようなRGBの割り当てを行い3次元画像を表示する構成であればよく、例えば、超音波の送受信により得られたエコーデータごと、つまり、エコーデータの1ラインごとに逐次ボリュームレンダリング演算を施してもよいし、3次元メモリ内に1度立体データとして保持されたボクセルデータに対し、ボリュームレンダリングを施して、3次元画像を表示しても同様な結果を得ることができる。
【0045】
上述した実施形態では血流情報をR成分に関してのみ加算する例を説明したが、例えば、R成分とG成分に加算して、血管部分を黄色で表現するようにしてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、3次元の生体組織画像と血流画像とを同時に表示する場合、その前後の位置関係を明確に表現することをハードウエア構成により実現する例を説明したが、ソフトウエア上で実現してもよい。すなわち、ソフトウエア上で、取得した振幅情報を示すボクセルデータと血流情報を示すボクセルデータとの合成処理を行い、その後、振幅情報を示すボクセルデータに対しボリュームレンダリングを行うと共に、振幅情報と血流情報とを合成したボクセルデータに対しボリュームレンダリングを行う。そして、合成後のボリュームレンダリング演算結果を3次元画像を表示するためのR入力、G入力、B入力のいずれか1つまたは2つに割り当て、振幅情報のみのボリュームレンダリングを結果を残りの入力に割り当てて、3次元画像を形成してもよい。この場合、既存の超音波診断装置に対し、上述した処理を行うソフトウエアを追加することにより、本実施形態と同様な実現することが可能となる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、3次元の組織画像と血流画像とを同時に表示すると共に、その前後の位置関係を明確に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成を説明する概念ブロック図である。
【図2】 本発明の実施形態に係る超音波診断装置の特徴部分を図1から抽出した詳細図である。
【図3】 ボリュームレンダリング演算のための視線に沿って得られるデータを説明する説明図である。
【図4】 振幅情報及び血流情報の個々データを用いて視線方向にボリュームレンダリング演算を行った出力結果の一例を説明する説明図である。
【図5】 振幅情報及び血流情報に関し、個々にボリュームレンダリング演算を行う構成例を説明する説明図である。
【図6】 ボリュームレンダリング演算の結果をR,G,Bに割り当てることを説明する説明図である。
【図7】 本実施形態に基づくボリュームレンダリング演算を行うときのオパシティの変化による出力値の違いを説明する説明図である。
【図8】 本実施形態に基づくボリュームレンダリング演算においてオパシティを大きくした場合に表示される3次元画像を示す説明図である。
【図9】 本実施形態に基づくボリュームレンダリング演算においてオパシティを小さくした場合に表示される3次元画像を示す説明図である。
【図10】 本実施形態で使用する血流情報をBモード用データから直接求める場合の構成例を説明する説明図である。
【図11】 図10の構成のFIRフィルタで血流情報のみを抽出することを説明する説明図である。
【符号の説明】
10 プローブ、12,32 送信部、14,34 受信部、16 制御部、18 信号処理部、20 3次元メモリ、20a 振幅情報用3次元メモリ、20b 血流情報用3次元メモリ、22,22a,22b,22c レンダリング演算部、24 入力部、26 表示部、28 加算器、30 探触子、36 エンベロープ検波回路、38 FIRフィルタ。

Claims (5)

  1. 超音波を被検体に対し送受信して得た3次元エコーデータに対し、各エコーデータごとにオパシティを利用したボリュームレンダリング演算を行って3次元画像を形成する超音波診断装置において、
    取得したエコーデータから得られる振幅情報を示すボクセルデータ及び血流情報を示すボクセルデータを記憶する記憶部と、
    取得した振幅情報を示すボクセルデータと、血流情報を示すボクセルデータとを合成するデータ合成部と、
    前記憶部から読み出された振幅情報を示すボクセルデータに対しボリュームレンダリングを行う少なくとも一つの第1レンダリング部と、
    前記データ合成部で合成されたボクセルデータに対しボリュームレンダリングを行う第2レンダリング部と、
    前記第1レンダリング部及び第2レンダリング部の演算結果に基づいて3次元画像を表示する表示部と、
    を含み、
    前記第2レンダリング部は、その演算結果を3次元画像を表示するためのR入力部、G入力部、B入力部のいずれか1つまたは2つに入力し、第1レンダリング部は、その演算結果を残りの入力部に入力して3次元画像を形成することを特徴とする超音波診断装置。
  2. 請求項1記載の装置において、
    前記表示部は、R入力部、G入力部、B入力部を有するRGBカラーモニターであることを特徴とする超音波診断装置。
  3. 請求項1記載の装置において、
    前記表示部は、テレビジョン標準方式に基づき表示を行う表示器であり、前記R入力部、G入力部、B入力部に入力された各演算結果をテレビジョン標準方式に応じた信号にそれぞれ変換し、前記表示器で表示されることを特徴とする超音波診断装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の装置において、
    さらに、前記第1レンダリング部及び第2レンダリング部で利用するオパシティを変更するオパシティ変更手段を有することを特徴とする超音波診断装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の装置において、
    前記血流情報を示すボクセルデータは、異なるタイミングで得られるエコー信号の位相差または振幅差の少なくとも一方に基づいて算出されることを特徴とする超音波診断装置。
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