JP3966250B2 - エンジンの燃料噴射量制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンの燃料噴射量制御装置に関する。
燃料噴射弁による噴射燃料の壁面付着率Rm(k)と、その付着燃料の残留率Pm(k)とからなる燃料挙動を表すパラメータを吸気圧の変化度合に基づいて可変に設定し、その燃料挙動パラメータを用いて燃料噴射量を補正するようにしたものがある(特許文献1参照)。
特開平9−303173号公報
ところで、物理モデルによれば、机上適合が可能となり実験適合の工数を減らすことができるので、燃料噴霧の挙動についても物理モデルを一層促進することが、個別のエンジン毎の適合実験に要する適合工数を削減し、エンジン開発時間を短縮することにつながる。
例えば、燃料噴射弁から噴射される噴霧が先端から後端までつらなる塊状で吸気系を経て燃焼室内の気流中を飛行すると仮定したとき、燃料噴射弁から噴射される噴霧はその一部が吸気弁の開弁時に吸気弁または吸気ポートに衝突することなく燃焼室へと直接噴き入れられる。この燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量(XD)は噴霧速度(VF#)、噴霧の飛距離限界(#LM1)、燃料噴射弁の噴孔から吸気ポート出口までの距離(#LM2)の影響を受けるので、これらに基づいて燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量(XD)を算出するモデルを予め構築しておけば、燃料噴射弁やエンジンの仕様変更、燃料噴射タイミングの変更といった制御仕様の変更により噴霧速度(VF#)、噴霧の飛距離限界(#LM1)、燃料噴射弁の噴孔から吸気ポート出口までの距離(#LM2)が変更になる事態が生じても、その同じモデルを用いて、変更後の燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量を算出することが可能となり、再度の実験適合が必要でなくなり、適合工数が大幅に低減でき、適合に要する期間も短縮できる。
しかしながら、従来装置は個別のエンジン毎の適合実験に要する適合工数を削減できるものでない。すなわち、従来装置では上記の壁面付着率Rm(k)や付着燃料の残留率Pm(k)の適合を実験によっているので、例えば一つのエンジンに対して上記の燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量(XD)を新たに導入し、エンジン回転速度やエンジン負荷をパラメータとしてこの燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量(XD)を実験により完了した後に、噴霧速度(VF#)、噴霧の飛距離限界(#LM1)、燃料噴射弁の噴孔から吸気ポート出口までの距離(#LM2)が変更されると、同じエンジンでありながら再度同じ工数の実験適合が必要となる。
そこで本発明は、燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量(XD)に大きな影響を与える噴霧速度(VF#)と噴霧の飛距離限界(#LM1)と前記燃料噴射弁の噴孔から前記吸気ポート出口までの距離(#LM2)とからこの噴霧塊の燃焼室内における気流中割合(FC)を定め、この噴霧塊の燃焼室内における気流中割合(FC)が0を超える範囲を噴霧塊が燃焼室内における気流中にある区間とみなし、この噴霧塊の燃焼室内における気流中割合(FC)に少なくとも基づいて燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量(XD)を算出するモデルを予め構築しておくことにより、燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量(XD)に大きな影響を与える噴霧速度(VF#)、噴霧の飛距離限界(#LM1)、燃料噴射弁の噴孔から吸気ポート出口までの距離(#LM2)に変更があっても、再度の適合実験を不要としてエンジン開発時間の短縮を図ることを目的とする。
第1の発明は、燃焼室入口の吸気ポートを開閉する吸気弁と、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁とを備え、この燃料噴射弁から噴射される噴霧が先端から後端までつらなる塊状で吸気系を経て燃焼室内の気流中を飛行すると仮定し、噴霧速度(VF#)と噴霧の飛距離限界(#LM1)と前記燃料噴射弁の噴孔から前記吸気ポート出口までの距離(#LM2)とから定まるこの噴霧塊の燃焼室内における気流中割合(FC)が0を超える範囲を前記噴霧塊が燃焼室内における気流中にある区間とみなし、この噴霧塊の燃焼室内における気流中割合(FC)に少なくとも基づいて前記燃料噴射弁から噴射される燃料量のうち前記吸気弁の開弁時に吸気弁または吸気ポートに衝突することなく燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量(XD)を算出するモデルを用いて前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を算出するように構成する。
本発明によれば、燃料噴射弁から噴射される噴霧が先端から後端までつらなる塊状で吸気系を経て燃焼室内の気流中を飛行すると仮定し、噴霧速度(VF#)と噴霧の飛距離限界(#LM1)と燃料噴射弁の噴孔から吸気ポート出口までの距離(#LM2)とから定まるこの噴霧塊の燃焼室内における気流中割合(FC)が0を超える範囲を噴霧塊が燃焼室内における気流中にある区間とみなし、この噴霧塊の燃焼室内における気流中割合(FC)に少なくとも基づいて燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量(XD)を算出するモデルを用いて燃料噴射弁からの燃料噴射量を算出するので、後述する(60)、(61)、(62)、(63)、(64)、(65)、(59)式で示したように簡単なモデル式で燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量(XD)を算出することができ、メモリ容量や計算時間を短縮することができる。また、レイアウトの変更で燃料噴射弁の位置が変化したときには、変更後の燃料噴射弁の位置に合わせて飛距離限界(#LM1)、燃料噴射弁の噴孔から吸気ポート出口までの距離(#LM2)を変えるだけで足り、再度の適合実験は不要である。
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。図1はL−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンに適用した本発明の一実施形態のシステムを説明するための概略図である。
吸気絞り弁23により調量される空気は、吸気コレクタ2に蓄えられた後、吸気マニホールド3を介して各気筒の燃焼室5に導入される。燃料は各気筒の吸気ポート4に配置された燃料噴射弁21より、エアフローメータ32により検出される吸入空気流量と、クランク角センサ(33、34)からの信号に基づいて演算されるエンジン回転速度とに応じ、所定のタイミングで吸気ポート内に、より具体的には吸気ポートに遮るように存在する吸気弁15(傘裏部)に向けて、間欠的に噴射供給される。
吸気弁15に向けて噴射された燃料は、吸気と混合して混合気を作り、この混合気は吸気弁15を閉じることで燃焼室5内に閉じこめられ、ピストン6の上昇によって圧縮され、点火プラグ14により着火されて燃焼する。この燃焼によるガス圧がピストン6を押し下げる仕事を行い、このピストン6の往復運動はクランクシャフト7の回転運動へと変換される。燃焼後のガス(排気)は排気弁16が開いたとき排気通路8へと排出される。
排気通路8には三元触媒9を備える。三元触媒9は排気の空燃比が理論空燃比を中心とした狭い範囲にあるとき、排気に含まれるHC、CO及びNOxを同時に効率よく除去できる。このため、エンジンコントローラ31では運転条件に応じて燃料噴射弁21からの基本燃料噴射量を定めると共に、三元触媒9の上流に設けたO2センサ(図示しない)からの信号に基づいて空燃比をフィードバック制御する。
上記の吸気絞り弁23はスロットルモータ24により駆動される。運転者が要求するトルクはアクセルペダル41の踏み込み量(アクセル開度)に現れるので、エンジンコントローラ31ではアクセルセンサ42からの信号に基づいて目標トルクを定め、この目標トルクを実現するための目標空気量を定め、この目標空気量が得られるようにスロットルモータ24を介して吸気絞り弁23の開度を制御する。
また、主に燃費向上のため、EGR装置(EGR通路25、EGR弁26、アクチュエータ27からなる)と吸気弁作動角可変機構の一種としてのVTC機構(バルブタイミングコントロール機構)29を備えてもいる。
さて、L−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンを前提として、本実施形態では、燃焼予測型制御を行う。具体的には温度を主なパラメータとして吸気ポート4、燃焼室5内の壁流燃料と未燃分燃料を推定し、その結果を燃料噴射制御に適用する。
まず、今回改めて噴射弁21から噴射された燃料が燃焼するまでの燃料の挙動を見直した結果を図2、図3に示す。図2において破線は、噴射弁21から噴射された燃料がガス状で移動することを、実線は噴霧の状態で移動することを示す。なお、噴霧のうち微細なもの(微粒噴霧)はガスと同じに扱えるので、ガスのほうに分類している。この場合、ガス、微粒噴霧は再び吸気ポートや燃焼室内に付着することはないと仮定する。
ここでは、燃焼室入口までの燃料挙動と燃焼室内での燃料挙動とに大きく分ける。
(1)燃焼室入口までの燃料挙動:
噴射弁21から吸気ポート4に噴射された燃料は、気化してガス(気体)となる分と、噴霧のまま漂う分とに大きく分岐される。ガス、微粒噴霧となった燃料はポート壁4aや吸気弁傘裏部15aに付着することなく燃焼室5に吸入される。噴霧のまま漂う燃料は、その一部が気流に運ばれて燃焼室5に直接吸入され、残りは吸気弁傘裏部15aと吸気ポート壁4aとに付着する。
ここで、吸気弁15に付着して形成される壁流は、傘裏部15aだけでなく吸気弁15の燃焼室5に臨む表面15bにも形成される。この燃焼室側表面15bに形成される壁流は燃焼室5内に形成される壁流のほうで扱うので、以下では吸気弁15の傘裏部15aの壁面のみを「吸気弁壁」と定義する。
ポート壁4a、吸気弁壁15aに付着した燃料は壁流を形成する。この場合、各壁では主に壁温度が大きく異なり(冷間始動後は同じであるが、エンジンの暖機が進むほど吸気弁壁の温度のほうがポート壁の温度より高くなってゆく)、各壁流から異なる特性で燃料が蒸発するので、壁流も別々に扱う。
これら各壁流は、一部はそれぞれの壁温度など蒸発し易さの物理量の結果を受けてガスとなり燃焼室5に吸入され、残りは吸気の流れや重力により壁流から剥がされて噴霧となりまたは壁流としておのおの壁部を伝って燃焼室5内に流入する。
(2)燃焼室内での燃料挙動:
このようにしていろいろな経緯を経て燃焼室5に吸入された燃料群は、一部はガス、微粒噴霧として直接燃焼に寄与し、一部は燃焼室5内の壁流を形成する。燃焼室5内の壁流は、現実には吸気弁15の燃焼室側表面15b、排気弁16の燃焼室側表面(図2、図3には図示していない)、吸気ポート4aにつながっているシリンダヘッド壁51、ピストン冠面6a、点火プラグ表面(図示しない)、さらにはシリンダ面壁52とどこにでも存在する。燃焼室5内の壁流は、一部は点火による燃焼までの間に圧縮熱や壁熱などで蒸発、気化してガス、微粒噴霧となり燃焼に寄与し、一部は燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに排気行程で排気通路8へと排出される。特に、シリンダ面壁52の壁流を形成する燃料はその一部がオイルに希釈されたままクランクケースに逃げてブローバイガスに含まれる。
ここでは、燃焼室5内に壁流が形成される部位をシリンダ面壁52とそれ以外の燃焼室壁とに分ける。
ここで、シリンダ面壁52以外の燃焼室壁を「燃焼室壁」と定義する。一般的に「燃焼室壁」といった場合、シリンダ面壁を含むので紛らわしいのであるが、他に適切な表現が見あたらないので本実施形態ではシリンダ面壁52を除いた概念として「燃焼室壁」を使う。この燃焼室壁には吸気弁の燃焼室側表面15bが含まれる。
燃焼室壁とシリンダ面壁52との2つに分けたのも両壁に主に壁温度差が大きくあり(シリンダブロックに形成されるシリンダはシリンダブロック内のウォータジャケットを流れる冷却水により冷却されるため、シリンダ面壁52の温度はほぼ水温に等しい温度で推移するため、燃焼室壁の温度のほうがシリンダ面壁52の温度より高い)、各壁流からの燃料蒸発特性が大きく異なるためと、演算ロジックを簡素化して適合を容易にするためである。
ただし、分ける数は2つに限定されるものでない。詳しくいうと、燃焼室壁は、上述したように吸気弁15の燃焼室側表面15b、排気弁16の燃焼室側表面、シリンダヘッド壁51、ピストン冠面6a、点火プラグ表面などからなり、これらの間でも大きな壁温度差がある。すなわち、排気弁16の燃焼室側表面の温度が最も高く、吸気弁の燃焼室側表面15bとピストン冠面6aとはほぼ同じ温度、またこれら吸気弁の燃焼室側表面15b、ピストン冠面6aの温度のほうがシリンダヘッド壁51の温度より高い。従って、燃焼室壁を壁温度毎にさらに2以上に分割することが考えられる(例えば高温部燃焼室壁と低温部燃焼室壁とに分割する)。
このように、壁温度の違いにより燃焼室5内に形成される壁流を2つに分割し(燃焼室壁流とシリンダ面壁流)、さらに燃焼室5内の燃料を燃焼に寄与する分と、未燃のまま排出される分と、オイルに希釈される分との3つに分けると、これらは次のように整理できる。
〔1〕燃焼に寄与する燃料:
これは(a)噴射弁21より噴射された直後にガス、微粒噴霧となった燃料、(b)燃焼室5に吸入された噴霧から蒸発してガス、微粒噴霧となった燃料、(c)ポート壁流より蒸発してガス、微粒噴霧となった燃料、(d)吸気弁壁流より蒸発してガス、微粒噴霧となった燃料、(e)燃焼室壁流より点火による燃焼までの間に蒸発してガス、微粒噴霧となった燃料、(f)シリンダ面壁流より点火による燃焼までの間に蒸発してガス、微粒噴霧となった燃料の合計である。
〔2〕未燃のまま排出される燃料:
これは、(g)燃焼室壁流より燃焼が完了してから蒸発してガス、微粒噴霧となり、排気行程で排気通路8へと排出される燃料と、(h)シリンダ面壁流より燃焼が完了してから蒸発してガス、微粒噴霧となり、排気行程で排気通路8へと排出される燃料との合計である。
〔3〕オイル落ち燃料:
これは、(i)シリンダ面壁流よりオイルに希釈されたままクランクケースに逃げてブローバイガスに含まれる燃料である。
図2、図3に示したこうした燃料挙動の解析結果に基づいて4つの各壁流(ポート壁流、吸気弁壁流、燃焼室壁流、シリンダ面壁流)を図4に示したようにモデル化して1気筒当たりのポート、燃焼室の混合気モデルを構築する。すなわち、図4のように当該混合気モデルを、燃料噴射量算出手段51、各部燃料分岐割合算出手段52、4つの燃料付着量算出手段(吸気弁壁付着量算出手段53、ポート壁付着量算出手段54、燃焼室壁付着量算出手段55、シリンダ面壁付着量算出手段56)、燃焼分燃料算出手段57、未燃分燃料算出手段58、オイル落ち量算出手段59、排気燃料算出手段60から構成する。
まず吸気弁壁付着量算出手段53とポート壁付着量算出手段54では、1噴射毎(=吸入行程毎)つまり1燃焼サイクル毎に各壁流量(燃料付着量)が変化するものとして、1燃焼サイクル当たり一回、次の漸化式を用いて吸気弁壁付着量Mfvとポート壁付着量Mfpを算出する。
Mfv=Mfvn-1+Fin・X1
−Mfvn-1(Y0+Y1+Y2)…(1)
Mfp=Mfpn-1+Fin・X2
−Mfpn-1(Z0+Z1+Z2)…(2)
ただし、Mfv :吸気弁壁付着量、
Mfvn-1 :Mfvの1燃焼サイクル前の値、
Mfp :ポート壁付着量、
Mfpn-1 :Mfpの1燃焼サイクル前の値、
Fin :燃料噴射量、
Xn、Yn、Zn:各部燃料分岐割合、
ここで、上記(1)式は、1燃焼サイクル前の吸気弁壁付着量であるMfvn-1に対して今回の噴射により壁流となって増える燃料分(右辺第2項)を加算し、今回の噴射までに減っている燃料分(右辺第3項、第4項、第5項)を減算するものである。すなわち、右辺第2項のFin・X1は、今回の燃料噴射量Finのうち吸気弁壁流に変化する燃料分である。右辺第3項のMfvn-1・Y0はMfvn-1のうち今回の噴射までに蒸発してガス、微粒噴霧となりそのまま燃焼室5に吸入されて燃焼する燃料分である。右辺第4項のMfvn-1・Y1はMfvn-1のうち今回の噴射までに引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れて燃焼室壁流となる燃料分、Mfvn-1・Y2はMfvn-1のうち今回の噴射までに引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れてシリンダ面壁流となる燃料分である。
上記(2)式は上記(1)式と同様である。すなわち、右辺第2項のFin・X2は、今回の燃料噴射量のうちポート壁流に変化する燃料分である。右辺第3項のMfpn-1・Z0はMfpn-1のうち今回の噴射までに蒸発してガス、微粒噴霧となりそのまま燃焼室5に吸入されて燃焼する燃料分である。右辺第4項のMfpn-1・Z1はMfpn-1のうち今回の噴射までに引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れて燃焼室壁流となる燃料分、右辺第5項のMfpn-1・Z2はMfpn-1のうち今回の噴射までに引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れてシリンダ面壁流となる燃料分である。
燃焼室壁付着量算出手段55とシリンダ面壁付着量算出手段56でも、1噴射毎つまり1燃焼サイクル毎に各燃料付着量が変化するものとして、1燃焼サイクル当たり一回、次の漸化式を用いて燃焼室壁付着量Cfhとシリンダ壁付着量Cfcを算出する。
Cfh=Cfhn-1+Fin・X3
+Mfv・Y1+Mfp・Z1
−Cfhn-1(V0+V1) …(3)
Cfc=Cfcn-1+Fin・X4
+Mfv・Y2+Mfp・Z2
−Cfcn-1(W0+W1+W2)…(4)
ただし、Cfh :燃焼室壁付着量、
Cfhn-1 :Cfhの1燃焼サイクル前の値、
Cfc :シリンダ面壁付着量、
Cfcn-1 :Cfcの1燃焼サイクル前の値、
Fin :燃料噴射量、
Xn、Yn、Zn、Vn、Wn:各部燃料分岐割合、
上記(3)式において、右辺第2項のFin・X3は、今回の燃料噴射量Finのうち燃焼室壁流に変化する燃料分である。右辺第3項、第4項のMfv・Y1、Mfp・Z1はそれぞれMfv、Mfpから引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れて燃焼室壁流に変化する燃料分である。右辺第5項のCfhn-1・V0はCfhn-1のうち点火による燃焼までの間に圧縮熱や壁熱等で蒸発、気化して燃焼に寄与した燃料分、右辺第6項のCfhn-1・V1はCfhn-1のうち燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに排気行程で排出された燃料分である。
上記(4)式は、右辺第7項のCfcn-1・W2を除いて上記(3)式と同様である。すなわち、右辺第2項のFin・X4は、今回の燃料噴射量のうちシリンダ面壁流に変化する燃料分である。右辺第3項、第4項のMfv・Y2、Mfp・Z2それぞれMfv、Mfpから引き剥がされて噴霧となった後にあるいは壁流のまま流れてシリンダ面壁流に変化する燃料分である。右辺第5項のCfcn-1・W0はCfcn-1のうち点火による燃焼までの間に圧縮熱や壁熱等で蒸発、気化して燃焼に寄与した燃料分、右辺第6項のCfcn-1・W1はCfcn-1のうち燃焼が完了してから蒸発し燃焼に寄与せずに排気行程で排出された燃料分である。右辺第7項のCfcn-1・W2はCfcn-1のうちオイルに希釈されたままクランクケースに逃げてブローバイガスに含まれてしまった燃料分である。
なお、図4は全体でもモデルであるが、部分でもモデルである。すなわち、上記(1)式が吸気弁壁流モデル、上記(2)式がポート壁流のモデル、上記(3)式が燃焼室壁流のモデル、上記(4)式がシリンダ面壁流のモデルである。また、燃料噴射量FinがX0〜X4に分かれるとするのもモデルである。
燃焼分燃料算出手段57、未燃分燃料算出手段58、オイル落ち量算出手段59では次式により燃焼分燃料Fcom、未燃分燃料Fac、オイル落ち量Foilをそれぞれ算出する。
Fcom=Fin・X0+Mfv・Y0+Mfp・Z0+Cfh・V0
+Cfc・W0 …(5)
Fac =Cfh・V1+Cfc・W1…(6)
Foil=Cfc・W2 …(7)
ここで、(5)式は上記(a)〜(f)の燃料の合計を燃焼分燃料Fcomと、(6)式は上記(g)、(h)の燃料の合計を未燃分燃料Facと、(7)式は上記(i)の燃料をオイル落ち量Foilとして数式化したもの(モデル)である。
排気燃料算出手段60では、次式のようにこれら燃焼分燃料Fcomと未燃分燃料Facを合計した値を、排気に影響する排気燃料Foutとして算出する。
Fout=Fcom+Fac…(8)
(8)式は燃焼分も未燃分も燃焼室5内のすべてのガスが排気通路8へ排出されることを表している。実際には一部のガスは排気通路8へ排出されることなく燃焼室5内に残留するのであるが、この残留ガスは図4に示した混合気モデルでは考えていない。
これら4つの算出手段57〜60での算出タイミングは、燃料付着量算出手段53〜56と同じである。
このようにして、上記(1)〜(8)式が得られたが、これら式中の値のうち代表的なものを図3に図示している。
次に、図5は図4に示した混合気モデルを用いて気筒別の燃料噴射量をTiを算出するためのデータフローを示した図である。
まず性能要求判定手段71では、運転条件より三元触媒9からの排気要求と、出力要求(または安定度要求)のいずれがあるのか否かを判定する。例えば低温始動直後の燃焼が安定しにくい領域は安定度要求があるとき、全負荷領域は出力要求があるときである。また、触媒の活性化後は三元触媒9からの排気要求があるときである。
目標当量比決定手段72では、こうした判定結果より排気要求があるときには排気要求当量比Tfbye(=1.0)を、また出力要求(または安定度要求)があるときには出力要求当量比Tfbyp(1.1〜1.2の値で固定値)を目標当量比Tfbyaとして決定する。
ここで、当量比は理論空燃比(≒14.7)を空燃比で除した値である。このため、当量比=1.0のとき空燃比は理論空燃比となり、当量比=1.1〜1.2のとき空燃比は理論空燃比よりもリッチ側の値となる。
要求噴射量算出手段75では、このようにして決定した目標当量比Tfbya及び性能要求判定手段71の判定結果と、各部付着量算出手段73、各部燃料分岐割合算出手段74(それぞれ図4の一部)の算出結果とに基づいて次式により要求噴射量Finを算出する。
(1)出力要求(または安定度要求)があるとき;
Fin={K#・Tfbya・Tp−(Mfv・Y0+Mfp・Z0
+Cfh・V0+Cfc・W0)/X0 …(9)
(2)排気要求があるとき;
Fin={K#・Tfbya・Tp−(Mfv・Y0+Mfp・Z0
+Cfh・V0+Cfc・W0+Cfh・V1+Cfc・W1)}
/X0 …(10)
ここで、(9)式は出力要求または安定度要求があるときにシリンダ吸入空気量(Qcyl)と、前記3つの燃焼分(X0、Y0+Z0、V0+W0)の燃料(Fin・X0+Mfv・Y0+Mfp・Z0+Cfh・V0+Cfc・W0)との比が理論空燃比よりリッチ側の値となるように要求噴射量Finを算出する式である。これに対して(10)式は三元触媒9からの排気要求があるときにシリンダ吸入空気量(Qcyl)と、3つの燃焼分(X0、Y0+Z0、V0+W0)の燃料(Fin・X0+Mfv・Y0+Mfp・Z0+Cfh・V0+Cfc・W0)及び未燃分(V1+W1)の燃料(Cfh・V1+Cfc・W1)の合計との比が理論空燃比となるように燃料噴射弁21からの燃料噴射量を算出する式である。
(10)式は(9)式に対して未燃分燃料Fac(=Cfh・V1+Cfc・W1)を加えている点のみが相違する。排気中の空燃比を考えるときには未燃分燃料をも考慮する必要があるためである。この逆に、未燃分燃料は出力には寄与しないので除く必要がある。
(9)式で代表して述べると、(9)式は次式より導出したものである。
K#・Tfbya・Tp=Fin・X0
+(Mfv・Y0+Mfp・Z0+Cfh・V0+Cfc・W0)
…(11)
ただし、K#:定数、
Tp:エアフローメータ32よりから求めた基本噴射量、
(11)式は、ガス、微粒噴霧となる燃料分(右辺第1項)及び燃料壁流に奪われる燃料分(右辺第2項〜第5項)の合計とが左辺の噴射燃料量に等しいことを表している。この式をFinについて整理すれば、上記(9)式が得られる。
ここで、(11)式左辺の基本燃料噴射量Tpは1気筒当たりの値であるので、右辺のFin、Mfv、Mfp、Cfh、Cfcの各値も1気筒当たりの値である。基本燃料噴射量Tpの実際の単位は質量の単位である[mg]でなく時間の単位である[ms]であるため、右辺のFin、Mfv、Mfp、Cfh、Cfcの各値について、その単位を[ms]で定義すれば、定数K#は1.0でよい。Fin、Mfv、Mfp、Cfh、Cfcの単位を[mg]で定義してもかまわない。ただし、このときには定数K#を、[ms]より[mg]への変換係数として導入する。
最終噴射量算出手段76では、このようにして算出した要求噴射量Fin[ms]を用いて次式のいずれかによりシーケンシャル噴射時の最終噴射量Ti[ms]を算出する。
Ti=Fin×α×αm×2+Ts …(12a)
Ti=Fin×(α+αm−1)×2+Ts…(12b)
ただし、α:空燃比フィードバック補正係数、
αm:空燃比学習補正係数、
Ts:無効パルス幅、
これら最終噴射量Tiの式はL−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンにおける従来の燃料噴射量Ti[ms]の演算式とは趣が異なる。ちなみに、当該演算式(シーケンシャル噴射時)は次のようなものである。
Ti=(Tp+Kathos)×TFBYA×(α+αm−1)×2
+CHOSn+Ts …(13)
TFBYA=1+KTW+KAS+KUB+KMR …(14)
ただし、TFBYA :従来装置の目標当量比、
Kathos:壁流補正量(応答の遅いもの)、
CHOSn :壁流補正量(応答の速いもの)、
KTW :水温増量補正係数、
KAS :始動後増量補正係数、
KUB :未燃分補正係数、
KMR :混合気補正係数、
(13)、(14)式に示す従来の演算式では、増量補正係数がたくさんあることからもわかるように、低水温時、低温始動直後で燃焼不安定な状態、未燃分、全負荷時、加減速時などに対してそれぞれに別個の増量補正係数(KTW、KAS、KUB、KMR、Kathos、CHOSn)を導入し、個別に対応していた。しかしながら、こうした方法だと増量補正係数の数に応じて適合工数が飛躍的に増大せざるを得ない。また、KTW、KAS、KUBの適合については燃料挙動までは解析されていない。
一方、すべての燃料増量をトータルで考えてみると、すべて壁流燃料に関係する。従って、上記図2、図3のように今回改めて噴射弁21から噴射された燃料が燃焼するまでの燃料の挙動を見直し、その結果を用いて図4、図5のように混合気モデルと燃料噴射量算出モデルとを構築するようにした本実施形態によれば、KTW、KAS、KUB、KMRの各補正係数は不要となる。また、Kathos、CHOSnに代えて、4つの付着量Mfv、Mfp、Cfh、Cfcが置き換わる。すなわち、上記(1)〜(10)式及び(12a)、(12b)式のいずれかを用いる本実施形態によれば、(13)、(14)式の従来の演算式を用いるガソリン噴射エンジンに対して次の効果が得られる。
効果1;特に低温始動、暖機途中の空燃比制御精度がよくなり、この制御精度の向上に より排気性能が向上しかつ始動性、運転性(トルク精度)が向上する。
効果2;吸気ポート、燃焼室内の壁流挙動(噴射してから燃焼するまでのすべての燃料 挙動)を解析しているので、机上適合が容易になり適合工数を低減できる。
効果3;このように精密に壁流挙動を解析して燃料噴射を行わせた結果、それでも空燃 比が目標より外れていれば、それは噴射弁やエアフローメータなど部品の精度に 関係するものと判断できるので、制御結果を空燃比制御にフィードバックするこ とで、エンジンそのものの素質を改善できる。
ところで、性能要求判定手段71による判定方法はこれに限らない。出力要求時(または安定度要求時)から排気要求時への切換時またはその逆への切換時に前記(9)式の要求噴射量より(10)式の要求噴射量へとステップ的に切換えまたはその逆への切換時に(10)式の要求噴射量より(9)式の要求噴射量へとステップ的に切換えたのではトルク段差が生じ、これによりトルクショックによる不快感や音質変化などが感じられる。
そこで、低温始動からの時間、アクセル開度、三元触媒9の温度の少なくとも一つに応じて出力要求と排気要求の要求比を設定し、この要求比で前記(9)、(10)式の2つの要求噴射量を補間計算した値を、改めて要求噴射量として算出することにより、2つの要求噴射量の間を要求比に応じて滑らかに繋ぎ、2つの要求噴射量の間をステップ的に切換える際に生じるトルクショックによる不快感や音質変化などを防止する。
これについて説明すると、排気要求と出力要求の比を要求度数(要求比)で定義する。ここでは出力要求のみに応ずるときの要求度数を100%とし、排気要求のみに応ずるときの要求度数を0%として、そのときの運転条件に応じた要求度数を設定する。具体的には、低温始動直後は燃焼室内での燃焼が安定しにくいので、出力要求である。全負荷領域でも出力要求に応じる必要がある。また、排気通路8に設けている触媒9が活性化した後には排気要求に応じる必要がある。これらの要求のため、要求度数を図6、図7、図8に示したように設定している。すなわち、図6のように初期値を100%として低温始動直後の出力要求に応じると共に、始動後時間(あるいは壁温度)が経過するほど要求度数を小さくしていくことにより出力要求から排気要求へとゆるやかに切換える。図7のようにアクセルペダル41を最大まで踏み込む付近で要求度数を大きくすることにより全負荷領域での出力要求に応える。図8のように初期値を100%として触媒温度が上昇するほど要求度数を小さくしていくことにより出力要求から排気要求へと緩やかに切換える。
このようにして、始動後時間、アクセル開度、触媒温度より図6、図7、図8を内容とするテーブルを参照して3つの要求度数を得た後は、これら3つの要求度数のうち最も大きい値を選択する。
そして、上記(10)式の要求噴射量FinをFin1(第1の燃料噴射量)、上記(9)式の要求噴射量FinをFin2(第1の燃料噴射量)として区別し、この選択した要求度数でこれら2つの要求噴射量Fin1、Fin2を補間計算した値を要求噴射量Finとして算出する。
Fin=Fin2×要求度数+Fin1×(1−要求度数)
…(15)
(15)式によれば要求度数=100%のときFin=Fin2、要求度数=0%のときFin=Fin1となる。
ここで、始動後時間はエンジン始動タイミングで起動するタイマにより計測する。アクセル開度はアクセルセンサ42により検出する。触媒温度は触媒温度センサ43により検出する。
次に、図4の各部燃料分岐割合算出手段52では、各部燃料(Fin、Mfv、Mfp、Cfh、Cfc)の分岐割合を算出するが、この各部燃料の分岐割合の算出について以下に説明する。上記(1)〜(7)、(10)、(11)式をみればわかるように本実施形態では各部燃料分岐割合Xn、Yn、Zn、Vn、Wnが適合値になる。そして、これらを精度よく適合することで空燃比制御精度を高めることができる。
ここでは、L−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンのうち、標準システム(後述する)を有するあらゆるエンジンを対象として検討しているため、吸気行程噴射を行うものやアシストエアー方式の燃料噴射弁を備えるもの、成層燃焼を行うもの、スワールコントロールバルブを備えるものなどを含めているが、適用するエンジンに該当しないものはカットすればよい。
ここで、「標準システム」のガソリン噴射エンジンとは次の2つの条件を満足するものをいう。
(ア)吸気通路に吸気弁を備えること。
(イ)可変動弁機構を備えていないか、備えていても可変動弁の可変代が小さいこと。
本実施形態は(ア)、(イ)の条件を共に満足するので、標準システムのガソリン噴射エンジンである。一方、吸気絞り弁を備えておらず吸気弁のみで吸入空気流量を調整するエンジン、電磁駆動の吸気弁を備えるエンジン、圧縮比可変のエンジンは標準システムのガソリン噴射エンジンでない。従って、これらエンジンは対象外である。
さて、噴射弁噴霧の分岐モデルを図9のように構築する。すなわち、当該モデルを、噴霧粒径分布算出手段41、噴射時気化割合算出手段42、直接噴き入り割合算出手段43、吸気系浮遊割合算出手段44、燃焼室浮遊割合算出手段45、吸気系付着割合割り振り手段46、燃焼室付着割合割り振り手段47、気化、浮遊割合算出手段48から構成する。
まず、噴霧粒径分布算出手段41では、エンジンコントローラ31内のROMに予め記憶されている噴霧の粒径分布を読み出してくる。ここで、噴霧の粒径分布は、粒径の小区分毎(粒径毎)の噴霧の質量割合を行列としたもので、噴霧の粒径分布の算出とはエンジンコントローラ31内のROMからこの粒径の小区分毎の噴霧の質量割合の行列を読み出してくる操作のことである。
噴射時気化割合算出手段42では、温度、圧力、流速等の信号から粒径の小区分毎の噴霧の気化率を算出し、これらを全ての粒径区分について総和することにより、噴射時の総噴霧のうちから気化する分である噴射時気化分X0´[%]を算出する。この結果、100−X0´の噴霧分XB[%]が吸気ポート4に気化することなく残留する。
直接噴き入り割合算出手段43では、噴射時気化割合算出手段42からのこの残留噴霧分XB(=100−X0´)を受け、これと噴射タイミングI/T、噴射弁21と吸気弁15の挟み角βとを用いて、吸気弁または吸気ポートに衝突することなく燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XD[%]を算出する。この結果、XB−XDの噴霧分XC[%]が吸気ポート4に残留する。この吸気ポート4に残留する噴霧分XCは吸気系浮遊割合算出手段44に、また燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDは燃焼室浮遊割合算出手段45に出力される。
吸気系浮遊割合算出手段44では、粒径の小区分毎の噴霧の気化率を算出し、これらを全ての粒径区分について総和することにより、吸気ポート4での浮遊分X0´´[%]を、また残りを吸気ポート壁4aと吸気弁壁15aとに付着する噴霧分(以下、吸気ポート壁4aに付着する噴霧分と吸気弁壁15aに付着する噴霧分とを総称して「吸気系付着分」という。)XE(=XC−X0´´)[%]として算出する。
同様にして、燃焼室浮遊割合算出手段45では粒径の小区分毎の噴霧の気化率を算出し、これらを全ての粒径区分について総和することにより、燃焼室5での浮遊分X0´´´[%]を、また残りを燃焼室壁(上記のようにシリンダ面壁を除く)とシリンダ面壁52とに付着する噴霧分(以下、燃焼室壁に付着する噴霧分とシリンダ面壁52に付着する噴霧分とを総称して「燃焼室付着分」という。)XF(=XD−X0´´´)[%]として算出する。
気化、浮遊割合算出手段48ではこのようにして求められた噴射時気化分X0´、吸気ポート4での浮遊分X0´´、燃焼室5での浮遊分X0´´´の3つを合計して1噴射トータルでの気化、浮遊分X0を算出する。
一方、吸気系付着割合割り振り手段46では吸気系付着分XEを、吸気弁壁15aに付着する分X1[%]と、ポート壁4aに付着する分X2[%]とに、また燃焼室付着割合割り振り手段47では燃焼室付着分XFを、燃焼室壁に付着する分X3[%]と、シリンダ面壁52に付着する分X4[%]とにそれぞれ割り振る。
次に、噴霧分岐のモデル同定について項分け説明する。
〈1〉噴霧分岐のモデル同定(噴霧分岐全体プロセス)
図10は噴霧の各分岐分(X0、X1、X2、X3、X4)の推定(同定)に用いる噴霧分岐全体のプロセスをモデルで示したもので、噴射時からの燃料噴霧の分岐を図示のように時系列的に6つに分解している。
1)噴射時気化:
噴射時噴霧は粒径の異なる燃料噴霧の集まりである。従って、横軸に粒径D[μm]を、縦軸に噴霧の質量割合[%]を採れば、図10上段左端に示したように粒径Dに対して山形の分布(XA)を有し(太実線参照)、その山形の曲線で囲まれる面積が、噴射時の総噴霧の総和である100%になる。山形の分布を有する燃料噴霧のうちから一部が噴射時に気化し、残りは噴霧のまま滞留する。粒径の小さい噴霧ほど気化しやすいので、気化せずに残る噴霧の分布(細実線参照)は噴射時噴霧の分布(XA)より粒径の小さい側が小さなものとなる。これら2つの分布の間の面積分が噴射時に気化する噴霧分X0´[%]であり、100−X0´が気化せずに噴霧のまま滞留する噴霧分XB[%]である。
2)噴射噴霧の燃焼室への直接噴き入り:
図10上段左より2番目の特性において、大きな山(太実線参照)は気化せずに吸気ポート4に残留する噴霧の噴霧の分布であり、このうち燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧の分布を小さな山(細実線参照)で重ねて描いている。この小さな山の面積が燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XD[%]であり、XB−XDつまり大きな山と小さな山の間の面積分が吸気系に残留する噴霧分XC[%]である。
3)吸気系噴霧付着浮遊:
燃焼室5へと直接噴き入れられず吸気ポート(吸気系)に残留する噴霧のうち一部は噴霧のまま浮遊し(気化する分を含む)、残りは吸気系の壁面(ポート壁4aと吸気弁壁15a)とに付着する。粒径の小さい噴霧ほど噴霧のまま浮遊しやすいので、図10上段右から2番目の特性において吸気系の壁面に付着する噴霧の分布(細実線参照)は吸気系に残留する噴霧の分布(太実線参照)より粒径の小さい側が小さなものとなる。これら2つの分布の間の面積分が吸気系に噴霧のまま浮遊する分(吸気系での気中浮遊割合)X0´´[%]であり、上記吸気系に残留する噴霧分XBからこの浮遊分X0´´を差し引いた値が吸気系付着分XE(吸気系付着割合)[%]となる。
4)燃焼室噴霧付着浮遊:
燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧のうち一部は噴霧のまま燃焼室5内を浮遊し(気化する分を含む)、残りは燃焼室壁及びシリンダ面壁52に付着する。粒径の小さい噴霧ほど噴霧のまま浮遊しやすいので、図10下段右から2番目の特性において燃焼室壁及びシリンダ面壁52に付着する噴霧の分布(細実線参照)は燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧の分布(太実線参照)より粒径の小さい側が小さなものとなる。これら2つの分布の間の面積分が燃焼室5内で噴霧のまま浮遊する分(燃焼室5での気中浮遊割合)X0´´´[%]であり、上記燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDからこの浮遊分X0´´´を差し引いた値が燃焼室壁付着分(燃焼室付着割合)XF[%]である。
5)吸気系噴霧付着場所:
図10上段右端の特性において、大きな山(太実線参照)は上記の吸気系付着分のXEの分布、小さな山(細実線参照)は吸気弁壁15aに付着する噴霧分の分布である。この小さな山の面積が吸気弁壁15aに付着する噴霧分X1[%]であり、上記吸気系付着分XEからこの吸気弁壁付着分X1を差し引いた値がポート壁付着分X2[%]である。
6)燃焼室噴霧付着場所:
図10下段右端の特性において、大きな山(太実線参照)は上記の燃焼室付着分XFの分布、小さな山(細実線参照)は燃焼室壁に付着する噴霧の分布である。この小さな山の面積が燃焼室壁付着分X3[%]であり、上記燃焼室付着分XFからこの燃焼室壁付着分X3を差し引いた値がシリンダ面壁付着分X4[%]である。
このように、吸気系残留分XB、XC、直接噴き入れられる噴霧分XD、吸気系付着分XE、燃焼室壁付着分XF、噴射時気化分X0´、浮遊分X0´´、X0´´´は同じ単位[%]であるが、XAだけはこれらと相違して分布そのものを表している。
以下、上記の噴射時噴霧の粒径分布XA、各分岐分XB、XC、XD、XF、X0´、X0´´、X0´´´の算出方法を個別に詳述する。
〈2−1〉噴霧分岐のモデル同定(気化)
1)XA;噴射時噴霧の粒径分布:
噴射時噴霧の質量割合についての粒径分布XAは噴射弁21の噴霧計測結果を用いる。
噴霧の粒径区分は、等間隔(例えば10μm毎)としてもよいし(図11(a)参照)、2n毎に区分してもよい(図11(b)参照)。粒径区分の数は多いほど精度がよくなるが、その反面でメモリ容量や演算時間が大きくなるので、CPUの能力に合わせて設計すればよい。
簡単には粒径区分を一つだけとしてもかまわない。これは、噴射時の総噴霧の平均の粒径を用いることを意味する。この場合、噴霧の蒸発割合や滞留割合を近似的に粒径から求めることとなり、粒径が似通った場合は実験値で蒸発、滞留特性を近似できる。ただし、噴霧の粒径分布が大きく変わる噴射法、噴射弁では合わないこととなるので、このときには噴霧の粒径分布を用いればよい。
2)X0´;噴射時気化分:
噴射時噴霧の気化については図12のように噴霧の質量をm、表面積をA、直径をD、噴霧の気化量をΔm、また、吸気ポート4の流速をV、吸気ポート4の温度をT、吸気ポート4の圧力(この圧力は大気圧より低くなり、大気圧を基準とすれば負圧となる。)をPとすると、気化率X0´と気化量Δmとは次式で表される。
X0´=Δm/m …(16)
Δm=f(V、T、P)×A×t…(17)
ここで、(17)式のf(V、T、P)は単位表面積、単位時間当たりの蒸発量(この値を以下「気化特性」という。)で、気化特性f(V、T、P)は流速V、温度T、圧力Pの関数であることを表している。(17)式のtは単位時間である。
この場合、A=D2×K1#、m=D3×K2#(K1#、K2#は定数)であるから、これらを(16)、(17)式に代入し、さらにΔmを消去すると、次式が得られる。
X0´=ΣXAk×f(V、T、P)×A×t×KA#/Dk…(18)
ここで、XAk はk番目の区分の粒径に対する質量割合、Dkはk番目の区分の粒径で、Σは粒径の全区分(kについて1から最大区分数まで)にわたって総和することを表している。KA#はガス流速Vの表面積での有効利用率(1より小さい定数)である。
上記の気化特性f(T、V、P)は温度Tと流速Vとから図13を内容とする特性のマップを検索して求める。図13に示したように気化特性f(V、T、P)は温度Tが高くなるほど、また流速Vが大きくなるほど大きくなる。図13では横軸の温度を−40℃から300℃まで広く採っているが、実際には「温度範囲」と記した領域で噴霧の気化、蒸発が行われる。
横軸の第2項の(Pa−P)/Pa×#KPTは、圧力Pによる温度補正分である。これは、圧力Pによる揮発性差、つまり低負荷時のように圧力Pが大気圧Paより低いときのほうが高負荷時のように圧力Pが低負荷時より高いときより蒸発量が多くなることを考慮したものである。
ところで、気化特性f(T、V、P)のパラメータのうち流速Vには、噴霧の貫通力による相対流速分と吸気の燃焼室吸入による流速分とがあるので、噴射時気化分X0´を噴霧貫通分と吸気気流分の合計として、つまり上記(18)式に代えて次式により求める。
X0´=ΣXAk×f(V1、T、P)×A×t1×KA#/Dk
+ΣXAk×f(V2、T、P)×A×t2×KA#/Dk…(19)
ただし、V1;噴霧貫通力による噴霧の速度、
t1;噴霧の貫通に要する時間、
V2;吸気気流の速度、
t2;吸気気流に噴霧が暴露されている時間、
ここで、噴霧貫通力による噴霧の速度V1と噴霧の貫通に要する時間t1とは、噴射弁21に作用する燃圧Pfが決まれば一定値である。これらV1、t1の値は噴射弁21の仕様が決まれば定まる。燃圧Pfを可変に制御するエンジンでは、燃圧PfによりV1、t1が変化するので、燃圧Pfの関数として設定する。
燃焼室5への空気の吸入は間欠的なので、吸気気流の速度(吸気ポート4の流速)V2はエンジン回転速度Neに比例する、つまりV2は次式により計算できる。
V2=Ne×#KV …(20)
ただし、#KV;流速指数、
(20)式の流速指数#KVは流路面積(吸気ポート4の流路面積)を気筒容積で割った値により定まる値である。この指数には単位合わせの分も含める。ここで、流路面積、気筒容積は図面より求めることができる。
噴霧の流速への曝され度合いを表す吸気気流の暴露時間t2は噴射タイミングI/Tとエンジン回転速度Neの影響を受けるので、噴射タイミングI/Tと回転速度Neから図14を内容とするマップを検索することにより求める。
気化特性f(T、V、P)のパラメータのうち温度Tには吸気温度を用いる。ただし、残留ガス(外部EGRガスや内部EGRガス)を考慮するときにはこの残留ガスと混合したガス温度を用いる。このガス温度は吸気温度や水温から推定する。簡単には吸気温度と水温の単純平均値や加重平均値をガス温度の推定値とすればよい。吸気温度は吸気温度センサ44により、水温は水温センサ45により検出する。気化熱は無視し適合でカバーする。気化特性f(T、V、P)のパラメータのうち圧力Pには吸気圧力を用いる。吸気圧力は吸気コレクタ2に設ける圧力センサ46により検出する。
3)XB;吸気ポートに残留する噴霧分:
このようにして噴射時気化分X0´が求まると、噴霧のまま吸気ポート4に残留する噴霧分XBは次式で与えられる。
XB=XA−X0´…(21)
〈2−2〉噴霧分岐のモデル同定(直接噴き入り)
1)XD;燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分:
噴射弁21からの噴霧は、排気行程中の噴射であれば吸気弁15が全閉しているので、吸気弁15、吸気ポート4にしか直撃しないのであるが、吸気弁傘裏部を狙って吸気行程で噴射するときには、図15のようにその一部が吸気弁15または吸気ポートに衝突することなく吸気弁15と弁シートの隙間をスッポ抜けて燃焼室5へと直接噴き入れられる。この直接噴き入り率をKXDとし、燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを次式により算出する。
XD=XB×KXD…(22)
直接噴き入り率KXDは噴射タイミングのほか、噴射方向(噴射弁21の向きと吸気弁15の向き)の影響も受ける。そこで、噴射タイミングI/Tと噴射弁21の軸と吸気弁15の軸との挟み角βとから図16を内容とするマップを検索することにより直接噴き入り率KXDを求める。挟み角βは図面からわかる。図16の特性は適合により求める。
また、吸気弁作動角可変機構を備えるエンジンでは吸気弁の弁リフト、プロフィールも直接噴き入り率KXDに影響するので、当該エンジンでは次式により直接噴き入り率KXDを算出する。
KXD=KXD0×H/H0…(23)
ただし、H;吸気弁の最大リフト、
H0;基準最大リフト、
(23)式のH0は吸気弁作動角可変機構を働かせないときの吸気弁の最大リフトである。吸気弁作動角可変機構を働かせるときには、通常、吸気弁の最大リフトHがH0より小さくなるので、その分直接噴き入り率が減る。そこで(23)式によりその分の減量補正を行わせるものである。
2)XC;吸気系残留噴霧分:
このようにして直接噴き入れられる噴霧分XDが求まると、吸気系に残留する噴霧分XCは次式で与えられる。
XC=XB−XD…(24)
〈2−3〉噴霧分岐のモデル同定(浮遊)
1)X0´´;吸気系での浮遊分:
吸気ポート4に噴霧がくまなく分布し、図17のように各噴霧は重力加速度により空気に抗して落下するものと仮定する。こうした自然落下モデルでは、落下してポート壁4aに到達しない噴霧は浮遊し、ポート壁4aに到達した噴霧はポート壁4aに付着するとみなす。
ただし、自然落下では噴霧の落下速度は、速度あるいは速度の2乗の比例した空気抵抗がある場合を含めて粒径D(∝質量)に関係しないのであるが、本実施形態では噴霧の落下速度Vは粒径Dの関数であり、図18のように粒径Dが大きいほど大きくなるものとみなしている。
噴霧の落下距離Lは、この落下速度Vに噴霧の浮遊時間(あるいは到達制限時間)tを掛けた値である。図18に壁面までの最大距離#L(ポート高さ#LP)を採ると、噴霧の落下距離Lがこの最大距離#L以上となる噴霧は全てポート壁4aに付着するので、粒径毎の浮遊分の特性は図18のように右下がりの特性となり、粒径毎の浮遊分が0以上の面積分を粒径について総和した値が吸気系での浮遊分X0´´になる。これは次式により求めることができる。
X0´´=Σ(1−Lk/#LP)…(25)
ここで、Lkは粒径区分kにおける噴霧の到達距離である。このLkは、
Lk=Vk×tp…(26)
の式により表されるので(Vkは粒径区分kにおける噴霧の落下速度、tpは浮遊時間(あるいは到達制限時間)としての噴射タイミングI/Tより圧縮行程開始までの時間)、これを(25)式に代入すると、次式が得られる。
X0´´=Σ(1−Vk×tp/#LP)…(27)
この結果、粒径Dをパラメータとする小区分毎の噴霧の落下速度Vのテーブル(図18参照)を作成しておき、粒径区分kが1よりD0となるまで、(27)式により総和すれば吸気系での浮遊分X0´´を求めることができる。D0は図18において粒径毎の浮遊分が0となるときの粒径である。tpはエンジンコントローラ31内蔵のタイマにより計測させればよい。#LPは一定値であり、図面より定まる。
2)X0´´´;燃焼室での浮遊分:
考え方は吸気系での浮遊分X0´´と同様である。すなわち、燃焼室5内に噴霧がくまなく分布し、図17のように各噴霧は重力加速度により空気に抗して落下するものと仮定する。こうした自然落下モデルでは、落下してピストン冠面6aに到達しない噴霧は浮遊し、ピストン冠面6aに到達した噴霧は燃焼室(燃焼室壁やシリンダ面壁52)に付着するとみなす。
また、噴霧の落下速度Vは粒径Dの関数であり、図18のように粒径Dが大きいほど大きくなるものとみなす。
噴霧の落下距離Lは、この落下速度Vに噴霧の浮遊時間(あるいは到達制限時間)tを掛けた値である。図18に壁面までの最大距離#Lである燃焼室高さ#LC(例えばピストン中点で代表させる)を採ると、噴霧の落下距離Lがこの燃焼室高さ#LC以上となる燃料噴霧は全て燃焼室に付着するので、粒径毎の浮遊分の特性は図18のように右下がりの特性となり、粒径毎の浮遊分が0以上の面積分を粒径について総和した値が燃焼室での浮遊分X0´´´になる。これは次式により求めることができる。
X0´´´=Σ(1−Lk/#LC)…(28)
ここで、Lkは粒径区分kにおける噴霧の到達距離であり、このLkは、
Lk=Vk×tc…(29)
の式により表されるので(Vkは粒径区分kにおける噴霧の落下速度、tcは浮遊時間(あるいは到達制限時間)としての噴射タイミングI/T(または吸気行程開始)より圧縮行程終了(または燃焼開始)までの時間)、これを(28)式に代入すると、次式が得られる。
X0´´´=Σ(1−Vk×tc/#LC)…(30)
この結果、粒径Dをパラメータとする小区分毎の噴霧の落下速度Vのテーブル(図18参照)を作成しておき、粒径区分が1よりD0となるまで、(30)式により総和すれば燃焼室での浮遊分X0´´´を求めることができる。D0は図18において粒径毎の浮遊分が0となるときの粒径である。tcエンジンコントローラ31内蔵のタイマにより計測させればよい。#LCは一定値であり、図面より定まる。
3)XE、XF;吸気系、燃焼室に付着する分:
このようにして吸気系での浮遊分X0´´、燃焼室での浮遊分X0´´´が求まると、吸気系付着分XE、燃焼室付着分XFは次式で与えられる。
XE=XC−X0´´ …(31)
XF=XD−X0´´´…(32)
吸気弁作動角可変機構を備えるエンジンでは、直接噴き入れられる噴霧の2次微粒化が促進されるため、直接噴き入れられる噴霧分XDと燃焼室での浮遊分X0´´´の補正を行う。ここで、2次微粒化とは、吸気弁作動角可変機構が働くとき、吸気弁の最大リフトが小さくなって吸気弁と弁シートの隙間を流れる気流が、吸気弁作動角可変機構が働かないときより高速となり、そのぶん直接噴き入れられる噴霧の微粒化が促進されることをいう。
この2次微粒化によって粒径毎の浮遊分及び粒径毎の燃焼室での付着分の各分布が、図10下段の右から2番目の特性に示したように実線から破線の特性へと移行する。この破線特性の各分布とするには、直接噴き入れられる噴霧分XD及び燃焼室での浮遊分X0´´´の各分布を粒径が小さくなる方向に2格子ずつずらすなどして補正し、この新たな補正後の各分布を用いて前述のようにして直接噴き入れられる噴霧分XD、燃焼室内での浮遊分X0´´´を求め、これら求めたXD、X0´´´を上記(32)式に用いる。
〈2−4〉噴霧分岐のモデル同定(付着部位)
1)X1、X2;吸気弁壁付着分、ポート壁付着分:
吸気系付着分XEの分布は図19において下側の太実線であり、このうち吸気弁壁付着分X1の分布は図19において下側の破線のようになり、2つの分布の間がポート壁付着分X2の分布である。従って、吸気系付着分XEを、吸気弁直撃率#DVRに応じて次式のように吸気弁壁付着分X1と、ポート壁付着分X2とに割り振る。
X1=XE×KX1…(33)
X2=XE−X1 …(34)
ただし、KX1;吸気弁直撃率係数、
ここで、吸気弁直撃率係数KX1は吸気弁直撃率#DVRと圧力Pとから図20を内容とするマップを検索することにより求める。図20に示したように吸気弁直撃率係数KX1は吸気弁直撃率#DVRが大きくなるほど大きくなる。また、吸気弁直撃率#DVRが同じでも圧力Pが小さくなる低負荷時のほうが吸気弁直撃率係数KX1の値が小さくなる。図20において「負圧無」とは圧力Pが大気圧に近づく高負荷時のこと、「高負圧」とは圧力Pが大気圧より離れて小さくなる低負荷時のことである。吸気弁直撃率#DVRは、噴射弁21からの噴霧が吸気弁15に衝突する割合のことで、吸気ポート4と噴射弁噴霧の図面から算出できる。
2)X3、X4;燃焼室壁付着分、シリンダ面壁付着分:
燃焼室壁、シリンダ面壁52に付着する噴霧の分布を図19に重ねて示す。燃焼室付着分XFを、割り振り率KX4で次式のように燃焼室壁付着分X3と、シリンダ面壁付着分X4とに割り振る。
X4=XF×KX4…(35)
X3=XF−X4 …(36)
ここで、噴霧流入のレイアウトによりシリンダ付着指標を定め、このシリンダ付着指標から図21を内容とするテーブルを検索して割り振り率KX4を求める。ここで、シリンダ指標は噴射弁21からの噴霧が吸気弁15と弁シートの隙間を抜けて燃焼室5内に入って各部壁に付着する燃料のうち、シリンダ壁に向かう割合を表すもので、例えば噴霧形状を円錐として吸気弁15と弁シートの隙間を抜ける割合をB、Bのうちシリンダ壁に向かう割合をAとすれば、A/Bをシリンダ指標として用いればよい。図21のように、割り振り率KX4はシリンダ付着指標が大きくなるほど大きくなる値である。
シリンダ付着指標は流れのシミュレーションモデルや、単体試験での部位別壁流回収実験等の結果から設定することができる。
このようにして、図9に示した噴射弁噴霧の分岐モデルによれば、噴射弁21からの噴射時噴霧の各分岐割合X0、X1、X2、X3、X4を算出することができ、これらは従来の方法である温度、回転速度、負荷信号等の運転条件から直接マップやテーブルを使って求めるものと比べて、物理モデルを促進しているので、個別のエンジン実験による適合をほとんど無くすことができており、適合工数の低減や適合期間の短縮が可能となっている。
また実施形態には示してないが、噴霧の粒径情報を持っているので、それを燃焼のプロセスまで延長して算出させれば、燃焼の効率、排気性能まで予測することに繋がる可能性を持っている。
次に図4に示した残りの分岐割合である壁流の分岐割合Y0〜Y2,Z0〜Z2、V0〜V1,W0〜W2の算出について項分け説明する。
〈3〉壁流の蒸発、持ち去りのモデル同定
ここではまず壁流を物理モデルとするに際しての基本的な考え方を示す。
1)壁流の蒸発:
図22のように壁流の蒸発モデルを考える。すなわち、蒸発表面積Aは波の高さと比例し、また波の高さは付着量mと比例すると仮定すると、次式が成立する。
A=m×K# …(37)
ただし、K#;定数、
蒸発量Δmは次式により与えられる。
Δm=f(T、V、P)×A …(38)
(38)式のf(T、V、P)は壁流の蒸発特性である。この壁流の蒸発は噴霧の蒸発と同様であるから、壁流の蒸発特性としては図13に示した気化特性をそのまま流用している。ただし、(38)式は上記(17)式と比較して右辺に単位時間tがない。つまり、ここでのΔmは単位時間当たりで考えている。
(37)、(38)式を用いると、壁流の蒸発率yは次式により与えられる。
y=Δm/m=f(T、V、P)×K#…(39)
この結果、壁流の蒸発量は付着量と比例する。
2)壁流の持ち去り(噴霧再飛散、壁流移動):
図23のように壁流の再飛散と壁流の移動のモデルを考える。すなわち、壁流の再飛散量Δm´も波の高さと比例し、波の高さは付着量mと比例すると仮定すると、壁流の飛散率y1、2は次式により与えられる。
y1、2=Δm´/m=f(T、V、粘度、表面張力)×K#…(40)
(40)式のf(T、V、粘度、表面張力)は再飛散率基本値で、その特性を図24に示す。使用燃料であるガソリンが決まると粘度と表面張力が定まり、その使用燃料に対して適合することにより、図24に示したように温度Tと流速Vに対する特性が得られる。再飛散率基本値は温度Tが高くなるほど、また流速Vが大きくなるほど大きくなる値である。
これより壁流の再飛散量も付着量と比例すると仮定する。
同じく図23において壁流は流速Vに押し流されて移動し、その壁流の移動速度が壁流厚さHの影響を受けないと仮定すると、壁流の移動量Δm´´、壁流厚さHは次式により与えられる。
Δm´´=H×Vw …(41)
H=m×K# …(42)
ただし、Vw;壁流の移動速度、
(41)式の壁流の移動速度Vwは、
Vw=f(V、T、粘度) …(43)
である。ここで、(43)式のf(V、T、粘度)は移動率基本値で、その特性を図25に示す。使用燃料であるガソリンが決まると粘度が定まり、その使用燃料に対して適合することにより、図25に示したように温度Tと流速Vに対する特性が得られる。移動率基本値は温度Tが高くなるほど、また流速Vが大きくなるほど大きくなる値である。
(41)〜(43)式を用いると、壁流の移動率y1、2´は次式により与えられる。
y1、2´=Δm/m=f(V、T、粘度)×K# …(44)
これより壁流の移動量も付着量と比例すると仮定する。
このように、壁流の蒸発、持ち去りはすべて付着量に比例するとみなして次に述べる壁流モデルを構築する。
〈4−1〉蒸発、持ち去りの各部モデルへの適用
1)吸気弁壁流への適用:
図26は図22、図23の壁流モデルを吸気弁15に形成される壁流に適用した図である。この吸気弁壁流からの蒸発燃焼分、吸気弁壁流からの燃焼室壁への分岐分、吸気弁壁流からのシリンダ面壁52への分岐分をそれぞれ次のように算出する。
蒸発燃焼分 ;Y0=Δm/m
=f(図13)×#KWVV …(45)
燃焼室壁分岐分 ;Y1=(Δm´+Δm´´)/m
=f(図24)×#KVC+f(図25)×#KVT
…(46)
シリンダ面壁分岐分;Y2=(Δm´+Δm´´)/m
=f(図24)×(1−#KVC)
+f(図25)(1−×#KVT)…(47)
ここで、#KWVVは吸気弁壁流の蒸発係数、#KVCは吸気弁壁流の再飛散係数、#KVTは吸気弁壁流の移動係数である。
2)吸気ポート壁流への適用:
図27は図22、図23の壁流モデルを吸気ポートに形成される壁流に適用した図である。この吸気ポート壁流からの蒸発燃焼分、吸気ポート壁流からの燃焼室壁への分岐分、吸気ポート壁流からのシリンダ面壁52への分岐分をそれぞれ次のように算出する。
蒸発燃焼分 ;Z0=Δm/m
=f(図13)×#KWVP …(48)
燃焼室壁分岐分 ;Z1=(Δm´+Δm´´)/m
=f(図24)×#KHC+f(図25)×#KHT
…(49)
シリンダ面壁分岐分;Z2=(Δm´+Δm´´)/m
=f(図24)×(1−#KHC)
+f(図25)(1−×#KHT)…(50)
ここで、#KWVPは吸気ポート壁流の蒸発係数、#KHCは吸気ポート壁流の再飛散係数、#KHTは吸気ポート壁流の移動係数である。
上記(45)〜(50)式におけるf(図13)は図13に示した気化特性f(V、T、P)のこと、f(図24)は図24に示した再飛散率基本値f(T、V、粘度、表面張力)のこと、f(図25)は図25に示した移動率基本値f(V、T、粘度)のことである。
この場合に、f(図13)、f(図24)、f(図25)を求めるのに用いる温度T、流速V、圧力Pは次のように推定または算出する。
まず温度については次の通りである。吸気弁壁流への適用時の温度は吸気弁壁15aの温度、吸気ポート壁流への適用時の温度はポート壁4aの温度である。吸気弁壁15aの温度としては、水温と運転条件から公知の方法(特開平3−134237号公報参照)により演算したものを用いればよい。ポート壁4aの温度としては水温または水温より所定値(例えば15℃程度)低い温度を用いればよい。
流速Vと圧力Pについては、吸気弁壁流への適用時も吸気ポート壁流への適用時も同じである。流速Vは気化特性のところで説明した上記(20)式を用いて算出すればよい。2次微粒化を考慮するときには流路面積(吸気ポート4の流路面積)を小さい側に補正して用いる。圧力Pは圧力センサ46により検出する。
上記の蒸発係数(#KWVVと#KWVP)、再飛散係数(#KVCと#KHC)、移動係数(#KVTと#KHT)は壁流(吸気弁壁流と吸気ポート壁流)の濡れ面積や壁流が移動する長さの関数となる適合項である。
このように吸気弁壁流からの蒸発分や持ち去り分(Y0、Y1、Y2)と吸気ポート壁流からの蒸発分や持ち去り分(Z0、Z1、Z2)とは個別に算出するが、式は同じであり入力するパラメータ(温度、流速、圧力)が異なるだけであり、これも適合工数の時間短縮に寄与するものである。
〈4−2〉蒸発、持ち去りの各部モデルへの適用
1)燃焼室壁流への適用:
図28は図22の壁流モデルを燃焼室(シリンダ面壁を除く)に形成される壁流に適用した図である。この燃焼室壁流からの気化燃焼分、燃焼室壁流からの気化未燃排出分をそれぞれ次のように算出する。
気化燃焼分 ;V0=f(図13)×#KCV…(51)
気化未燃排出分;V1=f(図13)×#KCL…(52)
ここで、#KCVは燃焼室壁流の蒸発係数、#KCVは燃焼室壁流の蒸発係数である。
2)シリンダ面壁流への適用:
図29は図22、図23の壁流モデルをシリンダ面壁に形成される壁流に適用した図である。このシリンダ面壁流からの気化燃焼分、シリンダ面壁流からの気化未燃排出分、シリンダ面壁流からのオイル混入分をそれぞれ次のように算出する。
気化燃焼分 ;W0=f(図13)×#KBV…(53)
気化未燃排出分;W1=f(図13)×#KBL…(54)
オイル混入分 ;W2=f(図30)×#KBO…(55)
ここで、#KBVはシリンダ面壁流の蒸発係数、#KBLはシリンダ面壁流の蒸発係数、#KBOはシリンダ面壁流のオイル混入係数である。
上記(51)〜(55)式におけるf(図13)は図13に示した気化特性f(V、T、P)のこと、f(図30)は図30に示したオイル混入率基本値f(Ne、Tp)のことである。図30のようにオイル混入率基本値は基本噴射量Tpが同じであればエンジン回転速度が大きくなるほど小さくなり、エンジン回転速度が同じであれば基本噴射量Tpが大きくなるほど大きくなる値である。
ここで、(51)、(53)式のf(図13)を求めるのに用いる気化燃焼分の区間での温度T、流速V、圧力Pと、(52)、(54)式のf(図13)を求めるのに用いる気化未燃排出分の区間での温度T、流速V、圧力Pとは次のように推定または算出する。
(A)温度;1燃焼サイクル中、温度は図31に示すように変化するので、図31に示した気化燃焼分の区間と、気化未燃排出分の区間とに分けて推定または算出する。各区間では当該区間のガス温度と壁温(燃焼室壁の温度またはシリンダ面壁52の温度)の推定値との重み付け合成温度を用いる。
簡単には、重み付け合成温度を各区間で平均するとき、その平均温度は運転条件(負荷と回転速度)により変化するので、負荷と回転速度をパラメータとする平均温度のマップを実験適合して作成しておき、そのマップを検索することにより各区間での平均温度を算出する。
(B)圧力;1燃焼サイクル中、圧力は図31に示すように変化するので、図31に示した気化燃焼分の区間と、気化未燃排出分の区間とに分けて、各区間での圧力を平均した平均圧力を用いる。この平均圧力も運転条件(負荷と回転速度)により変化するので、負荷と回転速度をパラメータとする平均圧力のマップを実験適合して作成しておき、そのマップを検索することにより各区間での平均圧力を算出する。
(c)流速;1燃焼サイクル中、流速は図31に示すように変化するので、上記(20)式の吸気気流V2と比例しかつ減衰するとみなし、各区間で平均した平均流速Vを次のように算出する。
気化燃焼分の区間 ;平均流速V =V2×#KIV…(56)
気化未燃排出分の区間;平均流速Vc=V2×#KIL…(57)
ここで、#KIV、#KILは定数である。
このように、燃焼室壁流からの気化燃焼分、気化未燃排出分(V0、V1)とシリンダ面壁流からの気化燃焼分、気化未燃排出分(W0、W1)とは前記の吸気弁壁流からの蒸発分や持ち去り分(Y0、Y1、Y2)と吸気ポート壁流からの蒸発分や持ち去り分(Z0、Z1、Z2)と同じく、個別に算出するが、式は同じであり入力するパラメータ(温度、流速、圧力)が異なるだけであり、これも適合工数の時間短縮に寄与するものである。
このようにして本実施形態によれば、噴射時噴霧の各分岐分(XB、XC、XD、XF、X0´、X0´´、X0´´´)及び壁流の各分岐分(Y0、Y1、Y2、Z0、Z1、Z2、V0、V1、W0、W1、W2)を算出する際に、いずれもエンジンの設計図面や噴射弁21などの部品の仕様を多用しており、従って、1回はマップやテーブル特性を実機実験する必要があるものの、その後はマップやテーブル特性はエンジン機種が変わってもほとんど変える必要がない。
また、噴霧の拡散燃焼による燃焼の素質(未燃分差)からくる要求空燃比を与えるところまで結び付けられるので(上記(12a)、(12b)式参照)、各種の空燃比の増量(リッチ化)の制御を統合化できることから、(13)、(14)式のところで説明したように、従来必要であった各種の増量ロジック(水温増量、始動後増量、始動増量、全開増量等)が不要となって制御が簡素化され、適合も廃止または簡素化できるので、これも適合工数や期間を削減することに寄与する。また、噴霧の粒径を燃焼まで結びつけることで、不正燃焼によるHCやスモークの発生の推定技術に結び付けることが可能となる。
図32、図33は第2実施形態の噴霧のモデルである。
噴霧の速度を粒径によらず一定値#VF(粒径で決定する)であるとし、噴霧は円柱状の塊となって気流中を移動すると仮定する。この円柱状の噴霧塊81の先端(図ではTOPで示す)は時刻#t0に出発し、噴霧塊81の後端(図ではENDで示す)は時刻#t1に出発するものとすると、噴射からの時間tを横軸に採ったとき、噴霧塊81の先端の噴霧の飛距離(t−#t0)×#VF、噴霧塊81の後端の噴霧の飛距離(t−#t1)×#VFは図33下段のように右上がりの平行な2本の直線となる。
この場合に、噴霧塊先端の噴霧の飛距離が、噴射弁21の噴孔から燃焼室5内の噴射弁21から遠い側の壁面までの距離である飛距離限界♯LM1(図32参照)と一致する時刻#t3で噴霧塊先端の噴霧は壁面に到達し、気流中でなくなる。従って、噴霧塊81の燃焼室5における気流中に滞留する割合である気流中割合FC[%]といった概念を導入すると、この噴霧塊81の気流中割合FC[%]は噴霧先端の噴霧の飛距離が、噴射弁21から吸気ポート4出口までの距離#LM2(図32参照)と一致する#t4の時刻から直線的に増加し、時刻#t3からは一定値となる。この後、噴霧塊後端の噴霧の飛距離が上記噴射弁21から吸気ポート4出口までの距離#LM2と一致する#t6の時刻を過ぎると燃焼室5にはこれ以上噴霧塊が流入しなくなるため、気流中割合FCは時刻#t6より直線的に減少する。そして、噴霧塊後端の噴霧の飛距離が上記飛距離限界#LM1と一致する#t5の時刻を過ぎると噴霧塊そのものが無くなるので、時刻#t5以上は噴霧塊81の気流中割合FCは0である。その結果、噴霧塊81の気流中割合FCの特性は図33下段の台形状となる。
なお、図33下段において噴霧塊81の気流中割合FCの最大値は100%未満となっている。すなわち、噴霧塊81の全てが燃焼室5内で気流中にあるとき(図32破線参照)、噴霧塊81の気流中割合FCは100%となるのであるが、図32に示すように噴霧塊81の全長が#LM1−♯LM2を超えるときには100%未満の値となるためである。以降の説明は、噴霧塊81の全長が#LM1−♯LM2を超える場合を前提としている。
こうして噴霧塊81の気流中割合FCを導入すると、上記(18)式を参考にして、吸気弁15が吸気ポート4出口に存在しないと仮定したときの噴霧の燃焼室5への進入分XG[%]を次式により表すことができる。
XG=Σ{100−f(V、T、P)×A×t×KA#/D}×FCj…(58)
ただし、f(V、T、P);気化特性、
(58)式は簡単には全体(100%)から燃焼室内で気化する分(f(V、T、P)×A×t×KA#/D)を差し引いた残りのうち燃焼室内における気流中割合FCに相当する分が燃焼室5内に噴霧のまま存在すると考える式である。
ここで、(58)式のFCj は、図33下段に示す気流中割合FCの特性を単位時間t毎に区切り、そのj番目(jは自然数)の区分に対する気流中割合のことである。Σは上記(18)式と相違して時間の全区分(時刻#t4が属する時間区分より時刻#t5が属する時間区分まで)にわたって総和することを表している。粒径Dは上記(18)式と相違して一定値である。残りのf(V、T、P)、A、t、KA#は上記(18)式と同じである。
(58)式の気化特性f(V、T、P)のパラメータのうち流速Vについては、第1実施形態と相違して噴霧速度#VFの吸気流速(VP−VG)に対する相対流速Vを用いる。ここで、吸気流速の変化を図33上段に示すと、吸気気流には、吸気弁15が開弁した瞬間からのオーバーラップ中の既燃ガスの吹き返し分と、その後のピストン下降による流速分とがある。
実際には吸気ポート4出口に吸気弁15が存在し、この吸気弁によって噴霧の燃焼室への流入が邪魔されるので、XGより少ない噴霧分が燃焼室に流入する。従って、燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XD[%]は次式により与えることができる。
XD=XG×#KXD2×#XI1…(59)
ただし、#KXD2;直接噴き入り率(1.0より小さい一定値)、
#XI1 ;噴霧密度の補正分(1.0より小さい一定値)、
そこで第2実施形態では次の手順で燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを算出する。
手順1(時々刻々の気流中割合算出);時々刻々の気流中割合FCを次式により算出する。
FC={(t−#t4)×#VFを#LM1に制限したもの
−(t−#t6)×#VFを#LM1に制限したもの}
/(#t6−#t4)×#VF…(60)
そして、このFCを単位時間t毎に区切ってその区分に1から増える番号を振り、時刻#t4が属する時間区分である1より時刻#t5が属する時間区分である最大値まで、時間区分の番号とその番号の時間区分でのFCとを対応づけてメモリに格納する。
手順2(吹き返し分流速算出);吸気気流のうち吹き返し分流速VGを次式により算出する。
時刻t3 ;VG=VGP …(61)
時刻t3以降;VG=VGn-1−#GG(VG≧0)…(62)
ただし、VGP;初期値(正の値)、
VGn-1;VGの前回値、
#GG;流速減少量(一定値)、
ここで、時刻t3は吸気弁開時の時刻である。(61)、(62)式より吹き返し分流速VGは時刻t3でステップ的にVGPだけ大きくなり、その後は所定時間毎に#GGずつ減少して0になる値である。なお、図33上段では吹き返し分流速VGは負の値であるが、(61)、(62)式により算出されるVGは正の値である。これは、噴霧は流速が正だろうと負だろうと、噴霧の気化に対しては同じ働きをするので、表しやすい正の値を採用したものである。(61)式の初期値VGPはPm/Pa(ただしPmは吸気圧力、Paは大気圧)から所定のテーブルを検索することにより求める。
手順3(ピストン下降分流速算出);吸気気流のうちピストン下降分流速VPを次式により算出する。
時刻t2以降;VP=VPP×Ne×KPV…(63)
ただし、VPP;ピストン下降速度
Ne ;エンジン回転速度
KPV;定数、
ここで、時刻t2は吸気上死点の時刻である。(63)式のピストン下降速度VPPは、t−t2をクランク角に換算した値からピストン位置テーブルを参照し、その近接2点間の値の傾きから算出する。定数KPVは気筒容積/流路面積×#K(定数)の式により算出する。
手順4(相対流速算出);相対流速Vを次式により算出する。
V=|VP−VG−#VF|…(64)
すなわち、吹き返し分流速VGとの相対流速は|−VG−#VF|=|VG+#VF|となり、ピストン下降分流速VPとの相対流速は|VP−#VF|となる。こうして求めた相対流速VもFCに合わせて単位時間t毎に区切ってその区分に1から増える番号を振り、時刻#t4が属する時間区分である1より時刻#t5が属する時間区分である最大値まで、時間区分の番号とその番号の時間区分での相対流速Vとを対応づけてメモリに格納する。
手順5(気化特性算出);こうして求めた時間区分毎の相対流速V1、V2、…、Vj、…と、温度T、圧力Pから図13に示した気化特性のマップを検索して時間区分毎の気化特性f(V、T、P)を算出する。
手順6(吸気系での浮遊分算出);こうして求めた時間区分毎の気化特性f(V1、T、P)、f(V2、T、P)…、f(Vj、T、P)、…と、同じく時間区分毎の気流中割合FC1、FC2、…、FCj、…とを用いて次式により吸気弁15が吸気ポート出口に存在しないと仮定したときの噴霧の燃焼室5への進入分XGを算出する。
XG=Σ{100−f(Vj、T、P)×t×KA#/D}×FCj…(65)
ここで、Vjはj番目の時間区分に対する相対流速、f(Vj、T、P)はj番目の時間区分に対する気化特性、FCjはj番目の時間区分に対する気流中割合である。また、Σの総和の範囲は時間の全区分(時刻#t4が属する時間区分より時刻#t5が属する時間区分まで)である。
手順7(燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分算出);こうして求めたXGと直接噴き入り率#KXD2、噴霧密度の補正分#XI1とから上記(59)式により燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを算出する。
このように第2実施形態(請求項4に記載の発明)によれば、燃料噴射弁21から噴射される噴霧が円柱状(先端から後端までつらなる塊状)で吸気系を経て燃焼室5内の気流中を飛行すると仮定し、噴霧速度VF#と噴霧の飛距離限界#LM1と燃料噴射弁21の噴孔から吸気ポート4出口までの距離#LM2とから定まるこの噴霧塊81の燃焼室5内における気流中割合FCが0を超える範囲(図33で時刻#t4から時刻#t5までの区間)を噴霧塊81が燃焼室5内における気流中にある区間とみなし、この噴霧塊の燃焼室5内における気流中割合FCに少なくとも基づいて燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XD(燃料噴射弁21から噴射される燃料量のうち吸気弁15の開弁時に吸気弁15または吸気ポート4に衝突することなく燃焼室5へと直接噴き入れられる燃料分)を算出するモデルを用いて燃料噴射弁21からの燃料噴射量を算出するので、上記(60)、(61)、(62)、(63)、(64)、(65)、(59)式で示したように簡単なモデル式で燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを算出することができ、メモリ容量や計算時間を短縮することができる。また、レイアウトの変更で燃料噴射弁21の位置が変化したときには、変更後の燃料噴射弁の位置に合わせて飛距離限界#LM1、燃料噴射弁21の噴孔から吸気ポート4出口までの距離#LM2を変えるだけで足り、再度の適合実験は不要である。
第2実施形態(請求項15に記載の発明)によれば、燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを噴霧塊が燃焼室5内における気流中にある区間での噴霧の速度VF#と吸気流速(VP−VG)との差の絶対値である相対流速Vに基づいても算出するので(上記(64)式参照)、噴霧の速度VF#または吸気流速を用いる場合よりもさらに燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを精度よく算出できる。
第2実施形態(請求項11に記載の発明)によれば吸気気流の速度は、吸気弁15が開いているときのサイクル位置で定まる吸気系または燃焼室内の吸気流速(VP−VG)であるので、吸気気流を精度よく算出できる。
第2実施形態(請求項13に記載)の発明によれば、ピストン下降分流速VPは上記(63)式に示したようにピストン下降速度VPPに応じた値であるので、ピストン下降速度(ピストン位置の微分値)という、クランク角とピストンストロークとコンロッド長さで代表されるエンジンの仕様から決まる特性を用いることができるので、その適合は簡素である。
第2実施形態(請求項14に記載の発明)によれば、ピストン下降分流速VPを、ピストン下降速度VPP、エンジン回転速度Ne及びエンジンの気筒容積と前記吸気系の流路面積の比から求めるので、エンジンの気筒容積と吸気系の流路面積の比をもエンジンの仕様から推定することができ、エンジン機種毎の適合を不要とするのに寄与する。
噴霧の速度VF#を粒径で決定するようにしていなければ、噴射時噴霧の粒径(燃料噴射弁21の素質)が異なる燃料噴射弁への変更により燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDが異なることになる場合に再度の実験適合が必要となるが、第2実施形態(請求項16に記載の発明)によれば、噴霧の速度VF#を粒径で決定するので、このように噴射時噴霧の粒径が異なる燃料噴射弁への変更により燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDが異なることになっても、変更後の燃料噴射弁に合わせて粒径を変えるだけでよく、再度の実験適合を不要とすることができる。
図34、図35は第3実施形態である。
第2実施形態では、直接噴き入り率を簡単に一定値(#KXD2)と置いたが、第3実施形態はこれをモデルにより与えるものである。すなわち、直接噴き入り率は、噴霧方向からみた吸気弁15と弁シートの隙間面積(図35参照)と吸気弁15が閉じた状態での吸気ポート4の断面積との比に等しい。この面積比Ksを、ここでは次のように近似する。
Ks≒x/Dp…(66)
ただし、Dp;吸気ポート4の直径、
ここで、(66)式のxは図35に示したように吸気弁15と弁シートの隙間のうち径方向の最大幅である。この最大幅xは図34のように噴射形状が円錐状となるとみなしたとき、次式により与えることができる。
x=w×l/(l+h)=(Lv×Kw×l)/(l+Lv×Kh)…(67)
w=Lv×sin(β+α)/cosβ=Lv×Kw …(68)
h=Lv×cosα/cosβ=Lv×Kh …(69)
ただし、β ;吸気弁15と噴射弁21の挟む角、
γ ;噴射角、
l ;噴射弁21から吸気ポート4出口までの距離、
Lv;吸気弁15の瞬時リフト、
上記(66)〜(69)式において、吸気弁15の瞬時リフト(時々刻々のリフトのこと)Lvはクランク角の関数であり、エンジンの仕様により分かっている。また、残りのβ、γ、lは全て図面より求めることができる固定値である。従って、面積比Ksは結局、次式により表される。
Ks=(Lv×Kw×l)/(l+Lv×Kh)/Dp…(70)
=f1(Lv)…(71)
この面積比Ksを求めるため瞬時リフトLvを所定クランク角毎に区切ってその区分に1から増える番号を振り、吸気弁開時期が属するクランク角区分である1より吸気弁閉時期が属するクランク角区分である最大まで、クランク角区分の番号とその番号のクランク角区分での瞬時リフトとを対応づけてメモリに格納しておく。
また、第2実施形態では、噴霧密度の補正分を簡単に一定値(#XI1)と置いたが、第3実施形態ではこれを吸気弁15の最大リフトHの関数として与えるものである。すなわち、噴射弁21から噴射される噴霧は、円錐状の噴霧が全て均等な密度を有するものでなく、図36に示したように噴霧密度の分布を有する。このため、吸気弁と弁シートの隙間面積が同じであっても、噴霧密度の高い噴霧が通過するときのほうが、噴霧密度の低い噴霧が通過するときより、燃焼室5へと流入する噴霧が多くなる。従って、この噴霧密度の分布をどう評価するかであるが、吸気弁15の最大リフトHが大きくなるほど直接噴き入り率が大きくなることを考えると、結局のところ、噴霧密度の補正分XI2を図37のように吸気弁15の最大リフトHの関数として表すことができる。
そこで第3実施形態では第2実施形態の手順7に代えて、次の手順で燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを算出する。
手順7(面積比算出);メモリに格納しているクランク角区分毎の瞬時リフトLv1、Lv2、…、Lvi、…からクランク角区分毎の面積比を算出する。
手順8(直接噴き入り率算出);このようにして求めたクランク角区分毎の面積比から次式により直接噴き入り率KXD3を算出する。
KXD3=Σf1(Lvi)…(72)
ここで、f1(Lvi)はi番目のクランク角区分に対する面積比、Lviはi番目のクランク角区分に対する瞬時リフトである。また、Σの総和の範囲はクランク角の全区分(吸気弁開時期が属するクランク角区分より吸気弁開時期が属するクランク角区分まで)である。
手順9(噴霧密度の補正分算出);吸気弁15の最大リフトHから図37を内容とするテーブルを検索して噴霧密度の補正分XI2を算出する。
手順10(燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分算出);こうして求めた噴霧密度の補正分XI2と直接噴き入り率KXD3とを用いて次式により燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを算出する。
XD=XG×KXD3×XI2…(73)
このように、第3実施形態(請求項4に記載の発明)によれば、直接噴き入り率KXD3を、吸気弁15と弁シートの隙間のうち径方向の最大幅xと吸気弁15が閉じた状態での吸気ポート4の直径Dpとの比である距離比(Ks)を用いて算出するので、距離比(Ks)を上記(70)式のように簡単なモデル式で表すことができ、実験適合する必要がない。
第3実施形態(請求項5に記載の発明)によれば、上記最大幅xを、燃料噴射弁21から噴射される噴霧の噴射形状が円錐状であるとして算出するので、最大幅xを算出する式が上記(67)式のように簡単なモデル式となり、演算式の簡素化が図れる。また、噴射形状という噴射弁の特性を用いることで、適合を簡素化できる。
第3実施形態(請求項7に記載の発明)によれば、上記最大幅xを、吸気弁15の瞬時リフトLvを用いて算出するので、エンジンの仕様から決まる特性をそのまま用いることができ、適合を簡素化できる。
第3実施形態(請求項8に記載の発明)によれば、上記最大幅xを、燃料噴射弁21と吸気弁15の挟み角βを用いて算出するので、エンジンの仕様から決まる特性をそのまま用いることができ、適合を簡素化できる。
第3実施形態(請求項9に記載の発明)によれば、吸気弁15の最大リフトHに応じた噴霧密度の補正分XI2により直接噴き入り率を補正するので(上記(73)式参照)、噴霧密度分布の異なる噴射弁を用いても、精度良く燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを求めることができ、適合工数と時間も低減できる。
第3実施形態では、噴射形状を円錐状であるとみなしたが、図38に示したように円柱状であるとみなしてもかまわない(第4実施形態)。このときには面積比Ksが次のように簡単になる。
x≒Lv×sinβ …(74)
Ks≒x/Dp=Lv×sinβ/Dp…(75)
=f2(Lv) …(76)
ただし、Lv;吸気弁15の瞬時リフト、
β ;吸気弁15と噴射弁21の挟む角、
Dp;吸気ポート4の直径
従って、第4実施形態では、(75)、(76)式を第3実施形態の上記(70)、(71)式に代えて用いて、燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを算出すればよい。
第4実施形態(請求項6に記載の発明)によれば、最大幅xを、燃料噴射弁21から噴射される噴霧の噴射形状が円柱状であるとして算出するので、上記(74)式に示したようにさらに最大幅xの算出式を簡素化できる。
第2実施形態では、燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを、噴霧塊が燃焼室5内における気流中にある区間での相対流速Vに基づいて算出する場合で説明したが、この相対流速Vに代えて、噴霧塊が燃焼室5内における気流中にある区間での噴霧の速度#VFや吸気気流の速度(VP−VG)を用いてもかまわない(請求項10に記載の発明)。このものよれば、燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDに大きな影響を与える吸気気流の速度(VP−VG)、噴霧の速度#VFに変更があっても、その同じモデルを用いて、変更後の燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを算出することが可能となり、再度の実験適合は必要なく、適合工数が大幅に低減でき、適合に要する期間も短縮できる。
第3実施形態では、直接噴き入り率KXD3を、吸気弁15と弁シートの隙間のうち径方向の最大幅xと吸気弁15が閉じた状態での吸気ポート4の直径Dpとの比である距離比(Ks)を用いて算出する場合で説明したが、直接噴き入り率KXD3を、吸気弁15と弁シートの隙間のうち径方向の最大幅xを用いて算出するようにしてもかまわない(請求項4に記載の発明)。さらに、直接噴き入り率KXD3を、噴霧方向からみた吸気弁15と弁シートの隙間面積またはこの隙間面積と吸気弁15が閉じた状態での吸気ポート4の断面積との比である面積比から算出するようにしてもかまわない(請求項3に記載の発明)。
第2、第3、第4実施形態では、燃料噴射弁21から噴射される燃料量のうち吸気弁15の開弁時に吸気弁15または吸気ポート4に衝突することなく燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧分XDを算出する場合で説明したが(請求項17に記載の発明)、燃料噴射弁21から噴射される燃料量のうち吸気弁15の開弁時に吸気弁15または吸気ポート4に衝突することなく燃焼室5へと直接噴き入れられる噴霧量を算出するようにしてもかまわない(請求項1に記載の発明)。
実施形態では、L−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンで説明したが、D−ジェトロニック方式のガソリン噴射エンジンにも適用できる。
請求項1の燃料噴射量算出手段の各機能は、エンジンコントローラ31により果たされている。
本発明の一実施形態を示す自動車用エンジンのシステム図。 吸気ポート及び燃焼室内の混合気の挙動を示す概念図。 吸気ポート及び燃焼室内の混合気の挙動を示す概念図。 吸気ポート、燃焼室の混合気モデルのデータフロー図。 燃料噴射量算出モデルのデータフロー図。 始動後時間に対する要求度数の特性図。 アクセル開度に対する要求度数の特性図。 触媒温度に対する要求度数の特性図。 噴射弁噴霧の分岐モデルのデータフロー図。 噴霧分岐全体のプロセスを示すモデル図。 噴射時噴霧の質量割合についての粒径分布の特性図。 噴霧の気化率を説明するためのモデル図。 気化特性f(V、T、P)の特性図。 吸気気流の暴露時間の特性図。 噴霧の燃焼室への直接噴き入りを説明するためのモデル図。 噴射タイミングとβに対する直接噴き入り率の特性図。 噴霧の吸気系での浮遊、燃焼室での浮遊を説明するためのモデル図。 噴霧落下速度と粒径毎の浮遊割合との特性図。 噴霧粒径分布を示す特性図。 吸気弁直撃率と比X1/X2に対する吸気弁直撃率係数の特性図。 比X3/X4に対する割り振り率の特性図。 壁流からの蒸発を説明するための壁流モデル図。 壁流からの再飛散と壁流の移動を説明するための壁流モデル図。 再飛散率基本値の特性図。 移動率基本値の特性図。 吸気弁壁流からの蒸発、持ち去りを説明するための壁流モデル図。 ポート壁流からの蒸発、持ち去りを説明するための壁流モデル図。 燃焼室壁流からの蒸発を説明するための壁流モデル図。 シリンダ面壁流からの蒸発、持ち去りを説明するためのモデル図。 オイル混入率基本値の特性図。 1燃焼サイクルでの圧力、温度、流速の変化を示す特性図。 第2実施形態の噴霧の気流中割合を説明するためのモデル図。 第2実施形態の噴霧の気流中割合と吸気流速の特性図。 第3実施形態の噴射形状を円錐状とみなしたときのモデル図。 第3実施形態の面積割合を説明するためのモデル図。 第3実施形態の噴霧密度の分布図。 第3実施形態の噴霧密度の補正分の特性図。 第4実施形態の噴射形状を円柱状とみなしたときのモデル図。
符号の説明
4 吸気ポート
5 燃焼室
15 吸気弁
21 燃料噴射弁
31 エンジンコントローラ

Claims (17)

  1. 燃焼室入口の吸気ポートを開閉する吸気弁と、
    吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁と、
    この燃料噴射弁から噴射される噴霧が先端から後端までつらなる塊状で吸気系を経て燃焼室内の気流中を飛行すると仮定し、噴霧速度と噴霧の飛距離限界と前記燃料噴射弁の噴孔から前記吸気ポート出口までの距離とから定まるこの噴霧塊の燃焼室内における気流中割合が0を超える範囲を前記噴霧塊が燃焼室内における気流中にある区間とみなし、この噴霧塊の燃焼室内における気流中割合に少なくとも基づいて前記燃料噴射弁から噴射される燃料量のうち前記吸気弁の開弁時に吸気弁または吸気ポートに衝突することなく前記燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量を算出するモデルを用いて前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段と
    を備えることを特徴とするエンジンの燃料噴射量制御装置。
  2. 前記燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量は、前記吸気ポート出口に前記吸気弁が存在しないと仮定したときに前記燃料噴射弁から噴射される燃料量のうち前記燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量と、前記吸気弁の開弁時に前記吸気弁と弁シートの隙間を通り抜ける割合である直接噴き入り割合との積であることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  3. 前記直接噴き入り割合を、前記吸気弁と弁シートの隙間面積またはこの隙間面積と前記吸気弁が閉じた状態での吸気ポートの断面積との比である面積比から算出することを特徴とする請求項2に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  4. 前記吸気弁と弁シートの隙間面積に代えて、前記吸気弁と弁シートの隙間のうち径方向の最大の幅を、または前記面積比に代えて前記最大幅と前記吸気弁が閉じた状態での吸気ポートの直径との比である距離比を用いることを特徴とする請求項3に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  5. 前記最大幅を、前記燃料噴射弁から噴射される噴霧の噴射形状が円錐状であるとして算出することを特徴とする請求項4に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  6. 前記最大幅を、前記燃料噴射弁から噴射される噴霧の噴射形状が円柱状であるとして算出することを特徴とする請求項4に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  7. 前記最大幅を、前記吸気弁の瞬時リフトを用いて算出することを特徴とする請求項4に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  8. 前記最大幅を、前記燃料噴射弁と前記吸気弁の挟み角を用いて算出することを特徴とする請求項4に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  9. 前記吸気弁の最大リフトに応じた噴霧密度の補正分により前記直接噴き入り割合を補正することを特徴とする請求項2に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  10. 前記燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量を前記区間での噴霧の速度または気流の速度に基づいても算出することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  11. 前記気流の速度は、前記吸気弁が開いているときのサイクル位置で定まる吸気系または燃焼室内の吸気流速であることを特徴とする請求項10に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  12. 前記気流の速度は、前記吸気弁が開いた瞬間に生じる吹き返し分流速と、その後に前記吸気弁が開いているときに生じるピストン下降分流速とからなることを特徴とする請求項11に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  13. 前記ピストン下降分流速はピストン下降速度に応じた値であることを特徴とする請求項12に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  14. 前記ピストン下降分流速を、前記ピストン下降速度、エンジン回転速度及びエンジンの気筒容積と前記吸気系の流路面積の比から求めることを特徴とする請求項13に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  15. 前記噴霧の速度または気流の速度に代えて、前記噴霧の速度と前記気流の速度との差の絶対値である相対流速を用いることを特徴とする請求項10に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  16. 前記噴霧の速度を粒径で決定することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
  17. 前記燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧量に代えて、前記燃料噴射弁から噴射される燃料量のうち前記吸気弁の開弁時に吸気弁または吸気ポートに衝突することなく燃焼室へと直接噴き入れられる噴霧分を算出することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射量制御装置。
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