JP3962816B1 - 配位高分子およびその製造方法ならびにそれを用いた素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】強誘電性を示す新規な配位高分子、およびその製造方法、ならびにそれを用いた素子を提供する。
【解決手段】本発明の配位高分子は、ジチオカルバミン酸の誘導体と塩素イオンと銅イオンとによって構成された配位高分子であって、銅イオンが、ジチオカルバミン酸の誘導体および塩素イオンから選ばれる少なくとも1つによって架橋されている。上記ジチオカルバミン酸の誘導体は、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基が窒素原子に結合した構造を有する誘導体である。この配位高分子は、2つのジチオカルバミン酸誘導体を配位子として含む銅錯体と、塩化銅(II)とを、それらの溶液中で反応させることによって、形成できる。
【選択図】図2
【解決手段】本発明の配位高分子は、ジチオカルバミン酸の誘導体と塩素イオンと銅イオンとによって構成された配位高分子であって、銅イオンが、ジチオカルバミン酸の誘導体および塩素イオンから選ばれる少なくとも1つによって架橋されている。上記ジチオカルバミン酸の誘導体は、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基が窒素原子に結合した構造を有する誘導体である。この配位高分子は、2つのジチオカルバミン酸誘導体を配位子として含む銅錯体と、塩化銅(II)とを、それらの溶液中で反応させることによって、形成できる。
【選択図】図2
Description
本発明は、配位高分子およびその製造方法ならびにそれを用いた素子に関する。
強誘電材料は不揮発性メモリ、キャパシタ、圧電素子、非線形光学材料等、種々の電子素子や光学素子へ応用されている。そのため、従来から、無機酸化物を中心に強誘電材料の研究が精力的に行われてきた。また、近年、軽く、柔軟性があり、かつ設計性の高い有機誘電体材料の研究が活発になっており、数多くの新しい有機強誘電体が合成されてきている。それに対し、それら両者の特性を併せ持つ無機有機複合材料である金属錯体において、強誘電体の研究は一部の強誘電性液晶を除いてこれまでほとんど行われてこなかった。特に、金属錯体が集積された構造を有する配位高分子に関しては、強誘電体の報告例はわずかである(たとえば非特許文献1〜4)。
Organometallics、2003年、22, p.2814-2816、Z. -R. Quら Eur. J. Inorg. Chem.、2003年、p.3712-3715、Y. -R. Xieら Chem. Eur. J.、2004年、10、p.53-60、Z. -R. Quら J. Am. Chem. Soc.、2005年、127、p.17598-17599、T. Okuboら
Organometallics、2003年、22, p.2814-2816、Z. -R. Quら Eur. J. Inorg. Chem.、2003年、p.3712-3715、Y. -R. Xieら Chem. Eur. J.、2004年、10、p.53-60、Z. -R. Quら J. Am. Chem. Soc.、2005年、127、p.17598-17599、T. Okuboら
現在、強誘電性を示す配位高分子の報告はわずかであり、その特性も限られたものとなっている。このような状況において、本発明は、強誘電性を示す新規な配位高分子、およびその製造方法、ならびにそれを用いた素子を提供することを目的の1つとする。
上記目的を達成するために検討した結果、発明者らは、所定のジチオカルバミン酸の誘導体と塩素イオンと銅イオンとによって構成された配位高分子が、高い比誘電率を示すことを見出した。本発明は、この新たな知見に基づく発明である。
すなわち、本発明の配位高分子は、ジチオカルバミン酸の誘導体と塩素イオンと銅イオンとによって構成された配位高分子であって、前記銅イオンは、前記ジチオカルバミン酸の誘導体のアニオンおよび前記塩素イオンから選ばれる少なくとも1つによって架橋されており、前記ジチオカルバミン酸の誘導体が以下の式(1)で表される。
HSSC−NR 1 R 2 ・・・(1)
[式(1)中、R 1 およびR 2 は、それぞれ独立に、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基を示す。]
HSSC−NR 1 R 2 ・・・(1)
[式(1)中、R 1 およびR 2 は、それぞれ独立に、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基を示す。]
また、配位高分子を製造するための本発明の方法は、2つのジチオカルバミン酸誘導体を配位子として含む銅錯体と、塩化銅(II)とを、それらの溶液中で反応させることによって、前記ジチオカルバミン酸誘導体と塩素イオンと銅イオンとによって構成され、前記銅イオンが前記ジチオカルバミン酸の誘導体のアニオンおよび前記塩素イオンから選ばれる少なくとも1つによって架橋されている配位高分子を形成する工程を含み、前記ジチオカルバミン酸の誘導体が以下の式(1)で表される。
HSSC−NR 1 R 2 ・・・(1)
[式(1)中、R 1 およびR 2 は、それぞれ独立に、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基を示す。]
なお、塩化銅(II)には、その一形態として水和物(塩化銅(II)二水和物(CuCl2・2H2O))も含まれる。
HSSC−NR 1 R 2 ・・・(1)
[式(1)中、R 1 およびR 2 は、それぞれ独立に、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基を示す。]
なお、塩化銅(II)には、その一形態として水和物(塩化銅(II)二水和物(CuCl2・2H2O))も含まれる。
上記製造方法で製造された配位高分子は、本発明の配位高分子の1つである。
また、本発明の素子は、強誘電性を示す部分を含む素子であって、前記部分が本発明の配位高分子を含む。
本発明によれば、強誘電性を示す新規な配位高分子、およびそれを用いた素子が得られる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。
[配位高分子]
本発明の配位高分子(集積型金属錯体)は、ジチオカルバミン酸の誘導体と塩素イオンと銅イオンとによって構成された配位高分子である。この配位高分子において、銅イオンは、ジチオカルバミン酸の誘導体および塩素イオンから選ばれる少なくとも1つによって架橋されている。
本発明の配位高分子(集積型金属錯体)は、ジチオカルバミン酸の誘導体と塩素イオンと銅イオンとによって構成された配位高分子である。この配位高分子において、銅イオンは、ジチオカルバミン酸の誘導体および塩素イオンから選ばれる少なくとも1つによって架橋されている。
ジチオカルバミン酸の誘導体は、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基(たとえばアルキル基)が窒素原子に結合した構造を有する誘導体である。この誘導体は、たとえば以下の式(1)で表される。
HSSC−NR1R2・・・(1)
HSSC−NR1R2・・・(1)
式(1)のジチオカルバミン酸誘導体の構造式を以下に示す。
R1およびR2は、通常、同じである。なお、式(1)のジチオカルバミン酸誘導体は、錯体または配位高分子中において、硫黄原子に結合している水素原子がはずれて以下に示すアニオン(1’)として存在しているが、その場合もジチオカルバミン酸誘導体の一形態であるとして説明する。
配位高分子中の1つのジチオカルバミン酸誘導体は、通常、2つまたは3つの銅イオンを架橋するように銅イオンに結合する。架橋形式の一例の一部を以下の式(1”)に示す。式(1”)のジチオカルバミン酸誘導体は、2つ以上の銅イオンを架橋するように銅イオンに結合する。この場合、ジチオカルバミン酸誘導体に含まれる2つの硫黄原子は、2つ以上の銅イオンに結合する。現在のところ、1つのジチオカルバミン酸誘導体は、3つの銅イオンを架橋することが多いと考えられる。式(1”)のジチオカルバミン酸誘導体が3つの銅イオンを架橋する場合には、式(1”)の下側の硫黄原子に、さらに別の銅イオンが結合する。また、配位高分子中の一部のジチオカルバミン酸誘導体では、ジチオカルバミン酸誘導体の2つの硫黄原子のそれぞれに異なる銅イオンが1つずつ配位する場合や、架橋に関与しない場合もあるのではないかと考えられる。
また、配位高分子中の塩素イオンは、1つまたは複数の銅イオンに結合する。少なくとも1部の塩素イオンは、複数の銅イオンを架橋するように銅イオンに配位結合する。
ジチオカルバミン酸誘導体は、好ましくは(N,N−ジアルキル)ジチオカルバミン酸であり、たとえば、(N,N−ジ−n−プロピル)ジチオカルバミン酸および(N,N−ジ−n−ブチル)ジチオカルバミン酸から選ばれる少なくとも1つであってもよい。すなわち、上記の式(1)において、R1およびR2がともにn−プロピル基(直鎖のプロピル基)であってもよいし、R1およびR2がともにn−ブチル基(直鎖のブチル基)であってもよい。通常、配位高分子に含まれるジチオカルバミン酸誘導体は1種類であり、たとえば、(N,N−ジ−n−プロピル)ジチオカルバミン酸または(N,N−ジ−n−ブチル)ジチオカルバミン酸のいずれかである。
ジチオカルバミン酸誘導体のR1およびR2を変化させることによって、様々な特性を有する配位高分子を得ることが可能である。一例では、R1およびR2が共に、炭素数が5以上(たとえば5または6)の直鎖のアルキル基である。炭素数が大きい直鎖のアルキル基を備えるジチオカルバミン酸誘導体を用いることによって、比誘電率をより高くできる可能性がある。また、R1およびR2は共に、iso−プロピル基のように、分岐鎖を有するアルキル基(炭素数がたとえば3〜6)であってもよい。
本発明の配位高分子は、以下の式(2)で表される配位高分子であってもよい。
[Cu(SSC−NR1R2)2Cu6Cl7]n・・・(2)
[Cu(SSC−NR1R2)2Cu6Cl7]n・・・(2)
式(2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基を示す。R1およびR2については、上述したため説明を省略する。nは、本発明の配位高分子が、カッコでくくられた上記の単位が無数に集積された構造を有していることを示している。
[配位高分子の製造方法]
以下、上記本発明の配位高分子を製造するための方法について説明する。この製造方法によって、本発明の配位高分子を製造できる。すなわち、この製造方法で製造された配位高分子は、本発明の配位高分子の一例である。
以下、上記本発明の配位高分子を製造するための方法について説明する。この製造方法によって、本発明の配位高分子を製造できる。すなわち、この製造方法で製造された配位高分子は、本発明の配位高分子の一例である。
この製造方法では、2つのジチオカルバミン酸誘導体を配位子として含む銅錯体と、塩化銅(II)とを、それらの溶液中で反応させる。溶液の溶媒には、たとえば有機溶媒を用いることができる。この反応によって、上述した本発明の配位高分子、すなわち、ジチオカルバミン酸誘導体と塩素イオンと銅イオンとによって構成され、銅イオンがジチオカルバミン酸の誘導体および塩素イオンから選ばれる少なくとも1つによって架橋されている配位高分子が形成される。
銅錯体に配位している2つのジチオカルバミン酸誘導体は、上述したジチオカルバミン酸誘導体であり、たとえば式(1)で表されるものである。式(1)の誘導体が配位した銅錯体は、以下の式(3)で表される。
式(3)のR1およびR2は、上述したR1およびR2と同様であるため、重複する説明は省略する。銅錯体の好ましい一例は、ジチオカルバマト銅錯体、すなわち2つの(N,N−ジアルキル)ジチオカルバミン酸イオンが配位した銅錯体である。
式(3)の単核錯体は、市販されているものを用いてもよいし、公知の方法で合成してもよい。ジチオカルバマト銅錯体は、たとえば以下の方法で合成できる。まず、水またはエタノール、あるいはその混合溶媒中に第二級アミン(例えばジノルマルプロピルアミン、ジノルマルブチルアミンなど)と水酸化カリウム(または塩化ナトリウム)とを1:1のモル比で溶解させ、さらに二硫化炭素を、第二級アミンと等モルとなるように加える。しばらく攪拌後、その溶液に塩化銅二水和物の水(エタノール、または水−エタノールの混合溶媒)溶液を、塩化銅二水和物が第二級アミンに対して0.5倍(モル比)となるように加える。このようにしてジチオカルバマト銅錯体を合成できる。また、ジチオカルバマト銅錯体の合成方法は、例えば、S. C. Ngo, K. K. Banger, M. J. DelaRosa, P. J. Toscano, J. T. Welchらによる論文(Polyhedron 22 (2003) 1575)にも記載されている。
銅錯体と塩化銅(II)とは、たとえば、銅錯体の溶液と、塩化銅(II)の溶液とを混合することによって反応させることができる。混合時の温度に特に限定はなく、たとえば0℃〜30℃といった範囲にある温度で混合しても反応は進行する。
銅錯体の溶液の溶媒に特に限定はなく、たとえば、クロロホルムやジクロロメタンといった有機溶媒を用いてもよい。塩化銅(II)(二水和物を含む)の溶液の溶媒に特に限定はなく、たとえば、アセトンといった有機溶媒を用いてもよい。
本発明の製造方法では、銅錯体に対する塩化銅(II)のモル比が2倍以上となるように溶液中で両者を混合することによって両者を反応させることが好ましい。そのようなモル比で反応させることによって、強誘電性を示す配位高分子結晶が得られやすくなる。
上述したように、銅錯体の配位子であるジチオカルバミン酸の誘導体は、(N,N−ジ−n−プロピル)ジチオカルバミン酸または(N,N−ジ−n−ブチル)ジチオカルバミン酸であってもよい。
[素子]
本発明の素子は、強誘電性を示す部分を含む素子であって、その部分が本発明の配位高分子を含む。すなわち、本発明の素子は、強誘電性を示す本発明の配位高分子を含む。通常、強誘電性を示す部分は、本発明の配位高分子のみからなるが、その部分に求められる強誘電性を示す限り、他の成分を含んでもよい。
本発明の素子は、強誘電性を示す部分を含む素子であって、その部分が本発明の配位高分子を含む。すなわち、本発明の素子は、強誘電性を示す本発明の配位高分子を含む。通常、強誘電性を示す部分は、本発明の配位高分子のみからなるが、その部分に求められる強誘電性を示す限り、他の成分を含んでもよい。
本発明の素子は、たとえば、強誘電性を示す部分(強誘電性材料を含む部分)を含む公知の様々な素子の強誘電性材料を、強誘電性を示す本発明の配位高分子に置き換えた素子である。したがって、強誘電性材料以外の部分は、公知の素子と同様の構造および材料を適用できる。このような素子(電子素子)としては、たとえば、不揮発性強誘電体メモリや圧電素子が挙げられる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
[配位高分子の合成例1]
まず、銅錯体であるCu(SSC−N(CH2CH2CH3)2)2を用意し、この銅錯体1.0405g(2.5mmol)をクロロホルム500mlに溶解させた。この銅錯体は、式(3)の化合物において、R1およびR2の部分が共にn−プロピル基である場合に該当する。この銅錯体を合成するために、まず、水とエタノールの混合溶媒中に水酸化カリウム5.61g(0.1モル)を溶解させ、その溶液に、ジノルマルプロピルアミン10.12g(0.1モル)および二硫化炭素7.61g(0.1モル)を加えた。この溶液をしばらく撹拌した後、この溶液に塩化銅二水和物8.52g(0.05モル)の水溶液を加えた。このようにして上記銅錯体を合成した。
まず、銅錯体であるCu(SSC−N(CH2CH2CH3)2)2を用意し、この銅錯体1.0405g(2.5mmol)をクロロホルム500mlに溶解させた。この銅錯体は、式(3)の化合物において、R1およびR2の部分が共にn−プロピル基である場合に該当する。この銅錯体を合成するために、まず、水とエタノールの混合溶媒中に水酸化カリウム5.61g(0.1モル)を溶解させ、その溶液に、ジノルマルプロピルアミン10.12g(0.1モル)および二硫化炭素7.61g(0.1モル)を加えた。この溶液をしばらく撹拌した後、この溶液に塩化銅二水和物8.52g(0.05モル)の水溶液を加えた。このようにして上記銅錯体を合成した。
また、0.8524g(5mmol)の塩化銅(II)二水和物(CuCl2・2H2O)を、アセトン500mlに溶解させた。
そして、室温において、銅錯体のクロロホルム溶液に、塩化銅(II)二水和物のアセトン溶液を加えた。このとき、クロロホルム溶液を攪拌しながらアセトン溶液を加えた。そして、この反応溶液を蓋付きのガラス容器に入れて静置した状態で、室温において10日間放置した。その結果、黒色結晶(以下、「黒色結晶(1)」という場合がある)が析出した。この黒色結晶(1)を濾別し、結晶をアセトンおよびジエチルエーテルで洗浄した。得られた黒色結晶(1)の収量は0.359gであった。
[単結晶X線構造解析およびC,H,N元素分析]
得られた黒色結晶(1)について単結晶X線構造解析を行った。その結果、黒色結晶の組成は、C14H28N2S4Cu7Cl7で表されることが分かった。解析は、株式会社リガク製のX線構造解析装置(RAXIS RAPID)を用いて行った。解析の結果の一例を表1に示す。
得られた黒色結晶(1)について単結晶X線構造解析を行った。その結果、黒色結晶の組成は、C14H28N2S4Cu7Cl7で表されることが分かった。解析は、株式会社リガク製のX線構造解析装置(RAXIS RAPID)を用いて行った。解析の結果の一例を表1に示す。
次に、結晶のC(炭素)、H(水素)およびN(窒素)の元素分析を行った。上記組成比から理論値はそれぞれC:16.08%、H:2.70%、N:2.68%であるのに対して、実測値はそれぞれC:15.80%、H:2.62%、N:2.62%であった。
現在のところ、黒色結晶(1)の構造は明確になっているわけではないが、元素分析およびX線構造解析の結果から予想される結晶構造の一部を図1に模式的に示す。図1において、元素の横の数字は、便宜的に付与されたものである。図1のS(1)、S(2)、C(1)〜C(7)およびN(1)は、1つの(N,N−ジ−n−プロピル)ジチオカルバミン酸イオンを示している。2つの硫黄原子S(1)およびS(2)は、それぞれ違う銅イオンCu(2)およびCu(4)に結合するとともに、共に1つの銅イオンCu(1)に結合している。解析の結果から、この結晶は、上述した式(2)で表されると考えられる。
この結晶中には、原子価が異なる銅イオンが含まれる。この結晶は、原料である単核錯体Cu(SSC−N(CH2CH2CH3)2)2が銅イオンおよび塩素イオンによって架橋されてシート状の構造体を形成し、そのシート状構造体が積層されることによって形成されていると考えられる。また、現在のところ明確ではないが、黒色結晶(1)の強誘電性は、結晶中の銅イオンが変位することによって生じていると考えられる。
[誘電特性の評価]
黒色結晶(1)(約50mg)を、直径約13mmの2枚の真鍮板で挟み、約3900Pa(400kgf/cm2)の高圧でプレスしてディスク状のサンプル(厚さ約0.2mm)を作製した。このサンプルをクライオスタットの中に配置し、強誘電テスタによってサンプルの分極−電圧特性を測定した。測定結果を図2に示す。なお、以下で示すグラフは、測定値を線で結ぶことによって得られたグラフである。
黒色結晶(1)(約50mg)を、直径約13mmの2枚の真鍮板で挟み、約3900Pa(400kgf/cm2)の高圧でプレスしてディスク状のサンプル(厚さ約0.2mm)を作製した。このサンプルをクライオスタットの中に配置し、強誘電テスタによってサンプルの分極−電圧特性を測定した。測定結果を図2に示す。なお、以下で示すグラフは、測定値を線で結ぶことによって得られたグラフである。
図2に示すように、黒色結晶(1)は分極のヒステリシスを示し、強誘電体であることがわかった。温度が大きくなるほど、分極は大きくなった。ただし、温度が300K以上の場合、良好なヒステリシスカーブが得られなかった。これはリーク電流によるものであると考えられる。
LCRメータを用いて比誘電率の周波数依存性および温度依存性を測定した結果を図3に示す。温度が高くなるほど比誘電率が高くなっており、これも黒色結晶(1)が強誘電体であることを示唆している。また、周波数が低いほど、比誘電率が高くなった。
[熱重量分析および示差走査熱量測定]
黒色結晶(1)、および銅錯体であるCu(SSC−N(CH2CH2CH3)2)2について、熱重量分析(TG)および示差走査熱量測定(DSC)を行った。昇温速度は、2K/分とした。熱重量分析の結果を図4(a)および(b)に示し、示差走査熱量測定の結果を図5(a)および(b)に示す。図4(a)に示すように、黒色結晶(1)では、400K付近で重量の減少が開始した。
黒色結晶(1)、および銅錯体であるCu(SSC−N(CH2CH2CH3)2)2について、熱重量分析(TG)および示差走査熱量測定(DSC)を行った。昇温速度は、2K/分とした。熱重量分析の結果を図4(a)および(b)に示し、示差走査熱量測定の結果を図5(a)および(b)に示す。図4(a)に示すように、黒色結晶(1)では、400K付近で重量の減少が開始した。
[配位高分子の合成例2]
Cu(SSC−N(CH2CH2CH3)2)2の代わりに銅錯体としてCu(SSC−N(CH2CH2CH2CH3)2)2を用いることを除き、合成例1と同様の方法で合成を行った。この銅錯体は、式(3)の化合物において、R1およびR2の部分が共にn−ブチル基である場合に該当する。この銅錯体を合成するために、まず、水とエタノールの混合溶媒中に水酸化カリウム5.61g(0.1モル)を溶解させ、その溶液にジノルマルブチルアミン12.92g(0.1モル)および二硫化炭素7.61g(0.1モル)を加えた。この溶液をしばらく撹拌後、この溶液に、塩化銅二水和物8.52g(0.05モル)の水溶液を加えた。このようにして上記同錯体を合成した。
Cu(SSC−N(CH2CH2CH3)2)2の代わりに銅錯体としてCu(SSC−N(CH2CH2CH2CH3)2)2を用いることを除き、合成例1と同様の方法で合成を行った。この銅錯体は、式(3)の化合物において、R1およびR2の部分が共にn−ブチル基である場合に該当する。この銅錯体を合成するために、まず、水とエタノールの混合溶媒中に水酸化カリウム5.61g(0.1モル)を溶解させ、その溶液にジノルマルブチルアミン12.92g(0.1モル)および二硫化炭素7.61g(0.1モル)を加えた。この溶液をしばらく撹拌後、この溶液に、塩化銅二水和物8.52g(0.05モル)の水溶液を加えた。このようにして上記同錯体を合成した。
合成によって、合成例1と同様に黒色結晶(以下、「黒色結晶(2)」という場合がある)が得られた。
[黒色結晶(2)の評価]
得られた黒色結晶(2)について分析した結果、黒色結晶(2)の組成式は、C18H36N2S4Cu7Cl7で表されることが分かった。
得られた黒色結晶(2)について分析した結果、黒色結晶(2)の組成式は、C18H36N2S4Cu7Cl7で表されることが分かった。
黒色結晶(2)について、上述した方法で誘電特性を評価した。黒色結晶(2)の電場−分極特性を図6に示す。黒色結晶(2)も、合成例1の黒色結晶(1)と同様に、分極のヒステリシスを示し、強誘電性を有することが示唆された。また、黒色結晶(2)においても、温度が200K以上の場合、良好なヒステリシスカーブが得られなかった。これはリーク電流によるものであると考えられる。
また、黒色結晶(2)、および銅錯体であるCu(SSC−N(CH2CH2CH2CH3)2)2について、熱重量分析および示差走査熱量測定を行った。昇温速度は、2K/分とした。熱重量分析の結果を図7(a)および(b)に示し、示差走査熱量測定の結果を図8(a)および(b)に示す。図7(a)に示すように、黒色結晶(2)では、410K付近で重量の減少が開始した。
本発明は、配位高分子およびその製造方法ならびにそれを用いた素子に利用できる。
Claims (10)
- ジチオカルバミン酸の誘導体と塩素イオンと銅イオンとによって構成された配位高分子であって、
前記銅イオンは、前記ジチオカルバミン酸の誘導体のアニオンおよび前記塩素イオンから選ばれる少なくとも1つによって架橋されており、
前記ジチオカルバミン酸の誘導体が以下の式(1)で表される、配位高分子。
HSSC−NR 1 R 2 ・・・(1)
[式(1)中、R 1 およびR 2 は、それぞれ独立に、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基を示す。] - 前記R 1 およびR 2 が、ともに、炭素数が3〜6の範囲にあるアルキル基である請求項1に記載の配位高分子。
- 前記ジチオカルバミン酸の誘導体が、(N,N−ジ−n−プロピル)ジチオカルバミン酸および(N,N−ジ−n−ブチル)ジチオカルバミン酸から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の配位高分子。
- 以下の式で表される請求項1に記載の配位高分子。
[Cu(SSC−NR 1 R 2 ) 2 Cu 6 Cl 7 ] n
(式中、R 1 およびR 2 は、それぞれ独立に、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基を示す。) - 強誘電性を示す請求項1〜4のいずれか1項に記載の配位高分子。
- 2つのジチオカルバミン酸誘導体を配位子として含む銅錯体と、塩化銅(II)とを、それらの溶液中で反応させることによって、前記ジチオカルバミン酸誘導体と塩素イオンと銅イオンとによって構成され、前記銅イオンが前記ジチオカルバミン酸の誘導体のアニオンおよび前記塩素イオンから選ばれる少なくとも1つによって架橋されている配位高分子を形成する工程を含み、
前記ジチオカルバミン酸の誘導体が以下の式(1)で表される、配位高分子の製造方法。
HSSC−NR 1 R 2 ・・・(1)
[式(1)中、R 1 およびR 2 は、それぞれ独立に、炭素数が3以上の脂肪族炭化水素基を示す。] - 前記銅錯体に対する前記塩化銅(II)のモル比が2倍以上となるように前記溶液中で両者を混合することによって両者を反応させる請求項6に記載の製造方法。
- 前記ジチオカルバミン酸の誘導体が、(N,N−ジ−n−プロピル)ジチオカルバミン酸または(N,N−ジ−n−ブチル)ジチオカルバミン酸である請求項6または7に記載の製造方法。
- 請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法で形成された配位高分子。
- 強誘電性を示す部分を含む素子であって、
前記部分が請求項1、2、3、4、5および9のいずれか1項に記載の配位高分子を含む素子。
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