JP3946276B2 - ガソリン基材及び該基材を用いた無鉛ガソリン - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は新規なガソリン基材を用いた無鉛ガソリンに関し、さらに詳しくは、高オクタン価でベンゼン含有量が少ないガソリン基材を用いた、空燃比応答性が良好で、ベンゼンの排出量を低減しうる無鉛ガソリンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オクタン価向上剤としての鉛化合物添加規制以降、無鉛高オクタン価ガソリンの開発が望まれ、近年高オクタン価基材として種々のものが提案されている。
しかしながら、従来提案され、あるいは使用されているガソリン基材からなるガソリンは、触媒マフラー付きガソリン車の運転性、排気ガス等に起因する公害性の面からは十分なものとはいえない。即ち、ガソリン基材として通常使用される改質ガソリンには、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族分が多く含まれているが、これらの芳香族分はエンジンで燃焼する際にベンゼンに変化しやすい傾向を有しており、排気ガス中におけるこれらベンゼン濃度の増大は、発癌性の疑いがある等人体に有害かつ悪影響を及ぼすものであり望ましくない。特に、芳香族分中に既に存在するベンゼンは未燃分としてエンジンから排出されやすく、他の芳香族分に比較して9〜35倍の程度で排気ガス中のベンゼン濃度に寄与している。
一方、上記排気ガスを浄化する方法として、近年、三元触媒を使用する方法が主流となっている。この方法は一酸化炭素,炭化水素及び窒素酸化物の低減には極めて有効であるが、これらすべてに対して、空気対燃料比(以下、空燃比という)の狭い範囲に限り、高い浄化性能を示すことはよく知られている。通常、エンジンの過渡運転時においては、空燃比は適正範囲から大きくずれるが、上記の点からみるとこのずれは排気ガスを悪化させる要因となりうる。従って、このような問題を解決するためには空燃比応答性を向上させる必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下で、本発明者等は基材として用いられる接触改質ガソリンの各留分におけるオクタン価分布に着目し検討を行い、接触改質ガソリンのカット留分が20〜40容量%付近にオクタン価が最低となる留分が存在し、一方で高沸点側に高いオクタン価を有する留分が存在することを見出した。
本発明は上記知見に基づいてなし遂げられたものである。即ち本発明は、高いオクタン価を有し、ベンゼン含有量の低いガソリン基材を用いて、人体に有害なベンゼンの含有量が低く、かつ空燃比応答性が良好であり、更にそのベンゼンの排出量を低減しうる無鉛ガソリンを提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究の結果、上記接触改質ガソリンのオクタン価の低い留分を除いた残りの留分を高オクタン価基材としてガソリンに用いることにより、上記本発明の目的を効果的に達成できることを見出し本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、
接触改質ガソリンの留分の初留点から沸点80℃迄の軽質留分と沸点90℃から終点迄の重質留分を混合してなるガソリン基材10〜60容量%に、(a)流動接触分解法により得られる分解ガソリン0〜80容量%及び(b)原油のナフサ留分を水素化精製して得られる脱硫ナフサ0〜40容量%を配合してなる、リサーチ法オクタン価が89.0以上である無鉛ガソリン、
を提供するものである。
【0005】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
本発明に用いるガソリン基材は、接触改質ガソリンの留分の初留点から沸点80℃迄の軽質留分と沸点90℃から終点迄の重質留分を混合してなるものである。
本発明において、接触改質ガソリンとは、分留範囲約40〜230℃の重質ナフサを水素気流中で、高温、高圧下で異性化、脱水素、環化、水素化分解などの改質反応を行わせしめ得られるものである。上記接触改質法に用いられる反応触媒としては、白金系又は白金にレニウム、イリジウム、ゲルマニウムなどの金属を加えたバイメタリック触媒がある。反応は通常、反応温度450〜540℃、反応圧力7〜50kg/cm2 程度の条件で行うことができる。主な接触改質プロセスとしては、プラットフォーミング法、ウルトラフォーミング法、レニフォーミング法、パワーフォーミング法、マグナフォーミング法、フードリフォーミング法等が挙げられる。
【0006】
前述のように、本発明は上記接触改質ガソリンを軽質留分(L・PG),中間留分(M・PG)及び重質留分(H・PG)の3つの留分に分け、L・PGとH・PGとを混合することにより、高オクタン価基材(L+H)PGを得るものである。
即ち、接触改質ガソリンにはトルエン,キシレンなどの高オクタン価成分が多く含まれているが、カット留分20〜40容量%付近には最低のオクタン価を有する留分があり、一方で高沸点側にはリサーチ法オクタン価が100以上の高いオクタン価を有する芳香族分が集中している。このことから、接触改質ガソリンの高沸点留分(H・PG)を高オクタン価基材として用いることも可能であるが、H・PGのみでは沸点が高いという欠点を有している。従って、本発明においては、上記オクタン価の低い中間留分(カット留分20〜40容量%付近、M・PG)を除いた残りの留分、即ち(L+H)PGを高オクタン価基材としてガソリンに用いた。
【0007】
上記高オクタン価基材〔(L+H)PG〕は、具体的には中間留分(M・PG)を沸点80〜90℃でカットすることにより得ることができる。このような方法により得られる(L+H)PGは分留前の元の接触改質ガソリンに比較して、リサーチ法オクタン価が3〜6高く、またモーター法オクタン価も2〜5高い。また、その(L+H)PGはベンゼンを1容量%程度の低い値で含有するものである。更に、得られる高オクタン価基材は、各留分について均一なオクタン価分布を有するものとなる。
本発明においては、接触改質ガソリンのM・PGを沸点70〜100℃でカットすること、即ち初留点から沸点70℃迄のL・PGと沸点100℃から終点迄のH・PGを混合してなるガソリン基材を得ることが、オクタン価を更に高くでき、ベンゼンの含有量を更に低くできる点から好ましい。上記M・PGの沸点範囲をこれ以上広くすることは、得られる(L+H)PGのオクタン価を若干高くすることには効果があるが、ガソリン基材としての(L+H)PGの収率が低下するため好ましくない。
【0008】
本発明の無鉛ガソリンは、上記のガソリン基材10〜60容量%に、(a)流動接触分解法により得られる分解ガソリン0〜80容量%及び(b)原油のナフサ留分を水素化精製して得られる脱硫ナフサ0〜40容量%を配合してなり、リサーチ法オクタン価が89.0以上であるものである。
即ち上記無鉛ガソリンは、接触改質ガソリンの留分の初留点から沸点80℃迄の軽質留分と沸点90℃から終点迄の重質留分を混合してなるガソリン基材を10〜60容量%含有する。含有量が10容量%未満の場合は、オクタン価向上及びベンゼン排出量低減の効果が不十分であり、60容量%を超える場合は低温始動性が悪化し、かつ燃料系統のゴム材などに悪影響があるといわれている芳香族分が増加することから好ましくない。このような観点から、上記ガソリン基材は本発明の無鉛ガソリン中に20〜50容量%含有されることが好ましい。
【0009】
本発明における流動接触分解法により得られる分解ガソリンとは、流動床において固体触媒の存在下で軽油以上の高沸点留分を接触的に分解して得られる分解ガソリンである。この流動接触分解法において使用される反応触媒としては、従来使用されていた無定形シリカアルミナ触媒に加えて、近年主として使用されている高活性のゼオライト触媒を用いることができる。また、流動接触分解プロセスは基本的には反応塔と触媒再生塔からなっており、反応は、通常、反応塔温度470〜550℃、再生塔温度600〜650℃、反応塔圧力0.8〜1.1kg/cm2 、再生塔圧力0.9〜1.6kg/cm2 程度の条件で行われる。主な流動接触分解プロセスとしては、エアリフトサーモフォア法、フードリフロー法、UOP法、シェル二段式法、フレキシクラッキング法、オルソフロー法、テキサコ法、ガルフ法、ウルトラキャットクラッキング法、アルコクラッキング法、HOC法、RCC法などが挙げられる。
本発明においては、熱分解ガソリンはオクタン価、安定性等の品質が不適であること、水素化分解ガソリンは製造費が高価であること等により、分解ガソリンとして流動接触分解法により得られるものを使用することが好ましい。
また、前記脱硫ナフサは、原油を常圧蒸留して得られるナフサを水素化精製して得られるものであるが、このような脱硫ナフサを得るための水素化精製処理は、当業界における通常の方法を使用して行うことができる。
【0010】
本発明の無鉛ガソリンは、上記本発明の基材に流動接触分解法により得られる分解ガソリン、あるいは原油のナフサ留分を水素化精製して得られる脱硫ナフサ、又はこれらの混合物を90〜40容量%の範囲内の量で配合してなるものである。即ち、JIS K 2202では、50%留出温度が125℃以下と規定されているが、本発明の無鉛ガソリンは加速性や寒冷時の暖機性を考慮すると、その50%留出温度は110℃以下であることが好ましい。一方で、揮発性が高過ぎると高温時、燃料供給系統内でガソリンの気泡が発生し、燃料供給不足からアイドリング不調や加速不良をおこしてしまう。これらの要求性状を満足させるため、本発明においては上記軽質の脱硫ナフサや揮発性の低い分解ガソリンを混合する必要があるのである。
上記分解ガソリン及び脱硫ナフサは、上記実用性能の確保及び製造コストの適正化の点から、無鉛ガソリン中にそれぞれ好ましくは0〜80容量%、0〜40容量%、更に好ましくはそれぞれ5〜80容量%、5〜40容量%の範囲内の量で含有される。
本発明の無鉛ガソリンは、そのリサーチ法オクタン価(RON)が89.0以上であり、またそのモーター法オクタン価(MON)は高速走行時の耐ノック性の低下防止等の観点から80以上あることが好ましい。
【0011】
本発明の無鉛ガソリンは、上記の基材に加えて、必要に応じ、更に原油の常圧蒸留によるナフサ留分を分留して得られる軽質ナフサ,重質ナフサ、流動接触分解法以外の水素化分解法などを用いて得られる分解ガソリン、オレフィンの重合により得られる重合ガソリン、イソブタンなどの炭化水素に低級オレフィンを付加(アルキル化)することにより得られるアルキレート、直鎖の低級パラフィン系炭化水素の異性化によって得られるアイソメレートまたはこれらの特定沸点範囲の留分や芳香族炭化水素、メチル・ターシャリー・ブチルエーテル(MTBE)等の基材を配合することができる。
本発明においては、上記(L+H)PG基材を用いることにより、空燃比応答性が良好で、有害物質であるベンゼンの排出量を低減しうる無鉛ガソリンを製造することができる。即ち、本発明の無鉛ガソリンは、式(1)
【0012】
【数2】
(式中、Ti はガソリンを構成する成分のうち、成分iの沸点(℃)を表し、Vi はその成分iがガソリンに含有される量(容量%)を表す。また、nはクロマトグラフィー分析により確認された成分の数を表す。但し、不明成分は10容量%以下、即ちΣVi ≧90とする。)
で表される空燃比応答性指数Xが24.0以下であり、かつ式(2)
Y=1.07BZ+0.12TO+0.11EB+0.05XY+0.03C9+ A+0.005〔1−(BZ+TO+EB+XY+C9+ A)〕 ・・・(2)
(式中、BZ、TO、EB、XY及びC9+ Aは、それぞれベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン及び炭素数9以上の芳香族分がガソリン中に含有される量(容量%)を表す。)
で表される排気ガス指数が5.0以下であるものが好ましい。
【0013】
上記式(1)に示される条件はガソリンの成分組成に関するものであり、ガスクロマトグラフ法による全組成分析により分離同定の上定量した結果を式(1)の空燃比応答性指数算出式に当てはめ得られた値が、本発明においては24.0以下にあることが好ましい。この指数Xが24.0を超える場合は空燃比応答性が低下する場合がある。
また、上記式(2)に示される条件も上記式(1)の場合と同様にガソリンの成分組成に関するものであり、ガスクロマトグラフ法による全組成分析により分離同定の上定量した結果を式(2)の排気ガス指数算出式に当てはめ得られた値が、本発明においては5.0以下にあることが好ましい。この指数Yが5.0を超える場合は排気ガスの低公害性が十分に達せられない場合がある。
【0014】
本発明の無鉛ガソリンには、さらに必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲で各種の添加剤を適宜配合することができる。
このような添加剤としては、例えばターシャリーアミルメチルエーテル(TAME),エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE),ターシャリーアミルエチルエーテル(TAEE)などの含酸素化合物、フェノール系やアミン系などの酸化防止剤、シッフ型化合物やチオアミド型化合物などの金属不活性剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、コハク酸イミド,ポリアルキルアミン,ポリエーテルアミンなどの清浄分散剤、多価アルコール及びエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩,高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン性界面活性剤,カチオン性界面活性剤,両性界面活性剤などの帯電防止剤、アルケニルコハク酸のエステルなどの錆止剤,キリザニン,クマリンなどの識別剤,天然精油,合成香料などの着臭剤,アゾ染料などの着色剤など公知の燃料油添加剤が挙げられ、これらを一種あるいは二種以上添加することができる。また、これらの添加剤の添加量は状況に応じて適宜選定することができる。
【0015】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、燃料油の性状及び性能は次の方法に従って求めた。
〔燃料油の性状〕
(1)オクタン価(RON)
JIS K−2280に準拠して求めた。
(2)密度
JIS K−2249に準拠して求めた。
(3)蒸留性状
JIS K−2254に準拠して求めた。
(4)成分組成
ガスクロマトグラフィー法によるガソリン全組成分析(石油学会法JPI−5S−90に準拠)により燃料油中の各炭化水素の含有量を求める。値は各炭化水素の密度を用いて容量%に換算した。この分析法による各成分は沸点順に出てくる。
【0016】
〔燃料油の性能評価〕
(1)空燃比応答性
排気量1500cc、マニュアルトランスミッション、マルチポイントインジェクションのエンジンを使用して、冷却水温度を25℃と80℃、回転数1500rpm、ミッションを4速、スロットルバルブを7%及び燃料噴射量を空燃比15にする量に固定した定常状態からスロットルバルブを50%に急激に開くと同時に燃料噴射量を増大させ、最終的に到達する空燃比を13になるように調整し、その90%に到達する時間を調べた。
(2)排気ガス中のベンゼン濃度
TRIAS 23−1991の「ガソリン自動車アイドリング、11モード排出ガス試験法に従い、かつSAE Paper 920320に記載の方法に準拠して排気ガス中における炭化水素中のベンゼン濃度(重量%)を分析した。
【0017】
実施例1,2及び比較例1,2
第1表に示す性状及び成分を有するガソリン基材を第2表に示す割合で混合して、燃料油を調製し、その性状及び性能を上記方法で評価した。その結果を第2表に示す。尚、使用した基材のうち、基材Bは接触改質ガソリンであり、基材Aは上記基材Bの初留点〜沸点80℃のL・PG留分と沸点90℃〜終点のH・PG留分を混合してなる基材であり、基材A’は上記基材Bの初留点〜沸点70℃のL・PG留分と沸点100℃〜終点のH・PG留分を混合してなる基材であり、基材Cは上記基材Bの沸点100℃〜終点のH・PG留分からなる基材であり、基材Dは流動接触分解法により得られた分解ガソリンであり、基材Eは原油のナフサ留分を水素化精製して得られる脱硫ナフサである。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
【発明の効果】
以上詳細に述べたように、接触改質ガソリンの軽質留分と重質留分を混合することにより高いオクタン価を有し、ベンゼン含有量の低いガソリン基材を提供することができる。
また、上記ガソリン基材を用いることにより、本発明の無鉛ガソリンは、運転性を維持しつつ、人体に有害なベンゼンの含有量が低く、かつ空燃比応答性が良好であり、更にベンゼンの排出量を低減することができるものである。
Claims (2)
- 接触改質ガソリンの留分の初留点から沸点80℃迄の軽質留分と沸点90℃から終点迄の重質留分を混合してなるガソリン基材10〜60容量%に、(a)流動接触分解法により得られる分解ガソリン0〜80容量%及び(b)原油のナフサ留分を水素化精製して得られる脱硫ナフサ0〜40容量%を配合してなる、リサーチ法オクタン価が89.0以上である無鉛ガソリン。
- 式(1)
で表される空燃比応答性指数Xが24.0以下であり、かつ式(2)
Y=1.07BZ+0.12TO+0.11EB+0.05XY+0.03C9+A+0.005〔1−(BZ+TO+EB+XY+C9+A)〕
・・・(2)
(式中、BZ、TO、EB、XY及びC9+Aは、それぞれベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン及び炭素数9以上の芳香族分がガソリン中に含有される量(容量%)を表す。)
で表される排気ガス指数が5.0以下である請求項1記載の無鉛ガソリン。
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