JP3942408B2 - コンプレッサ用転がり軸受 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、エアコンディショナーのコンプレッサに使用される転がり軸受、すなわち、冷媒とともに潤滑剤を混合した潤滑条件下で使用するのに好適なコンプレッサ用転がり軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷凍機やエアコンディショナーのコンプレッサ(図1参照)には、冷媒圧縮用のピストンの支持や回転部材を駆動する回転軸の支持に転がり軸受が使用されているが、これらの軸受には、コンプレッサ中における冷媒に潤滑剤を混合した混合潤滑条件下で使用されるタイプのものがある。
【0003】
従来、冷媒として使用されていたフロンが地球環境に悪影響をおよぼすことから、ヒドロフルオロカーボン類(HFC)に代替されつつある。この冷媒の代替に伴い、潤滑剤もフロンに可溶なナフテン系やパラフィン系などの鉱油系潤滑剤から、HFCに可溶なポリアルキレングリコール(PGA)やポリオールエステルなどに変更されている。
【0004】
その結果、転がり軸受にとって潤滑条件が厳しくなり、トライボロジスト第37巻11号(1992)や特開平08−177864号に記載されているように、転走面内部に特異な形態の組織変化を伴い、従来に比べて短寿命で剥離するとの報告がある。
【0005】
この短寿命剥離の原因は、潤滑剤の変更によって潤滑膜の形成状態が変化したことで、転動体および軌道輪間でミクロな金属接触を生じ、この金属接触により露出された金属新生面が潤滑剤中の炭化水素または混合水分を分解し、この際に発生した水素が金属内部に侵入して、内部の組織を脆化させるためと考えられている。
【0006】
この際、▲1▼炭化水素または混入水分の分解による水素原子またはイオンの発生過程→▲2▼発生した水素原子またはイオンの鋼中内部への侵入過程→▲3▼侵入した水素による材料の脆化過程を経て、転走面内部における水素脆性的な剥離を招いていると考えられる。
【0007】
従来、上記した水素脆性的な短寿命剥離の対策としては、黒染め処理によって転動面に四三酸化鉄を形成させたもの(特開平2−190615号)や、不活性化剤を含む潤滑剤を用い、不活性化剤の反応が促進されるよう、転走表面が改質処理されているもの(特開2001−20958号)や、基材の銅(Cr)の含有量を増加させて表面にFeCrO4等の不活性酸化膜を形成させたもの(特開平8−177864号)などがある。
【0008】
これらの策は、転走表面に不活性皮膜を形成させ、新生面生成による触媒作用を抑制することで、炭化水素または混入水分の分解反応を起こり難くして水素の発生量を減らすこと、すなわち、前述の▲1▼の水素発生過程を改善したものである。しかし、炭化水素の分解反応に対する触媒作用は、新生面だけでなく混入水分や添加剤の分解などによって生成した酸などにも存在するため、潤滑環境によっては不活性皮膜のみでは水素の発生を完全に抑えることはできず、これらの発生した水素が鋼中へ侵入するのを阻止することは難しい。
【0009】
また、Al,Nb,Nなどを鋼に添加して、オーステナイト結晶粒の微細化によって水素脆化に強い金属組織にした従来例(特開平5−255809号)がある。
【0010】
これは結晶粒微細化により、材料の耐水素脆化性を向上させたこと、すなわち、前述の▲3▼の材料の脆化過程を改善したものである。しかし、結晶粒の微細化は、水素の侵入経路である結晶粒界の面積率を増やすことから、鋼中への水素の侵入量が増加する場合がある。
【0011】
したがって、上記従来例では改善されていなかった前述の▲2▼の水素の侵入過程を改善して、使用環境や潤滑環境が変わって発生する水素量が増加しても、鋼中内部への水素の侵入を確実に抑止するようになすことで、水素脆性的な短寿命剥離を抑止可能な転動部材や摺動部材が必要である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
これまで、このような水素脆性的な短寿命剥離現象は、冷媒および潤滑剤の最適化を図ることや軸受仕様の最適化を図ることで回避してきたが、自動車および自動車部品の小型軽量化の流れの中で、今後、前述の水素脆性的な現象が起こる可能性があるという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっている。
【0013】
【発明の目的】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、冷媒とともに潤滑剤を混合した潤滑条件下で使用される転がり軸受において、使用環境や潤滑環境が変化して水素の発生量が増加したとしても、水素の鋼中内部への侵入を確実に抑止することができ、その結果、水素脆性的な短寿命剥離を防止することが可能であるコンプレッサ用転がり軸受を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わるコンプレッサ用転がり軸受は、請求項1として、冷媒としてのヒドロフルオロカーボン類とこれに溶ける潤滑剤との混合潤滑条件下で使用されるコンプレッサ用転がり軸受において、転動体および軌道輪のうちの少なくともいずれかの部材に、ニッケル(Ni)または銅(Cu)を主成分とする転動中の水素の侵入を抑止する皮膜を形成してある構成としたことを特徴としており、このコンプレッサ用転がり軸受の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0015】
本発明に係わるコンプレッサ用転がり軸受は、請求項2において、皮膜を1〜10μmの厚さで形成した転動体、あるいは、皮膜を1〜20μmの厚さで形成した軌道輪からなっている構成とし、請求項3として、皮膜を1〜5μmの厚さで形成した転動体、あるいは、軌道輪からなっている構成とし、請求項4として、皮膜を電気めっきあるいは無電解めっきにより形成してある構成とし、請求項5として、めっき処理を行った後の段階において、200℃以下の温度でのベーキング処理が施してある構成としている。
【0016】
本発明に係わるコンプレッサ用転がり軸受は、請求項6として、コンプレッサが冷凍機用またはエアコンディショナー用である構成としている。
【0017】
【発明の作用】
本発明の請求項1に係わるコンプレッサ用転がり軸受において、水素の拡散係数が低いニッケル(Ni)または銅(Cu)を主成分とする転動中の水素の侵入を抑止する皮膜が軸受を構成する転動体および軌道輪のうちの少なくともいずれかの部材に形成されており、この際、水素の拡散係数が低いニッケル(Ni)または銅(Cu)には、後述の実施例にも示すように、水素の基材内への拡散を抑制する性質があることから、炭化水素あるいは混入水分の分解等によって転動中に生成した水素の鋼中内部への侵入が抑制される。つまり、水素の拡散が表面で遅れるため、表面に水素をトラップし得ることなり、内部の応力が高い部位への水素侵入が遅れて、単位時間当たりの水素の侵入量が減少することとなる。
【0018】
また、本発明の請求項2に係わるコンプレッサ用転がり軸受では、ニッケル(Ni)または銅(Cu)を主成分とする皮膜の厚さを転動体(ころ)で1〜10μm、軌道輪で1〜20μmとすることが好ましく、本発明の請求項3に係わるコンプレッサ用転がり軸受において、ニッケル(Ni)または銅(Cu)を主成分とする皮膜の厚さを転動体(ころ)および軌道輪でいずれも1〜5μmとすることがより好ましい。これは、皮膜厚さが1μm未満では、使用中に皮膜が摩耗してしまい、水素侵入を遮断する皮膜の作用が長期的に得られ難くなって、十分な耐水素脆化性が得られないためである。なお、トロイダルCVTの転動体やオルタネータなどのグリース封入軸受に対して同様の皮膜を形成する場合よりも皮膜厚さの下限値が大きいのは、グリース封入軸受と比べてコンプレッサ用転がり軸受が冷媒+潤滑剤という厳しい潤滑条件下で使用されるためであり、皮膜が摩耗し易いためである。
【0019】
逆に、軌道輪に皮膜を形成する場合には、皮膜の上限値が20μmを越えても、耐水素脆化性はとくに悪化するわけではないが、皮膜の厚さが増すのに伴って皮膜内の応力が過大になり、比較的早期に皮膜剥離が発生して、転動疲労寿命の向上にそれほど寄与しなくなる。また、皮膜の厚さが増大するのと同時に、処理時間が長くなり、その結果、コストも高くなるので、やはり皮膜の厚さが20μmを越えることは好ましくない。
【0020】
一方、転動体に皮膜を形成する場合には、皮膜の上限値を10μmとしているが、転動体は軌道輪に比べて回転頻度が高いため、10μmを上回る皮膜を形成したとすると、転動中の皮膜の摩耗および変形などが進行していく過程において、転動体のスムーズな運動が妨げられ、その結果、転動疲労寿命の向上効果が低下するので、やはり皮膜の厚さが10μmを越えるのは好ましくない。
【0021】
また、冷凍機やエアコンディショナーのコンプレッサに用いられる軸受には高い精度が求められるため、不必要に皮膜を厚くすることは、使用中の皮膜摩耗などによる寸法変化によって音振などを招く恐れがあって、好ましくない。なお、コンプレッサに用いられるスラスト荷重を受ける軸受には、スラストころ軸受のほかにスラスト玉軸受を適用可能であるが、コストなどの兼ね合いから、転動体および軌道輪のうちのいずれか一方に皮膜を形成する場合には、比較的剥離し易い方、つまり、ころ軸受では転動体(ころ)に皮膜を形成し、玉軸受では軌道輪に皮膜を形成することが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の請求項4に係わる用転がり軸受では、皮膜を電気めっきあるいは無電解めっきにより形成するようにしているので、侵入水素を遮断する皮膜を比較的簡便な処理で形成し得ることとなり、汎用性および量産性に優れた好ましいものとなる。
【0023】
さらにまた、より好ましい実施態様としての本発明の請求項5に係わるコンプレッサ用転がり軸受では、めっき処理を行った後の段階において、200℃以下の温度でのベーキング処理を施すようにしていることから、電気めっきあるいは無電解めっきの際に基材もしくは皮膜内に侵入した水素、および、粗材熱処理(例えば浸炭焼入れ)の際に基材に侵入した水素が放出される。
【0024】
ここで、ベーキング処理時の温度を200℃よりも高くすると、ベーキングによる脱水素量は増加するものの、基材が高温保持により軟化する場合がある。したがって、ベーキング処理時の温度を200℃以下とすることにより、脱水素効果を維持しつつ、基材軟化を防止する。上記ベーキング処理は真空炉にて行うのがより好ましく、これにより脱水素効果が更に高まることとなる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の請求項1および2に係わるコンプレッサ用転がり軸受によれば、上記した構成としているので、使用環境や潤滑環境が変化して水素の発生量が増加したとしても、水素の鋼中内部への侵入を確実に阻止することができ、その結果、水素脆性的な短寿命剥離を防止することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0026】
本発明の請求項3および4に係わるコンプレッサ用転がり軸受によれば、上記した構成としたから、比較的簡単な処理を行うことで、侵入水素を遮断する皮膜を形成することができ、汎用性および量産性の向上をも実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0027】
本発明の請求項5に係わるコンプレッサ用転がり軸受によれば、上記した構成としたため、電気めっきあるいは無電解めっきの際に基材や皮膜内に侵入した水素、および、粗材熱処理(例えば浸炭焼入れ)の際に基材に侵入した水素を放出することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0028】
本発明の請求項6に係わるコンプレッサ用転がり軸受によれば、冷凍機やエアコンディショナーのコンプレッサの厳しい環境下での運転を不具合なく円滑に行わせることが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0029】
【実施例】
以下に、本発明に係わるコンプレッサ用転がり軸受の実施例を説明し、その有用性を比較例と対比して示す。なお、本発明に係わるコンプレッサ用転がり軸受の各測定値は以下の方法で得られた測定値を用いた。
【0030】
[皮膜厚さ測定方法]
作成した試料の皮膜厚さは、皮膜形成部の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いた観察により定量する。
【0031】
[皮膜のりん含有量測定方法]
作成した試料の皮膜のリン含有量は、市販の蛍光X線分析装置を用いて定量する。リンの含有量が既知でかつ含有量の異なる複数個のサンプルを測定し、この際、各々の強度から強度−含有量の検量線を作成する。同様の条件で本発明に係わるコンプレッサ用転がり軸受を適当なサイズに切り出して測定し、この測定強度を前述の検量線に基づいてリン含有量に換算する。
【0032】
次に、本発明に係わるコンプレッサ用転がり軸受の製造方法について説明する。
【0033】
本実施例では、後述の材質SUJ2製のスラスト針状ころ軸受(図1参照)を用いて、下記条件により種々の皮膜を形成させた。
【0034】
[ニッケル(Ni)を主成分とする皮膜の作成条件]
1)皮膜を施す基材:針状ころ軸受のころ
2)めっき浴の組成:
A.ストライクめっき浴(Ni系)
塩化ニッケル 200g/L
塩酸 80g/L
ほう酸 30g/L
pH 1以下
めっき浴温度 50〜55℃
電流密度 0.1〜10A/dm
B.電気めっき浴(Ni系)
60%スルファミン酸
ニッケル 800g/L
塩化ニッケル 15g/L
ほう酸 45g/L
サッカリンソーダ 5g/L
50%次亜リン酸 0または1g/L
pH 4〜5
めっき浴温度 55〜60℃
電流密度 1〜10A/dm
C.無電解めっき浴(Ni系)
塩化ニッケル 16g/L
次亜リン酸ナトリウム24g/L
コハク酸ナトリウム 16g/L
リンゴ酸 18g/L
ジエチルアミン 10g/L
pH 5〜6
めっき浴温度 90〜95℃
【0035】
[銅(Cu)を主成分とする皮膜の作成条件]
D.電気めっき浴(Cu系)
シアン化第一銅 60g/L
シアン化ナトリウム 75g/L
炭酸ナトリウム 30g/L
pH 12〜13
めっき浴温度 50〜60℃
電流密度 2〜5A/dm
E.無電解めっき浴(Cu系)
硫酸銅 10g/L
ロッセル塩 50g/L
水酸化ナトリウム 10g/L
ホルマリン(37%)10g/L
安定剤 微量
pH 11〜13
めっき浴温度 室温
【0036】
(実施例1〜3,5)
スラストころ軸受1のころ1dに、ニッケル(Ni)を主成分とするストライクメッキ(上記Aの浴を使用)を施した後、電気めっき法(上記Bの浴を使用)にてNiを主成分とする皮膜を形成した。
【0037】
なお、電気めっき法にてNiを主成分とする皮膜を形成する際のめっき浴(上記Bの浴)として、実施例5では、50%次亜リン酸1g/L添加した浴を使用し、実施例1〜3では、50%次亜リン酸を添加しないめっき浴を使用した。また、実施例1では、めっきの後、真空炉にて130℃×20時間のベーキング処理を実施した。
【0038】
(実施例4)
スラストころ軸受1のころ1dに、ニッケル(Ni)を主成分とするストライクメッキ(上記Aの浴を使用)を施した後、無電解めっき法(上記Cの浴を使用)にてNiを主成分とする皮膜を形成した。
【0039】
(実施例6〜9)
スラストころ軸受1のころ1dに、銅(Cu)を主成分とするめっき皮膜を形成した。このCuめっきの形成に際し、実施例6,7,8では、電気めっき法(上記Dの浴を使用)を採用し、実施例9では、無電解めっき法(上記Eの浴を使用)を採用した。また、実施例6では、めっきの後、真空炉にて130℃×20時間のベーキング処理を実施した。
【0040】
(比較例1)
めっき処理を施さない試料を用意した。
【0041】
次に、本発明に係るコンプレッサ用転がり軸受の評価方法について説明する。
【0042】
図2に示すように、特開平08−177864号の条件を参考にして、白灯油97%と潤滑剤としてのポリアルキレングリコール(PAG)3%とを配合して作成した潤滑混合液O中において、この潤滑混合液Oを充填した潤滑混合液容器Cの底面に市販のころ軸受(NSK製FNTA−2542C)1をセットし、図示上側に位置する軌道輪1aにスラスト試験機10の回転軸11の押圧盤12を当接させて、図示矢印方向の荷重(5880Nm)を負荷しつつ1000rpmで回転軸11を回転させてころ軸受1の転動試験を行った。また、転動疲労寿命は、振動センサにて検知し、転動体(ころ)がフレーキングに至るまでの試験時間を寿命とした。
【0043】
なお、本実施例では、ころ軸受1のころ1dにめっきを施すことによって、本発明の有用性を証明しているが、例えば、本発明を玉軸受の軌道輪(レース)に適用しても変わりがないことは言うまでもない。
【0044】
表1に、上記試験条件にて評価した本実施例および比較例における軸受の転動疲労寿命試験結果の一覧を示す。
【0045】
また、図3および図4に、ころ軸受1のころ1dの剥離部近傍における断面組織写真を示す。
【0046】
図3および図4の写真は短寿命で剥離した試料に観察され、いびつな形態の白色組織もしくはいびつな形態の内部亀裂が剥離部近傍に確認された。
【0047】
表2に、試験終了後のころの鋼中における拡散性水素量を測定した結果を示す。なお、測定は昇温脱離ガス分析装置(日本真空技術(株)UPM−ST−200R型)を用いて行い、加熱温度400℃以下にて放出された水素量を拡散性水素量とした。
【0048】
【表1】
Figure 0003942408
【0049】
【表2】
Figure 0003942408
【0050】
表2より、内部に白色組織等が存在し、短寿命でフレーキングに至ったころは、長寿命のものに比べて試験後の水素侵入量が多いことがわかる。つまり、これらの短寿命品は、転動中に侵入した水素により材料が脆化したことに起因する水素脆性的な剥離現象と考えられる。また、表2において、短寿命でフレーキングを生じた比較例に比べて、表面に水素遮断層として作用するNiまたはCuを主成分とする皮膜を設けた本発明では、試験後の水素侵入量が抑えられていることがわかる。
【0051】
つまり、表1,2に示す試験結果から、本発明によれば、従来例に比較して転動中の水素侵入を抑えることができ、転動疲労寿命を大幅に向上させることができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるコンプレッサ用転がり軸受の一実施例を示すカーエアコンディショナー用のコンプレッサに組み付けた状態の断面説明図である。
【図2】図1のコンプレッサに組み付けたスラストころ軸受に対してスラスト試験機を用いて転動試験を行う際の概略断面説明図である。
【図3】スラスト試験後のスラストころ軸受の剥離部近傍における断面組織(白色組織あり)を示す写真である。
【図4】同じくスラスト試験後のスラストころ軸受の剥離部近傍における断面組織(白色組織あり)を示す写真である。
【符号の説明】
1 スラストころ軸受(コンプレッサ用転がり軸受)
1a,1b 軌道輪
1d ころ(転動体)
20 カーエアコンディショナー用のコンプレッサ

Claims (6)

  1. 冷媒としてのヒドロフルオロカーボン類とこれに溶ける潤滑剤との混合潤滑条件下で使用されるコンプレッサ用転がり軸受において、転動体および軌道輪のうちの少なくともいずれかの部材に、ニッケル(Ni)または銅(Cu)を主成分とする転動中の水素の侵入を抑止する皮膜を形成してあることを特徴とするコンプレッサ用転がり軸受。
  2. 皮膜を1〜10μmの厚さで形成した転動体、あるいは、皮膜を1〜20μmの厚さで形成した軌道輪からなっている請求項1に記載のコンプレッサ用転がり軸受。
  3. 皮膜を1〜5μmの厚さで形成した転動体、あるいは、軌道輪からなっている求項1または2に記載のコンプレッサ用転がり軸受。
  4. 皮膜を電気めっきあるいは無電解めっきにより形成してある請求項1ないし4のいずれかに記
    載のコンプレッサ用転がり軸受。
  5. めっき処理を行った後の段階において、200℃以下の温度でのベーキング処理が施してある請求項4記載のコンプレッサ用転がり軸受。
  6. コンプレッサが冷凍機用またはエアコンディショナー用である請求項1ないし5のいずれかに記載のコンプレッサ用転がり軸受。
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